(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のコンデンサ導体層と前記第2のコンデンサ導体層とは平面視で対向する部分を有する、及び/又は、前記第1のコンデンサ導体層と前記第3のコンデンサ導体層とは平面視で対向する部分を有すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のハイパスフィルタ。
前記第1のコンデンサ導体層と前記第2のコンデンサ導体層とは、前記平面視で対向する部分にて容量結合している、及び/又は、第1のコンデンサ導体層と前記第3のコンデンサ導体層とは、前記平面視で対向する部分にて容量結合していること、
を特徴とする請求項3に記載のハイパスフィルタ。
前記第1のコンデンサ導体層は、前記絶縁体層を介して前記第2のコンデンサ導体層及び前記第3のコンデンサ導体層と対向し、かつ、前記第1のインダクタ導体層及び前記第2のインダクタ導体層よりも該第2のコンデンサ導体層及び該第3のコンデンサ導体層の近くに設けられていること、
を特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載のハイパスフィルタ。
前記第1のインダクタは、前記絶縁体層を前記積層方向に貫通し、かつ、前記第1のインダクタ導体層と前記第2のコンデンサ導体層とを電気的に接続する第1のビアホール導体を更に含んでおり、
前記第1のコンデンサ導体層は、前記第1のビアホール導体に接続され、前記絶縁体層を介して前記第3のコンデンサ導体層と対向しており、かつ、前記第2のインダクタ導体層よりも該第3のコンデンサ導体層の近くに設けられていること、
を特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載のハイパスフィルタ。
前記第1のインダクタは、複数の前記第1のインダクタ導体層が少なくとも1以上のビアホール導体により接続されることにより、前記積層方向から見たときに前記所定方向に巻きながら該積層方向に進行する螺旋状をなしており、
前記第2のインダクタは、複数の前記第2のインダクタ導体層が少なくとも1以上のビアホール導体により接続されることにより、前記積層方向から見たときに前記所定方向の反対方向に巻きながら該積層方向に進行する螺旋状をなしていること、
を特徴とする請求項2に記載のハイパスフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、一実施形態に係るハイパスフィルタについて図面を参照しながら説明する。
【0014】
(ハイパスフィルタの構成)
以下、一実施形態に係るハイパスフィルタの構成について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係るハイパスフィルタ10,10a〜10cの等価回路図である。
【0015】
ハイパスフィルタ10は、
図1に示すように、信号経路SL、コンデンサC1〜C3,C11、LC直列共振器LC1,LC2及び外部電極14a〜14dを備えている。外部電極14a,14bは入出力端子である。外部電極14c,14dはグランド端子である。
【0016】
信号経路SLは、外部電極14aと外部電極14bとを接続し、高周波信号が伝送される経路である。コンデンサC1〜C3は、信号経路SL上においてこの順に直列に接続されている。コンデンサC1〜C3は、信号経路SLを伝送される高周波信号の内、所定周波数よりも高い高周波信号を通過させる。
【0017】
LC直列共振器LC1(第1のLC直列共振器の一例)は、コンデンサC4(第1のコンデンサの一例)及びインダクタL1(第1のインダクタの一例)を含んでいる。コンデンサC4とインダクタL1とは、直列に接続されている。以下では、コンデンサC4においてインダクタL1に接続されていない方の端部をLC直列共振器LC1の第1の端部と呼ぶ。インダクタL1においてコンデンサC4に接続されていない方の端部をLC直列共振器LC1の第2の端部と呼ぶ。LC直列共振器LC1の第1の端部は、信号経路SLに電気的に接続されており、本実施形態では、コンデンサC1とコンデンサC2との間に接続されている。LC直列共振器LC1の第2の端部は、外部電極14cに電気的に接続されている。
【0018】
LC直列共振器LC2(第2のLC直列共振器の一例)は、コンデンサC5(第2のコンデンサの一例)及びインダクタL2(第2のインダクタの一例)を含んでいる。コンデンサC5とインダクタL2とは、直列に接続されている。以下では、コンデンサC5においてインダクタL2に接続されていない方の端部をLC直列共振器LC2の第3の端部と呼ぶ。インダクタL2においてコンデンサC5に接続されていない方の端部をLC直列共振器LC2の第4の端部と呼ぶ。LC直列共振器LC2の第3の端部は、信号経路SLに電気的に接続されており、本実施形態では、コンデンサC2とコンデンサC3との間に接続されている。LC直列共振器LC2の第4の端部は、外部電極14dに電気的に接続されている。LC直列共振器LC1,LC2は、同じ共振周波数を有している。LC直列共振器LC1,LC2は、共振周波数においてインピーダンスが最小値となることにより、信号経路SLを伝送される高周波信号の内、共振周波数の高周波信号をグランドへと導く。
【0019】
コンデンサC11(第3のコンデンサの一例)は、コンデンサC4においてインダクタL1に接続されている第1の電極(
図1のコンデンサC4の下側の電極)からインダクタL1においてコンデンサC4に接続されていない端部(
図1のインダクタL1の下側の端部)よりも該第1の電極側の部分までの区間と、コンデンサC11の他方の電極は、コンデンサC5においてインダクタL2に接続されている第2の電極(
図1のコンデンサC5の下側の電極)からインダクタL2においてコンデンサC5に接続されていない端部(
図1のインダクタL2の下側の端部)よりも該第2の電極側の部分までの区間との間に形成されている。より詳細には、コンデンサC11の一方の電極は、コンデンサC4においてインダクタL1に接続されている第1の電極からインダクタL1においてコンデンサC4に接続されていない端部よりも第1の電極側の区間までの間に接続されている。コンデンサC11の他方の電極は、コンデンサC5においてインダクタL2に接続されている第2の電極からインダクタL2においてコンデンサC5に接続されていない端部よりも第2の電極側までの区間に接続されている。故に、コンデンサC11の一方の電極は、コンデンサC4においてインダクタL1に接続されていない電極と接続されていてはいけない。同様に、コンデンサC11の他方の電極は、コンデンサC5においてインダクタL2に接続されていない電極と接続されていてはいけない。同様に、コンデンサC11の一方の電極は、インダクタL1においてコンデンサC4に接続されていない端部に接続されていてはいけない。コンデンサC11の他方の電極は、インダクタL2においてコンデンサC5に接続されていない端部に接続されていてはいけない。本実施形態では、コンデンサC11の一方の電極は、コンデンサC4とインダクタL1との間に接続され、コンデンサC11の他方の電極は、コンデンサC5とインダクタL2との間に接続されている。
【0020】
次に、ハイパスフィルタ10の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
図2は、ハイパスフィルタ10,10a〜10cの外観斜視図である。
図3は、ハイパスフィルタ10の分解斜視図である。以下では、ハイパスフィルタ10の積層方向を上下方向と定義し、上側から平面視したときに、ハイパスフィルタ10の長辺が延びている方向を左右方向と定義し、上側から平面視したときのハイパスフィルタ10の短辺が延びている方向を前後方向と定義する。上下方向、左右方向及び前後方向は直交している。なお、
図1及び
図3の上下方向、左右方向及び前後方向は、説明のために示した一例であり、ハイパスフィルタ10の使用時における上下方向、左右方向及び前後方向と一致している必要はない。
【0021】
ハイパスフィルタ10は、
図2に示すように、積層体12、外部電極14a〜14d、インダクタ導体層18a〜18f,20a〜20f、コンデンサ導体層22,24,26a,26b,28a,28b,29,30,32,34、接続導体層36a,36b,38a,38b(インダクタ導体層18a〜18f、コンデンサ導体層26b,30、接続導体層36a,36bは第1のLC直列共振器に含まれる1以上の第1の導体層の一例、インダクタ導体層20a〜20f、コンデンサ導体層28b,32、接続導体層38a,38bは第2のLC直列共振器に含まれる1以上の第2の導体層の一例)及びビアホール導体v1〜v5,v11〜v15を備えている。
【0022】
積層体12は、
図2に示すように、絶縁体層16a〜16s(複数の絶縁体層の一例)が上側から下側に向かってこの順に並ぶように積層された構造を有し、直方体状をなしている。絶縁体層16a〜16sは、上側から見たときに、長方形状をなす誘電体層である。以下では、絶縁体層16a〜16sの上側の主面を表面と呼び、絶縁体層16a〜16sの下側の主面を裏面と呼ぶ。
【0023】
外部電極14a〜14dは、積層体12の表面に設けられている。外部電極14a(第1の入出力端子の一例)は、側面部114a、底面部115a及び上面部116aを含んでいる。上面部116aは、積層体12の上面の左後ろの角に設けられており、長方形状をなしている。底面部115aは、積層体12の底面の左後ろの角に設けられており、長方形状をなしている。側面部114aは、積層体12の後面に設けられており、後面の左側の短辺に沿って延びている。側面部114aは、長方形状をなしており、底面部115aと上面部116aとを接続している。
【0024】
外部電極14b(第2の入出力端子の一例)は、側面部114b、底面部115b及び上面部116bを含んでいる。上面部116bは、積層体12の上面の右後ろの角に設けられており、長方形状をなしている。底面部115bは、積層体12の底面の右後ろの角に設けられており、長方形状をなしている。側面部114bは、積層体12の後面に設けられており、後面の右側の短辺に沿って延びている。側面部114bは、長方形状をなしており、底面部115bと上面部116bとを接続している。
【0025】
外部電極14c(1以上のグランド端子の一例)は、側面部114c(少なくとも1以上の底面部の一例)、底面部115c及び上面部116cを含んでいる。上面部116cは、積層体12の上面の左前の角に設けられており、長方形状をなしている。底面部115cは、積層体12の底面(積層体において積層方向の一方側に位置する面の一例)の左前の角に設けられており、長方形状をなしている。側面部114cは、積層体12の後面に設けられており、前面の左側の短辺に沿って延びている。側面部114cは、長方形状をなしており、底面部115cと上面部116cとを接続している。
【0026】
外部電極14d(1以上のグランド端子の一例)は、側面部114d(少なくとも1以上の底面部の一例)、底面部115d及び上面部116dを含んでいる。上面部116dは、積層体12の上面の右前の角に設けられており、長方形状をなしている。底面部115dは、積層体12の底面(積層体において積層方向の一方側に位置する面の一例)の右前の角に設けられており、長方形状をなしている。側面部114dは、積層体12の前面に設けられており、前面の右側の短辺に沿って延びている。側面部114dは、長方形状をなしており、底面部115dと上面部116dとを接続している。外部電極14a〜14cは、Ag又はCuからなる下地電極上にNiめっき及びSnめっきもしくはAuめっきが施されることにより作製される。
【0027】
コンデンサC1は、コンデンサ導体層22,26aを含んでいる。コンデンサ導体層22は、絶縁体層16rの表面上に設けられており、上側から見たときに、長方形状をなしている。コンデンサ導体層22は、上側から見たときに、絶縁体層16rの表面の左後ろの角近傍に設けられており、絶縁体層16rの後ろ側の長辺の左端近傍に引き出されている。これにより、コンデンサ導体層22は、側面部114a(すなわち、外部電極14a)に接続されている。
【0028】
コンデンサ導体層26aは、絶縁体層16qの表面上に設けられており、上側から見たときに、長方形状をなしている。コンデンサ導体層26aは、絶縁体層16qの左半分の領域の略全面を覆っており、絶縁体層16qの外縁には引き出されていない。これにより、コンデンサ導体層22とコンデンサ導体層26aとは、絶縁体層16rを介して対向している。すなわち、コンデンサ導体層22とコンデンサ導体層26aとの間にコンデンサC1が形成されている。
【0029】
コンデンサC4は、コンデンサ導体層26b,30を含んでいる。コンデンサ導体層26bは、絶縁体層16oの表面上に設けられており、上側から見たときに、長方形状をなしている。コンデンサ導体層26bは、コンデンサ導体層26aと同じ形状を有しており、かつ、上側から見たときに、コンデンサ導体層26aと一致した状態で重なっている。
【0030】
コンデンサ導体層30(少なくとも1以上の第1の導体層に含まれる第2のコンデンサ導体層の一例)は、絶縁体層16nの表面上に設けられており、上側から見たときに、長方形状をなしている。コンデンサ導体層30は、上側から見たときに、絶縁体層16nの表面の中央(対角線の交点)に対して左側に設けられている。これにより、コンデンサ導体層26aとコンデンサ導体層30とは、絶縁体層16nを介して対向している。すなわち、コンデンサ導体層26bとコンデンサ導体層30との間にコンデンサC4が形成されている。
【0031】
ビアホール導体v5は、絶縁体層16o,16pを上下方向に貫通しており、コンデンサ導体層26aとコンデンサ導体層26bとを接続している。これにより、コンデンサC1とコンデンサC4とが接続されている。
【0032】
インダクタL1(第1のインダクタの一例)は、インダクタ導体層18a〜18f(少なくとも1以上の第1の導体層に含まれる1以上又は複数の第1のインダクタ導体層の一例)、接続導体層36a,36b及びビアホール導体v1〜v4(ビアホール導体v1〜v3が1以上のビアホール導体の一例、ビアホール導体v4が第1のビアホール導体の一例)を含んでいる。インダクタL1は、インダクタ導体層18a〜18fがビアホール導体v1〜v3により接続されることにより、上側から見たときに、時計回り方向(所定方向の一例)に巻きながら上側から下側に向かって進行する螺旋状をなしている。本実施形態では、螺旋状は、3次元の螺旋(helix)である。ただし、螺旋状は、2次元の螺旋(spiral)であってもよい。
【0033】
インダクタ導体層18a,18bはそれぞれ、絶縁体層16b,16cの表面上に設けられており、同じ形状をなす線状の導体層である。インダクタ導体層18c,18dはそれぞれ、絶縁体層16d,16eの表面上に設けられており、同じ形状をなす線状の導体層である。インダクタ導体層18e,18fはそれぞれ、絶縁体層16f,16gの表面上に設けられており、同じ形状をなす線状の導体層である。
【0034】
インダクタ導体層18a〜18fはそれぞれ、絶縁体層16b〜16gの右半分の領域において、上側から見たときに、時計回り方向に巻いている。インダクタ導体層18a〜18fは、互いに重なり合うことにより、上側から見たときに、前後方向に延在する長辺を有する長方形状の軌道を形成している。以下では、インダクタ導体層18a〜18fの時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、インダクタ導体層18a〜18fの時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。インダクタ導体層18a,18bの上流端はそれぞれ、長方形状の軌道からはみ出して絶縁体層16b,16cの前側の長辺の左端近傍に引き出されている。これにより、インダクタ導体層18a,18bは、側面部114c(外部電極14c)に接続されている。すなわち、インダクタL1の上端(積層方向の他方側の端部の一例)は、底面部115cに側面部114cを介して電気的に接続されている。
【0035】
接続導体層36a,36bはそれぞれ、絶縁体層16h,16iの表面上に設けられており、上側から見たときに、前後方向に延びる線状をなしている。接続導体層36a,36bはそれぞれ、上側から見たときに、絶縁体層16h,16iの表面の中央(対角線の交点)に対して左側に設けられている。
【0036】
ビアホール導体v1は、絶縁体層16b〜16dを上下方向に貫通しており、インダクタ導体層18a,18bの下流端とインダクタ導体層18c,18dの上流端とを接続している。ビアホール導体v2は、絶縁体層16d〜16fを上下方向に貫通しており、インダクタ導体層18c,18dの下流端とインダクタ導体層18e,18fの上流端とを接続している。ビアホール導体v3は、絶縁体層16f〜16hを上下方向に貫通しており、インダクタ導体層18e,18fの下流端と接続導体層36a,36bの前端とを接続している。これにより、インダクタL1が螺旋状をなしている。
【0037】
ビアホール導体v4は、絶縁体層16h〜16mを上下方向に貫通しており、接続導体層36a,36bの後端とコンデンサ導体層30とを接続している。これにより、インダクタL1とコンデンサC4とが直列に接続されて、LC直列共振器LC1が形成されている。更に、コンデンサC4は、インダクタL1よりも下側に位置している。
【0038】
コンデンサC3は、コンデンサ導体層24,28aを含んでいる。コンデンサ導体層24,28aは、上側から見たときに、積層体12の中央を通過し、かつ、前後上下方向に平行な平面に関して、コンデンサ導体層22,26aと面対称な構造を有する。よって、コンデンサ導体層24,28aの詳細な構造の説明については省略する。
【0039】
コンデンサC5は、コンデンサ導体層28b,32(コンデンサ導体層32は第3のコンデンサ導体層の一例)を含んでいる。コンデンサ導体層28b,32は、上側から見たときに、積層体12の中央を通過し、かつ、前後上下方向に平行な平面に関して、コンデンサ導体層26b,30と面対称な構造を有する。よって、コンデンサ導体層28b,32の詳細な構造の説明については省略する。
【0040】
ビアホール導体v15は、絶縁体層16o,16pを上下方向に貫通しており、コンデンサ導体層28aとコンデンサ導体層28bとを接続している。これにより、コンデンサC3とコンデンサC5とが接続されている。
【0041】
インダクタL2(第2のインダクタの一例)は、インダクタ導体層20a〜20f(少なくとも1以上の第2の導体層に含まれる1以上又は複数の第2のインダクタ導体層の一例)、接続導体層38a,38b及びビアホール導体v11〜v14(ビアホール導体v11〜v13が1以上のビアホール導体の一例、ビアホール導体v14が第2のビアホール導体の一例)を含んでいる。インダクタ導体層20a〜20f、接続導体層38a,38b及びビアホール導体v11〜v14は、上側から見たときに、積層体12の中央を通過し、かつ、前後上下方向に平行な平面に関して、インダクタ導体層18a〜18f、接続導体層36a,36b及びビアホール導体v1〜v4と面対称な構造を有する。よって、インダクタ導体層20a〜20f、接続導体層38a,38b及びビアホール導体v11〜v14の詳細な構造の説明については省略する。
【0042】
コンデンサC2は、コンデンサ導体層26a,26b,28a,28b,29を含んでいる。コンデンサ導体層29は、絶縁体層16pの表面上に設けられており、H字型状をなしている。コンデンサ導体層29は、容量部29a,29c及び接続部29bを含んでいる。容量部29aは、上側から見たときに、絶縁体層16pの表面の中央に対して左側に設けられており、前後方向に延在する帯状をなしている。コンデンサ導体層26a,26bと容量部29aとは、絶縁体層16o,16pを介して対向している。容量部29cは、上側から見たときに、絶縁体層16pの表面の中央に対して右側に設けられており、前後方向に延在する帯状をなしている。コンデンサ導体層28a,28bと容量部29cとは、絶縁体層16o,16pを介して対向している。接続部29bは、容量部29aの前後方向の中央と容量部29cの前後方向の中央とを接続している。これにより、コンデンサ導体層26a,26bとコンデンサ導体層28a,28bとの間には、コンデンサ導体層29を介してコンデンサC2が形成されている。また、コンデンサ導体層26aはコンデンサC1に含まれ、コンデンサ導体層28aはコンデンサC3に含まれている。これにより、コンデンサC1〜C3が直列に接続されている。
【0043】
コンデンサC11は、コンデンサ導体層30,32,34を含んでいる。コンデンサ導体層34(第1のコンデンサ導体層の一例)は、絶縁体層16mの表面上に設けられており、左右方向に延在する長辺を有する長方形状をなしている。これにより、コンデンサ導体層34は、インダクタ導体層18f,20fよりもコンデンサ導体層30,32の近くに設けられている。インダクタ導体層18f,20fは、インダクタ導体層18a〜18f,20a〜20fの内の最も下側に設けられているインダクタ導体層である。コンデンサ導体層34は、絶縁体層16mの表面の中央に設けられており、絶縁体層16mを介してコンデンサ導体層30,32と対向している。これにより、コンデンサ導体層30とコンデンサ導体層32との間には、コンデンサ導体層34を介してコンデンサC11が形成されている。また、コンデンサ導体層30はコンデンサC4に含まれ。コンデンサ導体層32はコンデンサC5に含まれている。よって、コンデンサC11は、コンデンサC4(すなわち、LC直列共振器LC1)とコンデンサC5(すなわち、LC直列共振器LC2)との間に形成されている。
【0044】
インダクタ導体層18a〜18f,20a〜20f、コンデンサ導体層22,24,26a,26b,28a,28b,29,30,32,34、接続導体層36a,36b,38a,38b及びビアホール導体v1〜v5,v11〜v15は、例えば、Cu等の導電性材料により作製されている。
【0045】
(効果)
本実施形態に係るハイパスフィルタ10によれば、通過特性に現れる2つの減衰極を近づけることができる。
図4Aは、ハイパスフィルタ10の通過特性S21及び反射特性S11,S22のシミュレーション結果を示したグラフである。
図4Bは、比較例に係るハイパスフィルタの通過特性S21及び反射特性S11,S22のシミュレーション結果を示したグラフである。縦軸は通過特性及び反射特性を示し、横軸は周波数を示す。
【0046】
比較例に係るハイパスフィルタは、コンデンサ導体層34が設けられていない点においてハイパスフィルタ10と相違する。比較例に係るハイパスフィルタの各構成の参照符号については、ハイパスフィルタ10の各構成の参照符号と同じものを用いて説明する。また、通過特性S21とは、外部電極14aから入力した信号の強度に対する外部電極14bから出力した信号の強度の比の値である。反射特性S11とは、外部電極14aから入力した信号の強度に対する外部電極14aから出力した信号の強度の比の値である。反射特性S22とは、外部電極14bから入力した信号の強度に対する外部電極14bから出力した信号の強度の比の値である。
【0047】
比較例に係るハイパスフィルタでは、
図4Bのグラフに示すように、通過特性において第1の減衰極及び第2の減衰極が形成される。第1の減衰極は、LC直列共振器LC1,LC2により形成される。第2の減衰極は、インダクタL1,L2とグランドとの間に形成されるインダクタンス成分の自己共振により形成される。より詳細には、比較例に係るハイパスフィルタでは、インダクタL1,L2の上端と底面部115c,115dとが側面部114c,114dを介して接続されている。側面部114c,114dは、積層体12の上面から底面まで伸びており、比較的に長い。故に、側面部114c,114dは、大きなインダクタンス値を有する。特に、比較例に係るハイパスフィルタでは、コンデンサC4,C5がインダクタL1,L2よりも下側に位置している。そのため、インダクタL1,L2の上端は、積層体12の底面から大きく離れる。これにより、インダクタL1と底面部115cとの間及びインダクタL2と底面部115dとの間にはより大きなインダクタ成分が形成される。第2の減衰極は、このインダクタ成分の自己共振により形成される。このようなインダクタ成分は、インダクタL1とインダクタL2とを強く磁気結合させるので、第1の減衰極と第2の減衰極とが離れる原因となる。また、第2の減衰極の周波数は第1の減衰極の周波数よりも低い。そのため、比較例に係るハイパスフィルタのように、大きなインダクタ成分が形成されると、第2の減衰極の周波数が低くなり、第1の減衰極と第2の減衰極とが離れる。
【0048】
そこで、ハイパスフィルタ10では、コンデンサ導体層34が設けられることにより、LC直列共振器LC1とLC直列共振器LC2との間にコンデンサC11が形成されている。これにより、ハイパスフィルタ10では比較例に係るローパスフィルタに比べて、インダクタL1とインダクタL2との間における容量結合の度合いが大きくなるので、インダクタL1とインダクタL2との間における磁気結合の度合いが小さくなる。そのため、ハイパスフィルタ10では比較例に係るローパスフィルタに比べて、インダクタL1とインダクタL2との磁気結合が小さくなる。その結果、
図4Aに示すように、ハイパスフィルタ10では比較例に係るローパスフィルタに比べて、第1の減衰極と第2の減衰極とが近づく。また、第2の減衰極の周波数は第1の減衰極の周波数よりも低い。そのため、ハイパスフィルタ10のように、容量結合の度合いが大きくなることによって磁気結合の度合いが小さくなると、第2の減衰極の周波数が高くなり、第1の減衰極と第2の減衰極とが近づく。
【0049】
また、ハイパスフィルタ10では、以下に説明するように、小型化が図られる。より詳細には、比較例に係るハイパスフィルタに、絶縁体層を介して対向する2つ以上のコンデンサ導体層を追加することで、コンデンサC11に相当するコンデンサを形成することが考えられる。この場合には、異なる2つ以上の絶縁体層のそれぞれに2つ以上のコンデンサ導体層を形成する必要がある。よって、ハイパスフィルタの積層体が大型化する。そこで、ハイパスフィルタ10では、コンデンサ導体層34をコンデンサ導体層30,32に対向させている。これにより、コンデンサ導体層34を設けるための絶縁体層16mが1つで済むようになる。その結果、ハイパスフィルタ10では、低背化が図られる。
【0050】
また、ハイパスフィルタ10では、コンデンサ導体層34が設けられることによって、インダクタL1,L2のQ値が低下することが抑制される。より詳細には、コンデンサ導体層26a,26bとコンデンサ導体層28a,28bとの間には、コンデンサ導体層34を介してコンデンサC11が形成されている。換言すれば、コンデンサ導体層34は、インダクタ導体層18f,20fよりもコンデンサ導体層30,32の近くに設けられている。これにより、コンデンサ導体層34がインダクタL1,L2が発生した磁束を妨げにくくなる。その結果、インダクタL1,L2のQ値が低下することが抑制される。
【0051】
また、ハイパスフィルタ10では、入出力の対称性に優れている。より詳細には、ハイパスフィルタ10では、コンデンサ導体層34は、上側から見たときに、積層体12の中央を通過し、かつ、前後上下方向に平行な平面に関して面対称な構造を有する。よって、コンデンサC11が対象構造を有している。そのため、外部電極14aを入力端子として用い、かつ、外部電極14bを出力端子として用いた場合における通過特性と、外部電極14bを入力端子として用い、かつ、外部電極14aを出力端子として用いた場合における通過特性とが近づく。
【0052】
また、ハイパスフィルタ10では、インダクタL1,L2は、3次元の螺旋状をなしているので、大きなインダクタンス値を有する。
【0053】
(第1の変形例)
以下、第1の変形例に係るハイパスフィルタ10aの構成について図面を参照しながら説明する。
図5は、第1の変形例に係るハイパスフィルタ10aの分解斜視図である。ハイパスフィルタ10aの等価回路図及び外観斜視図は、ハイパスフィルタ10の等価回路図及び外観斜視図と同じであるので、
図1及び
図2を援用する。
【0054】
ハイパスフィルタ10aは、コンデンサ導体層34が設けられている位置においてハイパスフィルタ10と相違する。以下に係る相違点を中心にハイパスフィルタ10aの構造について説明する。
【0055】
コンデンサ導体層34は、絶縁体層16jの表面上に設けられており、長方形状をなしている。これにより、コンデンサ導体層34は、コンデンサ導体層30,32よりもインダクタ導体層18f,20fの近くに設けられている。コンデンサ導体層34は、絶縁体層16mの表面の中央に設けられており、絶縁体層16g〜16iを介してインダクタ導体層18f,20fと対向している。これにより、インダクタ導体層18fとインダクタ導体層20fとの間には、コンデンサ導体層34を介してコンデンサC11が形成されている。また、インダクタ導体層18fはインダクタL1に含まれている。インダクタ導体層20fはインダクタL2に含まれている。よって、コンデンサC11は、インダクタL1(すなわち、LC直列共振器LC1)とインダクタL2(すなわち、LC直列共振器LC2)との間に形成されている。なお、ハイパスフィルタ10aのコンデンサ導体層34以外の構成は、ハイパスフィルタ10と同じであるので説明を省略する。
【0056】
ハイパスフィルタ10aによれば、ハイパスフィルタ10と同様に、通過特性に現れる2つの減衰極を近づけることができる。また、ハイパスフィルタ10aでは、ハイパスフィルタ10と同様に、小型化が図られる。また、ハイパスフィルタ10aでは、ハイパスフィルタ10と同様に、入出力の対称性に優れている。また、ハイパスフィルタ10aでは、ハイパスフィルタ10と同様に、インダクタL1,L2は、3次元の螺旋状をなしているので、大きなインダクタンス値を有する。
【0057】
(第2の変形例)
以下、第2の変形例に係るハイパスフィルタ10bの構成について図面を参照しながら説明する。
図6は、第2の変形例に係るハイパスフィルタ10bの分解斜視図である。ハイパスフィルタ10bの等価回路図及び外観斜視図は、ハイパスフィルタ10の等価回路図及び外観斜視図と同じであるので、
図1及び
図2を援用する。
【0058】
ハイパスフィルタ10bは、コンデンサ導体層34の形状においてハイパスフィルタ10aと相違する。以下に係る相違点を中心にハイパスフィルタ10bの構造について説明する。
【0059】
コンデンサ導体層34は、絶縁体層16jの表面上に設けられており、線状をなしている。これにより、コンデンサ導体層34は、コンデンサ導体層30,32よりもインダクタ導体層18f,20fの近くに設けられている。コンデンサ導体層34は、前方に向かって伸びた後に右側に折れ曲がり、その後、更に前方に向かって伸びる線状をなしている。コンデンサ導体層34の後端は、ビアホール導体v4に接続されている。また、コンデンサ導体層34は、絶縁体層16g〜16iを介してインダクタ導体層20fと対向している。これにより、コンデンサ導体層34とインダクタ導体層20fとの間には、コンデンサC11が形成されている。また、ビアホール導体v4はインダクタL1に含まれている。インダクタ導体層20fはインダクタL2に含まれている。よって、コンデンサC11は、インダクタL1(すなわち、LC直列共振器LC1)とインダクタL2(すなわち、LC直列共振器LC2)との間に形成されている。なお、ハイパスフィルタ10bのコンデンサ導体層34以外の構成は、ハイパスフィルタ10aと同じであるので説明を省略する。
【0060】
ハイパスフィルタ10bによれば、ハイパスフィルタ10aと同様に、通過特性に現れる2つの減衰極を近づけることができる。また、ハイパスフィルタ10bでは、ハイパスフィルタ10aと同様に、小型化が図られる。また、ハイパスフィルタ10bでは、ハイパスフィルタ10aと同様に、インダクタL1,L2は、3次元の螺旋状をなしているので、大きなインダクタンス値を有する。
【0061】
(第3の変形例)
以下、第3の変形例に係るハイパスフィルタ10cの構成について図面を参照しながら説明する。
図7は、第3の変形例に係るハイパスフィルタ10cの分解斜視図である。ハイパスフィルタ10cの等価回路図及び外観斜視図は、ハイパスフィルタ10の等価回路図及び外観斜視図と同じであるので、
図1及び
図2を援用する。
【0062】
ハイパスフィルタ10cは、コンデンサ導体層34が設けられている位置においてハイパスフィルタ10bと相違する。以下に係る相違点を中心にハイパスフィルタ10aの構造について説明する。
【0063】
コンデンサ導体層34は、絶縁体層16mの表面上に設けられており、線状をなしている。これにより、コンデンサ導体層34は、インダクタ導体層18f,20fよりもコンデンサ導体層30,32の近くに設けられている。コンデンサ導体層34は、前方に向かって伸びた後に右側に向かって伸びる線状をなしている。コンデンサ導体層34の後端は、ビアホール導体v4に接続されている。また、コンデンサ導体層34は、絶縁体層16mを介してコンデンサ導体層32と対向している。これにより、コンデンサ導体層34とコンデンサ導体層32との間には、コンデンサC11が形成されている。また、ビアホール導体v4はインダクタL1に含まれている。コンデンサ導体層32はコンデンサC5に含まれている。よって、コンデンサC11は、インダクタL1(すなわち、LC直列共振器LC1)とコンデンサC5(すなわち、LC直列共振器LC2)との間に形成されている。なお、ハイパスフィルタ10cのコンデンサ導体層34以外の構成は、ハイパスフィルタ10bと同じであるので説明を省略する。
【0064】
ハイパスフィルタ10cによれば、ハイパスフィルタ10bと同様に、通過特性に現れる2つの減衰極を近づけることができる。また、ハイパスフィルタ10cでは、ハイパスフィルタ10bと同様に、小型化が図られる。また、ハイパスフィルタ10cでは、ハイパスフィルタ10bと同様に、インダクタL1,L2は、3次元の螺旋状をなしているので、大きなインダクタンス値を有する。
【0065】
また、ハイパスフィルタ10cによれば、ハイパスフィルタ10と同様に、コンデンサ導体層34が設けられることによって、インダクタL1,L2のQ値が低下することが抑制される。
【0066】
(その他の実施形態)
本発明に係るハイパスフィルタは、ハイパスフィルタ10,10a〜10cに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0067】
なお、ハイパスフィルタ10,10a〜10cの構成を任意に組み合わせてもよい。
【0068】
なお、ハイパスフィルタ10aにおいて、コンデンサ導体層34は、インダクタ導体層18f,20fと対向する代わりに、インダクタ導体層18a〜18e,20a〜20eと対向していてもよい。
【0069】
なお、ハイパスフィルタ10,10a〜10cにおいて、1以上のLC直列共振器が更に設けられていてもよい。また、信号経路SL上に、更にコンデンサが設けられていてもよい。
【0070】
また、ハイパスフィルタ10,10a〜10cにおいて、LC直列共振器LC1,LC2と信号経路SLとの間にインダクタやコンデンサ等の回路素子が設けられていてもよい。
【0071】
また、ハイパスフィルタ10,10a〜10cにおいて、LC直列共振器LC1,LC2と外部電極14c,14dとの間にインダクタやコンデンサ等の回路素子が設けられていてもよい。
【0072】
なお、ハイパスフィルタ10b,10cにおいて、コンデンサ導体層34は、ビアホール導体v14に接続され、かつ、絶縁体層を介してインダクタ導体層18a又はコンデンサ導体層30と対向していてもよい。
【0073】
なお、インダクタ導体層18a〜18fは少なくとも1つ設けられていればよい。同様に、インダクタ導体層20a〜20fは少なくとも1つ設けられていればよい。
【0074】
なお、ハイパスフィルタ10,10a〜10cにおいて、外部電極14c,14dのいずれか一方のみが設けられていてもよい。