【文献】
Bioresource Technology,2014年 8月 1日,vol. 170,p. 356-360
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)1つ以上の油産生Thraustochytrid微生物及び培地を含む容器を準備するステップであって、前記油産生Thraustochytrid微生物及び培地は開始量を形成する、前記準備するステップと;
(b)
(i)油産生Thraustochytrid微生物の産生を促進する条件下で前記油産生Thraustochytrid微生物を培養すること、及び
(ii)脂質産生を促進する条件下で、ステップ(i)の前記油産生Thraustochytrid微生物を、培養物が発酵を完了するまで培養し、発酵を完了するときに限界量に達すること、
によって、前記容器内の前記培地において前記油産生Thraustochytrid微生物を培養するステップと;
(c)前記容器から前記限界量の一部を回収して、前記開始量の20〜40%の残留量を前記容器内に残すステップと;
(d)前記培養物の量を前記開始量に戻す量で新しい培地を前記容器に添加するステップと
を含む、油産生Thraustochytrid微生物を培養する方法。
ステップ(b)が更に、前記培養物の量、吸光度(OD)、溶存酸素(DO)、細胞濃度、二酸化炭素産生率、pH、時間、培養培地の栄養分の濃度、バイオマス産生性、油産生性またはそれらの任意の組み合わせを監視することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
前記油は、アルファリノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸、リノレン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される脂肪酸を含む、請求項8に記載の方法。
前記油は、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミトレイン酸(C16:1(n−7))、cis−バクセン酸(C18:1(n−7))、ドコサペンタエン酸(C22:5(n−6))、ドコサヘキサエン酸(C22:6(n−3))及びそれらの組み合わせからなる群から選択される脂肪酸を含む、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
反復フェドバッチプロセスによって微生物を培養する方法及び油を産生する方法が本明細書中で提供される。提供される本方法は、一般にバッチまたはフェドバッチプロセスよりもバイオマス及び油の両方の総体積産生性が高くなる。簡単にいえば、本プロセスは、フェドバッチ方法で微生物を培養することを含み、特定の量に達すること及び/またはバイオマス及び油体積収率を達成することによって規定される発酵の完了時に、容器は、その無菌性を維持し、特定の所定の量(例えば、最初の培地量の10%)の培養物を残すやり方で排出させられる。その後、容器に新しい滅菌培地が添加され、この場合、前の発酵から残された培養物がシードとして使用される。このプロセスは、無制限に繰り返すことができる。シードとして使用するために残される培養物の量は変えてもよいが、回収されずに残されるバイオマスと次の発酵の誘導期に費やされる時間の短縮との兼ね合いを検討しなければならない。反復フェドバッチプロセスを使用する際、発酵槽の転換時間が著しく短縮され、ひいては、従来のバッチ及びフェドバッチプロセスをはるかに上回るさらに高いバイオマス及び油の総体積産生性につながる。また、反復フェドバッチプロセスは、洗浄及び滅菌の必要性を最小限にすることにより、運転費を下げる。さらに、シードトレインに対する依存性が低く、これが人件費とエネルギー費の両方を低減する。
【0007】
微生物
本明細書に記載される方法は、微生物の集団から脂質を抽出することを含む。本明細書に記載される微生物の集団は、藻類(例えば、微細藻類)、真菌(酵母菌を含む)、細菌または原生生物であってもよい。任意に、微生物としては、Thraustochytriales目のThraustochytrids、さらに具体的には、Thraustochytrium属のThraustochytrialesが挙げられる。任意に、微生物の集団としては、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,340,594号及び同第5,340,742号に記載されているThraustochytrialesが挙げられる。微生物は、Thraustochytrium種、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,163,515号に記載されている、ATCC受託番号PTA−6245(すなわち、ONC−T18)として寄託されたThraustochytrium種であってもよい。したがって、微生物は、配列番号:1と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%以上(例えば、100%含む)一致する18s rRNA配列を有することができる。
【0008】
本明細書に記載される方法に使用するための微生物は、さまざまな脂質化合物を産生することができる。本明細書中で使用される場合、脂質という用語は、リン脂質、遊離脂肪酸、脂肪酸のエステル、トリアシルグリセロール、ステロール及びステロールエステル、カロテノイド、キサントフィル(例えば、オキシカロテノイド)、炭化水素ならびに当業者に既知のその他の脂質を含む。任意に、脂質化合物は、不飽和脂質を含む。不飽和脂質は、多価不飽和脂質(すなわち、少なくとも2つの不飽和炭素−炭素結合、例えば、二重結合を含む脂質)または高度不飽和脂質(すなわち、4つ以上の不飽和炭素−炭素結合を含む脂質)を含んでもよい。不飽和脂質の例としては、オメガ−3及び/またはオメガ−6多価不飽和脂肪酸、例えば、ドコサヘキサエン酸(すなわち、DHA)、エイコサペンタエン酸(すなわち、EPA)ならびにその他の天然に生じる不飽和、多価不飽和及び高度不飽和化合物が挙げられる。
【0009】
プロセス
微生物を培養する方法が、本明細書において提供される。本方法は、1つ以上の微生物及び培地を含む容器を準備することであって、微生物及び培地は開始量を形成することと;1つ以上の炭素源を培養物に送り込むことを含む、培養物が限界指標に達するまで培地において微生物を培養することであって、限界指標に達するとき培養物は限界量にある、培養することと;限界量の一部を回収して、開始量の40%以下の残留量を残すことと;培養物の量を開始量に戻す量で新しい培地を容器に添加することとを含む。
【0010】
本方法は、大規模な発酵ならびに小規模な発酵及び任意の間の発酵規模に適している。大規模な発酵とは、本明細書中で使用される場合、容積(すなわち、有効体積)が少なくともおよそ1,000Lである発酵槽における発酵を指し、ヘッドスペースに適切な空間を残す。小規模な発酵とは、一般に容積がおよそ100Lを超えない、例えば、5L、10L、50Lまたは100Lの発酵槽における発酵を一般に指す。本フェドバッチ発酵プロセスの実証された利点は、5〜10Lの発酵槽規模における油の産生に利用することができること及び限定されることなく、任意の体積、例えば、100L、150L、250L、500L、1000L以上に拡大縮小できることである。
【0011】
下記の実施例においてさらに詳細に記載されているとおり、反復フェドバッチプロセスは、省かれない場合、体積産生性の増加の最終目標とともに産生容器の転換時間を短縮する。どのように体積産生性を一般的なフェドバッチ発酵よりも高めるかの例が
図1に示されている。産生容器に対する24時間の転換時間が合計プロセス時間に含まれると仮定すると、任意の所与の時間におけるバイオマス(X)総産生性は、最終単位がg/L−日でX(グラム)/容器有効体積(L)/時間×24(時間/日)として算出することができる。油産生性も同様の様式で油(g)/容器有効体積(L)/時間×24(時間/日)として算出することができる。
図1からわかるとおり、フェドバッチプロセスのバイオマス及び油産生性は、時間が経過しても一定のままである。反対に、反復フェドバッチプロセスの第1のサイクルの後、平均産生性は、転換時間が必要とされず、高いシード密度のためにサイクル時間が短縮されるため、フェドバッチプロセスの平均産生性をはるかに上回って増加する。このデータセットでは20%のシードが利用された。
【0012】
提供される本方法において、残留量は、開始量の1%から40%、例えば、開始量の1%から5%、1%から10%、1%から20%、1%から30%、5%から10%、5%から20%、5%から30%、10%から20%、10%から30%、20%から40%または1%から40%の両端を含めてその間の任意の量であってもよい。任意に、残留量は、開始量の少なくとも約10%である。
【0013】
提供される本方法は、培養物がパラメーターに対する限界指標に達するまで、微生物を培養することを含む。本明細書中で使用される場合、パラメーターという用語は、培養条件における可変要素を指し、これは、微生物培養の進行を調節するために監視及び制御することができる。限界指標は、所与のパラメーターに対する予め選択されたレベルまたは濃度である。そのようなパラメーターとしては、培養物の量、吸光度(OD)、細胞濃度、二酸化炭素産生率、pH、溶存酸素(DO)、時間、培養培地の栄養分の濃度、代謝性副生成物の蓄積、温度、バイオマス産生性及び油産生性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。任意の適したパラメーターまたはパラメーターの組み合わせは、当業者に理解されるであろうとおり、本明細書において提供される指導に基づいて使用されることが意図される。任意に、限界指標は、培養培地の栄養分(複数可)の予め選択されたレベルまたは濃度である。培養培地において測定され得る適した栄養分としては、炭素及び窒素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
提供される本方法は、任意に(i)1つ以上の炭素源を培養物に送り込むことを含む、培養物が限界指標に達するまで、培地において微生物を培養するステップであって、限界指標に達するとき、培養物は限界量にある、培養するステップと;(ii)限界量の一部を回収して、開始量の40%以下の残留量を残すステップと;(iii)培養物の量を開始量に戻す量で新しい培地を容器に添加するステップとを繰り返すことを含む。任意に、ステップは、2回以上繰り返される。任意に、ステップは、2、3、4、5、6、7、8、9または10回繰り返される。プロセスが複数回繰り返される場合、上記のとおり、開始量及び残留量は、時間毎または周期毎に変わってもよい。任意に、開始量及び残留量は、時間毎または周期毎に同じままでもよい。例として、第1の周期において、残留量は開始量の2%であってもよく、次に続く周期においては、残留量は開始量の10%であってもよい。次に続く周期の残留量も変わってよく、例えば、ある周期では開始量の10%であり、別の周期では開始量の20%であってもよい。提供される本方法は、有利にも培養物を長期間にわたって維持することができる。したがって、方法ステップは、培養物を維持し、さらなる使用のために一部を回収し続けることが望まれる限り繰り返されてもよい。任意に、培養物は、数時間、数日、数週間または数ヶ月の期間維持される。任意に、培養物は、少なくとも150から500時間維持される。例えば、培養物は、少なくとも250時間維持されてもよい。任意に、培養物は、1、2、3、4または5週間維持される。
【0015】
任意に、提供される本方法は、単一もしくは1つだけのシードまたはシードトレインの生成を含む。微生物の一般的なフェドバッチ培養には、シードトレインと呼ばれる段階的な様式で生成されるシード培養物の生成が必要とされる。シードトレインは、清潔な滅菌した産生容器に接種するために培養物の量及び密度を増大させる役割を果たす。シードトレインは、培養物が複数の容器間で移されるため、滅菌のための時間、エネルギーを必要とし、汚染の可能性がより高まる。反復フェドバッチ方法には、第1のサイクルに接種するためにのみこのシードトレインが必要とされる。同様に、産生容器は、最初のサイクルに対してしか滅菌の必要がない。したがって、産生容器の準備を整える際(洗浄及び滅菌)の時間が節約され、洗浄、滅菌及びシードトレインにおける容器の操作からのエネルギーが節約される。このように、提供される本方法は、任意に1回の滅菌ステップを含む。さらに、連続したバッチ用のシードトレインにおける培養物の移動による汚染のリスクが低減される。このように、提供される本方法は、一般的なバッチまたはフェドバッチプロセスと比較して汚染が低減される。
【0016】
次のバッチに対するシードとして産生容器の培養物(すなわち、残留量)を使用することは、シードトレインにおけるさらに大きな設備または追加の発酵槽の購入を必要とすることなく、使用するためのシードのパーセンテージを選択する選択肢も与える。例えば、2%のシード量(200,000Lの有効体積の産生容器中の100,000Lの開始量に対して2000L)が最初のバッチ発酵に使用されてもよいであろうが、後続の繰り返される手順のすべては10%のシードを用いて接種されてもよいであろう。2%のシード培養物は、シードトレインにおけるさらに大きな容器(すなわち、10,000L有効体積の容器)の必要性を解消し、それにより資本コスト/投資を軽減し、シード培養物の移動が1つ減るため汚染のリスクを低下させる。2%のシードを使用することにより、微生物増殖の誘導期が増加されて、産生容器における体積産生性が低下する。しかしながら、10%のシード量を用いて接種される反復フェドバッチ方法を使用した次のバッチにより、この長い誘導期が劇的に短縮される。
【0017】
提供される本方法は、当該技術分野において既知の方法に従って微生物を培養するための追加のステップを含むか、またはそれと併せて使用されてもよい。Thraustochytrium種などの例えば、Thraustochytridは、米国特許公報第2009/0117194号または同第2012/0244584号に記載されている方法に従って培養されてもよく、それに使用される方法の各ステップまたは組成物に関するその全体を参照によって本明細書に組み込んだものとする。
【0018】
微生物は、(「培養培地」としても知られている)増殖培地において増殖させられる。さまざまな培地のいずれかが、本明細書に記載される微生物を培養する際に使用するのに適している可能性がある。任意に、培地は、炭素源及び窒素源を含む微生物のためのさまざまな栄養成分を供給する。Thraustochytrid培養のための培地は、任意のさまざまな炭素源を含んでもよい。炭素源の例としては、脂肪酸、脂質、グリセロール、トリグリセロール、炭水化物、ポリオール、アミノ糖及びあらゆる種類のバイオマスまたは廃出物流が挙げられる。脂肪酸としては、例えば、オレイン酸が挙げられる。炭水化物としては、グルコース、セルロース、ヘミセルロース、フルクトース、デキストロース、キシロース、ラクツロース、ガラクトース、マルトトリオース、マルトース、ラクトース、グリコーゲン、ゼラチン、デンプン(コーンまたは小麦)、アセタート、m−イノシトール(例えば、コーンスティープリカー由来)、ガラクツロン酸(例えば、ペクチン由来)、L−フコース(例えば、ガラクトース由来)、ゲンチオビオース、グルコサミン、アルファ−D−グルコース−1−ホスフェート(例えば、グルコース由来)、セロビオース、デキストリン、アルファ−サイクロデキストリン(例えば、デンプン由来)及びスクロース(例えば、モラセス由来)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリオールとしては、マルチトール、エリトリトール及びアドニトールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アミノ糖としては、N−アセチル−D−ガラクトサミン、N−アセチル−D−グルコサミン及びN−アセチル−ベータ−D−マンノサミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。任意に、炭素源はグルコースである。上述のとおり、提供される本方法において、炭素源は、高濃度、例えば、少なくとも200g/Lで与えられる。
【0019】
任意に、本明細書において提供される微生物は、バイオマス及び/または目的とする化合物の産生(例えば、油または全脂肪酸(TFA)含有量)を増加させる条件下において培養される。例えば、Thraustochytridsは、一般に生理的食塩水培地で培養される。任意に、Thraustochytridsは、約0.5g/Lから約50.0g/Lの塩濃度を有する培地において培養されてもよい。任意に、Thraustochytridsは、約0.5g/Lから約35g/L(例えば、約18g/Lから約35g/L)の塩濃度を有する培地において培養される。任意に、本明細書に記載されるThraustochytridsは、低塩条件において増殖させられてもよい。例えば、Thraustochytridsは、約0.5g/Lから約20g/L(例えば、約0.5g/Lから約15g/L)の塩濃度を有する培地において培養されてもよい。培養培地は、任意にNaClを含む。任意に、培地は、天然もしくは人工の海塩及び/または人工海水を含む。
【0020】
培養培地は、ナトリウムの供給源として塩化物を含まないナトリウム塩を含んでもよい。本方法に従って使用するのに適した非塩化物ナトリウム塩の例としては、ソーダ灰(炭酸ナトリウムと酸化ナトリウムの混合物)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、それぞれの文献の全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,340,742号及び同第6,607,900号を参照のこと。例えば、培養培地中の全ナトリウムのうちの約100%、75%、50%または25%未満が塩化ナトリウムから供給されるよう、全ナトリウムのうちのかなりの部分が非塩化物塩から供給されてもよい。
【0021】
任意に、培養培地の塩化物濃度は、約3g/L、500mg/L、250mg/Lまたは120mg/L未満である。例えば、提供される本方法に使用するための培養培地は、両端を含む約60mg/Lから120mg/Lの間の塩化物濃度を有してもよい。
【0022】
Thraustochytrids培養用の培地は、任意のさまざまな窒素源を含んでもよい。例となる窒素源としては、アンモニウム溶液(例えば、H
2O中のNH
4)、アンモニウムまたはアミン塩(例えば、(NH
4)
2SO
4、(NH
4)
3PO
4、NH
4NO
3、NH
4OOCH
2CH
3(NH
4Ac))、ペプトン、トリプトン、酵母エキス、マルツエキス、フィッシュミール、グルタミン酸ナトリウム、ダイズ抽出物、カザミノ酸及び蒸留カスが挙げられる。適した培地の窒素源の濃度は、一般に両端を含む約1g/Lから約25g/Lの間の範囲である。
【0023】
培地は、任意にリン酸塩、例えば、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウムを含む。培地中の無機塩及び微量栄養分としては、硫酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、オルトバナジン酸ナトリウム、クロム酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜セレン酸、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化コバルト、塩化鉄、塩化マンガン塩化カルシウム及びEDTAを挙げることができる。ビタミン、例えば、塩酸ピリドキシン、塩酸チアミン、パントテン酸カルシウム、p−アミノ安息香酸、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、葉酸及びビタミンB12が含まれてもよい。
【0024】
培地のpHは、酸もしくは塩基を使用して、必要に応じて及び/または窒素源を使用して、両端を含む3.0から10.0の間に調節されてもよい。任意に、培地は滅菌されてもよい。
【0025】
一般に微生物の培養に使用される培地は液体培地である。しかしながら、微生物の培養に使用される培地は固形培地でもよい。固形培地は、本明細書において述べられている炭素及び窒素源に加えて、構造的な支持を提供し及び/または培地が固形物であることを可能にする1つ以上の成分(例えば、寒天またはアガロース)を含んでもよい。
【0026】
細胞は、ある期間にわたって培養することができる。任意に、細胞は1日から60日のいずれかの間培養される。任意に、培養物は、数時間、数日、数週間または数ヶ月の期間維持される。任意に、培養物は、少なくとも150から500時間維持される。任意に、培養物は、少なくとも250時間維持される。任意に、培養物は、1、2、3、4または5週間維持される。培養は、任意に約4℃から約30℃、例えば、約18℃から約28℃の温度で行われる。培養としては、通気振盪培養、振盪培養、静置培養、バッチ培養、半連続培養、連続培養、回転バッチ培養、波動培養などを挙げることができる。培養は、従来の撹拌発酵槽、気泡塔型発酵槽(バッチまたは連続培養)、エアリフト発酵槽、波動発酵槽などを使用して行うことができる。
【0027】
培養は、振盪を含む1つ以上のさまざまな方法によって通気することができる。任意に、振盪は、約100rpmから約1000rpm、例えば、約350rpmから約600rpmまたは約100から約450rpmに及ぶ。任意に、培養物は、バイオマス産生期の間及び脂質産生期の間で異なる振盪速度を使用して通気される。あるいはまたはさらに、振盪速度は、培養容器のタイプ(例えば、フラスコの形状またはサイズ)に応じて変化する場合がある。
【0028】
より多量の所望の化合物を得るために、1つ以上の培養条件を変えることを含む方法に従って細胞を培養することによって、所望の脂質の産生を高めることができる。任意に、細胞はバイオマスを最大にする条件下において最初に培養された後、1つ以上の培養条件が脂質産生性に有利な条件に変えられる。変えられる条件としては、酸素濃度、C:N比、温度及びそれらの組み合わせを挙げることができる。任意に、第1の段階はバイオマス産生を促進し(例えば、高酸素(例えば、一般にまたは第2段階と比較して)、低いC:N比及び周囲温度の条件を使用して)、その後、脂質産生を促進する第2段階(例えば、その場合、第1の段階と比較して酸素を減少させ、C:N比を増加させ、温度を低下させる)が続く2段階培養が実施される。以前に記載された方法とは対照的に、提供される本方法は、培養を高レベルの油または脂質産生条件下に長期間維持することを可能にする。
【0029】
低温殺菌
任意に、得られたバイオマスは、バイオマス中に存在する望ましくない物質を不活性化するために低温殺菌される。例えば、バイオマスは、化合物分解物質を不活性化するために低温殺菌することができる。バイオマスは、発酵培地中に存在していてもよく、または低温殺菌工程ために発酵培地から単離されていてもよい。低温殺菌工程は、バイオマス及び/または発酵培地を高温に加熱することによって行うことができる。例えば、バイオマス及び/または発酵培地は、約50℃から約95℃(例えば、約55℃から約90℃または約65℃から約80℃)の温度に加熱されてもよい。任意に、バイオマス及び/または発酵培地は、約30分から約120分間(例えば、約45分から約90分間または約55分から約75分間)加熱されてもよい。低温殺菌は、適した加熱手段を使用して、例えば、直接的な蒸気注入によって行われてもよい。
【0030】
任意に、低温殺菌工程は実施されない。別の言い方をすれば、本明細書で教示される方法は、任意に低温殺菌工程がない。
【0031】
回収及び洗浄
任意に、バイオマスは、現在当業者に既知のものを含むさまざまな方法に従って回収することができる。例えば、バイオマスは、例えば、遠心分離(例えば、固形分排出型遠心機を用いて)またはろ過(例えば、クロスフローろ過)を使用して発酵培地から回収することができる。任意に、回収工程は、細胞性バイオマスの回収を促進するための沈殿剤の使用(例えば、リン酸ナトリウムまたは塩化カルシウム)を含む。
【0032】
任意に、バイオマスは水で洗浄される。任意に、バイオマスは、約20%固形分まで濃縮されてもよい。例えば、バイオマスは、約5%から約20%固形分、約7.5%から約15%固形分もしくは約 固形分から約20%固形分または列挙された範囲内の任意のパーセンテージまで濃縮されてもよい。任意に、バイオマスは、約20%固形分以下、約19%固形分以下、約18%固形分以下、約17%固形分以下、約16%固形分以下、約15%固形分以下、約14%固形分以下、約13%固形分以下、約12%固形分以下、約11%固形分以下、約10%固形分以下、約9%固形分以下、約8%固形分以下、約7%固形分以下、約6%固形分以下、約5%固形分以下、約4%固形分以下、約3%固形分以下、約2%固形分以下または約1%固形分以下まで濃縮されてもよい。
【0033】
単離及び抽出
任意に、提供される本方法は、バイオマスまたは微生物からの多価不飽和脂肪酸の単離を含む。多価不飽和脂肪酸の単離は、現在当業者に既知のものを含む1つ以上のさまざまな方法を使用して行うことができる。例えば、多価不飽和脂肪酸の単離の方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,163,515号に記載されている。任意に、培地は、多価不飽和脂肪酸の単離に先立って滅菌されない。任意に、滅菌は温度の上昇を含む。任意に、微生物によって産生され、提供される本方法から単離される多価不飽和脂肪酸は中鎖脂肪酸である。任意に、1つ以上の多価不飽和脂肪酸は、アルファリノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸、リノレン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
製品
本明細書に記載の方法に従って産生される多価不飽和脂肪酸(PUFA)及びその他の脂質を含む油は、その生物学的、栄養学的または化学的特性を活用する任意のさまざまな用途に利用することができる。このように、提供される本方法は、任意に限界量の回収された一部から油を単離することを含む。任意に、油は、燃料、例えば、バイオ燃料を生産するために使用される。任意に、油は、医薬品、食物用栄養補助剤、動物飼料添加物、化粧品などに使用することができる。本明細書に記載される方法に従って産生される脂質は、その他の化合物の生成における中間体としても使用することができる。
【0035】
例として、提供される本方法を使用して培養された微生物によって産生される油は、脂肪酸を含む場合がある。任意に、脂肪酸は、アルファリノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸、リノレン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。任意に、油はトリグリセリドを含む。任意に、油は、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミトレイン酸(C16:1(n−7))、cis−バクセン酸(C18:1(n−7))、ドコサペンタエン酸(C22:5(n−6))、ドコサヘキサエン酸(C22:6(n−3))及びそれらの組み合わせからなる群から選択される脂肪酸を含む。
【0036】
任意に、本明細書に記載される方法に従って産生される脂質は、最終製品(例えば、食物または飼料用栄養補助剤、調製粉乳、医薬品、燃料など)に組み込まれてもよい。脂質が組み込まれてもよい適した食物または飼料用栄養補助剤としては、飲料、例えば、ミルク、水、スポーツ飲料、栄養ドリンク、お茶及びジュース;菓子、例えば、キャンディ、ゼリー及びビスケット;脂肪含有食品及び飲料、例えば、乳製品;加工食品、例えば、軟飯(もしくはポリッジ);調製粉乳;朝食用シリアルなどが挙げられる。任意に、産生される1つ以上の脂質は、例えば、ビタミンまたはマルチビタミン剤などの栄養補助食品に組み込まれてもよい。任意に、本明細書に記載の方法に従って産生される脂質は、栄養補助食品に含まれてもよく、任意に食物または飼料の成分(例えば、食物用栄養補助剤)に直接組み込まれてもよい。
【0037】
本明細書に記載される方法によって産生される脂質が組み込まれてもよい餌の例としては、ペットフード、例えば、キャットフード;ドッグフードなど;観賞魚、養殖魚または甲殻類など用の餌;農場で飼育される動物用の餌(家畜及び水産養殖よって飼育される魚または甲殻類を含む)が挙げられる。本明細書に記載される方法に従って産生される脂質が組み込まれてもよい食物または飼料材料は、対象とする受け手である生物にとって美味しいものであるのが好ましい。この食物または飼料材料は、食物材料に対して現在知られている任意の物理的特性(例えば、固体、液体、柔らかい)を有してもよい。
【0038】
任意に、1つ以上の産生化合物(例えば、PUFA)は、機能性食品または医薬品に組み込まれてもよい。そのような機能性食品または医薬品の例としては、さまざまな種類の錠剤、カプセル、飲むのに適した薬剤などが挙げられる。任意に、機能性食品または医薬品は、局所的適用に適している。剤形としては、例えば、カプセル、油、顆粒、細粒、粉剤、錠剤、丸剤、トローチなどを挙げることができる。
【0039】
本明細書に記載される方法に従って産生される油または脂質は、本明細書に記載される製品に任意のさまざまな他の薬剤と組み合わせて組み込まれてもよい。例えば、当該化合物は、1つ以上の結合剤もしくは増量剤、キレート剤、色素、塩、界面活性剤、保湿剤、粘度調整剤、増粘剤、緩和剤、芳香剤、保存料などまたはそれらの任意の組み合わせと組み合わされてもよい。
【0040】
開示される本方法の製品及び組成物に使用することができるか、それらと併せて使用することができるか、それらの調製に使用することができるか、またはそれらである材料、組成物及び成分が開示されている。これら及びその他の材料が本明細書中で開示され、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などが開示されている場合、それぞれのさまざまな単一体ならびに集合的な組み合わせ及びこうした化合物の変形の具体的な言及が明確に開示されていない場合もあるが、それぞれは本明細書において本質的に予想され、記載されていると理解される。例えば、方法が開示され、論じられ、方法を含む多数の分子に行うことができる多くの変更が論じられる場合、明確に反対のことが示されていない限り、それぞれ及びすべての組み合わせ及び方法の変形及び可能な変更が本質的に予想される。同様に、これらの任意の部分集合または組み合わせも、本質的に予想され、開示される。この概念は、開示される組成物を使用する方法のステップを含むが、それらに限定されるものではない本開示のすべての態様に当てはまる。このように、実施することができるさまざまな追加のステップがある場合、当然のことながら、こうした追加のステップのそれぞれは、開示される方法の任意の特定の方法ステップまたは方法ステップの組み合わせにより実施することができ、それぞれのそのような組み合わせまたは組み合わせの部分集合は本質的に予想され、開示されていると考慮されるべきである。
【0041】
本明細書を通して使用される場合、範囲(例えば、1〜10)及び約所与の値という言及(例えば、約1または約10)は、列挙された値(単数または複数)(例えば、1及び/または10)を含む。
【0042】
本明細書中で引用されている刊行物及びそれらが引用される材料は、本質的にその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
以下の実施例は、本明細書に記載される方法及び組成物の特定の態様をさらに説明することを意図するものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1.バイオマス及び油の産生のための反復フェドバッチ発酵
微生物の油産生の分野において、従属栄養(暗)発酵は、プロセス効率及び産生物収率に関して独立栄養微生物培養よりも優れていると一般に考えられている。しかしながら、固定資本コストがより高いことにより妨げられることが多い(容器ベースの発酵プラントを建設するコストは、一般にオープンポンド及びレースウェイ型培養系の資本コストよりもはるかに高い)。反復フェドバッチ産生プロセスを使用すると、さらに高い総体積産生性を得ることができると同時に運転費を低減させることができる。これは、産生容器の転換時間を最小限に抑えること及びシードトレイン及び産生容器の滅菌に関連するエネルギー使用を最小限に抑えることによって達成される。これは、固定資本投資(発酵槽及び関連設備)のより適正な利用及びより高い年間産生能力を意味する。最初のシードトレインのみが使用されるため資本投資も低減される。
【0045】
図1は、30Lの発酵槽中での反復フェドバッチ発酵過程における容器中のバイオマス濃度及び油濃度の経時的な進行を示す。この実験に対して、10%の残留量を利用し、炭素源としてグルコースを使用した。
図2では、バッチ毎に12時間の転換時間を使用して、それぞれの独立したフェドバッチ運転の産生性を算出し、同じ12時間の転換時間を使用して反復フェドバッチ運転の第1のバッチを算出した。
図2からわかるとおり、各フェドバッチプロセスの間に設けられる固定の転換時間を伴って、先行するバッチとは無関係に次に続く各フェドバッチプロセスが運転されるため、一般的なフェドバッチプロセスのバイオマス及び油産生性は時間が経過しても一定のままである。反対に、反復フェドバッチプロセスの第1のサイクルの後、転換時間が必要なく、高いシード密度のためにサイクル時間が短縮されるため、フェドバッチプロセスの平均産生性をはるかに上回って平均産生性が増加する。
【0046】
図3は、7Lの発酵槽中での反復フェドバッチ発酵過程における容器中のバイオマス濃度及び油濃度の経時的な進行を示す。この実験に対して、20%の残留量を利用し、炭素源としてグルコースを使用した。
図4では、バッチ毎に12時間の転換時間を使用して、それぞれの独立したフェドバッチ運転の産生性を算出し、同じ12時間の転換時間を使用して反復フェドバッチ運転の第1のバッチを算出した。
図4からわかるとおり、中間に設けられる固定の転換時間を伴って、先行するバッチとは無関係に続く次の各フェドバッチプロセスが運転されるため、一般的なフェドバッチプロセスのバイオマス及び油産生性は時間が経過しても一定のままである。反対に、反復フェドバッチプロセスの第1のサイクルの後、転換時間が必要なく、高いシード密度のためにサイクル時間が短縮されるため、フェドバッチプロセスの平均産生性をはるかに上回って平均産生性が増加する。
【0047】
異なる、すなわち20%、30%及び40%の残留シード量を用いた反復フェドバッチ発酵を320時間の期間にわたって行い、それぞれ合計6回の反復運転に達した。
図5からわかるとおり、すべての反復フェドバッチ発酵は、1回のフェドバッチ運転のものと比較した場合、より高い平均バイオマス及び油総産生性をもたらした。残留シード量を20%から30%に増加させた結果、平均産生性が著しく増加した一方で、残留シード量を30%から40%にさらに増加させても産生性はさらには改善されなかった。これは、回収されずに残される(すなわち、シードのための残留量として使用される)バイオマスと、次の発酵の誘導期に費やされる時間の短縮との兼ね合いを示していた。これらの条件下では、最適な妥協点はおよそ30%の残留シード量である。