(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773062
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】エレベータかごのファンの交換方法及びエレベータかご
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20201012BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
B66B11/02 F
B66B7/00 K
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-28904(P2018-28904)
(22)【出願日】2018年2月21日
(65)【公開番号】特開2019-142663(P2019-142663A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年6月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 敦子
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−281119(JP,A)
【文献】
実開平02−049975(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごの天井にかご内と連通した換気口が設けられ、この換気口の上部にファン
ベースを介してファンが設置されているエレベータかごにおいて、
前記の既設ファンを新設ファンに交換する際に、
前記既設ファンを前記の既設ファンベースから撤去し、前記既設ファンベースに新設のフ
ァンベースを介して、新設ファンを連結し、
前記新設のファンベースは、前記既設ファンベースとの固定部分近傍に、前記固定部分に
アクセスが容易となる少なくとも1つの作業用切り欠きが設けられたこと
を特徴とするエレベータかごのファンの交換方法。
【請求項2】
前記新設ファンベースは、特定箇所を前記既設ファンベースの特定箇所と一致させること
により、前記新設ファンベースと前記既設ファンベースとの位置合わせを行なうことを特
徴とする請求項1に記載のエレベータかごのファンの交換方法。
【請求項3】
前記特定箇所は、角の部分であることを特徴とする請求項2に記載のエレベータかごのフ
ァンの交換方法。
【請求項4】
前記特定箇所は、切り欠きであることを特徴とする請求項2に記載のエレベータかごのフ
ァンの交換方法。
【請求項5】
エレベータかごの天井にかご内と連通した換気口が設けられ、この換気口の上部にファン
ベースを介してファンが設置されているエレベータかごにおいて、
前記の既設ファンが撤去された前記既設ファンベースとの固定部分近傍に、前記固定部分にアクセスが容易となる少なくとも1つの作業用切り欠きが設けられた新設ファンベースを介して、
新設ファンが配置されていることを特徴とするエレベータかご。
【請求項6】
前記新設ファンベースは、前記新設ファンに取り付けられる第1取付部と、前記既設ファ
ンベースに取り付けられる第2取付部とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の
エレベータかご。
【請求項7】
前記新設ファンベースは、特定箇所を前記既設ファンベースの特定箇所と一致させること
により、前記新設ファンベースと前記既設ファンベースとの位置合わせを行なう構成であ
ることを特徴とする請求項5又は6に記載のエレベータかご。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかごの天井に設けられたエアコンや送風機(以下ファンと称する)の取付構造に関し、特に、既設のファンを新設のファンに交換する方法及び構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータかごの天井にはファンが設置されている。このファンの取付構造として、例えば特許文献1に示すものがある。この構造は、ファンからの送風を案内する送風案内部材を備え、取付部材によって、ファンや送風案内部材をかごの天井の上面に固定したものである。この構造により、ファンからの送風は、かごの天井に空けられた穴(換気口)を通って、かご内に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―167630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ファンの故障やエレベータかごのリニューアルなどにより、ファンを交換する必要が生じる場合がある。このとき、ファンを長年使用している場合には、既設のファンが製造中止になっていて、入手できない場合がある。
この場合には、既設のファンに代えて、新規のファンを設置することになる。しかしながら、新旧のファンの大きさや固定器具の取り付けピッチ等が異なることがある。このときには、ファン,送風案内部材及び取付部材を全て撤去して、全て新しいものに交換することになる。
【0005】
そのため、送風案内部材及び取付部材を新たに製作する必要がある上、ファン等の交換作業が煩雑になるという問題がある。
本発明は、この問題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エレベータかごの天井にかご内と連通した換気口が設けられ、この換気口の上部にファンベースを介してファンが設置されているエレベータかごにおいて、前記の既設ファンを新設ファンに交換する際に、前記既設ファンを前記の既設ファンベースから撤去し、前記既設ファンベースに新設のファンベースを介して、新設ファンを連結することを特徴とするものである。
【0007】
また本発明は、前記新設ファンベースは、特定箇所を前記既設ファンベースの特定箇所と一致させることにより、前記新設ファンベースと前記既設ファンベースとの位置合わせを行なうことを特徴とするものである。
更に本発明は、前記特定箇所は、角の部分であることを特徴とするものである。
更にまた本発明は、前記特定箇所は、切り欠きであることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、エレベータかごの天井にかご内と連通した換気口が設けられ、この換気口の上部にファンベースを介してファンが設置されているエレベータかごにおいて、前記の既設ファンが撤去された前記の既設ファンベースに、新設ファンベースを介して、新設ファンが配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
更に本発明は、前記新設ファンベースは、前記新設ファンに取り付けられる第1取付部と、前記既設ファンベースに取り付けられる第2取付部とを備えていることを特徴とするものである。
また本発明は、前記新設ファンベースは、特定箇所を前記既設ファンベースの特定箇所と一致させることにより、前記新設ファンベースと前記既設ファンベースとの位置合わせを行なう構成であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的少ない作業で、かごのファンを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態による既設のかごの天井を上から見た図である。
【
図2】
図1からファンを撤去した部分詳細図である。
【
図4】ファンをかごに固定するファンベースを示す図である。
【
図5】新しく設置する新ファンベースを示す図である。
【
図6】新ファンベースをかごに取り付けた状態を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施の形態による既設のかごの天井からファンを撤去した図である。
【
図10】新しく設置する新ファンベースを示す図である。
【
図11】新ファンベースをかごに取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図により説明する。
図1は既設のかごの天井を上から見た図、
図2は
図1からファンを撤去した部分詳細図、
図3は
図2のA―A断面図、
図4はファンをかごに固定するファンベースを示す図であり、
図4(a)は正面図、
図4(b)は右側面図、
図4(c)は底面図である。
図において、1はかごの天井、2は既設のファンであり、かごの天井1に空けられた換気口3からかご内に送風を行なう。4はチャンネル鋼からなる補強材、5はかごの天井1の周辺に形成された周辺部である。
【0013】
10はファン2をかごの天井1に固定する既設のファンベースであり、換気口3の周囲を囲うように設けられている。このファンベース10は、断面略コ字状をなす支持ブラケット11,11aと、一対の側板20,20aからなっている。支持ブラケット11,11aの上片12,12aにはそれぞれ2個の切り欠き13,13aが設けられ、下片14,14aにはそれぞれ1個の穴15,15aが設けられ、これらの穴15,15aを利用して、ボルト・ナット16,16aによって各支持ブラケット11,11aをかごの天井1に固定している。尚、17,17aは上片12,12a側からボルト・ナット16,16aの取付作業を行なうための穴である。
【0014】
側板20,20aは長手方向の先端が直角に折り曲げられ、それぞれボルト・ナット21,21aによって、支持ブラケット11,11aの縦片18,18aに固定されている。これにより、支持ブラケット11,11aの縦片18,18aと側板20,20aによって、上下の空いた四角形19を形成している。また、この四角形19が換気口3と一致するように、各支持ブラケット11,11aをかごの天井1に固定している。
【0015】
更に、各切り欠き13,13aを利用して、ボルト・ナット(図示省略)によって既設のファン2が取り付けられている。このときファン2の送風口は四角形19に向くように配置される。
これにより、ファン2からの送風は、換気口3を通ってかご内に送られる。
【0016】
上記の状態のかごにおいて、既設のファン2を新設のファンに交換する場合には、まず、各切り欠き13,13aのボルト・ナットを外して、ファン2をファンベース10から取り外す。次に新しいファンベースを既設のファンベース10に取り付け、更に、新しいファンを新しいファンベースに取り付ける。
【0017】
次に、新しいファンベースについて説明する。
図5は新しく設置する新ファンベースを示す図であり、
図5(a)は正面図、
図5(b)は右側面図、
図5(c)は底面図である。
図6は新ファンベースをかごに取り付けた状態を示す図であり、
図6(a)は正面図、
図6(b),(c)は要部の説明図である。
【0018】
図において、30は新ファンベースであり、一片31には2つのボルト32とひとつの穴33が設けられている。また、他片34には2つのボルト35とひとつの穴36が設けられ、更に作業用切り欠き37と切り欠き38が設けられている。39は新しいファンの送風口が配置される開口部である。またボルト32,35は新しいファンを取り付けるためのものであり、例えば、スタッドボルトやカシメボルトが使用される。
【0019】
前記新ファンベース30を取り付ける場合には、
図6に示すように、穴33を既設のファンベース10の切り欠き13aに合わせ、穴36と切り欠き38を既設のファンベース10の切り欠き13に合わせて、それぞれボルト・ナットで固定する。このとき、
図6(b),(c)に示すように、新ファンベース30の一片31の角31aと、既設のファンベース10の上片12aの角12aaとを合わせると、上記の穴33,36及び切り欠き38が、切り欠き13a,13と一致するように、各穴33,36及び切り欠き38が配置されている。
これにより。既設のファンベース10への新ファンベース30の取り付けを容易に行なうことができる。
【0020】
ここで、
図6に示すように、新ファンベース30の既設ファンベース10への固定作業時、かごの天井1の補強材4があるため、そのままでは切り欠き38へのボルト等の取り付けが困難なため、作業用切り欠き37を設けてある。尚、かごの天井1の周辺部5は低くなっているため、穴33,36側の作業は周辺部5側から行なうことができる。
そして、新ファンベース30の既設ファンベース10への固定後、ボルト32,35を利用して新しいファンを新ファンベース30に取り付ける。
【0021】
以上のように、本実施の形態によれば、既設のファンベース10を残しているため、新ファンベース30を追加するのみで、新しいファンを容易に取り付けることができ、かごの天井1の加工作業をする必要がない。
また、既設のファンの取付寸法と新ファンの取付寸法が異なっていても、新ファンベース30の穴33,36,切り欠き38,ボルト32,35の位置を変更すれば対応可能である。
【0022】
更に、角31aと角12aaとを合わせるだけで、新旧ファンベースの位置決めができるため、作業効率がよい。
前記実施の形態では、作業用切り欠き37を設けているが、かごの補強材4の位置によっては、作業用切り欠き37を省略したり、切り欠き38の方向を変更することもできる。また、既設のファンベース10の切り欠き13,13aとの位置調節をよりフレキシブルにするために、穴33,36も切り欠きにしてもよい。
【0023】
また、既設のファンベース10の切り欠き13,13aとの位置調節機能は限定されるが、切り欠き38を穴やボルトにしたり、穴33,36をボルトにするなど、種種の形態にすることもできる。即ち、既設のかごの天井1の状態によって新ファンベース30は適宜形状変更することができる。
更に角31aと角12aaとを合わせる代わりに、他の角を合わせるようにしてもよい。
【0024】
次に、本発明の他の実施の形態を図により説明する。
図7は既設のかごの天井からファンを撤去した図、
図8は
図7のB―B断面図、
図9は
図7のC―C断面図、
図10は新しく設置する新ファンベースを示す図であり、
図10(a)は正面図、
図10(b)は右側面図、
図10(c)は底面図である。
図11は新ファンベースをかごに取り付けた状態を示す図であり、
図11(a)は正面図、
図11(b),(c)は要部の説明図、
図12は
図11のD―D断面図である。
【0025】
図において、40はかごの天井、41は換気口、42はL形鋼からなる補強材、43はかごの天井40の周辺に形成された周辺部である。50は既設のファンをかごの天井40に固定する既設のファンベースであり、一対の支持ブラケット51,51aからなっており、各支持ブラケット51,51aは、換気口41を挟むように配置されている。
【0026】
各支持ブラケット51,51aは、断面略コ字状をなし、その上片52,52aにはそれぞれ2個の切り欠き53,53aが設けられ、下片54,54aはかごの天井40に溶接固定され、縦片55,55aは互いに向かい合うように配置されている。56は四角形の中空のガイドであり、中空部が換気口41に一致するように、一対の支持ブラケット51,51aに挟まれて配置されている。
【0027】
更に、各切り欠き53,53aを利用して、ボルト・ナット(図示省略)によって既設のファンが取り付けられている。このときファンの送風口はガイド56と一致するように配置される。
これにより、ファンからの送風は、ガイド56及び換気口41を通ってかご内に送られる。
【0028】
上記の状態のかごにおいて、既設のファンを新設のファンに交換する場合には、まず、前記の実施の形態と同様に、各切り欠き53,53aのボルト・ナットを外して、ファンをファンベース50から取り外す。次に新しいファンベースを既設のファンベース50に取り付け、更に、新しいファンを新しいファンベースに取り付ける。
【0029】
次に、新しいファンベースについて説明する。
図10は新しく設置する新ファンベースを示す図であり、
図10(a)は正面図、
図10(b)は右側面図、
図10(c)は底面図である。
図11は新ファンベースをかごに取り付けた状態を示す図であり、
図11(a)は正面図、
図11(b),(c)は要部の説明図、
図12は
図11のD−D断面図である。
【0030】
図において、60は新ファンベースであり、一片61は端部が下方に断面コ字状に曲げられて支持部62を形成するとともに、上面には2つのボルト63、更に2つの作業用切り欠き64と2つの切り欠き65が設けられている。また、他片66には上面に2つのボルト67、下面に2つのボルト68が設けられている。69は新しいファンの送風口が配置される開口部である。また上面のボルト63,67は新しいファンを取り付けるためのものである。尚、各ボルト63,67,68は、例えば、スタッドボルトやカシメボルトが使用される。
【0031】
前記新ファンベース60を取り付ける場合には、
図11及び
図12に示すように、ボルト68を既設のファンベース50の切り欠き53に挿入し、切り欠き65を既設のファンベース50の切り欠き53aに合わせ、ボルト68にナット70を螺合するとともに、切り欠き53aと切り欠き65をボルト・ナット71で固定する。このとき、
図11(b),(c)に示すように、新ファンベース60の一片61の切り欠き65と、既設のファンベース50の切り欠き53aとを合わせると、上記のボルト68が既設のファンベース50の切り欠き53と一致するように、切り欠き65及びボルト68が配置されている。
これにより。既設のファンベース50への新ファンベース60の取り付けを容易に行なうことができる。
【0032】
ここで、
図11に示すように、新ファンベース60の既設ファンベース50への固定作業時、かごの天井40の補強材42及び周辺部43があるため、そのままでは切り欠き53a,65へのボルト・ナット71の取り付けが困難なため、作業用切り欠き64を設けてある。
そして、新ファンベース60の既設ファンベース50への固定後、ボルト63,67を利用して新しいファンを新ファンベース60に取り付ける。
【0033】
以上のように、本実施の形態によれば、既設のファンベース50及びガイド56を残しているため、新ファンベース60を追加するのみで、新しいファンを容易に取り付けることができ、かごの天井40の加工作業をする必要がない。
また、既設のファンの取付寸法と新ファンの取付寸法が異なっていても、新ファンベース60の切り欠き65、ボルト63,67,68の位置を変更すれば対応可能である。
【0034】
更に、切り欠き65を既設のファンベース50の切り欠き53aに合わせるだけで、新旧ファンベースの位置決めができるため、作業効率がよい。
前記実施の形態では、作業用切り欠き64を設けているが、かごの補強材42の位置や、周辺部43の高さによっては、作業用切り欠き64を省略したり、切り欠き65の方向を変更することもできる。
また、前記の実施の形態で述べたように、既設のファンベース50の切り欠き53,53aとの位置調節をよりフレキシブルにするために、ボルト68を切り欠きにして、既設のファンベース50の切り欠き53に合わせて、ボルト・ナットで固定してもよい。
【0035】
また、既設のファンベース50の切り欠き53,53aとの位置調節機能は限定されるが、切り欠き65を穴やボルトにするなど、種種の形態にすることもできる。即ち、既設のかごの天井40の状態によって新ファンベース60は適宜形状変更することができる。
更に切り欠き65を既設のファンベース50の切り欠き53aに合わせる代わりに、一片61や他片66の角など、他の部分を合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1,40 かごの天井
2 既設のファン
3,41 換気口
4,42 補強材
5,43 周辺部
10,50 既設のファンベース
30,60 新ファンベース
31a,12aa 角