(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付している。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明に係る電子部品の一例であるバンドパスフィルタ1の等価回路図である。
図1に示されるように、バンドパスフィルタ1は、端子P11〜P14、インダクタL111と、キャパシタ電極130〜132とを備える。
【0016】
端子P11は、端子P12、キャパシタ電極131、およびインダクタL111に接続されている。端子P11およびP12は、入出力端子である。
【0017】
インダクタL111は、キャパシタ電極131と端子P13との間に接続されている。キャパシタ電極130は、端子P13に接続されている。キャパシタ電極132は、端子P14に接続されている。端子P13およびP14は、接地点に接続される接地端子である。
【0018】
キャパシタ電極131は、キャパシタ電極130とともにキャパシタC121を形成している。キャパシタ電極132は、キャパシタ電極130とともにキャパシタC122を形成している。
図1においては、本発明の特徴の1つである共通キャパシタ電極部を強調するため、等価回路図においてもキャパシタC121とC122とで共通する電極を1つのキャパシタ電極130として図示している。
図6、
図10、
図17および
図18においても同様である。
【0019】
インダクタL111とキャパシタC121とは
、端子P11とP13との間で並列に接続され、LC並列共振器を構成している。当該LC並列共振器の共振周波数は、f160である。
【0020】
キャパシタ電極132から接地点との接地端子P14の接続部分までの経路のインダクタンスは、キャパシタ電極130から接地点との接地端子P13の接続部分までの経路のインダクタンスよりも小さい。なお、経路のインダクタンスは当該経路の長さに比例する。そのため、経路のインダクタンスを直接測定する必要はなく、経路の長さを測定することにより、経路のインダクタンスの大小関係を把握することができる。
【0021】
図2は、比較例に係るバンドパスフィルタ10の等価回路図である。バンドパスフィルタ10の構成は、
図1に示されるバンドパスフィルタ1の構成から端子P14およびキャパシタ電極132が除かれた構成である。バンドパスフィルタ10のこれら以外の構成は、バンドパスフィルタ1の構成と同様であるため、説明を繰り返さない。
【0022】
図3は、
図2のバンドパスフィルタ10の挿入損失IL151を示す図である。
図3において縦軸の減衰量(dB)はマイナスの値として示されている。減衰量の絶対値が小さいほど挿入損失IL151は小さい。挿入損失IL151は、端子P11に入力された信号のうち、端子P12に伝達された信号の割合を示している。
図5の挿入損失IL152、
図7の挿入損失IL153、および
図8の挿入損失IL154においても同様である。なお、挿入損失とは、或る端子に入力された信号のうち、他の端子に伝達された信号の割合を示す指標である。挿入損失が大きい程、電子部品に入力された信号のうち当該電子部品の内部で失われた信号の割合が大きいことを意味する。
【0023】
図2および
図3を参照しながら、
図3に示される周波数帯域において、挿入損失IL151は、共振周波数f160において極小となり、周波数がf160から離れるにつれて増加している。インダクタL111とキャパシタC121とで構成されるLC並列共振器のインピーダンスは、共振周波数f160付近において非常に大きくなる(無限大に近づく)。端子P11からの信号は、共振周波数f160付近において当該LC並列共振器をほとんど通過することができなくなる。端子P11からの信号のうち端子P12に伝達される信号の割合が極大となるため、挿入損失IL151は、共振周波数f160付近において極小となる。
【0024】
周波数fが大きくなると、インダクタL111のインピーダンスが増加する一方、キャパシタC121のインピーダンス(1/(C・2πf):CはキャパシタC121の容量)は小さくなる。周波数fが共振周波数f160より大きくなると、インダクタL111のインピーダンスの増加の効果よりも、キャパシタC121のインピーダンスの減少の効果が大きくなるため、インダクタL111とキャパシタC121とで構成されるLC並列共振器のインピーダンスは小さくなる。その結果、端子P11からの信号は、キャパシタC121を通過し易くなる。端子P11からの信号のうち端子P12に伝達される信号の割合が減少し、挿入損失IL151は増加する。バンドパスフィルタ10においては、周波数がf160付近(通過帯域)の信号を通過させ易くするとともに、通過帯域以外の周波数の信号を通過し難くするというバンドパスフィルタに求められる所望の特性が実現されている。
【0025】
実際のバンドパスフィルタにおいては、信号路に寄生インダクタが発生する。バンドパスフィルタで処理する周波数が高くなる程、寄生インダクタによるインピーダンスは大きくなる。その結果、バンドパスフィルタ内の信号伝達が滞り、電子部品の特性が所望の特性から乖離し得る。
【0026】
図4は、
図2のバンドパスフィルタ10の等価回路図に、キャパシタ電極130から、接地点との接地端子P13の接続部分までの信号路に発生する寄生インダクタPL141を反映させた等価回路図である。
図4に示されるように、キャパシタC121と寄生インダクタPL141とは、LC直列共振器を形成している。当該LC直列共振器の共振周波数をf161(>f160)とする。
【0027】
図5は、
図4のバンドパスフィルタ10の挿入損失IL152と、
図3の挿入損失IL151とを併せて示す図である。
図5に示される周波数帯域において、挿入損失IL152は、挿入損失IL151と同様に、共振周波数f160付近において極小となり、共振周波数f160付近からf161付近までは、周波数fが高くなるにつれて挿入損失が増加している。しかし、挿入損失IL152は、共振周波数f161付近において極大となり、周波数fが共振周波数f161より高くなると減少する。
【0028】
図4も併せて参照しながら、キャパシタC121と寄生インダクタPL141とで構成されるLC直列共振器のインピーダンスは、共振周波数f161において非常に小さくなる(0に近づく)。共振周波数f161付近において端子P11からの信号は、当該LC直列共振器を通過し易くなる。端子P11からの信号のうち端子P12に伝達される信号の割合が極小となる。そのため、挿入損失IL152は、共振周波数f161付近において極大となる。
【0029】
周波数fが共振周波数f161より大きくなると、キャパシタC121のインピーダンスの減少の効果よりも、寄生インダクタPL141のインピーダンスの増加の効果が大きくなる。そのため、キャパシタC121と寄生インダクタPL141とで構成されるLC直列共振器のインピーダンスは増加する。その結果、端子P11からの信号は、当該LC直列共振器を通過し難くなる。端子P11からの信号のうち端子P12に伝達される信号の割合が増加し、挿入損失IL152は減少する。寄生インダクタPL141を考慮したバンドパスフィルタ10においては、周波数が高くなると、通過帯域以外にも、挿入損失IL152が通過帯域と同程度に小さい周波数帯域が生じ得る。当該周波数帯域の信号は、通過帯域の信号と同様にバンドパスフィルタ10を通過し易い。寄生インダクタPL141を考慮したバンドパスフィルタ10の特性は、通過帯域以外の周波数帯域の信号が通過し難いという所望の特性から乖離している。
【0030】
そこで、バンドパスフィルタ1においては、接地端子P13に接続されているキャパシタ電極130と、接地端子P13とは別個の接地端子P14に接続されるキャパシタ電極132とでキャパシタC122を形成する。
【0031】
図6は、
図1のバンドパスフィルタ1の等価回路図に、キャパシタ電極130から接地点との接地端子P13の接続部分までの信号路およびキャパシタ電極132から接地点との接地端子P14の接続部分までの信号路にそれぞれ発生する寄生インダクタPL141およびPL142を反映させた等価回路図である。キャパシタ電極132から接地点との接地端子P14の接続部分までの経路のインダクタンスは、キャパシタ電極130から接地点との接地端子P13の接続部分までの経路のインダクタンスよりも小さい。すなわち、寄生インダクタPL142のインダクタンスは、寄生インダクタPL141のインダクタンスよりも小さい。
【0032】
図7は、
図6のバンドパスフィルタ1の挿入損失IL153と、
図4のバンドパスフィルタ10の挿入損失IL152とを併せて示す図である。
図7に示される周波数帯域において、挿入損失IL153は、挿入損失IL152と同様に共振周波数f160付近において極小となり、共振周波数f160から周波数f162まで周波数fの増加に伴って増加する。挿入損失IL153は、周波数f162において極大となり、周波数f162から周波数f163まで周波数fの増加に伴って減少する。挿入損失IL153の周波数f163までの変化の態様は、
図5に示される周波数帯域における挿入損失IL152の変化の態様と同様である。
【0033】
しかし、挿入損失IL153は、周波数f163において極小となる。周波数fが周波数f163より高い場合、挿入損失IL153は、周波数fが増加するにつれて増加する傾向を示す。
【0034】
図6も併せて参照して、周波数fが高くなると、寄生インダクタPL141のインピーダンスが大きくなってキャパシタ電極130から接地点との接地端子P13の接続部分までの信号伝達が滞り得る。寄生インダクタPL142のインピーダンスが寄生インダクタPL141のインピーダンスよりも小さいため、キャパシタ電極130とキャパシタ電極132とにより形成されているキャパシタC122を介して、キャパシタ電極130から、接地点との接地端子P14の接続部分へ信号が伝達される。キャパシタ電極132から接地点との端子P14の接続部分までの信号路が、キャパシタ電極130から接地点との端子P13の接続部分までの信号路の代替経路として機能する。そのため、バンドパスフィルタ1の内部で信号伝達が滞ることが抑制される。その結果、バンドパスフィルタ1の特性が所望の特性から乖離することを抑制することができる。
【0035】
図8は、
図6のキャパシタ電極132の面積を大きくした場合の挿入損失IL154と、
図6のバンドパスフィルタ1の元々の挿入損失IL153とを併せて示す図である。キャパシタ電極132の面積を大きくすると、キャパシタC122の容量が大きくなる。その結果、バンドパスフィルタ1の特性が変化し、
図8に示されるように挿入損失がIL153からIL154に変化する。キャパシタ電極132の面積を変更することにより、バンドパスフィルタ1の特性を所望の特性に合わせて調整することができる。
【0036】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1においては、本発明の共通キャパシタ電極部が、1つのキャパシタ電極から形成される場合について説明した。実施の形態1の変形例においては、共通キャパシタ電極部が2つのキャパシタ電極から形成される場合について説明する。
【0037】
図9は、実施の形態1の変形例に係る電子部品の一例であるバンドパスフィルタ1Aの等価回路図である。バンドパスフィルタ1Aの構成は、
図6に示されるバンドパスフィルタ1の構成のキャパシタ電極130が、共通キャパシタ電極部133に置き換えられている構成である。バンドパスフィルタ1Aのそれ以外の構成は、バンドパスフィルタ1と同様であるため説明を繰り返さない。
【0038】
図9に示されるように、共通キャパシタ電極部133は、キャパシタ電極133Aおよび133Bを含む。キャパシタ電極133Aは、キャパシタ電極133Bに接続されている。キャパシタ電極133Aは、端子P13に接続されている。キャパシタ電極133Aは、キャパシタ電極131とともにキャパシタC121を形成している。キャパシタ電極133Bは、キャパシタ電極132とともにキャパシタC122を形成している。
【0039】
キャパシタ電極133Aから133Bまでの経路のインダクタンスとキャパシタ電極132から接地点との端子P14の接続部分までの経路のインダクタンスとの和は、キャパシタ電極133Aから接地点との端子P13の接続部分までの経路のインダクタンスよりも小さい。キャパシタ電極133Aから133Bまでの経路に発生する寄生インダクタと寄生インダクタPL142との合成インピーダンスが寄生インダクタPL141のインピーダンスよりも小さいため、バンドパスフィルタ1Aの内部で信号伝達が滞ることが抑制される。その結果、バンドパスフィルタ1Aの特性が所望の特性から乖離することを抑制することができる。
【0040】
以上、実施の形態1および変形例に係る電子部品によれば、電子部品の特性が所望の特性から乖離することを抑制することができる。
【0041】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、本発明に係る電子部品の一例として、複数の誘電体の積層体として形成されたバランについて説明する。
【0042】
図10は、実施の形態2に係る電子部品の一例であるバラン2の等価回路図である。バラン2は、周波数f200において、平衡信号と不平衡信号とを相互に変換する。すなわち、バラン2は、周波数f200付近の周波数帯を通過帯域とするバンドパスフィルタである。平衡信号とは、振幅の最大値が略等しく、位相が互いに180度異なる2つの信号である。不平衡信号とは、接地電位を基準にした振幅を有する信号である。
図10に示されるように、バラン2は、端子P21〜P26と、LC並列共振器LC31,LC32と、ローパスフィルタLP30と、インダクタL212とを備える。
【0043】
端子P21は、不平衡信号用の入出力端子である。端子P21は、不図示のアンテナに接続される。端子P22およびP23の各々は、平衡信号用の入出力端子である。端子P22およびP23は、不図示のIC(Integrated Circuit)に接続される。端子P22から出力される信号の位相と端子P23から出力される信号の位相との差は180度である。端子P22に入力される信号の位相と端子P23に入力される信号の位相との差は180度である。端子P24〜P26は、接地点に接続される接地端子である。
【0044】
端子P21と接地端子P25との間に、ローパスフィルタLP30、インダクタL212、およびLC並列共振器LC31が、端子P21から接地端子P25に向かってこの順に直列に接続されている。
【0045】
ローパスフィルタLP30は、端子P21とインダクタL212との間に接続されている。ローパスフィルタLP30は、インダクタL211と、キャパシタC221とを含む。インダクタL211は、端子P21とインダクタL212との間に接続されている。キャパシタC221は、インダクタL211と接地端子P24との間に接続されている。接地端子P24は、接地端子P25に接続されている。ローパスフィルタLP30は、周波数f200の信号を通過させるとともに、周波数f200の信号の高調波を低減する。或る周波数の高調波とは、当該周波数の整数倍の周波数の信号である。周波数f200の信号の高調波の発生源としては、たとえば端子P22およびP23が接続される不図示のIC、あるいは端子P21に接続される不図示の外部デバイスを挙げることができる。
【0046】
LC並列共振器LC31は、インダクタL212と接地端子P25との間に接続されている。LC並列共振器LC31の共振周波数はf200である。LC並列共振器LC31は、インダクタL213と、キャパシタ電極であるキャパシタ導体パターン611,621,631とを含む。インダクタL213は、インダクタL212と接地端子P25との間に接続されている。キャパシタ導体パターン611は、接地端子P26に接続されている。キャパシタ導体パターン621は、接地端子P25に接続されている。キャパシタ導体パターン631は、インダクタL212に接続されている。キャパシタ導体パターン631は、キャパシタ導体パターン621とともにキャパシタC222を形成している。キャパシタ導体パターン611は、キャパシタ導体パターン621とともにキャパシタC223を形成している。インダクタL213とキャパシタC222とは、インダクタL212と接地端子P25との間で並列に接続されている。
【0047】
インダクタL212は、インダクタL211とキャパシタC222との間に接続されている。インダクタL212は、キャパシタC222とともにローパスフィルタを形成している。当該ローパスフィルタは、周波数f200の信号を通過させるとともに、周波数f200の信号の高調波を低減する。
【0048】
LC並列共振器LC32は、端子P22とP23との間に接続されている。LC並列共振器LC32の共振周波数は周波数f200である。LC並列共振器LC32は、キャパシタC224と、インダクタL214〜L216とを含む。キャパシタC224とインダクタL214とは、端子P22とP23との間で並列に接続されている。インダクタL214は、インダクタL213と磁気結合している。
【0049】
インダクタL215は、キャパシタC224の一方電極とインダクタL214の一方端との間に接続されている。インダクタL216は、キャパシタC224の他方電極とインダクタL214の他方端との間に接続されている。インダクタL215のインダクタンスは、インダクタL216のインダクタンスに等しい。インダクタL215およびL216は、LC並列共振器LC32のインピーダンスを所望の値に調整するために設けられている。インダクタL214〜L216は、1個のインダクタとして形成されてもよい。
【0050】
端子P21に周波数f200の不平衡信号が入力された場合、周波数f200はLC並列共振器LC31の共振周波数であるため、端子P21からLC並列共振器LC31を介して接地端子P25を見たときのLC並列共振器LC31のインピーダンスは非常に大きくなる(無限大に近づく)。端子P21からの周波数f200の不平衡信号は、LC並列共振器LC31を接地端子P25に向かって通過し難くなる。その結果、インダクタL213とL214との磁気結合が強まり、端子P21からの周波数f200の不平衡信号のほとんどは、インダクタL213から磁気結合を介してインダクタL214へ伝達される。
【0051】
周波数f200はLC並列共振器LC32の共振周波数でもあるため、端子P22からLC並列共振器LC32を介して端子P23を見たときのLC並列共振器LC32のインピーダンスは非常に大きくなる(無限大に近づく)。インダクタL214の端子P22側の端部から出力される信号は、端子P23へ向かってLC並列共振器LC32を通過し難くなる。その結果、インダクタL214の端子P22側の端部から出力される信号のほとんどは、インダクタL215を通過して端子P22に向かう。
【0052】
端子P23からLC並列共振器LC32を介して端子P22を見たときのLC並列共振器LC32のインピーダンスも非常に大きくなる(無限大に近づく)。インダクタL214の端子P23側の端部から出力される信号は、端子P22へ向かってLC並列共振器LC32を通過し難くなる。その結果、インダクタL214の端子P23側の端部から出力される信号のほとんどは、インダクタL216を通過して端子P23に向かう。
【0053】
インダクタL214の両端部からそれぞれ出力される信号の位相差は、180度である。インダクタL215のインダクタンスは、インダクタL216のインダクタンスに等しい。信号がインダクタL215を通過した場合の位相のずれとインダクタL216を通過した場合の位相のずれは等しい。そのため、インダクタL214の端子P22側の端部からインダクタL215を通過して端子P22から出力される信号の位相と、インダクタL214の端子P23側の端部からインダクタL216を通過して端子P23から出力される信号の位相との差は、180度のまま変わらない。すなわち、端子P22およびP23からは周波数f200の平衡信号が出力される。
【0054】
周波数f200の平衡信号が端子P22およびP23に入力された場合、周波数f200はLC並列共振器LC31およびLC32の共振周波数であるため、インダクタL213とL214との磁気結合が強まる。その結果、周波数f200の平衡信号は、インダクタL214から磁気結合を介してインダクタL213へ伝達され、周波数f200の不平衡信号として端子P21から出力される。
【0055】
図11は、
図10のバラン2の外観斜視図である。
図11に示されるように、バラン2はたとえば直方体状である。バラン2の面のうち、Z軸方向(積層方向)に垂直な面を上面UF41および底面BF42とする。上面UF41には、バラン2の実装方向を識別するための方向識別マークDM40が配置されている。底面BF42は、不図示の基板に接続される。
【0056】
積層方向に平行なバラン2の面のうち、ZX平面と平行な面を側面SF51およびSF53とする。積層方向に平行な面のうちYZ平面と平行な面を側面SF52およびSF54とする。端子P21,P23,P26は、上面UF41、側面SF53、および底面BF42に亘って設けられている。接地端子P26の底面BF42に配置されている部分をP262とする。端子P22,P24,P25は、上面UF41、側面SF52、および底面BF42に亘って設けられている。接地端子P25の底面BF42に配置されている部分をP251とする。接地端子P25の部分P251および接地端子P26の部分P262は、底面BF42が不図示の基板に接続されることにより、接地点に接続される。端子P21〜P26の各々は、複数の誘電体層の積層方向の厚み程度の長さをもつ信号路といえる。そのため、端子P21〜P26の各々には、寄生インダクタが発生する。
【0057】
図12は、
図11のバラン2の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図12に示されるように、バラン2は、誘電体層Lyr61〜Lyr80が積層方向に積層された積層体である。
【0058】
図13は、
図12に示される誘電体層Lyr61〜Lyr71を示す図である。以下では、主に
図13を参照するとともに必要に応じて
図10(等価回路図)および
図11(外観斜視図)を参照しながら誘電体層Lyr61〜Lyr71に形成された導体パターンについて説明する。
【0059】
誘電体層Lyr61は、不図示の基板に接続される底面BF42を含む。接地端子P25の部分P251および接地端子P26の部分P262が配置されている誘電体層Lyr61は、本発明の接続層に相当する。誘電体層Lyr61には、キャパシタ導体パターン611が形成されている。キャパシタ導体パターン611は、接地端子P26(
図10および
図11参照)に接続されている。
【0060】
誘電体層Lyr62には、キャパシタ導体パターン621,622が形成されている。キャパシタ導体パターン621は、接地端子P25に接続されている。キャパシタ導体パターン621は、キャパシタ導体パターン611とともにキャパシタC223(
図10参照)を形成している。誘電体層Lyr62は、本発明の共通キャパシタ層に相当する。
【0061】
誘電体層Lyr63には、キャパシタ導体パターン631〜633が形成されている。キャパシタ導体パターン631は、キャパシタ導体パターン621とともにキャパシタC222(
図10参照)を形成している。キャパシタ導体パターン632および633は、端子P22およびP23(
図10および
図11参照)にそれぞれ接続されている。誘電体層Lyr63は、本発明のキャパシタ層に相当する。
【0062】
誘電体層Lyr62(共通キャパシタ層)は、誘電体層Lyr63(キャパシタ層)と誘電体層Lyr61(接続層)との間に配置されている。キャパシタ導体パターン611から部分P262までの経路のインダクタンスは、キャパシタ導体パターン621から部分P251までの経路のインダクタンスよりも小さい。
【0063】
誘電体層Lyr64には、キャパシタ導体パターン641および642が形成されている。キャパシタ導体パターン641は、接地端子P24およびP25(
図10および
図11参照)に接続されている。
【0064】
誘電体層Lyr65には、キャパシタ導体パターン651〜653が形成されている。キャパシタ導体パターン651は、キャパシタ導体パターン641とともにキャパシタC221(
図10参照)を形成している。キャパシタ導体パターン652および653は、端子P22およびP23(
図10および
図11参照)にそれぞれ接続されている。キャパシタ導体パターン652および653は、キャパシタ導体パターン622,632,633,642とともに、キャパシタC224(
図10参照)を形成している。
【0065】
誘電体層Lyr66には、インダクタ導体パターン661および662が形成されている。インダクタ導体パターン661および662は、それぞれビア導体パターンV654およびV655によって、キャパシタ導体パターン651に接続されている。
【0066】
誘電体層Lyr67には、インダクタ導体パターン671および672が形成されている。インダクタ導体パターン671は、ビア導体パターンV663によってインダクタ導体パターン661に接続されている。インダクタ導体パターン672は、ビア導体パターンV664によってインダクタ導体パターン662に接続されている。
【0067】
誘電体層Lyr68には、インダクタ導体パターン681および682が形成されている。インダクタ導体パターン681は、ビア導体パターンV673によってインダクタ導体パターン671に接続されている。インダクタ導体パターン682は、ビア導体パターンV674によってインダクタ導体パターン672に接続されている。
【0068】
誘電体層Lyr69には、インダクタ導体パターン691および692が形成されている。インダクタ導体パターン691は、ビア導体パターンV683によってインダクタ導体パターン681に接続されている。インダクタ導体パターン692は、ビア導体パターンV684によってインダクタ導体パターン682に接続されている。
【0069】
誘電体層Lyr70には、インダクタ導体パターン701および702が形成されている。インダクタ導体パターン701は、ビア導体パターンV693によってインダクタ導体パターン691に接続されている。インダクタ導体パターン702は、ビア導体パターンV694によってインダクタ導体パターン692に接続されている。
【0070】
誘電体層Lyr71には、インダクタ導体パターン711および712が形成されている。インダクタ導体パターン711は、端子P21(
図10および
図10および
図11参照)に接続されている。インダクタ導体パターン711は、ビア導体パターンV703によってインダクタ導体パターン701に接続されている。インダクタ導体パターン712は、ビア導体パターンV704によってインダクタ導体パターン702に接続されている。
【0071】
インダクタ導体パターン661,671,681,691,701,711、およびビア導体パターンV663,V673,V683,V693,V703は、インダクタL211(
図10参照)を形成している。インダクタ導体パターン662,672,682,692,702,712、およびビア導体パターンV664,V674,V684,V694,V704は、インダクタL212(
図10参照)を形成している。
【0072】
図14は、
図12に示される誘電体層Lyr71〜Lyr80を示す図である。主に
図14を参照するとともに必要に応じて
図10(等価回路図)、
図11(外観斜視図)、
図12(誘電体層Lyr61〜Lyr80)、および
図13(誘電体層Lyr61〜Lyr71)を参照しながら誘電体層Lyr72〜Lyr79に形成された導体パターンについて説明する。
【0073】
誘電体層Lyr72には、インダクタ導体パターン721〜723が形成されている。インダクタ導体パターン721は、ビア導体パターンV713によってインダクタ導体パターン712に接続されている。インダクタ導体パターン721は、ビア導体パターンV634によってキャパシタ導体パターン631(
図13および
図12参照)に接続されている。インダクタ導体パターン722は、端子P22(
図10および
図11参照)に接続されている。インダクタ導体パターン723は、端子P23(
図10および
図11参照)に接続されている。
【0074】
誘電体層Lyr73には、インダクタ導体パターン731〜733が形成されている。インダクタ導体パターン731は、ビア導体パターンV634によってインダクタ導体パターン721に接続されている。インダクタ導体パターン732は、ビア導体パターンV725によってインダクタ導体パターン722に接続されている。インダクタ導体パターン733は、ビア導体パターンV726によってインダクタ導体パターン723に接続されている。
【0075】
誘電体層Lyr74には、インダクタ導体パターン741〜743が形成されている。インダクタ導体パターン741は、ビア導体パターンV734によってインダクタ導体パターン731に接続されている。インダクタ導体パターン742は、ビア導体パターンV735によってインダクタ導体パターン732に接続されている。インダクタ導体パターン743は、ビア導体パターンV736によってインダクタ導体パターン733に接続されている。
【0076】
インダクタ導体パターン722,732,742、およびビア導体パターンV725,V735は、インダクタL215を形成している。インダクタ導体パターン723,733,743、およびビア導体パターンV726,V736は、インダクタL216を形成している。
【0077】
誘電体層Lyr75には、インダクタ導体パターン751が形成されている。インダクタ導体パターン751は、ビア導体パターンV745によってインダクタ導体パターン742に接続されている。
【0078】
誘電体層Lyr76には、インダクタ導体パターン761が形成されている。インダクタ導体パターン761は、ビア導体パターンV752によってインダクタ導体パターン751に接続されている。
【0079】
誘電体層Lyr77には、インダクタ導体パターン771が形成されている。インダクタ導体パターン771は、ビア導体パターンV762によってインダクタ導体パターン761に接続されている。インダクタ導体パターン771は、ビア導体パターンV746によってインダクタ導体パターン743に接続されている。
【0080】
誘電体層Lyr78には、インダクタ導体パターン781が形成されている。インダクタ導体パターン781は、接地端子P25(
図10および
図11参照)に接続されている。インダクタ導体パターン781は、ビア導体パターンV744によってインダクタ導体パターン741に接続されている。
【0081】
誘電体層Lyr79には、線路導体パターン791が形成されている。線路導体パターン791は、接地端子P26(
図10および
図11参照)に接続されている。線路導体パターン791は、ビア導体パターンV782によってインダクタ導体パターン761に接続されている。
【0082】
インダクタ導体パターン721,731,741,781、およびインダクタ導体パターン721と731とを接続しているビア導体パターンV634の部分,ビア導体パターンV734,V744は、インダクタL213(
図10参照)を形成している。
【0083】
図15は、
図10のバラン2の挿入損失IL241を示す図である。挿入損失IL241は、端子P21に入力された信号のうち、端子P22に伝達された信号の割合を示している。
図15に示される周波数帯域において挿入損失IL241は、周波数f200付近において極小となる。周波数fがf200より大きくなると、挿入損失IL241は増大し、周波数f201において36dB程度を上回る。周波数fがf201より大きくなると挿入損失IL241は増減を繰り返すが、36d
B程度以上の減衰量を維持する。周波数f200付近の信号は、バラン2を通過し易い。すなわち、周波数f200付近の周波数帯を通過帯域とするバンドパスフィルタに求められる所望の特性から、バラン2の特性が乖離することが抑制されている。
【0084】
図16は、
図13に示されるキャパシタ導体パターン611の面積を小さくした場合の挿入損失IL242と、および
図13のバラン2の元々の挿入損失IL241とを併せて示す図である。キャパシタ導体パターン611の面積を小さくすると、キャパシタC223の容量が小さくなる。その結果、バラン2の特性が変化し、
図16に示されるように挿入損失がIL241からIL242に変化する。キャパシタ導体パターン611の面積を変更することにより、バラン2の特性を所望の特性に合わせて調整することができる。
【0085】
実施の形態2においては、
図13に示されるように、キャパシタ導体パターン611および621が、側面に配置されている接地端子P26の部分および接地端子P25の部分にそれぞれ接続される構成について説明した。キャパシタ導体パターン611および621が接地端子に接続される構成は、
図13に示される構成に限定されない。たとえば、キャパシタ導体パターン611および621が、底面BF42に規則的に配置された別個のLGA(Land Grid Array)端子に、積層方向に伸びるビア導体パターンによってそれぞれ接続されているという構成でもよい。
【0086】
実施の形態2においては、
図10に示される端子P26が接地端子である場合について説明した。
図17に示されるバラン2Aのように、端子P26をDCフィード端子Pdcとして使用することができる。インダクタL214は、DCフィード端子Pdcに接続されている。インダクタL214の両端が端子P22およびP23にそれぞれ電気的に接続されているため、DCフィード端子Pdcに印加する電圧を変化させることにより、端子P22およびP23の直流電位を調整することができる。
【0087】
以上、実施の形態2および変形例に係る電子部品によれば、電子部品の特性が所望の特性から乖離することを抑制することができる。
【0088】
[実施の形態3]
実施の形態1および2においては、実施の形態に係る電子部品が有する信号路の代替経路の数が1つである場合について説明した。実施の形態に係る電子部品が有する信号路の代替経路の数は2つ以上であってもよい。実施の形態3においては、電子部品が有する信号路の代替経路の数が2つである場合について説明する。
【0089】
図18は、実施の形態3に係る電子部品の一例であるバンドパスフィルタ3の等価回路図である。バンドパスフィルタ3の構成は、
図1のバンドパスフィルタ1のキャパシタ電極132がキャパシタ電極332に置き換えられるとともに、キャパシタ電極333および端子P35が追加されている点である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0090】
図18に示されるように、キャパシタ電極332は、端子P14に接続されている。キャパシタ電極333は、端子P35に接続されている。端子P35は、接地点に接続される接地端子である。キャパシタ電極332は、キャパシタ電極130とともにキャパシタC322を形成している。キャパシタ電極333は、キャパシタ電極332とともにキャパシタC323を形成している。
図18においては、キャパシタC322とC323とで共通する電極を1つのキャパシタ電極332として図示している。
【0091】
キャパシタ電極332から接地点との端子P14の接続部分までの経路のインダクタンスは、キャパシタ電極130から接地点との端子P13の接続部分までの経路のインダクタンスよりも小さい。キャパシタ電極333から接地点との端子P35の接続部分までの経路のインダクタンスは、キャパシタ電極332から接地点との端子P14の接続部分までの経路のインダクタンスよりも小さい。そのため、バンドパスフィルタ3の内部で信号伝達が滞ることが抑制される。その結果、バンドパスフィルタ3の特性が所望の特性から乖離することを抑制することができる。
【0092】
[実施の形態3の変形例]
図19は、実施の形態3の変形例に係る電子部品の一例であるバンドパスフィルタ3Aの等価回路図である。バンドパスフィルタ3Aの構成は、
図9のバンドパスフィルタ1Aの構成に、キャパシタ電極332A,333および端子P35が加えられた構成である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0093】
図19に示されるように、キャパシタ電極333は、端子P35に接続されている。端子P35は、接地点に接続される接地端子である。キャパシタ電極332Aは、キャパシタ電極132に接続されている。キャパシタ電極333は、キャパシタ電極332AとともにキャパシタC323Aを形成している。
【0094】
キャパシタ電極132から332Aまでの経路のインダクタンスとキャパシタ電極333から接地点との端子P35の接続部分までの経路のインダクタンスとの和は、キャパシタ電極132から接地点との端子P14の接続部分までの経路のインダクタンスよりも小さい。そのため、バンドパスフィルタ3Aの内部で信号伝達が滞ることが抑制される。その結果、バンドパスフィルタ3Aの特性が所望の特性から乖離することを抑制することができる。
【0095】
以上、実施の形態3および変形例に係る電子部品によれば、電子部品の特性が所望の特性から乖離することを抑制することができる。
【0096】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わされて実施されることも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。