(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の空気調和機には、第1除湿運転から第2除湿運転に切り替えると、室内の湿度が上昇してしまう問題、つまり、いわゆる湿度戻りが起きてしまうという問題がある。
【0005】
本開示の課題は、第1除湿運転から第2除湿運転に移行した後の湿度戻りを抑制できる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気調和機は、
圧縮機、室外熱交換器、膨張機構および室内熱交換器が環状に接続され、冷媒が循環する冷媒回路と、
上記室内熱交換器の実質的に全部を蒸発域にする第1除湿運転と、上記室内熱交換器の一部を蒸発域にする一方、上記室内熱交換器の残りの部分を過熱域にする第2除湿運転とを行う制御部と
を備え、
上記制御部は、上記第1除湿運転に引き続いて上記第2除湿運転が開始する第1開始時における上記圧縮機の周波数が、空調運転が停止している時から上記第2除湿運転が開始する第2開始時における上記圧縮機の周波数よりも高くなるように、かつ、上記第1開始時における上記膨張機構の開度が上記第2開始時における上記膨張機構の開度よりも大きくなるように、上記圧縮機および膨張機構を制御する。
【0007】
上記構成によれば、上記制御部が圧縮機および膨張機構を制御することにより、第1開始時における圧縮機の周波数を第2開始時における圧縮機の周波数よりも高くすることができ、かつ、第1開始時における膨張機構の開度を第2開始時における膨張機構の開度よりも大きくすることができる。したがって、上記第1除湿運転から第2除湿運転に移行した後の湿度戻りを抑制することができる。
【0008】
一態様の空気調和機は、
上記膨張機構で減圧された冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサを備え、
上記制御部は、上記第2除湿運転の開始後、上記第1冷媒温度センサで検出された冷媒の温度を用いて、上記膨張機構の開度を調整する。
【0009】
上記態様によれば、上記第2除湿運転の開始後、第1冷媒温度センサに検出された冷媒の温度を膨張機構の開度の調整に用いることにより、室内熱交換器の蒸発域および過熱域の大きさに対する制御性が高くなる。
【0010】
一態様の空気調和機は、
室内温度を検出する室内温度センサを備え、
上記制御部は、上記室内温度から設定温度を引いた温度差が、第1所定値以下、かつ、上記第1所定値よりも小さい第2所定値以上のとき、上記第2除湿運転を行う。
【0011】
上記態様によれば、室内の熱負荷の段階を、高熱負荷、中熱負荷および低熱負荷の三つに分けた場合、第2除湿運転は、室内温度センサによって検出された室内温度から設定温度を引いた温度差が第1所定値以下かつ第2所定値(<第1所定値)以上のときに行われるので、室内温度の過度な低下を抑制しつつ、中熱負荷を効率良く低減することができる。
【0012】
一態様の空気調和機では、
上記室内熱交換器は制御弁を有し、
上記制御部は、上記温度差が上記第2所定値より小さくなるとき、上記室内熱交換器において上記制御弁よりも上流側の部分を凝縮域とする一方、上記室内熱交換器において上記制御弁よりも下流側の部分を蒸発域とする第3除湿運転を行う。
【0013】
上記態様によれば、空調対象である室内の熱負荷を、高熱負荷、中熱負荷および低熱負荷の三段階に分けた場合、第3除湿運転は、室内温度センサによって検出された室内温度から設定温度を引いた温度差が第2所定値(<第1所定値)より小さくなるときに行われるので、室内温度の過度な低下を抑制しつつ、低熱負荷を効率良く低減することができる。
【0014】
一態様の空気調和機は、
上記制御弁の上流側近傍または下流側近傍に設けられ、上記室内熱交換器内を流れる冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサを備え、
上記制御部は、上記第2除湿運転の開始後、上記第2冷媒温度センサで検出された冷媒の温度を用いて、上記膨張機構の開度を調整する。
【0015】
上記態様によれば、上記制御部が膨張機構の開度を調整するとき、第2除湿運転の開始後、第2冷媒温度センサによって検出された冷媒の温度を膨張機構の開度の調整に用いることにより、室内熱交換器の蒸発域および過熱域の大きさに対する制御性が高くなる。
【0016】
一態様の空気調和機は、
上記室内熱交換器の冷媒パスの中間部に設けられ、上記中間部内を流れる冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサを備え、
上記制御部は、上記第2除湿運転の開始後、上記第2冷媒温度センサで検出された冷媒の温度を用いて、上記膨張機構の開度を調整する。
【0017】
ここで、上記冷媒パスの中間部とは、冷媒パスの長さ方向の中間の部分を意味し、例えば、冷媒パスを3等分したとき、冷媒パスの両端側の部分を除いた残りの部分が中間部となる。
【0018】
上記態様によれば、上記制御部が膨張機構の開度を調整するとき、第2除湿運転の開始後、第2冷媒温度センサによって検出された冷媒の温度を膨張機構の開度の調整に用いることにより、室内熱交換器の蒸発域および過熱域の大きさに対する制御性が高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の空気調和機を、図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0021】
〔第1実施形態〕
図1は、本開示の第1実施形態の空気調和機が備える冷媒回路RCの回路図である。
【0022】
上記空気調和機は、空調対象である室内に設置される室内機1と、室外に設置される室外機2とを備える。
【0023】
室内機1は、例えば、室内の壁面に取り付けられる壁掛け式の室内ユニットである。この室内機1は、室内熱交換器11と、この室内熱交換器11に空気を送る室内ファン12と、室内熱交換器11の温度を検出する室内熱交換器温度センサ51と、室内温度を検出する室内温度センサ52と、室内湿度を検出する室内湿度センサ53とを有する。
【0024】
室内熱交換器11は、室内ファン12による空気流に関して、室内ファン12よりも上流側に位置している。この室内熱交換器11は、室内ファン12からの空気と冷媒との熱交換を行うために、本体熱交換部11aと、補助熱交換部11bと、制御弁の一例としての電磁弁13とを有する。
【0025】
本体熱交換部11aは、室内ユーザ側に位置する正面部11a−1と、室内ユーザ側とは反対側に位置する背面部11a−2とから成っている。また、正面部11a−1は、冷媒配管L1,L2および電磁弁13を介して背面部11a−2に流体的に接続されている。これにより、膨張弁24から本体熱交換部11aへ流れる冷媒は、正面部11a−1を流れた後、背面部11a−2に流入することが可能となっている。
【0026】
補助熱交換部11bは、本体熱交換部11aの正面部11a−1に関して本体熱交換部11aの背面部11a−2側とは反対側に設けられている。すなわち、補助熱交換部11bは、本体熱交換部11aの正面部11a−1よりも、室内ユーザ側に位置する。この補助熱交換部11bは、本体熱交換部11aよりも、容積が小さい。また、補助熱交換部11bは、冷媒配管L11を介して本体熱交換部11aの正面部11a−1に流体的に接続されている。これにより、膨張弁24側からの冷媒は、補助熱交換部11bを介して、本体熱交換部11aに供給される。このように、補助熱交換部11bは、冷媒配管L3と冷媒配管L11との間の冷媒パスを有するものと言える。
【0027】
室内ファン12としては、例えば、クロスフローファンが採用される。このクロスフローファンは、室内熱交換器11で温度などが調整された空気を室内に向けて吹き出す。
【0028】
電磁弁13は、電磁弁13は、室内熱交換器11の冷媒パスの中間部に設けられている。より詳しく説明すると、本体熱交換部11aの正面部11a−1側と本体熱交換部11aの正面部11a−1側との間に差圧を設定するための弁である。電磁弁13は、大開度および小開度の2位置のみを取ることが可能なオンオフ弁であり、必要時(例えば、後述する再熱除湿運転時)にオンされ、大開度の位置から小開度の位置に切り替えられる。
【0029】
室外機2は、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、膨張機構の一例としての膨張弁24と、アキュムレータ25と、室外熱交換器23に空気を送る室外ファン26とを有する。さらに、室外機2は、室外熱交換器23の温度を検出する室外熱交換器温度センサ56と、外気温度を検出する外気温度センサ57と、膨張弁24で減圧された冷媒の温度(蒸発温度)を検出する冷媒温度センサ58とを有する。なお、冷媒温度センサ58は、第1冷媒温度センサの一例である。
【0030】
室外熱交換器23は、室外ファン26による空気流に関して、室外ファン26よりも下流側に位置している。室外熱交換器23内を流れる冷媒は、室内ファン12からの空気と熱交換する。
【0031】
膨張弁24は、互いに異なる3以上の開度に調整可能な例えば電動弁であって、制御装置100(
図2に示す)からの信号に応じて開度が変化する。
【0032】
また、上記空気調和機の冷媒回路RCは、室内熱交換器11、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、膨張弁24、アキュムレータ25および冷媒配管L3〜L9から成っている。より詳しく説明すると、室内熱交換器11、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、膨張弁24およびアキュムレータ25が、冷媒配管L3〜L9によって流体的に接続される。これにより、環状の冷媒回路RCが構成されている。このような冷媒回路RCにおいて、圧縮機21の駆動時、冷媒が循環する。
【0033】
また、図示しないが、上記空気調和機は、リモートコントローラ(以下、「リモコン」と言う。)を備える。ユーザは、リモコンを操作して、自動運転、冷房運転、暖房運転、除湿運転などを開始させたり、停止させたりすることができる。
【0034】
図2は、上記空気調和機の制御ブロック図である。
【0035】
上記空気調和機は、冷媒回路RCを制御する制御装置100を備える。より詳しく説明すると、制御装置100は、マイクロコンピュータ、入出力回路などから成っている。この制御装置100が、室内熱交換器温度センサ51、室内温度センサ52、室内湿度センサ53、室外熱交換器温度センサ56、外気温度センサ57、冷媒温度センサ58などからの信号に基づいて、圧縮機21、四路切換弁22、膨張弁24、室外ファン26、室内ファン12、電磁弁13などを制御する。なお、制御装置100は制御部の一例である。
【0036】
また、制御装置100は、冷房除湿運転を行う冷房除湿運転制御部100aと、過絞り除湿運転を行う過絞り除湿運転制御部100bと、再熱除湿運転を行う再熱除湿運転制御部100cとを有する。この冷房除湿運転制御部100a、過絞り除湿運転制御部100bおよび再熱除湿運転制御部100cは、それぞれ、ソフトウェアにより構成されている。なお、上記冷房除湿運転は、第1除湿運転の一例である。また、上記過絞り除湿運転は、第2除湿運転の一例である。また、上記再熱除湿運転は、第3除湿運転の一例である。
【0037】
[冷房除湿運転]
上記冷房除湿運転は、
図1に示すように、四路切換弁22を実線の切換え位置に切り換えると共に、圧縮機21を起動することで、開始される。この冷房除湿運転中、圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒が四路切換弁22を介して室外熱交換器23に流入する。そして、室外熱交換器23で凝縮した冷媒は、膨張弁24で減圧された後、室内熱交換器11の補助熱交換部11bと、室内熱交換器11の本体熱交換部11aとに、この順で流入する。この本体熱交換部11aおよび補助熱交換部11bで蒸発した冷媒が四路切換弁22およびアキュムレータ25を介して圧縮機21の吸入側に戻る。このように、冷媒が冷媒回路RCを循環するとき、冷房除湿運転制御部100aが、圧縮機21の周波数と膨張弁24の開度とを調整すると共に、電磁弁13をオフにすることで、
図3に示すように、室内熱交換器11の実質的に全部を蒸発域(
図3において斜線のハッチングを付した領域)とする。これにより、上記冷房除湿運転は、室内温度を変化させるための能力である顕熱能力が高くなる。
【0038】
ここで、室内熱交換器11の実質的に全部を蒸発域にするとは、室内熱交換器11の全部を蒸発域にするときだけでなく、所定条件下で室内熱交換器11において一部を除いた部分だけを蒸発域にするときも含む。この一部(例えば、室内熱交換器11の全容積の1/3以下の部分)だけが蒸発域とならない所定条件としては、例えば、室内環境などによって、室内熱交換器11の冷媒出口近傍の部分が過熱域となるときなどがある。
【0039】
[過絞り除湿運転]
上記過絞り除湿運転は、上記冷房除湿運転のときと同じ方向に冷媒を流す。このとき、過絞り除湿運転制御部100bが、圧縮機21の周波数と膨張弁24の開度とを調整すると共に、電磁弁13をオフにすることで、室内熱交換器11の上流側の一部を蒸発域とする一方、室内熱交換器11の残りの部分を過熱域とする。例えば、過絞り除湿運転制御部100bは、
図4に示すように、補助熱交換部11bを蒸発域(斜線のハッチングを付した領域)にする一方、本体熱交換部11aの正面部11a−1および背面部11a−2を過熱域(点のハッチングを付した領域)にする。これにより、上記過絞り除湿運転は、冷房除湿運転によりも顕熱能力が低くなるので、室内の熱負荷が高くも低くもないとき、室温の低下を抑制しつつ、室内の除湿を行える。
図4では、補助熱交換部11bの全部が蒸発域となるように描かれているが、補助熱交換部11bの一部だけを蒸発域にすることも可能である。すなわち、上記蒸発域は、容積を変更することが可能な可変領域である。
【0040】
また、上記圧縮機21および膨張弁24は、過絞り除湿運転中、蒸発域の容積が負荷に応じて変化するように制御される。例えば、過絞り除湿運転制御部100bは、過絞り除湿運転中、蒸発域が所定容積(例えば、室内熱交換器11の全容積の2/3)以下となるように、圧縮機21および膨張弁24を制御する。
【0041】
ここで、上記負荷に応じて変化するとは、室内から蒸発域に供給される熱量に応じて変化することであって、その熱量は例えば室内温度(室内機1が吸い込む空気の温度)と室内風量(室内機1が吹き出す風の量)によって決まる。また、上記負荷は、必要除湿能力(必要冷房能力)に対応しており、例えば、室内温度と設定温度との差に基づいて検知できる。なお、上記設定温度としては、予め設定された温度、または、ユーザがリモコンで設定した温度が用いられる。
【0042】
[再熱除湿運転]
上記再熱除湿運転は、上記冷房除湿運転のときと同じ方向に冷媒を流す。このとき、再熱除湿運転制御部100cが、圧縮機21の周波数と膨張弁24の開度とを調整すると共に、電磁弁13をオンにすることで、室内熱交換器11において電磁弁13よりも上流側の少なくとも一部を凝縮域にする一方、室内熱交換器11において電磁弁13より下流側の少なくとも一部を蒸発域とする。例えば、再熱除湿運転制御部100cは、
図5に示すように、補助熱交換部11bと本体熱交換部11aの正面部11a−1とを凝縮域(格子のハッチングを付した領域)にする一方、本体熱交換部11aの背面部11a−2を蒸発域(斜線のハッチングを付した領域)にする。これにより、上記再熱除湿運転は、過絞り除湿運転よりも顕熱能力が低くなるので、室内の熱負荷が低いとき、室温の低下を抑制しつつ、室内の除湿を行える。
【0043】
また、上記再熱除湿運転では、電磁弁13は、小開度の位置に切り替えられる。すなわち、上記再熱除湿運転における電磁弁13の開度は、空気流量が10L/min未満に相当する開度である。上記再熱除湿運転における電磁弁13の開度は、空気流量が5L/minに相当する開度であれば好ましい。さらに、上記再熱除湿運転における電磁弁13の開度は、空気流量が3.5L/minに相当する開度であれば好ましい。ここで、「上記再熱除湿運転における電磁弁13の開度が、空気流量が10L/min未満に相当する開度である」とは、上記開度において冷媒回路RCを流れる空気流量が10L/min未満であることをいうのではなく、電磁弁13の流量特性から求められる上記開度における空気流量が10L/min未満であることをいう。
【0044】
上記冷房除湿運転、過絞り除湿運転または再熱除湿運転は、リモコンの除湿運転のボタンの押下に応じて開始するようになっている。より詳しく説明すると、上記除湿運転のボタが押下されると、例えば顕熱比に基づいて、冷房除湿運転、過絞り除湿運転および再熱除湿運転のうちの一つの除湿運転が自動的に選択されて開始する。その後、上記顕熱比の変化に応じて、他の除湿運転に自動的に切り替わる。なお、上記顕熱比とは、全熱(=顕熱+潜熱)に対する顕熱の比を指す。
【0045】
図6は、上記空気調和機の冷房除湿運転時、過絞り除湿運転時および再熱除湿運転時のモリエル線図である。
【0046】
過絞り除湿運転制御部100bの制御は、過絞り除湿運転の蒸発温度は、冷房除湿運転の蒸発温度よりも低くなるように行われる。このとき、膨張弁24の開度は、通常、冷房除湿運転中の膨張弁24の開度よりも小さくなる。
【0047】
再熱除湿運転制御部100cの制御は、再熱除湿運転の蒸発温度が過絞り除湿運転の蒸発温度よりも低くなるように行われる。このとき、膨張弁24の開度は、過絞り除湿運転中における膨張弁24の最大開度よりも大きい開度に固定される。
【0048】
また、過絞り除湿運転制御部100bの制御により、圧縮機21の周波数は、冷房除湿運転に引き続いて過絞り除湿運転が開始する時(以下、「第1開始時」と言う。)と、空調運転が停止している時から過絞り除湿運転が開始する時(以下、「第2開始時」と言う。)とで異なる。より具体的に説明すると、上記第1開始時における圧縮機21の周波数は、上記第2開始時における圧縮機21の周波数よりも高くなる。また、上記第1開始時における膨張弁24の開度は、上記第2開始時における膨張弁24の開度よりも大きくなる。
【0049】
また、過絞り除湿運転制御部100bは、過絞り除湿運転の開始後、冷媒温度センサ58によって検出された蒸発温度を用いて、膨張弁24の開度を調整する。より具体的に説明すると、上記蒸発温度が所定温度(例えば10℃)となるように、かつ、室内熱交換器11の冷媒パスの中間部が過熱域となるように、膨張弁24の開度が調整される。
【0050】
また、過絞り除湿運転制御部100bは、室内温度センサ52によって検出された室内温度から設定温度を引いた温度差が、所定範囲内のとき、過絞り除湿運転を行う。ここで、上記所定範囲内とは、例えば、第1所定値(例えば+1.0deg)以下、かつ、上記第1所定値よりも小さい第2所定値(例えば−1.0deg)以上を満たす範囲内を指す。なお、上記設定温度としては、予め設定された温度、または、ユーザがリモコンで設定した温度が用いられる。
【0051】
また、再熱除湿運転制御部100cは、上記温度差の絶対値が上記第2所定値よりも小さいとき、再熱除湿運転を行う。
【0052】
上記構成の空気調和機では、上記冷房除湿制御部100aが圧縮機21および膨張弁24を制御する。これにより、空調運転の停止時から行われる過絞り除湿運転の第2開始時に比べて、冷房除湿運転に引き続いて行われる過絞り除湿運転の第1開始時の方が、圧縮機21の周波数が高くなり、かつ、膨張弁24の開度が大きくなる。その結果、上記冷房除湿運転から過絞り除湿運転に移行するとき、蒸発域の大きさを緩やかに変化させることができるので、移行後の湿度戻りを抑制することができる。
【0053】
また、過絞り除湿運転制御部100bが、過絞り除湿運転の開始後、冷媒温度センサ58に検出された蒸発温度を膨張弁24の開度の調整に用いることにより、室内熱交換器11の蒸発域および過熱域の大きさに対する制御性が高くなる。
【0054】
また、上記室内の熱負荷の段階を、高熱負荷、中熱負荷および低熱負荷の三つの段階に分けた場合、過絞り除湿運転制御部100bは、室内温度と設定温度との温度差が所定温度差以上のときに、過絞り除湿運転を行うので、室内温度の低下を抑制しつつ、中熱負荷を効率良く低減することができる。
【0055】
また、過絞り除湿運転制御部100bは、上記温度差が上記所定温度差未満のときに行われないので、低熱負荷を過絞り除湿運転で対処しなくて済む。したがって、上記過絞り除湿運転の効率が悪くなるのを抑制することができる。
【0056】
また、その場合、再熱除湿運転制御部100cは、上記温度差が所定温度差未満のときに、再熱除湿を行うので、室内温度の低下を抑制しつつ、低熱負荷を効率良く低減することができる。
【0057】
以下、
図7のフローチャートにしたがって、過絞り除湿運転の開始時の制御について説明する。なお、上記制御は、例えば、リモコンの除湿運転のボタンが押下された後、過絞り除湿運転を開始させるときに行われる。
【0058】
上記制御がスタートすると、まず、ステップS1で、直前の運転が冷房除湿運転であったか否かが判定される。このステップS1で、直前の運転が冷房除湿運転であったと判定されると、次のステップS2に進む。一方、ステップS1で、直前の運転が冷房除湿運転でないと判定されると、ステップS11を経由して、上記制御はエンドとなる。なお、直前の運転が冷房除湿運転でないときの一例としては、空調運転が停止しているとき、再熱除湿運転が直前に行われているときなどがある。
【0059】
ステップS11では、圧縮機21の周波数が過絞り除湿運転のデフォルトの開始周波数になるように、かつ、膨張弁24の開度が過絞り除湿運転のデフォルトの開始開度になるように、圧縮機21および膨張弁24を制御する。なお、ステップS11は、過絞り除湿運転制御部100bによって行われる。
【0060】
次に、ステップS2で、室内の熱負荷が中熱負荷であるか否かが判定される。すなわち、ステップS2で、室内温度センサ52によって検出された室内温度から設定温度を引いた温度差が、第1所定値(例えば+1.0deg)以下、かつ、上記第1所定値よりも小さい第2所定値(例えば−1.0deg)以上であるか否かを判定する。このステップS2で、上記温度差の絶対値が、上記第1所定値以下かつ上記第2所定値以上であると判定すると判定すると、次のステップS3に進む。一方、ステップS2で、上記温度差の絶対値が、上記第1所定値より大きい、または、上記第2所定値より小さいと判定すると、上記制御が終了する。
【0061】
最後に、ステップS3で、圧縮機21の周波数がデフォルトの開始周波数よりも高くなるように、かつ、膨張弁24の開度がデフォルトの開始開度よりも大きくなるように、圧縮機21および膨張弁24を制御して、上記制御がエンドになる。なお、上記制御のエンドになった後は、例えば、除湿運転のボタンの押下直後に行われる判断が再び行われる。また、ステップS3は、過絞り除湿運転制御部100bによって行われる。
【0062】
したがって、上記冷房除湿運転から過絞り除湿運転に切り替わった場合、ステップS3により、圧縮機21の周波数を過絞り除湿運転のデフォルトの開始周波数よりも高くすることができると共に、膨張弁24の開度を過絞り除湿運転のデフォルトの開始開度よりも大きくすることができる。
【0063】
上記第1実施形態では、室内熱交換器11は、本体熱交換部11aと補助熱交換部11bを有していたが、本体熱交換部11aを有する一方、補助熱交換部11bを有さないようにしてもよい。このようにする場合、過絞り除湿運転時、本体熱交換部11aの一部だけが蒸発域となるようにすればよい。
【0064】
上記第1実施形態では、本体熱交換部11aの正面部11a−1側と本体熱交換部11aの正面部11a−1側との間に、電磁弁13を設けていたが、互いに異なる3以上の開度に調整可能な電動弁を制御弁の一例として設けてもよい。
【0065】
上記第1実施形態において、制御装置100は、室内機1側の室内制御部(図示せず)と、室外機2側の室外制御部(図示せず)とで構成されてもよいし、上記室内制御部のみで構成されるようにしてもよいし、上記室外制御部のみで構成されてもよい。別の言い方をすれば、制御装置100は、一部が室内機1に搭載され、かつ、残りの他の部分が室外機2に搭載されるようにしてもよいし、全部が室内機1に搭載されるようにしてもよいし、全部が室外機2に搭載されるようにしてもよい。
【0066】
上記第1実施形態では、冷房除湿運転制御部100a、過絞り除湿運転制御部100bおよび再熱除湿運転制御部100cは、それぞれ、ソフトウェアにより構成されていたが、冷房除湿運転制御部100a、過絞り除湿運転制御部100bおよび再熱除湿運転制御部100cのうちの少なくとも一つが、ハードウェアにより構成されるようにしてもよい。
【0067】
上記第1実施形態では、
図7のフローチャートの制御は、リモコンの除湿運転のボタンが押下された後、過絞り除湿運転を開始させるときに行われていたが、例えば、リモコンの自動運転のボタンが押下された後、過絞り除湿運転を開始させるときに行われてもよい。ここで、上記自動運転は、室内温度、室外温度などに基づいて、冷房運転、除湿運転、暖房運転などから一つが自動的に選択されて開始した後、自動的に他の空調運転に切り替わるものである。この自動運転の除湿運転において過絞り除湿運転が自動的に開始してもよい。また、上記自動運転の除湿運転では、冷房除湿運転、過絞り除湿運転および再熱除湿運転は、例えば顕熱比の変化に応じて、自動的に互いに切り替わるようにしてもよい。
【0068】
上記第1実施形態では、ステップS3の処理は、冷房除湿運転から過絞り除湿運転に移行するときに行われていたが、冷房運転から過絞り除湿運転に移行するときに行われるようにしてもよい。このようにする場合、上記冷房運転が第1除湿運転の一例となる。
【0069】
上記第1実施形態において、ステップS3の処理後、圧縮機21の周波数と膨張弁24の開度が所定時間維持されるようにしてもよい。
【0070】
〔第2実施形態〕
図8は、本開示の第2実施形態の空気調和機が備える冷媒回路RCの回路図である。なお、
図8において、
図1の構成部と同一構成部は、
図1の構成部の参照番号と同一参照番号を付している。
【0071】
上記空気調和機の室内機201では、電磁弁13の上流側近傍に設けられた冷媒温度センサ261を備える。この冷媒温度センサ261は、冷媒配管L1に取り付けられ、冷媒配管L1内の冷媒の温度を検出する。なお、冷媒温度センサ261は、第2冷媒温度センサの一例である。
【0072】
図9は、上記空気調和機の制御ブロック図である。なお、
図9において、
図2の構成部と同一構成部は、
図2の構成部の参照番号と同一参照番号を付している。
【0073】
上記空気調和機は、マイクロコンピュータ、入出力回路などから成る制御装置200を備える。この制御装置200は、上記第1実施形態の過絞り除湿運転制御部100bとは異なる過絞り除湿運転制御部200bを有する。
【0074】
過絞り除湿運転制御部200bは、冷房除湿運転に引き続いて行う過絞り除湿運転の開始時、過絞り除湿運転制御部100bと同様に、圧縮機21の周波数と、膨張弁24の開度とを制御する。また、過絞り除湿運転制御部200bは、過絞り除湿運転の開始後、冷媒温度センサ261によって検出された冷媒の温度を用いて、膨張弁24の開度を調整する。
【0075】
上記構成の空気調和機では、上記第1実施形態の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0076】
また、上記過絞り除湿運転制御部200bが、過絞り除湿運転の開始後、冷媒温度センサ261に検出された冷媒の温度を膨張弁24の開度の調整に用いることにより、室内熱交換器11の蒸発域および過熱域の大きさに対する制御性が上記第1実施形態よりも高くなる。
【0077】
上記第2実施形態では、室内熱交換器11は、電磁弁13を有していたが、電磁弁13を有さないようにして、室内熱交換器11の冷媒パスの中間部に冷媒温度センサ261を設けるだけにしてもよい。
【0078】
上記第2実施形態では、室内機201内の冷媒温度センサ261は、電磁弁13の上流側近傍に設けていたが、例えば、
図10に示すように、電磁弁13の下流側近傍に設けてもよい。このようにする場合、冷媒温度センサ261は、例えば冷媒配管L2に取り付けてもよい。また、冷媒温度センサ261の取り付け位置は、冷媒配管L1,L2以外であってもよく、室内熱交換器11の冷媒パスの中間部を流れる冷媒の温度が検出可能な位置であればどこでもよい。
【0079】
本開示の具体的な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1実施形態に第2実施形態の変形例を適用したものや、上記第2実施形態に第1実施形態の変形例を適用したものを、本開示の一実施形態としてもよい。