(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遠赤外効果を有する物質を含む層に含まれるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、及び、ポリビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の調理器具。
前記耐食効果を有する物質を含む層に含まれるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、及び、ポリビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項7記載の調理器具。
プライマー層中のフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、及び、ポリビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項11に記載の調理器具。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の調理器具は、底面部と、底面部の外周から略上方向に立設する側面部とを備える。
【0022】
本開示の調理器具としては、
図1に示すように、底面部11aの外周から立設する側面部11bを備える基材11上に底面及び側面積層体塗膜を有する態様が挙げられる。
本開示の調理器具は、基材を含むことが好ましく、基材の底面部の内表面に形成された底面積層体塗膜、及び、基材の側面部の内表面に形成された側面積層体塗膜を有することが好ましい。
【0023】
上記基材の材料としては特に限定されないが、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属単体及びこれらの合金類等の金属;ホーロー、ガラス、セラミック等の非金属無機材料等が挙げられる。上記合金類としては、ステンレス等が挙げられる。上記基材の材料としては、金属が好ましく、アルミニウム又はステンレスがより好ましい。
【0024】
上記基材は、必要に応じ、脱脂処理、粗面化処理等の表面処理を行ったものであってもよい。上記粗面化処理の方法としては特に限定されず、例えば、酸又はアルカリによるケミカルエッチング、陽極酸化(アルマイト処理)、サンドブラスト等が挙げられる。
【0025】
上記基材は、380℃で空焼きして油等の不純物を熱分解除去する脱脂処理を実施したものであってもよい。また、表面処理後にアルミナ研掃材を用いて粗面化処理を施したアルミニウム基材を使用してもよい。
【0026】
上記底面部及び側面部は、底面部及び側面部として認識できるものであればよいが、例えば、底面部が水平に対して15度未満の角度で形成された部位であり、側面部が水平に対して15度以上の角度で立設する部位であることが好ましい。水平に対する角度は、例えば、
図1に示すαで示される角度である。
底面部と側面部とが連続する半球状の調理器具である場合、水平に対して15度未満の角度の部位を底面部、15度以上の角度の部位を側面部とみなすこともできる。
【0027】
本開示の調理器具は、底面部の内表面に底面積層体塗膜を有し、側面部の内表面に底面積層体塗膜とは異なる側面積層体塗膜を有し、底面積層体塗膜の色調が、側面積層体塗膜の色調と異なる。底面積層体塗膜と側面積層体塗膜の色調が異なることによって、意匠性に優れた調理器具となる。意匠性に優れることで購買欲をかきたてることができる。
上記色調は、測色色差計、例えば、日本電色工業(株)製のcolor meter ZE6000を用いて測定することができる。
【0028】
本開示の調理器具は、底面部と側面部との色調が異なるツートンカラーであってもよいし、底面部から側面部に向かって段階的に色調が変化するグラデーションを有していてもよい。側面部は、1種の側面積層体塗膜を有するものであってもよいし、色調の異なる2種以上の側面積層体塗膜を有していてもよい。2種以上の側面積層体塗膜を有する場合、少なくとも1種の色調が底面積層体塗膜の色調と異なればよい。
底面部は、1種の底面積層体塗膜を有するものであってもよいし、色調の異なる2種以上の底面積層体塗膜を有していてもよい。2種以上の底面積層体塗膜を有する場合、少なくとも1種の色調が側面積層体塗膜の色調と異なればよい。
【0029】
本開示の調理器具は、底面部の内表面の少なくとも一部に底面積層体塗膜を有し、側面部の内表面の少なくとも一部に底面積層体塗膜とは異なる側面積層体塗膜を有していればよい。底面部の内表面の全面に底面積層体塗膜が形成されている必要はなく、側面部の内表面の全面に底面積層体塗膜が形成されている必要もない。
【0030】
上記底面積層体塗膜と側面積層体塗膜との色調の相違は、例えば、底面積層体塗膜及び側面積層体塗膜に異なる物質を添加することで実現することができる。
添加する物質としては底面積層体塗膜と側面積層体塗膜との色調を相違させることができるものであれば特に限定されない。例えば、後述する遠赤外効果を有する物質、耐食効果を有する物質が挙げられる。
【0031】
本開示の調理器具において、底面積層体塗膜の色調(L
*1,a
*1,b
*1)と側面積層体塗膜の色調(L
*2,a
*2,b
*2)との色差(ΔE
*ab)は以下の式より計算される。
【数1】
この値(色差)が、2.3超であることが好ましい。上記色差は、2.5以上であることがより好ましく、5.0以上であることが更に好ましく、10.0以上であることが特に好ましい。
本開示の調理器具が、色差の異なる2種以上の底面積層体塗膜及び側面積層体塗膜を有する場合、色差が最も大きい底面積層体塗膜と側面積層体塗膜との組合せが上記範囲であればよい。
【0032】
本開示の調理器具は、底面積層体塗膜の遠赤外効果が、側面積層体塗膜の遠赤外線効果と異なることが好ましい。底面と側面とで遠赤外線効果が異なることによって、調理される食材への熱効率を変えることができ、調理に幅をもたせることができる。
遠赤外線効果が異なることは、遠赤外線輻射率測定装置を用いて200℃の遠赤外線輻射率(積分輻射率)を測定することで確認することができる。
【0033】
上記側面積層体塗膜は、200℃の遠赤外線輻射率が、底面積層体塗膜の遠赤外線輻射率より大きいことが好ましい。通常の調理では、調理器具の底面部から加熱することになるため底面部に接する部分の加熱割合が大きくなる。側面積層体塗膜の遠赤外線輻射率が底面積層体塗膜よりも大きいことによって、調理される食材に、より均一に熱を伝導させることができる。
【0034】
本開示の調理器具は、比率(側面積層体塗膜の200℃の遠赤外線輻射率)/(底面積層体塗膜の200℃の遠赤外線輻射率)が、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることが更に好ましい。また、上記比率は大きい方が好ましく上限は特に限定されないが、例えば、1.4であってもよい。
本開示の調理器具が、遠赤外効果が異なる2種以上の底面積層体塗膜及び2種以上の側面積層体塗膜を有する場合、遠赤外効果の差が最も大きい底面積層体塗膜と側面積層体塗膜との組合せが上記範囲であればよい。
【0035】
上記側面積層体塗膜の200℃の遠赤外線輻射率は、0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.90以上が更に好ましい。
本開示の調理器具が、遠赤外効果が異なる2種以上の側面積層体塗膜を有する場合、少なくとも1種の側面積層体塗膜の遠赤外線輻射率が上記範囲であればよい。側面部に形成された全ての側面積層体塗膜の遠赤外線輻射率が上記範囲であることが好ましい。
【0036】
上記底面積層体塗膜の200℃の遠赤外線輻射率は、0.80未満が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.70以下が更に好ましい。
本開示の調理器具が、遠赤外効果が異なる2種以上の底面積層体塗膜を有する場合、少なくとも1種の底面積層体塗膜の遠赤外線輻射率が上記範囲であればよい。底面部に形成された全ての底面積層体塗膜の遠赤外線輻射率が上記範囲であることが好ましい。
【0037】
上記遠赤外線輻射率は、遠赤外線輻射率測定装置(日本電子(株)製 JIR5500、赤外放射ユニットIR−IRR200装備)を用いて200℃で測定した値である。
【0038】
本開示の調理器具は、底面積層体塗膜の耐食効果が、側面積層体塗膜の耐食効果と異なることが好ましい。上記耐食効果は、例えば、塗膜表面に、カッターナイフで長さ50mmの基材に達する傷を交差するように2本つけ(クロスカット)、この試験用塗装板を、おでんの素(ヱスビー食品社製)20gを水1リットルに溶解した溶液中に浸漬し、70℃に保温して500時間経過後ブリスター(塗膜の膨れ)の発生等の異常の有無により確認することができる。
以下、側面積層体塗膜と底面積層体塗膜の好適な態様についてより詳細に説明する。
【0039】
上記側面積層体塗膜は、二層構造であってもよいし、三層以上の構造であってもよい。
【0040】
上記側面積層体塗膜は、遠赤外効果を有する物質を含む層(以下「遠赤外効果物質含有層」ともいう)を含むことが好ましい。遠赤外線効果を有する物質を含むことで、側面からの熱伝導効率を向上させ、調理をより均一に行うことができる。
【0041】
上記遠赤外効果を有する物質としては、セラミックス及び炭素から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0042】
上記セラミックスとしては、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化タリウム、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及びこれらの複合酸化物、ホウ化アルミニウム、ホウ化バリウム、ホウ化カルシウム、ホウ化セリウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ランタン、ホウ化ストロンチウム、ホウ化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化ホウ素、炭化クロム、炭化ハフニウム、炭化モリブデン、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化タリウム、炭化タングステン、炭化イットリウム、並びに、炭化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、及び窒化ホウ素からなる群より選択される少なくとも1種である。
上記炭素としては、カーボンブラック、備長炭、グラファイト等が挙げられる。
【0043】
上記遠赤外効果物質含有層は、遠赤外効果を有する物質を10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましく、20質量%以上含むことが更に好ましい。また、50質量%以下含むことが好ましく、45質量%以下含むことがより好ましく、40質量%以下含むことが更に好ましい。
【0044】
上記遠赤外効果物質含有層は、更に、フッ素樹脂を含むことが好ましい。上記フッ素樹脂としては、主鎖を構成する炭素原子に結合している水素原子の全部がフッ素原子により置換されている重合体を用いることができる。上記フッ素樹脂は、非溶融加工性であってもよいし、溶融加工性であってもよい。
【0045】
上記フッ素樹脂は、フッ素原子により水素原子の一部又は全部が置換されているビニル基を分子中に含有する不飽和単量体を重合することにより得られるものであることが好ましい。上記フッ素樹脂は、上記含フッ素不飽和単量体の単独重合体であってもよく、2種以上の上記含フッ素不飽和単量体の共重合体であってもよい。また、上記フッ素樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
上記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体〔ETFE〕、及び、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種であり、更に好ましくはPTFEである。
上記フッ素樹脂としては、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記PTFEとしては、TFE単独重合体であってもよいし、変性PTFEであってもよい。本明細書において、上記「変性PTFE」とは、得られる共重合体に溶融加工性を付与しない程度の少量の共単量体をTFEと共重合してなるものを意味する。上記少量の共単量体としては特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕等が挙げられる。上記少量の共単量体が上記変性PTFEに付加されている割合は、その種類によって異なるが、例えば、PAVEを用いる場合、通常、上記TFEと上記少量の共単量体との合計質量の0.001〜1質量%であることが好ましい。
【0048】
上記PTFE以外のフッ素樹脂(例えば、PFA、FEP、ETFE等)は、溶融加工性であることが好ましい。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、上記PTFE以外のフッ素樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分であることが通常である。
【0049】
上記MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、フッ素樹脂の種類によって定められた測定温度(例えば、PFAやFEPの場合は372℃、ETFEの場合は297℃)、荷重(例えば、PFA、FEP及びETFEの場合は5kg)において内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0050】
上記PTFE以外のフッ素樹脂は、融点が150〜322℃未満であることが好ましく、200〜320℃であることがより好ましく、240〜320℃であることが更に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0051】
上記FEPは、HFP単位が2質量%を超え、20質量%以下であることが好ましく、10〜15質量%であることがより好ましい。
【0052】
上記PFAにおけるPAVEとしては、炭素数1〜6のアルキル基を有するものが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕がより好ましい。
上記PFAは、PAVE単位が2質量%を超え、5質量%以下であることが好ましく、2.5〜4.0質量%であることがより好ましい。
【0053】
上記HFP、PFAは、それぞれ上述の組成を有するものであれば、更に、その他の単量体を重合させたものであってよい。上記その他の単量体として、例えば、上記FEPである場合、更にPAVEが挙げられ、上記PFAである場合、更にHFPが挙げられる。上記その他の単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0054】
上記その他の単量体は、その種類によって異なるが、通常、フッ素樹脂の質量の1質量%以下であることが好ましい。より好ましい上限は0.5質量%であり、更に好ましい上限は0.3質量%である。
【0055】
上記フッ素樹脂は、従来公知の方法で製造することができる。
【0056】
上記遠赤外効果物質含有層は、フッ素樹脂を20質量%以上含むことが好ましく、25質量%以上含むことがより好ましく、30質量%以上含むことが更に好ましい。また、90質量%以下含むことが好ましく、85質量%以下含むことがより好ましく、80質量%以下含むことが更に好ましく、70質量%以下含むことが更により好ましく、60質量%以下含むことが特に好ましい。
上記遠赤外効果物質含有層は、フッ素樹脂を50質量%以上含んでもよく、55質量%以上含んでもよく、60質量%以上含んでもよい。
【0057】
上記側面積層体塗膜が、基材の直上に設けられた遠赤外効果物質含有層を有する場合、上記遠赤外効果物質含有層は耐熱性樹脂を含むことも好ましい。耐熱性樹脂としては、後述するプライマー層にて説明するものを好適に使用できる。
この場合、フッ素樹脂と耐熱性樹脂との合計が20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であってもよく、55質量%以上であってもよいし、60質量%以上であってもよい。また、フッ素樹脂と耐熱性樹脂との合計が90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以下であることが更により好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
耐熱性樹脂の含有量は、耐熱性樹脂及びフッ素樹脂の固形分合計量の15〜50質量%であることが好ましい。
【0058】
上記遠赤外効果物質含有層は、遠赤外効果を有する物質、フッ素樹脂及び耐熱性樹脂の合計が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であってもよい。
【0059】
上記遠赤外効果物質含有層は、遠赤外効果を有する物質、フッ素樹脂及び耐熱性樹脂以外の物質を含んでいてもよく、例えば、顔料等を含むことができる。
遠赤外効果を有する物質、フッ素樹脂及び耐熱性樹脂以外の物質は、10質量%未満であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であってもよい。
【0060】
上記遠赤外効果物質含有層の厚みは、遠赤外効果をより効果的に発揮する観点から10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましい。また、塗膜物性の観点から、100μm以下であることが好ましい。
【0061】
本開示の調理器具は、側面部内表面における遠赤外効果物質含有層を含む側面積層体塗膜を備える面積が、側面部の内表面の面積に対して50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0062】
上記側面積層体塗膜は、遠赤外効果物質含有層を一層含むものであってもよいし、二層以上含むものであってもよい。
遠赤外効果物質含有層以外の層を含んでいてもよく、例えば、プライマー層、クリヤー層、後述する耐食性を有する物質を含む層等を含んでいてもよい。プライマー層、クリヤー層については後述する。
【0063】
上記側面積層体塗膜は、プライマー層と、遠赤外効果を有する物質を含む層とを含み、該遠赤外効果を有する物質は、セラミックス及び炭素から選択される少なくとも1種であることが好ましい態様の一つである。
【0064】
上記側面積層体塗膜は、二層構造を有してもよいし、三層構造を有してもよいし、四層以上の構造を有していてもよい。例えば、基材の側から、
プライマー層/遠赤外効果物質含有層の二層構造、
第1の遠赤外効果物質含有層/第2の遠赤外効果物質含有層の二層構造、
プライマー層/第1の遠赤外効果物質含有層/第2の遠赤外効果物質含有層の三層構造、
第1の遠赤外効果物質含有層/第2の遠赤外効果物質含有層、クリヤー層の三層構造、
プライマー層/第1の遠赤外効果物質含有層/第2の遠赤外効果物質含有層/クリヤー層の四層構造が挙げられる。
上記第1の遠赤外効果物質含有層と第2の遠赤外効果物質含有層は、同じ組成の塗料から形成されたものであってもよいし、異なる組成の塗料から形成されたものであってもよい。
また、側面積層体塗膜は、プライマー層、遠赤外効果物質含有層及びクリヤー層以外にも、他の層を更に含んでいてもよい。
【0065】
上記側面積層体塗膜の厚みは調理器具の用途等によって適宜選択すればよいが、例えば、10〜100μmであることが好ましい。
【0066】
上記底面積層体塗膜は、耐食効果を有する物質を含む層(以下「耐食効果物質含有層」ともいう)を含むことが好ましい。通常の調理では、調理器具の底面部から加熱することになるため底面部の耐食性に優れることが好ましい。底面積層体塗膜が耐食効果を有する物質を含む層を含むことによって、腐食しにくい調理器具にすることができる。
上記耐食効果を有する物質は、ガラス、金属、天然鉱物、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、並びに、鱗片状粒子及びその金属酸化物被覆物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0067】
本明細書において、粒子が鱗片状であるとは、アスペクト比(平均粒径/平均厚み)が5以上である粒子を意味する。上記アスペクト比は走査型電子顕微鏡(SEM)により測定する平均粒径及び平均厚みから算出することができ、30個のサンプルについて測定したアスペクト比の平均値を採用する。
上記鱗片状粒子としては、シリカフレーク、マイカフレーク、フレーク状ガラス、アルミフレーク等が挙げられる。
【0068】
また、上記鱗片状粒子の金属酸化物被覆物は、アスペクト比が5〜750であることが好ましい。より好ましくは、20〜200である。更に好ましい下限は30であり、更に好ましい上限は100である。上記金属酸化物被覆鱗片状顔料のアスペクト比は、上述した方法により測定することができる。
【0069】
また、鱗片状粒子を被覆する金属酸化物としては、金属の酸化物であれば特に限定されず、酸化チタン(TiO
2(二酸化チタン))、酸化鉄(FeO、Fe
2O
3(三酸化二鉄)、Fe
3O
4(四酸化三鉄))、酸化スズ(SnO
2(二酸化スズ))、酸化ケイ素(SiO
2(二酸化ケイ素))等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0070】
上記天然鉱物としては、例えば、マイカ、タルク等が挙げられる。
【0071】
上記耐食効果物質含有層は、耐食効果を有する物質を0.01質量%以上含むことが好ましく、0.05質量%以上含むことがより好ましく、0.1質量%以上含むことが更に好ましく、1質量%以上含むことが更により好ましい。耐食効果を有する物質の含有量は、2質量%以上であってもよいし、3質量%以上であってもよい。また、40質量%以下含むことが好ましく、30質量%以下含むことがより好ましく、20質量%以下含むことが更に好ましく、15質量%以下含むことが更により好ましく、10質量%以下含むことが特に好ましい。
【0072】
上記耐食効果物質含有層は、更に、フッ素樹脂を含むことが好ましい。フッ素樹脂としては、遠赤外効果物質含有層で挙げたフッ素樹脂を採用できる。上記フッ素樹脂は、PTFE、PFA、FEP、PCTFE、ETFE、及び、PVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0073】
上記耐食効果物質含有層は、フッ素樹脂を60質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが好ましく、85質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましい。また、99.99質量%以下含むことが好ましく、99.95質量%以下含むことが好ましく、99.9質量%以下含むことが好ましく、99質量%以下含むことが好ましく、98質量%以下含むことがより好ましく、97質量%以下含むことが更に好ましい。
【0074】
上記耐食効果物質含有層は耐熱性樹脂を含むことも好ましい。耐熱性樹脂としては、後述するプライマー層にて説明するものを好適に使用できる。
この場合、フッ素樹脂及びフッ素樹脂と耐熱性樹脂との合計が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。また、99.99質量%以下であることが好ましく、99.95質量%以下であることがより好ましく、99.9質量%以下であることが更により好ましく、99質量%以下含むことが特に好ましく、98質量%以下含むことがより好ましく、97質量%以下含むことが更に好ましい。
また、耐熱性樹脂の含有量は、耐熱性樹脂及びフッ素樹脂の固形分合計量の15〜50質量%であることが好ましい。
【0075】
上記耐食効果物質含有層は、耐食効果を有する物質及びフッ素樹脂の合計が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であってもよい。
【0076】
上記耐食効果物質含有層は、耐食効果を有する物質、フッ素樹脂及び耐熱性樹脂以外の物質を含んでいてもよく、例えば、顔料等を含むことができる。遠赤外効果を有する物質及びフッ素樹脂以外の物質は、10質量%未満であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であってもよい。
【0077】
本開示の調理器具は、底面部内表面における耐食効果物質含有層を含む底面積層体塗膜を備える面積が、底面部の内表面の面積に対して50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0078】
上記底面積層体塗膜は、耐食効果物質含有層を一層含むものであってもよいし、二層以上含むものであってもよい。
耐食効果物質含有層以外の層を含んでいてもよく、例えば、プライマー層、クリヤー層等を含んでいてもよい。
【0079】
底面積層体塗膜は、二層構造を有してもよいし、三層構造を有してもよいし、四層以上の構造を有していてもよい。
例えば、プライマー層/耐食効果物質含有層の二層構造、第1の耐食効果物質含有層/第2の耐食効果物質含有層の二層構造、プライマー層/第1の耐食効果物質含有層/第2の耐食効果物質含有層の三層構造、第1の耐食効果物質含有層/第2の耐食効果物質含有層/クリヤー層の三層構造、プライマー層/第1の耐食効果物質含有層/第2の耐食効果物質含有層/クリヤー層の四層構造が挙げられる。
上記第1の耐食効果物質含有層と第2の耐食効果物質含有層は、同じ組成の塗料から形成されたものであってもよいし、異なる組成の塗料から形成されたものであってもよい。
また、底面積層体塗膜は、プライマー層、耐食効果物質含有層及びクリヤー層以外にも、他の層を更に含んでいてもよい。
【0080】
上記底面積層体塗膜は、プライマー層と、耐食効果を有する物質を含む層とを含み、前記耐食効果を有する物質は、ガラス、金属、天然鉱物、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、並びに、鱗片状粒子及びその金属酸化物被覆物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0081】
上記側面積層体塗膜及び底面積層体塗膜におけるプライマー層及びクリヤー層は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよいが、製造の簡便さから同じものであることが好ましい。
【0082】
上記プライマー層は、耐熱性樹脂を含むことが好ましい。上記耐熱性樹脂は、通常、耐熱性を有すると認識されている樹脂であればよい。本明細書において、「耐熱性」とは、150℃以上の温度における連続使用が可能である性質を意味する。但し、上記耐熱性樹脂としては、上述のフッ素樹脂を除く。
【0083】
上記耐熱性樹脂としては特に限定されないが、ポリアミドイミド樹脂〔PAI〕、ポリイミド樹脂〔PI〕、ポリエーテルスルホン樹脂〔PES〕、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、PAI、PI及びPESからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0084】
上記PAIは、分子構造中にアミド結合及びイミド結合を有する重合体からなる樹脂である。上記PAIとしては特に限定されず、従来公知のPAIを用いることができる。
【0085】
上記PIは、分子構造中にイミド結合を有する重合体からなる樹脂である。上記PIとしては特に限定されず、従来公知のPIを用いることができる。
【0086】
上記PESは、構成分子中にスルホニル基(−SO
2−)を有する重合体からなる樹脂である。上記PESとしては特に限定されず、従来公知のPESを用いることができる。
【0087】
上記耐熱性樹脂は、ポリエーテルスルホン樹脂と、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂のいずれか一方又は両方とを含み、上記ポリエーテルスルホン樹脂は、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂の合計量の65〜85質量%であることが好ましい。
【0088】
上記プライマー層は、フッ素樹脂を含むことが好ましい。プライマー層中のフッ素樹脂は、PTFE、PFA、FEP、PCTFE、ETFE、及び、PVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0089】
上記プライマー層は、耐熱性樹脂及びフッ素樹脂を含み、耐熱性樹脂の含有量は、耐熱性樹脂及びフッ素樹脂の固形分合計量の15〜50質量%であることが好ましい。
また、上記プライマー層は、耐熱性樹脂の含有量が10質量%以上であることが好ましい。
【0090】
上記プライマー層は、上記耐熱性樹脂及びフッ素樹脂以外に、添加剤を更に含んでもよい。上記添加剤としては特に限定されず、調理器具の内表面を形成するコーティングに使用できるものであれば特に限定されない。
【0091】
上記プライマー層は、厚みが5〜40μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。厚みが薄過ぎると、プライマー表面のアンカー効果が期待できないのと、ピンホールが発生し易く、積層体の耐食性が低下するおそれがある。厚みが厚過ぎると、クラック或いは膨れ等の塗膜欠陥が生じ易くなり、積層体の耐摩耗性の低下、硬度の低下、耐食性が低下するおそれがある。上記プライマー層の厚みの更に好ましい上限は、30μmであり、特に好ましい上限は、25μmである。
【0092】
本開示の調理器具は、上記プライマー層が1層または2層以上であってもよい。また、基材の直上に形成された層に耐熱性樹脂が含まれる場合はプライマー層を省くことができる。
【0093】
上記クリヤー層は、フッ素樹脂を含むことが好ましい。クリヤー層中のフッ素樹脂は、PTFE、PFA、FEP、PCTFE、ETFE、及び、PVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0094】
上記クリヤー層は、フッ素樹脂の含有量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であってもよい。
【0095】
上記クリヤー層は、フッ素樹脂以外の物質を含んでいてもよく、例えば、耐熱性樹脂等を含むことができる。フッ素樹脂以外の物質は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であってもよい。
次に、本開示の調理器具についてより具体的な態様を説明する。
【0096】
図1に示すように、底面積層体塗膜が、プライマー層12/耐食効果物質含有層13aの二層構造であり、側面積層体塗膜が、プライマー層12/遠赤外効果物質含有層13bの二層構造である態様、
図2に示すように、底面積層体塗膜が、プライマー層22/耐食効果物質含有層23aの二層構造であり、側面積層体塗膜が、プライマー層22/第1の遠赤外効果物質含有層23b/第2の遠赤外効果物質含有層24bの三層構造である態様、
図3に示すように、底面積層体塗膜が、プライマー層32/耐食効果物質含有層33a/クリヤー層35の三層構造であり、側面積層体塗膜が、プライマー層32/第1の遠赤外効果物質含有層33b/第2の遠赤外効果物質含有層34b/クリヤー層35の四層構造である態様が挙げられる。
また、
図4に示すように、底面積層体塗膜が、プライマー層42/第1の耐食効果物質含有層43a/第2の耐食効果物質含有層44aの三層構造であり、側面積層体塗膜が、プライマー層42/遠赤外効果物質含有層43bの二層構造である態様、
図5に示すように、底面積層体塗膜が、プライマー層52/第1の耐食効果物質含有層53a/第2の耐食効果物質含有層54aの三層構造であり、側面積層体塗膜が、プライマー層52/第1の遠赤外効果物質含有層53b/第2の遠赤外効果物質含有層54bの三層構造である態様、
図6に示すように、底面積層体塗膜が、プライマー層62/第1の耐食効果物質含有層63a/第2の耐食効果物質含有層64a/クリヤー層65の四層構造であり、側面積層体塗膜が、プライマー層62/第1の遠赤外効果物質含有層63b/第2の遠赤外効果物質含有層64b/クリヤー層65の四層構造である態様が挙げられる。
更に、
図7に示すように、底面積層体塗膜が、第1の耐食効果物質含有層73a/第2の耐食効果物質含有層74aの二層構造であり、側面積層体塗膜が、第1の遠赤外効果物質含有層73b/第2の遠赤外効果物質含有層74bの二層構造である態様も挙げられる。この場合、第1の耐食効果物質含有層及び第1の遠赤外効果物質含有層がプライマー層として機能する。
【0097】
上記底面積層体塗膜は、遠赤外効果物質含有層を含まないものであってよく、上記側面積層体塗膜は、耐食効果物質含有層を含まないものであってよい。
【0098】
本開示の調理器具は、例えば、基材上に、必要に応じてプライマー用組成物を塗布することによりプライマー塗布膜を形成する工程(1)、底面部の基材上又は底面部のプライマー塗布膜上に、耐食効果を有する物質を含む組成物を塗布して耐食効果物質含有層塗布膜を形成する工程(2)、及び、側面部の基材上又は側面部のプライマー塗布膜上に、遠赤外効果を有する物質を含む組成物を塗布して遠赤外効果物質含有層塗布膜を形成する工程(3)、を含む方法により製造することができる。必要に応じて、底面部に形成された耐食効果物質含有層塗布膜上に、更に、耐食効果を有する物質を含む組成物を塗布して第2の耐食効果物質含有層塗布膜を形成してもよいし、クリヤー層用組成物を塗布してクリヤー層塗布膜を形成してもよい。また、側面部の遠赤外効果物質含有層塗布膜上に、更に、遠赤外効果を有する物質を含む組成物を塗布して第2の遠赤外効果物質含有層塗布膜を形成してもよいし、クリヤー層用組成物を塗布してクリヤー層塗布膜を形成してもよい。
【0099】
プライマー用組成物、耐食効果を有する物質を含む組成物、及び、遠赤外効果を有する物質を含む組成物は、形成する塗布膜の構成に応じて適宜公知の方法を用いて調製すればよい。
【0100】
上記組成物を塗布する方法としては特に限定されず、上記組成物が液状である場合、例えば、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフロー塗装、カーテンフロー塗装等が挙げられ、なかでも、スプレー塗装が好ましい。
【0101】
底面部と側面部とを塗り分ける方法としては特に限定されないが、例えば、底面部又は側面部の空いたマスクをプライマー塗布膜状に設置して、その上からミドルコート層、トップコート層等を形成するための組成物を塗布する方法等が挙げられる。
【0102】
上記工程(1)の後、工程(2)及び工程(3)を行う前に乾燥を行ってもよいし、乾燥を行わなくてもよい。更に、焼成を行ってもよいし、焼成を行わなくてもよい。
上記工程(1)において、上記乾燥は、100〜150℃の温度で5〜60分間行うことが好ましい。上記焼成を行う場合には、300〜400℃の温度で10〜30分間行うことが好ましい。
【0103】
上記プライマー塗布膜は、基材上に上記プライマー用組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成することができる。上記プライマー塗布膜は、得られる調理器具においてプライマー層となる。
【0104】
上記プライマー層を2層以上形成する場合には、上記プライマー用組成物の配合を必要に応じて変更して、上記工程(1)を繰り返せばよい。
【0105】
上記工程(2)は、底面部の基材上又は底面部のプライマー塗布膜上に、耐食効果を有する物質を含む組成物を塗布して底面部のミドルコート塗布膜を形成する工程である。
【0106】
上記基材上又はプライマー塗布膜上に耐食効果を有する物質を含む組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、上記プライマー用組成物の塗布の方法と同じ方法等が挙げられる。
【0107】
上記工程(2)においては、耐食効果を有する物質を含む組成物を上記基材上又はプライマー塗布膜上に塗布したのち、乾燥又は焼成を行ってもよい。上記工程(2)における乾燥又は焼成は、上記工程(1)における乾燥又は焼成と同様の条件で行うことが好ましい。
【0108】
上記工程(3)は、側面部の基材上又は側面部のプライマー塗布膜上に、遠赤外効果を有する物質を含む組成物を塗布して側面部のミドルコート塗布膜を形成する工程である。
【0109】
上記基材上又はプライマー塗布膜上に遠赤外効果を有する物質を含む組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、上記プライマー用組成物の塗布の方法と同じ方法等が挙げられる。
【0110】
上記工程(3)においては、遠赤外効果を有する物質を含む組成物を上記基材上又はプライマー塗布膜上に塗布したのち、乾燥又は焼成を行ってもよい。上記工程(3)における乾燥又は焼成は、上記工程(1)における乾燥又は焼成と同様の条件で行うことが好ましい。
【0111】
上記製造方法は、工程(1)の後に工程(2)を行い、その後、工程(3)を行ってもよいし、工程(1)の後に工程(3)を行い、その後、工程(2)を行ってもよく、工程(2)と工程(3)の順番は限定されない。
【0112】
上記耐食効果を有する物質を含む層、遠赤外効果を有する物質を含む層をそれぞれ2層以上形成する場合には、上記組成物の配合を必要に応じて変更して、上記工程(2)又は工程(3)を繰り返せばよい。
【0113】
通常は、任意の工程(1)、工程(2)及び工程(3)、必要に応じて、更に塗布膜を形成したあと、全ての塗布膜を同時に焼成して底面及び側面の積層体塗膜が得られる。
【0114】
上記製造方法は、上記工程(1)、工程(2)又は工程(3)の後に、文字、図面等を印刷する工程を有するものであってもよい。
【0115】
上記印刷の方法としては特に限定されず、例えば、パット転写印刷が挙げられる。上記印刷に用いる印刷インキとしては特に限定されず、例えば、PESとTFEホモポリマーと酸化チタンとからなる組成物が挙げられる。
【0116】
上記調理器具は、天板、オーブン皿、グリル皿、焼き肉用鉄板、炊飯釜、電気ポット内釜、ホットプレート用プレート、フライパン、玉子焼、電子レンジ調理皿、鍋、グリル鍋、オーブントースター用調理皿等が挙げられる。本開示の調理器具としては、フライパン、鍋、又は、グリル鍋であることが好ましく、フライパンであることがより好ましい。
なお、調理器具がフライパンである場合、通常、底面部の外表面に固定された棒状の柄部を備える。
【0117】
上記調理器具を備える機器としては、ガスコンロ、電気コンロ、ガスオーブンレンジ、電気オーブンレンジ、電子レンジ、炊飯器、バーベキューコンロ、圧力鍋、焼肉器、オーブントースター、電気ポット、自動給茶機等が挙げられる。
【実施例】
【0118】
つぎに本開示の調理器具を実施例をあげて説明するが、本開示の調理器具はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0119】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0120】
側面遠赤効果評価(遠赤外線輻射率測定試験)
遠赤外線輻射率測定装置(日本電子製JIR5500、赤外放射ユニットIR−IRR200装備)を用いて200℃の遠赤外線輻射率(積分輻射率)を測定した。
【0121】
底面耐食性評価(おでんの素)
(評価方法)
塗膜表面に、カッターナイフで長さ50mmの基材に達する傷を交差するように2本つけた(クロスカット)。この試験用塗装板を、おでんの素(ヱスビー食品社製)20gを水1リットルに溶解し
た溶液中に浸漬し、70℃に保温して500時間経過後ブリスター(塗膜の膨れ)の発生
等の異常がないかを確認した。
○:ブリスターが全くない
△:クロスカット部に3mm未満のブリスターが発生(クロスカット部以外は異常なし)
×:全面にブリスターが発生
【0122】
色差
塗膜表面の色調を日本電色工業(株)製のcolor meter ZE6000を用いて測定した。
(評価方法)
色差がΔE*ab>2.3であると丁度可知差異に相当する。
○:ΔE*ab>2.3
×:ΔE*ab<2.3
【0123】
実施例1〜21及び比較例1〜2
<基材>
アルミニウム板をアセトンで表面脱脂処理した基材を使用した。
【0124】
<クリヤーベース塗料組成物>
クリヤーベース塗料組成物(以下、クリヤーベースともいう。)は、ダイキン工業(株)製の含フッ素樹脂クリヤー塗料(フッ素樹脂:PTFE)を用いた。
【0125】
<プライマー塗料組成物>
プライマー塗料組成物(以下、プライマーともいう。)は、ダイキン工業(株)製の含フッ素樹脂プライマー塗料(フッ素樹脂:PTFE、耐熱性樹脂:PAI)を用いた。
【0126】
<ミドルコート及びトップコート用耐食性フッ素樹脂塗料組成物の調製方法>
耐食効果を有する物質(例えば、二酸化チタン被覆シリカフレーク)を計量し、水に添加して混合、均一にしてから、クリヤーベース塗料組成物に添加して、3−1モーターを使用して300rpmで20分間混合攪拌して、耐食性フッ素樹脂塗料組成物を得た。
【0127】
<ミドルコート及びトップコート用遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物の調製方法>
遠赤外効果を有する物質(例えば、炭化ケイ素)を計量し水に添加して混合、均一にしてから、クリヤーベース塗料組成物に添加して、3−1モーターを使用して300rpmで20分間混合攪拌して、耐食性フッ素樹脂塗料組成物を得た。
【0128】
<プライマー塗膜の形成>
基材の被塗面に、プライマー塗料を乾燥塗膜が10〜15μmになるように小型スプレーガンを用いてエアースプレーで塗装した。
【0129】
<ミドルコート塗膜の形成>
ミドルコート用の耐食性または遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物を、焼成後の塗膜が5〜30μmになるように、小型スプレーガンを用いてエアースプレーでプライマー塗膜上に塗装した。塗装後、循環式熱風乾燥機または赤外乾燥機にて100℃×15分間乾燥して、乾燥塗膜を得た。
【0130】
<トップコート塗膜の形成>
トップコート用耐食性フッ素樹脂塗料組成物を焼成後の塗膜が5〜30μmになるように、小型スプレーガンを用いてエアースプレーでミドルコート塗膜上に塗装した。塗装後、循環式熱風乾燥機または赤外乾燥機にて100℃×15分間乾燥して、乾燥塗膜を得た。
【0131】
<クリヤー塗料組成物の調製>
本実施例におけるクリヤー塗料組成物は、耐食性材料、顔料を含まない透明性塗膜を得られる塗料組成物である。
【0132】
<クリヤー塗膜の形成>
ミドルコート塗膜又はトップコート塗膜の形成方法と同様の方法により、ミドルコート塗膜上又はトップコート塗膜上にクリヤー塗料組成物を塗布し、乾燥して、クリヤー塗膜を形成した。
【0133】
<評価用積層体の作製>
上記のようにして得られた乾燥塗膜の積層体を、焼成炉で380℃の温度で20分間焼成して、評価用積層体を形成した。
【0134】
表1に示す層構造の評価用積層体を、上記方法に従って作製し、側面用又は底面用とした。各実施例及び比較例で用いた塗料組成物中のフッ素樹脂及び顔料の配合量は以下のとおりである。各成分の配合量は、塗料組成物の固形分(塗料組成物を塗布し、380℃で焼成した場合の塗膜層の残分)100重量部に対する固形分重量部で表した。
【0135】
(遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物A)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 52.0質量%
炭化珪素 48.0質量%
(遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物B)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 55.0質量%
アルミナ 45.0質量%
(遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物C)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 60.0質量%
炭化ホウ素 40.0質量%
(遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物D)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 70.0質量%
窒化珪素 30.0質量%
(遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物E)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 60.0質量%
酸化ジルコニウム 40.0質量%
(遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物F)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 70.0質量%
窒化ホウ素 30.0質量%
(耐食性フッ素樹脂塗料組成物G)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 93.0質量%
酸化チタン被覆シリカフレーク 7.0質量%
(耐食性フッ素樹脂塗料組成物H)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 93.0質量%
酸化鉄被覆シリカフレーク 7.0質量%
(耐食性フッ素樹脂塗料組成物I)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 93.0質量%
酸化チタン被覆マイカフレーク 7.0質量%
(耐食性フッ素樹脂塗料組成物J)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 93.0質量%
酸化チタン被覆フレーク状ガラス 7.0質量%
(遠赤外性フッ素樹脂塗料組成物K)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 50.0質量%
耐熱性樹脂 10.0質量%
炭化珪素 40.0質量%
(耐食性フッ素樹脂塗料組成物L)
クリヤーベース中のフッ素樹脂 78.0質量%
耐熱性樹脂 15.0質量%
酸化チタン被覆シリカフレーク 7.0質量%
【0136】
【表1】