(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1において、PINダイオードは、高周波入力部と高周波出力部とを繋ぐ電源ライン上に接続されており、PINダイオードのオン状態とオフ状態との切り替えは、高周波電流が流れている状態で行われている。このような通電状態でのスイッチングは「ホットスイッチング」と呼ばれている。特に、上記特許文献1のように、高周波電流が流れている状態でのホットスイッチングにおいて、PINダイオードのオン状態からオフ状態への切り替え時間が長い(スイッチングスピードが遅い)、すなわち、PINダイオードのキャリアの遷移時間が長いと、電力損失が大きくなる。この電力損失により、例えば、PINダイオードの発熱量が大きくなり、PINダイオードの信頼性が低下するという問題があった。そのため、PINダイオードをオン状態からオフ状態に切り替える時には、より短い遷移時間で行う必要があった。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献2に開示された駆動回路は、ブートストラップ回路やクランプネットワークなどを備え、スイッチングスピードを調整している。しかし、ブートストラップ回路やクランプネットワークなどを用いているため、回路構成や制御が複雑になってしまっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて創作されたものであり、その目的は、簡易な回路構成により、ホットスイッチングによるPINダイオードの信頼性の低下を抑制することができる駆動回路、および、当該駆動回路を用いたインピーダンス整合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される駆動回路は、PINダイオードのオン状態とオフ状態とを切り替える駆動回路であって、一方がオン状態のときに他方がオフ状態となる、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子と、直流電圧を発生させる駆動電源と、前記PINダイオードの順方向電流を調整する電流制限抵抗と、を備え、前記第1のスイッチング素子がオン状態であり、かつ、前記第2のスイッチング素子がオフ状態のとき、前記駆動電源から、前記電流制限抵抗を介して、前記PINダイオードに順方向電圧を印加することで、前記PINダイオードをオン状態にし、前記第1のスイッチング素子がオフ状態であり、かつ、前記第2のスイッチング素子がオン状態のとき、前記駆動電源から、前記電流制限抵抗を介さず、前記PINダイオードに逆方向電圧を印加することで、前記PINダイオードをオフ状態にすることを特徴とする。この構成によれば、PINダイオードをオン状態からオフ状態に切り替えるときに、前記電流制限抵抗を介さず、前記PINダイオードに逆方向電圧が印加されるため、短い遷移時間でPINダイオードをオフ状態に切り替えることができる。これにより、PINダイオードの発熱量を抑制できる。したがって、ホットスイッチングによるPINダイオードの信頼性の低下を抑制することができる。
【0008】
前記駆動回路の好ましい実施の形態において、前記第2のスイッチング素子のオン抵抗は、0.1Ω以下である。この構成によれば、PINダイオードをオン状態からオフ状態にしたときの電流経路における抵抗値が低くなるため、PINダイオードのオン状態からオフ状態への遷移時間をより短くすることができる。
【0009】
前記駆動回路の好ましい実施の形態において、前記順方向電圧によって生じる、前記PINダイオードの順方向電流は、前記第1のスイッチング素子のオン抵抗と前記電流制限抵抗によって決定され、前記電流制限抵抗の抵抗値は、前記PINダイオードの順方向電流が所定の電流値となるように、前記第1のスイッチング素子のオン抵抗に基づき、決定されている。この構成によれば、順方向電流が所定の電流値(例えば、1A以上)になるようにすることで、PINダイオードのキャリア寿命より十分短い遷移時間で、PINダイオードをオフ状態からオン状態へ切り替えることができる。
【0010】
前記駆動回路の好ましい実施の形態において、前記駆動電源の正極側の出力端子から負極側の出力端子に向かって順に、前記第1のスイッチング素子、前記電流制限抵抗、前記第2のスイッチング素子が、直列に接続されており、前記PINダイオードは、アノード端子が前記電流制限抵抗と前記第2のスイッチング素子との接続点に接続され、カソード端子が接地されている。この構成によれば、第1のスイッチング素子がオン状態であり、かつ、第2のスイッチング素子がオフ状態のときに、電流制限抵抗を介して、PINダイオードに順方向電圧を印加し、一方、第1のスイッチング素子がオフ状態であり、かつ、第2のスイッチング素子がオン状態のときに、電流制限抵抗を介さずに、PINダイオードに逆方向電圧を印加することができる。したがって、PINダイオードをオン状態からオフ状態にしたときの電流経路において、電流制限抵抗を介さないようにすることができる。
【0011】
前記駆動回路の好ましい他の実施の形態において、前記駆動電源の正極側の出力端子から負極側の出力端子に向かって順に、前記電流制限抵抗、前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子が、直列に接続されており、前記PINダイオードは、アノード端子が前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点に接続され、カソード端子が接地されている。この構成によっても、PINダイオードをオン状態からオフ状態にしたときの電流経路において、電流制限抵抗を介さないようにすることができる。
【0012】
前記駆動回路の好ましい他の実施の形態において、前記駆動電源の正極側の出力端子から負極側の出力端子に向かって順に、前記第2のスイッチング素子、前記電流制限抵抗、前記第1のスイッチング素子が、直列に接続されており、前記PINダイオードは、アノード端子が接地され、カソード端子が前記電流制限抵抗と前記第2のスイッチング素子との接続点に接続されている。この構成によっても、PINダイオードをオン状態からオフ状態にしたときの電流経路において、電流制限抵抗を介さないようにすることができる。
【0013】
前記駆動回路の好ましい他の実施の形態において、前記駆動電源の正極側の出力端子から負極側の出力端子に向かって順に、前記第2のスイッチング素子、前記第1のスイッチング素子、前記電流制限抵抗が、直列に接続されており、前記PINダイオードは、アノード端子が接地され、カソード端子が前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点に接続されている。この構成によっても、PINダイオードをオン状態からオフ状態にしたときの電流経路において、電流制限抵抗を介さないようにすることができる。
【0014】
前記駆動回路の好ましい実施の形態において、前記接続点と前記PINダイオードとの間にフィルタ回路を、さらに備えている。この構成によれば、フィルタ回路によって、高周波電力が第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子に入力されることが抑制されるので、これらの損壊を抑制することができる。
【0015】
前記駆動回路の好ましい実施の形態において、前記電流制限抵抗に対して並列に接続されたスピードアップコンデンサを、さらに備えている。この構成によれば、第1のスイッチング素子をオン状態に第2のスイッチング素子をオフ状態に切り替えたときに、当該スピードアップコンデンサを介する電流経路が導通する。したがって、大電流によりPINダイオードをオン状態に切り替えることができるため、短い遷移時間でPINダイオードをオン状態に切り替えることができる。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供されるインピーダンス整合装置は、電源ラインによって接続された高周波電源と負荷との間に配置され、インピーダンスを整合させるためのインピーダンス整合装置であって、互いに並列に接続され、それぞれ一端が前記電源ラインに接続された、複数のインピーダンス調整用コンデンサと、前記複数のインピーダンス調整用コンデンサ毎に、それぞれ一つずつ直列に接続された、複数の前記PINダイオードと、前記PINダイオード毎に、それぞれ一つずつ接続された、複数の、第1の側面によって提供される駆動回路と、前記高周波電源の出力端から前記負荷側を見た負荷側インピーダンスを検出する検出手段と、前記負荷側インピーダンスに基づき、前記複数の駆動回路毎に、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替えを指示する駆動信号を入力する制御回路と、を備えている。この構成によれば、PINダイオードのオン状態とオフ状態の切り替えによって、オン状態であるPINダイオードに接続されたインピーダンス調整用コンデンサが有効となるため、インピーダンス整合装置のキャパシタンスを変更することが可能となる。これにより、負荷側インピーダンスを調整し、インピーダンス整合を行うことができる。また、PINダイオードのオン状態からオフ状態への切り替わりの遷移時間が短いため、インピーダンス整合の速度が向上する。したがって、高周波電源から負荷に効率よく高周波電力を供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、PINダイオードをオン状態からオフ状態に切り替えるときに、前記電流制限抵抗を介さず、前記PINダイオードに逆方向電圧を印加するようにした。これにより、簡易な構成により、短い遷移時間でPINダイオードをオン状態からオフ状態に切り替えることができる。したがって、ホットスイッチングによるPINダイオードの信頼性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0020】
図1は、第1実施形態に係るPINダイオードDの駆動回路A1の回路構成を示している。駆動回路A1は、図示しない駆動電源を入力とし、出力端子OUTを介して、PINダイオードDに順方向バイアスあるいは逆方向バイアスを与える。PINダイオードDのアノード端子は、駆動回路A1の出力端子OUTに接続され、かつ、高周波電流が流れる電源ラインLに接続されている。PINダイオードDのカソード端子は、接地されている。また、駆動電源は、直流電圧源であり、正極側の出力端子V+と、負極側の出力端子V−とを有している。正極側の出力端子V+は、後述するスイッチング素子SHがオン状態、かつ、後述するスイッチング素子SLがオフ状態になったときに、PINダイオードDのアノード端子に順方向電圧降下(順方向電流を流すために必要な電圧)を印加してPINダイオードDをオン状態にするためのものである。また、負極側の出力端子V−は、スイッチング素子SLがオン状態、かつ、スイッチング素子SHがオフ状態になったときに、PINダイオードDのアノード端子に負電圧(降伏電圧に至らない範囲の電圧)を印加してPINダイオードDをオフ状態にするためのものである。
【0021】
駆動回路A1は、出力端子OUTを介して、PINダイオードDに順方向電圧を印加することで、PINダイオードDを導通状態(オン状態)にし、PINダイオードDに逆方向電圧を印加することで、PINダイオードDを開放状態(オフ状態)にする。
【0022】
図1に示すように、駆動回路A1は、2つのスイッチング素子SH,SL、電流制限抵抗R、スピードアップコンデンサSC、および、フィルタ回路Fを備えている。
【0023】
スイッチング素子SH,SLは、半導体を材料とする回路素子であり、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)などである。本実施形態においては、スイッチング素子SH,SLとして、Nチャネル型のMOSFETを用いた場合を例に説明するが、これに限定されない。
【0024】
スイッチング素子SH,SLは、ゲート端子に図示しない制御回路から駆動信号が入力され、当該駆動信号に応じて、オン状態とオフ状態とが切り替わる。スイッチング素子SH,SLは、当該駆動信号により、一方がオン状態のとき他方がオフ状態となるように制御されている。例えば、制御回路は、互いにハイレベルとローレベルとが反転した2つの電圧信号を生成し、一方の電圧信号を駆動信号S1としてスイッチング素子SHに入力し、他方の電圧信号を駆動信号/S1としてスイッチング素子SLに入力する。駆動信号S1(/S1)がハイレベルの電圧信号である場合、スイッチング素子SH(SL)はオン状態となり、駆動信号S1(/S1)がローレベルの電圧信号である場合、スイッチング素子SH(SL)はオフ状態となる。これにより、スイッチング素子SHとスイッチング素子SLとは、互いにオン状態とオフ状態とが逆になる。なお、本実施形態においては、スイッチング素子SHが特許請求の範囲に記載の「第1のスイッチング素子」に相当し、スイッチング素子SLが特許請求の範囲に記載の「第2のスイッチング素子」に相当する。
【0025】
駆動回路A1において、スイッチング素子SH,SLは、電流制限抵抗Rを介して、直列に接続されている。スイッチング素子SHは駆動電源の正極側に接続され、スイッチング素子SLは駆動電源の負極側に接続されている。したがって、駆動回路A1においては、駆動電源の正極側の出力端子V+から負極側の出力端子V−に向かって、スイッチング素子SH(第1のスイッチング素子)、電流制限抵抗R、スイッチング素子SL(第2のスイッチング素子)の順に、これらが直列に接続されている。具体的には、スイッチング素子SHのドレイン端子は駆動電源の正極側の出力端子V+に接続され、スイッチング素子SHのソース端子は電流制限抵抗Rの一端に接続されている。また、スイッチング素子SLのドレイン端子は電流制限抵抗Rの他端に接続され、スイッチング素子SLのソース端子は駆動電源の負極側の出力端子V−に接続されている。そして、スイッチング素子SH,SLのゲート端子は、制御回路に接続されている。
【0026】
また、電流制限抵抗Rには、スピードアップコンデンサSCが並列に接続されている。そして、電流制限抵抗Rとスイッチング素子SLとの接続点aは、フィルタ回路Fを介して、出力端子OUTに接続されている。フィルタ回路Fは、例えば、L型に接続されたコンデンサFcとインダクタFlとにより構成される。具体的には、インダクタFlの一端とコンデンサFcの一端とが接続点aに接続されている。インダクタFlの他端は、出力端子OUTに接続され、コンデンサFcの他端は接地されている。なお、フィルタ回路Fの構成は、これに限定されない。なお、フィルタ回路Fを備えていなくてもよいが、フィルタ回路Fを備えた場合、RF入力端子およびRF出力端子を流れる高周波電力が駆動回路A1に入力されることを抑制し、スイッチング素子SH,SLの損壊を抑制することができる。
【0027】
以上のように構成された駆動回路A1が、PINダイオードDのオン状態とオフ状態とを切り替えるときの動作について説明する。
【0028】
まず、PINダイオードDをオフ状態からオン状態に切り替えるときの動作について説明する。
【0029】
PINダイオードDがオフ状態のとき、すなわち、スイッチング素子SHがオフ状態であり、かつ、スイッチング素子SLがオン状態であるときに、スイッチング素子SHをオン状態に、スイッチング素子SLをオフ状態に切り替えると、駆動電源の正極側の出力端子V+から、スイッチング素子SH、電流制限抵抗RあるいはスピードアップコンデンサSC、および、フィルタ回路Fを介して、PINダイオードDのアノード端子への電流経路が導通する。これにより、PINダイオードDには順方向電圧が印加され、PINダイオードDがオン状態となる。このとき、スイッチング素子SHをオフ状態からオン状態に、スイッチング素子SLをオン状態からオフ状態に切り替えた瞬間は、スピードアップコンデンサSCを通る電流経路を通って、PINダイオードDに大きな順方向電流が流れる。また、スピードアップコンデンサSCの充電が完了すると、電流制限抵抗Rを通る電流経路を通って、PINダイオードDに順方向電流が流れる。当該順方向電流は、電流制限抵抗Rとスイッチング素子SHのオン抵抗により決定される。ここで、順方向電流が所定の電流値(例えば、1A以上)となるように電流制限抵抗Rを設定しておくことで、十分な順方向電流をPINダイオードDに供給することができる。これにより、PINダイオードDをオフ状態からオン状態に切り替えるときに、PINダイオードDのキャリア寿命より十分に短い遷移時間での切り替えが可能となる。
【0030】
次に、PINダイオードDをオン状態からオフ状態に切り替えるときの動作について説明する。
【0031】
PINダイオードDがオン状態のとき、すなわち、スイッチング素子SHがオン状態であり、かつ、スイッチング素子SLがオフ状態であるときに、スイッチング素子SHをオフ状態に、スイッチング素子SLをオン状態に切り替えると、駆動電源の負極側の出力端子V−から、スイッチング素子SL、および、フィルタ回路Fを介して、PINダイオードDのアノード端子への電流経路が導通する。これにより、PINダイオードDには逆方向電圧が印加され、PINダイオードDがオフ状態となる。このとき、スイッチング素子SHをオン状態からオフ状態に、スイッチング素子SLをオフ状態からオン状態に切り替えたときは、電流制限抵抗RあるいはスピードアップコンデンサSCを介さず、スイッチング素子SLに電流が流れる。したがって、PINダイオードDがオン状態からオフ状態に切り替わるときの遷移時間を、スイッチング素子SLのオン抵抗により決定されるため、電流制限抵抗Rがある場合と比べて、より短くすることができる。例えば、オン抵抗が小さい(例えば、0.1Ω以下の)スイッチング素子SLを用いると、遷移時間を短くすることができる。
【0032】
以上で説明したように、第1実施形態に係る駆動回路A1によれば、簡易な回路構成により、短い遷移時間でPINダイオードDをオン状態からオフ状態に切り替えることができる。したがって、PINダイオードDの発熱などのロスを抑制し、ホットスイッチングによるPINダイオードDの信頼性の低下を抑制することができる。
【0033】
図2は、第2実施形態に係るPINダイオードDの駆動回路A2を示している。なお、上記駆動回路A1と同一あるいは類似の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。同図に示すように、第2実施形態の駆動回路A2は、第1実施形態に係る駆動回路A1と比較し、電流制限抵抗Rの接続位置が異なっている。
【0034】
駆動回路A2において、電流制限抵抗Rは、スイッチング素子SHと駆動電源の正極側の出力端子V+との間に接続されており、スイッチング素子SHとスイッチング素子SLとが直接接続されている。したがって、駆動回路A2においては、駆動電源の正極側の出力端子V+から負極側の出力端子V−に向かって、電流制限抵抗R、スイッチング素子SH、スイッチング素子SLの順に、これらが直列に接続されている。具体的には、駆動電源の正極側の出力端子V+と電流制限抵抗Rの一端とが接続され、電流制限抵抗Rの他端とスイッチング素子SHのドレイン端子とが接続されている。また、スイッチング素子SHのソース端子とスイッチング素子SLのドレイン端子とが接続され、スイッチング素子SLのソース端子と駆動電源の負極側の出力端子V−に接続されている。スイッチング素子SHとスイッチング素子SLとの接続点bは、フィルタ回路Fを介して、出力端子OUTに接続されている。なお、本実施形態においても、スイッチング素子SHが特許請求の範囲に記載の「第1のスイッチング素子」に相当し、スイッチング素子SLが特許請求の範囲に記載の「第2のスイッチング素子」に相当する。
【0035】
このように構成された駆動回路A2においても、上記第1実施形態に係る駆動回路A1と同様の動作となるので、同様の効果を奏することができる。
【0036】
図3は、第3実施形態に係るPINダイオードDの駆動回路A3を示している。なお、上記駆動回路A1,A2と同一あるいは類似の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。第3実施形態においては、上記第1実施形態および上記第2実施形態と比較し、PINダイオードDのアノード端子とカソード端子との接続方向が逆向きになっている点で異なる。具体的には、PINダイオードDのアノード端子が接地され、PINダイオードDのカソード端子が、RF入力端子とRF出力端子とを接続する電源ラインLに接続されている。また、駆動回路A3の出力端子OUTは、PINダイオードDのカソード端子に接続されている。
【0037】
また、駆動回路A3は、上記駆動回路A1と比較し、回路構成が異なっている。具体的には、上記駆動回路A1においては、スイッチング素子SLと電流制限抵抗Rとの接続点aが、フィルタ回路Fを介して、出力端子OUTに接続されていたが、駆動回路A3は、スイッチング素子SHと電流制限抵抗Rとの接続点cが、フィルタ回路Fを介して、出力端子OUTに接続されている。なお、本実施形態においては、スイッチング素子SHが特許請求の範囲に記載の「第2のスイッチング素子」に相当し、スイッチング素子SLが特許請求の範囲に記載の「第1のスイッチング素子」に相当する。したがって、駆動回路A3においては、駆動電源の正極側の出力端子V+から負極側の出力端子V−に向かって、スイッチング素子SH(第2のスイッチング素子)、電流制限抵抗R、スイッチング素子SL(第1のスイッチング素子)の順に、これらが直列に接続されている。
【0038】
以上のように構成された駆動回路A3によって、PINダイオードDのオン状態とオフ状態とが切り替えるときの動作について説明する。
【0039】
まず、PINダイオードDをオフ状態からオン状態に切り替えるときの動作について説明する。
【0040】
PINダイオードDがオフ状態のとき、すなわち、スイッチング素子SHがオン状態であり、かつ、スイッチング素子SLがオフ状態であるときに、スイッチング素子SHをオフ状態に、スイッチング素子SLをオン状態に切り替えると、駆動電源の負極側の出力端子V−から、スイッチング素子SL、電流制限抵抗RあるいはスピードアップコンデンサSC、および、フィルタ回路Fを介して、PINダイオードDのカソード端子への電流経路が導通する。これにより、PINダイオードDには順方向電圧が印加され、PINダイオードDがオン状態となる。このとき、スイッチング素子SHをオン状態からオフ状態に、スイッチング素子SLをオフ状態からオン状態に切り替えた瞬間は、スピードアップコンデンサSCを通る電流経路を通って、PINダイオードDに大きな順方向電流が流れる。また、スピードアップコンデンサSCの充電が完了すると、電流制限抵抗Rを通る電流経路を通って、PINダイオードDに順方向電流が流れる。当該順方向電流は、電流制限抵抗Rとスイッチング素子SLのオン抵抗により決定される。ここで、上記第1実施形態と同様に、順方向電流が所定の電流値(例えば、1A以上)となるように電流制限抵抗Rを設定しておくことで、十分な順方向電流をPINダイオードDに供給することができる。これにより、PINダイオードDをオフ状態からオン状態に切り替えるときに、PINダイオードDのキャリア寿命より十分に短い遷移時間での切り替えが可能となる。
【0041】
次に、PINダイオードDがオン状態からオフ状態に切り替えるときの動作について説明する。
【0042】
PINダイオードDがオン状態のとき、すなわち、スイッチング素子SHがオフ状態であり、かつ、スイッチング素子SLがオン状態であるときに、スイッチング素子SHをオン状態に、スイッチング素子SLをオフ状態に切り替えると、駆動電源の正極側の出力端子V+から、スイッチング素子SH、および、フィルタ回路Fを介して、PINダイオードDのカソード端子への電流経路が導通する。これにより、PINダイオードDには逆方向電圧が印加され、PINダイオードDがオフ状態となる。このとき、スイッチング素子SHをオフ状態からオン状態に、スイッチング素子SLをオン状態からオフ状態に切り替えたときは、電流制限抵抗RあるいはスピードアップコンデンサSCを介さず、スイッチング素子SHに電流が流れる。したがって、PINダイオードDがオン状態からオフ状態に切り替わるときの遷移時間を、スイッチング素子SHのオン抵抗により決定されるため、電流制限抵抗Rがある場合と比べて、より短くすることができる。例えば、オン抵抗が小さい(例えば、0.1Ω以下の)スイッチング素子SHを用いると、遷移時間を短くすることができる。
【0043】
以上で説明したように、第3実施形態に係る駆動回路A3によれば、簡易な回路構成により、短い遷移時間でPINダイオードDをオン状態からオフ状態に切り替えることができる。したがって、PINダイオードDの発熱などのロスを抑制し、ホットスイッチングによるPINダイオードDの信頼性の低下を抑制することができる。
【0044】
図4は、第4実施形態に係るPINダイオードDの駆動回路A4を示している。なお、上記駆動回路A1〜A3と同一あるいは類似の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。同図に示すように、第4実施形態の駆動回路A4は、第3実施形態に係る駆動回路A3と比較し、電流制限抵抗Rの接続位置が異なっている。
【0045】
駆動回路A4において、電流制限抵抗Rはスイッチング素子SLと駆動電源の負極側の出力端子V−との間に接続されており、スイッチング素子SHとスイッチング素子SLとが直接接続されている。したがって、駆動回路A4においては、駆動電源の正極側の出力端子V+から負極側の出力端子V−に向かって、スイッチング素子SH(第2のスイッチング素子)、スイッチング素子SL(第1のスイッチング素子)、電流制限抵抗Rの順に、これらが直列に接続されている。具体的には、駆動電源の正極側の出力端子V+とスイッチング素子SHのドレイン端子とが接続され、スイッチング素子SHのソース端子とスイッチング素子SLのドレイン端子とが接続されている。また、スイッチング素子SLのソース端子と電流制限抵抗Rの一端とが接続され、電流制限抵抗Rの他端と駆動電源の負極側の出力端子V−とが接続されている。そして、スイッチング素子SHのソース端子とスイッチング素子SLのドレイン端子との接続点dはフィルタ回路Fを介して出力端子OUTに接続されている。なお、本実施形態においても、スイッチング素子SHが特許請求の範囲に記載の「第2のスイッチング素子」に相当し、スイッチング素子SLが特許請求の範囲に記載の「第1のスイッチング素子」に相当する。
【0046】
このように構成された駆動回路A4においても、上記第3実施形態に係る駆動回路A3と同様の動作となるので、同様の効果を奏することができる。
【0047】
以上で説明したPINダイオードDの駆動回路A1〜A4は、例えば、高周波電力供給システムにおけるインピーダンス整合装置に用いられる。当該高周波電力供給システムを本発明の第5実施形態として以下に説明する。
【0048】
図5は、本発明の第5実施形態に係る高周波電力供給システムの全体構成の一例を示している。同図において、高周波電力供給システムは、高周波電源1、負荷2、および、インピーダンス整合装置3を備えている。高周波電源1と負荷2とは、電源ライン4で接続されており、これらの間にインピーダンス整合装置3が配置されている。高周波電力供給システムは、高周波電源1で発生させた高周波電力を、電源ライン4を介して負荷2に供給するシステムである。なお、電源ライン4は、
図1〜
図4における電源ラインLに相当する。
【0049】
高周波電源1は、高周波電力を出力するものである。高周波電源1は、電力系統からの交流電力を整流回路で直流電力に変換し、直流電力をインバータ回路で高周波電力に変換して出力する。また、高周波電源1は、図示しない電源制御回路を備えており、出力電力や出力電流を制御している。本実施形態においては、高周波電源1は、例えば、13.56MHzの高周波電力を出力する。なお、高周波電源1の構成および周波数は限定されない。
【0050】
負荷2は、高周波電源1から入力される高周波電力を用いて各種処理を行うものである。このような負荷2の一例を例示すると、プラズマ処理装置や非接触電力伝送装置などがある。例えば、プラズマ処理装置は、ワーク加工部を備え、そのワーク加工部の内部に搬入した半導体ウエハや液晶基板などのワークを加工(例えば、エッチング、CVDなど)するための装置である。プラズマ処理装置は、ワークを加工するために、ワーク加工部にプラズマ放電用ガスを導入し、そのプラズマ放電用ガスに高周波電源1から供給された高周波電力(電圧)を与えることによって、プラズマ放電用ガスを電離させて、非プラズマ状態からプラズマ状態にしている。プラズマ処理装置は、プラズマ状態になったガスを利用して、ワークを加工する。
【0051】
プラズマ処理装置では、プラズマエッチングやプラズマCVDなどの製造プロセスの進行に伴い、プラズマの状態が時々刻々と変化する。これにより、負荷2のインピーダンスが変動する。したがって、負荷2に高周波電源1から効率よく電力を供給するために、高周波電力供給システムは、負荷2のインピーダンスの変動に伴い、高周波電源1の出力端から負荷2側を見たインピーダンス(以下、「負荷側インピーダンス」という。)を調整するインピーダンス整合装置3を備えている。
【0052】
インピーダンス整合装置3は、負荷側インピーダンスを調整することで、インピーダンス整合を行うものである。インピーダンス整合装置3は、上記第1実施形態に係る駆動回路A1およびPINダイオードDを備えている。
【0053】
図6は、インピーダンス整合装置3の詳細な回路構成の一例を示している。同図において、インピーダンス整合装置3は、インピーダンス検出部31、制御回路32、および、インピーダンス調整回路33を備えている。
【0054】
インピーダンス検出部31は、インピーダンス整合装置3の入力端に配置され、負荷側インピーダンスを検出するものである。インピーダンス検出部31は、検出した負荷側インピーダンスを制御回路32に出力する。具体的には、インピーダンス検出部31は、電源ライン4に流れる高周波電流に応じた電流および電源ライン4に生じる高周波電圧に応じた電圧を検出し、検出した電流信号および電圧信号から、電流実効値、電圧実効値、電流信号と電圧信号の位相差を求める。そして、これらのパラメータを用いて負荷側インピーダンスを演算し、これを制御回路32に出力する。なお、インピーダンス検出部31の構成および負荷側インピーダンスの検出方法は、これに限定されない。
【0055】
制御回路32は、インピーダンス検出部31から入力される負荷側インピーダンスが所定のインピーダンス値(例えば、高周波電源1の出力端から高周波電源1側を見たインピーダンス)になるように、インピーダンス調整回路33を制御するものである。
【0056】
インピーダンス調整回路33は、キャパシタンス可変回路331と固定コンデンサ332とインダクタ333とを含んで構成される。なお、固定コンデンサ332を備えていなくてもよい。インピーダンス調整回路33は、キャパシタンス可変回路331のキャパシタンスを変化させ、負荷側インピーダンスを調整する。
【0057】
キャパシタンス可変回路331は、複数の調整用コンデンサ(インピーダンス調整用コンデンサ)Cd、複数のPINダイオードD、および、複数の駆動回路A1を含んで構成され、キャパシタンスを変化させることができる。キャパシタンス可変回路331において、PINダイオードDが、各調整用コンデンサCdに対してそれぞれ1つずつ直列に接続され、調整用コンデンサCdとPINダイオードDとの直列体が互いに並列に接続されている。各調整用コンデンサCdの一端は、電源ライン4に接続され、他端は各PINダイオードDのアノード端子に接続されている。また、各PINダイオードDのカソード端子は接地されている。各調整用コンデンサCdのキャパシタンスは、互いに異なり、例えば、1pF、2pF、4pF、・・・、のようにバイナリステップで増加するように設定されている。なお、同じキャパシタンスのものを用いるようにしてもよい。また、各PINダイオードDには、駆動回路A1が接続されている。
【0058】
本実施形態においては、
図6に示すように、インピーダンス調整回路33において、固定コンデンサ332とインダクタ333とが、電源ライン4に直列に接続され、キャパシタンス可変回路331がこれらより電源ライン4の上流側に配置されている。なお、固定コンデンサ332とインダクタ333との接続位置は、上記したものに限定されない。例えば、キャパシタンス可変回路331、固定コンデンサ332、および、インダクタ333を、L型、π型、T型などに接続すればよい。
【0059】
このように構成されたインピーダンス整合装置3において、インピーダンス検出部31が検出した負荷側インピーダンスは、制御回路32に出力される。そして、制御回路32は入力される負荷側インピーダンスが所定のインピーダンスとなるように、各駆動回路A1に入力する駆動信号S1,/S1を生成する。生成された駆動信号S1,/S1は、各駆動回路A1のスイッチング素子SH,SLにそれぞれ入力される。これにより、上記第1実施形態で示した動作により、駆動回路A1が接続されたPINダイオードDのオン状態とオフ状態とが切り替わる。そして、オン状態となったPINダイオードDに接続された調整用コンデンサCdには電源ライン4を流れる高周波電流が流れ、当該調整用コンデンサCdが有効となり、当該調整用コンデンサCdのキャパシタンスを足し合わしたキャパシタンスがキャパシタンス可変回路331のキャパシタンスとなる。このようにして、インピーダンス整合装置3は、各PINダイオードDのオン状態とオフ状態とを制御することで、キャパシタンス可変回路331のキャパシタンスを調整して、負荷側インピーダンスを調整する。
【0060】
以上のように構成された高周波電力供給システムによれば、駆動回路A1によりPINダイオードDのオン状態とオフ状態とを切り替えるようにした。これにより、上記第1実施形態に示したように、ホットスイッチングによるPINダイオードDの信頼性の低下を抑制できるため、PINダイオードDのオン状態とオフ状態との切り替えを適切に行うことができる。したがって、インピーダンス整合装置3によるインピーダンス整合を適切に行うことができる。また、駆動回路A1によって、短い遷移時間でPINダイオードDをオン状態からオフ状態に切り替えることができるため、インピーダンス整合装置3は、負荷側インピーダンスの調整を高速に行うことできる。したがって、高周波電力供給システムにおいて、高周波電源1から負荷2に効率良く高周波電力を供給することができる。
【0061】
上記第5実施形態に係る高周波電力供給システムにおいて、インピーダンス整合装置3がインピーダンス検出部31により負荷側インピーダンスを検出し、制御回路32が当該負荷側インピーダンスに基づき、インピーダンス調整回路33を制御する場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、インピーダンス検出部31の代わりに、電源ライン4を流れる反射波電力を検出する反射波電力検出部を備えておき、制御回路32は当該反射波電力が低くなるようにインピーダンス調整回路33を制御するようにしてもよい。
【0062】
上記第5実施形態に係る高周波電力供給システムにおいて、インピーダンス整合装置3が上記第1実施形態に係る駆動回路A1を備えた場合を例に説明したが、駆動回路A1の代わりに、上記第2ないし上記第4実施形態に係る駆動回路A2〜A4を備えるようにしてもよい。また、駆動回路A1〜A4の組み合わせであってもよい。
【0063】
本発明に係るPINダイオードの駆動回
路を用いたインピーダンス整合装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。本発明
のインピーダンス整合装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。