特許第6773273号(P6773273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773273
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】インク注入口形成用治具
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   B41J2/175 131
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-192765(P2019-192765)
(22)【出願日】2019年10月23日
(62)【分割の表示】特願2015-240896(P2015-240896)の分割
【原出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2020-11523(P2020-11523A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】516223207
【氏名又は名称】株式会社TMIPコンサルティング
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】田口 哲也
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−277551(JP,A)
【文献】 特表2014−500168(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3128334(JP,U)
【文献】 特開平09−131888(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0227796(US,A1)
【文献】 中国実用新案第201530018(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジの所定の位置にインク注入口を形成するための治具であって、
前記インクカートリッジの前記インク注入口が形成される面に沿わせる上面部を少なくとも備え、
前記上面部に、ドリルを挿通可能な穴開け窓部が設けられていると共に、
前記上面部の内側面に、前記インクカートリッジの大気開放口に挿入される突起部が設けられていることを特徴とするインク注入口形成用治具。
【請求項2】
インクカートリッジの側面を覆うように沿わせる側面部を、更に備えたことを特徴する請求項1に記載のインク注入口形成用治具。
【請求項3】
前記上面部と前記側面部が、略L字形状をなしていることを特徴とする請求項2に記載のインク注入口形成用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク残量情報を記憶するICチップを備えたインクカートリッジにインクを補充するインク補充キットに関するものであり、より詳しくは、インクカートリッジにインク注入口を形成する際に用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一例として挙げられるインクジェット式プリンターは、通常、装置内のインクカートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジに貯留されているインクをインク吐出口から記録ヘッドへ送り込み、この記録ヘッドが用紙等の被記録媒体にインクを噴射・塗布することで、画像や文字の記録を行う。しかし、装置を小型化する必要性からインクカートリッジ自体を小さなものとしており、その容量も限られたものとなっている。そこで、インクカートリッジの交換、あるいは、インクカートリッジへのインクの補充が、しばしば要求されることになる。
【0003】
資源の有効利用からインクカートリッジを交換せず、インクカートリッジへインクを補充することが好ましい。特に、この種のインクカートリッジは、インク残量センサーを備えるなど高性能・複雑化しているため、これらの機能を損なわないようにインクを再注入する試みが提案されている。
【0004】
例えば、インクカートリッジ内を減圧手段によって減圧した状態で、補給用のインクが充填されたインク容器からインクを補給するインク補給装置が提案されている。(例えば特許文献1)
【0005】
また、インクカートリッジを減圧容器の中に収容し、減圧容器を密閉した状態で減圧容器内部の空気を排気ポンプで弁ユニットを介して排気し、減圧後の減圧容器内に大気圧を作用させて補充用のインクをインクカートリッジの内部に補充するインク補充キットが提案されている。(例えば特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−030524号公報
【特許文献2】特開2009−125945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のインク補給装置は、本体ケースに真空圧を作用させるための真空チャンバーや真空ポンプ、及びモーター等の工業的な機器を用意する必要があるため、末端のユーザーが扱うのは難しく、コストも高くなるという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献2のインク補充キットは、減圧容器の中でインクカートリッジをインクの中に入れてインク補充を行うため、インクカートリッジ外面がインクで汚れるので洗浄しなければならず、減圧容器内に残ったインクもインクカートリッジ外面に付着した埃等で汚れるので、回収するインクの質が低下する問題があった。
【0009】
本発明は、末端のユーザーが容易に扱うことができるとともに、インクカートリッジ及びインクの汚れを抑えるインク補充キットおよびインク補充方法を提供することを目的とする。
【0010】
この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また、従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の第1の発明は、インクカートリッジの所定の位置にインク注入口を形成するための治具であって、前記インクカートリッジの前記インク注入口が形成される面に沿わせる上面部を少なくとも備え、前記上面部に、ドリルを挿通可能な穴開け窓部が設けられていると共に、前記上面部の内側面に、前記インクカートリッジの大気開放口に挿入される突起部が設けられていることを特徴とするインク注入口形成用治具である。
【0012】
本発明の第2の発明は、前記第1の発明に記載の構成に加え、インクカートリッジの側面を覆うように沿わせる側面部を、更に備えたことを特徴するインク注入口形成用治具である。
【0013】
本発明の第3の発明は、前記第2の発明に記載の構成に加え、前記上面部と前記側面部が、略L字形状をなしていることを特徴とするインク注入口形成用治具である。
【発明の効果】
【0014】
初めてインク補充を行うときはインク注入口が設けられていないため、ドリルでインク注入口を形成する。しかし、ドリルでインク注入口を形成する際、ユーザーによってインク注入口を設ける場所が違うと、不具合が生じる恐れがある。
【0015】
本発明のインク注入口形成用治具によれば、上面部の突起部がインクカートリッジの大気開放口に挿入され、側面部がインクカートリッジの側面を覆うようにインクカートリッジに取り付けられるので、インクカートリッジの所定の位置にインク注入口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の1実施形態におけるインク補充キットの全体図である。
図2】本発明のインク残量情報を初期状態にする方法の説明図である。
図3】本発明のインク注入口を形成する穴開け方法の説明図である。
図4】本発明のインク補充方法の説明図である。
図5】本発明の負圧調整方法の説明図である。
図6】本発明のインク回収方法の説明図である。
図7】本発明のインクボトルと接続チューブの接続部分についての説明図である。
図8】本発明のインク補充方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の1実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこの事例に限られるものではなく、適宜選択が可能である。
【0018】
図1および図4に示すように、本実施形態のインク補充キット1は、インクカートリッジ2のインク残量情報を保存する記憶部に接続し、記憶部に保存されたインク残量情報を初期状態に戻すリセッター7と、インクカートリッジ2にインク3を注入するためのインク注入口4を形成するドリル8と、インク注入口4を塞ぐインク注入口栓9と、インクカートリッジ2の大気開放口5を塞ぐ空気口栓10と、インク3を収容したインクボトル11と、インクボトル11内部を吸引する吸引器13と、インクボトル11からインクカートリッジ2へのインク3の通路となる接続チューブ14と、を備え、接続チューブ14は、一端にはインクボトル11の開口部12と接続するボトル接続部15を、他端にはインクカートリッジ2のインク注入口4と接続する注入ノズル16を備え、吸引器13は、ボトル接続部15を介してインクボトル11内のインク3を吸引し、吸引されたインク3はインクボトル11から接続チューブ14を介してインクカートリッジ2へ移動される構成となっている。
【0019】
図2図3に示すように、リセッター7は、リセッター本体70と、ガイド71(大ガイド711または小ガイド712)とからなり、リセッター本体70にはメス側コネクタ74が形成され、図示しないPCに接続されたUSBケーブル73のオス側コネクタ75がメス側コネクタ74に接続可能であり、オス側コネクタ75とメス側コネクタ74とを接続することでリセッター7に電力が供給され、リセッター7を使用できる状態になる。そして、インクカートリッジ2をガイド71に沿わせながら、インクカートリッジ2に備えられインク残量情報を保存するICチップ20の端子にリセッター7のピン76を押し当てると、リセッター7のインジケータ77が、“赤点滅”から“緑点灯”に変化する。
この状態になるとICチップ20に保存されたインク残量情報が初期状態に戻るため、インクカートリッジ2にインク3を充填すればインクカートリッジ2を使用することができる。
【0020】
また、図1に示すように、ガイド71を大ガイド711と小ガイド712とで切り替えることで、インクカートリッジ2の機種違いによる形状の違いに対応することができる。本実施例では大小2種類のガイドを使用したが、対応機種の形状の数に応じてガイドの数を変更しても良い。
【0021】
図3に示すように、ドリル8は、インクカートリッジ2の外面に穴を開けてインク注入口4を形成するためのものである。ドリル8でインク注入口4を形成する際、ユーザーによってインク注入口4の場所が違うと、不具合が生じる恐れがあるため、治具17を用いてインク注入口4を形成することが望ましい。
【0022】
また、図1図3に示すように、治具17は、上面部及び側面部からなる略L字形状であり、上面部には突起部171及び穴開け窓部172が設けられている。治具17は、上面部の突起部171がインクカートリッジ2の大気開放口5に挿入されることで、側面部がインクカートリッジ2の側面を覆うようにインクカートリッジ2に取り付けられる。この状態で、穴開け窓部172を通してドリル8でインクカートリッジ2の外面に穴を開けて、インク注入口4を形成する。
【0023】
図4に示すように、接続チューブ14は、弾性を備えたチューブ141の一端にインクボトル11と接続するボトル接続部15が、他端にインクカートリッジ2と接続する注入ノズル16が備えられた構成になっている。
【0024】
また、図7に示すように、ボトル接続部15は、インク3の補充が完了するまでは常に下部がインクボトル11と接続され、インクボトル11内を吸引する時、もしくは吸引器13内に残留したインク3をインクボトル11内へ戻す時には、ボトル接続部15の上部に設けた挿入口150が吸引器13と接続される。ボトル接続部15の下部には2つの挿入部151,152が設けられ、一方の挿入部151の内部は挿入口150に、他方の挿入部152の内部はチューブ141に繋がっている。
【0025】
図1図7に示すように、インクボトル11は、インク3が収容されたインクボトル本体111と、インクボトル本体111の開口部12を閉じるためのキャップ112とからなり、開口部12には、ボトル接続部15の下部に設けられた2つの挿入部151,152に対応する2つの穴部121,122を備えており、この2つの穴部121,122に2つの挿入部151,152がそれぞれ挿入される様に、ボトル接続部15と開口部12を接続する。
【0026】
ここで、図1図8を参照して、これまで説明したようなインク補充キット1を用いたインクカートリッジ2にインク3を補充する方法についてまとめて説明する。なお、図1に示すインク補充キット1を用いてインク3を補充するものとして説明するが、本発明に含まれるものであれば他のインク補充キットを用いてもよい。
【0027】
図8は、インクカートリッジ2にインク3を補充する方法を示すフローチャートである。先ず、インクカートリッジ2内のインク3の残量を示すインク残量情報を保存するICチップ20の端子にリセッター7のピン76を押し当て、保存されたインク残量情報を初期状態に戻す(ステップS10)。この工程はインク補充とは独立して行えるため、どのタイミングでも行えるが、ICチップ20が破損している場合インク残量情報を初期状態に戻すことができないため、インク3補充後にインクカートリッジ2を図示しないプリンターにセットしてもインク切れと認識して印刷できないので、補充したインク3が無駄になる。
【0028】
次に、インクカートリッジ2にインク注入口4が設けられていないか確認する(ステップS20)。初めてインク補充を行うときはインク注入口4が設けられていないため、ドリル8及び治具17を用いてインクカートリッジ2の所定の位置にインク注入口4を形成する(ステップS30)。また、2回目以降のインク補充時にはインク注入口4が設けられているため、インク注入口4に挿入されたインク注入口栓9を取り外す(ステップS40)。
【0029】
そして、インク注入口4が上向きとなる状態でインクカートリッジ2を置き、大気開放口5に空気口栓10を挿入し(ステップS50)、インクボトル11の開口部12と接続チューブ14のボトル接続部15とを接続し、インクカートリッジ2のインク注入口4と接続チューブ14の注入ノズル16とを接続することで、インクボトル11とインクカートリッジ2とが接続チューブ14で接続される(ステップS60)。この状態で、吸引器13をボトル接続部15上部の挿入口150に挿入し、吸引器13のピストン132を引き上げることでインクボトル11内を吸引し、インクボトル11内からボトル接続部15へ引き上げられたインク3が接続チューブ14を通って注入ノズル16からインクカートリッジ2へインク3が移動し補充される。インク3補充後は、吸引器13をボトル接続部15から抜き取る(Sステップ70)。
【0030】
ここで、インク3が補充されたため、インクカートリッジ2内の負圧はインク補充前と比較して変化している。そのため、図5のように、インクカートリッジ2のインク吐出口6が側方の上部となるようにインクカートリッジ2を縦向きに置き、吸引器13をインク吐出口6に横向きに挿入し、吸引器13のピストン132を引くことでインクカートリッジ2内を吸引しインクカートリッジ2内の負圧を調整する。なお、吸引器13は、インクカートリッジ2内から吸引器13内にインク3が出て来るまでピストン132を引き、インク3が出た時のピストン132の位置のままインク3と気泡が止まるまで保持をすることで負圧が調整される。負圧が調整されインク3と気泡が出なくなるとピストン132も戻らなくなるので、ピストン132の位置をそのままにしてインク吐出口6から取り外す(ステップ80)。
【0031】
この際、吸引器13内にはインク3が入っているため、インクボトル11内にインク3を回収することが望ましい。図6のように、ピストン132を前述の位置のままにした状態で吸引器13をボトル接続部15上部の挿入口150に挿入し、ピストン132をさらに2〜3cm程度引き上げてから手を離すと、ピストン132が下がって吸引器13内のインク3がインクボトル11内へ回収される。まだ吸引器13内にインク3が残っている場合、このピストン132を引き上げてから手を離す作業をさらに数回繰り返すことで、吸引器13内の残りのインク3をインクボトル11内へ回収することができる(ステップS90)。インク3回収後は、吸引器13をボトル接続部から取り外し、吸引器13をピストン132が奥まで押し込まれた状態に戻す。なお、吸引器13に付着したインク3は乾燥して固まる恐れがあるので、水で洗浄することが望ましい。
【0032】
次に、インクカートリッジ2を縦向きのままにした状態で大気開放口5から空気口栓10を取り外し(ステップS100)、インクカートリッジ2内の余分なインク3(その時のインクカートリッジ2の負圧では漏れ出てしまう量のインク3)をインクボトル11内に回収する。詳細には、接続チューブ14が折れ曲がったり外れたりしないようにインクカートリッジ2を出来るだけ高い位置に持ち上げ、インク注入口4を下向きにして保持することでインク3がインクボトル11内に回収される(ステップS110)。インク3回収後、インクカートリッジ2をインク注入口4が上向きになるように置き、注入ノズル16をインク注入口4から取り外し(ステップS120)、ボトル接続部15上部の挿入口150に挿入することで、注入ノズル16がインクボトル11の蓋になる。なお、次回のインク補充まで長期間インクボトル11を保管する場合は、接続チューブ14をインクボトル11の開口部12から取り外し、開口部12にキャップ112を接続し、接続チューブ14を水で洗浄することが望ましい。
【0033】
最後に、インク注入口4にインク注入口栓9を挿入して、インク注入口4からインク3が漏れないように密閉する(ステップS130)。以上でインク補充作業は完了し、プリンターにインクカートリッジ2をセットし使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…インク補充キット
2…インクカートリッジ
3…インク
4…インク注入口
5…大気開放口
6…インク吐出口
7…リセッター
8…ドリル
9…インク注入口栓
10…空気口栓
11…インクボトル
12…開口部
13…吸引器
14…接続チューブ
15…ボトル接続部
16…注入ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8