特許第6773295号(P6773295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773295
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20060101AFI20201012BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20201012BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20201012BHJP
   G03B 17/55 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G03B17/02
   H05K7/20 B
   H05K7/20 F
   H04N5/225
   G03B17/55
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-139173(P2016-139173)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-10183(P2018-10183A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】313003417
【氏名又は名称】株式会社ザクティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 龍徳
【審査官】 越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−045399(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/125718(WO,A1)
【文献】 特開2012−248699(JP,A)
【文献】 特開2003−230029(JP,A)
【文献】 特開2012−009614(JP,A)
【文献】 特開2012−023131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G03B 17/48−17/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体が装着可能な撮像装置であって、
前記撮像装置の本体部分の外郭を構成する樹脂製の外装ケースと、
金属製の外郭部を有し、前記外装ケースの内部に、板状の記憶媒体収容空間を形成する記憶媒体収容部と、
前記外装ケースの内部に、バッテリーを収容するバッテリー収容空間を形成するバッテリー収容部と、
を備え、
前記バッテリー収容部は、前記外郭部の前方に近接して対向した状態で前記バッテリー収容空間の後側を塞ぐ金属製の隔壁を有し、
前記外郭部と前記隔壁との間に、アースと接続された金属製のアース部材を挟み込んでこれらに圧接させることにより、前記記憶媒体収容部の熱を拡散させる放熱構造を構成している撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記記憶媒体収容部は、前記アースが設けられている基板に前記外郭部を取り付けることによって形成されており、前記基板に固定される前記アース部材を介して前記外郭部が前記アースと接続されている撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の撮像装置において、
前記バッテリー収容部は、樹脂製の収容部本体の後側に、前記隔壁を固定することによって形成され、
前記収容部本体の周囲に金属製の組付部材が配置されていて、金属製の中継部材を用いて、前記隔壁と前記組付部材とが接続されている撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置において、
前記組付部材の一部が、前記収容部本体の前側に位置している撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリーカード等の記憶媒体が装着可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影される静止画や動画の画質が高精度化しており、それに伴って画像データの処理量が急増している。メモリーカード等の記憶媒体の性能も向上し、多量のデータが短時間で入出力できるようになってきている。
【0003】
そのような状況の下、デジタルカメラ等の撮像装置でも、高精度な画質に対応して高速でデータの入出力ができるように、高性能な記憶媒体を装着可能にすることが求められている。
【0004】
ところが、記憶媒体へのデータの入出力処理時には、通電に伴って熱が発生するため、多量のデータを高速で処理すればするほど、その発熱量は増加する。通常、撮像装置の内部には、精密部品が密集した状態で組み込まれているため、撮像装置に、そのような高性能な記憶媒体を装着し、高速で多量のデータの入出力処理を行うと、記憶媒体で発生する熱が、これら精密部品に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
この問題に対し、記憶媒体で発生する熱の放熱を促進させる工夫が、特許文献1,2に提案されている。
【0006】
特許文献1には、メモリーカードを収容する収容ユニットの内部に、カム機構を介して移動可能に設置された板状の第1熱伝達部材と、収容ユニットの開口を塞ぐカバーの裏面に設置された第2熱伝達部材と、ケース背面に固定された第3熱伝達部材と、で構成された放熱構造が開示されている。
【0007】
メモリーカードを収容ユニットに収容してカバーを閉じ操作することで、第1熱伝達部材が移動してメモリーカードの表面に接触する。それとともに、第2熱伝達部材が第1熱伝達部材及び第3熱伝達部材に接触する。それにより、メモリーカードから第1熱伝達部材、第2熱伝達部材、第3熱伝達部材を介してケース背面へと熱を伝達する放熱構造を形成している。
【0008】
特許文献2には、収容ユニットの開口を塞ぐカバーの裏面に設置された第1熱伝達部材と、ケース側面に固定された第2熱伝達部材と、で構成された放熱構造が開示されている。
【0009】
メモリーカードを収容ユニットに収容してカバーを閉じ操作することで、第1熱伝達部材がメモリーカードの端面と第2熱伝達部材とに接触する。それにより、メモリーカードから第1熱伝達部材、第2熱伝達部材を介してケース背面へと熱を伝達する放熱構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−9614号公報
【特許文献2】特開2012−23131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の放熱構造は、メモリーカードの面積の大きな表面を通じて放熱できるため、放熱効果に優れるものの、構造が複雑で、製造コストや操作性、耐久性等の面で不利がある。
【0012】
特許文献2の放熱構造は、特許文献1の放熱構造に比べると構造が簡単ではあるものの、放熱が、面積が僅かなメモリーカードの端面を通じて行われるため、熱伝達効率が悪く、充分な放熱効果を得るのは難しい。
【0013】
特に、撮像装置の外装に樹脂製のケースが用いられている場合には、ケースの熱伝達率が悪いため、ケースに熱を伝えても外部に放熱し難く、ケース内に熱が籠もり易い。しかも、ケース内には精密部品が密集しているため、記憶媒体の周囲が局所的に温度上昇し易くなっており、その近くの精密部品が高温に曝されるおそれがある。
【0014】
そこで本発明の目的は、簡単な構造でありながら、記憶媒体で発生する熱を効果的に放熱させることができ、記憶媒体の周辺での局所的な温度上昇も抑制できる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、記憶媒体が装着可能な撮像装置に関する。前記撮像装置は、前記撮像装置の本体部分の外郭を構成する樹脂製の外装ケースと、金属製の外郭部を有し、前記外装ケースの内部に、板状の記憶媒体収容空間を形成する記憶媒体収容部と、前記外装ケースの内部に、バッテリーを収容するバッテリー収容空間を形成するバッテリー収容部と、を備える。そして、前記バッテリー収容部は、前記外郭部の前方に近接して対向した状態で前記バッテリー収容空間の後側を塞ぐ金属製の隔壁を有し、前記外郭部と前記隔壁との間に、アースと接続された金属製のアース部材を挟み込んでこれらに圧接させることにより、前記記憶媒体収容部の熱を拡散させる放熱構造を構成している。
【0016】
すなわち、この撮像装置によれば、金属製の外郭部を有する記憶媒体収容部が樹脂製の外装ケースの内部に配置されており、その外郭部のアースを確保するために、アースと接続された状態の金属製のアース部材が外郭部に接触している。金属製の外郭部及びアース部材は、電気だけでなく熱の伝達率も優れるため、外郭部に接触しているアース部材を、記憶媒体収容部に収容される記憶媒体から発生する熱を伝達させる熱伝達部材としても利用できる。
【0017】
そして、外装ケースの内部には、熱伝達率に優れる様々な金属部材が配置されていることから、これらはアース部材を介して伝達される熱を放熱させる放熱部材としても利用できる。そこで、この撮像装置では、アース部材を、そのような金属部材と伝熱可能な状態で接続し、記憶媒体収容部の熱を拡散させる放熱構造を構成している。
【0018】
そうすることにより、既存の部材を利用した簡単な構造でありながら、記憶媒体で発生する熱を効果的に放熱させることができる。金属部材を通じて外装ケースの内部の様々な場所に熱を拡散させることができるので、記憶媒体の周辺での局所的な温度上昇も抑制できる。従って、高性能な記憶媒体であっても安定して使用することができる。
【0019】
具体的には、前記記憶媒体収容部は、前記アースが設けられている基板に前記外郭部を取り付けることによって形成されており、前記基板に固定される前記アース部材を介して前記外郭部が前記アースと接続されているようにするとよい。
【0020】
そうすれば、同じ基板に位置する外郭部とアースとが、その基板に固定されるアース部材で接続されるので、外郭部のアースを確実性をもって確保することができる。必要最小限の部材でコンパクトなアースが実現できるため、複雑な構造を要しない。
【0021】
そして、この撮像装置では更に、前記外装ケースの内部に、金属製の隔壁を有するバッテリー収容部備え、前記隔壁が前記アース部材と接触することにより、前記放熱構造構成されている
【0022】
バッテリー収容部は、外装ケースの内部に収容されている部材の中でも特に容量の大きな部材であるため、そのバッテリー収容部を構成している金属製の隔壁を利用すれば、限られた外装ケースの内部に、別部材を設けることなく、充分に大きな面積を有する放熱部材を確保することができる。従って、簡単な構造でありながら、記憶媒体で発生する熱を効果的に放熱させることができる。面積の大きな隔壁を通じて熱を放熱させることができるので、広い範囲に熱を拡散させることができる。従って、記憶媒体の周辺での局所的な温度上昇も抑制できる。
【0023】
しかも、アースと接続された金属製のアース部材が、前記外郭部と前記隔壁との間に挟み込まれてこれらに圧接している
【0024】
うすることにより、外郭部と隔壁とが密接してより熱を伝わり易くできる。そして、記憶媒体収容部とバッテリー収容部とがほぼ密着した状態となり、その間のスペースを無くすことができる。その結果、そのスペースの分だけ、バッテリー収容部に収容できるバッテリーを大きくすることが可能になり、カメラの連続使用時間の延長が図れる。
【0025】
更に、前記バッテリー収容部が、樹脂製の収容部本体の後側に、前記隔壁を固定することによって形成されている場合には、前記収容部本体の周囲に配置された金属製の組付部材が、金属製の中継部材を用いて、前記隔壁と接続されいるようにするのが好ましい。
【0026】
そのような場合、面積の大きな隔壁であっても、樹脂製の収容部本体には熱が伝わり難いため、充分な熱の拡散効果が得られないおそれがある。それに対し、収容部本体の周囲に配置されている金属製の組付部材を、アース部材に接触した隔壁と伝熱可能な状態で接続すれば、更に放熱構造の放熱面積が拡大し、より広い範囲に熱を拡散させることができる。
【0027】
特にその場合、前記組付部材の一部が、前記収容部本体における前記隔壁との対向部位の側である前側に位置しているようにするとよい。
【0028】
そうすれば、外装ケースの内部のうち、発熱源が少なくて相対的に温度が低い傾向のある隔壁との対向部位の側に熱を拡散させることができ、外装ケースの内部での局所的な温度上昇をよりいっそう抑制できる。
【0029】
本発明の撮像装置はまた、金属製の外郭部を有し、前記記憶媒体が収容可能な状態で外装ケースの内部に配置された記憶媒体収容部と、前記外郭部と対向する金属製の隔壁を有し、前記外装ケースの内部に配置されたバッテリー収容部と、を備え、前記外郭部と前記隔壁との間に、アースと接続された金属製の部材が挟み込まれてこれらに圧接している撮像装置と表現することもできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の撮像装置によれば、簡単な構造で、記憶媒体で発生する熱を効果的に放熱させることができ、しかも記憶媒体の周辺での局所的な温度上昇も抑制できるので、高性能な記憶媒体であっても安定して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態のカメラを示す概略斜視図である。
図2】カメラ本体の主な構成部材を示す分解斜視図である。
図3】別角度から見たカメラ本体の主な構成部材を示す分解斜視図である。
図4】カメラ本体の主な構成部材を示す概略斜視図である。
図5】制御基板の右端部の前面を示す概略斜視図である。
図6】アース部材を示す概略斜視図である。
図7】制御基板に固定された状態のアース部材を示す概略斜視図である。
図8図4の矢印I−I線における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。説明で用いる上下左右、前後等の方向は、特に言及しない限り、図に示す矢印に従うものとする。
【0033】
図1に、本発明を適用したミラーレス一眼デジタルカメラ1(撮像装置の一例、単にカメラ1ともいう)を簡略化したものを示す。このカメラ1は、大略、撮像レンズ3と、横長で前後の厚みの薄い矩形箱状のカメラ本体2と、で構成されている。カメラ本体2の右側は、前側が曲面状に膨出したグリップ部2aとなっており、その上部に、シャッターボタン2bが配置されている。
【0034】
撮像レンズ3は、カメラ本体2の前面に配置されたレンズマウント6に装着され、撮影条件に応じて交換できるようになっている。このカメラ1では、撮像レンズ3の脱着機構に公知のバヨネット方式が採用されている。従って、各々の中心線Jを前後方向に一致させた状態で、撮像レンズ3をレンズマウント6の載置面6aに載置し、その状態で撮像レンズ3を所定方向に回動させることで、撮像レンズ3をカメラ本体2に簡単に取り付けることができる。
【0035】
撮像レンズ3を取り外すには、レンズ取り外しボタン4を押すことで、レンズマウント6から突出して撮像レンズ3の回動を規制していたロックピン5が後退して、撮像レンズ3が回動できるようになるので、レンズ取り外しボタン4を押しながら取り付け時とは逆の方向に撮像レンズ3を回動させる。そうすることで、撮像レンズ3をカメラ本体2から簡単に取り外すことができる。
【0036】
図2図3に示すように、カメラ本体2は、レンズマウント6、バヨネットスプリング7、デックリング8、プロテクタ9、外装ケース10、撮像ユニット20、バッテリーユニット30、制御基板40、アース部材50、グリップ取付金具60(組付部材の一例)などで構成されている。なお、組付部材は、外装ケース10の内部に組み付けられる部材を意味する。
【0037】
外装ケース10は、カメラ本体2の外郭を構成する部材(筐体)である。このカメラ1では、樹脂を用いた射出成形により、外装ケース10が成形されている。外装ケース10を樹脂製とすることで、カメラ本体2の軽量化及び低コスト化が図られている。外装ケース10に用いられる樹脂としては、例えばPC樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂などが挙げられる。
【0038】
外装ケース10は、カメラ本体2の前面を覆う前部ケース11や、カメラ本体2の上部を覆う上部ケース、カメラ本体2の後部を覆う後部ケースなどで構成されており、図2図3では、便宜上、前部ケース11のみを表示している。前部ケース11は、カメラ本体2の前面を構成する前壁部11aに、別部材のグリップ部2aを取り付けることによって
形成されている(その詳細は後述)。前壁部11aには、大径のレンズ開口部12が形成されている。
【0039】
撮像ユニット20は、CMOSイメージセンサーなどの撮像素子21や、撮像レンズ3と撮像素子21との間の光路を遮断又は解放するシャッター(不図示)、そのシャッターを駆動制御するレンズシャッター部22など、撮像処理に関連する主要な部品を有している。これら部品が、例えばアルミダイキャストや金属枠などで構成された高剛性のシャーシ23に組み付けられて一体化されることにより、撮像ユニット20が構成されている。
【0040】
撮像ユニット20は、シャーシ23の支持壁23aを前方に向けた状態で、前壁部11aの裏面に固定されることにより、外装ケース10の左側の部分に収容されている。シャーシ23の支持壁23aには、撮像素子21を露出させる窓部が形成されており、その窓部の周囲を囲むように円環状のマウント固定部が設けられている(不図示)。
【0041】
このマウント固定部に、前方から順に、レンズマウント6、バヨネットスプリング7、デックリング8、及びプロテクタ9が、積み重なるように固定されている。レンズマウント6は、レンズ開口部12を通じて前壁部11aの外側に突出して位置するように設定されている。撮像素子21は、充分なフランジバック(レンズマウント6の載置面6aから撮像素子21の前面までの距離)を確保するために、撮像ユニット20の後側に配置されている。
【0042】
撮像素子21は、撮像処理時等に発熱する。そのため、撮像ユニット20の後部(外装ケース10の後部の内部左側)は高温になり易い。
【0043】
撮像ユニット20の右側に隣接して外装ケース10に収容されるように、バッテリーユニット30が、前壁部11aに組み付けられている。バッテリーユニット30は、外装ケース10を左右に二分した右側部分の大半を占めており、角形バッテリー(充電可能ないわゆる二次電池)を収容する大容量のバッテリー収容部30aを有している。バッテリーユニット30は、電気配線によって撮像ユニット20や制御基板40と接続されており、バッテリーの電流は、その電気配線を介して撮像ユニット20や制御基板40に設置された各部品や回路に供給される。
【0044】
バッテリー収容部30aは、バッテリーを収容する直方体状の空間(バッテリー収容空間31)を形成する、樹脂製の収容部本体32と金属製の隔壁33とを有している。具体的には、収容部本体32は、前部ケース11のグリップ部2aに近接して対向配置される矩形の主壁部32aと、主壁部32aの左右の両側縁から後方に対向して張り出す一対の側壁部32b,32bと、主壁部32a及び両側壁部32bの上縁に連なって両側壁部32b,32bの間を塞ぐ上端壁部32cと、上端壁部32cと上下方向に対向し、主壁部32a及び両側壁部32b,32bの下縁に連なる下端壁部32dとを有している。
【0045】
下端壁部32dには、バッテリーが出し入れされる横長なバッテリー入出口34が形成されている。図示しないが、外装ケース10の下部には、揺動操作することによってバッテリー入出口34を開閉するカバーが設けられており、普段のバッテリー入出口34はそのカバーによって閉止されている。
【0046】
前後の厚みが小さい外装ケース10に収容するために、各側壁部32bは、主壁部32aよりも小面積の縦長な矩形形状に形成され、上端壁部32c及び下端壁部32dは、主壁部32aよりも小面積の横長な矩形形状に形成されている。主壁部32a、各側壁部32b、上端壁部32c、及び下端壁部32dは、いずれも外装ケース10と同様に樹脂で形成されている。これらは一体に成形されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形
成されていてもよい。
【0047】
収容部本体32は、箱形状に形成されているので、樹脂であっても構造的に強度が確保でき、軽量化及び低コスト化が図れる。
【0048】
隔壁33は、ステンレス鋼等の肉薄な金属板からなり、主壁部32aと略同じ面積からなる矩形の主壁対向部33aと、主壁対向部33aの一方の側縁から断面L状に屈曲して張り出した矩形の側壁被覆部33bとを有している。隔壁33は、主壁対向部33aが主壁部32aと前後に対向し、側壁被覆部33bが右側の側壁部32bに被さった状態で、収容部本体32の後側に固定されている。それにより、バッテリー収容空間31の後側は、隔壁33によって塞がれた状態になっている。
【0049】
バッテリー収容空間31の後側を塞ぐ部材に、金属板の隔壁33を採用したことで、バッテリー収容部30aの全体を樹脂で形成した場合に比べて、バッテリー収容空間31の前後幅は大きくなっている。それにより、前後の厚みの小さい外装ケース10の内部に、大容量のバッテリーが収容可能となり、カメラ1の連続使用時間の延長が図られている。
【0050】
グリップ取付金具60は、バッテリーユニット30の右側(カメラ本体2の右端部)に近接して配置されている。グリップ取付金具60は、ステンレス鋼等の肉薄な金属板のプレス加工品であり、右側の側壁部32b及び側壁被覆部33bと対向して配置される放熱壁部60aと、主壁部32aの側に位置し、主壁部32aに沿って配置される取付壁部60bとを有し、これらが一体に形成されている。グリップ部2aは、樹脂の成型品であり、グリップ取付金具60の取付壁部60bを介して、前壁部11aないし収容部本体32に取り付けられている。
【0051】
制御基板40は、撮像素子21に近接する左上部に切り欠き部位を有する横長な矩形板状の樹脂製部材である。図4にも示すように、制御基板40は、撮像ユニット20及びバッテリーユニット30の各後部と近接して対向した状態で、バッテリーユニット30等に固定されている。それにより、制御基板40は、外装ケース10の内部の後側に収容され、撮像ユニット20と協働して、カメラ操作に応じた撮像処理や、撮影された画像データの入出力処理など、カメラ1における制御を包括的に実行する(メイン基板)。
【0052】
制御基板40の前面40aには、これら各種制御を実行するDSPなどの多数の電子部品や電子回路が配設されている(図示せず)。特に、隔壁33と対向して配置される、制御基板40の前面40aの右端部には、図5に示すように、SDカード等のメモリーカード(板状の不揮発性記憶媒体)を収容する記憶媒体収容部70が設置されている。記憶媒体収容部70の両側(制御基板40の右端両隅部)には、USBやHDMI(登録商標)等、周知の規格の接続プラグ41が設置されている。
【0053】
記憶媒体収容部70は、横断面が横長な門型形状をした金属板のプレス加工品からなる外郭部71を有している。記憶媒体収容部70は、この外郭部71が制御基板40の前面40aに取り付けられることによって形成されている。それにより、記憶媒体収容部70の内部には、メモリーカードを収容する矩形板状の記憶媒体収容空間が形成されている。記憶媒体収容空間の奥方には、メモリーカードを収容することでメモリーカードの各端子と接続される接続部70aが設置されている。
【0054】
各接続プラグ41も、記憶媒体収容部70と同様に、金属製の外郭部41aが制御基板40の前面40aに取り付けられることによって形成されている。記憶媒体収容部70のスロット70bは、各接続プラグ41のスロット41bと共に、制御基板40の右側の縁に沿って配置されている。
【0055】
図示しないが、外装ケース10の右側部には、これらスロット70b,41bへのアクセスを可能にする開閉可能なアクセス部が形成されており、このアクセス部を通じて、メモリーカードの脱着や、各接続プラグ41と外部ケーブルとの接続が行えるようになっている。
【0056】
制御基板40の前面40aにおける記憶媒体収容部70の両側(上下方向)には、基準電位点を構成しているアース端子42が配設されている。制御基板40におけるこれらアース端子42,42の各設置部位には、板面とアース端子42とを貫通した挿通孔43と、板面のみを貫通した挿通孔43とが形成されている。このカメラ1では、記憶媒体収容部70や各接続プラグ41のアースを確保するために、これらアース端子42,42と各外郭部41a,71とを接続するアース部材50が備えられている。
【0057】
(アース部材50)
図6に、アース部材50を示す。アース部材50は、ステンレス鋼などからなる金属板のプレス加工品であり、基部51、収容部用弾性片52、端子用弾性片53、一対のフランジ片54,54などで一体に構成されている。基部51は、記憶媒体収容部70の横幅よりも長い帯板形状に形成されている。収容部用弾性片52は、基部51の各長辺に1つずつ設けられている。これら収容部用弾性片52,52の各々は、互いに異なる短辺側に偏って配置されている。
【0058】
端子用弾性片53は、2つ有り、基部51の一方の長辺の両端部に離れて配置されている。これら収容部用弾性片52,52及び端子用弾性片53,53の各々は、基部51の長辺から直交する方向に張り出すとともに、基部51の板面(後向きに配置される面:後面)から同じ後側に僅かに屈曲しており、その先端側は基部51の後面から板厚方向の後側に離れて位置している。
【0059】
フランジ片54,54は、基部51の各端部に1つずつ設けられている。各フランジ片54は、基部51から収容部用弾性片52等の屈曲方向にL状に折り曲げて形成された脚部54aと、脚部54aの先端から互いに逆向きにL状に折り曲げて形成された鍔部54bとを有している。一方のフランジ片54の鍔部54bにはビス止め用のビス孔55のみが形成され、他方のフランジ片54の鍔部54bにはビス孔55と位置決め用のピン孔56とが形成されている。
【0060】
図3に示すように、バッテリーユニット30における隔壁33の有る後部の上端部及び下端部の各々には、フランジ片54,54が取り付けられる一対の鍔止部35,35が設けられている。各鍔止部35には、ビス止め用の締結孔36を有する座部と位置決め用のピン37とが形成されている。制御基板40の、アース端子42を貫通した各挿通孔43は、各フランジ片54の鍔部54bのビス孔55、及び各鍔止部35の締結孔36の位置に対応して形成されている。
【0061】
アース部材50は、基部51の後面側を制御基板40に向けた状態で、記憶媒体収容部70が設置されている、制御基板40の右端部の前面40aと、隔壁33との間に配置される。詳しくは、アース部材50は、ピン37をピン孔56に差し込んだ状態でビス孔55と締結孔36とが一致するように鍔止部35に一方のフランジ片54の鍔部54bが重ねられ、かつ、ビス孔55と締結孔36とが一致するように鍔止部35に他方のフランジ片54の鍔部54bが重ねられる。
【0062】
そうして重なり合った各ビス孔55及び各締結孔36に、挿通孔43の各々が一致するように制御基板40を位置決めした状態で、これら挿通孔43、ビス孔55、及び締結孔
36の各々に、制御基板40の後面の側から金属製のビス45(固定具)を締結することにより、制御基板40、アース部材50、及びバッテリーユニット30が、互いに固定されている。これら3つの部材が、同じビス45によって固定されているので、個別に固定するのに比べて、締結部位数が削減でき、これら部材40,50,30の相対的な位置ずれが抑制できる。
【0063】
図7に、制御基板40に固定された状態のアース部材50を示す。この状態において、各収容部用弾性片52は、弾性変形して外郭部71の外面に圧接している。そして、各フランジ片54の鍔部54bは、アース端子42に面接触していることから、外郭部71は、アース部材50を介してアース端子42と電気的に接続されている。アース部材50は、アース端子42を貫通した挿通孔43に挿通されたビス45で制御基板40に固定されているので、アース端子42と確実に接触させることができる。
【0064】
各端子用弾性片53もまた、弾性変形して各接続プラグ41の外面に圧接しており、各接続プラグ41の外郭部41aもアース部材50を介してアース端子42と電気的に接続されている。
【0065】
各収容部用弾性片52及び各端子用弾性片53は、弾性力で接触する方向に付勢された状態で各外郭部71,41aに接触しているので、部材の寸法誤差や取付精度のばらつきがあったとしても、確実に接触状態が確保でき、安定したアースが実現できる。
【0066】
しかも、このカメラ1では、アース部材50は、記憶媒体収容部70等のアースを確保するためだけでなく、メモリーカードで発生する熱を、外装ケース10の内部で効果的に拡散させる放熱構造を構成する熱伝達部材としても利用されている。
【0067】
すなわち、図8に示すように、制御基板40にビス止めされたアース部材50は、記憶媒体収容部70の外郭部71とバッテリー収容部30aの隔壁33(主壁対向部33a)との間に挟み込まれた状態になっており、弾性変形して外郭部71と隔壁33の双方に圧接している。
【0068】
基部51は、そのほぼ全領域が隔壁33と面接触しており、各収容部用弾性片52も弾性変形して、外郭部71に線接触ないし面接触によって圧接している。金属製の外郭部71は熱を伝え易いため、メモリーカードで発生した熱は、外郭部71を通じてその外側に比較的容易に放熱される。外郭部71と隔壁33とは僅かな隙間を隔てて対向しているため、外郭部71から放熱される熱は隔壁33に伝わり易くなっているうえに、その外郭部71が金属製のアース部材50を介して隔壁33と接続されているため、メモリーカードで発生する熱は、外郭部71やアース部材50を介して容易に隔壁33に伝えることができる。
【0069】
隔壁33は、外装ケース10の内部に収容されている部材の中でも特に容量の大きなバッテリー収容部30aを構成しているため、隔壁33を利用すれば、限られた外装ケース10の内部に、別部材を設けることなく、充分に大きな面積を有する放熱部材を確保することができる。外郭部71よりも面積の大きい隔壁33に外郭部71の全体を密接させ、その間にアース部材50を挟み込んでこれら33,71に圧接させたことで、メモリーカードの熱を隔壁33に効率よく伝えることができるので、簡単な構造でありながら、メモリーカードで発生する熱を効果的に放熱させることができる。面積の大きな隔壁33を通じて熱を放熱させることができるので、熱が籠もり易い樹脂製の外装ケース10の内部であっても、広い範囲に熱を拡散させることができる。従って、メモリーカードの周辺での局所的な温度上昇も抑制できる。
【0070】
また、制御基板40とバッテリー収容部30aとが前後方向に近接しているため、これら全体の前後幅は限界近くまで小さくなっている。その結果、バッテリー収容空間31の前後幅をより大きくすることが可能になり、より大容量のバッテリーが収容可能となっている。隔壁33もアース端子42と接続された状態となり、隔壁33のアースも確保できる利点もある。
【0071】
更に、このカメラ1では、熱の拡散性をよりいっそう高めるために、収容部本体32の周囲に配置されているグリップ取付金具60も利用して放熱構造が構成されている。
【0072】
具体的に、外装ケース10の後部に配置される制御基板40の前面40aには、記憶媒体収容部70だけでなく熱を発生する部品や回路が配置され、また、外装ケース10の後部左側には、メモリーカードと同等以上の熱発生源である撮像素子21が存在しているため、外装ケース10の後部に熱が籠もり易い傾向がある。
【0073】
そして、このカメラ1のバッテリー収容部30aは、後側の部分のみが金属製の隔壁33で構成され、上下左右や前側の部分は、樹脂製の収容部本体32で構成されている。そのため、面積の大きな隔壁33であっても、隔壁33のみでは、主に、外装ケース10の内部の後部側でしか熱が拡散できない状態になっている。
【0074】
そこで、図3図4図8に示すように、熱伝導率に優れた柔軟な金属製の中継部材80(例えば銅箔シート等)を用いて、隔壁33の側壁被覆部33bと、収容部本体32の右側の側壁部32bの近傍に位置しているグリップ取付金具60の放熱壁部60aとを接続している。
【0075】
グリップ取付金具60の放熱壁部60aは、外装ケース10の右側部に沿って拡がる大きな面積を有しているため、更にメモリーカードで発生する熱を効果的に放熱させることができる。そして、熱が籠もり易い樹脂製の外装ケース10の後部ではなく、外装ケース10の右側部の広い範囲に熱を拡散させることができるので、外装ケース10の内部での局所的な温度上昇も更に抑制できる。
【0076】
しかも、グリップ取付金具60は、外装ケース10の前部である主壁部32aの側に位置する取付壁部60bを有しているので、外装ケース10の内部のうち、発熱源が少なくて相対的に温度が低い傾向のある右前部にも熱を拡散させることができる。従って、外装ケース10の内部での局所的な温度上昇をよりいっそう抑制できる。
【0077】
このように、本実施形態のカメラ1によれば、新たな部材を組み込むことなく、アース部材50等、既存の部材を利用した簡単な構造で、メモリーカードで発生する熱を、精密部品が密集した前後幅の狭い外装ケース10の内部で効果的に放熱させることができ、しかも外装ケース10の内部の広い領域に熱を拡散させることができるので、外装ケース10が、熱の籠もり易い樹脂製であっても、高性能なメモリーカードを安定して使用することができる。
【0078】
なお、本発明にかかる撮像装置は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。撮像装置は、デジタルカメラに限らない。デジタルビデオ等であってもよい。隔壁33は、グリップ取付金具60だけでなく、それ以外の金属部材とも中継部材80で接続して放熱構造を構成してもよい。また、隔壁33を、グリップ取付金具60とは別の金属製の組付部材と接続して放熱構造を構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 カメラ
2 カメラ本体
10 外装ケース
20 撮像ユニット
30 バッテリーユニット
30a バッテリー収容部
31 バッテリー収容空間
33 隔壁
40 制御基板
50 アース部材
60 グリップ取付金具
70 記憶媒体収容部
71 外郭部
80 中継部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8