(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ハードコート剤>
本発明におけるハードコート層を形成するためのハードコート剤は、少なくともウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分、金属酸化物(B)、光重合開始剤(C)を含む。
【0018】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)>
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、例えば、以下のような方法で得ることができる。
方法1;水酸基を有する(メタ)アクリレート類(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させる方法。
方法2;ポリオールとポリイソシアネート(a2)とをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類(a1)と反応させる方法。
方法3;ポリオールとポリイソシアネート(a2)とを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させる方法。
方法4;カルボキシル基を有するポリオールとポリイソシアネート(a2)とを水酸基過剰の条件下に反応させてなるカルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート類と反応させる方法。
合成ステップの数から簡易な合成法である方法1が好ましい。
【0019】
<水酸基を有する(メタ)アクリレート類(a1)>
前記方法1、2で用いられる水酸基を有する(メタ)アクリレート類(a1)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0020】
<ポリイソシアネート(a2)>
前記方法1〜4で用いられるポリイソシアネート(a2)としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等およびこれらの水素添加体、もしくはイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等およびこれらのトリメチロールプロパンアダクト体、三量化ヌレート体、アロファネート体、ビュレット体等が挙げられる。
【0021】
前記方法2、3で用いられるポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の他、
前記ポリオールと多塩基酸や多塩基酸無水物との縮重合物が挙げられる。
多塩基酸や多塩基酸無水物としては、フタル酸や無水フタル酸のような芳香族系多塩基酸、アジピン酸やセバシン酸のような脂肪族系多塩基酸が挙げられる。
【0022】
前記方法3で用いられるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
前記方法4で用いられるカルボキシル基を有するポリオールとしては、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。さらに、エチレングリコール、プロピレングリコールのようなポリオールとジメチロールブタン酸等と多塩基酸や多塩基酸無水物との縮重合物も挙げることができる。
【0024】
前記方法4で用いられるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート類としては、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
水酸基を有する(メタ)アクリレート類、ポリイソシアネート、ポリオール、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類は、それぞれ一種類でもいいし、二種以上を併せて用いることができる。
【0026】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、カール低減の観点から分子内に環構造を有することが好ましい。例えば、脂環構造やヌレート環構造を有することにより活性エネルギー線照射時の硬化収縮を大幅に低減させることができ、その後暗反応が進行し硬化が進んでもカールしにくくなる。特にヌレート環構造を有することが好ましい。
【0027】
脂環構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートの水素添加体、キシリレンジイソシアネートの水素添加体、メチレンジフェニルジイソシアネートの水素添加体およびこれらの誘導体を用いることにより得ることができる。あるいは、水酸基を有する(メタ)アクリレート類としてシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートを用いることにより得ることができる。あるいは、ポリオールとしてシクロヘキサンジオールを用いることにより得ることができる。あるいは、多塩基酸や多塩基酸無水物としてシクロヘキサンジカルボン酸やその無水物を用いることにより得ることができる。
【0028】
ヌレート環構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記方法1〜4においてポリイソシアネートとして種々のジイソシアネート成分から形成される三量体(ヌレート体)を用いることにより得ることができる。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、HC性の観点から6個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものを用いることが好ましく、少なくとも9個の(メタ)アクリロイル基を有するものを用いることがさらに好ましい。硬化性の点からアクリロイル基を有するものを用いることが好ましい。
そして、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分は、(メタ)アクリロイル基を平均で3〜10個有することが好ましく、4〜8個有することがより好ましい。
【0030】
前記方法1〜4によってウレタン(メタ)アクリレート(A)を得る際には、理想的なウレタン(メタ)アクリレート(A)以外に、以下のような種々の成分も含まれる。
方法1を例に説明する。
例えば、原料である水酸基を1個有する(メタ)アクリレート類には水酸基を有しない(メタ)アクリレート類との混合状態で提供されているものもあるので、そのような混合物を用いた場合、前記方法1による生成物には、理想的なウレタン(メタ)アクリレート(A)の他に水酸基を有しない(メタ)アクリレート類も含まれることとなる。また、一般的に水酸基を有する(メタ)アクリレート類は、ポリイソシアネートに比して過剰に用いるので、未反応の水酸基1個を有する(メタ)アクリレート類も方法1による生成物に含まれることとなる。
さら、水酸基を1個有する(メタ)アクリレート類として製造・販売されているものには、水酸基を2個以上有する(メタ)アクリレート類や(メタ)アクリレート類の原料である(メタ)アクリル酸が少量含まれることもある。
そのため、理想的なウレタン(メタ)アクリレート(A)中の(メタ)アクリロイル基の一部に、未反応の水酸基1個を有する(メタ)アクリレート類中の(メタ)アクリロイル基や水酸基を有しない(メタ)アクリレート類中の(メタ)アクリロイル基が次々に反応したものや、水酸基を2個以上有する(メタ)アクリレート類と水酸基を1個有する(メタ)アクリレート類とポリイソシアネートとが反応したものも、方法1による生成物に含まれることとなり、方法1による生成物は様々な構造・分子量の分子の集合体となり、比較的広い分子量分布を呈する。方法2〜4による場合も同様である。
【0031】
そこで、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均個数の求め方を、水酸基を有し、(メタ)アクリロイル基を5個有する(メタ)アクリレートであるジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、DPPAという。分子量:524)と、水酸基を有せず、(メタ)アクリロイル基を6個有する(メタ)アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、DPHAという。分子量:578)とを1:1(モル比)で含む組成物:2103gを、イソシアネート基を21.8wt%含むヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(以下、HDI-ヌレートという。):74g(NCO基として約0.38モル=(74×0.218/42)×100))と反応させる場合を例にして説明する。
DPPAは1分子当たり水酸基を1個、HDIヌレートは1分子当たりNCO基を3個有するので、DPPA3分子がHDIヌレート1分子と反応すると考えられる。従って、上記組成物2103g中に含まれるDPPAは1000g(約1.91モル)であり、そのうち約0.38モルに相当する約199gのDPPAが上記HDIヌレート(分子量:504)と反応すると考えられ、その結果、生成物は、
理論分子量:2076(=504+524×3)、(メタ)アクリロイル基を15個有するウレタン(メタ)アクリレート(A):約273gと、
(メタ)アクリロイル基を5個有する未反応のDPPA:約801gと、
(メタ)アクリロイル基を6個有するDPHA:約1103gとを含む、と仮定する。
よって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均個数は、(273×15+801×5+1103×6)/(2103+74)=6.8 となる。
つまり、ここでいう成膜性成分の有する(メタ)アクリロイル基の平均個数は理論値である。
【0032】
一方、生成物全体は、上述したように様々な構造・分子量の分子種の集合体となると考えられるが、1つ1つの分子種とそれぞれの含有率を全て特定することは事実上不可能である。
そこで、生成物全体としての性質は、上記の理論的な(メタ)アクリロイル基の平均個数と、質量平均分子量(Mw)とによって特定することとする。
質量平均分子量は後述する方法に従い求めることができる。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の質量平均分子量(Mw)は、1000〜6000であることが好ましく、1200〜4000であることがより好ましく、1400〜3500であることが更に好ましい。質量平均分子量(Mw)を1000〜60000とすることで、カール性とHC性を両立させやすい。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリル当量Mw/fは、200〜900が好ましく、300〜800がより好ましく、400〜700が更に好ましい。(メタ)アクリル当量Mw/fを200〜900とすることで、カール性、表面粗さ及びHC性のバランスを取りやすい。
なお、ここでいう「f」は、上述したウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均個数の意である。
【0035】
本発明では、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物を成膜性成分として用いることもできるし、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物を得た後、当該生成物に、任意でさらに(メタ)アクリル系化合物に代表される重合性不飽和二重結合基を有する化合物を加えて成膜性成分として用いることもできる。
加え得る(メタ)アクリル系化合物としては、DPHAのように(メタ)アクリロイル基以外の官能基を有しないものであっても、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミド基、シラノール基等の官能基を有するものであってもよい。
(メタ)アクリル系化合物以外の重合性不飽和二重結合基を有する化合物としては、脂肪酸ビニル化合物、アルキルビニルエーテル化合物、α−オレフィン化合物、ビニル化合物、エチニル化合物等を挙げることができる。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物中に含まれるウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有率は、水酸基を有する成分とイソシアネート基を有する成分とを反応させる際、イソシアネート基/水酸基の比を変えることによって、変更可能である。
具体的には、イソシアネート基を有する成分としてイソシアネート基を2個有するジイソシアネート成分を用いる場合はイソシアネート基/水酸基の比を0.2〜0.6とすることによって、イソシアネート基を有する成分として、イソシアネート基を3個有するトイソシアネート成分を用いる場合はイソシアネート基/水酸基の比を0.1〜0.3とすることによって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有率の大きな生成物を得ることができる。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物を得た後、さらに(メタ)アクリル系化合物等を加えて成膜性成分とする場合、当該成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均数や平均(メタ)アクリロイル基当量は、前述のウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物の場合と同様にして求めることができる。
【0038】
(メタ)アクリル系化合物としては、アルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレート、カルボキシル基と重合性不飽和二重結合とを有する化合物、水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物、窒素含有(メタ)アクリル系化合物、ベンジル(メタ)アクリレート等がある。塗膜のHC性の点からは、多官能のものが好ましい。
【0039】
多官能のアクリル系化合物としては、少なくとも3個以上のアクリロイル基を有するものが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸変性トリアクリレートおよびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体等が挙げられる。
【0040】
本発明では、2個のアクリロイル基を有するアクリル系化合物も用いることができる。具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレートおよびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体等が挙げられる。
【0041】
本発明では、さらに単官能の(メタ)アクリル系化合物も用いることができる。単官能の(メタ)アクリル系化合物としては、具体的には、アルキル系(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
単官能のアルキレングリコール系(メタ)アクリレートとしては、
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端に水酸基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート;
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にアルコキシ基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート;
フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
カルボキシル基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、珪皮酸等が挙げられる。
【0044】
水酸基含有(メタ)アクリル系化合物(但し、上述した末端に水酸基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレートは除く)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
窒素含有(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、等のジアルキルアミノ基を有する不飽和化合物等がある。
【0046】
さらに単官能の(メタ)アクリル系化合物としては、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0047】
さらに、重合性不飽和二重結合基を有する化合物としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物及びその誘導体;
グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート等のグリシジル基含有アクリレート;
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー等が挙げられる。
【0048】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物にさらに加え得る重合性不飽和二重結合基を有する化合物は、一種類で用いてもよいし、二種類以上を用いてもよい。
成膜性成分は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物とさらに加え得る重合性不飽和二重結合基を有する化合物との合計100質量%のうち、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート(A)を10質量%以上含むことによりHC性とカール性を両立しやすくなる。
【0049】
<金属酸化物(B)>
ハードコート層の透明性という点においては、ハードコート剤の主成分となるウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物の屈折率nDが1.46〜1.52程度なので、金属酸化物(B)の屈折率nDは1.46〜1.52程度であることが好ましい。このような金属酸化物(B)としては、例えばシリカ(nD=1.47)が挙げられる。シリカを単独で用いてもよいし、他の金属酸化物を含めた二種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
シリカの市販品としては、例えば、
日本アエロジル(株)製:AEROSILシリーズ(50、90G、130、OX50、TT600)、
日産化学工業(株)製:オルガノシリカゾルシリーズ(MA−ST−M、MA−ST−L、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL、MEK−ST−L、MEK−ST−ZL、MIBK−ST−L、MIBK−ST−M、MEK−AC−4130Y、MEK−AC−5140Z、PGM−AC−4130Y、MIBK−SD−L)、
シーアイ化成(株)製:ナノテックSiO
2等が挙げられる。
【0051】
これら金属酸化物(B)の平均一次粒子径は、少なくとも20nmであることが好ましく、より好ましくは22nm以上、さらに好ましくは25nm以上である。20nm以上の平均一次粒子径を有する金属酸化物(B)を含むことで、当該金属酸化物の一部がハードコート層表面から突き出ることとなる。鉛筆等の接触によりハードコート層が傷つけられ切削されることを、突き出た金属酸化物が抑制・防止する。また応力を緩和しカールを抑制してクラックを防ぐという点からも、金属酸化物(B)の平均一次粒子径は、前記のように少なくとも20nmであることが好ましい。
また、金属酸化物(B)の平均一次粒子径の上限としては、凝集して大きすぎる二次粒子となることを防ぐために、大きくとも80nmであり、好ましくは50nm以下である。
金属酸化物(A)の平均一次粒子径は、電子顕微鏡の観察により求めることができる。即ち、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM−2800」)を用いて倍率2万倍で観察した際の粒子10個の平均サイズを平均一次粒子径として用いた。
【0052】
ハードコート剤に含まれる金属酸化物(B)の含有量としては、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分100質量部に対し、1部以上が好ましく、3部以上がより好ましく、5部以上が更に好ましい。また50部以下が好ましく、30部以下がより好ましく、15部以下が更に好ましい。金属酸化物(B)の含有量をこれらの範囲とすることで、所望のHC性およびカール性を得ながら、表面粗さを一定水準以下に保持することが可能となる。
【0053】
<光重合開始剤(C)>
本発明におけるハードコート剤は、光重合開始剤(C)を含む。
光重合開始剤としては、光励起によってウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分中の(メタ)アクリロイル基等の活性エネルギー線硬化性官能基の重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が使用できる。
【0054】
具体的には、モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−/4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0055】
ジカルボニル化合物としては、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート等が挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられる。
【0056】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
【0057】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0058】
アミノカルボニル化合物としては、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5´−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
【0059】
光重合開始剤の市販品としては、IGM−Resins B.V.社製のOmnirad184、651、500、907、127、369、784、2959、エサキュアワン、BASF(株)社製ルシリンTPO等が挙げられる。
特に、活性エネルギー線硬化後の耐黄変の観点で、Omnirad184やエサキュアワンが好ましい。
【0060】
光重合開始剤は、上記化合物に限定されず、活性エネルギー線により重合を開始させる能力があれば、どのようなものでも構わない。これらの光重合開始剤は、一種類で用いられるほか、二種類以上を混合して用いてもよい。
光重合開始剤の使用量に関しては、特に制限はされないが、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内で使用することが好ましい。増感剤として、公知の有機アミン等を加えることもできる。
さらに、上記ラジカル重合用開始剤のほかに、カチオン重合用の開始剤を併用することもできる。
【0061】
本発明のハードコート剤は、少なくとも、前述の(A)〜(C)と、必要に応じて溶剤とを含有するものであり、さらに様々な添加剤を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において含むことができる。
添加剤としては、例えば、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、スリップ剤、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電性ポリマー、導電性界面活性剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0062】
溶剤を加える場合は、溶剤を揮発させた後に活性エネルギー線による硬化処理を行なうことが好ましい。
溶剤としては、特に制限されるものでなく、様々な公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には例えば、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0063】
特に水酸基含有溶剤は、シリコーンやフッ素系等の表面張力を下げるような添加剤を含む場合には、各種材料を配合して攪拌した後、または塗工時に噛んでしまう泡に対する消泡性に優れる。水酸基含有溶剤を溶剤組成中に含有することで、塗膜欠損を抑制し歩留り向上において非常に効果的であることから好ましい。
全溶剤100質量%中の水酸基含有溶剤含有量は、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることが更に好ましい。具体的には、水酸基含有溶剤としては、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。特に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルは、消泡性と遅口溶剤としての揮発性に優れ塗面がより良好となることから好ましい。
【0064】
ハードコート剤の製造方法としては既知の方法で得ることができ、特に制限されない。例えば、初めにウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分および金属酸化物(B)を混合分散し、安定な金属酸化物分散体を得た後、光開始剤(C)および他の様々な添加剤を添加及び調整し製造する方法等が挙げられる。
【0065】
次に、本発明の透明導電フィルムについて説明する。
本発明の透明導電フィルムは、透明フィルムの片面(I面)に、前述の本発明のハードコート剤により形成されたハードコート層を、前記透明フィルムの反対面(II面)に高屈折率層、透明導電層が積層されてなるものである。
【0066】
<透明フィルム>
透明フィルムとしては、薄膜でロール状に巻取り可能なフィルム状のガラス、もしくは各種プラスチックフィルムが挙げられ、ハードコート層のHC性を高いレベルで発現できるものが好ましい。各種プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリアミド(PA)フィルム等の結晶性プラスチックフィルムや、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムのような非結晶性のフィルムが挙げられ、結晶性プラスチック類が好ましい。非結晶性のフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができる。
本発明においては、商業的にも汎用性の高いPETフィルムを用いることが好ましい。
また、形成されるハードコート層の密着性の観点から、透明フィルム上に易接着層またはコロナ処理などの易接着処理がなされていることが好ましい。
透明フィルムの厚みは、好ましくは25μm〜500μm、より好ましくは50μm〜300μm、更に好ましくは75μm〜200μmである。
【0067】
透明フィルムへハードコート剤を塗工する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばロットまたはワイヤーバー等を用いた方法や、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロットまたはスピン等の各種コーティング方法を用いることができる。
硬化処理は、透明フィルムにハードコート剤を塗工し、自然または強制乾燥させたあとに活性エネルギー線を照射し硬化する。
【0068】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、波長400〜500nmの可視光線等の利用が挙げられる。
紫外線および波長400〜500nmの可視光線の線源(光源)には、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。電子線源には、熱電子放射銃、電解放射銃等を使用することができる。これらの活性エネルギー線照射に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱処理を併用することができる。
なお、電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害または有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。硬化処理のタイミングは、塗工と同時でもよいし、塗工後でもよい。
【0069】
照射する活性エネルギー線量は、十分な性能発揮とハードコート層のカールの点から、50〜2000mJ/cm
2の範囲内であることが好ましく、100〜1500mJ/cm
2の範囲内がより好ましく、200〜1000mJ/cm
2の範囲内がさらに好ましい。
ハードコート層の厚みは、好ましくは0.5μm〜5μm、より好ましくは0.7μm〜4μm、更に好ましくは1μm〜3μmである。
【0070】
<高屈折率層>
高屈折率層は、当該高屈折率層上に形成される透明導電層がパターニングされた後、パターニング形状を見えにくくする目的で積層される、屈折率の高い層であり、具体的には屈折率の高い金属酸化物粒子と活性エネルギー線硬化性成分とを含む組成物の硬化物である。透明導電層は、後述するように導電性金属化合物によって形成されるので、その屈折率は1.55〜1.90程度である。従って、高屈折率層の屈折率はできるだけ透明導電層の屈折率に近しいことが好ましい。
前記屈折率の高い金属酸化物粒子および活性エネルギー線硬化性成分は既知の材料を用いて得ることができる。例えば、屈折率の高い金属酸化物粒子としては、酸化チタン(nD=2.72)、酸化ジルコニウム(nD=2.22)、酸化アルミニウム(nD=1.77)等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性成分としては、前述のハードコート剤に含まれるウレタン(メタ)アクリレート(A)やその他の硬化性成分を同様に例示できる。
高屈折率層の厚みは、好ましくは0.03μm〜30μm、より好ましくは0.05μm〜10μmである。
【0071】
<透明導電層>
透明導電層は、高屈折率層の上に積層される層であり、具体的には真空を利用した成膜法により形成された層である。真空を利用した成膜法としては、例えば、真空蒸着法(物理的蒸着法または化学的蒸着法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを用いることができる。これらの方法により、高屈折率層に導電性金属化合物を付着させ透明導電層を形成できる。透明導電層は、高屈折率層の全面に設けられた後、エッチング等の方法により所望の形状にパターニングすることによって、回路や電極とすることができる。
透明導電層の厚みは、導電性向上、および高屈折率層との密着性向上の点から、1nm〜数十nmの範囲内であることが好ましく、さらには0.01〜1μmの範囲内であることがより好ましい。
透明導電層の形成に用いられる導電性金属化合物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化亜鉛、銀または銅ナノワイヤー等が挙げられる。
【0072】
また高屈折率層と透明導電層との間にアンカー層を配し、高屈折率層とアンカー層とが接し、アンカー層と透明導電層とが接する態様とすることができる。
高屈折率層と透明導電層とが接する前述の場合と同様にして、まず、透明フィルム上に高屈折率層を形成する。次いで、高屈折率層上にアンカー層を形成した後、透明導電層を形成する。
【0073】
アンカー層は、透明導電層の場合と同様に真空を利用した成膜法により形成された層である。アンカー層の形成に用いられる金属酸化物としては、酸化ケイ素が挙げられ、強固な密着性を付与できることから好ましい。
【0074】
<光学部材>
光学部材は、前述の通り、少なくともハードコート層、透明フィルム、高屈折率層、透明導電層を有する積層体の透明導電層をエッチング処理等によりパターニング化することにより得られるタッチセンサーを備えた部材である。
【0075】
<電子機器>
電子機器は、前述のタッチセンサーを備えた各種機器、例えば、スマートフォン、タブレット、PC、テレビ、カーナビや、その他商業施設等の案内板や交通券売機などの機器のことをいう。これら機器において前述のタッチセンサーはタッチパネルとして機能する。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。尚、合成例および実施例において材料の配合部数は、溶剤を除き、不揮発分換算である。
【0077】
[分子量の測定]
質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF−804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:1.0mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.2%、
試料注入量:100μL。
【0078】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成>
(合成例1)
(A1):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM403:2103g(分子量:524のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)1000g(約1.91モル)と、分子量:578のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)1103g(約1.91モル)とを含む組成物。東亞合成(株)社製)、ネオスタンU−810(錫触媒、日東化成(株)社製)0.1g、酢酸ブチル815gを入れ、液温を50℃にした後、イソシアネート基を約21.8質量%含むヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体:74g(イソシアネート基を約0.38molを含む)を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT−IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、冷却しながら酢酸ブチルを加え、希釈し、DPPAとHDI−ヌレート体とのウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A1の固形分70質量%の溶液を得た。
DPPAとHDI−ヌレート体とのウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A1の質量平均分子量は1930、前述の方法で求めた平均官能基数(f
C=C)は6.8、生成物のアクリル当量Mw/fは285であった。なお、生成物A1は理論的には約50.7質量%のDPHAを含む。
【0079】
(合成例2〜11)
合成例2〜11も合成例1と同様の方法で表1の配合比に従って、ウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A2〜A11を合成した。
【0080】
【表1】
【0081】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
<水酸基を有する(メタ)アクリレート(a1)>
(a1−1)アロニックスM403(分子量:524のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)と、分子量:578のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)とを含む組成物。ペンタ/ヘキサ=1/1(モル比)、東亞合成(株)社製)。
(a1−2)(x2)A−TMPT(分子量:298のペンタエリスリトールトリアクリレート、新中村化学(株)社製)。
【0082】
<ポリイソシアネート(a2)>
(a2−1)スミジュールN3300(ヘキサメチレンジイソシアネート−ヌレート体、NCO%=21.8(固形分100%)、住化コベストロウレタン(株)社製)、
(a2−2)デスモジュールI(イソホロンジイソシアネート、NCO%=37.5(固形分100%)、住化コベストロウレタン(株)社製)、
(a2−3)デスモジュールZ4470BA(イソホロンジイソシアネート−ヌレート体の酢酸ブチル溶液、NCO%=16.9(固形分100%換算)、住化コベストロウレタン(株)社製)。
【0083】
(実施例1)
合成例1で合成したウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A1を100質量部(不揮発分)、金属酸化物として平均一次粒子径が30nmの(B3)を10質量部、光重合開始剤としてエサキュアワン(IGM−Resins B.V.社製)を5質量部、レベリング剤としてBYK349(シリコーン系添加剤、ビックケミー・ジャパン(株)社製)を0.1質量部、希釈溶剤として不足分のポリエチレングリコールモノエチルエーテル(PGME)を20部、および酢酸ブチルを60部、混合・分散して、ハードコート剤1を得た。
後述する方法に従って、ハードコート剤の消泡性、ハードコート層を設けた中間積層体のカール性、ハードコート層の表面粗さ、ハードコート層の硬さ(HC性)を評価した。
【0084】
(実施例2)〜(実施例11)
合成例1で合成したウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A1の代わりに、合成例2〜10で合成したウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A2〜A11を用いた以外は実施例1と同様にしてハードコート剤1〜11を得、同様に評価した。
【0085】
(実施例12)〜(実施例17)
平均一次粒子径が30nmの金属酸化物(B3)の量を、1部、3部、5部、15部、30部、50部とした以外は実施例3と同様にしてハードコート剤12〜17を得、同様に評価した。表3には実施例3も合わせて記載する。
【0086】
(実施例18)〜(実施例21)
合成例1で合成したウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A1の代わりに、合成例4で合成したウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物A4を用い、金属酸化物として平均一次粒子径が20nmの(B1)、22nmの(B2)、30nmの(B3)、50nmの(B4)、80nmの(B5)をそれぞれ10部用いた以外は実施例4と同様にしてハードコート剤18〜21を得、同様に評価した。
【0087】
(実施例22)
希釈溶剤としてポリエチレングリコールモノエチルエーテル(PGME)を用いず、酢酸ブチルを80部とした実施例3と同様にしてハードコート剤22を得、同様に評価した。
【0088】
(実施例23)
エサキュアワンの代わりに光重合開始剤としてOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)を用いた以外は実施例1と同様にしてハードコート剤23を得、同様に評価した。
【0089】
(比較例1)
金属酸化物を用いなかった以外は実施例3と同様にしてハードコート剤を得、同様に評価した。
【0090】
(比較例2)
金属酸化物として平均一次粒子径が30nmの(B3)を100部とした以外は実施例3と同様にしてハードコート剤を得、同様に評価した。
【0091】
(比較例3)
金属酸化物として平均一次粒子径が10nmの(B6)を10部用いた以外は実施例4と同様にしてハードコート剤を得、同様に評価した。
【0092】
(比較例4)
ウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物の代わりに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを100部、金属酸化物として平均一次粒子径が30nmの(B3)を10部用いた以外は実施例1と同様にしてハードコート剤を得、同様に評価した。
【0093】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
(x’1)DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)社製、分子量:578、M/f=96.3)
【0094】
<金属酸化物(B)>
(B1)AEROSIL130(シリカ、平均一次粒子径16nm、日本アエロジル(株)社製)、
(B2)CHO−ST−M(シリカ、平均一次粒子径22nm、日産化学(株)社製)、
(B3)AEROSIL50(シリカ、平均一次粒子径30nm、日本アエロジル(株)社製)、
(B4)MEK−AC−4130Y(シリカ、平均一次粒子径45nm、日産化学(株)社製)、
(B5)MEK−AC−5140Z(シリカ、平均一次粒子径85nm、日産化学(株)社製)、
(B6)MEK−ST(シリカ、平均一次粒子径10nm、日産化学(株)社製)。
【0095】
<光重合開始剤(C)>
(C1)エサキュアワン(IGM Resins B.V.社製)、
(C2)Omnirad184(IGM Resins B.V.社製)
【0096】
(ハードコート剤の消泡性)
ハードコート剤20質量部を70mLの蓋付き容器に入れて封をした後、容器ごと激しく10回振って実験台に静置した際、気泡がなくなるまでの時間を計測した。評価基準は以下の通り。
<評価基準>
◎:静置した際に気泡がない、優良。
〇:静置した後2秒以内に消泡した、良好。
△:静置した後2秒〜10秒以内に消泡した、使用可。
×:静置した後10秒経っても消泡しない、不良。
【0097】
(中間体1のカール性)
100μm厚の易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4100」上に、バーコーターを用いて、実施例・比較例で得られた各ハードコート剤を塗工し、乾燥して有機溶剤を除去した後、高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm
2の紫外線を照射し、2μmのハードコート層を形成し、中間体1を得た。
前記中間体1のほぼ中心部を10cm四方に切り取り、ハードコート層を形成後30分以内に、100℃1分間加熱した。そのときの端部のカール浮きの高さを評価した。評価基準は以下の通り。
◎:カール浮き高さが0mm、優良。
〇:カール浮き高さが0〜5mm、良好。
△:カール浮き高さが5〜10mm、使用可。
×:カール浮き高さが10mm超え、不良。
【0098】
(中間体の表面粗さ(Ra))
前記中間体1のハードコート面の表面粗さについて、3次元構造解析顕微鏡(ZYGOシステムキヤノン・マーケティング・ジャパン(株)社製)を用いて測定した。表面粗さ(Ra)とは、JIS B0601・JIS B0031に定義される算術平均粗さを示す。
◎:表面粗さ(Ra)が0.5nm未満、優良。
〇:表面粗さ(Ra)が0.5nm以上、1.0nm未満、良好。
△:表面粗さ(Ra)が1.0nm以上、1.5nm未満、使用可。
×:表面粗さ(Ra)が1.5nm以上、不良。
【0099】
(中間体1のHC性)
JIS−K−5600の試験方法に則り、前記中間体1のハードコート面の硬度を求めた。評価基準は以下の通り。
◎:3H、優良。
〇:2H、良好。
△:H、使用可。
×:F、不良。
【0100】
(透明導電層に対するハードコート層のアンチブロッキング性)
<透明導電フィルムの作成>
25μm厚の易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)社製「テトロンフィルムHPE25」)上に、バーコーターを用いて、実施例・比較例で得られた得られたハードコート剤を塗工し、乾燥して有機溶剤を除去した後、高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm
2の紫外線を照射し、5μmのハードコート層を形成し、中間体2を得た。
次いで、得られた中間体2のハードコート層とは反対面の前記ポリエステルフィルム上(II面)に、酸化ジルコニウムを含有する塗料(硬化物の屈折率:1.70)を塗工・照射し、高屈折率層を得た。
得られた高屈折率層上にマグネトロンスパッタ装置((株)真空デバイス製「MSP−30Tマグネトロンスパッタ」)により、酸化インジウムスズをスパッタリングして、25nmの透明導電層を形成し、透明導電フィルムを得た。
【0101】
<学振試験機による摩擦試験>
学振試験機の試験片台に、透明導電層が試験面となるように透明導電フィルムをセットする。別途、学振試験機の摩擦子に、ハードコート層が前記試験片台にセットした透明導電層側に向くように、1cm×1cmにカットした透明導電フィルムをセットする。
荷重200gの条件で、透明導電層の表面をハードコート層で10往復擦った。
透明導電層の表面をハードコート層で擦る前後における透明導電層の表面抵抗値を以下の方法で測定し、試験前の表面抵抗値に対する試験後の表面抵抗値の変化を評価した。
<導電層の表面抵抗値測定方法>
測定装置に(株)三菱ケルカルアナリテック製「ロレスターGX MCP−T600」と一列に並んだ4つの端子を有するプローブを用いて、透明電導電層の表面抵抗値を求めた。試験後の場合は、前記プローブの前記端子群が、擦った方向を横切るように、透明導電層に前記プローブを押し当て透明電導電層の表面抵抗値を求めた。
<評価基準>
〇:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の10倍未満、良好。
△:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の10倍以上、100倍未満、使用可。
×:試験後の表面抵抗値が試験前の抵抗値の100倍以上、不良
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
表4に示すように、金属酸化物(B)を含まない比較例1は、表面粗さは良好であるが、応力緩和性を発揮できないためにカールしやすく、またHC性が不十分である。さらには透明導電層に対するアンチブロッキング性も不足している。また、金属酸化物の量が過剰な比較例2は、透明導電層に対するアンチブロッキング性は良好ではあるが、金属酸化物の量が多すぎて表面粗さが大きくなる。また、金属酸化物そのものが小さい比較例3は、ハードコート層表面に金属酸化物の一部が突き出る量が少ないために透明導電層に対するアンチブロッキング性が発現せず、カールを抑制する効果が発現しない。また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含まない比較例4は、表面粗さ等は良好であるものの、ハードコート層の柔軟性が不足しカール性を抑制できない。
【解決手段】 透明フィルムの片面(I面)にハードコート層を、反対面(II面)に高屈折率層、透明導電層が積層されてなる透明導電性フィルムαであって、前記ハードコート層がウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分、金属酸化物(B)、および光重合開始剤(C)を含むハードコート剤の硬化物であり、表面粗さRaが0.1〜1.5nm未満であり、膜厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、前記ハードコート剤を用いて膜厚2μmのハードコート層を形成した10cm×10cmの正方形の試験片を、ハードコート層を形成後30分以内に100℃の環境下に1分間静置した際の前記試験片の四隅のカール浮き高さの平均が10mm以下である、透明導電性フィルムα。