特許第6773208号(P6773208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773208
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20201012BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20201012BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20201012BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20201012BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20201012BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20201012BHJP
   H01M 10/6553 20140101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01M10/0587
   H01M2/26 A
   H01M2/30 D
   H01M10/613
   H01M10/647
   H01M10/6553
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-501104(P2019-501104)
(86)(22)【出願日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】JP2018000412
(87)【国際公開番号】WO2018154987
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-31255(P2017-31255)
(32)【優先日】2017年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】川合 徹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正博
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−167743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 2/26
H01M 2/30
H01M 10/0587
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とから構成される電極巻回体を有して成り、三次元外形として段差形状を含む二次電池を製造する方法であって、
セパレータを介して正極前駆体と負極前駆体とを互いに積層して電極前駆積層体を形成し、該電極前駆積層体を巻回して前記電極巻回体を形成しており、
前記電極前駆積層体が平面視にて櫛歯形状を有し、前記巻回の巻回軸が前記二次電池の端子要素の延在方向と略平行になるように該巻回を行い、前記電極巻回体に段差部を含ませる、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記櫛歯形状における幅狭部分と幅広部分との境界が前記巻回の曲げ箇所となるように該巻回を行う、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記電極巻回体の全体的な立体形状を扁平状にする、請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記正極前駆体、前記負極前駆体および前記セパレータがそれぞれ長尺形状を有し、該長尺形状の長手方向と前記端子要素の延在方向とが互いに略直交する、請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記電極前駆積層体において前記端子要素が前記櫛歯形状の幅狭部分に設けられる、請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記端子要素が前記電極前駆積層体の端部に位置し、該端部が前記巻回の始点となるように該巻回を行う、請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記端子要素としてリードが含まれ、該リードが前記電極前駆積層体の前記端部に設けられる、請求項6に記載の二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記正極前駆体および前記負極前駆体の少なくとも一方の電極前駆体において電極活物質を電極集電体に局所的に供さないことで非活物質エリアを形成し、該非活物質エリアに前記リードを接続する、請求項7に記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記リードとして前記正極のための正極リードおよび前記負極のための負極リードが用いられており、
前記電極前駆積層体では、前記正極リードと前記負極リードとが該電極前駆積層体の積層方向において互いに対向せず、該電極前駆積層体の平面視にて互いに隣接する位置関係を有する、請求項7または8に記載の二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記正極および前記負極が、リチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
【請求項11】
正極、負極および該正極と該負極との間のセパレータとから構成される電極巻回体、ならびに、該電極巻回体を包み込む外装体を有して成る二次電池であって、
前記二次電池の立体形状として段差形状が含まれ、
前記電極巻回体は、前記正極、前記負極および前記セパレータが一体的に巻回されている巻回構造を有し、前記二次電池の端子要素の延在方向が該巻回構造の巻回軸に対して略平行となっており、
前記電極巻回体に用いられている前記正極、前記負極および前記セパレータの各々が、非巻回の状態で櫛歯形状を有する、二次電池。
【請求項12】
前記巻回構造の巻回始点の領域から前記端子要素が延在している、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記二次電池の全体的な立体形状が扁平状となっている、請求項11または12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記端子要素が前記二次電池の厚みの中間レベルに位置付けられている、請求項11〜13のいずれかに記載の二次電池。
【請求項15】
前記段差形状に起因して設けられる前記二次電池の段差部に端子要素が設けられている、請求項11〜14のいずれかに記載の二次電池。
【請求項16】
前記端子要素として前記正極および前記負極のそれぞれの外部端子が互いに隣接して前記段差部を成す電池側面に設けられている、請求項15に記載の二次電池。
【請求項17】
前記正極および前記負極が、リチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有することを特徴とする、請求項11〜16のいずれかに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池およびその製造方法に関する。特に、正極、負極およびセパレータを備えた二次電池の製造方法に関すると共に、その製造方法によって得られる二次電池にも関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、いわゆる“蓄電池”ゆえ充電および放電の繰り返しが可能であり、様々な用途に用いられている。例えば、携帯電話、スマートフォンおよびノートパソコンなどのモバイル機器に二次電池が用いられている。
【0003】
二次電池は、正極、負極およびそれらの間のセパレータから少なくとも構成されている。正極は正極材層および正極集電体から構成され、負極は負極材層および負極集電体から構成されている。二次電池は、セパレータを挟み込んだ正極および負極から成る電極構成層が互いに積み重なった積層構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015−536036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、従前の二次電池では克服すべき課題があることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者は見出した。
【0006】
筐体内において二次電池の設置スペースは回路基板および各種部品などの他の機器要素との兼ね合いを考慮する必要がある。特に、近年のニーズの多様化に伴って、筐体およびその内部に収める種々の要素によって二次電池の設置スペースがより制約を受ける傾向があり、従前の二次電池の形状では十分に対応できなくなってきている。
【0007】
二次電池は、筐体内において基板(例えば、プリント基板および保護回路基板などに代表される電子回路基板)と共に使用されることが多い。かかる基板と二次電池との併用設置には、設置スペースの有効活用の観点から二次電池の形状を段差状にすることが考えられる。かかる場合、そのような段差状の二次電池において電池の外部端子をより好適に位置付けることが求められることを本願発明者らは見出した。
【0008】
また、二次電池は、電池特性および/または寿命などの点で好適な放熱性を有することが求められる。この点、“段差状”の二次電池については放熱性の検討が十分になされているとはいえない現状がある。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、立体形状に段差を有する二次電池においてその外部端子をより好適に位置付ける技術を提供することである。また、別の目的は、放熱性の点でより好適な段差状の二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成された「二次電池の製造方法の発明」および「二次電池の発明」に至った。
【0011】
本発明に係る製造方法は、
正極と負極とから構成される電極巻回体を有して成り、三次元外形として段差形状(即ち、“段差部”)を含む二次電池を製造する方法であって、
セパレータを介して正極前駆体と負極前駆体とを互いに積層して電極前駆積層体を形成し、その電極前駆積層体を巻回して電極巻回体を形成しており、
電極前駆積層体が平面視にて櫛歯形状を有し、巻回の巻回軸が二次電池の端子要素の延在方向と略平行となるように巻回を行って電極巻回体に段差部を含ませることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る二次電池は、
正極、負極および正極と負極との間のセパレータとから構成される電極巻回体、ならびに、その電極巻回体を包み込む外装体を有して成る二次電池であって、
二次電池の立体形状として段差形状(即ち、“段差部”)が含まれ、
電極巻回体は、正極、負極およびセパレータが一体的に巻回されている巻回構造を有し、二次電池の端子要素の延在方向が巻回構造の巻回軸に対して略平行となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従えば、二次電池における段差部(より正確には、“段差形状”を成す電池側面)に電池の外部端子をより好適に位置付けることができる。特に、本発明では二次電池の段差部により近接した状態で電池の外部端子を位置付けることができる。これにより、二次電池が筐体内で基板と共に用いられる際に、かかる基板を二次電池の段差部に据え置くことができると共に、基板と外部端子とを互いにより近位させることができる。
【0014】
“段差部”において基板と二次電池の外部端子とを互いに近位配置できれば、基板から外部端子までの配線がより容易となる(例えば、当該配線をより短く設計できる)。このような配線設計ゆえ、例えば配線による電極ロスの低下がより防止され、デザイン性の低下が減じられたりする。また、このような電池態様は、そもそも電池製造の簡易化や部品コストの低減につながり得る。
【0015】
更に、本発明では“巻回”に関連して外部端子をより好適に電池に位置付けることができるので、かかる外部端子を介した放熱効果が向上し得る。つまり、本発明に係る二次電池は、“段差形状”でありながらも、より好適な放熱特性を呈し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電極構成層の概念を例示的に示した模式的断面図
図2】本発明の一実施形態に係る製造方法におけるプロセス態様を示した模式図
図3】電極前駆積層体を説明するための模式的平面図(図3(A):長尺程度が相対的に小さい電極前駆積層体、図3(B):長尺程度が相対的に大きい電極前駆積層体)
図4】電極前駆積層体における正極リードと負極リードとの配置関係を説明するための模式図
図5】“シーラント材”および“非活物質エリア”を説明するための電極前駆積層体の模式的平面図
図6】本発明の一実施形態に係る二次電池の模式的平面図
図7】本発明の一実施形態に係る二次電池を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の一実施形態に係る二次電池およびその製造方法をより詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、あくまでも本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0018】
本明細書で直接的または間接的に説明される“厚み”の方向は、二次電池を構成する電極材の積層方向に基づいている。例えば扁平状電池などの「板状に厚みを有する二次電池」でいえば、“厚み”の方向は、かかる二次電池の板厚方向に相当する。本明細書で用いる「平面視」とは、かかる厚みの方向に沿って対象物を上側または下側からみた場合の見取図に基づいている。また、本明細書において「断面視」は、二次電池の厚み方向に沿って切り取って得られる対象物の仮想断面に基づいている。
【0019】
さらに、本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”および“左右方向”は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材・部位または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。
【0020】
《二次電池の基本構成》
本発明は“二次電池”に関し、また、“二次電池の製造方法”にも関する。本明細書でいう「二次電池」とは、充電・放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、本発明の製造方法で得られる二次電池は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば“蓄電デバイス”なども対象に含まれ得る。
【0021】
二次電池は、正極、負極及びセパレータを含む電極構成層が積層から成る電極巻回体を有して成る。図1には電極巻回体の概念を例示している。図示されるように、正極1と負極2とはセパレータ3を介して重なって電極構成層5を成しており、かかる電極構成層5が巻回して電極巻回体が構成されている。二次電池においてはこのような電極巻回体が電解質(例えば非水電解質)と共に外装体に封入されている。
【0022】
正極は、少なくとも正極材層および正極集電体から構成されている。正極では正極集電体の少なくとも片面に正極材層が設けられており、正極材層には電極活物質として正極活物質が含まれている。例えば、電極巻回体における正極は、それぞれ、正極集電体の両面に正極材層が設けられていてよいし、あるいは、正極集電体の片面にのみ正極材層が設けられていてもよい。
【0023】
負極は、少なくとも負極材層および負極集電体から構成されている。負極では負極集電体の少なくとも片面に負極材層が設けられており、負極材層には電極活物質として負極活物質が含まれている。例えば、電極巻回体における負極は、それぞれ、負極集電体の両面に負極材層が設けられていてよいし、あるいは、負極集電体の片面にのみ負極材層が設けられていてもよい。
【0024】
正極および負極に含まれる電極活物質、即ち、正極活物質および負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正負極の主物質である。より具体的には、「正極材層に含まれる正極活物質」および「負極材層に含まれる負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極材層および負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であることが好ましい。つまり、非水電解質を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる非水電解質二次電池となっていることが好ましい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本発明に係る二次電池は、いわゆる“リチウムイオン電池”に相当し、正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有している。
【0025】
正極材層の正極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極材層に含まれていることが好ましい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極材層に含まれていてもよい。同様にして、負極材層の負極活物質もまた例えば粒状体から成るところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが含まれることが好ましく、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極材層に含まれていてもよい。このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極材層および負極材層はそれぞれ“正極合材層”および“負極合材層”などと称すこともできる。
【0026】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であることが好ましい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい。つまり、本発明の製造方法で得られる二次電池の正極材層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として好ましくは含まれている。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。あくまでも例示にすぎないが、本発明の製造方法で得られる二次電池では、正極材層に含まれる正極活物質がコバルト酸リチウムとなっていてよい。
【0027】
正極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、ポリフッ化ビリニデン、ビリニデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビリニデンフルオライド−テトラフルオロチレン共重合体およびポリテトラフルオロチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。例えば、正極材層のバインダーはポリフッ化ビニリデンであってよく、また、正極材層の導電助剤はカーボンブラックであってよい。あくまでも例示にすぎないが、正極材層のバインダーおよび導電助剤は、ポリフッ化ビニリデンとカーボンブラックとの組合せとなっていてよい。
【0028】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物、または、リチウム合金などであることが好ましい。
【0029】
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極集電体との接着性が優れる点などで好ましい。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元、3元またはそれ以上の合金であってよい。このような酸化物は、その構造形態としてアモルファスとなっていることが好ましい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。あくまでも例示にすぎないが、本発明の製造方法で得られる二次電池では、負極材層の負極活物質が人造黒鉛となっていてよい。
【0030】
負極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。例えば、負極材層に含まれるバインダーはスチレンブタジエンゴムとなっていてよい。負極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。なお、負極材層には、電池製造時に使用された増粘剤成分(例えばカルボキシルメチルセルロース)に起因する成分が含まれていてもよい。
【0031】
あくまでも例示にすぎないが、負極材層における負極活物質およびバインダーは人造黒鉛とスチレンブタジエンゴムとの組合せになっていてよい。
【0032】
正極および負極に用いられる正極集電体および負極集電体は電池反応に起因して活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えばアルミニウム箔であってよい。一方、負極に用いられる負極集電体は、銅、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えば銅箔であってよい。
【0033】
正極および負極に用いられるセパレータは、正負極の接触による短絡防止および電解質保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極と間の電子的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。好ましくは、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有している。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータとして用いられる微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ又はポリプロピレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータは、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜”とから構成される積層体であってもよい。セパレータの表面が無機粒子コート層や接着層等により覆われていてもよい。セパレータの表面が接着性を有していてもよい。なお、本発明において、セパレータは、その名称によって特に拘泥されるべきでなく、同様の機能を有する固体電解質、ゲル状電解質、絶縁性の無機粒子などであってもよい。
【0034】
本発明に係る二次電池では、正極、負極およびセパレータを少なくとも含む電極構成層から成る電極巻回体が電解質と共に外装体に封入されている。正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する場合、電解質は有機電解質・有機溶媒などの“非水系”の電解質であることが好ましい(すなわち、電解質が非水電解質となっていることが好ましい)。電解質では電極(正極・負極)から放出された金属イオンが存在することになり、それゆえ、電解質は電池反応における金属イオンの移動を助力することになる。
【0035】
非水電解質は、溶媒と溶質とを含む電解質である。具体的な非水電解質の溶媒としては、少なくともカーボネートを含んで成るものが好ましい。かかるカーボネートは、環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類であってもよい。特に制限されるわけではないが、環状カーボネート類としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)から成る群から選択される少なくも1種を挙げることができる。あくまでも例示にすぎないが、非水電解質として環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組合せが用いられてよく、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物が用いられる。また、具体的な非水電解質の溶質としては、例えば、LiPFおよび/またはLiBFなどのLi塩が好ましく用いられる。
【0036】
二次電池の外装体は、正極、負極及びセパレータを含む電極構成層が積層した電極巻回体を包み込むものであるが、ハードケースの形態であってよく、あるいは、ソフトケースの形態であってもよい。具体的には、外装体は、いわゆる“金属缶”に相当するハードケース型であってもよく、あるいは、いわゆるラミネートフィルムから成る“パウチ”に相当するソフトケース型であってもよい。
【0037】
《本発明について》
本発明は、二次電池およびその製造方法に関する。説明の便宜上、「本発明の製造方法」を説明した後で「本発明の二次電池」を説明する。
【0038】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、製造される電池形状が特異な形状であるところ、電池前駆体およびその前駆体に対して施す製造手法に特徴を有している。特に、特異な電池形状ならびに電池の外部端子に鑑みた電極前駆積層体およびその巻回手法に特徴を有している。
【0039】
本発明の製造方法は、段差形状を電池外形に含む二次電池の製法であり、電池前駆体となる電極前駆積層体を巻回して、段差状の二次電池を得る。具体的には、本発明では「正極と負極とから構成される電極巻回体を有して成り、三次元外形として段差形状を含む二次電池」を製造する方法に関するところ、セパレータを用いて正極前駆体と負極前駆体とを互いに積層して電極前駆積層体を形成しつつ、電極前駆積層体を巻回して電極巻回体を形成する。特に本発明の製造方法では、図2に示すように、電極前駆積層体10が平面視にて櫛歯形状を有し、巻回のための巻回軸50が二次電池の端子要素60の延在方向61と略平行となるように巻回を行い、それによって電極巻回体100’に段差部を含ませる。つまり、電極巻回体100’の外形形状に段差部が含まれることになるように、櫛歯形状の電極前駆積層体10を巻回する。
【0040】
本発明の製造方法では、巻回は二次電池の“段差形状”に資するものであり、それゆえ、巻回前の電極前駆積層体10が“櫛歯形状”を少なくとも有している。“櫛歯形状”ゆえ、電極前駆積層体10の平面視形状は、幅狭部分11および幅広部分12を有している。ここでいう「幅狭部分」は、平面視において、相対的に幅寸法が減じられた電極前駆積層体の局所部分を意味する一方、「幅広部分」は、平面視において、相対的に幅寸法が増した電極前駆積層体の局所部分を意味している(ここでいう、“幅寸法”は、図示される平面視の態様から分かるように、巻回に起因して漸次減じられる電極前駆積層体の寸法に対して直交する方向の寸法を実質的に意味している)。つまり、電極前駆積層体10は、その幅寸法が一定でなく、局所的に減じられた形態又は局所的に増した形態を有している。好ましくは、“幅狭部分”および“幅広部分”はそれぞれ複数設けられ、“幅狭部分”と“幅広部分”とが交互に連続していることが好ましい。ある好適な態様では、そのような複数の“幅狭部分”が互いに略同一形状・略同一サイズとなっており、同様にして複数の“幅広部分”も互いに略同一形状・略同一サイズとなっている。換言すれば、電極前駆積層体10は、その幅寸法が周期的に減じられる又は増すようになっていることが好ましいといえる(より具体的には、巻回に起因して寸法が漸次減じられることになる電極前駆積層体の方向に沿ってみた場合に電極前駆積層体の幅寸法が周期的に減じられる又は増すようになっていることが好ましい)。本発明では、このような“櫛歯形状”を有する電極前駆積層体10が好適な巻回に付されることによって、所望の“段差形状”が得られることになる。
【0041】
例えば、図2に示すように、“櫛歯形状”における幅狭部分と幅広部分との境界が巻回の曲げ箇所となるように巻回を行うと、所望の“段差形状”をより好適に得ることができる。つまり、ある好適な態様では、電極前駆積層体10の幅狭部分と幅広部分との境界ライン(又はその近傍)が巻回のための曲げラインに相当するように巻回を行い、“段差形状”の電極巻回体100’を得る。
【0042】
巻回の曲げに関連して用いる「境界」といった用語は、広義には、電極前駆積層体の幅寸法が顕著に増す又は顕著に減じられる非常に局所的な領域を指しており、狭義には、平面視の電極前駆積層体において幅狭部分および幅広部分の各々の縁ライン・エッジライン(電極前駆積層体の幅方向に沿った縁ライン・エッジライン)を指している。ここで、本発明において「境界」は、厳密なものでなくてよく、巻回に際して特に大きく折り曲げられる部分が幅狭部分と幅広部分との略境界に位置していればよい。本発明の製造方法に鑑みていえば、断面視における曲率が最も大きくなるポイントが幅狭部分と幅広部分との“略境界”に相当すればよいといえる。
【0043】
本発明では、段差形状の二次電池が得られるが、ここでいう「段差形状」とは、広義には、電池主面の高さレベルが異なることでもたらされる階段状の電池外形のことを指しており、狭義には、相対的に低いレベルの電池低面と相対的に高いレベルの電池高面とから成る“階段状”の形状のことを指している。
【0044】
本発明の製造方法は、二次電池の端子要素の延在方向と略平行な巻回軸となるように電極前駆積層体の巻回を行う。つまり、電極前駆積層体が巻かれていく方向(すなわち、巻回により電極前駆積層体の寸法が漸次減じられていく方向)は、端子要素の延在方向と略直交することが好ましい。ここでいう「略平行」および「略垂直」といった用語は、それぞれ当業者にとって概ね平行および概ね垂直と認識される程度の許容範囲を含んでいる(すなわち、完全に“平行”または“垂直”でなくてもよく、それから僅かにずれた態様も含んでいる)。例えば、「略平行」は、完全な平行から±20°までの範囲、例えば±10°までの範囲を含んでおり、同様にして「略垂直」は、完全な垂直から±20°までの範囲、例えば±10°までの範囲を含んでいる。なお、図2に示される態様から分かるように、本発明にいう「巻回軸」は、巻回を行う際における電極前駆積層体の“曲げライン”または“折り曲げライン”などと捉えてもよい。
【0045】
本発明の製造方法では、上述のように“端子要素の延在方向”と“巻回軸”とが好適な対応関係を有している。本発明における「端子要素」とは、広義には、外部との電気的接続に供する電池部分・電池部材を意味しており、狭義には、いわゆる電池の外部端子を含め、それと電極巻回体との接続(特に電気接続)に供する“リード”および/または“集電体タブ”などの電池接続部材のことを意味している。リードおよび/または“集電体タブ”が二次電池の端子要素として用いられる場合(例えばリードが電極前駆積層体に取り付けられた状態で巻回を行う場合)、そのリードの延在方向と略平行となる巻回軸の条件でもって電極前駆積層体の巻回が行われることになる。このような電極前駆積層体の巻回は、基板(例えば、プリント基板および保護回路基板などに代表される電子回路基板)と電池外部端子との好適な近位配置に寄与する。
【0046】
本発明の製造方法で巻回に付される電極前駆積層体10は、全体として帯状に長い形態を有することが好ましい。一方向に相対的に長く延在する“帯状の電極前駆積層体”を畳むように巻回することが好ましく、かかる巻回のための巻回軸を二次電池の端子要素の延在方向と略平行にすることが好ましい。つまり、ある好適な態様では、電極前駆積層体が長尺形状を有し、かかる長尺形状の長手方向と端子要素の延在方向とが互いに略直交している。これによって、外部端子の設置の点で好適となる“段差形状の二次電池”の製造方法がもたらされる。ここでいう「略直交」とは、当業者にとって概ね直交と認識される程度の許容範囲を含んでおり、例えば、完全な直交から±20°までの範囲、例えば±10°までの範囲を含んでいる。
【0047】
なお、電極前駆積層体10は、それ自体、正極前駆体1’、負極前駆体2’およびセパレータ3’から少なくとも構成されており(図3参照)、それらが互いに積層している。正極前駆体1’は、《二次電池の基本構成》で説明した「正極」に実質的に相当し、それゆえ、上述した如くの正極材層および正極集電体から構成されている。同様にして、負極前駆体2’は、《二次電池の基本構成》で説明した「負極」に実質的に相当し、それゆえ、上述した如くの負極材層および負極集電体から構成されている。ここで、本発明の製造方法では、電極前駆積層体10は、少なくともセパレータ3’を介して正極前駆体1’と負極前駆体2’とを互いに積層させることで得られる。必要に応じて、積層状態をより安定化させるべくプレス処理を施してもよい。本発明では、電極前駆積層体は“櫛歯形状”を有するところ、それらの構成要素が巨視的に同一形状・同様形状を有していることが好ましい。つまり、ある好適な態様では、正極前駆体1’、負極前駆体2’およびセパレータ3’がそれぞれ櫛歯形状を有し(図3参照)、電極前駆積層体の形成では櫛歯形状の幅狭部分および幅広部分の各々を正極前駆体と負極前駆体とセパレータとの間で互いに実質的に整合させる。これにより、巻回に付される電極前駆積層体を好適に得ることができる。
【0048】
ある好適な態様では、電極巻回体の全体的な立体形状を扁平状にする。例えば、電極前駆積層体を折り畳むようにして“巻回”を行い、それによって、電極巻回体の外観の立体形状を扁平状にしてよい。好ましくは、電極前駆積層体の“櫛歯形状”における幅狭部分と幅広部分との境界が折り曲げられるように巻回を行う。これにより、全体的な立体形状を扁平状にしつつも、“段差形状”の二次電池をより好適に得ることができる。ここでいう「折り畳み」/「折り曲げ」とは、折り目が明確に付くような巻回を特に意味しているというよりも、電極前駆積層体が相互に積み重なるように大きく曲げられる巻回態様をむしろ意味している。また、本明細書において「扁平状」とは、二次電池において少なくとも厚さ寸法が、その他の寸法(特に平面視形状を成す寸法)よりも小さいことを好ましくは意味しており、簡易的には電池の全体外観形状が“板状”または“薄板状”であることを意味している。
【0049】
本発明の製造方法では、端子要素の領域が巻き始点に相当するように電極前駆積層体を巻回することが好ましい。より具体的には、図2および図3に示すように、端子要素60が位置付けられる電極前駆積層体10の端部が巻回の始点となるように巻回を行うことが好ましい。これは、電極前駆積層体の端部を“外部端子部”と位置付け、そのように位置付けられる“外部端子部”から電極前駆積層体を巻回していくことを実質的に意味している。つまり、端子要素が電極前駆積層体の端部に位置し、かかる端部が巻回の始点となるように巻回を行うといえる。これによって、最終的に得られる二次電池において、巻回始点の領域から二次電池の端子要素が延在する巻回構造を好適に得ることができる。よって、二次電池の電極巻回体においては巻回体中央・中心部(断面視ベース)に外部端子が設けられることになり、かかる外部端子を介した好適な放熱がもたらされる。
【0050】
本発明で奏され得る“より好適な放熱特性”を詳細しておく。電池の外部端子などを含めて端子要素は、一般的に伝熱性が高く、二次電池の発生した熱を外部へと逃がすことができる。つまり、外部端子などを含めて端子要素は、電池使用時には放熱パス形成に寄与し得る。ここで、巻回体中央・中心部に端子要素が設けられていると、特に断面視で捉えた場合、電池内部領域のいずれの箇所(端的にいえば、いずれの電池発熱領域)からも実質的に略均等な距離に端子要素が位置付けられていることになる。このように均等な距離に端子要素が位置付けられていると、電池放熱に偏りが減じられ、結果としてより効率的な放熱がもたらされ得る。つまり、二次電池の巻回体の内部中央・中心部に外部端子が設けられることで、「外部へと熱を逃がすための放熱パス」がより好適に形成される。
【0051】
このような放熱の点で好ましい巻回構造は、電極前駆積層体のうち最初に曲げ込む部分が「端子要素の領域」となった巻回構造に相当する。巻回に付される電極前駆積層体は外側に正極前駆体または負極前駆体を備え得るが、いずれかの一方が他方に対して相対的に巻回内側に位置する巻回であってよい。つまり、正極前駆体が相対的に内側となって“折り畳み”または“折り曲げ”られるように巻回されてよいし、あるいは、負極前駆体が相対的に内側となって“折り畳み”または“折り曲げ”られるように巻回されてもよい。
【0052】
本発明の製造方法では、電極巻回体が得られた後、それを電解質と共に外装体に封入する。これにより、所望の二次電池を得ることができる。つまり、「ハードケース型のいわゆる“金属缶”」または「ソフトケース型のいわゆるラミネートフィルムから成る“パウチ”」などの電池外装体を用いて電極巻回体を包み込み、その電池外装体の内部に電解質を注入して封止することを通じて、所望の二次電池を得ることができる(なお、端子要素については、電池の外部端子が供されるべく適宜必要な処理がなされ得る)。
【0053】
本発明の製造方法は、種々の態様で具現化することができる。以下それについて詳述する


【0054】
(好適な端子要素の設置態様)
本発明の製造方法では、電極前駆積層体につき、電極外部端子と直接的に接続される部分は、いずれの箇所であってもよい。つまり、電極前駆積層体において端子要素はいずれの箇所に設けられていてよい。それゆえ、“櫛歯形状”に関して複数の幅狭部分のいずれかに端子要素が設けられてよく、あるいは、複数の幅広部分のいずれかに端子要素が設けられてよい。電極の外部端子は、正極および負極でそれぞれ1つで足りるので、正極のための端子要素が電極前駆積層体の正極前駆体のいずれの箇所に設けられてよく、負極のための端子要素も同様にして電極前駆積層体の負極前駆体のいずれの箇所に設けられてよい。
【0055】
しかしながら、“段差形状”の二次電池において外部端子をより好適に位置付ける観点に照らしていえば、端子要素の配置箇所は積層体の幅狭部分であることが好ましい。つまり、図2および図3に示すように、電極前駆積層体において端子要素が“櫛歯形状”の幅狭部分に設けられることが好ましい。端子要素が“櫛歯形状”の幅狭部分に設けられると、最終的に得られる二次電池において“段差部”により近位した状態で外部端子を位置付けることができる。換言すれば、幅狭部分に端子要素を設置することは、「段差部を成す電池側面」に外部端子を設けることにつながるといえる(つまり、段差部を成す電池側面から外部端子が延在または突出するようになる)。特に、端子要素の延在方向と巻回の巻回軸とが互いに略平行となる条件が得られるように端子要素を幅狭部分に位置付けることで「段差部を成す電池側面」に対して好適に外部端子を位置付けることができる。
【0056】
(リードの設置態様)
本発明の製造方法では、端子要素としてリードが含まれていてよい。つまり、電池外部との電気的接続に供する“電池構成部材として導電性のリード”が電極前駆積層体に設けられてよく、巻回軸がリードの延在方向と略平行となる条件で巻回を行ってよい。例えば、リードを電極前駆積層体の“幅狭部分”に対して設けてよい。また、電極前駆積層体が長尺形状を有する場合、かかる長尺形状の長手方向と略直交するようにリードを設けてよい。
【0057】
本明細書で用いる「リード」といった用語は、広義には、電気的接続に供する電池部材を意味しており、狭義には、電池の外部端子と電極前駆積層体/電極組合体との間の電気接続に供する電池部材を意味している。リードは、導電性を有する部材であって、例えば金属から成り、薄肉形態および/または長尺形態を好ましくは有している(つまり、好ましくは、平面視において電極前駆積層体の長尺形状の長手方向とリードの長尺形態の長手方向とが互いに略直交するように、リードが設けられる)。リード自体は、二次電池(例えば、リチウム二次電池)において常套的に用いられているものであってもよい。
【0058】
好ましくは、リードは巻回始点に位置付けられる。つまり、本発明のある好適な態様では、端子要素としてリードが含まれ、そのリードが電極前駆積層体の端部に設けられる。これにより、最終的に得られる二次電池では、巻回構造における巻回始点の領域からリードおよびそれと電気的に接続された外部端子が好適に延在することになる。つまり、二次電池の電極巻回体において巻回体中央・中心部(断面視ベース)に外部端子が設けられることになり、外部端子を介した放熱特性がより好適にもたらされる。
【0059】
リードとしては、正極のための正極リードおよび負極のための負極リードが用いられてよい。本発明の製造方法では、それらが“段差形状”の二次電池にとって好ましい配置関係を有し得る。具体的には、図4に示すように、電極前駆積層体10において、正極リード65Aと負極リード65Bとが電極前駆積層体10の積層方向において互いに対向せず、電極前駆積層体10の平面視にて互いに隣接する(又は横並びになる)位置関係を有することが好ましい。これにより、最終的に得られる二次電池において、正極および負極の外部端子を互いに隣接させることができ、実質的に“1か所”に外部端子を位置付けることができる。例えば、正極リード65Aおよび負極リード65Bは、図4に示すように、電極前駆積層体10の積層方向で互いに対向しないものの(互いに重なり合わないものの)、“櫛歯形状”の幅狭部分11で互いに隣接するように設けられてよい。かかる場合、最終的に得られる二次電池において“段差部”により近位した状態で正極および負極の外部端子を纏めて局在化させることができる。特に、正極および負極のそれぞれの外部端子が互いに隣接して二次電池の同一面に設けることができ、より具体的には「段差部を成す電池側面」において正極および負極の外部端子を互いに隣接させることができる。
【0060】
本発明の製造方法において端子要素としてリードを含める場合、いわゆる“シーラント”をリードに対して設けてもよい。つまり、外装体との封止に供するシーラント材をリードに予め設けておいてよい。例えば図5に示すように、シーラント材70を備えるリード65が電極前駆積層体10に設けられるようにしてよい。これにより、外装体(特に、ソフトケース型のいわゆるラミネートフィルムから成る“パウチ”)との封止操作をも見据えた所望の電池製造を行うことができる。
【0061】
本発明の製造方法では、リードは好ましくは電極前駆積層体に設けられるものであるが、特に電極材層に対して設けられてよく、あるいは、集電体に対して設けられてもよい。電池放熱性を特に重視する場合、リードが集電体に対して直接的に設けられていることが好ましい。具体的には、正極リードが正極集電体に直接的に設けられ、負極リードが負極集電体に直接的に設けられることが好ましい。「外部へと熱を逃がすための放熱パス」における電気抵抗が減じられ、より効率的な放熱特性がもたらされるからである。
【0062】
例えば、電極集電体にて活物質(すなわち“正極活物質”および/または“負極活物質”)を設けない局所領域を形成し、その局所領域にリードを接続してよい。つまり、正極前駆体1’および/または負極前駆体2’の少なくとも一方の電極前駆体において電極活物質を電極集電体に局所的に供さないことで非活物質エリア80を形成し、その非活物質エリア80にリード65(正極リード65Aおよび負極リード65B)を接続してよい(図5参照)。これにより、電池使用時にて非活物質エリア80を介したより効果的な放熱パスが形成されることになり、より放熱特性の優れた二次電池となり得る。
【0063】
[本発明の二次電池]
次に、本発明の二次電池について説明する。本発明の二次電池は、上述の製造方法で得られる電池に相当する。それゆえ、本発明の二次電池は、特異な電池形状ならびに外部端子の設置位置と関連した特異な電極巻回構造に特徴を有している。
【0064】
本発明の二次電池100は、正極、負極および正極と負極との間のセパレータとから構成される電極巻回体100’、ならびに、電極巻回体100’を包み込む外装体を有して成り、全体的な電池外形において段差が設けられている(図6および図7参照)。つまり、本発明の二次電池は、電極積層体が巻回構造を有しており、また、電池の三次元外形として段差形状を含んでいる。換言すれば、“段差形状”に起因して、二次電池はその外形に段差部(例えば電池の厚み方向に対して平行に延在する電池側面から成る段差部)を有しているといえる。
【0065】
本発明の二次電池における電極巻回体は、正極、負極およびセパレータが一体的に巻回して成る巻回構造を有し、二次電池の端子要素の延在方向が巻回構造の巻回軸に対して略平行になっていることを特徴とする。つまり、リードおよびそれに電気的に接続された外部端子が、電極巻回構造の実質的な巻げ軸に対して略平行となっている。このような構成は、上述したように、電池の放熱特性(外部端子を介した放熱)の向上に寄与する。
【0066】
図7に示すように、本発明の二次電池100は、その全体的な立体形状が扁平状となっている。つまり、二次電池の外観形状が“板状”または“薄板状”になっている。このような“扁平状”は、モバイル機器などの筐体内の制約された電池設置スペースにとって少なくとも好ましい。“扁平状”の場合、電極巻回体における巻回は、好ましくは電極層(正極、負極およびセパレータから成る層)が折り畳まれるようになっている。つまり、電極前駆積層体の折り畳みに起因してもたらされた電極巻回体が“扁平状”を成しているといえる。
【0067】
ある好適な態様では、巻回構造の巻回始点の領域から端子要素が延在している。つまり、巻回の起点にあたる領域に端子要素が設けられている。例えば、外部端子と電極巻回体との接続に供する“リード”が巻回起点またはその近傍領域に設けられ、それゆえ、外部端子が電極巻回体の巻回起点またはその近傍領域に位置付られている。かかる態様は、上述した本発明の製造方法に起因しており、端子要素が位置付けられる電極前駆積層体の端部が巻回の始点となるような巻回が行われたことに起因する。かかる態様では、二次電池の電極巻回体において巻回体中央・中心部(断面視ベース)に外部端子が設けられており、電池使用時においては外部端子を介したより効果的な放熱がなされ得る。
【0068】
ある好適な態様では、巻回の起点にあたる領域に端子要素が設けられていることに起因して、端子要素が二次電池の厚みの中間レベルに位置付けられている。例えば、電極巻回体の厚みの略真ん中に相当する箇所においてリードが電極巻回体に対して設けられており、それゆえ、二次電池の厚みの略真ん中に相当する箇所に外部端子が位置付けられている。このような“中間レベル”の位置付けは、特に断面視で捉えてみて、電池内部領域のいずれの箇所(端的にいえば、いずれの電池発熱領域)からも大凡で均等な距離に端子要素・外部端子が位置付けられていることを意味しており、それゆえ、電池放熱の偏りが減じられ、より効率的な放熱特性が呈され得る。
【0069】
なお、ここでいう“中間レベル”は、断面視において電池または電極巻回体の厚み方向の中央ポイントに相当する。必ずしも厳密な“中央ポイント”である必要はなく、それから僅かにずれた範囲をも含んでいる。例えば、電池または電極巻回体の厚み寸法を“T”とすると、中間レベルは、電池底側主面を起点にして、そこから厚さ方向に「T/2〜T/2±0.3×T」、好ましくは「T/2〜T/2±0.2×T」、より好ましくは「T/2〜T/2±0.1×T」となるレベルであってよい。
【0070】
本発明の二次電池における電極巻回体は、あくまでも電極前駆積層体の巻回により得られるものである。それゆえ、電極巻回体に用いられている正極、負極およびセパレータの各々は、非巻回の状態では“櫛歯形状”を有している。これは、電極巻回体に用いられている正極、負極およびセパレータの各々が、非巻回の状態(平面視)において、“幅狭部分”および“幅広部分”を有していることを意味している。換言すれば、電極巻回体に用いられている正極、負極およびセパレータの各々は、非巻回の状態において、その幅寸法が、一定でなく、局所的に減じられた形態又は局所的に増した形態を有しているといえる。また、電極巻回体が電極前駆積層体の巻回により得られるものであるので、電池の電極巻回体は、厚み方向と直交する平面方向において実質的に継ぎ目がない構造(連続体構造)となっている。さらにいえば、電池の電極巻回体は、段差部を有しつつも、厚み方向にも実質的に継ぎ目がない構造(連続体構造)となっているといえる。つまり、本発明の二次電池は、その電極巻回体が段差部を有する特異な形状であるものの、全体として継ぎ目のない構造、すなわち、連続体構造を有している。また、巻回条件によっては、電池または電極巻回体の段差の高さ寸法(すなわち、段差を構成する“相対的に低いレベルの電池低面”と“相対的に高いレベルの電池高面”との差)が、電池または電極巻回体の厚さ寸法のおよそ半分となっている場合もある。
【0071】
ある好適な態様では、正極および負極のそれぞれの外部端子90(正極側の外部端子90A,負極側の外部端子90B)が互いに隣接して二次電池の同一面に設けられている。つまり、本発明の二次電池では、好ましくは外部端子が実質的に“1か所”に位置付けられている。かかる態様は、本発明の製造方法における電極前駆積層体のリード配置に起因する。具体的には、電極前駆積層体において、正極リード65Aと負極リード65Bとが電極前駆積層体10の積層方向において互いに対向せず、電極前駆積層体10の平面視にて互いに隣接する位置関係を有していたことに起因する(図4参照)。このように、外部端子が互いに隣接して電池の同一面に設けられると、“段差形状”の二次電池にとって好ましい電池設計が供される。例えば、図6および図7に示すように、二次電池100における段差部(より正確には、段差部を成す電池側面)に外部端子90をより好適に位置付けることができる。特に、本発明では“段差部”を成す電池側面に外部端子90を位置付けることができ、より好ましくは段差部・電池側面のより低レベル側に外部端子90を位置付けることができる。平面視でみると、段差部によってもたらされる電池低面上において端子要素が「当該段差部を成す電池側面」から延在するようになり得る。これにより、本発明の二次電池が筐体内で基板と共に用いられる場合、かかる基板を二次電池の“段差部”(より具体的には段差部によってもたらされている電池低面)に据え置くに際して、そのように据え置く基板と外部端子とを互いにより近位に配置させることができる。
【0072】
なお、段差部を成す電池側面に外部端子を設ける態様では、正極および負極のそれぞれの外部端子が互いに隣接して設けられる二次電池の同一面が「電池段差の側面」に相当している。このような特異な電池側面に対して外部端子が好適に設けられているので、本発明では“段差形状”の特異形状に鑑みた外部端子の配置設計がより好適に実現され得る。
【0073】
本発明の二次電池に関する更なる詳細、更なる具体的な態様などその他の事項は、上述の[本発明の製造方法]で説明しているので、重複を避けるためにここでの説明は省略する。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る二次電池は、蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、二次電池は、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、デジタルカメラ、活動量計、アームコンピューターおよび電子ペーパーなどのモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などに利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
5 電極構成層
10 電極前駆積層体
11 幅狭部分
12 幅広部分
50 巻回軸
60 端子要素
61 延在方向(端子要素の長手方向)
65 リード
65A 正極リード
65B 負極リード
70 シーラント材
80 非活物質エリア
90 外部端子
100’ 電極巻回体
100 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7