(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
展開膨張時に車両の窓を覆う構成とされて、上縁側を前記車両のボディ側に取付固定されるようにして、前記窓の車内側における上縁側の収納部位に収納されるエアバッグを、有し、
該エアバッグが、前記収納部位に収納可能に折り畳まれる長尺状の折り完了体として、前記車両に搭載されるとともに、車両搭載前に、前記折り完了体の所定箇所を折り曲げて運搬可能に構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記折り完了体における運搬時の折曲部位の周囲に、可撓性を有した帯状体から構成されて、前記車両への組付時に、前記折り完了体における折曲部位でのねじれを規制可能とする規制部材が、配置され、
該規制部材が、両端側に、前記折り完了体から突出して形成される突状部を係止可能な組付孔を有して、該組付孔周縁に前記突状部を係止させた状態で、前記突状部の前後両側を、前記エアバッグの膨張時にくるみ状態を解除可能なくるみ材により、前記折り完了体とともにくるまれて、前記折り完了体に取り付けられる構成とされるとともに、前記組付孔間の部位の長さ寸法を、前記折り完了体の周方向側での一回転のねじれを不能とするような長さ寸法に、設定され、
前記突状部のうち、少なくとも一方が、前記エアバッグの上縁側を前記ボディ側に取付固定するための取付手段から、構成されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
展開膨張時に車両の窓を覆う構成とされて、上縁側を前記車両のボディ側に取付固定されるようにして、前記窓の車内側における上縁側の収納部位に収納されるエアバッグを、有し、
該エアバッグが、前記収納部位に収納可能に折り畳まれる長尺状の折り完了体として、前記車両に搭載されるとともに、車両搭載前に、前記折り完了体の所定箇所を折り曲げて運搬可能に構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記折り完了体における運搬時の折曲部位の周囲に、可撓性を有した帯状体から構成されて、前記車両への組付時に、前記折り完了体における折曲部位でのねじれを規制可能とする規制部材が、配置され、
該規制部材が、両端側に、前記折り完了体から突出して形成される突状部を係止可能な組付孔を有して、該組付孔周縁に前記突状部を係止させた状態で、前記突状部の前後両側を、前記エアバッグの膨張時にくるみ状態を解除可能なくるみ材により、前記折り完了体とともにくるまれて、前記折り完了体に取り付けられる構成とされるとともに、前記組付孔間の部位の長さ寸法を、前記折り完了体の周方向側での一回転のねじれを不能とするような長さ寸法に、設定され、
前記規制部材が、前記組付孔を有した取付片部と、該取付片部間を連結する連結部と、を備える構成とされ、
該連結部が、幅寸法を前記取付片部の幅寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の頭部保護エアバッグ装置では、帯状体は、両端側を、折り完了体から突出している突状部に係止させることにより、折り完了体に取り付けられる構成であった。しかしながら、従来の頭部保護エアバッグ装置では、帯状体は、折曲部位にねじれが生じることを規制するためのものではなく、車両への組付時に、帯状体の部位を目視することにより、ねじれの有無を確認するためのものであることから、車両への組付時に、折り完了体にねじれが発生することを的確に規制する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成として、折り完了体における運搬時の折曲部位の領域に、ねじれが生じることを規制可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、展開膨張時に車両の窓を覆う構成とされて、上縁側を車両のボディ側に取付固定されるようにして、窓の車内側における上縁側の収納部位に収納されるエアバッグを、有し、
エアバッグが、収納部位に収納可能に折り畳まれる長尺状の折り完了体として、車両に搭載されるとともに、車両搭載前に、折り完了体の所定箇所を折り曲げて運搬可能に構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
折り完了体における運搬時の折曲部位の周囲に、可撓性を有した帯状体から構成されて、車両への組付時に、折り完了体における折曲部位でのねじれを規制可能とする規制部材が、配置され、
規制部材が、両端側に、折り完了体から突出して形成される突状部を係止可能な組付孔を有して、組付孔周縁に突状部を係止させた状態で、突状部の前後両側を、エアバッグの膨張時にくるみ状態を解除なくるみ材により、折り完了体とともにくるまれて、折り完了体に取り付けられる構成とされるとともに、組付孔間の部位の長さ寸法を、折り完了体の周方向側での一回転のねじれを不能とするような長さ寸法に、設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体における運搬時の折曲部位の周囲に配置される規制部材が、折り完了体における折曲部位でのねじれを規制可能に、構成されており、具体的には、規制部材は、組付孔間の部位の長さ寸法を、折り完了体の周方向側での一回転のねじれを不能とするような長さ寸法に、設定されている。すなわち、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、折り完了体が一回転する前に、規制部材が、折り完了体の外周側とともにねじれて張り、それ以上回転不能な状態とできることから、折り完了体の運搬後における車両への組付時に、折り完了体が、折曲部位で一回転するようにねじれることを、的確に、規制することができる。また、この規制部材は、帯状体として、両端側を、折り完了体から突出する突状部に係止させた状態で、さらに、突状部の前後両側となる位置に、エアバッグの膨張時にくるみ状態を解除可能なくるみ材を、折り完了体ごと、周囲に巻き付けられることにより、折り完了体に取り付けられる構成であることから、折り完了体への取り付けも、簡便であり、また、突状体の組付孔からの外れも、的確に防止することができる。そのため、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、折り完了体のねじれを規制する規制部材を備える構成であっても、嵩張らず、コンパクトな構成とすることができ、また、折り完了体を一回転するようにねじることができないことから、ねじれ状態が発生すれば、折り完了体の姿勢が不自然となって、直ちにねじれ状態を視認することが可能となり、折り完了体のねじれを的確に防止することができる。
【0008】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、簡便な構成として、折り完了体における運搬時の折曲部位の領域に、ねじれが生じることを規制することができる。
【0009】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置において、突状部のうち、少なくとも一方を、エアバッグの上縁側をボディ側に取付固定するための取付手段から、構成する場合、取付手段を挿通させる組付孔の開口形状を、折り完了体に沿った方向の中央側を幅広として、折り完了体に沿った方向の両端側にかけて狭幅とするように、構成すれば、取付手段を、組付孔に円滑に挿入させることができ、また、組付孔を単にスリット状とする場合と比較して、取付手段のボディ側への取付時に、組付孔の周縁において折り完了体に沿った方向の中央側の領域が、取付手段とボディ側の部材との間に進入し難く、この領域が、取付手段とボディ側の部材との間の領域に、介在されることを、的確に防止することができて、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、折り完了体を、合成樹脂製のケースに収納させて車両に搭載させる構成とし、規制部材を、隣接して配置されるケースの境界部位付近において、ケースの外周側に配置させる構成とすれば、ケース間の領域にねじれが発生することを、的確に防止することが可能となって、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、規制部材を、組付孔を有した取付片部と、取付片部間を連結する連結部と、を備える構成とし、連結部の幅寸法を、取付片部の幅寸法よりも小さく設定する構成とすれば、連結部の幅寸法を取付片部の幅寸法と略同一に設定する場合と比較して、軽量化が可能となるとともに、運搬時の折り完了体の折り曲げ作業が容易となり、また、この連結部が、周縁の部材と干渉することを抑制できて、好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1に示すように、膨張完了時に車両Vの窓(サイドウィンド)W1,W2を覆い可能に、エアバッグ30を、窓W1,W2の車内側における上縁側の収納部位Pに、収納させている。具体的には、エアバッグ30は、窓のW1,W2周縁となるフロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRを経てリヤピラー部RPの上方付近までの範囲を、収納部位Pとして、この収納部位Pに、折り畳まれて収納されている。なお、実施形態の場合、車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿うようにして1つの中間ピラー部CPを配設させる構成とされている。そして、膨張完了時のエアバッグ30は、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2とともに、中間ピラー部CPに配置される中間ピラーガーニッシュ7や、リヤピラー部RPに配置されるリヤピラーガーニッシュ8の一部の車内側も覆うように構成されている。
【0014】
頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1〜3に示すように、エアバッグ30と、エアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーター12と、インフレーター12をボディ1側に取り付ける取付ブラケット14と、エアバッグ30をボディ1側に取り付ける取付ブラケット18と、折り畳まれたエアバッグ30(折り完了体45)を収納するケース50F,50Rと、折り完了体45の車両Vへの組付時のねじれを規制可能とする規制部材58と、を備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ30(折り完了体45)、インフレーター12、ケース50F,50R、及び、規制部材58は、取付ブラケット14,18を含めて、車両Vへの搭載時に、車内側Iをエアバッグカバー10に覆われて、収納部位Pに収納されている(
図1〜3参照)。エアバッグカバー10は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ5の下縁5aと、ルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング6の下縁6aと、から構成されている。
【0015】
フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6とは、中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8とともに、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側Iに、取り付けられている。そして、フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6との下縁5a,6aから構成されるエアバッグカバー10は、展開膨張時のエアバッグ30を突出可能に、エアバッグ30に押されて、下縁5a,6a側を車内側Iに開き可能に、構成されている(
図3の二点鎖線参照)。
【0016】
インフレーター12は、エアバッグ30に膨張用ガスを供給するもので、
図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター12は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ30の後述する接続口部35に挿入させ、接続口部35の外周側に配置されるクランプ13を用いて、エアバッグ30に対して連結されている。また、インフレーター12は、インフレーター12を保持する取付ブラケット14と、取付ブラケット14をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト15と、を利用して、インナパネル2においてリヤピラー部RPの上方となる位置に、取り付けられている(
図1参照)。
【0017】
取付ブラケット18は、
図1〜3,5に示すように、エアバッグ30(バッグ本体31)の上縁31a側を窓W1,W2の上縁側をボディ側に取り付けるための部材である。実施形態の場合、取付ブラケット18は、
図6,7に示すように、板金製の一枚のプレートを曲げ加工して構成されるもので、ボディ1側に取り付けられる取付片部19と、取付片部19の元部側でバッグ本体31を連結させる連結板部23と、を有し、前後方向側で略対称形とされている。
【0018】
取付片部19は、後述する規制部材58の組付孔60を挿通させる取付手段を構成するもので、インナパネル2に沿うような略上下方向に沿った板状として、インナパネル2に固定させるための固定手段としてのボルト26を挿通可能な挿通孔20を、備えている。また、取付片部19の前後両縁側には、
図4に示すように、取付片部19のインナパネル2への取付時に、インナパネル2に形成される係止孔2bの周縁に係止されて仮止め可能な係止爪部21が、インナパネル2側となる車外側Oに突出しつつ上方に突出するように、形成されている(
図7参照)。
【0019】
連結板部23は、取付片部19の下端から下方に延びるように形成されるもので、実施形態の場合、前後方向側から見た状態で、取付片部19に対して、段差状として、取付片部19より車内側Iとなる位置に配置される構成である。この連結板部23には、エアバッグ30の後述する連結タブ43を連結させる連結孔24が、長手方向を前後方向に略沿わせるように長尺状に開口して形成されている。
【0020】
この取付ブラケット18は、エアバッグ30におけるバッグ本体31の上縁31a側から突出するように形成されるループ状の連結タブ43を、連結板部23に形成される連結孔24に挿通させることにより、連結タブ43を連結させる構成である。そして、取付ブラケット18は、取付片部19を、係止爪部21をインナパネル2に形成される係止孔2b周縁に係止させるようにして、インナパネル2の所定位置に仮固定し、固定手段としてのボルト26を、取付片部19に形成される挿通孔20に挿通させつつ、インナパネル2に固着されているナット2aに締結させて、取付片部19をインナパネル2に取り付けることにより、エアバッグ30(バッグ本体31)の上縁31a側を窓W1,W2の上縁側のボディ1側に取り付けることとなる(
図3参照)。
【0021】
エアバッグ30は、
図5に示すように、バッグ本体31と、バッグ本体31の上縁31aから上方に突設されて取付ブラケット18と連結される連結タブ43と、を備える構成とされている。
【0022】
バッグ本体31は、
図1の二点鎖線に示すように、インフレーター12からの膨張用ガスを内部に流入させて、折畳状態から展開して、窓W1,W2や、中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPにおける中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。バッグ本体31は、
図5に示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部32aと車外側壁部32bとを離すように膨張するガス流入部32と、車内側壁部32a,車外側壁部32b相互を結合させるように形成されて膨張用ガスを流入させない非流入部37と、を備えている。ガス流入部32は、実施形態の場合、保護膨張部33と、保護膨張部33に膨張用ガスを流入させるガス案内流路34と、接続口部35と、を備え、非流入部37は、周縁部38、板状部39、及び、閉じ部40を、備える構成とされている。
【0023】
ガス流入部32の保護膨張部33は、
図5に示すように、エアバッグ30の膨張完了時に、前席の側方の窓W1を覆う前保護部33aと、後席の側方の窓W2を覆う後保護部33bと、を備えている。ガス案内流路34は、バッグ本体31の上縁31a側において、前後方向に略沿って延びるように配設されるもので、インフレーター12から吐出される膨張用ガスGを、ガス案内流路34の下方に配置される保護膨張部33(前保護部33a,後保護部33b)に、案内するように構成されている。接続口部35は、実施形態の場合、ガス案内流路34の後端側において、バッグ本体31から後方に突出するように形成されるもので、インフレーター12を接続可能に、後端側を開口させて構成されている。前保護部33aと後保護部33bとは、エアバッグ30の膨張完了時に、平らに展開した状態からの前後方向側の幅寸法を狭められ、また、厚さを規制されて前後方向に延びる板状を維持できるように、内部領域に、閉じ部40を、配置させている。
【0024】
非流入部37における周縁部38は、ガス流入部32の外周縁を、接続口部35の後端側を除いて全域にわたって囲むように形成されている。板状部39は、前保護部33aと後保護部33bとの間に配置されるもので、略長方形板状とされている。
【0025】
実施形態の場合、バッグ本体31は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって形成されており、連結タブ43は、バッグ本体31と別体として構成されている。
【0026】
連結タブ43は、バッグ本体31の上縁31a側を車両Vのボディ1側のインナパネル2に取り付けるための部位であり、
図5に示すように、バッグ本体31の上縁31a側から突設されるようにして、前後方向に沿った複数個所(実施形態の場合、5箇所)に、配置されている。各連結タブ43は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した織布から形成されるもので、幅寸法を、取付ブラケット18における連結孔24に挿入可能に設定される帯状として、連結孔24に挿通させた状態の両端側を、バッグ本体31の上縁31a側に結合(縫着)されることにより、取付ブラケット18を連結させた状態で、バッグ本体31に連結される構成である。
【0027】
また、バッグ本体31は、前端から前方に延びて前端側をボディ1側に取り付けられる連結ベルト42を、備える構成とされている。この連結ベルト42も、バッグ本体31と別体として構成されている。連結ベルト42は、実施形態の場合、バッグ本体31の前端側において、平らに展開した状態の上下の中央よりやや上方となる位置から前方に延びるように配置されるもので、前端側を、連結タブ43と同様に、取付ブラケット18を利用して、フロントピラー部FPの部位におけるインナパネル2に、取付固定される構成である(
図1参照)。
【0028】
そして、エアバッグ30は、車内側壁部32aと車外側壁部32bとを重ねるように平らに展開した状態から、下縁31b側を上縁31a側に接近させ、前後方向に沿った長尺状の折り完了体45を形成するように折り畳まれて、車両Vに搭載される。実施形態では、エアバッグ30は、
図3に示すように、バッグ本体31において、上縁31a側の領域であるガス案内流路34の部位を、前後方向に沿った複数の折り目を付けて蛇腹折りするとともに、ガス案内流路34より下方となる保護膨張部33の部位を、下縁31b側を車外側に向かって巻くようにロール折りして、折り畳まれている。そして、実施形態では、バッグ本体31を折り畳んで、周囲に、所定箇所を破断可能な折り崩れ防止用のラッピング材を巻き付けた後に、上面側に露出しているバッグ本体31の上縁31a側に、取付ブラケット18の連結孔24に挿通された状態の連結タブ43を、縫合糸を用いて縫着させておく。
【0029】
折り畳まれたエアバッグ30(折り完了体45)を収納するケース50は、実施形態の場合、
図1及び2に示すように、折り完了体45の長手方向に沿って、前保護部33aの領域を収納するケース50Fと、後保護部33bの領域を収納するケース50Rと、の2つ配設される構成とされている。各ケース50F,50Rは、実施形態の場合、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)から形成されるもので、
図3に示すように、折り完了体45の車外側Oから上面側にかけてを覆うように構成されている。また、各ケース50(50F,50R)において、折り完了体45から突出する取付ブラケット18が配置される部位には、取付ブラケット18の連結板部23を係合させるための係合部51が、形成されている。係合部51には、連結板部23の車内側Iに配置されて連結板部23を係止させる係止爪部52と、取付ブラケット18の取付片部19を車外側上方に突出させるための挿通用開口53と、が、形成されている。係止爪部52の先端には、連結孔24に挿入される爪本体52aが、形成されており、取付ブラケット18は、折り完了体45をケース50内に収納させ、連結板部23を係止爪部52に係止された状態で、取付片部19の車外側上方への突出状態を維持されつつ、ケース50に対する移動を規制されて、ケース50に取り付けられる構成である。
【0030】
そして、これらのケース50F,50Rの内部に折り完了体45を収納させた状態で、ケース50F,50Rから突出している取付ブラケット18の取付片部19が、規制部材58を組み付ける突状部を、構成することとなる。具体的には、前側のケース50Fの後端近傍に配置される取付ブラケット18Fの取付片部19Fと、後側のケース50Rの前端近傍に配置される取付ブラケット18Rの取付片部19Rと、が、規制部材58に形成される組付孔60F,60R周縁に係止されることとなる。
【0031】
規制部材58は、可撓性を有した帯状体から構成されるもので、実施形態の場合、連結タブ43と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した一枚の織布から形成されている。規制部材58は、両端側に、折り完了体45(ケース50F,50R)から突出して形成される取付ブラケット18F,18Rの取付片部19F,19Rを係止可能な組付孔60F,60Rを有する構成とされるもので、具体的には、組付孔60F,60R(60)を有した2つの取付片部59F,59R(59)と、取付片部59F,59R間を連結する連結部63と、を備えている(
図8,9参照)。
【0032】
各取付片部59は、外形形状を、前後方向側(折り完了体45に沿った方向側)を幅広とした略長方形状として、構成されている。取付片部59に形成される組付孔60は、取付ブラケット18の取付片部19を、前後両縁側に突出して形成される係止爪部21も含めて、挿通可能に形成されるもので、開口形状を、折り完了体45に沿った方向の中央側(前後の中央側)を幅広として、折り完了体45に沿った方向の両端側(前後両端側)にかけて狭幅とするように、構成されている。実施形態の場合、組付孔60は、略菱形状に、形成されている。詳細には、実施形態では、組付孔60は、前後方向側の幅寸法を長く設定される略菱形状として、車内外方向側の開口幅寸法OW2を、前後方向側の開口幅寸法OW1の1/2程度に設定されて、構成されている(
図8参照)。この組付孔60の開口形状は、取付ブラケット18の取付片部19を、係止爪部21も含めて、円滑に挿通可能に設定されるもので、前後方向側の開口幅寸法OW1を、取付片部19の前後方向側の幅寸法H1(
図6参照)よりも若干大きく設定されている。また、取付片部59において、組付孔60の前後両側の領域は、後述するくるみ材としてのテープ材65を巻き付ける被巻付部位61とされるもので、テープ材65を巻き付け可能に、前後方向側の幅寸法を、テープ材65より大きく設定されている。
【0033】
連結部63は、幅寸法H2を、取付片部59における短手方向側の幅寸法H3よりも小さく設定されている(
図8参照)。具体的には、連結部63は、幅寸法H2を、取付片部59の短手方向側の幅寸法H3の1/3程度に設定されている。また、連結部63は、実施形態の場合、一方側の端縁(実施形態の場合、車両搭載時における車内側となる内縁)を、取付片部59の端縁に連ならせるようにして、他方側(車両搭載時における車外側となる外縁側)を取付片部59に対して凹ませるようにして、構成されている。
【0034】
規制部材58において、組付孔60F,60R間の部位の長さ寸法は、折り完了体45の周方向側での一回転のねじれを不能とするような長さ寸法に、設定されている。詳細には、組付孔60F,60Rの中心間部位の長さ寸法L1は、運搬時に、ケース50F,50R間の部位での折り完了体45の折り曲げを許容して、かつ、ケース50F,50R間の部位での折り完了体45の一回転のねじれを不能とするような寸法に設定されるもので、具体的には、折り完了体45において、ケース50F,50Rから突出している取付片部19F,19Rの中心間の離隔距離D1(
図2参照)と、折り完了体45の軸直交方向側の断面における周長D2(
図10参照)と、の和程度に、設定されており、この長さ寸法L1は、折り完了体45の周方向側での半回転程度のねじれを許容するものである。
【0035】
この規制部材58は、ケース50F,50Rから突出している各取付ブラケット18F,18Rの取付片部19F,19Rを、組付孔60F,60Rに挿入させるようにして、ケース50F,50Rの外周側を覆うように配置させた状態で(
図12参照)、各取付片部59F,59Rにおいて、各組付孔60F,60Rの前後両側の被巻付部位61に、エアバッグ30の膨張時にくるみ状態を解除可能なくるみ材、実施形態の場合、エアバッグ30の膨張時に破断可能なテープ材65を、ケース50F,50Rと折り完了体45とともに巻き付けることにより、
図11に示すように、折り完了体45の周囲に配置される構成である。
【0036】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、バッグ本体31を、車内側壁部32aと車外側壁部32bとを重ねるように平らに展開した状態から、下縁31b側を上縁31a側に接近させるように折り畳み、前後方向に沿うような長尺状の折り完了体45を形成する。そして、折り完了体45の形成後には、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、折り完了体45の周囲の所定箇所をくるんでおく。
【0037】
次いで、折り完了体45の上面側に露出しているバッグ本体31の上縁31a側に、取付ブラケット18の連結孔24に挿通された状態の連結タブ43を、縫合糸を用いて縫着させる。その後、折り完了体45を、下方から内部に収納させるようにして、ケース50F,50R内に収納させ、各取付ブラケット18の連結板部23を係止爪部52に係止させるようにして、取付片部19をケース50F,50Rから突出させる。そして、規制部材58を、組付孔60F,60Rに、ケース50F,50Rから突出している各取付ブラケット18F,18Rの取付片部19F,19Rを挿入させるようにして、ケース50F,50Rの外周側を覆うように配置させ(
図10参照)、各取付片部59F,59Rにおける組付孔60F,60Rの前後の部位(被巻付部位)を、ケース50F,50R及び折り完了体45とともに、テープ材65によってくるむ(
図11参照)。次いで、取付ブラケット14を取付済みのインフレーター12を、クランプ13を利用して、エアバッグ30の接続口部35と接続させれば、エアバッグ組付体AMを形成することができる(
図12参照)。
【0038】
実施形態では、このエアバッグ組付体AMを、
図12の二点鎖線から実線で示すように、ケース50F,50Rを外側に配置させる(規制部材58を折曲部位XPの外周側に配置させる)ようにして、ケース50F,50R間の部位(規制部材58の配置部位)で折り曲げれば、エアバッグ組付体AMをコンパクトにすることができる。頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載時には、
図12の実線から二点鎖線に示すように、エアバッグ組付体AMを、折曲部位XP(規制部材58の配置部位)での折りを解消するように、折り曲げ状態から復元させる。そして、取付ブラケット14,18を、ボディ1側のインナパネル2の所定箇所に配置させて、ボルト15,26止めし、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター12に結線し、フロントピラーガーニッシュ5やルーフヘッドライニング6をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0039】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター12が作動されれば、インフレーター12から吐出される膨張用ガスがバッグ本体31内に流入して、膨張するバッグ本体31が、規制部材58を取り付けているテープ材65や図示しないラッピング材を破断させつつ、エアバッグカバー10を押し開いて収納部位Pから下方へ突出しつつ展開し、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2や中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPの一部の車内側を覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0040】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ30を折り畳んで形成される折り完了体45における運搬時の折曲部位XPの周囲に配置される規制部材58が、折り完了体45における折曲部位XPでのねじれを規制可能に、構成されており、具体的には、規制部材58は、組付孔60F,60R間の部位(連結部63)の長さ寸法L1を、折り完了体45の周方向側での一回転のねじれを不能とするような長さ寸法に、設定されている。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、折り完了体45が一回転する前に、規制部材58が、折り完了体45の外周側とともにねじれて張り、それ以上回転不能な状態とできることから、折り完了体45の運搬後における車両Vへの組付時に、折り完了体45が、折曲部位XPで一回転するようにねじれることを、的確に、規制することができる。また、この規制部材58は、帯状体として、両端側を、折り完了体45から突出する突状部としての取付片部19F,19Rに係止させた状態で、さらに、取付片部19F,19Rの前後両側となる位置に、エアバッグ30の膨張時に破断可能なくるみ材としてのテープ材65を、折り完了体45ごと、周囲に巻き付けられることにより、折り完了体45に取り付けられる構成であることから、折り完了体45への取り付けも、簡便であり、また、取付片部19F,19Rの組付孔60F,60Rからの外れも、的確に防止することができる。そのため、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、折り完了体45のねじれを規制する規制部材58を備える構成であっても、嵩張らず、コンパクトな構成とすることができ、また、折り完了体45を一回転するようにねじることができない(実施形態の場合、折り完了体45を半回転程度にしかねじれない)ことから、ねじれ状態が発生すれば、折り完了体45の姿勢が不自然となって、見えるべき取付片部19が見えなかったり、あるいは、取付片部19が反対側に配置されて見えたりして、直ちにねじれ状態を視認することが可能となり、折り完了体45のねじれを的確に防止することができる。
【0041】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、簡便な構成として、折り完了体45における運搬時の折曲部位XPの領域に、ねじれが生じることを規制することができる。
【0042】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、規制部材58の組付孔60を挿通させる突状部が、エアバッグ30の上縁31a側をボディ1側に取付固定するための取付手段としての取付ブラケット18の取付片部19から構成されており、組付孔60の開口形状が、折り完了体45に沿った方向の中央側(前後の中央)を幅広として、折り完了体45に沿った方向の両端側(前後両端側)にかけて狭幅とするように、構成されている。そのため、取付片部19を、組付孔60に円滑に挿入させることができ、また、組付孔を単にスリット状とする場合と比較して、取付片部19のボディ1側のインナパネル2への取付時(ボルト26の締結作業時)に、組付孔60の周縁における前後方向の中央側の部位が、取付片部19とボディ1側のインナパネル2との間に進入し難く、組付孔60の周縁における前後方向の中央側の部位が、取付片部19とボディ1側のインナパネル2との間の領域に、介在されることを、的確に防止することができる。なお、このような点を考慮しなければ、取付手段を挿通させる構成とする場合にも、組付孔をスリット状に形成してもよい。また、実施形態では、組付孔60は、菱形状とされているが、組付孔の外形形状は実施形態に限られるものではなく、例えば、前後の中央を幅広として前後両端側にかけて狭幅とされるような楕円形状としてもよい。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、規制部材58の両端側の組付孔60が、ともに、エアバッグ30の上縁31a側をボディ1側に取付固定するための取付ブラケット18の取付片部19を挿通させる構成とされているが、組付孔を挿通させる突状部としては、ケースに別途設けられる突起状の部位等を使用してもよい。さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ30の上縁31a側をボディ1側のインナパネル2に取り付ける取付手段として、インナパネル2にボルト26止めされる取付ブラケット18の取付片部19を使用しているが、取付手段としては、実施形態に限られるものではなく、例えば、エアバッグの上縁から延びる取付片部の表裏に、2枚の板状体を配置させ、この板状体を相互にかしめて取付片部に固定させるタイプの取付ブラケットや、エアバッグの上縁から延びる取付片部に、インナパネルに固定させる取付クリップを固着させた構成のもの等も、使用することができる。
【0043】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、折り完了体45を、合成樹脂製のケース50F,50Rに収納させて車両Vに搭載させる構成とし、規制部材58を、隣接して配置されるケース50F,50Rの境界部位付近において、ケース50F,50Rの外周側に配置させる構成であり、折り完了体45におけるケース50F,50R間の領域にねじれが発生することを、的確に防止することができる。
【0044】
さらにまた、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、規制部材58が、取付片部59F,59R間を連結している連結部63の幅寸法を、取付片部59F,59の短手方向側の幅寸法よりも小さく設定されていることから、連結部の幅寸法を取付片部の幅寸法と略同一に設定する場合と比較して、軽量化が可能となるとともに、運搬時の折り完了体45の折り曲げ作業が容易となり、また、この連結部63が、周縁の部材と干渉することも抑制できる。なお、実施形態では、連結部63は、車両搭載時における車内側となる内縁を、取付片部59の端縁に連ならせるようにして、車両搭載時における車外側となる外縁側を取付片部59に対して凹ませるようにして、構成されているが、規制部材の外形形状は、実施形態に限られるものではなく、連結部を、車両搭載時に車外側となる外縁側を取付片部に対して凹ませるように構成してもよく、あるいは、取付片部に対して、内縁側と外縁側との両側を凹ませるように構成してもよい。
【0045】
なお、実施形態では、エアバッグの膨張時にくるみ状態を解除可能なくるみ材として、エアバッグの膨張時に破断可能なテープ材を使用しているが、くるみ材としては、例えば、エアバッグの膨張時に結束状態を解除可能な結束バンド等を使用してもよい。