(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続待機状態維持部は、前記充放電回路側のリレーをOFFとしつつ、前記車載制御装置へ、充電中又は放電中と判断される略下限値の充放電電流値を示すメッセージを前記通信制御部によって送信する
請求項2又は3に記載の充放電装置。
車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記車載電力線に介装された車両側のリレーのON及びOFFを切り替える車載制御装置に通信接続する通信部を備える充放電装置に搭載されたコンピュータに、
前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づきメッセージを前記通信部によって送受信し、
前記所定のシーケンスに基づいて前記車両側のリレーがONへ切り替えられた後、前記蓄電池の充放電を実行していない間に、前記車載制御装置へ充電中又は放電中であることを示すメッセージを送信し、前記車両側のリレーがONのままの接続待機状態を維持する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にも開示されているように、車両と充放電装置との間の電力線の接続検知、車両と充放電装置との間の通信接続確立、充放電の開始及び停止は、いくつかの充放電方式の内のいずれかに応じた所定のシーケンスに従って安全に行なわれる。充放電の制御は、この所定のシーケンスに応じた手順を踏む必要があり、高速な応答を求められるEMSからの制御指示に応じることが困難である。充放電の運転及び停止の切り替えには、車両側の直流リレー、充放電装置側の直流リレー、及び解列リレーのON及びOFFの切り替えが必要である。運転モードの切り替えが細やかな制御に合わせて繰り返される場合には、それらのリレーのON及びOFFが頻回に繰り返されて劣化し、早期に破損する虞がある。
【0007】
本発明は、充放電方式に応じた所定のシーケンスに従いつつも高い応答性を劣化を抑制しながら発揮する充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の充放電装置は、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記蓄電池における充放電を制御する充放電装置であって、前記車載電力線に介装された車両側のリレーのON及びOFFを切り替える車載制御装置に通信接続する通信部と、前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づきメッセージを前記通信部から送受信する通信制御部と、前記所定のシーケンスに基づいて前記車両側のリレーをONへ切り替えた後、前記蓄電池の充放電を実行していない間に、前記車両側のリレーがONのままである接続待機状態を維持する接続待機状態維持部とを備える。
【0009】
本開示の一実施形態の充放電制御方法は、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有した充放電装置が、前記蓄電池における充放電を制御する方法であって、前記充放電装置は、前記車載電力線に介装された車両側のリレーのON及びOFFを切り替える車載制御装置に通信接続し、前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づきメッセージを送受信し、前記所定のシーケンスに基づいて前記車両側のリレーをONへ切り替えた後、前記蓄電池の充放電を実行していない間に、前記車両側のリレーがONのままである接続待機状態を維持する。
【0010】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記車載電力線に介装された車両側のリレーのON及びOFFを切り替える車載制御装置に通信接続する通信部を備える充放電装置に搭載されたコンピュータに、前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づきメッセージを前記通信部によって送受信し、前記所定のシーケンスに基づいて前記車両側のリレーがONへ切り替えられた後、前記蓄電池の充放電を実行していない間に、前記車両側のリレーがONのままの接続待機状態を維持する処理を実行させる。
【0011】
本開示の一実施形態では、車両側の充放電制御装置における制御によって車両側のリレーがOFFへ切り替えられないように維持される。車載電力線のリレーがOFFされると、充放電を開始するまでに所定のシーケンスに応じた手順を実施し直さなければならず、時間を要するところ、この時間を低減して車両側のリレーをONに維持することによって、充放電の制御について高速な応答が実現される。
【0012】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記蓄電池と、商用電源又は負荷との間の電力の授受のON及びOFFを切り替えるリレーを含む充放電回路を備え、前記接続待機状態は、前記車両側のリレーはON、前記充放電回路のリレーはOFFである。
【0013】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記充放電回路のリレーは、前記商用電源との間の電力授受のON及びOFFを切り替える解列リレーと、前記コネクタとの間に介装される装置側リレーとを含み、前記接続待機状態において、前記解列リレーはOFF、前記装置側リレーはONである。
【0014】
本開示の一実施形態では、車両側のリレーをONのままとした接続待機状態では、充放電装置内部に設けられた複数のリレーのうち、少なくとも1つのリレーがOFFとされる。充放電回路におけるコネクタとの間に介装されている装置側リレーは、車両側リレーと同様にONのままとされる。リレーのON又はOFFの切り替え回数はできるだけ抑止することで、消費電力を抑えると共にリレーの劣化を抑制することができる。なお充放電装置内部に設けられた解列リレーについてもONを維持してもよく、この場合は、より高速に応答することができる。
【0015】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記接続待機状態維持部は、前記充放電回路側のリレーをOFFとしつつ、前記車載制御装置へ、充電中又は放電中と判断される略下限値の充放電電流値を示すメッセージを前記通信制御部によって送信する。
【0016】
本開示の一実施形態では、車載制御装置では最低限の電流値で充放電中として車両側のリレーをONに維持できる。
【0017】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記接続待機状態維持部は、前記蓄電池の充電率が、満充電と判断される所定の第1充電率以上であるか否かを判断し、第1充電率以上であると判断された場合、放電中と判断される放電電流値を示すメッセージを前記車載制御装置へ送信する。
【0018】
本開示の一実施形態では、車両の蓄電装置が満充電状態である場合に、車載制御装置で最低限の放電が実施中であるとして車両側のリレーをONに維持できる。
【0019】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記接続待機状態維持部は、前記蓄電池の充電率が、前記蓄電池の充電率が下限と判断される所定の第2充電率以下であるか否かを判断し、第2充電率以上であると判断された場合、前記蓄電池の充電率が所定の第3充電率に達するまでの期間、前記充放電回路のリレーをONとして前記商用電源からの電力で前記蓄電池を充電し、充電電流値を示すメッセージを前記車載制御装置へ送信する。
【0020】
本開示の一実施形態では、車両の蓄電装置の充電率が空状態(下限)である場合に、最低限の充電が実施中であるとして車両側のリレーをONに維持できる。
【0021】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記接続待機状態維持部は、前記接続待機状態の維持を開始してから所定時間を経過したか否か、前記蓄電池の充電率が下限と判断される所定の第2充電率以下であるか否か、又は、前記接続待機状態の維持を開始してから前記蓄電池の充電率が所定の割合以上低下したか否かの条件の内の少なくともいずれか1つが満たされた場合、車両側のリレーをOFFとし、前記通信部による通信接続を切断する。
【0022】
本開示の一実施形態では、車両側のリレーをONのままとする接続待機状態も、長時間待機したままで、蓄電池の残電力を消費し続けてしまう可能性がある場合には、リレーをOFFとし、通信接続も切断する。これにより、過度に接続を維持し続けずに充放電装置として適切に動作する。
【0023】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記蓄電池と、商用電源又は負荷との間の電力の授受のON及びOFFを切り替えるリレーを含む充放電回路を備え、前記接続待機状態維持部は、前記車両側のリレー及び前記充放電回路のリレーのいずれもONとしつつ、下限に設定される電力で充電又は放電を行なう。
【0024】
充放電装置内部に設けられたリレーのONを維持してもよく、この場合は、より高速に応答することができる。ただしこの場合、接続待機状態維持部は、充放電を最低限の出力で実施する。なおここで「下限」、「最低限」とは、ゼロに限らず、例えば50〜100Wの出力であってもよい。
【0025】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記車両の蓄電池における充放電を指示する上位制御装置との間でデータを授受する上位制御通信部と、前記通信部によって前記車載制御装置から取得する前記蓄電池に関する情報、及び、前記上位制御通信部によって受信する前記上位制御装置からの指示に基づき、前記リレーを保護する保護状態へ遷移するか否かを判断する判断部とを備える。
【0026】
本開示の一実施形態の充放電方法は、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記蓄電池における充放電を制御する方法であって、前記車載電力線に介装された車両側のリレーのON及びOFFを切り替え制御する車載制御装置と通信接続し、前記車両の蓄電池における充放電を指示する上位制御装置とデータを授受し、前記車載制御装置から通信によって取得する前記蓄電池に関する情報と、前記上位制御装置から受信する指示とに基づき、前記リレーを保護する保護状態へ遷移するか否かを判断する。
【0027】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記車載電力線に介装された車両側のリレーのON及びOFFを切り替える車載制御装置に通信接続する第1通信部と、上位制御装置とデータを授受する第2通信部とを備える充放電装置に搭載されたコンピュータに、前記車載制御装置から、前記蓄電池に関する情報を、前記第1通信部を介して取得し、前記上位制御装置から、前記蓄電池における充放電の指示を、前記第2通信部を介して取得し、前記蓄電池に関する情報と、前記上位制御装置からの指示とに基づき、前記リレーを保護する保護状態へ遷移するか否かを判断する処理を実行させる。
【0028】
本開示の一実施形態では、通信によって得られる車載制御装置から取得する車両の蓄電池に関する情報と、上位制御装置(EMS又は充放電装置内部に設けられるコントローラ)からの指示との間の齟齬によって、車両のリレーが繰り返しON・OFFされることが予想される場合に保護状態へ遷移される。保護状態では、車両のリレーをできる限りON及びOFFしない。保護状態では、充放電装置内に設けられるリレーについてもできる限りON及びOFFしないように制御されるとよい。
【0029】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記保護状態では、前記上位制御装置からの充電指示、又は、放電指示に対し、無応答であるか、指示に対し否定的応答を返す。
【0030】
本開示の一実施形態では、保護状態にある間、車両との間はEMSからの指示に対して無応答になる。あるいは、保護状態としてEMSからの指示に従えない場合、不可応答、NACK(Negative Acknowledge)応答等がEMSへ返される。否定的応答とは、指示は受け付けられたが指示に応じない状態を示す。EMS等の上位制御装置は、充放電装置が無応答になる、又は否定的応答を返してくることによって、送信中の制御指示が、接続されている車両にとって不適切であると推測できる可能性がある。
【0031】
本開示の一実施形態の充放電装置は、保護状態への遷移通知を前記第2通信部によって送信する。
【0032】
本開示の充放電装置では、保護状態へ遷移した場合には、保護状態への遷移通知がEMSへ送信される。EMSでは保護状態への遷移通知を受信することによって送信中の制御指示が、接続されている車両にとって不適切であると推測できる可能性がある。
【0033】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記上位制御装置から同一の指示を所定期間に繰り返し受信した場合に保護状態へ遷移すると判断する。
【0034】
本開示の充放電装置では、EMS又は内部のコントローラから同一の指示が繰り返し受信された場合、指示が適切でなく車両側で指示に対応する処理が実行されなかったことが予想され、処理が実行されないことによって同一の指示の以後の繰り返しも想定されることから、判断へ遷移すると判断する。
【0035】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記上位制御装置から充電指示と放電指示とが所定期間に複数回以上切り替わった場合に保護状態へ遷移すると判断する。
【0036】
本開示の充放電装置では、EMS又は内部のコントローラから異なる指示であっても所定期間に複数回以上繰り返される場合には、指示が車両にとって適切でなく、更に指示が繰り返されることが予想され、これによってリレーのON及びOFFの切り替えが繰り返されるから、判断部は保護状態へ遷移すると判断する。
【0037】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記車載制御装置によって前記車両側のリレーがOFFへ切り替えられ、且つ前記同一の指示を繰り返し受信した場合に保護状態へ遷移すると判断する。
【0038】
本開示の充放電装置では、車両側の制御によって充放電が停止されているにもかかわらず、充電又は放電が指示されている場合には、EMS又は内部のコントローラからの指示が車両にとって適切でなく、更に指示が繰り返されることが予想され、これによってリレーのON及びOFFの切り替えが繰り返されるから、判断部は保護状態へ遷移すると判断する。
【0039】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記蓄電池の充電率が満充電と判断される所定の第1比率以上である状態で、前記上位制御装置から充電指示を受信した場合、又は、前記蓄電池の充電率が下限と判断される所定の第2比率以下である状態で、前記上位制御装置から放電指示を受信した場合に、保護状態へ遷移すると判断する。
【0040】
本開示の充放電装置では、車両側の制御によって充放電が停止されているにもかかわらず、充電又は放電が指示されている場合には、EMS又は内部のコントローラからの指示が車両にとって適切でなく、更に指示が繰り返されることが予想され、これによってリレーのON及びOFFの切り替えが繰り返されるから、判断部は保護状態へ遷移すると判断する。
【0041】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記第1通信部によって前記車両の車種に関する情報を取得し、車種毎に記憶されている遷移条件に基づいて保護状態へ遷移するか否かを判断する。
【0042】
本開示の充放電装置では、車種に応じた遷移条件で保護状態へ遷移するか否かが判断される。車両側における充電制御内容と、多様なEMSからの指示との間を適切に仲介することが可能である。
【0043】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記保護状態へ遷移してから所定の待機時間が経過した後、前記保護状態から復帰すると判断する。
【0044】
本開示の充放電装置では、保護状態へ遷移した後は、所定の待機時間経過後に保護状態から復帰してもよい。
【0045】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記第1通信部によって取得する前記蓄電池の充電率が、前記所定の第1比率未満となった場合、又は前記蓄電池の充電率が前記所定の第2比率超過となった場合に前記保護状態から復帰すると判断する。
【0046】
本開示の充放電装置では、車両の蓄電池の充電率が、充電できる状態又は放電できる状態へ復帰したことを確認した上で、保護状態から復帰することによって、再度、リレーのON及びOFFの切り替えが繰り返されることを予防できる。
【0047】
本開示の充放電装置では、保護状態へ遷移した後はリセットが指示された場合には復帰するようにしてもよい。リセットの指示とは、ユーザが操作可能なインタフェースにおける操作による指示か、通信接続を維持した上位制御装置からの指示である。
【発明の効果】
【0048】
本開示によれば、車載電力線の接続状態が維持されて、シーケンスのやり直しが不要になるから、充放電の指示に対して高い応答性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0051】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の充放電装置1及びEMS200の概要図である。家庭に配置されている負荷21、発電装置23、及び充放電装置1は分電盤28を介し電力線PLによって接続されている。EMS200は、充放電装置1と通信線CLにより接続されている。EMS200は、発電装置23、負荷21群及び分電盤28と信号線又は通信線によって接続されている(図示を省略)。EMS200及び充放電装置1との間の通信は、通信線CLに限らず、無線通信であってもよいし電力線PLにおける電力線通信で実現されてもよい。EMS200は、負荷21と、電力系統E、発電装置23、及び車両Vとの間での電力の授受を制御する。EMS200は、充放電装置1に内蔵されるコントローラに代替可能である。
【0052】
EMS200は他の一例では、公共施設である駐車場に設置された蓄電装置22及び発電装置23と、充放電装置1を介した車両V、電力系統Eとの間の電力の授受を制御する。この一例において電力系統Eは、蓄電装置22、発電装置23及び複数の充放電装置1と分電盤28を介して電力線PLによって接続されている。この一例においてEMS200は、複数の充放電装置1と通信線CLによって接続されている。EMS200は、蓄電装置22、発電装置23及び分電盤28と信号線又は通信線によって接続されている(図示を省略)。電力系統E、蓄電装置22、発電装置23、充放電装置1及び負荷21は複数接続されて大規模なグリッドシステムを構成してもよい。
【0053】
図2は、実施の形態1の充放電装置1及び車両Vの接続構成を示すブロック図である。車両Vは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、又は燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle )である。車両V
は、その駆動に用いることが可能な大容量の蓄電装置30を備える。車両Vは、蓄電装置30に接続される電力線VPLへのコネクタ35と、蓄電装置30における充放電を制御する車載充放電制御装置32とを備える。電力線VPLには、車両V側の充放電回路に含まれるDCリレー33が介装されており、車載充放電制御装置32がDCリレー33のON及びOFFを制御する。コネクタ35には車載充放電制御装置32と通信接続するための通信端子が含まれている。
【0054】
充放電装置1は、充放電回路10、制御部11、通信部12、電源部13及び操作部14を備える。充放電回路10は、双方向インバータ、各種リレー等の多様な回路素子を含む。充放電回路10は、車両Vと接続するコネクタ15と接続されるDCリレー10aと、EMS200側の電力線PL及び電源部13との間に介装された解列リレー10bとを含む。充放電回路10は、DCリレー10aを介してコネクタ15と電力線PLによって接続されている。
【0055】
制御部11は、充放電回路10に含まれる回路素子を制御し、車両Vの蓄電装置30の充放電の切り替え、電流量、及び電圧量を制御する。制御部11はCPU(Central Processing Unit)及び不揮発性メモリを含み、CPUは不揮発性メモリに記憶されたコンピュータプログラム1Pに基づく制御処理を実行して充放電回路10を制御する。コンピュータプログラム1Pは、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体9に記憶されていたコンピュータプログラム9PをCPUが読み出してメモリに記憶したものであってもよい。
【0056】
通信部12は、車両通信部12a及びEMS通信部12bを含む。車両通信部12aは、コネクタ15及びコネクタ35を介して車載充放電制御装置32と通信接続が可能である。車両通信部12aの通信接続のプロトコルは車両V、コネクタ15,35に対応する充放電方式に準拠していればよく、異なる充放電方式に適用するように複数のプロトコルに対応していずれかを選択的に実行できてもよい。実施の形態1では車両通信部12aは、CAN(Controller Area Network)によって車載充放電制御装置32と通信する。PLCによって通信が実現されてもよい。
【0057】
EMS通信部12bは、EMS200との通信線CLを介して通信を実現する。EMS通信部12bは例えば、Ethernet(登録商標)に準拠した通信線CLに対応する通信モジュールであってもよいし、ECHONET /ECHONETLite (登録商標)対応の通信線CLに対応する通信モジュールであってもよい。EMS通信部12bは、PLCにより通信を実現してもよい。
【0058】
電源部13は、UPS(Uninterruptible Power Systems)回路及び起動用蓄電池を含み、制御部11へ電力を供給する。電源部13は、停電時には起動用蓄電池から充放電装置1の起動に必要な電力を供給する。電源部13は、電力系統E、発電装置23又は車両Vからの電力を起動用蓄電池に充電してもよい。
【0059】
操作部14は、ディスプレイ、ディスプレイ内蔵タッチパネル、及び物理ボタンを含み、充放電装置1の外装に露出してユーザからのSTART(起動)及びSTOP(終了)を含む操作を受け付ける。制御部11は、操作部14にて受け付けられた操作に基づいて充放電回路10を制御してもよい。
【0060】
上述のように構成される充放電装置1の充放電回路10は、
図1及び
図2に示すように、コネクタ15が車両Vのコネクタ35と接続された状態において、DCリレー10a及び車両V側のDCリレー33を介して車両Vの蓄電装置30と電力線PLにより接続されている。充放電回路10は、
図1及び
図2に示すように、解列リレー10b及び分電盤28を介してEMS200、電力系統E、及び負荷21群と電力線PLによって接続されている。充放電装置1は、EMS200における制御に応じて、蓄電装置30、EMS200、電力系統E、及び負荷21群との間の電力の授受を制御する。充放電回路10は、解列リレー10b、DCリレー10a、及びDCリレー33が全てONの状態の場合に、電力線PLを介して蓄電装置30の負荷21群への放電、又は電力系統Eからの充電を実施できる。
【0061】
充放電装置1の制御部11は、通信部12を介して車載充放電制御装置32及びEMS200との情報を送受信し、充放電回路10を制御する。制御部11は、車両Vが接続されている状態を充放電装置1から通知されたEMS200からの指示に応じて、電力系統E、負荷21群、蓄電装置22、又は発電装置23と、車両Vとの間で充放電を制御する。
【0062】
図3は、EMS200によって制御される充放電の概要を示す図である。
図3の横軸は1日単位での時間の経過を示し、負荷21の消費電力、発電装置23における発電量、車両Vの蓄電装置30における充放電の状態を示している。
【0063】
図3に示すように、EMS200は例えば、電力系統Eからの買電単価が安く設定されている夜間に、電力系統Eから車両Vの蓄電装置30へ充電を行なうようにスケジュール制御する。走行スケジュールに基づいて充電を行なうようにしてもよい。EMS200は、電力系統Eからの買電単価が高く設定されている昼間は、夜間に充電しておいた車両Vの蓄電装置30から負荷21へ電力を供給する。太陽光によって発電が可能な発電装置23からの電力を負荷21へ整流して供給しつつ、一時的に発電装置23における発電量が不足する間は蓄電装置30から供給してもよい。
【0064】
車両Vの蓄電装置30から負荷21へ電力を供給する充放電制御の際は特に、EMS200は、車両Vの蓄電装置30からの電力供給を開始したり、中断したり、電力供給量を負荷21の動作によって調整することを充放電装置1に対して要求する。充放電装置1はEMS200からの指示に応じて、蓄電装置30からの放電の開始、停止を頻回に行なう可能性がある。調整の都度に、車両Vの蓄電装置30及び車載充放電制御装置32との間で数秒要する接続シーケンスを実行するのでは、応答性が悪く、負荷21の動作の変動に対応しきれない。そこで本開示の充放電装置1は、EMS200からの指示に対する応答性を高めるために以下に示すような制御でこれを実現する。
【0065】
以下に、充放電装置1の制御部11による処理手順を説明する。ここでは上述したように、車両Vが充放電装置1とコネクタ15及びコネクタ35を介して接続されている状態のままであることを前提とする。
【0066】
図4及び
図5は、充放電装置1の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0067】
制御部11は、EMS200からの起動指示、操作部14からの指示、あるいはスケジュールに基づく電源部13からの電力供給開始を受けて起動すると(ステップS101)、車両Vとの通信接続前の状態であることをEMS200へ通知する(ステップS102)。
【0068】
制御部11は、所定の接続シーケンスを実行してコネクタ15及びコネクタ35のロックをONとし(ステップS103)、車両通信部12aによって車載充放電制御装置32との通信接続を確立させる(ステップS104)。通信接続が確立されると制御部11は、車載充放電制御装置32から車両Vの車両情報を取得する(ステップS105)。ステップS105で取得される車両情報には、車両Vの識別データ、車種、充電容量及び充電率(SOC:State Of Charge )が含まれる。車種は、EV、HEV、PHEV、FCV等である。車種がFCVである場合には、車両Vは放電専用車である。車種がEV、HEV、又はPHEVでも充電のみ可能な場合がある。
【0069】
制御部11は、車両Vとの通信接続を完了したことをEMS200へ通知する(ステップS106)。車両Vとの接続完了通知には、充電容量及び充電率に基づき特定される充放電可能電力が含まれる。
【0070】
制御部11は、車載充放電制御装置32及び蓄電装置30との接続シーケンスを実行して、充放電装置1側のDCリレー10aと、車両V側のDCリレー33とをONにさせる(ステップS107)。
【0071】
制御部11は、車両V側のDCリレー33をONのまま維持して、任意のタイミングで充電又は放電の開始、出力を変更できる“接続待機状態”にあることをEMS200へ通知する(ステップS108)。“接続待機状態”において制御部11は、充放電回路10におけるインバータはゲートブロックであって、少なくとも解列リレー10bはOFFとする。本実施の形態1の“接続待機状態”において制御部11は、充放電回路10におけるDCリレー10aを、車両V側のDCリレー33と同様にON/OFF制御する。
【0072】
制御部11は、充放電の指示を受けるまで“接続待機状態”を維持する制御を実行する(ステップS109)。“接続待機状態”を維持するための制御については詳細を後述する。
【0073】
続けて制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10の解列リレー10bをON(DCリレー10aはON状態のまま)とし(ステップS110)、EMS200又は操作部14から指示された電力設定に応じて充放電を開始又は続行する(ステップS111)。ステップS111において、“接続待機状態”で最小電力にて蓄電装置30を充電中である場合、解列リレー10bのONへの切り替えは省略されてもよい。
【0074】
制御部11は、充電中又は放電中であることをEMS通信部12bからEMS200へ通知すると共に(ステップS112)、出力中の電流値(放電電流値又は充電電流値)を示すメッセージを車載充放電制御装置32へ車両通信部12aから送信する(ステップS113)。
【0075】
制御部11は、EMS200、又は操作部14から制御指示を受けたか否かを判断し(ステップS114)、制御指示を受けていないと判断された場合(S114:NO)、処理をステップS111へ戻す。
【0076】
ステップS114にて制御指示を受けたと判断された場合(S114:YES)、制御指示が、充放電制御の終了(EMS200からの終了指示又は操作部14によるSTOP操作)であるか否かを判断する(ステップS115)。
【0077】
制御指示が充放電制御の終了でないと判断された場合(S115:NO)、制御部11は、EMS200からの待機指示であるか否かを判断する(ステップS116)。待機指示であると判断された場合(S116:YES)、制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10の解列リレー10bをOFF(DCリレー10aはONのまま)とし(ステップS117)、処理をステップS109へ戻し、“接続待機状態”へ移行する。
【0078】
待機指示でないと判断された場合(S116:NO)、制御指示は電力設定又は充放電の切り替えであるから、それらに従い処理をステップS111へ戻し、充放電を継続する。
【0079】
ステップS115で、制御指示が充放電制御の終了であると判断された場合(S115:YES)、制御部11は、終了シーケンスを開始して車両通信部12aから車載充放電制御装置32へ停止を通知する(ステップS301)。制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10のDCリレー10a及び解列リレー10bをいずれもOFFとすると共に(ステップS302)、車両V側との通信を切断する(ステップS303)。制御部11は、コネクタ15及びコネクタ35のロックをOFFとし(ステップS304)、EMS200へ停止状態を通知し(ステップS305)、処理を終了する。制御部11は、シャットダウン又はスリープ状態へ移行してよい。
【0080】
図5のフローチャートにおいて、車両V側の車載充放電制御装置32との通信接続の確立タイミング、切断タイミング、並びにコネクタ15及びコネクタ35のロックのON及びOFFタイミングは例示である。コネクタロックのON及びOFFと、通信制御との間の順序は任意に設計されてよい。
【0081】
図6は、“接続待機状態”を維持するための制御手順の一例を示すフローチャートである。
図6のフローチャートに示す処理手順は、
図4及び
図5のフローチャートにおけるステップS109の処理の詳細に対応する。
図6のフローチャートに示す処理で実現される機能が「接続待機状態維持部」に対応する。
【0082】
制御部11は、“接続待機状態”の待機時間の計測を開始する(ステップS201)。
【0083】
制御部11は、蓄電装置30の充電率を含む車両情報を車載充放電制御装置32から取得し(ステップS202)、充電率が、車両V側で充電不可と判断されてDCリレー33をOFFとするように設定されている第1の充電率以上であるか否かを判断する(ステップS203)。第1の充電率は例えば95%等、満充電に近い状態である。
【0084】
第1の充電率以上であると判断された場合(S203:YES)、制御部11は、放電中であると判断される最低限の放電電流値を示すメッセージを車載充放電制御装置32へ送信し(ステップS204)、処理をステップS220へ進める。放電電流値は例えば1Aである。このとき、車両V側のDCリレー33はON状態に維持されているが充放電装置1の充放電回路10の解列リレー10bはON状態でないので、実際には蓄電装置30から負荷21側への放電はされていない。
【0085】
ステップS203で第1の充電率未満であると判断された場合(S203:NO)、充電率が放電不可と判断されてDCリレー33をOFFとするように設定されている第2の充電率以下であるか否かを判断する(ステップS205)。第2の充電率は例えば10%等、電池残容量が低下した状態である。
【0086】
第2の充電率以下であると判断された場合(S205:YES)、制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10の解列リレー10bをONとする(ステップS206)。DCリレー10aはON状態のままであるから、充放電回路10のリレーはいずれもONとなる。このとき制御部11は、最小電力にて蓄電装置30への充電を開始又は継続する(ステップS207)。制御部11は、充電電流値を示すメッセージを車載充放電制御装置32へ送信し(ステップS208)、処理をステップS220へ進める。
【0087】
ステップS207における最小電力の電力供給源は、電力系統Eが好ましい。満充電を目指す充電では、
図3に示したように買電単価が高い時間帯では好ましくない。なおこの最小電力での充電中は、充電状態をEMS200へ通知しなくてよい。
【0088】
第2の充電率超であると判断された場合(S205:NO)、制御部11は、ステップS207により開始された充電中であるか否かを判断し(ステップS209)、充電中であると判断された場合(S209:YES)、第3の充電率に到達したか否かを判断する(ステップS210)。第3の充電率は、第2の充電率よりも少し高い充電率であり、放電可能と判断される最低限の値が好ましく、例えば15%である。
【0089】
第3の充電率に到達したと判断された場合(S210:YES)、制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10の解列リレー10bをOFFとして(DCリレー10aはONのまま)最小電力での充電を終了させる(ステップS211)。制御部11は、充電中であると判断される最低限の充電電流値(例えば1A)を示すメッセージを車載充放電制御装置32へ送信し(ステップS212)、処理をステップS220へ進める。
【0090】
第3の充電率に到達していないと判断された場合(S210:NO)、制御部11は処理をステップS207へ進めて充電を継続し(S207)、充電電流値を示すメッセージを車載充放電制御装置32へ送信し(S208)、処理をステップS220へ処理を進める。
【0091】
充電中でもないと判断された場合(S209:NO)、充電率は第1の充電率未満であって第2の充電率以下で充放電が可能である。この場合、制御部11は、計測中の待機時間が所定の上限時間(例えば、10分)以上となったか否かを判断する(ステップS213)。所定の上限時間となっていないと判断された場合(S213:NO)、処理をステップS212へ進め、充電中と判断されるようにメッセージを車載充放電制御装置32へ送信し(S212)、待機状態を維持する。なお、ステップS213で上限時間となっていないと判断された場合(S213:NO)、放電中と判断されるようにメッセージを車載充放電制御装置32へ送信し(S204)、待機状態を維持してもよい。
【0092】
ステップS213にて待機時間が上限時間以上と判断された場合(S213:YES)、制御部11は、待機時間の計測を終了し(ステップS214)、
図4及び
図5のフローチャートにおける終了シーケンスを開始するステップS301へ処理を進める。なお制御部11は、ステップS201〜S220の処理中に、EMS200から充放電制御の終了指示を受信した場合も、同様に待機時間の計測を終了して(S214)、
図4及び
図5のフローチャートにおけるステップS301へ処理を進める。
【0093】
制御部11は、“接続待機状態”においてEMS200又は操作部14から充放電の指示を受けたか否かを判断する(ステップS220)。充放電の指示を受けていないと判断された場合(S220:NO)、制御部11は処理をステップS202へ戻す。
【0094】
充放電の指示を受けたと判断された場合(S220:YES)、制御部11は、開始されていた“接続待機状態”の待機時間の計測を終了する(ステップS221)。これにより、制御部11は、車両V側のDCリレー33をONに維持して“接続待機状態”とする制御を終了し、処理を
図4のフローチャートのステップS110へ戻す。
【0095】
ステップS201〜ステップS221の処理手順に示されているように、EMS200又は操作部14からの指示を待っている状態で、車両Vとの間の準備状態が解除されないように維持することができ、指示に対してできるだけ早い応答が可能になる。
【0096】
“接続待機状態”では、充放電装置1側のリレーである充放電回路10の解列リレー10bのみをOFFとしたが、DCリレー10a及び解列リレー10b両方をOFFとしてもよい。“接続待機状態”では、充放電装置1側のリレーである充放電回路10のDCリレー10a及び解列リレー10bの両方をONとしたまま、充放電の電力を“0”とする状態であってもよい。充電又は放電の指示がされた場合に充放電の出力を“0”としている状態も“接続待機状態”であり、この場合、EMS200からの指示に対してより高速に応答することができる。なおこの場合も、充放電装置1と車両Vの蓄電装置30との間の電力の授受制御においては、「0(ゼロ)」とすることには限られず、50〜100Wといった出力を継続しておいてもよい。
【0097】
図6のフローチャートに示した処理は一例である。その他、車種によって制御内容を変えてもよい。例えばFCVの場合、蓄電装置30へ充電はしないので、FCV側のDCリレー33のONを維持するためには、制御部11は、放電中と判断される放電電流値を示すメッセージを車載充放電制御装置32へ送信する。逆に放電は不可に設定されている車両Vに対しては、充電中と判断される充電電流値を示すメッセージを車載充放電制御装置32へ送信する。EMS200の充放電制御によって電力系統Eから充電している場合に、充電電流がゼロ近く、即ち1A近くに絞られた状態となって効率が悪化した場合には、制御部11はこれを検知し、充放電装置1における解列リレー10bをOFFとしつつ、車載充放電制御装置32へは充電中であると判断される充電電流値を示すメッセージを送信し、電力が確保されるまで“接続待機状態”を維持するようにしてもよい。この間、制御部11は、車両Vの蓄電装置30の充電可能電力/放電可能電力をゼロとしてEMS200へ通知し、電力が確保されるまで待機するとよい。
【0098】
このようにして、充放電装置1は、車載充放電制御装置32との通信によって最小限の電力での放電中であるか又は充電中であることを通知し続け、車両V側の車載充放電制御装置32における制御によって車両側のDCリレー33をOFFとならないように“接続待機状態”を維持し続ける。これにより、
図3に示したような充放電の切り替え、電圧又は周波数の調整を行なう際に、車両Vとの間の接続シーケンスをその都度実行することなく、要求される応答速度で制御が可能となる。なお“接続待機状態”における車両V側の消費電力は、DCリレー33をOFFさせた状態よりも大きい。したがって充放電装置1は、充放電を行なわない待機状態における電力消費を抑制するために、車両側のDCリレー33をOFFにはするが、車両との通信接続は確立させたままの状態とする制御と組み合わせ、消費電力をできるだけ小さく且つ応答性が高い制御を実現することもできる。
【0099】
実施の形態1では、車両Vの使用予定が当分の間なく、充放電装置1と接続されたままである状態での制御の例を挙げて説明した。充放電装置1とEMS200との間は常時的に通信接続され、EMS200からの指示に従って充放電が繰り返される場合には、車両Vのコネクタ35と充放電装置1のコネクタ15との間のロックがONのまま維持される。しかしながらEMS200からの指示を優先している間は、ユーザが車両Vを使用する場合であっても、コネクタ15,35のロックがOFFとならずに使用できない不都合が発生し得る。したがって充放電装置1は、操作部14にてSTOP操作を受け付けた場合には第1に、ユーザからコネクタ15を切り離したいという意思があるとして、以後、EMS200からの起動指示を含む指示を受け付けず、コネクタ15,35のロックをOFFとするように制御する。これにより、ユーザはコネクタの着脱が可能である。第2に制御部11は、操作部14にてSTOP操作が受け付けられた後、一定期間が経過した場合に、コネクタ15,35のロックをOFFとしたまま、EMS200からの起動指示を含む指示を受け付ける状態へ遷移する。この場合、EMS200から車両Vとの接続確認の指示がされた場合には、コネクタ15,35のロックをONとする。この場合、ユーザは、依然としてやはりコネクタ15,35を切り離したいという意思があれば、再度STOP操作を実行し、これにより制御部11は、STOP操作を受け付けられた場合の第1の状態へ遷移する。
【0100】
(変形例)
上述の実施の形態1では、車両側のリレーがONのままである接続待機状態を維持する接続待機状態を維持するための処理について説明した。変形例で充放電装置1及び車両Vは、“接続待機状態”と異なる“遮断待機状態”での待機も可能とする。“遮断待機状態”は、車載充放電制御装置32との間の通信接続が切断されている状態であって、再度所定の接続シーケンスを実行しなければ充放電を開始できない、という状態である。“遮断待機状態”は、車両Vのコネクタ35と充放電装置1のコネクタ15との間のロックがONであることが確認済みであって、ONを維持された状態である。つまり、“遮断待機状態”と“停止状態”とは、コネクタのONとOFFとが異なる程度である。充放電装置1と車両Vとの制御の状態としては停止状態に等しい。
【0101】
図4−
図6のフローチャートに示した処理手順では、“接続待機状態”の状態で、充放電の指示を受信した場合(S220:YES)には、充放電が開始され(S111)、待機時間が上限時間を超過した場合には、停止状態へのシーケンス(S301−S305)が実行された。変形例で充放電装置1は、“接続待機状態”から、充放電実行以外では停止状態のみならず“遮断待機状態”へも移行するように制御される。
【0102】
図7は、“接続待機状態”及び“遮断待機状態”間で状態を遷移させる制御手順の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、
図7のフローチャートに示す処理手順は、
図6のフローチャートに示した手順に代替するものとして説明するが、
図6のフローチャートに示した手順と組み合わせて実行される。
【0103】
制御部11は、“接続待機状態”の待機時間の計測を開始する(ステップS901)。
【0104】
制御部11は、蓄電装置30の充電率を含む車両情報を車載充放電制御装置32から取得し(ステップS902)、待機開始時点での充電率として記憶しておく(ステップS903)。
【0105】
制御部11は、待機時間が所定時間(例えば10分)を経過したか否かを判断する(ステップS904)。所定時間を経過したと判断された場合(S904:YES)、制御部11は、待機時間の計測を終了する(ステップS905)。制御部11は、充放電装置1側のリレーである充放電回路10のDCリレー10a及び解列リレー10bをOFFとすると共に(ステップS906)、車両V側との通信を切断する(ステップS907)。制御部11は、車両通信部12aから車載充放電制御装置32へ“遮断待機状態”への遷移を通知する(ステップS908)。この場合、制御部11は、“接続待機状態”への維持処理を終了して
図4及び
図5のフローチャートに戻らず、ステップS905−S908によって“遮断待機状態”へ遷移する。
【0106】
制御部11は、ステップS904で待機時間が所定時間を経過していないと判断された場合(S904:NO)、蓄電装置30の充電率を、車載充放電制御装置32から取得する(ステップS909)。制御部11は、取得した充電率が、車両Vで放電不可と判断されてDCリレー33をOFFとするように設定されている第2の充電率以下であるか否かを判断する(ステップS910)。
【0107】
充電率が第2の充電率以下であると判断された場合(S910:YES)、制御部11は、ステップS905へ処理を進める。この場合、充放電装置1は、“遮断待機状態”へ遷移する。
【0108】
充電率が第2の充電率以下でないと判断された場合(S910:NO)、制御部11は、ステップS909で取得した充電率が、待機開始時点での充電率に対して所定割合分だけ低下したか否かを判断する(ステップS911)。
【0109】
ステップS911にて充電率が、所定割合分低下していないと判断された場合(S911:NO)、制御部11は、処理をステップS912へ処理を進める。
【0110】
充電率が、所定割合分低下したと判断された場合(S911:YES)、制御部11は、ステップS905へ処理を進める。この場合も、充放電装置1は、“遮断待機状態”へ遷移する。
【0111】
制御部11は、“接続待機状態”においてEMS200又は操作部14から停止指示を受けたか、を判断する(ステップ912)。停止指示を受信したと判断した場合(S912:YES)、制御部11は、開始されていた“接続待機状態”の待機時間の計測を終了し(ステップS913)、
図4及び
図5のフローチャートにおける終了シーケンスを開始するステップS301へ処理を進める。制御部11はその他、異常停止が検知された場合、異常停止処理を実行して“接続待機状態”から他の状態、異常停止状態へ遷移する。
【0112】
ステップS912において、停止指示も受信していないと判断された場合(S912:NO)、制御部11は処理をステップS904へ戻して接続待機状態を維持する。
【0113】
制御部11は、
図7のフローチャートに示した条件以外に、EMS200から“停止指示”のみならず“遮断待機状態”への遷移指示を受けてもよく、この場合も“遮断待機状態”へ移行してよい。
【0114】
このようにして、接続待機状態、即ち充放電の応答性を高くした状態を維持しておく必要が無いことが類推される状況であることを、制御部11が検知できた場合には、通信接続を切断した状態へ遷移しておくことが好ましい。
【0115】
充放電装置1は、遮断待機状態から接続待機状態へ戻ることもできる。“遮断待機状態”に遷移した充放電装置1の制御部11は、EMS通信部12bでの通信は有効であるから、EMS200から充放電指示があった場合には、接続シーケンスを実行して一旦接続待機状態へ遷移してから充放電を開始する。制御部11は、遮断待機状態において、EMS200から、“接続待機状態”、即ち、直ちに充放電が可能な状態へ遷移することを指示された場合には、接続シーケンスを実行して“接続待機状態”へ遷移するとよい。
【0116】
通信接続の切断については、“接続待機状態”でなくとも、長時間例えば24時間よりも長く、通信接続を確立したままであることを回避すべきである。そこで長時間として定義された時間以上通信接続されていることが検知された場合、制御部11は、通信接続を切断することが望ましい。
【0117】
(実施の形態2)
実施の形態2では、異なるメーカで夫々製造される多種の電気自動車である車両Vと、多様なEMS200とを組み合わせることを考慮して充放電回路を保護するための制御を更に行なう。充放電装置1は、EMS200及び車両Vの夫々の制御を仲介しつつ、DCリレー33,10a、及び解列リレー10bのON及びOFFの繰り返しが発生しそうな状況になると、EMS200からの指示に対し応答しない保護状態へ遷移する。
【0118】
実施の形態2における充放電装置1及びEMS200のハードウェア構成は、実施の形態1と同様であるから、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。以下、実施の形態2におけるDCリレー33,10a、及び解列リレー10bのON及びOFFの切り替えの繰り返しを防止する充放電装置1における制御について説明する。
【0119】
EMS200が例えば、充放電装置1を介して接続されている車両Vの蓄電装置30の充電率(SOC)が、満充電と判断される充電率に到達するまで充電する制御を実行するケースを例にして説明する。EMS200から充電指示を受けた充放電装置1では、制御部11が、車載充放電制御装置32との通信線CLを介した通信接続、及び電力線VPLにおける出力の調整によって所定の接続シーケンスを実行する。接続シーケンスによって充放電装置1と蓄電装置30との間での充放電に対して必要な出力の準備が完了すると、充電が開始される。
【0120】
温度等の条件によって、車載充放電制御装置32は、蓄電装置30における充電率(SOC)が満充電と判断される所定の第1比率に到達する前に、それ以上充電されると蓄電装置30を劣化させると判断し、充電を停止させる場合がある。この場合、車載充放電制御装置32によって車両VのDCリレー33がOFFとなり、充電は停止する。
【0121】
車載充放電制御装置32によって充電が停止されたとしても、EMS200は、充放電装置1を介して得られる蓄電装置30の充電率が満充電容量又は第1比率に到達するまで充電指示を出力する可能性がある。
【0122】
EMS200から充電指示が出力されると、従来の充放電装置であれば、車載充放電制御装置32からの停止によって車両VのDCリレー33が切断されている状態であっても、再度充電を開始しようとする。充電開始のために、DCリレー33をONとする手順を含む所定の接続シーケンスが実行されるが、蓄電装置30はそれ以上充電ができない状態であると判断されているから、再度、車載充放電制御装置32によって充電の停止制御が実行され、DCリレー33がOFFとなり、充電は停止する。蓄電装置30の充電率は、満充電容量又は第1比率に到達しないので、再度、EMS200から充電指示が出力される。
【0123】
このように車載充放電制御装置32にて充電ができないと判断されているにもかかわらず、EMS200から充電指示が送信される場合、車両V側でのDCリレー33のOFFと、充電指示に基づく充電開始手続きによるDCリレー33のONが繰り返される。DCリレー33のON及びOFFの繰り返しは、DCリレー33の劣化を助長する。
【0124】
そこで実施の形態2の充放電装置1は、車載充放電制御装置32における制御と、EMS200の指示とに基づき、DCリレー33のON及びOFFが繰り返されるような状況となる場合には、EMS200からの指示を差し置き、指示に対して無応答である保護状態、少なくともDCリレー33のON及びOFFを実行させない保護状態へ遷移する。
【0125】
図8及び
図9は、充放電装置1による保護状態への遷移手順の一例を示すフローチャートである。充放電装置1の制御部11は、EMS通信部12bによってEMS200と通信接続している状態で以下の処理を実行する。
【0126】
制御部11は、EMS200からの起動指示、操作部14からの指示、あるいはスケジュールに基づく電源部13からの電力供給開始を受けて起動すると(ステップS401)、車両Vとの通信接続前の状態であることをEMS200へ通知する(ステップS402)。
【0127】
制御部11は、所定の接続シーケンスを実行してコネクタ15及びコネクタ35のロックをONとし(ステップS403)、車両通信部12aによって車載充放電制御装置32との通信接続を確立させる(ステップS404)。通信接続が確立されると制御部11は、車載充放電制御装置32から車両Vの車両情報を取得する(ステップS405)。ステップS405で取得される車両情報には、少なくとも充電容量及び充電率(SOC:State Of Charge )が含まれる。車両情報には、車両Vの識別データ又は車種が含まれてもよい。車種は、EV、HEV、PHEV、FCV等である。車種がFCVである場合には、車両Vは放電専用車である。車種がEV、HEV、又はPHEVでも充電のみ可能な場合がある。
【0128】
制御部11は、車両Vとの通信接続を完了したことをEMS200へ通知する(ステップS406)。車両Vとの接続完了通知には、充電容量及び充電率に基づき特定される充放電可能電力が含まれる。
【0129】
制御部11は、EMS200から制御指示を受信したか否かを判断する(ステップS407)。EMS200から制御指示をEMS通信部12bから受信していないと判断された場合(S407:NO)、制御部11は所定の待機時間経過後に処理をステップS407へ戻す。制御指示を受信するまで制御部11は、待機状態となる。
【0130】
制御部11は、ステップS407で制御指示を受信したと判断すると(S407:YES)、制御指示は充電指示又は放電指示であるか否かを判断する(ステップS408)。
【0131】
ステップS408において充電指示又は放電指示であると判断された場合(S408:YES)、制御部11は車載充放電制御装置32及び蓄電装置30との接続シーケンスの続きを実行して車両V側のDCリレー33をONにさせる(ステップS409)。制御部11は、充放電回路10のDCリレー10a及び解列リレー10bをONとし(ステップS410)、充放電を開始又は続行する(ステップS411)。
【0132】
制御部11は、車両通信部12aによって車載充放電制御装置32から蓄電装置30に関し、充電率を含む状態情報を取得する(ステップS412)。ステップS412において、車載充放電制御装置32の制御によって充電が停止中である場合、制御部11は車載充放電制御装置32からの終了の通知を受信することで充電停止中の状態情報を取得することができる。
【0133】
制御部11は、EMS200、又は操作部14から制御指示を受けたか否かを判断する(ステップS413)。車載充放電制御装置32の制御によって充電が停止されている場合、車両V側のDCリレー33はOFFとされている。充放電装置1は、再度、DCリレー33をONとするためには車載充放電制御装置32へ、所定の接続シーケンスをリクエストする。ステップS413で制御指示を受けていないと判断された場合(S413:NO)、処理をステップS411へ戻す。
【0134】
ステップS413にて制御指示を受けたと判断された場合(S413:YES)、制御指示が、充放電制御の終了(EMS200からの終了指示又は操作部14によるSTOPボタンの操作)であるか否かを判断する(ステップS414)。
【0135】
制御指示が充放電制御の終了でないと判断された場合(S414:NO)、制御部11は、EMS200からの待機指示であるか否かを判断する(ステップS415)。待機指示であると判断された場合(S415:YES)、制御部11は、充放電回路10の解列リレー10bをOFF(DCリレー10aはONのまま)とし(ステップS416)、処理をステップS407へ戻し、待機状態へ戻る。
【0136】
待機指示でないと判断された場合(S415:NO)、制御指示は充放電の切り替えである。制御部11は、前記リレーを保護する保護状態へ遷移するか否かを判断する(ステップS417)。ステップS417における保護状態への遷移の判断については詳細を後述する。
【0137】
ステップS417において保護状態へ遷移すると判断された場合(S417:YES)、制御部11は、充放電回路10のDCリレー10a及び解列リレー10bをOFFとする(ステップS418)。制御部11は、車両Vとの接続を切断し(ステップS419)、保護状態への遷移をEMS200へEMS通信部12bによって通知し(ステップS420)、コネクタロックをONとしたまま、処理を終了する。ステップS420の通知は省略されてよい。
【0138】
この場合、制御部11は、保護状態へ遷移する。保護状態において制御部11は、EMS通信部12bによってEMS200からの指示を受信するが、指示を差し置き、指示に対して無応答である。保護状態において制御部11は、少なくとも車両VのDCリレー33のON及びOFFを実行させない。保護状態において制御部11は、強制的に自装置をシャットダウンさせてもよく、シャットダウンする場合には、コネクタロックをOFFし、EMS200との通信接続も切断する。
【0139】
制御部11は、充放電装置1を一旦シャットダウンして再起動させた場合に保護状態から復帰するか、又は、後述の
図12のフローチャートによって、自律的に保護状態から復帰する。シャットダウンする場合の制御部11は、間欠的にEMS通信部12bを起動し、EMS200から起動指示を受信したことを確認した際に再起動する。
【0140】
ステップS417において遷移しないと判断した場合(S413:NO)、制御部11は処理をステップS411へ戻し、制御指示に応じた充放電を続行する。
【0141】
ステップS414で、制御指示が充放電制御の終了であると判断された場合(S414:YES)、制御部11は、終了シーケンスを開始して車両通信部12aから車載充放電制御装置32へ停止を通知する(ステップS421)。制御部11は、充放電回路10のDCリレー10a及び解列リレー10bをOFFとすると共に(ステップS422)、車両V側との通信を切断する(ステップS423)。制御部11は、コネクタ15及びコネクタ35のロックをOFFとし(ステップS424)、EMS200へ停止状態を通知し(ステップS305)、処理を終了する。制御部11は、シャットダウン又はスリープ状態へ移行する。
【0142】
図10は、保護状態へ遷移するか否かの判断処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、
図8及び
図9のフローチャートに示した処理手順の内、ステップS417の詳細に対応する。
【0143】
制御部11は、ステップS408で受信した充電指示又は放電指示が、前回の充電指示又は放電指示を受信したタイミングからの間隔を特定する(ステップS701)。制御部11は、特定した間隔が所定間隔以内であって、且つ、受信回数が所定回数以上であるか否かを判断する(ステップS702)。
【0144】
ステップS701及びステップS702において制御部11は、充電指示又は放電指示を受信する都度に計数し、直近で充電指示又は放電指示を受信してから、次に充電指示又は放電指示を受信するまでに所定間隔に対応する期間が経過すると計数をゼロにリセットする。
【0145】
制御部11は、特定した間隔が所定間隔以内であって、且つ受信回数が所定回数以上であると判断された場合(S702:YES)、保護状態へ遷移すると判断し(ステップS703)、
図9のフローチャートにおけるステップS418へ処理を進める。
【0146】
ステップS702において制御部11は、充電指示及び放電指示のいずれか一方の同一の指示を繰り返し、所定間隔×所定回数である所定期間内に受信するか否かを判断し、所定期間内に同一の指示を繰り返し受信した場合に、保護状態へ遷移すると判断してもよい。
【0147】
ステップS702において制御部11は、充電指示及び放電指示を略交互に、所定間隔×所定回数である所定期間内に受信するか否かを判断し、所定期間内に交互に受信した場合に、保護状態へ遷移すると判断してもよい。
【0148】
ステップS702において、ステップS701で特定した間隔が所定間隔以内でないか、又は受信回数が所定回数未満であると判断された場合(S702:NO)、制御部11は、車載充放電制御装置32にて充電停止状態を示す状態情報を取得しているか否かを判断する(ステップS704)。
【0149】
車両V側で車載充放電制御装置32は、蓄電装置30の充電率が満充電容量の第1比率以上に到達して自律的にDCリレー33をOFFに切り替えると判断した場合、充放電装置1へ充電停止を通知する場合がある。この場合、制御部11は、
図9のフローチャートに示したステップS412で、車両V側の制御によって充電が停止された状態を把握することができる。
【0150】
ステップS704で充電停止を示す状態を取得したと判断された場合(S704:YES)、制御部11は、ステップS408で受信した充電指示又は放電指示が、所定期間に複数回繰り返し受信されているか否かを判断する(ステップS705)。
【0151】
ステップS705において、車載充放電制御装置32によって充電停止状態へ切り替えられ、且つ、充電指示又は放電指示である同一の指示を所定期間に複数回繰り返し受信されていると判断された場合(S705:YES)、制御部11は保護状態へ遷移すると判断する(S703)。制御部11は、判断後に
図9のフローチャートにおけるステップS418へ処理を進める。
【0152】
ステップS704又はステップS705のいずれか一方で、否と判断された場合(S704:NO、又はS705:NO)、制御部11は保護状態へ遷移しないと判断し(ステップS706、
図9のフローチャートにおけるステップS411へ処理を戻す。
【0153】
図11は、保護状態へ遷移するか否かの判断処理手順の他の一例を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは、
図8及び
図9のフローチャートに示した処理手順の内、ステップS417の詳細に対応する。
【0154】
制御部11は、ステップS412で取得した蓄電装置30の状態情報の内の充電率が、満充電と判断される満充電容量の所定の第1比率以上である状態で、ステップS413でEMS200から充電指示を受信したか否かを判断する(ステップS711)。
【0155】
ステップS711で、充電率が所定の第1比率以上であるにもかかわらず充電指示を受信したと判断された場合(S711:YES)、制御部11は、保護状態へ遷移すると判断し(ステップS712)、
図9のフローチャートにおけるステップS418へ処理を進める。
【0156】
ステップS711では、所定の第1比率以上であっても充電指示を改めて受信したと判断される場合、その後、車両V側で満充電と判断される充電率に到達したので、充電停止となるように車載充放電制御装置32にて制御されることが推測される。にもかかわらず、EMS200から充電指示が改めて送信される場合、以後、車載充放電制御装置32における充電停止処理と、EMS200からの充電指示の送信とが繰り返されることが予想される。結果として、車両VにおけるDCリレー33及び充放電装置1におけるDCリレー10a及び解列リレー10bのON及びOFFが繰り返されることが予想される。したがって、実施の形態2の充放電装置1の制御部11は、そのような場合には充電指示が繰り返しEMS200から送信されなくなるように、保護状態へ遷移する。
【0157】
ステップS711において、充電率が所定の第1比率以上でなく、又は、充電指示は受信していないと判断された場合(S711:NO)、制御部11は、ステップS412で取得した充電率が、空(下限)と判断される満充電容量の所定の第2比率以下である状態で、ステップS413でEMS200から放電指示を受信したか否かを判断する(ステップS713)。
【0158】
ステップS713で、充電率が所定の第2比率以下であるにもかかわらず放電指示を受信したと判断された場合(S713:YES)、制御部11は、保護状態へ遷移すると判断し(S712)、
図9のフローチャートにおけるステップS418へ処理を進める。
【0159】
ステップS713では、所定の第2比率以下であっても放電指示を改めて受信したと判断される場合、その後、車両V側で充電容量が下限に近いと判断される充電率に到達したので、放電停止となるように車載充放電制御装置32にて制御されることが推測される。にもかかわらず、EMS200から放電指示が改めて送信される場合、以後、車載充放電制御装置32における放電停止処理と、EMS200からの放電指示の送信とが繰り返されることが予想される。結果として、車両VにおけるDCリレー33及び充放電装置1におけるDCリレー10a及び解列リレー10bのON及びOFFが繰り返されることが予想される。したがって、実施の形態2の充放電装置1の制御部11は、そのような場合には放電指示が繰り返しEMS200から送信されなくなるように、保護状態へ遷移する。
【0160】
ステップS713で充電率が所定の第2比率以下でなく、又は放電指示を受信していないと判断された場合(S713:NO)、制御部11は、保護状態へ遷移しないと判断し(ステップS714)、
図9のフローチャートにおけるステップS411へ処理を戻す。
【0161】
ステップS117における保護状態へ遷移するか否かについて制御部11は、
図10のフローチャートに示した処理手順と、
図11のフローチャートに示した処理手順との両方、又はいずれかを実行して判断する。
【0162】
図12は、保護状態から復帰するための処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部11は、EMS通信部12bによってEMS200との通信接続を維持し、コネクタロックをONとしたまま、EMS200からの指示を差し置く保護状態にある場合、以下の処理を継続的に実行する。
【0163】
制御部11は、保護状態に遷移してから所定の待機時間が経過したか否かを判断する(ステップS801)。
【0164】
制御部11は、間欠的に車両Vの車載充放電制御装置32と車両通信部12aを介して通信し(ステップS802)、蓄電装置30の充電率を取得する(ステップS803)。
【0165】
制御部11は、取得した充電率が、所定の第2比率よりも高く、所定の第1比率未満であるか否かを判断する(ステップS804)。取得した充電率が、所定の第1比率以上であるか、又は、所定の第2比率以下であると判断された場合(S804:NO)、制御部11は処理をステップS801へ戻す。
【0166】
取得された充電率が所定の第2比率よりも高く、所定の第1比率未満であると判断された場合(S804:YES)、制御部11は、保護状態から復帰すると判断し(ステップS805)、処理を終了する。以後、制御部11は、EMS200からの指示に応じた制御を実行する。
【0167】
ステップS801にて、所定の待機時間が経過していないと判断された場合(S801:NO)、制御部11は、操作部14によってSTOP操作を受け付けたか否かを判断する(ステップS806)。STOP操作を受け付けたと判断された場合(S806:YES)、制御部11は、ステップS805へ処理を進め、保護状態から復帰して操作に応じた処理を実行する。
【0168】
ステップS806にて、STOP操作を受け付けていないと判断された場合(S806:NO)、制御部11は、EMS通信部12bによってEMS200から復帰の指示(リセットでも可)を受け付けたか否かを判断する(ステップS807)。
【0169】
ステップS807にて、EMS200から復帰の指示を受け付けたと判断された場合(S807:YES)、制御部11は、ステップS805へ処理を進め、保護状態から復帰して指示に応じた処理(接続シーケンス、又は終了シーケンス)を実行する。
【0170】
ステップS807にて、復帰の指示も受け付けていないと判断された場合(S807:NO)、制御部11は処理をステップS801へ戻す。
【0171】
図10又は
図11のフローチャートに示した判断手順によって、車両VにおけるDCリレー33及び充放電装置1におけるDCリレー10a及び解列リレー10bのON及びOFFが実際に繰り返される状況、又は繰り返されることが高確率で予想される状況では保護状態に遷移すると判断される。つまり、EMS200からの制御指示が車載充放電制御装置32における制御に適してない場合には、少なくとも一定期間、EMS200からの指示に応答しない保護状態へ遷移して、充放電回路を保護することができる。
【0172】
その他、制御部11は、EMS200からの制御指示に応じて車載充放電制御装置32との間で所定の接続シーケンスを実行している間に、車両通信部12aで、異常で停止することが通知された場合、保護状態へ遷移するように制御してもよい。
【0173】
また、充放電装置1の制御部11は、車両Vの蓄電装置30の充電率が、充電できる状態又は放電できる状態へ復帰したことを確認した上で、保護状態から復帰する。これによって、再度、DCリレー33,10a、及び解列リレー10bのON及びOFFの切り替えが繰り返されることを予防できる。
【0174】
(実施の形態3)
実施の形態3では、車両通信部12aを介してコネクタ15,35で接続されている車両Vの車種に応じた遷移条件で保護状態へ遷移する。
【0175】
実施の形態3における充放電装置1のハードウェア構成、及び充放電装置に接続されるESM200、車載充放電制御装置32との接続構成は、実施の形態1と同様である。実施の形態3における充放電装置1の構成の内、実施の形態1と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0176】
実施の形態3において充放電装置1は、制御部11内蔵のメモリに予め、充放電の対象となる車両Vについて、車種毎に遷移条件を記憶している。遷移条件は例えば、第1の車種の車両Vに対しては、
図10のフローチャートに示した判断処理、第2の車種の車両Vに対しては
図11のフローチャートに示した判断処理を行なうように記憶される。また、第3の車種の車両Vに対しては、
図11のフローチャートにおける満充電容量に対する第1比率が85%であって、第4の車種の車両Vに対しては第1比率が90%であるように記憶されてもよい。これらの遷移条件は、各車両Vの製造業者から提供される満充電と判断される基準、又は空(下限)と判断される基準を元に記憶されてもよいし、各車両Vとの試験によって充放電装置1によって作成されてもよい。
【0177】
図13及び
図14は、実施の形態3における充放電装置1による保護状態への遷移手順の一例を示すフローチャートである。
図13及び
図14のフローチャートにおける処理手順の内、実施の形態2の
図8及び
図9のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0178】
実施の形態3において制御部11は、ステップS404で車両情報を取得すると(S404)、車両情報に含まれる車種の識別情報に基づき、車種に対応する遷移条件をメモリから読み出す(ステップS425)。
【0179】
ステップS415で待機指示でないと判断された場合(S415:NO)、制御部11は、ステップS425で読み出された車種に対応する遷移条件に基づいて、保護状態へ遷移するか否かを判断する(ステップS427)。ステップS427における判断の詳細は、遷移条件に応じて、
図10のフローチャートに示した処理手順、及び
図11のフローチャートに示した処理手順の内の両方又は一方であってよい。
【0180】
車種を識別する情報を取得し、車種に応じた遷移条件によって判断することによって、車種毎に異なる車両V側の充放電の制御内容と、多様なEMS200からの指示との間を適切に仲介しつつ、車両Vのみならず自装置の充放電回路10を保護することができる。
【0181】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【解決手段】充放電装置は、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記蓄電池における充放電を制御する充放電装置であって、前記車載電力線に介装された車両側のリレーのON及びOFFを切り替える車載制御装置に通信接続する通信部と、前記車載制御装置との間で所定のシーケンスに基づきメッセージを前記通信部から送受信する通信制御部と、前記所定のシーケンスに基づいて前記車両側のリレーをONへ切り替えた後、前記蓄電池の充放電を実行していない間に、前記車両側のリレーがONのままである接続待機状態を維持する接続待機状態維持部とを備える。