特許第6772997号(P6772997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772997
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20201012BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20201012BHJP
   B60N 2/06 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   H02G11/00 060
   B60R16/02 620A
   !B60N2/06
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-190313(P2017-190313)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-68563(P2019-68563A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】小原 一仁
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−212664(JP,A)
【文献】 特開2014−189109(JP,A)
【文献】 特開2004−210103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面に設置されたスライドシート用のレールと、
前記レールに対してスライド可能に取り付けられたスライダと、
前記スライドシート側から延びるワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスを前記スライダに連結するとともに前記レールの側方かつ前記レールに沿う方向に案内するガイド部材と、
前記レールの側方に並んで設けられ、前記ガイド部材により案内された前記ワイヤハーネスを前記スライダの移動に伴って移動可能に収容する収容部と、を備え、
前記ガイド部材が前記スライダに対して接近および離隔可能に、かつ、傾き可能に連結されているワイヤハーネス配索装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は前記スライダに連結するための連結部を有しており、
前記スライダは前記連結部を連結するための取付部を有しており、
前記連結部は弾性部材を介して前記取付部に連結されている請求項1に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項3】
前記取付部は、前記床面に対して垂直方向に延びて対向配置される一対の垂直面を有する第1取付部を含み、
前記連結部は、前記一対の垂直面の間に配されるとともにその両面に前記弾性部材が配された状態で、前記第1取付部に連結されている請求項2に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項4】
前記取付部は、前記床面と平行方向に延びて対向配置される一対の平行面を有する第2取付部を含み、
前記ガイド部材には、前記スライダに連結するための前記平行方向に延びる第2連結部が設けられており、
前記第2連結部は、前記一対の平行面の間に配されるとともにその両面に前記弾性部材が配された状態で、前記第2取付部に連結されている請求項2または請求項3に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項5】
前記連結部は前記第1取付部に対してボルト締結により連結されており、
前記ボルトを挿通するための前記連結部のボルト挿通孔は前記垂直方向に延びる長孔状とされている請求項3に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項6】
前記第2連結部は前記第2取付部に対してボルト締結により連結されており、
前記ボルトを挿通するための前記第2連結部の第2ボルト挿通孔は、前記収容部の延び方向と直交する方向かつ前記平行方向に延びる長孔状とされている請求項4に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項7】
前記ボルトの周囲に前記弾性部材が配されている請求項5または請求項6に記載のワイヤハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ワイヤハーネス配索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に備えられたスライド可能なシートに、電動リクライニング装置やシートヒータなどの電装品が装備されているものがある。これらの電装品と車体側の機器等との間を接続するワイヤハーネスは、シートと車体との間でシートのスライドに追従するため、シートと車体との間にワイヤハーネスの余長を収容する構成が備えられている。
【0003】
特許文献1には、シート下の空間に、シート側から延びるワイヤハーネスを導くスライダをシートの移動と連動してスライド可能に取り付ける移動部と、移動部の一端側から引き出されたワイヤハーネスの余長部分を水平方向にU字形状に折り返した状態で収容する収容部と、を有する電線配索装置が開示されている。収容部は移動部の隣に並べられており、水平方向にU字形状に折り返されたワイヤハーネスの余長部は移動部に対して横並びの状態で収容部内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−3902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の構成では、シート側から延びるワイヤハーネスは移動部内に一旦収容され、移動部の一端側から引き出された後、水平方向にU字形状に折り返されて収容部内に収容されるようになっている。このため、車両における収容部の専有面積が大きく、使用可能なスペースが少なくなるという問題があった。
【0006】
そこで、シート側から延びるワイヤハーネスをそのまま移動部の側方に案内し、移動部に沿うように(移動部と平行に)設けた収容部内において折り返すことにより、収容部内に移動可能に収容する構成が考えられる。この場合、シート側から延びるワイヤハーネスは、移動部側に設けられたスライダと連動して動く案内部により、収容部内に導入される。
【0007】
しかしこのような構成とした場合、移動部と収容部との平行状態が僅かでもずれた場合に、スライダの移動が上手くいかない虞がある。すなわち、移動部と収容部との平行状態がずれた場合には、移動部と収容部との間の距離がスライダの位置によって変化するため、一定距離で互いに連結されたスライダおよび案内部のうち比較的に軽い案内部が収容部内で内壁に押し付けられて移動し難くなり、もって、スライダの移動を妨げることになる。
【0008】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みてなされたものであって、レールと収容部との平行状態がずれた場合でも、スライダの移動が円滑に行えるワイヤハーネス配索装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、車両の床面に設置されたスライドシート用のレールと、前記レールに対してスライド可能に取り付けられたスライダと、前記スライドシート側から延びるワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスを前記スライダに連結するとともに前記レールの側方かつ前記レールに沿う方向に案内するガイド部材と、前記レールの側方に並んで設けられ、前記ガイド部材により案内された前記ワイヤハーネスを前記スライダの移動に伴って移動可能に収容する収容部と、を備え、前記ガイド部材が前記スライダに対して接近および離隔可能に、かつ、傾き可能に連結されているワイヤハーネス配索装置である。
【0010】
上記構成によれば、レールと収容部とがそれらの延び方向において平行状態がずれて設置され、スライダの移動に伴ってスライダとガイド部材との間の距離が変化する場合でも、ガイド部材はスライダに対して距離の変化に応じて接近したり離隔したりすることができる。また、このようにスライダの移動に伴って両者間の距離が変化する場合には、スライダの移動方向とガイド部材の移動方向との間に傾きが生じ、ひいてはスライダとガイド部材との向きに傾きが生じるが、ガイド部材はスライダに対して傾き可能に連結されている。したがって、ガイド部材がスライダの移動に伴って収容部内で内壁に押し付けられて移動し難くなることがなく、もって、ガイド部材と連結されたスライダも移動を妨げられることなくレール内を移動可能とされる。
【0011】
上記ワイヤハーネス配索装置は、以下の構成を備えていてもよい。
【0012】
ガイド部材はスライダに連結するための連結部を有しており、連結部は弾性部材を介してスライダ側に連結されている構成としてもよい。このような構成によれば、ガイド部材をスライダに対して接近および離隔可能に、かつ、傾き可能に連結する構成が実現できる。
【0013】
なお弾性部材としては、ばねやゴム、軟質樹脂等、適宜選択することができる。
【0014】
スライダ側に、床面に対して垂直方向に延びて対向配置される一対の垂直面を有する第1取付部を設け、連結部を一対の垂直面の間に配するとともに、その両面に弾性部材を配した状態で、第1取付部に連結する構成としてもよい。
【0015】
このような構成によれば、ガイド部材のスライダに対する移動可能な距離を大きく設定した場合でも、連結部は第1取付部により両側から支持されるから、重力の影響を受け難く、連結部とスライダとの連結状態を安定的な状態とすることができる。また、連結部の両面は弾性部材により支持されるから、振動等の影響も受け難い。
【0016】
スライダ側に、床面と平行方向に延びて対向配置される一対の平行面を有する第2取付部を設け、ガイド部材に、スライダに連結するための平行方向に延びる第2連結部を設け、第2連結部を、一対の平行面の間に配するとともにその両面に弾性部材を配した状態で、第2取付部に連結する構成としてもよい。
【0017】
このような構成によれば、レールと収容部との上下方向の平行状態がずれて設置された場合でも、第2連結部と第2取付部との間に配された弾性部材により、そのずれが吸収される。したがって、ガイド部材はスライダの移動に伴って収容部内で引っかかることなく移動することができ、もって、ガイド部材と連結されたスライダも移動を妨げられることなくレール内を移動可能とされる。
【0018】
連結部は第1取付部に対してボルト締結により連結されており、ボルトを挿通するための連結部のボルト挿通孔は垂直方向に延びる長孔状とされている構成としてもよい。このような構成によれば、ボルトがボルト挿通孔内で上下方向に移動可能とされるから、上下方向の小さなずれを吸収することができる。
【0019】
また、第2連結部は第2取付部に対してボルト締結により連結されており、ボルトを挿通するための第2連結部の第2ボルト挿通孔は、収容部の延び方向と直交する方向かつ平行方向に延びる長孔状とされている構成としてもよい。このような構成によれば、ボルトがボルト挿通孔内で収容部の延び方向と直交する方向かつ平行方向に移動可能とされるから、第1取付部の弾性部材だけでなく、第2ボルト挿通孔によっても、その方向のずれを吸収することができる。
【0020】
また、ボルトの周囲に弾性部材が配されていてもよい。このような構成によれば、ガイド部材とスライダ側とをボルト締結により確実に連結しつつ、その周囲に配された弾性部材により、連結部や第2連結部を安定的に支持して振動等の影響が及ぶことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本明細書に開示される技術によれば、レールと収容部との平行状態がずれた場合でも、スライダの移動が円滑に行えるワイヤハーネス配索装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態のワイヤハーネス配索装置の斜視図
図2】ワイヤハーネス配索装置の平面図
図3図2の一部拡大平面図
図4】収容部の一部を省略したワイヤハーネス配索装置の右側面図
図5図4の一部拡大右側面図
図6】ワイヤハーネス配索装置の要部拡大斜視図
図7】ワイヤハーネス配索装置の腰部拡大斜視図
図8】ワイヤハーネス配索装置の腰部拡大斜視図
図9】ワイヤハーネス配索装置の腰部拡大斜視図
図10】ワイヤハーネス配索装置の正面図
図11図2のA−A断面図
図12】ガイド部材にワイヤハーネスを挿通した状態を示す斜視図
図13】ガイド部材にワイヤハーネスを挿通した状態を示す斜視図
図14】連結部材の斜視図
図15】支持ブラケットの斜視図
図16】(A)レールと収容部が床上で平行に設置された場合の要部拡大平面図 (B)レールと収容部が床上で傾いて設置された場合の要部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
一実施形態を図1ないし図16によって説明する。
【0024】
本実施形態のワイヤハーネス配索装置10は、例えば自動車等の車両のスライドシート(図示せず)の下方に配されて、ワイヤハーネス11を配索するものである。以下では、図1のX方向を右方、Y方向を前方、Z方向を上方として説明する。
【0025】
スライドシートには、例えば、電動リクライニング装置、シートヒータ、乗員の着座の有無を検出するセンサ、シートベルトの装着の有無を検出するセンサなどの各種電装品が備えられている。スライドシートは、図示しない車両の乗員室の床面に固定された一対のレール20により、前後方向(Y方向)にスライド可能とされている。
【0026】
(ワイヤハーネス配索装置10)
ワイヤハーネス配索装置10は、レール20と、スライドシートのスライドに伴ってレール20に対して移動するスライダ30と、スライドシート側および車体側に接続されるとともに、スライダ30の移動に伴って移動するワイヤハーネス11と、レール20の側方においてレール20に隣接して設けられた余長収容部70と、を備える。
【0027】
(ワイヤハーネス11)
ワイヤハーネス11は、複数本(本実施形態では4本)の電線12と、複数本の電線12を覆う外装体13とを備えている。各電線12は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等からなる金属製の導体部が絶縁層で被覆された被覆電線を用いることができる。
【0028】
外装体13は例えば合成樹脂製であって、図12および図13に示すように、複数の角筒部14の連なりで構成されている。本実施形態の角筒部14は、複数本の電線12を内部に横並びの状態で収容可能な扁平な形態をなしており(図14参照)、一方向(上下方向)にのみ湾曲可能に形成されている。
【0029】
ワイヤハーネス11は、スライドシート側に配された一端側が、スライドシートの各種電装品に電気的に接続され、他端側(後方側)は、車両側の例えばECU(Electronic Control Unit)等の機器に接続される。
【0030】
(レール20)
レール20は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム等の金属からなり、各スライドシートに対して床面に一対設けられている。レール20は、図10に示すように、前後方向(Y方向)に延びる底壁21と、底壁21の左右両側縁から上方(Z方向)に立ち上がる一対の側壁22と、一対の側壁22の上端縁を連結する上壁23と、を有しており、上壁23に前後方向(Y方向)に延びる通し溝24が形成されている。通し溝24の幅は、後述するスライド挿通部32を挿通可能な寸法に設定されている。
【0031】
(スライダ30)
スライダ30は、例えば合成樹脂製又は金属製であって、レール20に対してスライド可能に設けられている。スライダ30は、図10に示すように、レール20内に挿通されるスライダ本体31と、スライダ本体31の上端部から上方(Z方向)に突出して通し溝24に挿通されるスライド挿通部32とを有する。
【0032】
スライダ本体31は前後方向(Y方向、レール20の延びる方向)に長い直方体状であって、レール20の内壁を摺動するように前後方向に移動可能とされている。スライド挿通部32は、スライダ本体31の上面に対して直交する方向に延びる板状であって、レール20の通し溝24内にスライド可能に挿通されている。
【0033】
図1および図4に示すように、スライド挿通部32は前後方向(Y方向)における両端部が上方(Z方向)に向けて突出する側面視略U字形状をなし、それらの突出した両端部に図示しないスライドシートの脚部が取り付けられるようになっている。また突出した両端部のうち前方側(図4の左側)の端部には、支持ブラケット40が取り付けられている。
【0034】
(支持ブラケット40)
支持ブラケット40は、図15に示すように、L字形状の板面を有する底壁41の一対の対向する側縁から一対の側壁42が立設されたチャンネル構造とされている。図15中上下方向に延びる一対の第1側壁42Aには、当該一対の第1側壁42Aを図15の左右方向に貫通する第1取付孔43が設けられている。また、図15中左右方向に延びる一対の第2側壁42Bには、当該一対の第2側壁42Bを図15の上下方向に貫通する第2取付孔44が設けられている。これらの第1取付孔43同士、および、第2取付孔44同士は、互いに対向する位置に設けられている。
【0035】
以下、一対の第1側壁42Aとこれら第1側壁42Aを連結する底壁41とで構成される領域を第1取付部45とし、一対の第2側壁42Bとこれら第2側壁42Bを連結する底壁41とで構成される領域を第2取付部46とする。
【0036】
支持ブラケット40は、スライダ30のスライド挿通部32に設けられたボルト挿通孔33に第1取付孔43を重ね合わせ、ボルト締結することにより、スライダ30に対して取り付けられるようになっている。なお、スライダ30のボルト挿通孔33は、第1取付孔43よりも径大とされている(図11参照)。これにより、支持ブラケット40はスライダ30に対して移動可能に取り付けられる。
【0037】
支持ブラケット40がスライダ30に取り付けられた状態において、第1取付部45の一対の側壁42(第1側壁42A)は、車両の床面に対して垂直方向に延びている、以下、第1取付部45の内側において対向する一対の面を、第1対向面42A1(垂直面の一例)とよぶ。また、支持ブラケット40がスライダ30に取り付けられた状態において、第2取付部46の一対の側壁42(第2側壁42B)は、車両の床面と平行方向に延びている。以下、第2取付部46の内側において対向する一対の面を、第2対向面42B1(平行面の一例)とよぶ。
【0038】
(ガイド部材50)
ガイド部材50は、ワイヤハーネス11の電線12が挿通される電線挿通部51と、電線挿通部51をスライダ30に連結するための連結部材61と、が一体とされたものである。
【0039】
電線挿通部51は、図12および図13に示すように、スライドシート側(上方)から延びるワイヤハーネス11の複数本の電線12を内部に挿通して下方に案内する角筒状の第1通し部52と、第1通し部52により案内された電線12をレール20に沿う方向(前後方向)に変換して前方側に案内する角筒状の第2通し部53とが連結された、側面視略L字形状をなす筒状の部材である。電線挿通部51は、電線12の延び方向に沿って分割された第1分割体51Aおよび第2分割体51Bを組み付けることにより構成されている。
【0040】
スライドシート側から下方に延びるワイヤハーネス11は、複数本の電線12(本実施形態では4本)が集まった状態で第1通し部52内に挿通され、第2通し部53においては複数本の電線12が左右方向に並ぶ形態で挿通されている。すなわち、第1通し部52および第2通し部53の境界部付近において、ワイヤハーネス11の延び方向だけでなく、複数本の電線12の並び方向が規制されている。
【0041】
なお、第1通し部52および第2通し部53の境界の、屈曲部分の内側角部には、斜めに張り出す逃がし部54が設けられている。複数本の電線12は逃がし部54内で逃がされつつ、延び方向が上下方向(Z方向)から前後方向(Y方向)へ変換され、並び方向が左右方向(X方向)に規制されている。
【0042】
第1通し部52の後壁の上端には、側方(左右方向)に向けて張り出す電線挿通部側固定部55が設けられている。電線挿通部側固定部55にはボルトBを挿通させるための一対のボルト挿通孔56が設けられている。
【0043】
一方連結部材61は、図14に示すように、上述した電線挿通部側固定部55と重ね合わされて固定される横長の板状の連結部材側固定部62と、連結部材側固定部62の長尺方向(左右方向)に延びる一側縁部の一端側(左側、図14の右側)から下方に向けて延びる繋ぎ部64と、繋ぎ部64の下端縁から後方に向けてL字形状に屈曲されて水平方向に延びる第2連結部65と、第2連結部65の左側(図14の右側)の側縁部からL字形状に屈曲されて立ち上がる第1連結部67と、からなる。
【0044】
連結部材側固定部62にはボルトBを挿通させるための一対のボルト挿通孔63が設けられている。また、第1連結部67および第2連結部65には、ボルトBを挿通するための第1ボルト挿通孔68および第2ボルト挿通孔66が設けられている。第1ボルト挿通孔68は、上下方向(床面に対して垂直方向)に延びる長孔状をなしており、第2ボルト挿通孔66は、左右方向(後述する余長収容部71の延び方向Yと直交する方向かつ床面と平行方向)に延びる長孔状をなしている。
【0045】
電線挿通部51と連結部材61とは、電線挿通部側固定部55を連結部材側固定部62に重ね合わせてボルト挿通孔56,63にボルトBを挿通し、ナットNを締結することにより、一体とされている(図3および図5参照)。
【0046】
(余長収容部70)
レール20の側方には、ガイド部材50から導出されたワイヤハーネス11の余長部分が収容される余長収容部70が配されている。余長収容部70は、図4に示すように、余長部分を上下方向(Z方向)に湾曲させてU字状に折り返したワイヤハーネス11を内部に収容可能な、細長い筒状をなしている。
【0047】
具体的には余長収容部70は、例えば図10に示すように、前後方向(Y方向)に延びる底壁71と、底壁71の左右両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁72と、一対の側壁72の上端縁を連結する上壁73と、を有しており、上壁73に前後方向に延びる通し溝74を設けることにより形成されている。通し溝74は、ガイド部材50の第1通し部52のうち第2通し部53に隣接した部分を嵌め入れてガイド部材50をスライド可能としている。
【0048】
余長収容部70内においてワイヤハーネス11は、上述したように、上下2段に配されている(図4参照)。上段はガイド部材50から導出されて前方に向けて延びる上段部11Aであり、下段は上段部11Aから折り返し部11Bにより折り返されて後方に向けて延びるとともに、端部が車両側に配されたECU等に接続される下段部11Cである。
【0049】
スライドシートが前方にスライドすると、余長収容部70内のワイヤハーネス11の折り返し部11Bが前方に移動し、ワイヤハーネス11のうち下段部11Cが前方に延びる。逆にスライドシートが後方スライドすると、ワイヤハーネス11の折り返し部11Bが後方に移動し、ワイヤハーネス11のうち上段部11Aが後方に延びる。このようにして、ワイヤハーネス11の余長部分が移動可能に収容される。
【0050】
(スライダ30とガイド部材50との連結構造)
ガイド部材50は、図11に示すように、支持ブラケット40および二対の伸縮可能なコイルばね80を介してスライダ30に連結されている。
【0051】
具体的には、ガイド部材50は、第1連結部67が支持ブラケット40の第1取付部45の一対の第1側壁42A(第1対向面42A1)の間に配されるとともに、その両面に一対のコイルばね80が配された状態で、スライダ30のボルト挿通孔33、および、ガイド部材50の第1取付孔43,第1ボルト挿通孔68,第1取付孔43にボルトBを一括に貫通させ、ナットNと締結することにより、スライダ30側に連結されている。ボルトBはコイルばね80の軸芯を貫通している。コイルばね80は、ガイド部材50の第1連結部67およびスライダ30側の支持ブラケット40の第1対向面42A1の間に挟まれてやや縮んだ状態とされている。
【0052】
また、ガイド部材50は、第2連結部65が支持ブラケット40の第2取付部46の一対の第2側壁42B(第2対向面42B1)の間に配されるとともに、その両面に一対のコイルばね80が配された状態で第2取付孔44、第2ボルト挿通孔66、第2取付孔44にボルトBを一括に貫通させ、ナットNと締結することにより、支持ブラケット40に連結されている。ボルトBはコイルばね80の軸芯を貫通している。コイルばね80は、ガイド部材50の第2連結部65および支持ブラケット40の第2対向面42B1の間に挟まれてやや縮んだ状態とされている。
【0053】
本実施形態のワイヤハーネス配索装置10は上記構成であって、次に、作用効果について説明する。
【0054】
本実施形態のワイヤハーネス配索装置10は、車両の床面に設置されたスライドシート用のレール20と、レール20に対してスライド可能に取り付けられたスライダ30と、スライドシート側から延びるワイヤハーネス11と、ワイヤハーネス11をスライダ30に連結するとともにレール20の側方かつレール20に沿う方向に案内するガイド部材50と、レール20の側方に並んで設けられ、ガイド部材50により案内されたワイヤハーネス11をスライダ30の移動に伴って移動可能に収容する余長収容部70と、を備え、ガイド部材50がスライダ30に対して接近および離隔可能に、かつ、傾き可能に連結されている。
【0055】
上記構成によれば、レール20と余長収容部70とがそれらの延び方向において平行状態がずれて設置され、スライダ30の移動に伴ってスライダ30とガイド部材50との間の距離が変化する場合でも、ガイド部材50はスライダ30に対して距離の変化に応じて接近したり離隔したりすることができる。
【0056】
また、このようにスライダ30の移動に伴って両者間の距離が変化する場合には、スライダ30の移動方向とガイド部材50の移動方向との間に傾きが生じ、ひいてはスライダ30とガイド部材50との向きに傾きが生じるが、ガイド部材50はスライダ30に対して傾き可能に連結されている(図16(B)参照)。したがって、ガイド部材50はスライダ30の移動に伴って余長収容部70内で内壁に摺動して動き難くなることがなく、もって、ガイド部材50と連結されたスライダ30も移動を妨げられることなくレール20内を移動可能とされる。
【0057】
また、スライダ30に取り付けられる支持ブラケット40に、床面に対して垂直方向に延びて対向配置される一対の第1対向面42A1を有する第1取付部45を設け、ガイド部材50の第1連結部67を一対の第1対向面42A1の間に配するとともに、その両面にコイルばね80を配した状態で、第1取付部45に連結する構成となっている。
【0058】
このような構成によれば、ガイド部材50のスライダ30に対する移動可能な距離を大きく設定した場合でも、第1連結部67は第1取付部45により両側から支持されるから、重力の影響を受け難く、ガイド部材50の第1連結部67とスライダ30側との連結状態を安定的な状態とすることができる。また、第1連結部67の両面はコイルばね80の伸縮により常時支持されるから、振動等の影響も受け難い(図16参照)。
【0059】
また、スライダ30に取り付けられる支持ブラケット40に、床面と平行方向に延びて対向配置される一対の第2対向面42B1を有する第2取付部46を設け、ガイド部材50に、スライダ30に連結するための平行方向に延びる第2連結部65を設け、第2連結部65を、一対の第2対向面42B1の間に配するとともにその両面にコイルばね80を配した状態で、第2取付部46に連結する構成となっている(図11参照)。
【0060】
このような構成によれば、レール20と余長収容部70との上下方向の平行状態がずれて設置された場合でも、第2連結部65と第2取付部46との間に配されたコイルばね80により、そのずれが吸収される。したがって、ガイド部材50はスライダ30の移動に伴って余長収容部70内で内壁に摺動して動き難くなることがなく、もって、ガイド部材50と連結されたスライダ30も移動を妨げられることなくレール20内を移動可能とされる。
【0061】
また、第1連結部67は第1取付部45に対してボルト締結により連結されており、ボルトBを挿通するための第1連結部67の第1ボルト挿通孔68は垂直方向に延びる長孔状とされている。このような構成によれば、ボルトBが第1ボルト挿通孔68内で上下方向に移動可能とされるから、上下方向の小さなずれを吸収することができる。
【0062】
また、第2連結部65は第2取付部46に対してボルト締結により連結されており、ボルトBを挿通するための第2連結部65の第2ボルト挿通孔66は、余長収容部70の延び方向(Y方向)と直交する方向かつ床面と平行方向(XY方向)に延びる長孔状とされている。このような構成によれば、ボルトBが第2ボルト挿通孔66内で余長収容部70の延び方向(Y方向)と直交する方向かつ床面と平行方向(XY方向)に移動可能とされるから、第1取付部45のコイルばね80だけでなく、第2ボルト挿通孔66によっても、その方向のずれを吸収することができる。
【0063】
また、ガイド部材50とスライダ30側とを連結するボルトBの周囲にコイルばね80が配されているから、ガイド部材50とスライダ30側とをボルト締結により確実に連結しつつ、その周囲に配されたコイルばね80により、第1連結部67や第2連結部65を安定的に支持して振動等の影響が及ぶことを抑制することができる。
【0064】
このように本実施形態のワイヤハーネス配索装置10によれば、レール20と余長収容部70との平行状態がずれた場合でも、スライダ30の移動を円滑に行うことができる。
【0065】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0066】
(1)上記実施形態では、スライダ30と支持ブラケット40とを別体で構成して組み付ける形態を示したが、支持ブラケット40が構成している第1取付部45や第2取付部46は、スライダ30と一体に形成されていてもよい。この場合、スライダ30(スライド挿通部32)の板面が、一対の第1対向面42A1のうちの一方の垂直面とされる。
【0067】
(2)第2取付部46および第2連結部65の連結構造は省略してもよい。
【0068】
(3)弾性部材としては、コイルばね80の他、ゴム、軟質樹脂等、適宜選択することができる。
【0069】
(4)また、上記実施形態のように、ガイド部材の連結部が一対の垂直面の間に配された状態でスライダ側にボルト締結により連結される構成では、弾性部材(コイルばね80)は省略してもよい。
【0070】
(5)あるいは、ガイド部材とスライダ側とは、ボルトおよびナットの締結ではなく、例えばゴム等の弾性部材の両面に接着層を設ける等の固定方法により連結される構成としてもよい(ボルトによる締結を省略してもよい)。
【0071】
(6)上記実施形態では、第1連結部67の両面にコイルばね80を配した状態でガイド部材50をスライダ30側の第1取付部45に連結させる構成を示したが、弾性部材を単にガイド部材の連結部とスライダとの間に配して両者を連結させた構成も本明細書の技術的範囲に含まれる。
【0072】
(7)上記実施形態では、コイルばね80は、ガイド部材50の第1連結部67(第2連結部65)およびスライダ30側の支持ブラケット40の第1対向面42A1(第2対向面42B1)の間に挟まれてやや縮んだ状態とされる形態を示したが、必ずしも縮んだ状態とされていなくてもよい。要は、第1連結部67を支持できる程度に付勢または接触していることが好ましい。
【0073】
(8)上記実施形態では、連結部材の第1ボルト挿通孔68および第2ボルト挿通孔66を長孔状としたが、長孔状でない構成も本明細書の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10:ワイヤハーネス配索装置
11:ワイヤハーネス
20:レール
30:スライダ
40:支持ブラケット
42A:第1側壁
42B:第2側壁
42A1:第1対向面(垂直面)
42B1:第2対向面(平行面)
45:第1取付部
46:第2取付部
50:ガイド部材
51:電線挿通部
61:連結部材
65:第2連結部
66:第2ボルト挿通孔
67:第1連結部(連結部)
68:第1ボルト挿通孔(連結部のボルト挿通孔)
70:余長収容部(収容部)
80:コイルばね(弾性部材)
B:ボルト
N:ナット
X:収容部の延び方向と直交する方向
Y:レールに沿う方向、収容部の延び方向
Z:床面に対して垂直方向
XY:床面と平行方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図16