(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の微細繊維は、典型的には繊維がセルロースから構成された微細繊維状セルロースであり、微細繊維の短径を幅とした場合の最大繊維幅が1nm〜1500nmであり、微細繊維の長径を長さとした場合の繊維長が0.03μm〜5μmである。
【0022】
[微細繊維]
本発明の1つの側面の微細繊維は、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細いセルロース繊維或いはセルロースの棒状粒子である。
【0023】
微細繊維及び微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡観察により以下のようにして測定する。微細セルロース繊維含有スラリーを調製し、前記スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の操作型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、40000倍、50000倍或いは100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件(1)及び(2)を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、前記直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で前記直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、前記直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
【0024】
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、及び直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維幅を読み取る。このように読み取った繊維幅を読み取った繊維の本数で割ることで平均して平均繊維幅を求める。この平均繊維幅は数平均繊維径と等しい。
本発明の1つの側面としては、微細繊維の平均繊維幅は電子顕微鏡で観察して1nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは4nm〜100nmである。
本発明の別の側面としては、微細繊維の短径を幅とした場合、最大繊維幅は1500nm以下が好ましく、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
微細繊維の繊維幅が1nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維としての物性(強度や剛性、又は寸法安定性)が発現しなくなる。平均繊維幅が1000nmを超えると、通常のパルプに含まれる繊維にすぎないため、微細繊維としての物性(強度や剛性、又は寸法安定性)が得られない。
【0025】
微細繊維に透明性が求められる用途においては、平均繊維幅が30nmを超えると、可視光の波長の1/10に近づき、マトリックス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折及び散乱が生じ易く、透明性が低下する傾向にあるため、平均繊維幅は2nm〜30nmが好ましく、より好ましくは2nm〜20nmである。前記のような微細繊維から得られる複合体は、一般的に緻密な構造体となるために強度が高く、セルロース結晶に由来した高い弾性率が得られることに加え、可視光の散乱が少ないため高い透明性も得られる。
【0026】
<微細繊維状セルロース>
本発明の微細繊維と微細繊維状セルロースは、同一の物質であることを意味する。
本発明のまた別の側面の微細繊維状セルロースは、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細く且つ短いI型結晶構造のセルロース繊維或いはセルロースの棒状粒子である。
微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有していることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークを有することで同定することができる。
【0027】
(繊維幅)
本発明のまた別の側面の微細繊維状セルロースは、電子顕微鏡で観察して求めた平均繊維幅(平均繊維径)が1〜1000nmのセルロースである。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましく、20nm以下が最も好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が1000nmを超えると、微細繊維状セルロースとしての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性)を得ることが困難になる。
一方、本発明のまた別の側面としては、微細繊維状セルロースの平均繊維幅は1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が1nm未満であると、セルロース分子として水に溶解してしまうため、微細繊維状セルロースとしての特性(高強度や高剛性、又は高寸法安定性)を得ることが困難になる。
本発明のまた別の側面としては、微細繊維状セルロースの平均繊維幅の範囲は1〜1000nmが好ましく、1〜150nmがより好ましく、1〜100nmがさらに好ましく、1〜50nmが特に好ましく、1〜20nmが最も好ましい。
【0028】
微細繊維の電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%の微細繊維含有スラリーを調製し、前記スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000〜100000倍の倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。
【0029】
(微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定)
また、微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。微細繊維状セルロース含有スラリーを調製し、前記スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の操作型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、50000倍或いは100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。
但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件(1)及び(2)を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、前記直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で前記直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、前記直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、及び直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維幅を読み取る。このように読み取った繊維幅を読み取った繊維の本数で割ることで平均して平均繊維幅を求める。
【0030】
本発明のまた別の側面としては、微細繊維の長径を長さとした場合、繊維長は、0.03μm以上が好ましく、0.03μm〜5μmがより好ましい。繊維長が、0.03μm未満では、微細繊維を含有する不織布や微細繊維を樹脂に複合した複合体の強度向上効果を得難くなる。繊維長は、TEMやSEM、又はAFMの画像解析より求めることができる。
【0031】
本発明のまた別の側面としては、微細繊維状セルロースの短径を幅とした場合、最大繊維幅は1nm以上1000nm以下が好ましく、1nm以上500nm以下がより好ましく、1nm以上200nm以下が最も好ましい。微細繊維状セルロースの最大繊維幅が1000nm以下であれば、エマルション樹脂と混ぜ合わせて得た複合樹脂の強度が高く、また、複合樹脂の透明性を確保しやすいため、透明用途に好適である。
【0032】
(重合度)
微細繊維状セルロースの重合度とは、セルロース1分子に含まれるグルコース1分子の数を意味する。
本発明のまた別の側面としては、微細繊維状セルロースの重合度は50以上500未満であり、100〜450であることが好ましく、150〜300であることがより好ましい。微細繊維状セルロースの重合度が50未満であると、「繊維状」とはいえず、補強剤として使用することが困難になる。一方、微細繊維状セルロースの重合度が500以上であると、微細繊維状セルロースをスラリー化したときの流動性が低下し、スラリー粘度が高くなりすぎて分散安定性が低くなる。また、エマルション樹脂と混合した際に凝集物を形成することもある。
【0033】
(重合度の測定)
微細繊維状セルロースの重合度は、以下の方法により測定する。
微細繊維状セルロース(遠心分離後の上澄み液、濃度約0.1質量%)をポリ四フッ化エチレン製シャーレ上に展開し、60℃にて乾燥して、ドライシートを得る。得られたドライシートを分散媒に分散させて、Tappi T230に従い、パルプ粘度を測定する。また、前記分散媒のみで粘度を測定してブランクテストを行い、ブランク粘度を測定する。パルプ粘度をブランク粘度で割った数値から1を引いて比粘度(ηsp)とし、下記式を用いて、固有粘度([η])を算出する。
[η]=ηsp/(c(1+0.28×ηsp))
式中のcは、粘度測定時のセルロース濃度を示す。
そして、下記式から本発明における重合度(DP)を算出する。
DP=1.75×[η]
この重合度は、粘度法によって測定された平均重合度であることから、「粘度平均重合度」と称されることもある。
【0034】
(平均繊維長)
本発明のまた別の側面としては、微細繊維状セルロースの長径を長さとした場合、平均繊維長は、0.03〜5μmが好ましく、0.1〜2μmがさらに好ましい。平均繊維長が0.03μm以上であれば、微細繊維状セルロースを樹脂に配合した際の強度向上効果が得られる。平均繊維長が5μm以下であれば、微細繊維状セルロースを樹脂に配合した際の分散性が良好となる。繊維長は、前記平均繊維幅を測定する際に使用した電子顕微鏡観察画像を解析することにより求めることができる。すなわち、上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、及び直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維長を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維長を読み取る。このように読み取った繊維長を読み取った繊維の本数で割ることで平均して平均繊維長を求める。
【0035】
本発明のまた別の側面としては、本発明による微細繊維のアスペクト比は、本願明細書では例えば軸比と表記する場合もあり、繊維長/繊維幅によって表される。本発明による微細繊維のアスペクト比は10〜10000の範囲であることが好ましく、25〜1000の範囲がさらに好ましい。軸比20未満では微細繊維含有不織布を形成し難くなるおそれがある。軸比が10000を超えるとスラリー粘度が高くなり、好ましくない。
【0036】
(平均アスペクト比)
本発明のまた別の側面としては、微細繊維状セルロースの平均アスペクト比は10〜10000の範囲内であることが好ましく、25〜1000の範囲内であることがより好ましく、10〜300の範囲がさらに好ましく、50〜200の範囲が最も好ましい。平均アスペクト比が10以上であれば、樹脂やゴムの補強剤として、より好適になる。平均アスペクト比が10000以下であれば、スラリー化したときの粘度がより低くなる。
平均アスペクト比は、以下の方法により求める。
すなわち、前記電子顕微鏡画像から観察された各々の繊維についてランダムに40本を選んで、各々のアスペクト比、つまり繊維長/繊維幅を求める。本発明の平均アスペクト比は、前記40本のアスペクト比の平均値である。
【0037】
(酸基含有量)
本発明のまた別の側面としては、本発明の微細繊維状セルロースにおける酸基の含有量は、微細繊維状セルロースの単位質量に対する酸基の含有量を意味する。
本発明の微細繊維状セルロースにおける酸基の含有量は0.0001mmol/g以上0.1mmol/g以下であり、0.0001mmol/g以上0.06mmol/g以下であることが好ましい。酸基の含有量が0.1mmol/gを超えると、水を保持しやすくなり、濾水性が不充分になり、微細繊維状セルロースをシート化する場合には生産性が低くなり、シート化が困難になる。また、酸基の含有量が0.1mmol/gを超えると、黄変が生じやすくなる。
【0038】
前記酸基とは、カルボン酸基、リン酸基、又はスルホン酸基など、酸性を示す官能基のことである。セルロースは、カルボキシ基を導入する処理を施さなくても、少量(具体的には0.1mmol/g以下)のカルボキシ基を有している。したがって、本発明の微細繊維状セルロースにおける酸基の含有量が0.1mmol/g以下とは、セルロースに実質的に新たに酸基が導入されていないことを意味する。リン酸基は、セルロースに、少なくとも(HPO
4)
2−を有するリンオキソ酸又はその塩を作用させることにより導入される。スルホン酸基は、セルロースに、少なくとも(HSO
3)
−を有する硫黄オキソ酸又はその塩を作用させることにより導入される。
【0039】
(酸基の含有量の測定)
酸基の含有量は、米国TAPPIの「Test Method T237 cm−08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法を用いて求める。本発明においては、酸基の含有量をより広範囲まで測定可能にするために、前記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液について、前記試験液の濃度が実質的に4倍となるように、水酸化ナトリウム1.60gに変更した以外は、TAPPI T237 cm−08(2008)に準じる。また、酸基を導入した場合には、酸基導入前後のセルロース繊維における測定値の差を実質的な酸基含有量とする。測定試料とする絶乾セルロース繊維は、加熱乾燥の際の加熱によって起こる可能性があるセルロースの変質を避けるため、凍結乾燥により得たものを使用する。
当該酸基含有量測定方法は、1価の酸性基(カルボキシ基)についての測定方法であることから、定量対象の酸基が多価の場合には、前記1価の酸基含有量として得られた値を、酸価数で除した数値を酸基含有量とする。
【0040】
本発明のまた別の側面の微細繊維が含有する結晶部分の比率としては、X線回折法によって求められる結晶化度が60%以上99%以下であることが好ましく、65%以上99%以下がより好ましく、70%以上99%以下がさらに好ましい。結晶化度が高いと微細繊維を樹脂に複合した複合体の耐熱性と低線熱膨張率発現の点で優れた性能が期待できる。
【0041】
本発明のまた別の側面としては、本発明の微細繊維状セルロースの、X線回折法によって求められる結晶化度は、好ましくは65%以上99%以下、より好ましくは70%以上99%以下、さらに好ましくは75%以上99%以下、最も好ましくは80%超99%以下である。結晶化度が65%以上であれば、弾性率、耐熱性、又は低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。
結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求めることができる(Segalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
【0042】
[セルロース原料]
微細繊維を得るためのセルロースの原料、又は微細繊維状セルロースの原料(以下、「セルロース原料」という。)としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、若しくはバガスなどの非木材系パルプ、又はホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましい。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)、サルファイトパルプ(SP)、若しくはソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、若しくはケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、若しくはサーモメカニカルパルプ(TMP、又はBCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、若しくはケナフ等を原料とする非木材パルプ、マテャア古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、又はサルファイトパルプが好ましい。
セルロース原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0043】
本発明のまた別の側面の微細繊維の製造方法においては、微細繊維を得るためのセルロース原料は植物繊維から選んでもよく、リグノセルロース原料から選ばれることが好ましい。
リグノセルロース原料としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、若しくはパガスなどの非木材系パルプ、又はホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましい。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)、サルファイトパルプ(SP)、若しくはソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、若しくはケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、若しくはサーモメカニカルパルプ(TMP、又はBCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、若しくはケナフ等を原料とする非木材パルプ、又は古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、又はサルファイトパルプが好ましい。セルロース原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0044】
[微細繊維の製造]
本発明のまた別の側面の微細繊維の製造工程について詳述する。
<工程(a)>
本発明では、セルロース原料をそのまま用いてもよいが、酵素反応効率を向上させるためには、機械的破砕処理を経てから酵素処理工程に供することが望ましい。粉砕方法は乾式、又は湿式のいずれでもよい。パルプを離解する離解機或いは、パルプを叩解するリファイナーが使用できる。粉砕機にはグラインダー、圧力ホモジナイザー、シュレッダー、若しくはカッターミルなどのせん断式粉砕機、ジュークラッシャーやコーンクラッシャーなどの圧縮式粉砕機、インパクトクラッシャーなどの衝撃式粉砕機、或いはロールミル、スタンプミル、エッジランナーミル、若しくはロッドミルなどの中砕機の中から、最終の用途やコストの点から適宜選択することができる。
【0045】
セルロース原料を、溶媒、好ましくは水を用いて、セルロース原料と溶媒の総質量に対して0.2〜20質量%のセルロース原料を含む分散液、好ましくは1〜10質量%の分散液に調整する。前記分散液に酵素を添加する前後に分散液の温度及びpHを適宜に調整する。好ましくは予め温度とpHを調整してから酵素を添加したほうが反応効率が良い。本発明においては、予め溶媒に一部或いは全部の酵素を添加してもよい。
【0046】
本発明で用いる酵素は、セルラーゼ系酵素であり、セルロースの加水分解反応機能を有する触媒ドメインの高次構造に基づく糖質加水分解酵素ファミリーに分類される。セルラーゼ系酵素はセルロース分解特性によってエンド型グルカナーゼ(endo−glucanase)とセロビオヒドロラーゼ(cellobiohydrolase)に分類される。エンド型グルカナーゼはセルロースの非晶部分や可溶性セロオリゴ糖、又はカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体に対する加水分解性が高く、それらの分子鎖を内側からランダムに切断し、重合度を低下させる。しかし、エンド型グルカナーゼは結晶性を有するセルロースミクロフィブリルへの加水分解反応性は低い。これに対して、セロビオヒドロラーゼはセルロースの結晶部分を分解し、セロビオースを与える。また、セロビオヒドロラーゼはセルロース分子の末端から加水分解し、エキソ型或いはプロセッシブ酵素とも呼ばれる。
【0047】
本発明のまた別の側面の微細繊維の製造方法は、セルロース原料を酵素で処理することを含み、前記セルロース原料を酵素で処理することは、少なくとも前記酵素に含まれるセロビオヒドロラーゼの活性に対するエンド型グルカナーゼの活性の比が0.06以上の条件下で処理することを含む。
セルロース原料を酵素で処理することとは、セルロース原料を含む分散液に酵素を添加し、セルロース原料と酵素を反応させることを意味する。
本発明のEG活性はエンド型グルカナーゼの活性を示し、セルロース繊維の非晶質領域を選択的に切断する機能を有する。CBHI活性はセロビオヒドロラーゼの活性を示し、セルロース繊維の結晶領域を選択的に切断する機能を有する。本発明においては、少なくともセルラーゼ系酵素としてエンド型グルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼを含有する酵素又は酵素混合物(例えば、2種類以上の酵素の混合物)を使用する。本発明のまた別の側面としては、セルロース原料に酵素を添加する際、添加した酵素又は酵素混合物のEG活性とCBHI活性の比(EG活性/CBHI活性)は0.06以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1以上である。EG活性とCBHI活性の比は20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下が最も好ましい。
前記EG活性とCBHI活性の比の範囲は、0.06〜20が好ましく、0.1〜10がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。
前記EG活性とCBHI活性の比が0.06未満では酵素処理後のセルロース繊維のアスペクト比が小さく、セルロース繊維の収率が低い。また、酵素の使用量は、経済性のある範囲で行うことが好ましい。具体的には、基質1gに対して、EG活性で0.0001単位以上、100単位以下、更に好ましくは0.001単位以上、10単位以下である。しかしながら、酵素によって特性が異なるため、必ずしも、この添加量が適切でない場合もあるが、糖化によりセルロース繊維の収率が低下するため、酵素添加量は酵素処理後のセルロース繊維の収率が60%を越えるように調整することが好ましい。更に好ましくはセルロース繊維の収率70%を越えるように酵素添加量を調整する。
【0048】
また、本発明のまた別の側面としては、本発明の酵素処理で用いる酵素に含まれるβ−グルコシダーゼの活性(BGL活性)とセロビオヒドロラーゼの活性(CBHI活性)の比は、0.000001以上0.30以下が好ましく、0.000001以上0.20以下がさらに好ましく、0.000001以上0.10以下が特に好ましい。本発明の酵素処理で用いる酵素に含まれるβ−グルコシダーゼの活性とセロビオヒドロラーゼの活性の比が、0.30を越えると、セルロースから遊離された糖が単糖まで分解されるため好ましくない。
【0049】
本発明において、使用する酵素又は酵素混合物にはエンド型グルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼ以外に、ヘミセルラーゼ系酵素を含有してもよい。ヘミセルラーゼ系酵素の中でもキシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、又はアラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)が挙げられる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラーゼ系酵素として使用することができる。ヘミセルラーゼ系酵素を産生する微生物はセルラーゼ系酵素も産生する場合が多い。
【0050】
ヘミセルロースは植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で植物の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。木材においては針葉樹の2次壁ではグルコマンナンが主成分であり、広葉樹の2次壁では4−O−メチルグルクロノキシランが主成分である。そのため、針葉樹から微細繊維を得るためにはマンナーゼを使用する方が好ましく、広葉樹の場合はキシラナーゼを使用する方が好ましい。
【0051】
本発明の酵素処理時のセルロース原料含有分散液のpHは使用する酵素の最適pHに保つことが好ましく、例えば、トリコデルマ起源の市販の酵素の場合、pH4から8の間が好ましい。酵素の最適pH範囲では活性が高く酵素反応が効率的に行える。本発明の酵素処理時のセルロース原料含有分散液の温度は、酵素処理工程時に使用する酵素の最適温度に保つことが好ましく、例えば、トリコデルマ起源の市販酵素の場合、40℃〜50℃が好ましい。また、カビ類に由来する酵素も、一般に30℃〜50℃に保つことが好ましい。前記酵素処理時のセルロース原料含有分散液の温度が30℃未満では酵素活性が低下して処理時間が長くなるので好ましくない。前記酵素処理時のセルロース原料含有分散液の温度が70℃を超えると酵素が失活するおそれがある。本発明の酵素処理工程の処理時間は10分間〜24時間の範囲が好ましい。10分未満では酵素処理の効果が発現しにくい。24時間を超えると酵素によりセルロース繊維の分解が進みすぎて、得られる微細繊維の加重平均繊維長が短くなりすぎるおそれがある。
【0052】
所望時間以上に酵素が活性なままで残留していると前記のようにセルロース繊維の分解が進み過ぎるので、酵素で反応させた後のセルロース原料含有分散液を水洗し、酵素を残留させない方が好ましい。セルロース繊維重量の2から20倍量の水で水洗を行なうと、酵素はほとんど残留しなくなるので、好ましい。一般的な方法として、酵素で反応させた後のセルロース原料含有分散液に20%の苛性ソーダをpHが12程度になるように添加して酵素を失活させるか、或いは酵素で反応させた後のセルロース原料含有分散液の温度を酵素が失活する温度90℃まで上昇させて、失活させる方法でもよい。
【0053】
<工程(b)>
前記酵素で反応させた後のセルロース原料含有分散液を溶媒、好ましくは水で0.1〜10質量%に調整し、微細化(解繊)処理に供される。前記分散液に含まれるセルロースの濃度としては0.2〜5質量%であることが好ましく、0.3〜3質量%であることがより好ましい。前記濃度が0.1質量%未満では処理効率が低い。一方、前記濃度が10質量%を超えると、微細化処理中に粘度が上昇し過ぎ、取扱いが非常に困難になるおそれがある。
【0054】
酵素で処理したセルロース原料を微細化する方法としては、各種機械粉砕装置を用いて微細化することが可能である。粉砕装置としては、高速解繊機、高速回転型解繊機(クレアミックス等)、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、又はビーターなど、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。特に、高圧ホモジナイザー、高速回転型解繊機或いは両者併用が好ましい。
【0055】
高圧ホモジナイザー処理は加圧によって高速に加速されたセルロース繊維含有分散液が急激な減圧により微細化するため、微細化しやすい。高圧ホモジナイザー処理を2回以上繰り返すことにより、微細化度をさらに上げて所望の繊維幅の微細繊維を得ることができる。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。高圧ホモジナイザーの具体例としては、スギノマシン社製の「スターバースト」、イズミフードマシナリ社製の「高圧ホモゲナイザー」、若しくはRannie社製の「ミニラボ8.3H型」に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、又はMicrofluidics社製の「マイクロフルイダイザー」、吉田機械興業社製の「ナノマイザー」、スギノマシン社製の「アルティマイザー」、白水化学社製の「ジーナスPY」、日本ビーイーイー社製の「DeBEE2000」、若しくはNiro Soavi社の「Arieteシリーズ」等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
【0056】
一方、高速回転型解繊機を用いる場合、セルロース含有分散液を高速回転させながら狭い空隙を通すことにより高いせん断速度を発生させることができる。このため、ブレンダー処理のように単に高速回転させる方式と比べて微細化処理を効果的に行うことができるため、好ましい実施態様である。高速回転型解繊機は回転体と固定部の間の空隙に処理対象となるセルロース繊維を通過させて分散するタイプのもの、又は一定方向に回転する内側回転体の外側を逆に回転する外側回転体とを有し、内側回転体と外側回転体の間の空隙に処理対象となるパルプ繊維を通過させて分散するタイプのものが一般的である。かかる高速回転型解繊機としては例えば、エム・テクニック社製の「クレアミックス」、プライミクス社製の「TKロボミクス」、若しくは「フィルミックス」、又は大平洋機工社製の「マイルダー」、「キャビトロン」、若しくは「シャープフローミル」等が挙げられる。
【0057】
本発明では、前記微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維を混合して用いることもできる。微細繊維状セルロース以外の繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、合成繊維等、半合成繊維、又は再生繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、又は金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。有機繊維としては、例えば、炭素繊維、キチン、又はキトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ピニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、又はポリプロピレンなど)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、又はアラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、又はプロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、又はテンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。前記微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維を混合して用いる場合、微細繊維状セルロース以外の繊維は、所望により化学的処理、解繊処理等の処理を施すことができる。微細繊維状セルロース以外の繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施す場合、微細繊維状セルロース以外の繊維は、微細繊維状セルロースと混合してから化学的処理、又は解繊処理等の処理を施すこともできるし、微細繊維状セルロース以外の繊維に化学的処理、又は解繊処理等の処理を施してから微細繊維状セルロースと混合することもできる。微細繊維状セルロース以外の繊維を混合する場合、微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維の合計量における微細繊維状セルロース以外の繊維の添加量は特に限定されないが、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
【0058】
平均繊維径及び最大繊維径が小さい微細繊維を得るためには、上記微細化処理して得られた微細繊維含有分散液を、遠心分離などを行って得ることができる。
【0059】
<不織布の作製>
前記のようにして得られた微細繊維を用いて、微細繊維含有不織布を作製することができる。得られた不織布に高分子を含浸、或いは高分子シートで挟んで微細繊維含有複合体とすることができる。前記不織布が解繊後の微細繊維含有分散液を濾過することによって製造される場合、濾過に供される分散液に含まれる微細繊維の濃度は、0.05〜5質量%であることが好ましい。前記濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかり、逆に濃度が高すぎると均一なシートが得られないため好ましくない。分散液を濾過する場合、濾過時の濾布としては、微細化したセルロース繊維が通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなるシート、織物、又は多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、又は孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
【0060】
微細繊維を含む分散液からシートを製造する方法として、例えばWO2011/013567に記載の微細繊維を含む分散液を無端ベルトの上面に吐出し、吐出された前記分散液から分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、前記ウェブを乾燥させて繊維シートを生成する乾燥セクションとを備え、前記搾水セクションから前記乾燥セクションにかけて前記無端ベルトが配設され、前記搾水セクションで生成された前記ウェブが前記無端ベルトに載置されたまま前記乾燥セクションに搬送される製造装置を用いる方法等が挙げられる。
【0061】
本発明において、使用できる脱水方法としては紙の製造で通常に使用する脱水方法が挙げられ、長網、円網、又は傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、又は赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
【0062】
微細繊維含有不織布はその製造方法により、様々な空隙率を保持せしめることができる。空隙率の大きなシートを得る方法としては、濾過による製膜工程において、不織布中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する方法を挙げることができる。これは、濾過により水を除去し、微細繊維の含有量が微細繊維を含有する溶媒の合計質量に対して5〜99質量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加える方法である。或いは、微細繊維含有分散液を濾過装置に投入した後、アルコール等の有機溶媒を分散液の上部に静かに投入することによっても置換することができる。微細繊維含有不織布に高分子を含浸させて複合体を得る場合には、空隙率が小さいと高分子が含浸されにくくなるため、複合体の合計体積に対して10体積%以上95体積%以下、好ましくは20体積%以上90体積%以下の空隙率を有することが好ましい。ここで用いるアルコール等の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、又は四塩化炭素等の1種若しくは2種以上の有機溶媒が挙げられる。前記有機溶媒として非水溶性有機溶媒を用いる場合は、水溶性有機溶媒との混合溶媒にするか、水溶性有機溶媒で置換した後、非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
ここでいう空隙率とは、不織布中における空隙の体積率を示し、空隙率は、不織布の面積、厚み、及び質量から、下記式によって求めることができる。
空隙率(vol%)={1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm
2)、t(cm)は厚み、Bは不織布の質量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm
3と仮定する。不織布の膜厚は、膜厚計(PEACOK社製 PDN−20)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
【0063】
微細繊維含有不織布の厚みは特に限定がないが、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。又、通常1000μm以下、好ましくは5〜250μmである。
前記微細繊維含有不織布の厚みの範囲は、1μm〜1000μmが好ましく、5μm〜250μmがより好ましい。
【0064】
本発明では、前記微細繊維或いはシート(不織布等)に樹脂を混合することもできる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂等を用いることができる。
【0065】
熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、又は非晶性フッ素系樹脂等が挙げられるがこれらに制限されない。
【0066】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、又はジアリルフタレート樹脂等が挙げられるがこれらに制限されない。
【0067】
光硬化性樹脂としては、ラジカル重合可能な化合物を重合又は共重合してなる(メタ)アクリレート系の重合体又は共重合体が挙げられるがこれらに制限されない。
【0068】
前記樹脂は、単独で用いても良く、2種類以上の異なる樹脂を用いても良い。
【0069】
熱硬化性樹脂の硬化剤としては、例えば、多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、又はフェノール樹脂等が挙げられるが特にこれらに制限されない。また、熱硬化性樹脂の硬化触媒としては、例えば、イミダゾール等が挙げられるが特にこれらに制限されない。前記硬化剤、又は硬化触媒は、単独で用いることもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0070】
前記微細繊維状セルロース含有シートと樹脂とを混合し、樹脂を硬化させてセルロース微細繊維含有樹脂複合体を製造する場合に樹脂を硬化させる方法としては、例えば、熱により硬化させる方法、又は放射線照射により硬化させる方法等が挙げられるが、これらに制限されない。放射線としては、赤外線、可視光線、又は紫外線、挙げられるが、これらに制限されない。熱により硬化させる方法の場合、例えば、熱重合開始剤を用いても良く、樹脂を硬化することができる方法であれば特に制限なく用いることができる。
【0071】
<微細繊維状セルロースの製造方法>
本発明のまた別の側面の微細繊維状セルロースを製造する方法としては、分解工程と解繊工程とを有する製造方法が挙げられる。分解工程と解繊工程の順序は限定されないが、分解工程の後に解繊工程を行うことが好ましい。
本発明の微細繊維状セルロースを製造する方法は、本発明の微細繊維の製造にも適用することができる。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0072】
(分解工程)
分解工程は、セルロース原料に含まれるセルロースを分解する工程である。分解工程としては、目的の重合度が得られやすいことから、酵素を用いてセルロースを分解する酵素処理、又は、硫酸を用いてセルロースを分解する硫酸処理を施すことが好ましい。特に、上記微細繊維状セルロースが容易に得られることから、酵素処理がより好ましい。酵素処理及び硫酸処理以外の処理でセルロースを分解することもできる。酵素処理及び硫酸処理以外の処理としては、加熱加圧状態から瞬時に非加圧状態とする爆砕処理などが挙げられる。
【0073】
分解工程において酵素処理を施す場合、酵素反応効率を向上させるために、酵素処理の前に機械的破砕処理を施すことが好ましい。粉砕方法は乾式、又は湿式のいずれでもよい。
粉砕処理に用いる粉砕機としては、前記と同様のものが挙げられ、これらの中から、最終の用途やコストの点から適宜選択することができる。
また、粉砕機として、パルプを離解する離解機或いは、パルプを叩解するリファイナーを使用することもできる。
【0074】
また、酵素処理の前には、セルロース原料を分散媒で希釈して、セルロース原料が0.2〜20質量%である分散液にすることが好ましい。分散媒としては水、又は有機溶剤のいずれも使用できるが、水が好ましい。
【0075】
本発明の酵素処理で使用するセルロース分解酵素は、セロビオヒドロラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、又はβ−グルコシダーゼ活性を有する、所謂セルラーゼと総称される酵素である。
本発明の酵素処理で使用するセルロース分解酵素は、各種セルロース分解酵素を、夫々の活性を有する酵素と適宜の量で混合して調製してもよいが、市販のセルラーゼ製剤を用いてもよい。市販されているセルラーゼ製剤には、上記した各種のセルラーゼ活性を有すると同時に、ヘミセルラーゼ活性も有しているものが多い。
市販のセルラーゼ製剤としては、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス属(Trametes)、フーミコラ(Humicola)属、又はバチルス(Bacillus)属などに由来するセルラーゼ製剤がある。このようなセルラーゼ製剤の市販品としては、全て商品名で、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、又はマルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)等が挙げられる。
【0076】
本発明のまた別の側面としては、本発明の酵素処理で用いる酵素又は酵素混合物のエンド型グルカナーゼの活性(以下、「EG活性」という。非晶部に対する分解活性)とセロビオヒドロラーゼの活性(以下、「CBHI活性」という。セルロースの結晶部に対する分解活性)の比(EG活性/CBHI活性)が0.06以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。EG活性とCBHI活性の比が0.06以上であれば、酵素処理後のセルロース繊維のアスペクト比が大きくなり、微細繊維状セルロースの収率が高くなる。
前記EG活性とCBHI活性の比は20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。
前記EG活性とCBHI活性の比の範囲は、0.06〜20が好ましく、0.1〜10がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。
【0077】
本発明のまた別の側面としては、本発明の酵素処理で用いる酵素に含まれるβ−グルコシダーゼの活性(BGL活性)とセロビオヒドロラーゼの活性(CBHI活性)の比は、0.000001以上0.30以下が好ましく、0.000001以上0.20以下がさらに好ましく、0.000001以上0.10以下が特に好ましい。本発明の酵素処理で用いる酵素に含まれるβ−グルコシダーゼの活性とセロビオヒドロラーゼの活性の比が、0.30を越えると、セルロースから遊離された糖が単糖まで分解されるため好ましくない。
【0078】
本発明の酵素処理では、酵素として、セルラーゼ以外に、ヘミセルラーゼ系酵素を単独に使用してもよく、混合して使用してもよい。ヘミセルラーゼ系酵素の中でも、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、又はアラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)を使用することが好ましい。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラーゼ系酵素として使用することができる。
【0079】
酵素処理の際の分散液のpHは、使用する酵素の活性が高くなる範囲に保つことが好ましい。例えば、トリコデルマ起源の市販の酵素の場合、pHは4〜8の間が好ましい。
また、本発明のまた別の側面としては、微細繊維状セルロースの製造方法における酵素処理の際の分散液の温度は、使用する酵素の活性が高くなる範囲に保つことが好ましい。例えば、トリコデルマ起源の市販の酵素の場合、温度は40℃〜60℃が好ましい。温度が40℃未満では酵素活性が低下して処理時間が長くなり、60℃を超えると酵素が失活するおそれがある。
酵素処理の処理時間は10分間〜24時間の範囲が好ましい。10分未満では酵素処理の効果が発現しにくい。24時間を超えると酵素によりセルロース繊維の分解が進みすぎて、得られる微細繊維の平均繊維長が短くなりすぎるおそれがある。
【0080】
所定時間以上に酵素が活性を有するままで残留していると前記のようにセルロースの分解が進み過ぎるため、所定の酵素処理が終了した際には、酵素反応の停止処理を施すことが好ましい。酵素反応の停止処理としては、酵素処理を施した分散液を水洗し、酵素を除去する方法、酵素処理を施した分散液に水酸化ナトリウムをpHが12程度になるように添加して酵素を失活させる方法、又は酵素処理を施した分散液の温度を90℃まで上昇させて酵素を失活させる方法が挙げられる。
【0081】
硫酸処理によってセルロースを分解する場合、具体的には、硫酸水溶液にセルロース原料を添加し、加熱する。
硫酸水溶液の濃度としては、硫酸と水の合計質量に対して硫酸が0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。硫酸水溶液の濃度が酸と水の合計質量に対して硫酸が0.01質量%以上であれば、充分にセルロースを分解でき、20質量%以下であれば、取り扱い性に優れる。
硫酸処理の際の加熱温度は、10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましい。加熱温度が10℃以上であれば、セルロースの分解反応を容易に制御できる。加熱においては、硫酸水溶液における水の消失を防ぐために、蒸発した水分を凝縮させて還流することが好ましい。
【0082】
(解繊工程)
解繊工程は、分解工程にて分解したセルロースを微細化して解繊する工程である。
微細化する前のセルロースは、水で希釈されて、セルロース濃度が0.1〜10質量%の分散液にされることが好ましい。セルロース濃度は、0.2〜5質量%であることがより好ましく、0.3〜3質量%であることがさらに好ましい。セルロース濃度が0.1質量%以上であれば、解繊効率が高くなり、10質量%以下であれば、解繊処理中の粘度の上昇を防ぐことができる。
【0083】
微細化方法としては、各種粉砕装置を用いる方法が挙げられる。粉砕装置としては、前記と同様のものを適宜使用することができる。これらのなかでも、特に、高圧ホモジナイザー、高速回転型解繊機或いは両者併用が好ましい。
【0084】
高圧ホモジナイザーは、酵素処理した分散液を加圧し、その加圧した分散液を急激に減圧することにより微細化する装置である。高圧ホモジナイザー処理は1回でもよいが、2回以上繰り返すことにより、微細化度をさらに上げて所望の繊維幅の微細繊維を容易に得ることができる。繰り返し数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、繰り返し数が多すぎると、コスト高となる。
高圧ホモジナイザーの具体例としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0085】
高速回転型解繊機は、酵素処理した分散液を高速回転させながら狭い空隙を通すことにより高いせん断速度を発生させる装置である。高速回転型解繊機としては、回転体と固定部の間の空隙に処理対象となる分散液を通過させるタイプのものが挙げられる。また、高速回転型解繊機としては、一定方向に回転する内側回転体と、内側回転体の外側を内側回転体とは逆に回転する外側回転体とを有し、内側回転体と外側回転体の間の空隙に処理対象となるパルプ繊維を通過させて分散させるタイプのものが挙げられる。
高速回転型解繊機の具体例としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0086】
本発明の解繊処理の後には、平均繊維径及び最大繊維径が小さい微細繊維状セルロースが容易に得られることから、解繊処理した分散液を遠心分離することが好ましい。
【0087】
本発明では、前記微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維を混合して用いることもできる。微細繊維状セルロース以外の繊維としては、前記と同様のものが挙げられるがこれらに限定されない。
前記微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維を混合して用いる場合、微細繊維状セルロース以外の繊維は、所望により化学的処理、解繊処理等の処理を施すことができる。微細繊維状セルロース以外の繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施す場合、微細繊維状セルロース以外の繊維は、微細繊維状セルロースと混合してから化学的処理、解繊処理等の処理を施すこともできるし、微細繊維状セルロース以外の繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施してから微細繊維状セルロースと混合することもできる。微細繊維状セルロース以外の繊維を混合する場合、微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維の合計量における微細繊維状セルロース以外の繊維の添加量は特に限定されないが、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。
【0088】
本発明では、前記微細繊維状セルロースに樹脂を混合することもできる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂等を用いることができる。
【0089】
熱可塑性樹脂としては、前記と同様のものが挙げられるがこれらに制限されない。
【0090】
熱硬化性樹脂としては、前記と同様のものが挙げられるがこれらに制限されない。
【0091】
光硬化性樹脂としては、前記と同様のものが挙げられるがこれらに制限されない。
【0092】
前記樹脂は、単独で用いても良く、2種類以上の異なる樹脂を用いても良い。
【0093】
熱硬化性樹脂の硬化剤としては、前記と同様のものが挙げられるが特にこれらに制限されない。前記硬化剤、及び硬化触媒は、単独で用いることもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0094】
前記セルロース微細繊維含有シートと樹脂と混合し、硬化させてセルロース微細繊維含有樹脂複合体を製造する場合に硬化させる方法としては、前記と同様の方法が挙げられるが、これらに制限されない。放射線としては、前記と同様のものが挙げられるが、これらに制限されない。熱により硬化させる方法の場合、例えば、熱重合開始剤を用いても良く、硬化することができる方法であれば特に制限なく用いることができる。
【0095】
<作用効果>
本発明により繊維長が長く、アスペクト比も比較的大きい微細繊維が得られる。本発明で得られた微細繊維をシート(不織布)等に含有させることにより高強度の微細繊維が得られる。
本発明の微細繊維状セルロースは、酸基の含有量が0.1mmol/g以下であるため、水を保持しにくくなり、濾水性が向上する。そのため、微細繊維状セルロースをシート化する場合には生産性が高くなり、容易にシート化できる。また、酸基の含有量が0.1mmol/g以下であることにより、黄変が抑制される。
特許文献7に記載の微細繊維状セルロースでは、カルボキシ基の含有量が多いため、濾水性が低く、シート化が困難になったと思われる。
【0096】
本発明のまた別の側面の微細繊維の製造方法は、
(a)セルロース原料を酵素で処理すること、及び
(b)前記処理後のセルロース原料を解繊することを含み、
前記(a)セルロース原料を酵素で処理することは、少なくとも前記酵素に含まれるセロビオヒドロラーゼの活性に対するエンド型グルカナーゼの活性の比が0.06〜20の条件下で処理することを含み、
前記(a)セルロース原料を酵素で処理することは、前記酵素に含まれるセロビオヒドロラーゼの活性に対するβ−グルコシダーゼの活性の比が0.000001以上0.30以下の条件下で処理することを含み、
前記セルロース原料は、クラフトパルプ、脱墨パルプ、及びサルファイトパルプからなる群から選択される少なくとも1の植物繊維であることが好ましい。
【0097】
本発明のまた別の側面の微細繊維状セルロースは、
平均繊維幅が1〜1000nm、重合度が50以上500未満、及び酸基の含有量が0.0001以上0.1mmol/g以下であり、
平均アスペクト比が10〜10000であることが好ましい。
【実施例】
【0098】
以下に本発明を更に詳しく説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0099】
<実施例1>
化学パルプとしてNBKP(王子製紙社製、ベイマツ品)を用い、ナイアガラビーター(容量23リットル、東西精器社製)で200分間叩解し、パルプ分散液(A)(パルプ濃度2%、叩解後の加重平均繊維長:1.61mm)を得た。パルプ分散液(A)を脱水して濃度3%にし、0.1%硫酸でpH6までに調整し、50℃になるまで水浴で温めた後、酵素optimaseCX7L(EG活性/CBHI活性=3、Genencor社製)をパルプ(固形分換算)に対して3%添加し、50℃、1時間撹拌しながら反応させて、パルプ分散液(B)を得た。
パルプ分散液(B)を95℃以上、20分間加熱し、酵素を失活させたパルプ分散液(C)が得られた。酵素処理後のパルプ収率は下記式から求めた。
酵素処理後パルプ収率(%)=(パルプ分散液(C)の質量/パルプ分散液(A)の質量)×100
【0100】
(微細化処理と微細繊維収率測定)
パルプ分散液(C)を1%パルプ液の電導度を所定値以下(10μS/cm)になるまで、前記パルプ液をイオン交換水で洗浄しながら減圧濾過を行った(No.2濾紙使用、アドバンテック社)。得られたシートをイオン交換水に入れて攪拌し、0.5%の分散液を作製し、高速回転型解繊機(エムテクニック社製「クレアミックス」)により、21,500回転、30分間微細化処理(解繊)し、微細繊維含有分散液(D)を得た。続いて、分散液(D)を0.2%に薄め、12,000G×10分間遠心分離(コクサン社製「H−200NR」)し、上澄み液(E)を得た。微細繊維の収率を下記式で求めた。
微細繊維収率(%)=(上澄み液(E)の濃度/0.2)×100
さらに、微細繊維のトータル収率は下記式で求めた。
微細繊維トータル収率(%)=酵素処理後パルプ収率×微細繊維収率
【0101】
(不織布の作製と物性評価)
上澄み液(E)を孔径0.5μmのメンブレンフィルター(T050A090C、ADVANTEC社製)上で吸引濾過し、ウェットシートを作成した。その後、シリンダードライヤー(90℃、10分)、オーブン(130℃、1分)で2段階の乾燥を行い、100g/m
2の不織布を作製した。
シートを調湿後(23℃、湿度50%、4時間)、厚みを測定した後、JISP8113に基づき、定速伸張形引張試験機を用いて引張り特性を測定した、但し引張り速度5mm/分、荷重250N、シート試験片幅5.0±0.1mm、スパン長30±0.1mmにした。
【0102】
<実施例2>
微細化処理工程において、パルプ分散液(C)を1%パルプ液の電導度が所定値以下(10μS/cm)になるまで、前記パルプ液をイオン交換水で洗浄しながら減圧濾過を行った(No.2濾紙使用、アドバンテック社)。得られたシートを水に入れて攪拌し、1.5%の分散液を作製し、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社「Panda Plus 2000」)で、120MPa×2パス処理を行った。上記以外は実施例1と同様に実験を行った。
【0103】
<実施例3>
微細化処理工程において、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社「Panda Plus 2000」)で、120MPa×1パス処理を行った後、高速回転型解繊機(エムテクニック社製「クレアミックス」)により、21,500回転、30分間微細化処理(解繊)をした以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0104】
<実施例4>
微細化処理において、パルプ分散液(C)を1%パルプ液の電導度を所定値以下(10μS/cm)になるまで、前記パルプ液をイオン交換水で洗浄しながら減圧濾過を行った(No.2濾紙使用、アドバンテック社)。得られたシートを水に入れて攪拌し、10%の分散液を作製し、シングルディスクリファイナー(ラフィネーター、アンドリッツ社製)で20パスリファイニング処理を行った。上記以外は実施例1と同様に実験を行った。
【0105】
<実施例5>
酵素をエンチロン(EG活性/CBHI活性=0.12、洛東化成社製)を使用し、パルプ(固形分換算)に対して20%を添加した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0106】
<実施例6>
酵素をEcopulpR(EG活性/CBHI活性=1.2、ABenzyme社製)を使用し、パルプ(固形分換算)に対して2%を添加した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0107】
<比較例1>
実施例1のパルプ分散液(A)を0.5%に希釈し、高速回転型解繊機(エムテクニック社製「クレアミックス」)により、21,500回転、30分間微細化処理(解繊)し、微細繊維含有分散液(F)を得た。続いて、分散液(F)を0.2%に薄め、12,000G×10分間遠心分離(コクサン社製「H−200NR」)し、上澄み液(G)を得た。微細繊維の収率を実施例1と同じ原理と方法で求めた。
【0108】
<比較例2> 酵素をGC220(EG活性/CBHI活性=0.05、Genencor社製)を使用し、パルプ(固形分換算)に対して1%を添加した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0109】
<比較例3>
酵素をアクセレラーゼDuet(EG活性/CBHI活性=0.03、Genencor社製)対パルプ(固形分換算)に対して6%を添加した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から明らかのように、本発明の製造方法によれば微細繊維が高収率で得られる。また、本発明の製造方法で得られた微細繊維を含有する不織布は強度が強い。写真(
図1及び2)から、本発明の製造方法で得られた微細繊維はアスペクト比が大きいことが分かる。
【0112】
<実施例7>
実施例1において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.06の酵素液を用いた以外はと実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0113】
<実施例8>
実施例1において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.11の酵素液を用いた以外はと実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0114】
<実施例9>
実施例1において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.22の酵素液を用いた以外はと実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0115】
<実施例10>
実施例1において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.30の酵素液を用いた以外はと実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0116】
<実施例11>
実施例1において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.45の酵素液を用いた以外はと実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0117】
<実施例12>
実施例1において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.74の酵素液を用いた以外はと実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
EG活性/CBHI活性=2.7、及びBGL活性/CBHI活性=の比率0.30以下の条件で酵素処理した場合(実施例7〜10)、微細繊維の収率が高かった。また、前記条件で酵素処理したセルロース微細繊維から作成した不織布(実施例7〜10)は、高強度であった。
【0120】
<実施例13>
化学パルプであるNBKP(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)600ml)を、ナイアガラビーター(容量23リットル、東西精器社製)を用いて200分間叩解し、パルプ分散液(K)(パルプ濃度2%、叩解後の加重平均繊維長:1.61mm)を得た。
パルプ分散液(K)を脱水して濃度3%にし、0.1%硫酸でpH6に調整し、50℃になるまで水浴で温めた後、酵素optimaseCX7L(EG活性/CBHI活性=3、Genencor社製)をパルプ(固形分換算)に対して3%添加し、50℃、1時間撹拌しながら反応させて、酵素処理を施した。その後、パルプ分散液(K)を95℃以上、20分間加熱して、酵素を失活させて、酵素処理分散液(L)を得た。
酵素処理分散液(L)を1%パルプ液の電導度を所定値以下(10μS/cm)になるまで、前記酵素処理分散液をイオン交換水で洗浄しながら減圧濾過を行った(No.2濾紙使用、ADVANTEC社)。濾紙上の残留物をイオン交換水に入れて攪拌し、0.5%の分散液を調製した。その分散液を、高速回転型解繊機(エム・テクニック社製「クレアミックス」)を用いて、21,500回転、30分間微細化処理(解繊)を施して、解繊パルプ分散液(M)を得た。
解繊パルプ分散液(M)を、セルロース濃度が0.1%になるように濃度調整してから、孔径0.5μmのメンブレンフィルター(T050A090C、ADVANTEC社製)上で吸引濾過し、ウェットシートを作製した。そのウェットシートを、シリンダードライヤー(90℃、10分間)、オーブン(130℃、1分間)の2段階で乾燥して、100g/m
2の不織布状のシートを作製した。
【0121】
<実施例14>
実施例13における解繊パルプ分散液(M)をセルロース濃度が0.2%になるように薄め、12,000G×10分間遠心分離(遠心分離機:コクサン社製「H−200NR」)し、上澄み液(N)を得た。そして、解繊パルプ分散液(M)の代わりに上澄み液(N)を用いた以外は実施例13と同様にしてシートを作製した。
【0122】
<実施例15>
実施例13における微細化処理において、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社「Panda Plus 2000」)で、120MPa×1パス処理を行い、高速回転型解繊機(エムテクニック社製「クレアミックス」)で実施例13と同条件で処理し、解繊パルプ分散液(O)を得た。そして、解繊パルプ分散液(M)の代わりに解繊パルプ分散液(O)を用いた以外は実施例13と同様にしてシートを得た。
【0123】
<実施例16>
実施例15における解繊パルプ分散液(O)をセルロース濃度が0.2%になるように調整し、12,000G×10分間遠心分離(遠心分離機:コクサン社製「H−200NR」)し、上澄み液(P)を得た。そして、解繊パルプ分散液(M)の代わりに上澄み液(P)を用いた以外は実施例13と同様にしてシートを作製した。
【0124】
<実施例17>
リン酸二水素ナトリウム二水和物1.69g、及びリン酸水素二ナトリウム1.21gを3.39gの水に溶解させ、リン酸系化合物の水溶液(以下、「リン酸化試薬」という。)を得た。このリン酸化試薬のpHは25℃で6.0であった。
NBKP(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)600ml)を、50℃の5%の硫酸水溶液中で15分間還流しながら加熱した後、イオン交換水で充分に洗浄して、硫酸処理パルプを得た。得られた硫酸処理パルプを含水率80%になるようイオン交換水で希釈し、パルプスラリーを得た。このパルプスラリー15gに前記リン酸化試薬6.29g(乾燥パルプ100質量部に対してリン元素量として20質量部)を加え、105℃の送風乾燥機(ヤマト科学株式会社DKM400)を用い、15分おきに混練しながら質量が恒量となるまで乾燥させた。ついで150℃の送風乾燥機で1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入した。
次いで、リン酸基を導入したセルロースに300mlのイオン交換水を加え、攪拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを300mlのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液5mlを少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、300mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに2回繰り返した。
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加後、攪拌し、0.5質量%のスラリーにした。このパルプスラリーを、解繊処理装置(エム・テクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理して、解繊パルプ分散液を得た。
得られた解繊パルプ分散液をSUS304製耐圧容器に300mL分取し、オートクレーブで120℃、2時間加熱して加水分解処理してリン酸基を脱離させた。その後、加水分解処理した分散液に、前記分散液に対し体積で1/10のイオン交換樹脂を添加し、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、イオン交換樹脂を分散液から除去する処理を行った。これにより、リン酸基脱離解繊パルプ分散液を得た。前記イオン交換樹脂添加、振とう処理及びイオン交換樹脂除去処理の一連の工程は3回行った。1回目及び3回目ではコンディショニング済みの強酸性イオン交換樹脂(例えば、アンバージェット1024;オルガノ株式会社)を用いた。2回目ではコンディショニング済みの強塩基性イオン交換樹脂(例えば、アンバージェット4400;オルガノ株式会社)を用いた。
得られたリン酸基脱離解繊パルプ分散液を、セルロース濃度が0.2%になるように薄め、12,000G×10分間遠心分離(遠心分離機:コクサン社製「H−200NR」)して、上澄み液(Q)を得た。
そして、解繊パルプ分散液(M)の代わりに上澄み液(Q)を用いた以外は実施例13と同様にしてシートを作製した。
【0125】
<比較例4>
NBKP(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)600ml)の0.5%分散液を調製した。その分散液を、エム・テクニック社製クレアミックス2.2Sを用いて、15分間解繊処理し、平均繊維径を測定した。平均繊維径が190nmになるまで解繊処理を繰り返して、解繊パルプ分散液(R)を得た。
そして、解繊パルプ分散液(M)の代わりに解繊パルプ分散液(R)を用いた以外は実施例13と同様にしてシートを作製した。
【0126】
<比較例5>
実施例17において、NBKPを硫酸水溶液で処理しなかった以外は実施例17と同様にしてシートを作製した。
【0127】
<比較例6>
NBKP(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)600ml)40g(絶乾セルロース換算)を、0.1mol/L硫酸500mlに添加し、撹拌して懸濁液を得た。その懸濁液を、濾紙を用いて減圧濾過して、希硫酸で湿潤したパルプを得た。得られたパルプをセパラブルフラスコ内に収め、そのセパラブルフラスコ内に、オゾンガス発生機(エコデザイン(株)製ED−OG−A10型)にて発生させたオゾン含有酸素ガス(ガス流速2L/min、オゾン濃度30g/m
3、オゾン発生量3.6g/時間)を0.5時間導入してオゾン処理を施した。オゾン処理時の温度は室温(約25℃)とした。
次いで、セパラブルフラスコよりオゾン処理パルプを取り出し、イオン交換水への懸濁・洗浄を繰り返し、洗浄水のpHが4.5以上になった時点で洗浄を終了した。次いで、洗浄後のパルプを、濾紙で減圧濾過して、オゾン処理セルロース繊維(固形分濃度20%)を得た。
得られたオゾン処理セルロース繊維を50g(絶乾セルロース繊維として10g)に、pH4に調整された2%亜塩素酸ナトリウム水溶液150gを注ぎ、撹拌した後、室温で48時間静置して追酸化処理を行った。追酸化処理時の温度は室温(約25℃)とした。追酸化処理を施したパルプをイオン交換水で懸濁及び洗浄を繰り返し行い、洗浄水のpHが8以下になった時点で洗浄を終了した。その後、濾紙を用いて減圧濾過し、得られたパルプにイオン交換水を添加した後、攪拌して、0.5%のスラリーを得た。このパルプスラリーを、解繊処理装置(エム・テクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理して、解繊パルプ分散液を得た。
得られた解繊パルプ分散液を、セルロース濃度が0.2%になるように薄め、12,000G×10分間遠心分離(遠心分離機:コクサン社製「H−200NR」)し、上澄み液(S)を得た。
そして、解繊パルプ分散液(M)の代わりに上澄み液(S)を用いた以外は実施例13と同様にしてシートの作製を試みた。
【0128】
<比較例7>
オゾン濃度を180g/m
3に変更した以外は比較例6と同様にしてシートを作製した。
【0129】
<比較例8>
NBKP(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)600ml)を含水率80%になるようイオン交換水で希釈し、パルプスラリーを得た。このパルプスラリー15gに、実施例17で使用したのと同様のリン酸化試薬6.29g(乾燥パルプ100質量部に対してリン元素量として20質量部)を加え、105℃の送風乾燥機(ヤマト科学株式会社 DKM400)を用い、15分おきに混練しながら質量が恒量となるまで乾燥させた。次いで、150℃の送風乾燥機で1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入した。
次いで、リン酸基を導入したセルロースに300mlのイオン交換水を加え、攪拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを300mlのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液5mlを少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、300mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに2回繰り返した。
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加後、攪拌し、0.5質量%のスラリーにした。このパルプスラリーを、解繊処理装置(エム・テクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理して、解繊パルプ分散液を得た。
得られた解繊パルプ分散液を、セルロース濃度が0.2%になるように薄め、12,000G×10分間遠心分離(遠心分離機:コクサン社製「H−200NR」)し、上澄み液(T)を得た。
そして、解繊パルプ分散液(M)の代わりに上澄み液(T)を用いた以外は実施例13と同様にしてシートの作製を試みた。しかし、濾水が困難で、シート化できなかった。
【0130】
(評価)
実施例13〜17及び比較例4〜8において得られた微細繊維状セルロースについて、平均繊維幅、重合度、アスペクト比、及び酸基の含有量を測定した。測定結果を表3に示す。
また、実施例13〜17及び比較例4〜8において得られたシートについて、作製時の濾過時間、シートの引張強度、シートの黄色度、分散液の流動性及び粘度を測定した。測定結果を表3に示す。
なお、実施例13,15,17は比較例である。
【0131】
[平均繊維幅]
平均繊維幅については、上記「微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定」に記載の方法で測定した。
[重合度]
重合度については、上記「重合度の測定」に記載の方法で測定した。
[アスペクト比]
TEM写真の画像解析より繊維長、繊維幅を測定し、(繊維長/繊維幅)よりアスペクト比を求めた。
[酸基含有量]
酸基含有量については、上記「酸基の含有量の測定」に記載の方法で測定した。
【0132】
[濾過時間]
実施例13〜21及び比較例4〜8でシートを作製する際に、濃度が0.1%のセルロース繊維含有スラリーを400ml採取し、減圧濾過を行った。濾過器としてはアドバンテック社製KG−90を用い、ガラスフィルターの上にアドバンテック社製の0.5μm孔径、48cm
2の面積を有するPTFE製メンブランフィルター(T050A090C、ADVANTEC社製)を載せた。圧力が−0.09MPa(絶対真空度10kPa)になるように減圧濾過し、フィルター上の溶媒含有セルロース繊維の質量が4gになった時間を濾過時間と定義した。濾過時間が短い程、濾水性に優れる。
【0133】
[シートの引張強度]
得られたシートを調湿後(23℃、湿度50%、4時間)、厚みを測定し、次いで、定速伸張形引張試験機を用いて、JIS P8113に基づき引張強度を測定した。その際、引張速度5mm/分、荷重250N、シート試験片幅5.0±0.1mm、スパン長30±0.1mmとした。
【0134】
[シートの黄色度]
実施例13〜21及び比較例4〜8で0.1%に濃度調整した解繊パルプ分散液或いはその上澄み155gを分取し、減圧濾過を行った。濾過器としてはアドバンテック社製KG−90を用い、ガラスフィルターの上にアドバンテック社製の0.5μm孔径、48cm
2の面積を有するPTFE製メンブランフィルター(T050A090C、ADVANTEC社製)を載せた。PTFE製メンブランフィルターの上にセルロース繊維の堆積物が得られた。このセルロース繊維堆積物に3.76mlのエチレングリコールモノt−ブチルエーテルを注ぎ、再び減圧濾過して堆積物を得た。この堆積物を120℃に加熱したシリンダードライヤーにて5分間乾燥した後、さらに130℃の送風乾燥機で2分間乾燥させ、多孔性のシートを得た。得られたシートを200℃、真空下で4時間加熱した後、ASTM規格に準拠し、E313黄色インデックスを、GretagMacbeth社製ハンディ分光光度計(Spectro Eye)を用いて測定した。
【0135】
[分散液の流動性及び粘度]
解繊パルプ分散液又は上澄み液を、孔径0.5μmのメンブレンフィルター(T050A090C、ADVANTEC社製)上で吸引濾過することによって濃縮した。分散液の濃度が1%になったところで、ろ過作業を終了した。得られた分散液を、ホモミキサー(IKA社製、ULTRA−TURRAX、T−18)を用い、11000回転/分の条件で2分間処理し、24時間静置した後、流動性を下記の基準で目視により評価した。
A:流動性が非常によい。
B:分散液がゲル状傾向であり、流動性が多少劣る。
C:分散液のゲル状傾向が強く、流動性が著しく劣る。
また、濃度0.1%の分散液について粘度を測定した。粘度の測定では、B型粘度計を用い、JIS K7117−1に準じて測定した。
【0136】
【表3】
【0137】
平均繊維幅が150nm以下、重合度が50以上500未満、酸基の含有量が0.1mmol/g以下にある実施例13〜21の微細繊維状セルロースは、濾水時間が短く、容易にシート化され、得られたシートは引張強度が高く、黄色度が低かった。また、分散液の流動性は高く、粘度は低かった。
これに対し、平均繊維幅が190nm、重合度が1100である比較例4の微細繊維状セルロースは、シート化した際の引張強度が低かった。また、分散液の流動性が低かった。
重合度が780の比較例5の微細繊維状セルロースは、分散液の流動性が低く、粘度が高かった。
酸基含有量0.13mmol/gの比較例6の微細繊維状セルロース、酸基含有量0.25mmol/gの比較例7の微細繊維状セルロースは、濾水時間が長く、シート化した際の引張強度が低かった。
重合度が890、酸基の含有量が0.71mmol/gの比較例7の微細繊維状セルロースは、水の保持性が高くてシート化できなかった。また、分散液の流動性が低く、粘度はやや高めであった。
【0138】
<実施例18>
実施例13において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.06の酵素液を用いた以外はと実施例13と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0139】
<実施例19>
実施例13において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.11の酵素液を用いた以外はと実施例13と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0140】
<実施例20>
実施例13において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.22の酵素液を用いた以外はと実施例13と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0141】
<実施例21>
実施例13において、酵素処理でEG活性/CBHI活性=2.7、かつBGL活性/CBHI活性=0.30の酵素液を用いた以外はと実施例13と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
EG活性/CBHI活性=2.7、及びBGL活性/CBHI活性=の比率0.30以下の条件で酵素処理し、前記条件で酵素処理したセルロース微細繊維からシートを作成した場合(実施例18〜21)では、シートの引張強度が高く、黄変度が低かった。また、分散液の流動性が高く、粘度は低かった。