特許第6772994号(P6772994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772994
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】構造物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20201012BHJP
   C23C 4/04 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   C23C4/04
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-182307(P2017-182307)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2018-82155(P2018-82155A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-219788(P2016-219788)
(32)【優先日】2016年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】清原 正勝
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−98143(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0118939(KR,A)
【文献】 国際公開第2016/129457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C23C 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物の多結晶体を主成分とし、前記多結晶体における平均結晶子サイズが100ナノメートル未満である構造物であって、
X線回折により回折角2θ=13.8°付近において検出される菱面体晶のピーク強度をr1とし、回折角2θ=36.1°付近において検出される菱面体晶のピーク強度をr2とし、割合γ1をγ1(%)=r2/r1×100としたときに、前記割合γ1は、0%以上100%未満である構造物。
【請求項2】
前記割合γ1は、80%未満である請求項1記載の構造物。
【請求項3】
前記構造物は、
斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物を含まない、または、
斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物をさらに含み、X線回折により回折角2θ=16.1°付近において検出される斜方晶のピーク強度をоとし、菱面体晶に対する斜方晶の割合をγ2(%)=о/r1×100としたときに、前記割合γ2は、0%以上100%未満である請求項1または2に記載の構造物。
【請求項4】
菱面体晶の結晶構造を有する前記イットリウムオキシフッ化物は、YOFである請求項1〜3のいずれか1つに記載の構造物。
【請求項5】
斜方晶の結晶構造を有する前記イットリウムオキシフッ化物は、1:1:2のYOFである請求項3記載の構造物。
【請求項6】
前記割合γ2は、85%以下である請求項3記載の構造物。
【請求項7】
前記割合γ2は、70%以下である請求項3記載の構造物。
【請求項8】
前記割合γ2は、30%以下である請求項3記載の構造物。
【請求項9】
前記平均結晶子サイズは、50ナノメートル未満である請求項1〜8のいずれか1つに記載の構造物。
【請求項10】
前記平均結晶子サイズは、30ナノメートル未満である請求項1〜8のいずれか1つに記載の構造物。
【請求項11】
前記平均結晶子サイズは、20ナノメートル未満である請求項1〜8のいずれか1つに記載の構造物。
【請求項12】
X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記r1に対する前記εの割合、および前記r2に対する前記εの割合の少なくともいずれかが1%未満である請求項1〜11のいずれか1つに記載の構造物。
【請求項13】
X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記r1に対する前記εの割合、および前記r2に対する前記εの割合の少なくともいずれかが0%である請求項1〜11のいずれか1つに記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などのプラズマ照射環境下で用いられる部材として、その表面に耐プラズマ性が高い被膜を形成したものが用いられている。被膜には、例えば、アルミナ(Al)、イットリア(Y)等の酸化物、あるいは、窒化アルミニウム(AlN)などの窒化物が用いられる。
【0003】
一方、酸化物系セラミックスでは、CF系ガスとの反応によるフッ化に伴い、膜の体積が膨張し、クラック等が発生し、結果としてパーティクルの発生につながるとして、元々フッ化されているフッ化イットリウム(YF)等のフッ化物系セラミックスを用いる提案がなされている(特許文献1)。
【0004】
また、YFでは、F系プラズマに対する耐性は高いが、Cl系プラズマに対する耐性が不十分である、あるいは、フッ化物の化学的安定性に疑問がある、などとして、オキシフッ化イットリウム(YOF)の被膜または焼結体を用いることも提案されている(特許文献2、3)。
【0005】
これまで、YFやYOFについては、溶射膜および焼結体での検討がなされてきた。しかし、溶射膜や焼結体においては、耐プラズマ性が不十分なことがあり、さらに耐プラズマ性を高めることが求められている。
例えば、希土類元素のオキシフッ化物を原料として溶射膜を形成することが検討されている(特許文献4)。しかし、溶射では、加熱時に大気中の酸素によって酸化が生じる。そのため、得られた溶射膜中にYが混入し、組成の制御が難しいことがある。また、溶射膜には、依然として緻密性に課題がある。また、プラズマエッチングにおいては、溶射等によってYFコーティングされたチャンバを用いると、エッチング速度がドリフトし、安定しないという課題もある(特許文献5)。また、Yを含む膜を形成した後に、その膜をプラズマ処理などのアニールによってフッ化する方法も検討されている(特許文献6)。しかし、この方法では、一度形成されたYを含む膜にフッ化処理が施されるため、フッ化により膜の体積が変化して基材から剥離する、あるいは膜にクラックが入る等の不具合が生じる恐れがある。また、膜全体の組成の制御が困難なことがある。また、溶射や焼結体では、加熱時のフッ化物原料微粒子の熱分解によりFガスが放出され安全性に課題がある。
【0006】
一方、特許文献7には、Yについて、エアロゾルデポジション法により常温で耐プラズマ性の構造物を形成可能であることが開示されている。しかし、イットリウムオキシフッ化物を用いたエアロゾルデポジション法については、十分な検討がなされてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−140950号公報
【特許文献2】特開2014−009361号公報
【特許文献3】特開2016−098143号公報
【特許文献4】特許第5927656号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/0126036号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2016/273095号明細書
【特許文献7】特開2005−217351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
イットリウムオキシフッ化物を含む構造物においては、耐プラズマ性にばらつきが生じることがある。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、耐プラズマ性を高めることができる構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物の多結晶体を主成分とし、前記多結晶体における平均結晶子サイズが100ナノメートル未満である構造物であって、X線回折により回折角2θ=13.8°付近において検出される菱面体晶のピーク強度をr1とし、回折角2θ=36.1°付近において検出される菱面体晶のピーク強度をr2とし、割合γ1をγ1(%)=r2/r1×100としたときに、前記割合γ1は、0%以上100%未満である構造物である。
第2の発明は、第1の発明において、前記割合γ1は、80%未満である構造物である。
【0010】
本願発明者らは、菱面体晶のイットリウムオキシフッ化物の所定のピーク強度比(割合γ1)と、耐プラズマ性能とに相関があることを見出した。割合γ1が100%以上の場合には、耐プラズマ性能が低くなることを見出した。割合γ1を0%以上100%未満、好ましくは80%未満とすることで、実用上優れた耐プラズマ性能を発現させることが可能となる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記構造物は、斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物を含まない、または、斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物をさらに含み、回折角2θ=16.1°付近において検出される斜方晶のピーク強度をоとし、菱面体晶に対する斜方晶の割合をγ2(%)=о/r1×100としたときに、前記割合γ2は、0%以上100%未満である構造物である。
本願発明者らは、構造物中の化合物あるいは結晶相の割合(割合γ2)と耐プラズマ性との間に相関があることを見出した。割合γ2が100%以上の場合には、耐プラズマ性が低くなることを見出した。割合γ2を0%以上100%未満とすることにより、耐プラズマ性を高めることができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、菱面体晶の結晶構造を有する前記イットリウムオキシフッ化物は、YOFである構造物である。
第5の発明は、第3の発明において、斜方晶の結晶構造を有する前記イットリウムオキシフッ化物は、1:1:2のYOFである構造物である。
これらの構造物によれば、耐プラズマ性を高めることができる。
【0013】
第6の発明は、第3の発明において、前記割合γ2は、85%以下である構造物である。
第7の発明は、第3の発明において、前記割合γ2は、70%以下である構造物である。
第8の発明は、第3の発明において、前記割合γ2は、30%以下である構造物である。
これらの構造物によれば、耐プラズマ性をさらに高めることができる。
【0014】
第9の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記平均結晶子サイズは、50ナノメートル未満である構造物である。
第10の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記平均結晶子サイズは、30ナノメートル未満である構造物である。
第11の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記平均結晶子サイズは、20ナノメートル未満である構造物である。
これらの構造物によれば、平均結晶子サイズが小さいことにより、プラズマによって構造物から発生するパーティクルを小さくすることができる。
【0015】
第12の発明は、第1〜第11のいずれか1つの発明において、X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記r1に対する前記εの割合、および前記r2に対する前記εの割合の少なくともいずれかが1%未満である構造物である。
この構造物によれば、構造物に含まれるYが微少であるため、CF系プラズマによるフッ化が抑制され、耐プラズマ性をさらに高めることができる。
【0016】
第13の発明は、第1〜第11のいずれか1つの発明において、X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記r1に対する前記εの割合、および前記r2に対する前記εの割合の少なくともいずれかが0%である。
この構造物によれば、Yが実質的に含まれないため、CF系プラズマによるフッ化が抑制され、耐プラズマ性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物を含み、耐プラズマ性を高めることができる構造物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る構造物を有する部材を例示する断面図である。
図2】構造物の原料を例示する表である。
図3】構造物のサンプルを例示する表である。
図4図4(a)及び図4(b)は、構造物のサンプルにおけるX線回折を示すグラフ図である。
図5】構造物のサンプルにおけるX線回折を示すグラフ図である。
図6】実施形態に係る別の構造物を有する部材を例示する断面図である。
図7】実施形態に係る構造物を例示する写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る構造物を有する部材を例示する断面図である。
図1に示すように、部材10は、例えば基材15と、構造物20と、を有する複合構造物である。
部材10は、例えば、チャンバを有する半導体製造装置用の部材であり、チャンバ内部に設けられる。チャンバの内部にはガスが導入されプラズマが生じるため、部材10には耐プラズマ性が要求される。なお、部材10(構造物20)は、チャンバの内部以外に用いられてもよいし、半導体製造装置は、アニール、エッチング、スパッタリング、CVDなどの処理を行う任意の半導体製造装置(半導体処理装置)を含む。また、部材10(構造物20)は、半導体製造装置以外の部材に用いられてもよい。
【0020】
基材15は、例えばアルミナを含む。ただし、基材15の材料は、アルミナなどのセラミックスに限定されず、石英、アルマイト、金属あるいはガラスなどであってもよい。なお、この例では、基材15と構造物20とを有する部材10について説明している。基材15を設けず構造物20のみの態様も実施形態に包含される。また、基材15の表面(構造物20が形成される面)の算術平均粗さRa(JISB0601:2001)は、例えば5マイクロメータ(μm)未満、好ましくは1μm未満、より好ましくは0.5μm未満である。
【0021】
構造物20は、菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物の多結晶体を含む。構造物20の主成分は、菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物(YOF)の多結晶体である。
【0022】
本願明細書において、構造物の主成分とは、構造物のX線回折(X−ray Diffraction:XRD)による定量又は準定量分析により、構造物20に含まれる他の化合物よりも相対的に多く含まれる化合物をいう。例えば、主成分は、構造物中に最も多く含まれる化合物であり、構造物において主成分が占める割合は、体積比又は質量比で50%よりも大きい。主成分が占める割合は、より好ましくは70%より大きく、90%より大きいことも好ましい。主成分が占める割合が100%であってもよい。
【0023】
なお、イットリウムオキシフッ化物とは、イットリウム(Y)と酸素(O)とフッ素(F)との化合物である。イットリウムオキシフッ化物としては、例えば、1:1:1のYOF(モル比がY:O:F=1:1:1)、1:1:2のYOF(モル比がY:O:F=1:1:2)が挙げられる。なお、本願明細書において、Y:O:F=1:1:2という範囲は、Y:O:Fが正確に1:1:2である組成に限られず、イットリウムに対するフッ素のモル比(F/Y)が1よりも大きく3未満の組成を含んでもよい。例えば、Y:O:F=1:1:2のイットリウムオキシフッ化物として、Y(モル比がY:O:F=5:4:7)、Y(モル比がY:O:F=6:5:8)、Y(モル比がY:O:F=7:6:9)、Y171423(モル比がY:O:F=17:14:23)などが挙げられる。また、本願明細書において、単に「YOF」という場合には、Y:O:F=1:1:1を意味し、「1:1:2のYOF」という場合には、上述のY:O:F=1:1:2を意味する。なお、イットリウムオキシフッ化物という範囲には、上記以外の組成が含まれてもよい。
【0024】
図1の例では、構造物20は、単層構造であるが、基材15の上に形成される構造物は、多層構造であってもよい(図6参照)。例えば、基材15と、図1における構造物20に相当する層21と、の間に別の層22(例えばYを含む層)が設けられてもよい。構造物20に相当する層21が、多層構造の構造物20aの表面を形成する。
【0025】
構造物20は、例えばイットリウムオキシフッ化物を含む原料により形成される。この原料は、例えばイットリアをフッ化処理することによって製造される。この製造工程により、原料は、酸素含有量が多いものと、酸素含有量が少ないものと、の2種類に大別される。酸素含有量が多い原料は、例えばYOF、1:1:2のYOF(例えばY、Yなど)を含む。酸素含有量が多い原料は、YOFのみを含むものでもよい。また、酸素含有量が少ない原料は、例えば、Y、Yなどに加えYFを含み、YOFを含まない。十分なフッ化処理がなされた場合には、原料は、YFのみを含むようになり、イットリウムオキシフッ化物を含まない場合もある。本実施形態において、構造物は、菱面体晶のイットリウムオキシフッ化物を含んでいる。原料や構造物が菱面体晶のイットリウムオキシフッ化物を含むとは、X線回折において回折角2θ=13.8°付近及び回折角2θ=36.1°付近の少なくともいずれかにピークが検出されることをいうものとする。
【0026】
半導体製造装置などに用いられる構造物においては、YF、Y、Yなどは、経年的に酸化され、YOFに変化することがある。また、YOFは、他の組成よりも耐食性に優れるとの報告もある(特許文献3)。
【0027】
本願発明者らは、イットリウムオキシフッ化物を主成分とする構造物において、耐プラズマ性と構造物の結晶構造との間には相関があり、結晶構造を制御することによって耐プラズマ性を高くすることができることを見出した。構造物に含まれるイットリウムオキシフッ化物の結晶構造を制御することにより、耐プラズマ性を向上させることができる。
【0028】
具体的には、実施形態に係る構造物20の結晶構造は以下の如くである。
構造物20は、菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物の多結晶体を含む。また、構造物20のX線回折において、菱面体晶のピーク強度に関する割合γ1は、0%以上100%未満、好ましくは80%未満である。
【0029】
ここで、割合γ1は、以下の方法により算出される。
イットリウムオキシフッ化物を含む構造物20に対してθ−2θスキャンでX線回折を行う。構造物20に対するX線回折により、回折角2θ=13.8°付近において検出される菱面体晶のピーク強度をr1とする。構造物20に対するX線回折により、回折角2θ=36.1°付近において検出される菱面体晶のピーク強度をr2とする。このとき、γ1(%)=r2/r1×100とする。例えば、割合γ1は、菱面体晶のイットリウムオキシフッ化物の配向度を表す。
【0030】
なお、回折角2θ=13.8°付近のピーク、および回折角2θ=36.1°付近のピークは、それぞれ、例えば菱面体晶のYOFに起因すると考えられる。
また、回折角2θ=13.8°付近とは、例えば13.8±0.4°程度(13.4°以上14.2°以下)であり、回折角2θ=36.1°付近とは、例えば36.1°±0.4°程度(35.7°以上36.5°以下)である。
【0031】
また、構造物20は、菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物を含み、かつ、斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物を含まない。
または、構造物20は、菱面体晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物、及び、斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物を含み、菱面体晶に対する斜方晶の割合γ2が0%以上100%未満である。
【0032】
ここで、割合γ2は、以下の方法により算出される。
イットリウムオキシフッ化物を含む構造物20に対してθ−2θスキャンでX線回折(X−ray Diffraction:XRD)を行う。X線回折により回折角2θ=13.8°付近において検出される菱面体晶のピーク強度をr1とする。X線回折により回折角2θ=16.1°付近において検出される斜方晶のピーク強度をоとする。このとき、γ2(%)=о/r1×100とする。
【0033】
なお、回折角2θ=16.1°付近のピークは、斜方晶の1:1:2のYOF(例えば斜方晶のYまたはYの少なくともいずれか)に起因すると考えられる。
また、回折角2θ=16.1°付近とは、例えば16.1±0.4°程度(15.7°以上16.5°以下)である。
【0034】
菱面体晶に対する斜方晶の割合γ2は、好ましくは85%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは30%以下、最も好ましくは0%である。本明細書において、γ2=0%とは、測定における検出下限以下であることをいい、斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物を実質的に含まないことと同義である。
【0035】
構造物に含まれるイットリウムオキシフッ化物の多結晶において、平均結晶子サイズは、例えば100nm未満、好ましくは50nm未満、さらに好ましくは30nm未満、最も好ましくは20nm未満である。平均結晶子サイズが小さいことにより、プラズマによって発生するパーティクルを小さくすることができる。
【0036】
なお、結晶子サイズの測定には、X線回折を用いることができる。
平均結晶子サイズとして、以下のシェラーの式により、結晶子サイズを算出することができる。
D=Kλ/(βcosθ)
ここで、Dは結晶子サイズであり、βはピーク半値幅(ラジアン(rad))であり、θはブラッグ角(rad)であり、λは測定に用いたX線の波長である。
シェラーの式において、βは、β=(βobs−βstd)により算出される。βobsは、測定試料のX線回折ピークの半値幅であり、βstdは、標準試料のX線回折ピークの半値幅である。Kはシェラー定数である。
イットリウムオキシフッ化物において、結晶子サイズの算出に用いることができるX線回折ピークは、例えば、例えば、回折角2θ=28°付近のミラー面(006)に起因するピーク、回折角2θ=29°付近のミラー面(012)に起因するピーク、回折角2θ=47°付近のミラー面(018)に起因するピーク、回折角2θ=48°付近のミラー面(110)に起因するピーク等である。
なお、TEM観察などの画像から、結晶子サイズを算出してもよい。例えば、平均結晶子サイズには、結晶子の円相当直径の平均値を用いることができる。
【0037】
また、互いに隣接する結晶子同士の間隔は、好ましくは0nm以上10nm未満である。隣接する結晶子同士の間隔とは、結晶子同士が最も近接した間隔のことであり、複数の結晶子から構成される空隙を含まない。結晶子同士の間隔は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いた観察によって得られる画像から求めることができる。なお、図7に実施形態に係る構造物20の一例を観察したTEM像を示す。構造物20は複数の結晶子20c(結晶粒子)を含む。
【0038】
また、例えば構造物20は、実質的にYを含まない。構造物20に対してθ−2θスキャンでX線回折を行ったときに、回折角2θ=29.1°付近において検出されるYに起因するピーク強度をεとする。このとき、r1に対するεの割合(ε/r1)およびr2に対するεの割合(ε/r2)の少なくともいずれかは、1%未満、より好ましくは0%である。構造物20がYを含まない、または、構造物20に含まれるYが微少であることにより、CF系プラズマによるフッ化が抑制され、耐プラズマ性をさらに高めることができる。なお、2θ=29.1°付近とは、例えば29.1±0.4°程度(28.7°以上29.5°以下)である。
【0039】
実施形態に係る構造物20は、例えば、基材15の表面に脆性材料等の微粒子を配置し、該微粒子に機械的衝撃力を付与することで形成することができる。ここで、「機械的衝撃力の付与」方法には、例えば、高速回転する高硬度のブラシやローラーあるいは高速に上下運動するピストンなどを用いる、爆発の際に発生する衝撃波による圧縮力を利用する、または、超音波を作用させる、あるいは、これらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
また、実施形態に係る構造物20は、例えば、エアロゾルデポジション法で形成することも好ましい。
「エアロゾルデポジション法」は、脆性材料などを含む微粒子をガス中に分散させた「エアロゾル」をノズルから基材に向けて噴射し、金属やガラス、セラミックスやプラスチックなどの基材に微粒子を衝突させ、この衝突の衝撃により脆性材料微粒子に変形や破砕を起させしめてこれらを接合させ、基材上に微粒子の構成材料を含む構造物(例えば層状構造物または膜状構造物)をダイレクトに形成させる方法である。この方法によれば、特に加熱手段や冷却手段などを必要とせず、常温で構造物の形成が可能であり、焼結体と同等以上の機械的強度を有する構造物を得ることができる。また、微粒子を衝突させる条件や微粒子の形状、組成などを制御することにより、構造物の密度や機械強度、電気特性などを多様に変化させることが可能である。
【0041】
なお、本願明細書において「多結晶」とは、結晶粒子が接合・集積してなる構造体をいう。結晶粒子の径は、例えば5ナノメートル(nm)以上である。
【0042】
また、本願明細書において「微粒子」とは、一次粒子が緻密質粒子である場合には、粒度分布測定や走査型電子顕微鏡などにより同定される平均粒径が5マイクロメータ(μm)以下のものをいう。一次粒子が衝撃によって破砕されやすい多孔質粒子である場合には、平均粒径が50μm以下のものをいう。
【0043】
また、本願明細書において「エアロゾル」とは、ヘリウム、窒素、アルゴン、酸素、乾燥空気、これらを含む混合ガスなどのガス(キャリアガス)中に前述の微粒子を分散させた固気混合相体を指し、一部「凝集体」を含む場合もあるが、実質的には微粒子が単独で分散している状態をいう。エアロゾルのガス圧力と温度は任意であるが、ガス中の微粒子の濃度は、ガス圧を1気圧、温度を摂氏20度に換算した場合に、吐出口から噴射される時点において0.0003mL/L〜5mL/Lの範囲内であることが構造物の形成にとって望ましい。
【0044】
エアロゾルデポジションのプロセスは、通常は常温で実施され、微粒子材料の融点より十分に低い温度、すなわち摂氏数100度以下で構造物の形成が可能であるところにひとつの特徴がある。
なお、本願明細書において「常温」とは、セラミックスの焼結温度に対して著しく低い温度で、実質的には0〜100℃の室温環境をいう。
本願明細書において「粉体」とは、前述した微粒子が自然凝集した状態をいう。
【0045】
以下、本願発明者らの検討について説明する。
図2は、構造物の原料を例示する表である。
本検討においては、図2に示した原料F1〜F8の8種類の粉体が用いられる。これらの原料は、イットリウムオキシフッ化物の粉体であり、YOF、および1:1:2のYOF(例えばY、Yなど)の少なくともいずれかを含む。また、各原料は、実質的にYF及びYを含まない。
【0046】
なお、YFを実質的に含まないとは、X線回折において、回折角2θ=24.3°付近または25.7°付近のYFに起因するピーク強度が、回折角2θ=13.8°付近または36.1°付近のYOFに起因するピーク強度の1%未満であることをいう。または、YFを実質的に含まないとは、X線回折において、回折角2θ=24.3°付近または25.7°付近のYFに起因するピーク強度が、回折角2θ=32.8°付近の1:1:2のYOFに起因するピーク強度の1%未満であることをいう。なお、2θ=24.3°付近とは、例えば24.3±0.4°程度(23.9°以上24.7°以下)である。2θ=25.7°付近とは、例えば25.7±0.4°程度(25.3°以上26.1°以下)である。2θ=32.8°付近とは、例えば32.8°±0.4°程度(32.4°以上33.2°以下)である。
また、Yを実質的に含まないとは、X線回折において、回折角2θ=29.1°付近のYに起因するピーク強度が、回折角2θ=13.8°付近または36.1°付近のYOFに起因するピーク強度の1%未満であることをいう。または、Yを実質的に含まないとは、X線回折において、回折角2θ=29.1°付近のYに起因するピーク強度が、回折角2θ=32.8°付近の1:1:2のYOFに起因するピーク強度の1%未満であることをいう。
【0047】
原料F1〜F8は、図2に示すメジアン径(D50(μm))のように、粒径において互いに異なる。なお、メジアン径は、各原料の粒子径の累積分布における50%の径である。各粒子の径は、円形近似にて求めた直径が用いられる。
これらの原料と、製膜条件(キャリアガスの種類及び流量)と、の組み合わせを変化させて複数の構造物(層状構造物)のサンプルを作製し、耐プラズマ性の評価を行った。なお、この例では、サンプルの作製にはエアロゾルデポジション法を用いている。
【0048】
図3は、構造物のサンプルを例示する表である。
図3に示すように、キャリアガスには、窒素(N)又はヘリウム(He)が用いられる。エアロゾルは、エアロゾル発生器内において、キャリアガスと原料粉体(原料微粒子)とが混合されることで得られる。得られたエアロゾルは、圧力差によってエアロゾル発生器に接続されたノズルから、製膜チャンバの内部に配置された基材に向けて噴射される。この際、製膜チャンバ内の空気は真空ポンプによって外部に排気されている。キャリアガスの流量は、窒素の場合、5(リットル/分:L/min)〜10(L/min)であり、ヘリウムの場合、3(L/min)〜5(L/min)である。
【0049】
サンプル1〜10の構造物のそれぞれは、主にイットリウムオキシフッ化物の多結晶体を含み、その多結晶体における平均結晶子サイズは、いずれも100nm未満であった。
【0050】
なお、結晶子サイズの測定には、X線回折を用いた。
XRD装置としては「X‘PertPRO/パナリティカル製」を使用した。管電圧45kV、管電流40mA、Step Size 0.033°、Time per Step 336秒以上を使用した。
平均結晶子サイズとして、上述のシェラーの式による結晶子サイズを算出した。シェラーの式中のKの値として0.94を用いた。
【0051】
イットリウムのオキシフッ化物の結晶相の主成分の測定には、X線回折を用いた。XRD装置としては「X‘PertPRO/パナリティカル製」を使用した。X線Cu−Kα(波長1.5418Å)、管電圧45kV、管電流40mA、Step Size 0.033°、Time per Step 100秒以上、を使用した。主成分の算出にはXRDの解析ソフト「High Score Plus/パナリティカル製」を使用した。ICDDカード記載の準定量値(RIR=Reference Intensity Ratio)を用いて、回折ピークに対してピークサーチを行った際に求められる相対強度比により算出した。なお、積層構造物である場合における、イットリウムのオキシフッ化物の主成分の測定においては、薄膜XRDにより、最表面から1μm未満の深さ領域の測定結果を用いることが望ましい。
【0052】
また、X線回折を用いて、イットリウムのオキシフッ化物の結晶構造を評価した。XRD装置としては「X‘PertPRO/パナリティカル製」を使用した。X線Cu−Kα(波長1.5418Å)、管電圧45kV、管電流40mA、Step Size 0.033°を使用した。なお、測定精度を高めるために、Time per Step 700秒以上とすることが好ましい。
【0053】
イットリウムのオキシフッ化物における、菱面体晶のピーク強度に関する割合γ1は、回折角2θ=13.8°付近のイットリウムのオキシフッ化物の菱面体晶に起因するピーク強度(r1)と、回折角2θ=36.1°付近のイットリウムのオキシフッ化物の菱面体晶に起因するピーク強度(r2)を用いて、r2/r1×100(%)により算出される。
【0054】
イットリウムのオキシフッ化物における、菱面体晶に対する斜方晶の割合γ2の測定には、前述したとおり、X線回折を用いた。XRD装置としては「X‘PertPRO/パナリティカル製」を使用した。X線Cu−Kα(波長1.5418Å)、管電圧45kV、管電流40mA、Step Size 0.033°を使用した。なお、測定精度を高めるために、Time per Step 700秒以上とすることが好ましい。
【0055】
菱面体晶に対する斜方晶の割合γ2は、回折角2θ=13.8°付近のYOF等を含む菱面体晶のミラー面(003)に起因するピーク強度(r1)と、回折角2θ=16.1°付近のYやY等を含む斜方晶のミラー面(100)に起因するピーク強度(о)と、を用いて、斜方晶のピーク強度(о)/菱面体晶のピーク強度(r1)×100(%)により算出される。
【0056】
図4(a)、図4(b)及び図5は、構造物のサンプルにおけるX線回折を示すグラフ図である。
図4(a)、図4(b)及び図5のそれぞれにおいて、横軸は回折角2θを示し、縦軸は強度を示す。図4(a)及び図5に示すように、サンプル1〜10は、菱面体晶のイットリウムオキシフッ化物(例えばYOFの多結晶)を含み、各サンプルにおいて回折角2θ=13.8°付近にピークPr1が検出される。また、図4(b)に示すように、サンプル3、4、6〜10のそれぞれにおいて、回折角2θ=36.1°付近にピークPr2が検出される。サンプル1、2においては、回折角2θ=36.1°付近にはピークが検出されない。
【0057】
また、図4(a)及び図5に示すように、サンプル3〜7は、斜方晶のイットリウムオキシフッ化物(例えばYまたはYの少なくともいずれかの多結晶)を含み、回折角2θ=16.1°付近にピークPоが検出される。サンプル1、2、8〜10においては、回折角2θ=16.1°付近にはピークが検出されない。
【0058】
各サンプルに関して、図4(a)及び図4(b)に示すデータにおいてバックグラウンドの強度を除いて前述のピーク強度(r1及びr2)を算出し、菱面体晶のピーク強度に関する割合γ1が求められる。また、各サンプルに関して、図5に示すデータにおいてバックグラウンドの強度を除いて前述のピーク強度(r1及びо)を算出し、菱面体晶に対する斜方晶の割合γ2が求められる。求められた割合γ1及び割合γ2を図3に示す。
【0059】
図3に示すように、割合γ1は、原料と成膜条件との組み合わせによって大きく変化する。本願発明者らは、菱面体晶のイットリウムオキシフッ化物の配向と耐プラズマ性との間に関連性があるという新たな知見を得た。
また、割合γ2も、原料と成膜条件との組み合わせによって大きく変化する。本願発明者らは、このように成膜条件等によって構造物中の化合物の割合が変化することを初めて発見した。例えば、原料F1〜F5などの酸素含有量の多い原料粉体においては、菱面体晶に対する斜方晶の割合γ2は、50%以上100%以下である。これに対して、エアロゾルデポジション法での製膜により、割合γ2は、サンプル1、2において0%となり、サンプル7においては100%を超える。
なお、サンプル1〜10の全てにおいて、回折角2θ=29.1°付近においては、強度のピークが検出されなかった。すなわち、バックグラウンドの強度を除くと、ピーク強度r1に対する、ピーク強度εの割合(ε/r1)は、0%であり、サンプル1〜10は、Yを含まなかった。
【0060】
また、これらのサンプル1〜7について、耐プラズマ性の評価を行った。
イットリウムのオキシフッ化物の耐プラズマの評価には、プラズマエッチング装置と表面形状測定器を用いた。
プラズマエッチング装置には「Muc−21 Rv−Aps−Se/住友精密工業製」を使用した。プラズマエッチングの条件は、電源出力としてICP出力を1500W、バイアス出力を750W、プロセスガスとしてCHF100ccmとO10ccmの混合ガス、圧力を0.5Pa、プラズマエッチング時間を1時間とした。
【0061】
表面粗さ測定器には「サーフコム1500DX/東京精密製」を使用した。表面粗さの指標には算術平均粗さRaを用いた。算術平均粗さRaの測定における、Cut Offと評価長さには、JISB0601に基づき測定結果の算術平均粗さRaに適合する標準値を用いた。
【0062】
サンプルのプラズマエッチングをする前の表面粗さRaと、サンプルのプラズマエッチングをした後の表面粗さRaを用いて、表面粗さ変化量(Ra−Ra)により、耐プラズマ性を評価した。
【0063】
図3に耐プラズマ性の評価結果を示す。「〇」は、イットリアの焼結体よりも高い耐プラズマ性であることを示す。「◎」は、「〇」よりも耐プラズマ性が高く、エアロゾルデポジション法により作製されたイットリア構造物と同等以上の耐プラズマ性であることを示す。「△」は、「〇」よりも耐プラズマ性が低く、イットリアの焼結体と同等程度の耐プラズマ性であることを示す。「×」は、「△」よりも耐プラズマ性が低いことを示す。
【0064】
本願発明者らは、図3に示すように、耐プラズマ性と割合γ1とに相関があることを見出した。すなわち、割合γ1が100%以上であるサンプル6、7においては、耐プラズマ性が低い。成膜条件等によって割合γ1を100%未満に制御することで、耐プラズマ性を高め、実用上十分な耐プラズマ性を得ることができる。
【0065】
割合γ1を80%未満とすることで、サンプル3、4、9、10のように耐プラズマ性をイットリアの焼結体よりも高くすることができる。
割合γ1を0%とすることで、サンプル1、2、8のように耐プラズマ性を、エアロゾルデポジション法により作製されたイットリア構造物と同等以上にまで高めることができる。
【0066】
さらに本願発明者らは、図3に示すように、耐プラズマ性と割合γ2とに相関があることを見出した。すなわち、割合γ2が106%以上であるサンプル7においては、耐プラズマ性が低い。実施形態に係る構造物20では、成膜条件等を調整することで割合γ2を100%未満に制御することで、耐プラズマ性を高め、実用上十分な耐プラズマ性を得ることができる。
【0067】
割合γ2を85%以下、好ましくは70%以下とすることで、サンプル5、6のように耐プラズマ性をイットリアの焼結体と同等にまで高めることができる。
割合γ2を30%以下とすることで、サンプル3、4のように耐プラズマ性を、エアロゾルデポジション法によるイットリアの構造体と同等にまで高めることができる。
割合γ2を0%とすることにより、サンプル1、2にように耐プラズマ性をさらに高めることができる。
【0068】
一般にエアロゾルデポジション法を用いてAlやYなどの酸化物の構造物を形成した場合、その構造物には結晶配向性が無いことが知られている。
一方、YFやイットリウムオキシフッ化物などは劈開性を有するため、例えば、原料の微粒子は、機械的衝撃の付与により劈開面に沿って割れやすい。そのため、機械的衝撃力により製膜時に微粒子が劈開面に沿って割れ、構造物が特定の結晶方向に配向すると考えられる。
【0069】
また、原料が劈開性を有する場合に、構造物がプラズマ照射によってダメージを受けると、劈開面に沿ってクラックを生じ、これを起点にパーティクルが発生する恐れがある。そこで、構造物形成の際にあらかじめ微粒子を劈開面に沿って破砕し、配向性を調整する。具体的には、割合γ1、γ2を調整する。これにより、耐プラズマ性を向上させることができると考えられる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、構造物、基材などの形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0071】
10 部材、 15 基材、 20、20a 構造物、 20c 結晶子、 Po、Pr1、Pr2 ピーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7