特許第6773265号(P6773265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773265
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】チップソー
(51)【国際特許分類】
   B27B 33/08 20060101AFI20201012BHJP
   B23D 61/04 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B27B33/08 A
   B23D61/04
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-113061(P2016-113061)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-205998(P2017-205998A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】598000264
【氏名又は名称】株式会社トリガー
(72)【発明者】
【氏名】金原 良雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 友良
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−020252(JP,A)
【文献】 特開2004−050367(JP,A)
【文献】 特開2011−161819(JP,A)
【文献】 特開2014−087895(JP,A)
【文献】 特開平10−337611(JP,A)
【文献】 米国特許第02528226(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0257127(US,A1)
【文献】 米国特許第05038653(US,A)
【文献】 中国実用新案第202162861(CN,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0053014(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 33/08
B23D 61/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心位置に取付孔が形成された円盤状の台金と、該台金の外周縁部に形成した複数のチップ固着部に固着されたチップと、を備えたチップソーであって、
前記台金は、所定板厚の本体部と、該本体部の外周側に当該本体部の板厚より薄く一体形成され複数の刃室と前記チップ固着部が形成された刃部と、を有し、
前記チップは、前記台金の外径の大小や被切削材の種類に応じて、その刃先の最大幅が前記台金の本体部の板厚より大きいか同一かもしくは小さく設定されると共に、前記刃先が前記台金の左右側面に向けて傾斜する左刃用及び右刃用のチップと、前記刃先が前記台金の左右側面に向けて傾斜しない平刃用のチップとが一組となり、これらが前記台金の外周線に沿って複数組配設され、これら複数組全ての組の隣接するチップ間のピッチが前記台金の回転方向に向けて順に大きくなるように設定されていることを特徴とするチップソー。
【請求項2】
前記各組の平刃用のチップが1個で前記左刃用のチップ及び右刃用のチップがそれぞれ1個〜3個に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のチップソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木材や各種ボードを切断する際に電動工具に装着されて使用されるチップソー関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のチップソーは、例えば特許文献1に開示されている。このチップソーは、前面に刃先が形成されたチップを、台金(鋸身)の厚さより大きい厚さにすると共に、その両側面に前面から後面に至る溝を形成し、この溝が形成されている部分のチップの厚さを台金の厚さと同一に設定し得るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−178138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなチップソーにあっては、台金に固着されるチップの溝部分の厚さを台金の厚さと同一に設定し得ることから、切削屑がチップの後方に排出され易くなるものの、溝部分の厚さが薄くても台金と同一厚さとなるため、チップによる切り幅を十分に狭くすることができず切断時の直線性が劣ったり、切断時の抵抗を受け易く切断作業の作業性が劣ると共に、切削屑自体の発生を十分に抑えることも難しい。特に、被切削材としての木材やボード等を切断する場合に、これらが顕著となり易くその改善が望まれているのが実情である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、切り幅を十分に狭くして切断時の直線性を向上させると共に、切断抵抗を少なくして切断作業の作業性を向上させ、かつ切削屑の発生を少なくし得るチップソーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、中心位置に取付孔が形成された円盤状の台金と、該台金の外周縁部に形成した複数のチップ固着部に固着されたチップと、を備えたチップソーであって、前記台金は、所定板厚の本体部と、該本体部の外周側に当該本体部の板厚より薄く一体形成され複数の刃室と前記チップ固着部が形成された刃部と、を有し、前記チップは、前記台金の外径の大小や被切削材の種類に応じて、その刃先の最大幅が前記台金の本体部の板厚より大きいか同一かもしくは小さく設定されると共に、前記刃先が前記台金の左右側面に向けて傾斜する左刃用及び右刃用のチップと、前記刃先が前記台金の左右側面に向けて傾斜しない平刃用のチップとが一組となり、これらが前記台金の外周線に沿って複数組配設され、これら複数組全ての組の隣接するチップ間のピッチが前記台金の回転方向に向けて順に大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記各組の平刃用のチップが1個で前記左刃用のチップ及び右刃用のチップがそれぞれ1個〜3個に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1または2に記載の発明によれば、台金の本体部の外周側に本体部より薄く一体形成されて複数の刃室とチップ固着部を有する刃部を設け、チップが左刃用と右刃用を有して刃部のチップ固着部に所定の形態で固着されているため、台金の外周側に厚さの薄い刃部を位置させることができて、切り幅を十分に狭くして切断時の直線性を向上させることができると共に、切断抵抗を少なくして切断作業の作業性を向上させることができ、かつ切削屑の発生を少なくして、良好な切断面を容易に得ることができる。
【0009】
また、チップが、複数の左刃及び右刃用のチップと一つの平刃用のチップが一組となり、これらが台金の外周線に沿って複数組配設されているため、切断時の直線性をより一層向上させることができると共に、良好な切断面が得られつつ負荷の少ない切断作業を容易に行うことができる。
【0010】
また、複数組の全ての組の隣接するチップ間のピッチが、台金の回転方向に沿って順に大きくなるように設定されているため、切削屑の後方側への排出を良好に行って、切断時の直線性やその作業性のより一層の向上等を図ることができる
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係わるチップソーの一実施形態を示す平面図
図2】同その要部の拡大図
図3】同その側面図
図4】同平刃、左刃及び右刃用のチップの固着状態を示す図
図5】同各チップのピッチを示す図
図6】同チップの固着状態を示す断面図
図7】同チップの固着状態の変形例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1図6は、本発明に係わるチップソーの一実施形態を示している。図1に示すように、チップソー1は、全体が所定外径φで本体部2aと刃部2bを有する台金2と、この台金2の外周縁部に後述する所定形態で固着された複数のチップ3を備えている。
【0013】
前記台金2は、例えば炭素鋼板等のプレス加工もしくはレーザー切断加工で外径φの円盤状に形成されて、その中心位置には円形の取付孔6が形成されている。また、台金2は、図6に示すように、前記本体部2aが板厚t1(例えばt1=0.9mm)に設定されると共に、前記刃部2bが板厚t2(例えばt2=0.75mm)に設定され、この刃部2bに図1及び図2に示すように、チップ固着部4と刃室5が対となって多数形成されている。
【0014】
そして、本体部2aの板厚t1と刃部2bの板厚t2により、図6に示すように、本体部2aの左右両側面(表裏面)の外周端2a1と刃部2bの左右両側面(表裏面)の内周端2b1とが垂直もしくは若干傾斜した連接面7でそれぞれ連接されている。これにより、刃部2bが本体部2aに段差状に連接されると共に、その厚さが本体部2aに対して所定寸法(例えば0.1〜0.3mm)薄い板厚t2の刃部2bが、本体部2aの板厚方向の中央に立設状態とされている。
【0015】
この刃部2bの台金2へ形成は、外径φで刃部2bに相当する外周縁部に刃室5とチップ固着部4が形成された台金2の外周縁部の両側面を、所定幅wで所定深さ(前記所定寸法)で研磨することにより形成されている。この研磨幅wの内周端である刃部2bの内周端2b1は、図2に示すように、刃室5の最も深い底5aより台金2の中心O方向に寸法L2(図2及び図6参照)で位置するように設定されている。また、刃部2bに形成されるチップ固着部4は、図1に示すように、連続する七個のチップ固着部4a〜4gが一組(一ブロック)となり、このチップ固着部4a〜4gが台金2の外周縁に六組(六ブロック)形成されている。
【0016】
このとき、各組の七個のチップ固着部4a〜4gは、図5に示すように、隣接するピッチ固着部4a〜4g間の各ピッチp1〜p7が全て異なる、すなわち不均一となるように設定されている。つまり、隣接する各チップ固着部4a〜4gに後述する如く固着される各チップ3の刃先3eと、台金2の中心0を結ぶ直線間のピッチp1〜p7が、全て同一とならず、回転方向イに向けて順に大きくなるように(p1>p2>p3>p4>p5>p6>p7でp1+p2+p3+p4+p5+p6+p7=60度)に設定されている。
【0017】
なお、各組の七個のチップ固着部4a〜4gの形成は、例えばプレス加工もしくはレーザー切断加工で台金素材を成形する際に同時に形成されることになる。また、前記台金2の本体部2aの径方向の略中央部と外周部には、図1に示すように、レーザー加工により両側面に貫通する状態のスリットからなる歪み吸収溝8が円周方向に等間隔で複数個(図1では合計12個)形成されている。
【0018】
一方、前記チップ3は、例えば超硬合金で形成され、図2に示すように、台金2の回転方向イの前方側となる掬い面3aと、掬い面3aの先端に後方側に連接する状態で設けられた先端面3bと、左右のアサリ面を形成する側面3c1、3c2(3c2は図4参照)と、前記先端面3bの後端と掬い面3aの下端との間に略J字(もしくは略L字)形状に形成された固着面3d等を有している。そして、掬い面3aの上端と先端面3bの前端とで刃先3eが形成されている。
【0019】
また、チップ3は、前記掬い面3aを台金2の板厚方向において、図3及び図4に示すように、所定角度θ2(例えばθ2=15度)傾斜する傾斜面とすることにより、左側面3c1が右側面3c2よりも高くなる「左刃」と、この「左刃」と逆で右側面3c2が左側面3c1よりも高くなる「右刃」と、前記角度θ2=0度で前記先端面3bを台金2の左右側面に向けて傾斜しない平坦とした「平刃」を形成するようになっている。なお、図4に示すように、「平刃」用のチップ3の刃先3eの高さは、「左刃」及び「右刃」用のチップ3の刃先3eの高さよりも寸法h(例えばh=0.15mm)低くなるように設定されている。
【0020】
前記「左刃」「右刃」及び「平刃」用の各チップ3は、その両側面3c1、3c2間の寸法(幅)が、底面3f側が狭く前記刃先3e側が所定寸法大きく、すなわち、図3に示すアサリ角θ3(例えばθ3=3度)を有している。また、図4に示す各チップ3の刃先3eの幅寸法(最大幅)t3は、前記台金2(本体部2a)の板厚t1より所定寸法(例えば0.2〜0.3mm)大きく(t3>t1)設定されている。さらに、前記「左刃」と「右刃」用のチップ3の刃先3eの幅寸法t3は、同一(例えば1.2mm)に設定され、「平刃」用のチップ3の刃先3eの幅寸法t3は、「左刃」や「右刃」用のチップ3に対して若干小さく(例えばt3=1.1mm)設定されている。
【0021】
このように構成された各チップ3は、図1及び図5に示すように、台金2の刃部2bのチップ固着部4にそれぞれ固着されている。すなわち、一個の「平刃」用のチップ3と、それぞれ三個の「左刃」及び「右刃」用のチップ3を、図1に示すように、台金2の反回転方向イに沿って、図1で「平刃」をA、「左刃」をB、「右刃」をCとした場合、A−B−C−B−C−B−C−A・・・のように固着されている。また、図2及び図6に示すように、刃部2bのチップ固着部4に固着された各チップ3の底面3fと刃室5の底5a間の寸法L1は、例えばL1=1〜5mmに設定されて、各チップ3の下部に厚さの薄い刃部2bが必ず位置するように設定されている。
【0022】
つまり、一個の「平刃」用のチップ3とそれぞれ三個の「左刃」及び「右刃」用のチップ3の合計七個のチップ3を一組とし、これが前記台金2の外周線に沿って各組の各チップ固着部4a〜4gにそれぞれ固着されている。これにより、前述したように、台金2の刃部2bに形成される六組の七個の隣接するチップ固着部4a〜4gが不均一ピッチに設定されていることから、各組の連続する七個の各チップ3もそのピッチp1〜p7が不均一状態で固着されることになる。
【0023】
次に、前記チップソー1の製造方法の一例について説明する。先ず、取付孔6を有する本体部2aと、この本体部2aの外周縁に刃室5及びチップ固着部4を有する台金素材を、炭素鋼板のプレス加工もしくはレーザー切断加工により成形する。そして、この成形した台金素材の外周縁部の両側面(表裏面)を研磨して、本体部2aの外周側に前記刃部2bを形成する。また、超硬合金で成形され前記「左刃」「右刃」及び「平刃」用の各チップ3を形成し得る所定形状に成形されたチップ素材を所定数準備する。
【0024】
そして、熱処理した台金2の刃部2bの六組の各七個のチップ固着部4a〜4gに同一形状の各チップ3をそれぞれ固着する。このとき、例えば治具に垂直状態でセットされた台金2の刃部2bのチップ固着部4に、準備したチップ素材の固着面をセットし、刃部2bのチップ固着部4とチップ素材の固着面との接触部分にロー材を当接させた状態で、接触部分を高周波の誘導加熱を利用して所定温度まで加熱する。
【0025】
これにより、ロー材が溶融してチップ固着部4とチップ素材の固着面との間に進入して、チップ素材が刃部2bのチップ固着部4にロー付け固着される。この作業を、台金2を回転させつつ各チップ固着部4にチップ素材を順にロー付けすることにより、台金2の刃部2bの全ての組の全てのチップ固着部4にチップ素材がそれぞれロー付け固着される。
【0026】
全てのチップ固着部4にチップ素材がロー付け固着されたら、このチップ素材が固着された台金2を研磨機にセットし、各チップ素材を研磨する。この研磨は、各チップ素材の掬い面、先端面、両側面等を研磨することで行われる。このとき、チップ素材の先端面の研磨は、図2に示す角度θ1(例えばθ1=15度)で研磨し、チップ素材の掬い面の研磨は、前記「平刃」用のチップ素材の場合は、平坦に研磨し、前記「左刃」と「右刃」用のチップ素材の場合は、前記角度θ2で斜めに研磨する。
【0027】
また、各チップ素材の各面の研磨は、研磨部位毎に、すなわち例えば掬い面を順に研磨した後に先端面を順に研磨し、その後両側面を順に研磨すること等で行われる。そして、各面を研磨することで「平刃」「左刃」「右刃」用のチップ3が刃部2bに所定の形態で固着されたチップソー素材が得られ、このチップソー素材に対して塗装や印刷等の仕上げ処理することでチップソー1が製造される。つまり、前記チップソー1の場合、本体部2aの外周縁部に段差状の刃部2bを連接状態で一体に設けて、その厚さを本体部2aより薄くすると共に、刃部2bの各チップ固着部4に、連続する七個のチップ3を不均一ピッチで六組固着するようにしている。
【0028】
このように前記チップソー1によれば、台金2が本体部2aの外周側に本体部2aより薄く一体形成されて、複数の刃室5とチップ固着部4を有する刃部2bを有し、チップ3が「左刃」と「右刃」及び「平刃」用として刃部2bのチップ固着部4に所定の形態で固着されているため、本体部2aの外周側に本体部2aより厚さの薄い刃部2bを位置させることができて、切り幅を狭くして切断時の直線性を向上させることができると共に、切断抵抗を少なくして切断作業の作業性を向上させることができ、かつ切削屑の発生を少なくして、良好な切断面を容易に得ることができる。
【0029】
また、板厚t2の刃部2bの内周端2b1が、板厚t1の本体部2aの左右両側面の刃室5の底5aより所定寸法台金2の中心0側に位置する外周端2a1と連接面7により段差状にそれぞれ連接されて、本体部2aの板厚t1方向の中央に位置しているため、台金2の左右両側面に刃部2bを均一な連接面(段差)を介して一体形成でき、切断時の直線性や切断作業の作業性の一層の向上等を図ることができる。
【0030】
また、「左刃」「右刃」「平刃」用のチップ3が、台金2の回転方向イに対して所定の形態でチップ固着部4にそれぞれ固着されているため、各刃の特徴を生かしながら、被切削材としての例えば木材を効率的に切削できると共に、一層良好な切断面を得ることができる。特に、「左刃」「右刃」用及び「平刃」用のチップ3がチップ固着部4にそれぞれ固着された際に、各チップ3の底面3fと刃室5の底5aとの間に所定の寸法L1が確保されているため、各チップ3の底面3f下部に板厚t2の薄い刃部2を必ず位置させることができて、切削屑のつまりが抑制されて、その後方への排出をスムーズに行うことができる。
【0031】
さらに、チップ3が、三個の「左刃」及び「右刃」用のチップ3と一個の「平刃」用のチップ3の合計七個のチップ3が一組となり、これらが台金2の外周線に沿って六組配設されているため、切断時の直線性をより一層向上させることができると共に、良好な切断面と負荷の少ない切断作業を行うことができる。
【0032】
特に、各組のチップ3が、隣接するチップ3間のピッチp1〜p7が異なるように、つまり、隣接するチップ3間のピッチp1〜p7が、台金2の回転方向イに沿って順に大きくなるように設定されているため、切断作業時に発生する切り屑を回転方向イの後方側に効率的に排出しつつ切断できて、チップソー1の直線性や切断作業の作業性のより一層の向上等を図ることができる。これらにより、前記チップソー1を、例えば被切削材としての木材の切断に使用した場合には、木材をその繊維の方向に係わらず、直線的で軽く、かつ綺麗な切断面を得つつ切断することが可能になる。
【0033】
ところで、前記実施形態においては、チップ3の幅寸法(最大幅)t3を台金2の本体部2aの板厚t1より大きく設定したが、本発明はこれに限定されず、図7に示すように構成することもできる。すなわち、図7(a)に示すように、チップ3の最大幅となる刃先の幅寸法t3を台金2の本体部2aの板厚t1と同一(t3=t1)に設定したり、図7(b)に示すように、チップ3の幅寸法t3を台金2の板厚t1より小さく(t3<t1)設定する。
【0034】
このとき、図7(a)のチップ3の幅寸法t3と台金2の板厚t1が同一の場合は、切断時の台金2(チップソー1)の振れ(ブレ)を少なくできると共に、綺麗な切断面が得られる。また、図7(b)のチップ3の幅寸法t3が台金2の板厚t1より小さい場合は、切断時に台金2と被切削材が擦れる状態となり、台金2の振れを極力小さくすることができる。
【0035】
このように、チップ3の幅t3と台金2の板厚t1は、被切削材の種類や台金2の外径φの大小に応じて、最適な形態が使用される。この図7(a)(b)においては、チップ3の幅寸法t3が刃先3e(先端面3b先端)と固着部3dの全域において同一、すなわちアサリ角θ3=0で示しているが、図6と同様に、チップ3の両側面3c1、3c2に所定のアサリ角θ3を設定して、刃先3eの最大幅寸法t3を台金2の本体部2aの板厚t1と同一かもしくは小さくしても良い。
【0036】
また、前記実施形態のチップソー1の各構成は、木工用に限らず、例えば前記超硬チップに代えてPCDダイヤモンド結晶体を使用したチップソー1に適用して、例えば窯業系サイディングボード等のボードの切断にも使用することができる。このようなボードの場合、主原料としてセメント質原料及び繊維質原料を用いて板状に成形され建築物の外装板として使用されるが、チップソーによる切断的に粉塵が多く発生し易い。そこで、本発明に係わる構成のチップソー1を使用すれば、従来のチップソーより刃厚(前記幅寸法t3)を薄くできるため、前述した効果の他に、粉塵の量を減少させることができて、対環境作業性を向上させることができるという効果を奏することができる。
【0037】
なお、前記実施形態においては、「平刃」「左刃」及び「右刃」用の三種類のチップ3を七個、所定の形態で六組連設することにより、本体部2aの外周側に刃部2bを形成したが、本発明はこの構成に限定されず、例えば「左刃」と「右刃」用のチップ3をそれぞれ二個もしくは一個として、合計五個もしくは三個のチップ3を一組としても良い。
【0038】
さらに、前記実施形態においては、台金2にスリット状の歪み吸収溝8を設けたが、例えば前記歪み吸収溝8間に円形形状等の歪みや振れ防止用の適宜の開口を複数個設けることもできる。また、前記実施形態においては、台金2の外周縁部の両側面を研磨することで刃部2bを形成したが、台金2の一方の側面のみを研磨して刃部2bを形成しても良いし、刃部2bの形成も研磨に限らずプレス加工等を利用しても良い。また、前記実施形態における、台金2の刃部2bの刃室5やチップ固着部4の形状、チップ3自体の形状等も一例であって、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、木材や各種ボードの切断用チップソーに限らず、回転することで各種被切断物を切断する全てのチップソーに利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1・・・チップソー、2・・・台金、2a・・・本体部、2a1・・・外周端、2b・・・刃部、2b1・・・内周端、3・・・チップ、3a・・・掬い面、3b・・・先端面、3e・・・刃先、3f・・・底面、4、4a〜4g・・・チップ固着部、5・・・刃室、5a・・・底、6・・・取付孔、7・・・連接面、8・・・歪み吸収溝、t1・・・本体部の板厚、t2・・・刃部の板厚、t3・・・チップの幅寸法、イ・・・回転方向、p1〜p7・・・ピッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7