特許第6773094号(P6773094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773094
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】金属部材の接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/20 20060101AFI20201012BHJP
   B23K 11/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B23K11/20
   B23K11/02 510
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-179999(P2018-179999)
(22)【出願日】2018年9月26日
(62)【分割の表示】特願2016-165901(P2016-165901)の分割
【原出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-199165(P2018-199165A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】中井 正規
(72)【発明者】
【氏名】橋本 晃
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−117330(JP,U)
【文献】 特開2005−342782(JP,A)
【文献】 特開2006−289527(JP,A)
【文献】 特開2006−263809(JP,A)
【文献】 特開平04−187388(JP,A)
【文献】 特開昭50−044955(JP,A)
【文献】 特開昭54−099751(JP,A)
【文献】 特開2012−125809(JP,A)
【文献】 仏国特許発明第00562253(FR,A)
【文献】 中国特許出願公開第102513684(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0212025(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0078682(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0294671(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00−11/36
B23K 20/00−20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状又は筒状の第1金属部材を、環状の第2金属部材の孔部に圧入させて接合するための金属部材の接合装置において、
前記第1金属部材は、第1金属材料からなっており、
前記第2金属部材は、前記第1金属材料とは異なる第2金属材料からなり、前記孔部の横断面でのサイズが前記第1金属部材の横断面でのサイズよりも小さくなっており、
前記金属部材の接合装置は、
前記第2金属部材が載置される台と、
前記台の上に前記第2金属部材が載置された状態で、前記第1金属部材を、前記第2金属部材の前記孔部に向けて加圧し、圧入させる加圧手段と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に溶接電流を供給する電流供給手段と、
前記第1金属部材及び前記第2金属部材の内、構成金属材料の耐力及び溶融温度の少なくとも一方が低い側の部材に対して、前記圧入の方向に対して交差する方向である横断面方向への変形を抑制する変形抑制手段と、
を備え、
前記変形抑制手段は、前記圧入の方向において、少なくとも塑性流動範囲を包含する領域に設けられており、
前記第2金属材料は、前記第1金属材料に対して、耐力及び溶融温度が低く、
前記変形抑制手段は、前記第2金属部材に対し、当該第2金属部材の外周部から、前記横断面方向の内向きに締め付け荷重を付加し、
前記変形抑制手段は、
前記第2金属部材の外周部に沿って配された複数の変形抑制ヘッドと、
前記複数の変形抑制ヘッドの各々を、前記横断面方向の内向きに押圧する押圧機構と、を有し、
前記複数の変形抑制ヘッドは、互いに前記第2金属部材の外周方向に隣接するとともに、前記押圧機構からの押圧力を受けて、それぞれが前記外周部に対して隙間なく密に接するように前記締め付け荷重を付加し、
前記変形抑制手段による前記締め付け荷重の付加は、前記加圧手段による前記第2金属部材の前記孔部への前記第1金属部材の圧入に同期して、なされる、
金属部材の接合装置。
【請求項2】
請求項1記載の金属部材の接合装置であって、
前記第2金属材料は、アルミニウムを含む材料であり、
前記第1金属材料は、鉄を含む材料である、
金属部材の接合装置。
【請求項3】
棒状又は筒状の第1金属部材を、環状の第2金属部材の孔部に圧入させて接合する金属部材の接合方法において、
第1金属材料からなる前記第1金属部材を準備する第1金属部材準備ステップと、
前記第1金属材料とは異なる第2金属材料からなり、前記孔部の横断面サイズが前記第1金属部材の横断面サイズよりも小さく設定された前記第2金属部材を準備する第2金属部材準備ステップと、
前記第2金属部材を台の上に載置する載置ステップと、
前記台の上に前記第2金属部材が載置された状態で、前記第1金属部材を、前記第2金属部材の前記孔部に向けて加圧し、圧入させる加圧ステップと、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に溶接電流を供給する電流供給ステップと、
前記第1金属部材及び前記第2金属部材の内、構成金属材料の耐力及び溶融温度の少なくとも一方が低い側の部材に対して、横断面方向への変形を抑制する変形抑制ステップと、
を備え、
前記変形抑制ステップでは、前記圧入の方向において、少なくとも塑性流動範囲を包含する領域で変形を抑制し、
前記第2金属材料は、前記第1金属材料に対して、耐力及び溶融温度が低く、
前記変形抑制ステップでは、
前記第2金属部材の外周部に沿って配された複数の変形抑制ヘッドと、
前記複数の変形抑制ヘッドの各々を、前記横断面方向の内向きに押圧する押圧機構と、を用いて前記横断面方向の内向きの締め付け荷重を付加し、
前記複数の変形抑制ヘッドは、互いに前記第2金属部材の外周方向に隣接するとともに、前記押圧機構からの押圧力を受けて、それぞれが前記外周部に対して隙間なく接するように前記締め付け荷重を付加し、
前記変形抑制ステップでの前記締め付け荷重の付加は、前記加圧ステップでの前記第2金属材料の前記孔部への前記第1金属部材の圧入に同期して、なされる、
金属部材の接合方法。
【請求項4】
請求項3記載の金属部材の接合方法であって、
前記第2金属材料は、アルミニウムを含む材料であり、
前記第1金属材料は、鉄を含む材料である、
金属部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材の接合装置及び接合方法に関し、特に、抵抗溶接を用いた異種金属の接合技術に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状又は筒状の第1金属部材と、環状の第2金属部材と、を接合する方法として、一方の孔部に圧入させながら、短時間に大電流を通電して行う接合方法が用いられている。具体的には、先ず、第1金属部材の横断面でのサイズを、第2金属部材における孔部の横断面でのサイズよりも大きくしておく。また、第1金属部材における先端部をテーパー加工し、第2金属部材の孔部の開口縁もテーパー加工しておく。
【0003】
次に、第2金属部材の孔部に対して、第1金属部材を宛がい、加圧しながら短時間に大電流を流す。これにより、第1金属部材の外周面及び第2金属部材の一方の界面部分を軟化させて塑性流動させ、当該界面部分で固相接合させる。
【0004】
上記の接合方法では、短時間に大電流を通電するので、接合部及びその周辺に焼けや歪みを生じ難く、高精度な接合が可能である。また、アーク溶接やロウ付けなどを用いた接合に比べてコストダウンを図ることも可能である。
【0005】
ところで、近年においては、軽量化及びコストダウンを図るために、互いに物理的性質(溶融温度、耐力など)が異なる異種金属同士を接合するための技術開発がなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−181627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、互いに物理的性質が異なる異種金属同士を、従来技術に係る上記のような接合方法を採用しようとする場合には、接合強度を確保するためにアップセット量を多くとることが必要となり、接合部品の大型化及び重量増大に繋がる。
【0008】
これについて、本発明者等が検討した事項について、図10を用い説明する。図10には、上記のような接合方法を用い、炭素鋼からなる第1金属部材900と、アルミニウム合金(Al合金)からなる第2金属部材901とを接合した状態を示す。図10に示すように、接合方法においては、第2金属部材901のテーパー面901bに第1金属部材900のテーパー面900aが押圧(矢印A90)されて塑性流動し、拡散層902の形成により固相接合される。
【0009】
しかしながら、Al合金からなる第2金属部材901の溶融温度は炭素鋼に比べて低いため、接合初期のAl合金が溶融してしまい、バリ903となって外部に排出されてしまう。これにより、未接合部Arが生じる。また、Al合金と炭素鋼との耐力差により、第2金属部材901が変形してしまう。これらより、従来技術では、接合強度を確保するために、アップセット量を多くとることが必要であった。
【0010】
本発明は、上記のような問題の解決を図るべくなされたものであって、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる金属部材の接合装置及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る金属部材の接合装置は、棒状又は筒状の第1金属部材を、環状の第2金属部材の孔部に圧入させて接合するための金属部材の接合装置において、前記第1金属部材は、第1金属材料からなっており、前記第2金属部材は、前記第1金属材料とは異なる第2金属材料からなり、前記孔部の横断面でのサイズが前記第1金属部材の横断面でのサイズよりも小さくなっており、前記金属部材の接合装置は、前記第2金属部材が載置される台と、前記台の上に前記第2金属部材が載置された状態で、前記第1金属部材を、前記第2金属部材の前記孔部に向けて加圧し、圧入させる加圧手段と、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に溶接電流を供給する電流供給手段と、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の内、構成金属材料の耐力及び溶融温度の少なくとも一方が低い側の部材に対して、前記圧入の方向に対して交差する方向である横断面方向への変形を抑制する変形抑制手段と、を備え、前記変形抑制手段は、前記圧入の方向において、少なくとも塑性流動範囲を包含する領域に設けられており、前記第2金属材料は、前記第1金属材料に対して、耐力及び溶融温度が低く、前記変形抑制手段は、前記第2金属部材に対し、当該第2金属部材の外周部から、前記横断面方向の内向きに締め付け荷重を付加し、前記変形抑制手段は、前記第2金属部材の外周部に沿って配された複数の変形抑制ヘッドと、前記複数の変形抑制ヘッドの各々を、前記横断面方向の内向きに押圧する押圧機構と、を有し、前記複数の変形抑制ヘッドは、互いに前記第2金属部材の外周方向に隣接するとともに、前記押圧機構からの押圧力を受けて、それぞれが前記外周部に対して隙間なく密に接するように前記締め付け荷重を付加し、前記変形抑制手段による前記締め付け荷重の付加は、前記加圧手段による前記第2金属部材の前記孔部への前記第1金属部材の圧入に同期して、なされる。
【0012】
上記のように、第2金属材料の耐力及び溶融温度が、第1金属材料に比べて低い場合には、加圧手段により加圧しながら電流を流し始めると、温度上昇及び横断面方向外向きの応力により、第2金属部材の内外周長がともに大きくなろうとする。即ち、第2金属部材が拡径しようとする。
【0013】
しかし、本態様に係る金属部材の接合装置では、変形抑制手段により、第2金属部材をその外周部から横断面方向内側に向けて締め付けているので、第2金属部材の外への拡がりを抑制することができる。
【0014】
また、本態様に係る金属部材の接合装置では、変形抑制手段が、複数の変形抑制ヘッドと、これを押圧する押圧機構と、を有することとしている。これにより、複雑な機構を用いず、第2金属部材の変形を抑制することができる。
【0015】
また、複数の変形抑制ヘッドを用いて第2金属部材の外周部を押圧するので、偏りの少ない押圧が可能であり、横断面方向における第2金属部材の外への拡がりを偏りなく抑制することができる。
また、本態様に係る金属部材の接合装置では、締め付け荷重の付加と圧入とを同期して実行するので、適切なタイミングで変形抑制のための荷重付加を行うことができる。よって、効率的に、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【0016】
なお、「押圧機構」の具体例としては、空圧シリンダ、油圧シリンダ及び電動モータなどを採用することもできるし、リンク機構等を介して手動で(より具体的には、例えば、コレットチャックを用いた構成で)押圧することもできる。
【0017】
また、「塑性流動範囲」については、第1金属材料及び第2金属材料の各物理的性質や、接合条件及び環境条件などに基づき、実験的・経験的に設定することができる。
【0018】
また、電流供給手段については、公知の金属部材の接合装置(コンデンサ溶接装置)用の電流供給装置を採用することができる。具体的には、電解コンデンサ、溶接トランス、放電回路、大電流回路を備え、電解コンデンサに溶接に必要な電気エネルギを一旦充電し、これを短時間にトランスに放電し、短時間に大電流を第1金属部材と第2金属部材との間に供給する装置である。
【0019】
従って、本態様に係る金属部材の接合装置では、第2金属部材を相対的に耐力及び溶融温度が低い材料から構成した場合にあっても、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【0022】
上記態様に係る金属部材の接合装置では、前記第2金属材料が、アルミニウムを含む材料であり、前記第1金属材料が、鉄を含む材料である、こととしてもよい。
【0023】
上記の金属部材の接合装置では、耐力及び溶融温度が互いに異なるアルミニウム系材料(アルミニウムを含む材料)と鉄系材料(鉄を含む材料)との接合にも、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑えることができる。
【0024】
本発明の一態様に係る金属部材の接合方法は、棒状又は筒状の第1金属部材を、環状の第2金属部材の孔部に圧入させて接合する金属部材の接合方法であって、第1金属材料からなる前記第1金属部材を準備する第1金属部材準備ステップと、前記第1金属材料とは異なる第2金属材料からなり、前記孔部の横断面サイズが前記第1金属部材の横断面サイズよりも小さく設定された前記第2金属部材を準備する第2金属部材準備ステップと、前記第2金属部材を台の上に載置する載置ステップと、前記台の上に前記第2金属部材が載置された状態で、前記第1金属部材を、前記第2金属部材の前記孔部に向けて加圧し、圧入させる加圧ステップと、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に溶接電流を供給する電流供給ステップと、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の内、構成金属材料の耐力及び溶融温度の少なくとも一方が低い側の部材に対して、横断面方向への変形を抑制する変形抑制ステップと、を備え、前記変形抑制ステップでは、前記圧入の方向において、少なくとも塑性流動範囲を包含する領域で変形を抑制し、前記第2金属材料は、前記第1金属材料に対して、耐力及び溶融温度が低く、前記変形抑制ステップでは、前記第2金属部材の外周部に沿って配された複数の変形抑制ヘッドと、前記複数の変形抑制ヘッドの各々を、前記横断面方向の内向きに押圧する押圧機構と、を用いて前記横断面方向の内向きの締め付け荷重を付加し、前記複数の変形抑制ヘッドは、互いに前記第2金属部材の外周方向に隣接するとともに、前記押圧機構からの押圧力を受けて、それぞれが前記外周部に対して隙間なく接するように前記締め付け荷重を付加し、前記変形抑制ステップでの前記締め付け荷重の付加は、前記加圧ステップでの前記第2金属材料の前記孔部への前記第1金属部材の圧入に同期して、なされる。
【0025】
本態様に係る金属部材の接合方法では、上記変形抑制ステップの具体的な実行方法として、複数の変形抑制ヘッドを、押圧機構で押圧することによるものとしている。これにより、付加する押圧力の外周部の領域ごとでのバラツキを抑えながら、第2金属部材の変形を抑制することができる。
【0026】
また、複数の変形抑制ヘッドを用いて第2金属部材の外周部を押圧するので、偏りの少ない押圧が可能であり、横断面方向における第2金属部材の外への拡がり(拡径)を偏りなく抑制することができる。
また、本態様に係る金属部材の接合装置では、締め付け荷重の付加と圧入とを同期して実行するので、適切なタイミングで変形抑制のための荷重付加を行うことができる。よって、効率的に、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【0027】
なお、押圧機構及び塑性流動範囲については、上記同様である。
【0030】
上記態様に係る金属部材の接合方法では、前記第2金属材料は、アルミニウムを含む材料であり、前記第1金属材料は、鉄を含む材料である、こととしてもよい。
【0031】
上記の金属部材の接合方法では、耐力及び溶融温度が互いに異なるアルミニウム系材料(アルミニウムを含む材料)と鉄系材料(鉄を含む材料)との接合にも、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑えることができる。
【発明の効果】
【0032】
上記の各態様では、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係る金属部材接合装置1の構成を示す模式断面図である。
図2】金属部材接合装置1における変形抑制ユニット17の構成を示す模式平面図である。
図3】変形抑制ユニット17が果たす機能を説明するための模式図である。
図4】金属部材接合装置1を用い接合された第1金属部材100と第2金属部材101とを示す模式断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る金属部材接合装置2の構成を示す模式断面図である。
図6】金属部材接合装置2における変形抑制ユニット20の構成を示す模式平面図である。
図7】金属部材接合装置2を用い接合された第1金属部材103と第2金属部材104とを示す模式断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る金属部材接合装置の構成の内、変形抑制ユニット30の構成を抜き出して示す模式平面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る金属部材接合装置の構成の内、変形抑制ユニット40の構成を抜き出して示す模式平面図である。
図10】従来技術に係る金属部材接合装置を用い接合された第1金属部材900と第2金属部材901とを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0035】
[第1実施形態]
1.金属部材接合装置1の構成
本発明の第1実施形態に係る金属部材接合装置1の構成について、図1を用い説明する。
【0036】
図1に示すように、本実施形態に係る金属部材接合装置1は、ベース10と、溶接ヘッド11と、加圧ロッド12と、変形抑制ユニット17と、溶接電流供給部18と、を備える。ベース10は、台形状をしている。ベース10の上面10aには、第2金属部材101が載置される。
【0037】
溶接ヘッド11は、加圧ロッド12に接合されており、矢印Aで示すように、Z軸方向に下降できるようになっている。溶接ヘッド11には、第1金属部材100が保持される。ここで、第1金属部材100を第2金属部材101上に載置した状態でセットし、溶接ヘッド11を下降させて第1金属部材100を加圧するように構成することも勿論可能である。
【0038】
なお、図示を省略しているが、加圧ロッド12は、加圧機構に連結されており、加圧機構の駆動に伴い、Z軸方向に上下動できるようになっている。加圧機構の具体例としては、空圧シリンダ、油圧シリンダ、電動モータなどをあげることができる。
【0039】
変形抑制ユニット17は、一対の変形抑制ヘッド13,14と、各変形抑制ヘッド13,14に接合された押圧ロッド15,16と、を有する。変形抑制ヘッド13,14は、ベース10の上面10aに載置された第2金属部材101に対し、その外周部を囲繞する状態で配されている。第2金属部材101の外周部と、変形抑制ヘッド13,14の内周部とは、略隙間なく密に接している。
【0040】
変形抑制ヘッド13,14は、押圧ロッド15,16を介した押圧力を受けて、矢印A,Aで示すように、第2金属部材101の外周部を横断面方向の内側に向けて押圧できるようになっている。なお、図示を省略しているが、押圧ロッド15,16には、押圧機構が連結されており、押圧機構の駆動に伴い、X方向に前進及び後退ができるようになっている。押圧機構の具体例としては、空圧シリンダ、油圧シリンダ、電動モータなどをあげることができる。
【0041】
上記において、「横断面方向」とは、第2金属部材101の孔部101aに対する第1金属部材100の圧入方向に対して直交する方向(Z方向に対して直交する面方向)のことである。本開示においては、他の箇所についても同様である。
【0042】
ここで、変形抑制ヘッド13,14による押圧は、溶接ヘッド11の加圧と同期してなされる。より具体的には、溶接ヘッド11が矢印Aに示すように下降し、第1金属部材100の先端が第2金属部材101の孔部101aに圧入し始めるタイミングに呼応して(同期して)、変形抑制ヘッド13,14は、矢印A,Aに示すように、第2金属部材101の外周部を押圧し始める。
【0043】
なお、変形抑制ヘッド13,14の押圧力及び押圧ストロークは、第2金属部材101の外周部が所定以上に縮径してしまわない程度で制御されている。
【0044】
溶接電流供給部18は、第1金属部材100と第2金属部材101との間に、短時間に大電流を供給する。なお、図1では、溶接電流供給部18から第1金属部材100及び第2金属部材101に対して直接配線が接続されているように図示をしているが、実際の配線形態はこれに限定されない。例えば、ベース10及び溶接ヘッド11を導電性材料から構成しておき、これらベース10及び溶接ヘッド11を介して溶接電流供給部18からの電流供給がなされるようにしておいてもよい。
【0045】
具体的に、溶接電流供給部18としては、電解コンデンサ、溶接トランス、放電回路、大電流回路を備える構成の大電流供給装置を採用することができる。溶接電流供給部18は、電解コンデンサに溶接に必要な電気エネルギを一旦充電し、これを短時間にトランスに放電し、短時間に大電流を第1金属部材100と第2金属部材101との間に供給する装置である。
【0046】
2.接合対象の第1金属部材100及び第2金属部材101
引き続き図1を用い、接合対象である第1金属部材100及び第2金属部材101について説明する。
【0047】
図1に示すように、第1金属部材100は、中実棒状をしている。そして、第1金属部材100は、その軸芯がZ方向に沿う状態で配されている。
【0048】
第1金属部材100におけるZ方向下端、即ち、第2金属部材101の孔部101aへの圧入先端側の外周面がテーパー部100aとなっている。
【0049】
また、第1金属部材100における横断面径は、第2金属部材101の孔部101aの孔径よりも大径となっている。
【0050】
第1金属部材100の構成金属材料は、鉄(Fe)を含む金属材料、具体的には、炭素鋼からなる。本実施形態では、一例として、S35Cを採用している。S35Cの降伏点(耐力)は、305(N/mm)以上であり、溶融温度は、1538(℃)である。また、線膨張係数は、11.7(×10−6/℃)である。
【0051】
一方、第2金属部材101は、円環状をしており、第1金属部材100の横断面径よりも小径の孔部101aを有する。第2金属部材101では、孔部101aの圧入側口縁がテーパー部101bとなっている。テーパー部101bのテーパー角は、第1金属部材100のテーパー部100aのテーパー角と略同一となっている。
【0052】
第2金属部材101は、アルミニウム(Al)を含む金属材料、具体的には、アルミニウム合金からなる。本実施形態では、一例として、Al−Mg系のアルミニウム合金であるA5056(H34)を採用している。A5056(H34)の降伏点(耐力)は、230(N/mm)であり、溶融温度は、568〜638(℃)である。また、線膨張係数は、26.3(×10−6/℃)である。
【0053】
3.変形抑制ユニット17の構成
本実施形態に係る金属部材接合装置1が具備する変形抑制ユニット17の構成について、図2を用い補足説明する。図2は、変形抑制ユニット17を図1のZ方向上方から平面視した模式平面図である。
【0054】
図2に示すように、変形抑制ユニット17における変形抑制ヘッド13,14は、それぞれが半円環形状をしている。変形抑制ヘッド13と変形抑制ヘッド14とは、互いの端辺同士が向き合う状態で配される。
【0055】
孔部101aを有する第2金属部材101に対しては、その外周部101cに変形抑制ヘッド13,14の内周面が略隙間なく沿うようになっている。第2金属部材101の外周部101cに対して当接させた状態の変形抑制ヘッド13,14の間には、隙間G,Gがあくようになっている。隙間G,Gは、微細な隙間である。
【0056】
ここで、第2金属部材101の外周部101cに対して当接させた状態の変形抑制ヘッド13,14の間に隙間G,Gがあくようにしているのは、第2金属部材101の寸法公差や、変形抑制ヘッド13,14の寸法公差などがあっても、第2金属部材101の変形を抑制することができるようにするためである。
【0057】
4.金属部材接合装置1を用いた第1金属部材100と第2金属部材101との接合
上記の構成を有する金属部材接合装置1を用いた、第1金属部材100と第2金属部材101との接合は、次のようにしてなされる。
【0058】
(i)第1金属部材100を準備し、これを溶接ヘッド11にセットする。なお、図1に示すように、溶接ヘッド11への第1金属部材100のセットに際しては、先端外周にテーパー部100aがベース10の側を向くように行う。
【0059】
(ii)第2金属部材101を準備し、これをベース10の上面10a上に載置する。このとき、第2金属部材101の載置に際しては、圧入側口縁にテーパー部101bが設けられた側が溶接ヘッド11の側を向くようにする。また、溶接ヘッド11にセットされた第1金属部材100の軸芯に対して、第2金属部材101における孔部101aの孔中心が一致するように位置調整を行う。
【0060】
(iii)第2金属部材101の外周部101cに対して、変形抑制ユニット17の変形抑制ヘッド13,14をセットする。なお、この段階において、変形抑制ヘッド13,14は、第2金属部材101の外周部101cに対して隙間がないようにセットするだけであり、径方向内向きの押圧力は付加しないものとする。
【0061】
(iv)溶接ヘッド11を矢印Aで示すように、下降させてゆく。
【0062】
(v)第1金属部材100の先端と、第2金属部材101の孔部101aに面する開口縁と、が当接又は近接状態となった時点で、溶接電流供給部18からの電流供給を開始する。
【0063】
(vi)第1金属部材100の先端が、第2金属部材101の孔部101aに対し圧入し始めた時点で、上記電流供給とともに、変形抑制ヘッド13,14を矢印A,Aで示すように、第2金属部材101の径方向内側に向けて押圧する。換言すると、第2金属部材101の孔部101aに対する第1金属部材100の圧入に同期して、第2金属部材101の径方向内側に向け締め付け荷重を付加する。
【0064】
(vii)予め規定されたアップセット量だけ、第1金属部材100を圧入させて、接合が終了する。そして、接合完了と同時、又は、やや遅れて変形抑制ユニット17による変形抑制動作も終了する。
【0065】
5.変形抑制ユニット17の果たす機能
金属部材接合装置1において、変形抑制ユニット17が果たす機能について、図3及び図4を用い説明する。図3は、第1金属部材100が圧入され、溶接電流が供給されている状態での第2金属部材101の様子を模式的に示す模式図である。図4は、金属部材接合装置1を用い接合した後の第1金属部材100と第2金属部材101とを示す模式断面図である。
【0066】
上述のように、第2金属部材101はアルミニウム合金から構成されており、第1金属部材100を構成する炭素鋼に比べて、耐力及び溶融温度がともに低い。よって、図3に示すように、第2金属部材101には、径方向外向きに変形しようとする力Fが働く。これにより、第2金属部材101の内周部101d及び外周部101cの周長が伸びようとすることになる。
【0067】
しかしながら、本実施形態においては、第2金属部材101は、外周部101cに変形抑制ユニット17の変形抑制ヘッド13,14が当接され、嵌合に同期して、径方向内向きの力Fが付加されている。よって、第2金属部材101においては、外径Dがほとんど変化せず、内径Dについても、塑性流動による分を除き、実質的にほとんど変化しない。
【0068】
以上のように、変形抑制ユニット17を具備する金属部材接合装置1を用い接合された第1金属部材100と第2金属部材101とは、図4に示すように、バリの生成及び排出が抑制され、図10で示したような“未接合部”が発生することも抑制される。これにより、本実施形態に係る金属部材接合装置1を用いた接合では、アップセット量の増大を抑制しながら、接合長LB102の長い接合部(拡散層102)を形成することができる。
【0069】
従って、本実施形態に係る金属部材接合装置1を用いた接合では、アップセット量の増大を抑制しながらも、高い接合強度で第1金属部材100と第2金属部材101との接合を行うことができる。
【0070】
なお、図4に示すように、本実施形態に係る金属部材接合装置1においては、変形抑制ユニット17における変形抑制ヘッド13,14(図4では、変形抑制ヘッド13のみを図示。)のZ方向高さH13を、第2金属部材101のZ方向高さと同じか、それ以上としている。換言すると、変形抑制ヘッド13,14における下面13bは、ベース10の上面10aに当接し、上面13aは、第2金属部材101のZ方向上側の表面と面一又はそれよりも高い位置になるように設定されている。
【0071】
変形抑制ヘッド13,14のサイズ及び配置を上記のように設定することにより、Z方向において、接合時における塑性流動の範囲(拡散層102が形成される範囲と略同じ範囲)を包含する範囲で、第2金属部材101に対して締め付け荷重を付加することができる。これより、接合時に塑性流動が生じる範囲での第2金属部材101の拡径方向の変形が確実に抑制され、バリの生成及び外部への排出が抑制される。
【0072】
6.効果
金属部材接合装置1では、第1金属部材100よりも構成材料の耐力及び溶融温度がともに低い第2金属部材101の外周部101cを、拡径方向の変形を抑制する変形抑制ユニット17が設けられている。このため、第1金属部材100を第2金属部材101の孔部101aに対して圧入し、且つ、電流を流し始めてから、第2金属部材101の拡径変形を抑制することができる。
【0073】
また、変形抑制ユニット17は、塑性流動範囲を包含する領域を押圧できるように設けられているので、接合時におけるバリの生成及びバリの外部排出を効果的に抑制することができる。
【0074】
従って、本実施形態に係る金属部材接合装置1では、炭素鋼からなる第1金属部材100とアルミニウム合金からなる第2金属部材101との接合において、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【0075】
また、金属部材接合装置1では、変形抑制ユニット17による締め付け荷重の付加と、溶接ヘッド11の下降による孔部101aへの第1金属部材100の圧入と、を同期して実行することができるので、適切なタイミングで変形抑制のための荷重付加を行うことができる。よって、効率的に、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【0076】
また、金属部材接合装置1における変形抑制ユニット17では、2つの変形抑制ヘッド13,14を有する。これにより、偏りの少ない押圧が可能であり、横断面方向における第2金属部材101の拡径変形を偏りなく抑制することができる。
【0077】
[第2実施形態]
1.金属部材接合装置2の構成
本発明の第2実施形態に係る金属部材接合装置2の構成について、図5を用い説明する。図5は、金属部材接合装置2の構成を示す模式断面図であって、一部構成の図示を省略している。また、図5において、上記第1実施形態に係る金属部材接合装置1と同一構成の部位については、同一符号を付し、以下での詳細な説明を省略する。
【0078】
図5に示すように、金属部材接合装置2では、円筒状をした第2金属部材104の筒内に変形抑制ユニット20が設けられている。変形抑制ユニット20は、第2金属部材104の内周部104bに対して、径方向外向きに押圧力を付加できるようになっている。
【0079】
なお、第2金属部材104のZ方向下端、即ち、第1金属部材103の孔部103aへの圧入先端側の外周面がテーパー部104aとなっている点は、上記第1実施形態の第1金属部材100と同様である。
【0080】
一方、本実施形態に係る金属部材接合装置2では、第1金属部材103の外周部に対して締め付け荷重を付加するための変形抑制ユニットが設けられていない。ただし、図示を省略しているが、ベース10上において第1金属部材103が位置ズレを抑制するための位置決め装置は設けられている。
【0081】
なお、第1金属部材103の孔部103aの圧入側口縁がテーパー部103bとなっている。テーパー部103bのテーパー角は、第2金属部材104のテーパー部104aのテーパー角と略同一となっている。また、第1金属部材103の孔部103aの孔径は、第2金属部材104の外径よりも若干小さくなっている。
【0082】
2.第1金属部材103及び第2金属部材104の各構成金属材料
第1金属部材103の構成金属材料は、鉄(Fe)を含む金属材料、具体的には、炭素鋼からなる。本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、一例として、S35Cを採用している。S35Cの降伏点(耐力)は、305(N/mm)以上であり、溶融温度は、1538(℃)である。また、線膨張係数は、11.7(×10−6/℃)である。
【0083】
一方、第2金属部材104の構成金属材料は、アルミニウム(Al)を含む金属材料、具体的には、アルミニウム合金からなる。本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、一例として、Al−Mg系のアルミニウム合金であるA5056(H34)を採用している。A5056(H34)の降伏点(耐力)は、230(N/mm)であり、溶融温度は、568〜638(℃)である。また、線膨張係数は、26.3(×10−6/℃)である。
【0084】
3.変形抑制ユニット20の構成
本実施形態に係る金属部材接合装置2が具備する変形抑制ユニット20の構成について、図6を用い補足説明する。図6は、変形抑制ユニット20を図5のZ方向上方から仮想的に平面視した模式平面図である。
【0085】
図6に示すように、変形抑制ユニット20は、6つの変形抑制ヘッド21〜26を有している。また、図示を省略しているが、変形抑制ユニット20は、各変形抑制ヘッド21〜26を径方向に前進・後退させるための押圧機構を有する。
【0086】
変形抑制ヘッド21〜26の各々は、円形状を6分割した扇形状をしている。各変形抑制ヘッド21〜26は、拡径時において、各外周面が第2金属部材104の内周部104bに略隙間なく当接するようになっている。
【0087】
本実施形態に係る金属部材接合装置2が備える変形抑制ユニット20は、所謂、内径把握コレットチャックと同様の機構を有するものである。
【0088】
なお、本実施形態に係る金属部材接合装置2の駆動時においても、変形抑制ユニット20は、溶接ヘッド11の下降による第1金属部材103の孔部103aへの第2金属部材104の圧入と同期して、第2金属部材104の内周部104bに拡径方向の荷重を付加する。
【0089】
4.第1金属部材103と第2金属部材104との接合状態
変形抑制ユニット20を具備する金属部材接合装置2を用い接合された第1金属部材103と第2金属部材104とは、図7に示すように、バリの生成及び外部排出が抑制され、図10で示したような“未接合部”が発生することも抑制される。これにより、本実施形態に係る金属部材接合装置2を用いた接合では、アップセット量の増大を抑制しながら、接合長LB105の長い接合部(拡散層105)を形成することができる。
【0090】
従って、本実施形態に係る金属部材接合装置2を用いた接合でも、アップセット量の増大を抑制しながらも、高い接合強度で第1金属部材103と第2金属部材104との接合を行うことができる。
【0091】
図7に示すように、本実施形態に係る金属部材接合装置2においては、変形抑制ユニット20における変形抑制ヘッド21〜26(図7では、変形抑制ヘッド23のみを図示。)のZ方向高さH23を、接合時における塑性流動の範囲(拡散層105が形成される範囲と略同じ範囲)を包含するよう設定している。換言すると、変形抑制ヘッド21〜26における下面23bは、第2金属部材104のZ方向下端面と略面一とし、上面23aは、拡散層105が形成される予定領域よりもZ方向上側としている。
【0092】
変形抑制ヘッド21〜26のサイズ及び配置を上記のように設定することにより、Z方向において、接合時における塑性流動の範囲(拡散層105が形成される範囲と略同じ範囲)を包含する範囲で、第2金属部材104に対して径方向外向きの荷重を付加することができる。これより、接合時に塑性流動が生じる範囲での第2金属部材104の縮径方向の変形が確実に抑制され、バリの生成及び外部への排出が抑制される。
【0093】
5.効果
金属部材接合装置2では、第1金属部材103よりも構成材料の耐力及び溶融温度がともに低い第2金属部材104の内周部104bを、縮径方向の変形を抑制する変形抑制ユニット20が設けられている。このため、第2金属部材104を第1金属部材103の孔部103aに対して圧入し、且つ、電流を流し始めてから、第2金属部材104の縮径変形を抑制することができる。
【0094】
また、変形抑制ユニット20は、塑性流動範囲を包含する領域を押圧できるように設けられているので、接合時におけるバリの生成及びバリの外部排出を効果的に抑制することができる。
【0095】
従って、本実施形態に係る金属部材接合装置2でも、炭素鋼からなる第1金属部材103とアルミニウム合金からなる第2金属部材104との接合において、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る金属部材接合装置2でも、変形抑制ユニット20による径方向外向きの荷重の付加と、溶接ヘッド11の下降による孔部103aへの第2金属部材104の圧入と、を同期して実行することができるので、適切なタイミングで変形抑制のための荷重付加を行うことができる。よって、効率的に、高い接合強度を確保しながら、アップセット量の増大を抑制することができる。
【0097】
また、金属部材接合装置2における変形抑制ユニット20では、6つの変形抑制ヘッド21〜26を有する。これにより、偏りの少ない押圧が可能であり、横断面方向における第2金属部材104の縮径方向の変形を偏りなく抑制することができる。
【0098】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る金属部材接合装置の構成について、図8を用い説明する。なお、図8では、本実施形態に係る金属部材接合装置の構成の内、変形抑制ユニット30の一部構成を抜き出して図示している。図示を省略している各構成については、上記第1実施形態に係る金属部材接合装置1と同じである。
【0099】
図8に示すように、本実施形態に係る金属部材接合装置が具備する変形抑制ユニット30は、3つの変形抑制ヘッド31〜33と、各変形抑制ヘッド31〜33に接続された押圧ロッド34〜36と、を有する。また、図示を省略しているが、変形抑制ユニット30は、押圧ロッド34〜36に接続され、各変形抑制ヘッド31〜33を径方向に前進・後退させるための押圧機構を有する。
【0100】
変形抑制ヘッド31〜33は、それぞれが円環を3分割した平面形状を有している。変形抑制ヘッド31〜33は、互いの端辺同士が向き合う状態で配される。
【0101】
孔部101aを有する第2金属部材101に対しては、その外周部101cに変形抑制ヘッド31〜33の内周面が略隙間なく沿うようになっている。矢印A〜Aで示すように、変形抑制ヘッド31〜33を径方向内向きに前進させ、第2金属部材101の外周部101cに対してそれぞれを当接させた状態において、変形抑制ヘッド31〜33の各間には、隙間G,G,Gがそれぞれあくようになっている。隙間G,G,Gは、微細な隙間である。
【0102】
本実施形態においても、隙間G,G,Gをあけるようにしているのは、上記同様に、第2金属部材101の寸法公差や、変形抑制ヘッド31〜33の寸法公差などがあっても、第2金属部材101の変形を抑制することができるようにするためである。
【0103】
以上のような構成の変形抑制ユニット30を有する金属部材接合装置においても、上記第1実施形態に係る金属部材接合装置1が奏するのと同様の効果を奏することが可能である。
【0104】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る金属部材接合装置の構成について、図9を用い説明する。なお、図9では、本実施形態に係る金属部材接合装置の構成の内、変形抑制ユニット40の一部構成を抜き出して図示している。
【0105】
先ず、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、接合対象部材として、円形状または円環状の横断面形状を有する部材を採用したが、本実施形態では、図9に示すように、横断面形状が四角環状をした第2金属部材106を接合対象の一方としている。
【0106】
なお、図示を省略しているが、接合対象の他方は、第2金属部材106における孔部106aの形状に対応した四角形の横断面形状を有する棒体または筒体の金属部材である。
【0107】
図9に示すように、本実施形態に係る金属部材接合装置の変形抑制ユニット40は、4つの変形抑制ヘッド41〜44と、4つの押圧ヘッド45〜48を備える。4つの変形抑制ヘッド41〜44は、第2金属部材106における4つの外周部106c〜106fに対して、各々が隙間なく当接可能となっている。4つの押圧ヘッド45〜48は、図示を省略しているが、押圧機構に接続されており、孔部106aへの第1金属部材の圧入に同期して、矢印A〜A10で示すように、第2金属部材106に対して内向きに締め付け荷重を付加できるようになっている。
【0108】
以上のような構成の変形抑制ユニット40を有する金属部材接合装置においても、上記第1実施形態に係る金属部材接合装置1が奏するのと同様の効果を奏することが可能である。
【0109】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第4実施形態では、接合対象の部材として、Alを含む部材(Al合金)とFeを含む部材(炭素鋼)とを採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。本発明では、少なくとも耐力及び溶融温度の少なくとも一方が異なる材料からなる部材同士の接合に対して、上記のように変形抑制ユニットを設けることで効果を奏することができる。
【0110】
例えば、マグネシウム(Mg)を含む材料(例えば、Mg合金)からなる部材とAlを含む材料(例えば、Al合金)からなる部材との接合や、Mgを含む材料(例えば、Mg合金)からなる部材とFeを含む材料(例えば、炭素鋼)からなる部材との接合などにも適用が可能である。これらの場合においても、部材を構成する材料の耐力及び溶融温度の少なくとも一方を勘案して、変形抑制ユニットを設けることができる。
【0111】
なお、Mg合金として、例えば、MDC1Dを採用する場合には、降伏点(耐力)が160(N/mm)であり、溶融温度が470〜595(℃)である。また、線膨張係数が27.0(×10−6/℃)である。これらの物理的性質と、接合相手の部材を構成する材料との関係を勘案すればよい。
【0112】
上記第2実施形態では、第2金属部材104に対して変形抑制ユニット20を設け、第1金属部材103との接合時に第2金属部材104が縮径するのを抑制することとした。本発明は、例えば、上記第2実施形態において、さらに第1金属部材103に対して変形抑制ユニットを設けることとしてもよい。これは、溶接電流を流した場合に、各部材103,104の温度が上昇し、それぞれが膨張しようとすることになる。この場合に、炭素鋼からなり環状をした第1金属部材103が拡径しようとする。これを抑制することで、バリの生成及び外部への排出を抑制するのに有効となる。接合対象の金属部材について、その構成材料が上記以外の場合にも、各部材の構成材料の耐力及び溶融温度とともに線膨張係数を考慮することで、同様の効果を得ることができるよう変形抑制ユニットを構成することが可能となる。
【0113】
上記第1実施形態から上記第4実施形態では、接合対象となる部材100,101,103,104,106の形状について、一例を示したが、本発明は、これらに限定を受けるものではない。例えば、平面視で長円環状の部材や、三角形や五角形以上の多角形状の外周形状を有する部材などを接合対象とすることもできる。この場合には、それら外周部の形状に対応する変形抑制ヘッドを設けることで、上記同様の効果を奏することができる。
【0114】
上記第1実施形態から上記第4実施形態では、変形抑制ユニット17,20,30,40を設けることにより第2金属部材101,104,106の変形を抑制することとした。これら実施形態における変形抑制ユニット17,20,30,40は、第2金属部材101,104,106の横断面方向の変形を抑える機能を有するものとした。
【0115】
しかし、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、溶接電流を流し、溶融温度の低い側の金属部材が一部軟化した状態で、軟化した当該金属部材を、接合対象の他方の金属部材側に向け横断面方向に変形させることとしてもよい。このような構成とすることにより、横断面方向において、塑性流動した領域における密度の低下を抑制し、高い接合強度を確保するのに優位である。
【0116】
上記第1実施形態、上記第3実施形態及び上記第4実施形態では、第2金属部材101,106の外周部101c,106c,106d,106e,106fに締め付け荷重を付加することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、図1の第2金属部材101に対し、その外縁部分におけるZ方向上面をベース10側に向けて押圧し、摩擦力により第2金属部材101の径方向への変形を抑制することとしてもよい。
【0117】
上記第1実施形態では、ベース10の上面10aに第2金属部材101を載置し、上記第2実施形態では、第1金属部材103を載置することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、溶接ヘッド11に対向する第2の溶接ヘッドを設け、当該第2の溶接ヘッドに第2金属部材101や第1金属部材103を把持することとし、溶接時においてZ方向上向きに上昇する構成としてもよい。
【0118】
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、変形抑制ヘッド13,14,21〜26,31〜33が径方向にのみ前進・後退可能な構成としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、各変形抑制ヘッドが螺旋回転することにより、拡径又は縮径する構成とすることもできる。
【0119】
また、上記第1実施形態では、2つの変形抑制ヘッド13,14を具備し、上記第2実施形態では、6つの変形抑制ヘッド21〜26を具備し、上記第3実施形態では、3つの変形抑制ヘッド31〜33を具備し、上記第4実施形態では、4つの変形抑制ヘッド41〜44を具備することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、図1において、一体形成されてなる環状の変形抑制ヘッドを準備し、これを環状の第2金属部材101の外周部に密に当接させるようにしてもよい。
【0120】
また、上述のように、金属部材の圧入方向における変形抑制ヘッドのサイズは、接合対象である金属部材の塑性流動の範囲内を包含するサイズであれば、上記の各実施形態に限定を受けるものではない。
【0121】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、接合対象である各金属部材100,101,103,104にテーパー部100a,101b,103b,104aを設けることとしたが、本発明では、必ずしもテーパー部を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1,2 金属部材接合装置
11 溶接ヘッド
13,14,21,22,23,24,25,26,31,32,33,41,42,43,44 変形抑制ヘッド
17,20,30,40 変形抑制ユニット
18 溶接電流供給部
100,103 第1金属部材
101,104,106 第2金属部材
102,105 拡散層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10