【文献】
斎藤則夫,医療用放射線における線量標準の進化,放計協ニュース,日本,公益財団法人 放射線計測協会,2013年 4月15日,No.51,2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の放射線測定装置では、放射線測定装置を製造する際に、検出器に改良を加える複雑さとコストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡便でコストの低い放射線量率データ評価装置、放射線量率データ評価方法および放射線量率データ評価プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の放射線量率データ評価装置は、時系列の放射線量率データに基づいて、第1統計量および前記第1統計量とは異なる第2統計量を算出する統計量算出部と、前記第1統計量および前記第2統計量から統計誤差を算出する統計誤差算出部と、前記統計誤差と予め設定される設定値との大小を比較する統計誤差比較部と、前記統計誤差比較部の比較結果に基づいて、前記第1統計量を出力するか否かを判定する判定部と、
放射性物質を含む物質が封入される容器を表す個体情報を読み込む撮像部と、前記判定部が、前記第1統計量を出力すると判定したとき、当該判定に対応する前記第1統計量と前記個体情報とを外部に対して出力する通信部と、を備える。
【0007】
また、本発明の放射線量率データ評価装置において、前記判定部は、前記統計誤差が前記設定値以下の場合、前記第1統計量を出力すると判定し、前記統計誤差が前記設定値より大きい場合、前記第1統計量を出力しないと判定する。
【0008】
また、本発明の放射線量率データ評価装置において、前記判定部が、前記第1統計量を出力しないと判定したとき、前記統計量算出部は、入力された時系列の放射線量率データの次に入力される1つの新たな放射線量率データを含む時系列の放射線量率データに基づいて、新たな第1統計量および第2統計量を算出し、前記統計誤差算出部は、前記新たな第1統計量および第2統計量から統計誤差を算出し、前記統計誤差比較部は、前記新たな第1統計量および第2統計量から算出された統計誤差と予め設定される設定値との大小を比較する。
【0010】
また、本発明の放射線量率データ評価装置において、前記第1統計量は前記時系列の放射線量率データの平均値であり、前記第2統計量は前記時系列の放射線量率データの標準偏差であり、前記統計誤差は、前記標準偏差を前記平均値で除算した相対誤差である。
【0011】
また、本発明の放射線量率データ評価方法は、統計量算出部が、時系列の放射線量率データに基づいて、第1統計量および第2統計量を算出する統計量算出工程と、統計誤差算出部が、前記第1統計量および前記第2統計量から統計誤差を算出する統計誤差算出工程と、統計誤差比較部が、前記統計誤差と予め設定される設定値との間の大小を比較する統計誤差比較工程と、判定部が、前記統計誤差比較部の比較結果に基づいて、前記第1統計量を出力するか否かを判定する判定工程と、
撮像部が、放射性物質を含む物質が封入される容器を表す個体情報を読み込む撮像工程と、通信部が、前記判定部によって前記第1統計量を出力すると判定されたとき、当該判定に対応する前記第1統計量と前記個体情報とを外部に対して出力する通信工程と、を備える。
【0012】
また、本発明の放射線量率データ評価プログラムは、コンピュータに、時系列の放射線量率データに基づいて、第1統計量および第2統計量を算出する統計量算出処理と、前記第1統計量および前記第2統計量から統計誤差を算出する統計誤差算出処理と、前記統計誤差と予め設定される設定値との間の大小を比較する統計誤差比較処理と、前記統計誤差比較処理の比較結果に基づいて、前記第1統計量を出力するか否かを判定する判定処理と、
放射性物質を含む物質が封入される容器を表す個体情報を読み込む撮像処理と、前記判定処理によって前記第1統計量を出力すると判定されたとき、当該判定に対応する前記第1統計量と前記個体情報とを外部に対して出力する通信処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、統計量算出部は、時系列の放射線量率データに基づいて、第1統計量(平均値)および第2統計量(標準偏差)を算出し、統計誤差算出部は、第1統計量および第2統計量から統計誤差(相対誤差)を算出する。統計誤差比較部は、統計誤差と予め設定される設定値との大小を比較する。判定部は、統計誤差比較部の比較結果に基づいて、第1統計量を出力するか否かを判定する。
【0014】
これにより、既存の検出器の測定値出力をソフトウェア上で処理することも可能となり、検出器にハードウェアによる改良を加える必要がないので、簡便でコストの低い放射線量率データ評価装置、放射線量率データ評価方法および放射線量率データ評価プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態における放射線量率データ評価システムの構成を示す図である。放射線量率データ評価システム100は、フレコン1、NaIシンチレーションサーベイメータ2、ハンディターミナル3、サーバ4を含んで構成される。
フレコン1は、フレキシブルコンテナバッグ(Flexible Containers)であり、粉末や粒状物の荷物を保管或いは運搬するための袋状の包材のことである。本実施形態において、フレコン1は、放射性物質を含む物質が封入される容器として利用されている。また、フレコン1の表面には、フレコン1の個体情報を表すタグ1Tが貼られている。
NaIシンチレーションサーベイメータ2は、フレコン1の表面に設置されることにより、フレコン1の放射線量率を測定する可搬型の放射線量計(既存の検出器)である。また、NaIシンチレーションサーベイメータ2は、データ転送装置付きの構成を持ち、無線で、測定したフレコン1の測定値(放射線量率データ)をハンディターミナル3に対して転送する。
ハンディターミナル3は、片手で持てるハンディサイズのデータ収集端末装置である。本実施形態において、ハンディターミナル3は、NaIシンチレーションサーベイメータ2から転送されてくる放射線量率データを受信し、放射線量率データが表す数値の安定性をソフト的に自動判断(判定)し、放射線量率データの平均値の算出と記録とを自動で行う放射線量率データ評価装置である。
サーバ4は、ハンディターミナル3から送られてくるフレコン1の個体情報と放射線量率データの平均値とを紐付けして登録する。
【0017】
図2は、本実施形態における放射線量率データ評価装置の構成を示すブロック図である。
ハンディターミナル3は、安定状態判定部31と、放射線量率データ入力部32と、撮像部33と、表示部34と、通信部35と、を含んで構成される。
安定状態判定部31は、放射線量率データの測定が安定状態にあるか否かを判断するための装置であって、制御部310と、第1統計量算出部311と、第2統計量算出部312と、統計誤差算出部313と、設定値記憶部314と、統計誤差比較部315と、判定部316と、個体情報取得部317と、を含んで構成される。
制御部310は、
図2において不図示の不揮発性メモリに格納されたプログラムを実行することによって、ハンディターミナル3の全体の動作を制御する。
放射線量率データ入力部32は、ユーザがNaIシンチレーションサーベイメータ2を用いてフレコン1の放射線量率の測定を開始し、NaIシンチレーションサーベイメータ2に内蔵されるデータ転送装置が放射線量率データCを転送してくると、制御部310の指令に基づいて、所定の期間(本実施形態では1秒)毎に放射線量率データCmを読み込む装置である。なお、所定の期間は1秒に限られず、他の秒数であってもよい。また、安定状態判定部31が、放射線量率データ入力部32を含む構成であってもよい。
【0018】
第1統計量算出部311は、制御部310の指令に基づいて、放射線量率データ入力部32に入力された放射線量率データCが放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1のn(nは2以上の整数)個になると、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の平均値Am(第1統計量)を算出する。ここでは、時系列で連続する所定の個数(n個)の放射線量率データから平均値Amを算出するようにしてもよい。
ここで、放射線量率データCmは、放射線量率データ入力部32に入力された放射線量率データCのm(mは1以上の整数)番目のデータを示す。すなわち、放射線量率データ入力部32に入力された(m+n−1)番目の放射線量率データCm+n−1と、放射線量率データ入力部32に入力されたm番目の放射線量率データCmとの、放射線量率データ入力部32に入力された時間間隔は、上記所定の期間×(n−1)である。
なお、本実施形態において、n=5であるとして、以下説明するが、nの値は2以上であれば幾つの値であってもよい。
例えば、放射線量率データC1、C2、C3、C4、C5の順番に放射線量率データ入力部32に入力されると、放射線量率データC1と放射線量率データC5との放射線量率データ入力部32に入力された時間間隔は、上記所定の期間の4倍の4秒となる。また、放射線量率データC5の次に放射線量率データ入力部32に入力される放射線量率データC6は、放射線量率データC5が放射線量率データ入力部32に入力された後、上記所定の期間後に入力される。従って、放射線量率データC2と放射線量率データC6との放射線量率データ入力部32に入力された時間間隔も、上記所定の期間の4倍の4秒となる。
【0019】
すなわち、第1統計量算出部311は、下記式(1)により、放射線量率データC1〜放射線量率データC5の平均値A1を算出する。
A1=(C1+C2+C3+C4+C5)/5…(1)
また、制御部310が、判定部316の結果に基づいて指令を出すことにより、第1統計量算出部311は、5個の時系列の放射線量率データC1、C2、C3、C4、C5の平均値A1を算出した後、新たな放射線量率データC6を含む5個の時系列の放射線量率データC2、C3、C4、C5、C6の平均値A2を算出する。
【0020】
第2統計量算出部312は、制御部310の指令に基づいて、放射線量率データ入力部32に入力された放射線量率データCが放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1のn個になると、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の標準偏差σm(第2統計量)を算出する。ここでは、時系列で連続する所定の個数(n個)の放射線量率データから標準偏差σmを算出するようにしてもよい。
すなわち、第2統計量算出部312は、下記式(2)により、放射線量率データC1〜放射線量率データC5の標準偏差σ1を算出する。なお、以下の式においてX^YとはXのY乗の値を表している。
σ1^2={(C1−A1)^2+(C2−A1)^2+(C3−A1)^2+(C4−A1)^2+(C5−A1)^2}/5…(2)
なお、制御部310が、判定部316の結果に基づいて指令を出すことにより、第2統計量算出部312は、5個の時系列の放射線量率データC1、C2、C3、C4、C5の標準偏差σ1を算出した後、新たな放射線量率データC6を含む5個の時系列の放射線量率データC2、C3、C4、C5、C6の標準偏差σ2を算出する。
【0021】
統計誤差算出部313は、制御部310の指令に基づいて、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の相対誤差em(統計誤差)を、標準偏差σmを平均値Amで除算して算出する。
すなわち、統計誤差算出部313は、下記式(3)により、放射線量率データC1〜放射線量率データC5の相対誤差e1を算出する。
e1=σ1/A1…(3)
【0022】
表示部34は、液晶表示パネルなどによって構成され、制御部310の指令に基づいて、文字情報を表示する装置である。すなわち、制御部310は、表示部34が、第1統計量算出部311が算出した平均値Am(単位μSv/h)と、統計誤差算出部313が算出した相対誤差em×100(単位%)とを表示するように、表示部34を制御する。
【0023】
設定値記憶部314は、n個の時系列の放射線量率データが安定状態にあることを判定できる相対誤差emの上限値が設定値eR(予め設定される設定値)として登録される記憶部である。なお、設定値eRは、本実施形態において、例えば相対誤差1%として登録されるが、もちろん精度などを考慮して他の相対誤差値としてもよい。
また、設定値eRの設定値記憶部314への登録は、制御部310が後述する通信部35を制御して、例えばサーバ4からの無線信号に設定値eRを含め、通信部35が受信した設定値eRを設定値記憶部314への登録を制御する構成としてもよい。或いは、ハンディターミナル3に設けられている
図2では不図示の入力部からユーザが入力する構成としてもよい。また、当該入力部は、ユーザがハンディターミナル3に数字および文字などの入力操作を行なうためのハードウェアキーを含む構成とされていてもよいし、若しくは、表示部34と一体化されたタッチパネルを含むような構成とされていてもよい。
【0024】
統計誤差比較部315は、制御部310の指令に基づいて、統計誤差算出部313が算出する相対誤差emと設定値記憶部314へ予め設定される設定値eRとの大小を比較する。
判定部316は、統計誤差比較部315の比較結果に基づいて、n個の時系列の放射線量率データに基づいて算出された平均値Amを出力するか否かを判定する。すなわち、判定部316は、制御部310の指令に基づいて、相対誤差emが設定値eR以下の場合、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にある放射線量率データであるものとして平均値Amを出力すると判定し、相対誤差emが設定値eRより大きい場合、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にない放射線量率データであるものとして平均値Amを出力しないと判定する。
【0025】
n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にない場合、制御部310は、次の制御を実行する。
すなわち、制御部310は、第1統計量算出部311を制御して、新たな放射線量率データCm+nを含むn個の時系列の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nの平均値Am+1を計算させる。
また、制御部310は、第2統計量算出部312を制御して、新たな放射線量率データCm+nを含むn個の時系列の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nの標準偏差σm+1を計算させる。
また、制御部310は、統計誤差算出部313を制御して、新たな放射線量率データCm+nを含むn個の時系列の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nの相対誤差em+1を算出させる。
また、制御部310は、統計誤差比較部315を制御して、相対誤差em+1と設定値eRとの大小を比較させる。
また、制御部310は、判定部316を制御して、相対誤差em+1が設定値eR以下の場合、n個の時系列の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nが安定状態にある放射線量率データであるものとして平均値Am+1を出力すると判定させ、相対誤差em+1が設定値eRより大きい場合、n個の時系列の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nが安定状態にない放射線量率データであるものとして平均値Am+1を出力しないと判定させる。
【0026】
このように、n個の時系列の放射線量率データが安定状態にない場合、制御部310は、第1統計量算出部311、第2統計量算出部312、統計誤差算出部313、統計誤差比較部315、判定部316の制御を繰り返し実行する。なお、制御部310の繰り返し実行する制御によっても、n個の時系列の放射線量率データが安定状態にない場合、制御部310は繰り返した実行回数をカウントしておく。そして、制御部310は、この実行回数が所定の実行回数を超えた場合、表示部34に「実行回数が所定の実行回数を超えた」ことを表示させ、ユーザに評価が旨く進んでいないことを了知させる構成としてもよい。或いは、制御部310は、実行回数が所定の実行回数を超えた場合、統計誤差比較部315に入力される設定値eRを所定の設定量だけ増加させ、n個の時系列の放射線量率データが安定状態にある放射線量率データであると判定部316に判定させる構成としてもよい。
【0027】
撮像部33は、制御部310の指令に基づいて、フレコン1の表面に貼られているタグ1Tを撮像する装置である。
個体情報取得部317は、制御部310によって撮像部33が撮像したフレコン1のタグ1Tから読み込んだタグ情報を、フレコン1の個体情報として記憶する。
通信部35は、制御部310の指令に基づいて、不図示のアンテナを介してサーバ4との間でデータ信号の無線通信を実行する装置である。
データ信号には、判定部316が、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にある放射線量率データであるものとして平均値Amを出力すると判定したときの放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の平均値Amと、フレコン1の個体情報とを紐付けしたデータが含まれる。
【0028】
図3は、放射線量率データ評価システムの制御方法を示すフローチャートである。
本制御フローは、例えば、フレコン1を取り換える度に実行される。
ハンディターミナル3は、設定値の登録を実行する(ステップST1)。具体的には、設定値記憶部314には、n個の時系列の放射線量率データが安定状態にあるものとして平均値Amを出力することを判定できる設定値eRが登録される。
ハンディターミナル3は、個体情報の認識を実行する(ステップST2)。具体的には、個体情報取得部317は、制御部310によって撮像部33が撮像したフレコン1のタグ1Tから読み込んだタグ情報を、フレコン1の個体情報として記憶する。
NaIシンチレーションサーベイメータ2は、線量率測定の開始、データ転送を実行する(ステップST3)。具体的には、ユーザがNaIシンチレーションサーベイメータ2を用いてフレコン1の放射線量率の測定を開始し、NaIシンチレーションサーベイメータ2に内蔵されるデータ転送装置が放射線量率データCを転送してくる。
【0029】
ハンディターミナル3は、線量率データの読み込みを実行する(ステップST4)。具体的には、放射線量率データ入力部32は、制御部310の指令に基づいて、所定の期間毎に放射線量率データCmを読み込む。
ハンディターミナル3は、平均値の算出を実行する(ステップST5)。具体的には、第1統計量算出部311は、制御部310の指令に基づいて、放射線量率データ入力部32に入力された放射線量率データCが放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1のn個になると、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の平均値Amを算出する。
ハンディターミナル3は、標準偏差の算出を実行する(ステップST6)。具体的には、第2統計量算出部312は、制御部310の指令に基づいて、放射線量率データ入力部32に入力された放射線量率データCが放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1のn個になると、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の標準偏差σmを算出する。
ハンディターミナル3は、相対誤差emの算出を実行する(ステップST7)。具体的には、統計誤差算出部313は、制御部310の指令に基づいて、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の相対誤差emを算出する。
【0030】
ハンディターミナル3は、相対誤差emと設定値eRとの大小の比較を実行する(ステップST8)。具体的には、統計誤差比較部315は、制御部310の指令に基づいて、相対誤差emと設定値eRとの大小を比較する。
ハンディターミナル3は、相対誤差em≦設定値eRの場合(ステップST8−Yes)、ステップST9に進む。ハンディターミナル3は、安定状態にあると判定する(ステップST9)。具体的には、判定部316は、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にある放射線量率データであるものとして平均値Amを出力すると判定する。
そして、通信部35は、制御部310の指令に基づいて、判定部316が、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にある放射線量率データであるものとして平均値Amを出力すると判定したときの放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1の平均値Am(当該判定に対応する第1統計量)と、フレコン1の個体情報とを紐付けしたデータを、ハンディターミナル3の外部であるサーバ4に対して送信する。
【0031】
一方、ハンディターミナル3は、相対誤差em>設定値eRの場合(ステップST8−No)、ステップST10に進む。ハンディターミナル3は、安定状態にないと判定する(ステップST10)。具体的には、判定部316は、n個の時系列の放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にない放射線量率データであるものとして平均値Amを出力しないと判定する。
そして、制御部310は、第1統計量算出部311、第2統計量算出部312、統計誤差算出部313を制御して、新たな放射線量率データCm+nを含むn個の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nの平均値Am+1、標準偏差σm+1、相対誤差em+1を計算させる(ステップST5、ST6、ST7)。また、制御部310は、統計誤差比較部315を制御して、相対誤差em+1と設定値eRとの大小を比較させる(ステップST8)。
このようにして、制御部310は、判定部316を制御して、相対誤差em+1が設定値eR以下の場合、n個の時系列の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nが安定状態にある放射線量率データであるものとして平均値Am+1を出力すると判定させ(ステップST9)、相対誤差em+1が設定値eRより大きい場合、n個の時系列の放射線量率データCm+1〜放射線量率データCm+nが安定状態にない放射線量率データであるものとして平均値Am+1を出力しないと判定させる(ステップST10)。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のハンディターミナル3(放射線量率データ評価装置)は、第1統計量算出部311および第2統計量算出部312(統計量算出部)と、統計誤差算出部313(統計誤差算出部)と、統計誤差比較部315(統計誤差比較部)と、判定部316(判定部)と、を備える。
第1統計量算出部311および第2統計量算出部312は、放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1(n個の時系列の放射線量率データ)に基づいて、平均値Am(第1統計量)および標準偏差σm(第1統計量とは異なる第2統計量)を算出する。
統計誤差算出部313は、平均値Amおよび標準偏差σmから相対誤差em(統計誤差)を算出する。
統計誤差比較部315は、相対誤差emと予め設定される設定値eRとの大小を比較する。
判定部316は、統計誤差比較部315の比較結果に基づいて、放射線量率データCm〜放射線量率データCm+n−1が安定状態にあるものとして平均値Amを出力するか否かを判定する。
【0033】
これにより、本発明によれば、測定者(ユーザ)に依存しない一定の判断基準で安定状態をソフトウェアによって自動判断できる。また、無用な待機時間を削減することで、安定状態までの時間を短縮することができる。さらに、平均値の算出と記録の自動化により、測定と記録の迅速性と正確性が向上する。このように、本発明によれば、既存の検出器を用いることが可能であり、従来の放射線測定装置では、放射線測定装置を製造する際に、検出器に改良を加える複雑さとコストが高くなるという問題があったが、既存の検出器の測定値出力をソフトウェア上で処理することも可能となり、検出器にハードウェアによる改良を加える必要がないので、簡便でコストの低い放射線量率データ評価装置、放射線量率データ評価方法および放射線量率データ評価プログラムを提供することができる。
【0034】
上述した実施形態における安定状態判定部31をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フロッピーディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0035】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。