特許第6772961号(P6772961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772961
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】移動体の制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20201012BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20201012BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20201012BHJP
【FI】
   G08G1/00 X
   B60L15/20 J
   G05D1/02 H
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-107298(P2017-107298)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-205854(P2018-205854A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直之
(72)【発明者】
【氏名】大澤 正典
(72)【発明者】
【氏名】太田 優
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−237719(JP,A)
【文献】 特開2016−217583(JP,A)
【文献】 特開2005−134021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−60/00
G08G 1/00−99/00
B60L 15/20
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人(13)を乗せた状態で室内(11)を移動可能な移動体(20)と、該移動体(20)の動作を制御する移動体制御部(33)とを備えた移動体の制御システムであって、
前記移動体(20)に乗っている人(13)の温熱環境下での快適性を判断する快適性判断部(32)を備え、
前記移動体制御部(33)は、前記快適性判断部(32)で不快と判断された場合に、その人(13)が快適に感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)へ移動するように前記移動体(20)の動作を制御することを特徴とする移動体の制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記室内(11)の温熱環境を示す情報を取得する温熱環境取得部(18)を備え、
前記移動体制御部は、前記温熱環境取得部で取得された情報に基づいて、前記温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を判断することを特徴とする移動体の制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記移動体(20)は、前記室内(11)に複数台設けられており、
前記移動体制御部(33)は、前記移動体(20)同士の間隔が一定以上に維持されるように該移動体(20)の位置を制御することを特徴とする移動体の制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記室内(11)の空気調和を行う空調機(15)と、
温熱環境の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)が前記室内(11)に形成されるように前記空調機(15)の動作を制御する空調制御部(31)とを備えたことを特徴とする移動体の制御システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記空調制御部(31)は、前記温熱エリア(11a)の面積を該温熱エリア(11a)に待機している前記移動体(20)の台数で割った占有面積が所定値以上となるように、前記空調機(15)の動作を制御して該温熱エリア(11a)の面積を調整することを特徴とする移動体の制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1つにおいて、
前記移動体(20)に乗っている人(13)の生体情報を取得する生体情報取得部(25)を備え、
前記快適性判断部(32)は、前記生体情報取得部(25)で取得した生体情報に基づいて、快適性を判断することを特徴とする移動体の制御システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記生体情報は、人(13)の心拍数又は呼吸数を含むことを特徴とする移動体の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内における人の位置する領域での空調状態を快適にするように運転の制御を行う空気調和機が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、人の検知位置に基づいて調和空気の吹出方向を制御するとともに、例えば暖房時には温風が人検出領域の床面に沿って流れ、この床面の温度上昇を図ることで、速暖性を向上させた空調運転を行うようにした構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、人が検出された位置と、人付近の床面の温度、及び室温の関係から、通常時は室温を設定温度に達するような設定温度制御を行い、風向は人の位置検出結果に基づき変更するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2513005号公報
【特許文献2】特許第2978374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように、室内に居る人の位置に合わせて空気調和機の空調制御を行うようにした構成では、人が快適と感じる温度に達するのに時間がかかるとともに、温度調整を行っている間に、人がその位置から移動してしまうと、空調制御が無駄になるという問題がある。
【0007】
また、例えば、オフィスのような、同一のエリア内に多数の人が存在する環境下では、隣り合う位置に居る人々のそれぞれに対して、最適な温度環境を作り出すことは困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、室内に居る人が快適と感じる温熱環境を個別に提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、人(13)を乗せた状態で室内(11)を移動可能な移動体(20)と、該移動体(20)の動作を制御する移動体制御部(33)とを備えた移動体の制御システムを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記移動体(20)に乗っている人(13)の温熱環境下での快適性を判断する快適性判断部(32)を備え、
前記移動体制御部(33)は、前記快適性判断部(32)で不快と判断された場合に、その人(13)が快適に感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)へ移動するように前記移動体(20)の動作を制御することを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、移動体(20)に乗っている人(13)が不快と感じている場合に、その人(13)が快適と感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に移動体(20)を移動させるようにしている。これにより、室内(11)に居る人(13)が快適と感じる温熱環境を個別に提供することができる。
【0012】
具体的に、移動体(20)に乗っている人が、室温が暑すぎて不快であると感じているときには、現在の温熱エリア(11d)よりも室温の低い温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を自動的に移動させるようにしている。つまり、予め室温が低くなっている温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を移動させるだけなので、人(13)の周辺の温度を空調制御する場合に比べて、短時間で、人(13)が快適と感じる温熱環境を個別に提供することができる。
【0013】
また、人(13)を乗せた移動体(20)が室内(11)に複数台存在する場合であっても、複数の移動体(20)がそれぞれ最適な温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に向かって移動することで、複数の人(13)に対して最適な温熱環境を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記室内(11)の温熱環境を示す情報を取得する温熱環境取得部(18)を備え、
前記移動体制御部は、前記温熱環境取得部で取得された情報に基づいて、前記温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を判断することを特徴とするものである。
【0015】
第2の発明では、室内(11)の温熱環境を示す情報に基づいて、温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を判断するようにしている。これにより、例えば、室内(11)のどの位置がどのような温熱環境であるかを把握して、人(13)が快適と感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に向かって移動体(20)を適切に移動させることができる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記移動体(20)は、前記室内(11)に複数台設けられており、
前記移動体制御部(33)は、前記移動体(20)同士の間隔が一定以上に維持されるように該移動体(20)の位置を制御することを特徴とするものである。
【0017】
第3の発明では、移動体(20)同士の間隔を一定以上に維持するように、移動体(20)の位置を制御している。これにより、1つの温熱エリア(11a)内に複数台の移動体(20)が存在する場合でも、移動体(20)同士が接近し過ぎて圧迫感を覚えることが無く、快適な作業環境を提供することができる。
【0018】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記室内(11)の空気調和を行う空調機(15)と、
温熱環境の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)が前記室内(11)に形成されるように前記空調機(15)の動作を制御する空調制御部(31)とを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明では、空調機(15)によって室内(11)の空気調和を行うことで、温熱環境の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成している。これにより、複数の人(13)の好みに応じたより多くの温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成して、人(13)が快適と感じる温熱環境の選択の幅を広げることができる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明において、
前記空調制御部(31)は、前記温熱エリア(11a)の面積を該温熱エリア(11a)に待機している前記移動体(20)の台数で割った占有面積が所定値以上となるように、前記空調機(15)の動作を制御して該温熱エリア(11a)の面積を調整することを特徴とするものである。
【0021】
第5の発明では、空調機(15)によって、移動体(20)の占有面積に応じて温熱エリア(11a)の面積を調整するようにしている。例えば、室温が22℃、24℃、26℃、28℃の4つの温熱エリア(11a,11b,11c,11d)が室内(11)に形成されており、室温が暑すぎて不快と感じている人(13)の割合が多い場合には、室温が最も低く設定されている22℃の温熱エリア(11a)の面積を広げるように空調機(15)を制御することで、より多くの人(13)に、快適な温熱環境を提供することができる。
【0022】
第6の発明は、第1乃至第5の発明のうち何れか1つにおいて、
前記移動体(20)に乗っている人(13)の生体情報を取得する生体情報取得部(25)を備え、
前記快適性判断部(32)は、前記生体情報取得部(25)で取得した生体情報に基づいて、快適性を判断することを特徴とするものである。
【0023】
第6の発明では、人(13)の生体情報に基づいて快適性を判断するようにしたから、移動体(20)に乗っている人(13)が、快適又は不快と感じているかを自ら判断することなく、自動的に、快適と感じる温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を移動させることができる。
【0024】
第7の発明は、第6の発明において、
前記生体情報は、人(13)の心拍数又は呼吸数を含むことを特徴とするものである。
【0025】
第7の発明では、人(13)の心拍数又は呼吸数を生体情報として用いることで、人(13)が快適又は不快と感じているかを、より正確に判断することができる。
【0026】
具体的に、室内(11)の温度が高く、人(13)が暑いと感じるときには、体温調節のために発汗量が増加し、人体の放熱を促すために抹消皮膚への血流量を増大させようとして、心拍間隔は短くなり、心拍数や呼吸数が大きくなる。
【0027】
逆に、室内(11)の温度が低く、人(13)が寒いと感じるときには、発汗量は減少し、人体の放熱を抑えるために抹消皮膚への血流量を減少させようとして、心拍間隔は長くなり、心拍数や呼吸数が小さくなる。
【0028】
このように、生体情報取得部(25)で取得した生体情報、つまり、人(13)の心拍数又は呼吸数が、人(13)が快適と感じているときの基準となる心拍数又は呼吸数に対して大きい又は小さい場合に、人(13)が不快と感じていると判断することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、室内(11)に居る人(13)が快適と感じる温熱環境を個別に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る制御システムの構成を概略的に示す側面図である。
図2】室内の温熱エリアと移動体の位置とを概略的に示す平面図である。
図3】制御システムの構成を示すブロック図である。
図4】移動体を移動させたときの室内の温熱エリアと移動体の位置とを概略的に示す平面図である。
図5】温熱エリアの面積を広げたときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
図1及び図2に示すように、制御システム(10)は、室内(11)の空気調和を行う空調機(15)と、人(13)を乗せた状態で室内(11)を移動可能な移動体(20)と、空調機(15)及び移動体(20)の動作を制御するコントローラサーバ(30)とを連携させて各種制御を行うものである。
【0033】
室内(11)は、フリーアドレス制のオフィス空間を想定しており、室内(11)には、各人の座席が設けられておらず、人(13)は、各自に割り当てられた移動体(20)に乗った状態で作業を行う。
【0034】
空調機(15)は、室内(11)の天井付近に配設され、温熱環境の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成するように、室内(11)に調和空気を吹き出す。図1に示す例では、2台の空調機(15)を用いて、4つの温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成するようにしている。温熱エリア(11a,11b,11c,11d)の室温は、図1で左側から順に、例えば、22℃、24℃、26℃、28℃に設定されているものとする。
【0035】
室内(11)には、4つの温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に対応して、4つの温熱環境取得部(18)が設けられている。これにより、室内(11)のどの位置がどのような温熱環境であるのかを把握することができる。なお、本実施形態では、温熱環境取得部(18)は、室温を検出する温度センサを想定しているが、室内(11)の温度及び湿度を検出する温湿度センサであってもよい。
【0036】
移動体(20)は、人(13)が着席するための座席(21)と、座席(21)に対応して設けられて人(13)が作業を行うための作業机(22)と、座席(21)及び作業机(22)を移動させる車輪(23)とを備えている。図2に示す例では、移動体(20)は、22℃の温熱エリア(11a)に1台、26℃の温熱エリア(11c)に1台、28℃の温熱エリア(11d)に2台配置されている。
【0037】
図3に示すように、移動体(20)は、人(13)が移動体(20)を操作するための操作部(24)と、人(13)の生体情報を取得する生体情報取得部(25)と、室内(11)における移動体(20)の位置情報を取得する位置情報取得部(26)と、車輪(23)を駆動させて移動体(20)を移動させる駆動部(27)と、移動体(20)に関する各種制御を行う制御部(28)と、コントローラサーバ(30)との間で無線通信を行う通信部(29)とを備えている。
【0038】
操作部(24)は、例えば、タッチパネル式のモニタ、押しボタン式のスイッチ、操作レバー等で構成されている。人(13)が操作部(24)を操作することで、移動体(20)を前進又は後退させたり、方向転換を行うことができるようになっている。
【0039】
また、操作部(24)を用いて、コントローラサーバ(30)に送信すべき各種情報を入力することもできる。例えば、移動体(20)に乗っている人(13)の平常時の基準バイタルデータ(心拍数、呼吸数、体温等)や、その人(13)が暑い環境が好みか寒い環境が好みかといった嗜好情報を入力する。
【0040】
生体情報取得部(25)は、移動体(20)に乗っている人(13)の生体情報、例えば、心拍数、呼吸数、体温等のバイタルデータを取得するものであり、腕時計式の脈拍センサや体温センサ、座席(21)に設けられた感圧センサ等で構成されている。生体情報取得部(25)で取得された生体情報は、制御部(28)に送られる。
【0041】
位置情報取得部(26)は、例えば、室内(11)に設けられた固定局(センサ)との間で電波のやり取りを行う移動局(タグ)で構成されている。位置情報取得部(26)では、固定局との相対位置に基づいて、室内(11)における移動体(20)の位置情報を取得する。位置情報取得部(26)で取得された位置情報は、制御部(28)に送られる。
【0042】
駆動部(27)は、例えば、車輪(23)を回転駆動させる駆動モータで構成されており、制御部(28)からの制御信号に基づいて駆動する。
【0043】
制御部(28)は、操作部(24)、生体情報取得部(25)、位置情報取得部(26)から各種データを受け取り、通信部(29)を介してコントローラサーバ(30)に送信する。また、制御部(28)は、コントローラサーバ(30)からの制御信号に基づいて、駆動部(27)の動作を制御する。
【0044】
コントローラサーバ(30)は、空調機(15)の動作を制御する空調制御部(31)と、移動体(20)に乗っている人(13)が快適又は不快と感じているかを判断する快適性判断部(32)と、移動体(20)の動作を制御する移動体制御部(33)と、移動体(20)との間で無線通信を行う通信部(34)とを備えている。
【0045】
コントローラサーバ(30)には、温熱環境取得部(18)で取得された温熱エリア(11a,11b,11c,11d)の温度を示す信号が入力される。これにより、コントローラサーバ(30)では、室内(11)における温熱環境を判断することができる。
【0046】
空調制御部(31)は、室内(11)の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)が設定温度となるように、空調機(15)に対して制御信号を出力し、空調機(15)の動作を制御する。
【0047】
快適性判断部(32)は、移動体(20)から送信された生体情報に基づいて、移動体(20)に乗っている人(13)の温熱環境下での快適性を判断する。
【0048】
具体的に、室内(11)の温度が高く、人(13)が暑いと感じるときには、体温調節のために発汗量が増加し、人体の放熱を促すために抹消皮膚への血流量を増大させようとして、心拍間隔は短くなり、心拍数や呼吸数が大きくなる。
【0049】
逆に、室内(11)の温度が低く、人(13)が寒いと感じるときには、発汗量は減少し、人体の放熱を抑えるために抹消皮膚への血流量を減少させようとして、心拍間隔は長くなり、心拍数や呼吸数が小さくなる。
【0050】
そのため、快適性判断部(32)では、人(13)の心拍数又は呼吸数が、人(13)が快適と感じているときの基準となる心拍数又は呼吸数に対して大きいか又は小さいかを判定することで、人(13)が不快と感じていると判断することができる。
【0051】
移動体制御部(33)は、快適性判断部(32)で不快と判断された場合に、その人(13)が快適に感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)へ移動するように移動体(20)を遠隔操作する。
【0052】
例えば、図4に示すように、室温が28℃に設定された温熱エリア(11d)に待機している移動体(20)に乗っている人(13)が、室温が暑すぎて不快であると感じているときには、現在の温熱エリア(11d)よりも室温の低い22℃の温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を自動的に移動させるようにしている。
【0053】
このように、予め室温が低くなっている22℃の温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を移動させるだけなので、人(13)の周辺の温度を空調制御する場合に比べて、短時間で、人(13)が快適と感じる温熱環境を個別に提供することができる。
【0054】
ところで、温熱エリア(11a)に移動体(20)が複数台存在する場合に、移動体(20)同士が接近し過ぎると、人(13)が圧迫感を覚えてしまうため、好ましくない。
【0055】
そこで、図4に示すように、移動先の温熱エリア(11a)に他の移動体(20)が待機している場合には、移動体(20)同士の間隔(L)が一定以上に維持されるように、移動体(20)の位置を制御するようにしている。これにより、移動体(20)が複数台存在する場合であっても、各人が快適な作業環境を提供することができる。
【0056】
また、図4に示す28℃の温熱エリア(11d)と、26℃の温熱エリア(11c)に居る人(13)も、室温が暑すぎて不快と感じており、22℃の温熱エリア(11a)に移動したいと考えている場合には、22℃の温熱エリア(11a)に4台の移動体(20)が密集することとなる。
【0057】
この場合には、空調制御部(31)によって空調機(15)の動作を制御して、図5に示すように、22℃の温熱エリア(11a)の面積をこの温熱エリア(11a)に待機している移動体(20)の台数で割った占有面積が所定値以上となるように、例えば、22℃の温熱エリア(11a)が24℃の温熱エリア(11b)にまで広がるように、温熱エリア(11a)の面積を調整するようにしている。これにより、より多くの人(13)に、快適な温熱環境を提供することができる。
【0058】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0059】
本実施形態では、人(13)の生体情報に基づいて快適性を判断するようにして、移動体(20)に乗っている人(13)が、快適又は不快と感じているかを自ら判断することなく、自動的に、快適と感じる温熱エリア(11a,11b,11c,11d)に向かって移動体(20)を移動させることができるようにしたが、この形態に限定するものではない。
【0060】
例えば、人(13)が移動体(20)の操作部(24)を操作して、自分が快適又は不快であるかを自己申告することで、この自己申告結果に基づいて、移動体(20)を遠隔操作するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、例えば、28℃の温熱エリア(11d)では暑すぎると判断した場合に、22℃の温熱エリア(11a)に向かって移動体(20)を移動させるようにしたが、この形態に限定するものではない。
【0062】
例えば、28℃の温熱エリア(11d)から26℃の温熱エリア(11c)に移動体(20)を移動させた後で、再度、快適性判断部(32)によって快適性を判断し、快適であれば26℃の温熱エリア(11c)で待機し、不快であれば、24℃の温熱エリア(11b)に移動する等、段階的に室温の低い温熱エリアに移動させていくようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、主に、室温の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成するようにしたが、この形態に限定するものではない。
【0064】
例えば、室温の他に湿度の異なる温熱エリアや、人体の熱負荷と人間の温冷感を結び付けた温熱環境評価指数(PMV:Predicted Mean Vote)の異なる温熱エリアを形成して、人(13)が快適と感じる温熱エリアに移動体(20)を移動させるようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、生体情報として、人(13)の心拍数や呼吸数を用いているが、この他にも、例えば、人(13)の表情をカメラで撮影して画像処理を行うことでストレス判定を行い、そのストレス判定結果から快適又は不快と感じているかを判断するようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、空調機(15)の動作を制御させることで、温熱環境の異なる複数の温熱エリア(11a,11b,11c,11d)を室内(11)に形成するようにしているが、例えば、室内(11)に日差しが差し込むことによって窓際の方が暖かくなる等、空調機(15)を動作させることなく、室内(11)に複数の温熱エリアが自然に形成されているのであれば、これらの温熱エリアに移動体(20)を移動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、室内に居る人が快適と感じる温熱環境を個別に提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0068】
10 制御システム
11 室内
11a〜11b 温熱エリア
13 人
15 空調機
18 温熱環境取得部
20 移動体
25 生体情報取得部
31 空調制御部
32 快適性判断部
33 移動体制御部
図1
図2
図3
図4
図5