【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、人(13)を乗せた状態で室内(11)を移動可能な移動体(20)と、該移動体(20)の動作を制御する移動体制御部(33)とを備えた移動体の制御システムを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記移動体(20)に乗っている人(13)の温熱環境下での快適性を判断する快適性判断部(32)を備え、
前記移動体制御部(33)は、前記快適性判断部(32)で不快と判断された場合に、その人(13)が快適に感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)へ移動するように前記移動体(20)の動作を制御することを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、移動体(20)に乗っている人(13)が不快と感じている場合に、その人(13)が快適と感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に移動体(20)を移動させるようにしている。これにより、室内(11)に居る人(13)が快適と感じる温熱環境を個別に提供することができる。
【0012】
具体的に、移動体(20)に乗っている人が、室温が暑すぎて不快であると感じているときには、現在の温熱エリア(11d)よりも室温の低い温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を自動的に移動させるようにしている。つまり、予め室温が低くなっている温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を移動させるだけなので、人(13)の周辺の温度を空調制御する場合に比べて、短時間で、人(13)が快適と感じる温熱環境を個別に提供することができる。
【0013】
また、人(13)を乗せた移動体(20)が室内(11)に複数台存在する場合であっても、複数の移動体(20)がそれぞれ最適な温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に向かって移動することで、複数の人(13)に対して最適な温熱環境を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記室内(11)の温熱環境を示す情報を取得する温熱環境取得部(18)を備え、
前記移動体制御部は、前記温熱環境取得部で取得された情報に基づいて、前記温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を判断することを特徴とするものである。
【0015】
第2の発明では、室内(11)の温熱環境を示す情報に基づいて、温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を判断するようにしている。これにより、例えば、室内(11)のどの位置がどのような温熱環境であるかを把握して、人(13)が快適と感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に向かって移動体(20)を適切に移動させることができる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記移動体(20)は、前記室内(11)に複数台設けられており、
前記移動体制御部(33)は、前記移動体(20)同士の間隔が一定以上に維持されるように該移動体(20)の位置を制御することを特徴とするものである。
【0017】
第3の発明では、移動体(20)同士の間隔を一定以上に維持するように、移動体(20)の位置を制御している。これにより、1つの温熱エリア(11a)内に複数台の移動体(20)が存在する場合でも、移動体(20)同士が接近し過ぎて圧迫感を覚えることが無く、快適な作業環境を提供することができる。
【0018】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記室内(11)の空気調和を行う空調機(15)と、
温熱環境の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)が前記室内(11)に形成されるように前記空調機(15)の動作を制御する空調制御部(31)とを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明では、空調機(15)によって室内(11)の空気調和を行うことで、温熱環境の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成している。これにより、複数の人(13)の好みに応じたより多くの温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成して、人(13)が快適と感じる温熱環境の選択の幅を広げることができる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明において、
前記空調制御部(31)は、前記温熱エリア(11a)の面積を該温熱エリア(11a)に待機している前記移動体(20)の台数で割った占有面積が所定値以上となるように、前記空調機(15)の動作を制御して該温熱エリア(11a)の面積を調整することを特徴とするものである。
【0021】
第5の発明では、空調機(15)によって、移動体(20)の占有面積に応じて温熱エリア(11a)の面積を調整するようにしている。例えば、室温が22℃、24℃、26℃、28℃の4つの温熱エリア(11a,11b,11c,11d)が室内(11)に形成されており、室温が暑すぎて不快と感じている人(13)の割合が多い場合には、室温が最も低く設定されている22℃の温熱エリア(11a)の面積を広げるように空調機(15)を制御することで、より多くの人(13)に、快適な温熱環境を提供することができる。
【0022】
第6の発明は、第1乃至第5の発明のうち何れか1つにおいて、
前記移動体(20)に乗っている人(13)の生体情報を取得する生体情報取得部(25)を備え、
前記快適性判断部(32)は、前記生体情報取得部(25)で取得した生体情報に基づいて、快適性を判断することを特徴とするものである。
【0023】
第6の発明では、人(13)の生体情報に基づいて快適性を判断するようにしたから、移動体(20)に乗っている人(13)が、快適又は不快と感じているかを自ら判断することなく、自動的に、快適と感じる温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を移動させることができる。
【0024】
第7の発明は、第6の発明において、
前記生体情報は、人(13)の心拍数又は呼吸数を含むことを特徴とするものである。
【0025】
第7の発明では、人(13)の心拍数又は呼吸数を生体情報として用いることで、人(13)が快適又は不快と感じているかを、より正確に判断することができる。
【0026】
具体的に、室内(11)の温度が高く、人(13)が暑いと感じるときには、体温調節のために発汗量が増加し、人体の放熱を促すために抹消皮膚への血流量を増大させようとして、心拍間隔は短くなり、心拍数や呼吸数が大きくなる。
【0027】
逆に、室内(11)の温度が低く、人(13)が寒いと感じるときには、発汗量は減少し、人体の放熱を抑えるために抹消皮膚への血流量を減少させようとして、心拍間隔は長くなり、心拍数や呼吸数が小さくなる。
【0028】
このように、生体情報取得部(25)で取得した生体情報、つまり、人(13)の心拍数又は呼吸数が、人(13)が快適と感じているときの基準となる心拍数又は呼吸数に対して大きい又は小さい場合に、人(13)が不快と感じていると判断することができる。