特許第6773303号(P6773303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ インダストリー アンド アカデミック コオペレーション イン チュンナム ナショナル ユニバーシティの特許一覧

特許6773303シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用組成物
<>
  • 特許6773303-シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用組成物 図000002
  • 特許6773303-シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用組成物 図000003
  • 特許6773303-シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用組成物 図000004
  • 特許6773303-シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用組成物 図000005
  • 特許6773303-シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用組成物 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773303
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20201012BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20201012BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61K36/185
   A61P13/08
   A23L33/105
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-560230(P2017-560230)
(86)(22)【出願日】2016年5月3日
(65)【公表番号】特表2018-521003(P2018-521003A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】KR2016004653
(87)【国際公開番号】WO2016186349
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年3月14日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0069047
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511314636
【氏名又は名称】ザ インダストリー アンド アカデミック コオペレーション イン チュンナム ナショナル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヒョ ジュン
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−199609(JP,A)
【文献】 Biol. Pharm. Bull., 2017, Vol.40, pp.2125-2133
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/185
A23L 33/105
A61P 13/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/NAPRALERT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクンシ抽出物を有効成分として含む、前立腺肥大症の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項2】
前記シクンシ抽出物は、前立腺重量の減少効果、前立腺肥大症誘発因子であるジヒドロテストステロン(DHT)の減少効果、及び前立腺上皮細胞の過増殖の抑制効果を発揮することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シクンシ抽出物を有効成分として含む、前立腺肥大症の予防または改善用の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクンシ(Quisqualis indica)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症の予防または治療用医薬組成物、及び食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia、BPH)は、50歳以上から多くの男性が発病する男性疾患であって、最近韓国での前立腺肥大疾患者の増加率が年20%を上回るほど急速に増加している。該疾患の場合、前立腺移行域部分の平滑筋細胞(smoothmuscle cell)と上皮細胞(epithelialcell)の過度な増殖によって発病し、膀胱閉塞による多様な排尿障害を引き起こす。前立腺肥大機序の1つとして、男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)とジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone、DHT)が関連すると知られている。
【0003】
一方、前立腺肥大症治療剤のうち5α−還元酵素阻害剤は、男性ホルモンであるテストステロンには影響を与えず、ジヒドロテストステロンの生成を選択的に抑制することで、抗アンドロゲン活性効果を発現して、抗癌性ホルモン薬剤で現れる副作用なく肥大した前立腺を縮小して排尿障害を治療できるため、安全でありながらむ原因的な治療が可能な治療剤として認識されている。現在、5α−還元酵素の作用を阻害して組織中のジヒドロテストステロンの生成を抑制するフィナステリド(Finasteride:Proxcar、メルク社)のような化合物が、前立腺肥大症の治療剤として市販されている(米国特許第4,377,584号公報、米国特許第4,760,071号公報、韓国特許公開第2004−0016559号公報)。
【0004】
シクンシ(Quisqualis indica)はインドが原産地であり、中国南部と熱帯地方に分布している。シクンシとの名は、中国のある地方で郭使君という人がこれ1つで多くの子供の疾患を治療したとして、後世の医家が名付けたものである。薬性は温和で味が甘く、有効成分としてキスカル酸(quiscalicacid)、トリゴネリン(triggonelline)、ピリジン(pyridine)、脂肪油などが含有されている。効能としては、回虫の駆除に使用され、その比率は約70%に至る。この外、蟯虫の駆除にも使用されるが、効果が回虫ほどではなく、微弱であるが健胃作用も有する。シクンシは毒性が弱くて人体に無害であり、甘みがあるため、子供が服用し易いことが知られている(韓国民族文化大百科)。
【0005】
しかし、現在まで報告された文献の何れにも、シクンシ抽出物の前立腺肥大症に対する治療効果については言及も開示もされていなかった。
【0006】
本発明者らは、前立腺肥大症に対して抑制効果を有する天然薬剤を開発するために研究していたところ、前立腺肥大症の治療効果と関連して現在まで報告されたことのないシクンシ抽出物が前立腺肥大症に対する抑制効果を有するとの事実を見つけ、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前立腺肥大症に対し、前立腺重量、DHT及び上皮細胞過増殖に対して、減少効果を奏する天然薬剤として、シクンシ抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用医薬組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記抽出物を含む食品組成物を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一様態によれば、シクンシ抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症の予防または治療用の医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による前立腺重量の変化を示した図である。
図2】前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による前立腺のDHTの変化を示した図である。
図3】前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による血中テストステロンレベルを示した図である。
図4】前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物の処理による前立腺組織の病理学的変化を示した図である。
図5】前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による毒性の有無を確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、前記シクンシ抽出物は、植物体の一部または全部に対して、当業界で周知の通常の植物抽出方法を用いて製造したすべての抽出物を含む。望ましくは、粗抽出物、極性溶媒可溶抽出物または非極性溶媒可溶抽出物である。
【0012】
本発明では、シクンシ材料を粉砕した後、試料重量の約1〜100倍、望ましくは約2〜20倍の体積の水、エタノール、炭素数1〜4の低級アルコール、またはこれらの混合溶媒から選択された極性溶媒、望ましくは水または水とエタノールとの混合溶媒、より望ましくは水または1〜30%(v/v)の水とエタノールとの混合溶媒を使用し、20〜120℃、望ましくは30〜80℃で約1〜72時間、望ましくは2〜12時間にわたって、熱水抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出または超音波抽出などの抽出方法、望ましくは熱水抽出を行って抽出した後、減圧濾過及び濃縮して、本発明のシクンシ抽出物を収得することができる。
【0013】
本発明の望ましい実施例において、シクンシ抽出物が前立腺重量の減少、前立腺肥大症誘発因子であるDHTの減少、及び前立腺上皮細胞の過増殖の減少といった効果を奏することで、前立腺肥大症の治療及び予防に有効であることを確認できた。
【0014】
したがって、本発明は、シクンシ抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症の予防または治療用の医薬組成物または食品組成物を提供する。
【0015】
また、シクンシ抽出物は長年食用又は生薬として使用されてきた薬剤であるため、本発明の抽出物も、毒性及び副作用などの問題がない。
【0016】
本発明の抽出物を含む前立腺肥大症の予防または治療用医薬組成物は、組成物の総重量に対して前記抽出物を0.1〜50重量%で含むことができる。
【0017】
本発明の抽出物を含む医薬組成物は、医薬組成物の製造に通常使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0018】
本発明による抽出物の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容可能な塩の形態でも使用でき、単独で、さらに、他の薬学的活性化合物と組み合わせて、適当な混合物としても使用することができる。
【0019】
本発明による抽出物を含む医薬組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルション、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用することができる。抽出物を含む組成物に含まれる担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合は、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤される。また、単なる賦形剤の外に、マグネシウムステアレート、タルクのような滑剤も使用される。経口用の液状製剤としては懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常使用される単純希釈剤である水、流動パラフィンの外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与のための製剤には滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどを使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(Witepsol)、マクロゴール(Macrogol)、ツイーン(Tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0020】
本発明の抽出物の望ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択することができる。しかし、望ましい効果を得るためには、本発明の抽出物は1日に0.0001〜100mg/kgが望ましく、0.001〜100mg/kgで投与することがさらに望ましい。投与は一日に一回投与しても良く、数回に分けて投与しても良い。前記投与量は如何なる面でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0021】
本発明の抽出物は多様な経路で投与することができる。投与の全ての方式は予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内膜または脳室内(intracerebroventricular)への注射によって投与することができる。
【0022】
本発明の他の様態によれば、本発明はシクンシ抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症の予防または改善用の食品組成物を提供する。
【0023】
本発明において、前記食品組成物は食品の形態により限定されず、機能的な面では健康機能食品であり得る。「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律第6727号に定める人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して製造及び加工した食品を意味し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか又は生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
【0024】
本発明の前立腺肥大症の予防用食品組成物は、組成物の総重量に対して前記抽出物を0.01〜95重量%、望ましくは1〜80重量%で含む。
【0025】
また、前立腺肥大症予防を目的にして錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸などの形態の健康機能食品として製造及び加工することができる。
【0026】
本発明の抽出物を添加できる食品としては、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などが挙げられる。
【0027】
また、前立腺肥大症の予防及び改善効果を目的にして食品または飲料に添加することができる。このとき、食品または飲料中の前記抽出物の量は全体食品重量の0.01〜15重量%で添加でき、飲料組成物は100mlを基準に0.02〜5g、望ましくは0.3〜1gの比率で添加できる。
【0028】
本発明の飲料組成物は、必須成分として前記抽出物を上記比率で含むことの外に、他の成分には特に制限がなく、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。天然炭水化物の例としては単糖、例えば、ブドウ糖、果糖など;二糖、例えばマルトース、スクロースなど;及び多糖、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチン)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の組成物100ml当り一般に約1〜20g、望ましくは約5〜12gである。
【0029】
その他、本発明の抽出物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成香料及び天然香料などの香料、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などをさらに含むことができる。
【0030】
上述したように、本発明のシクンシ抽出物は、前立腺重量の減少、前立腺肥大症誘発因子であるDHTの減少、及び前立腺上皮細胞の過増殖の抑制といった効果を奏することで、前立腺肥大症の治療及び予防に有用に使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、これら実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
実施例1.シクンシ抽出物の製造
市販されるシクンシを購入して粉砕した後、300gを70%のエタノール3Lに入れ、超音波抽出機を用いて1時間にわたって3回超音波抽出した。抽出液をワットマンNo.2(150mmΦ)濾過紙で濾過して不溶性物質を除去した後、冷却コンデンサが取り付けられた濃縮装置で40℃で減圧濃縮した。減圧濃縮された抽出物の溶媒を完全に除去するため、精製水500mLを入れて懸濁させた後、凍結乾燥機を用いて80.51gの抽出物を収得した(収率:26.84%)。
【0033】
実施例2.動物モデル
10週齢の雄ウィスターラット(中央実験動物)を1週間順化させた後、前立腺肥大誘導群は、テストステロンプロピオネート(TestosteronePropionate、TP)3mg/kgの皮下注入を4週間実施して、モデルを製作した。TP注入の1時間前に実施例1で製造したシクンシ抽出物150mg/kgの経口投与を4週間実施した。陽性対照群には、前立腺肥大症治療剤として使用されている5α−還元酵素抑制剤であるフィナステリド(Finasteride;10mg/kg)を同様の方法で投与した。
【0034】
統計学的分析
統計学的分析はANOVAで行った。##P<0.01、#P<0.05は、正常群(NC)と比較したときに有意差がある場合を示し、**P<0.01、*P<0.05は、前立腺肥大症誘発群(BPH)と比較したときに有意差がある場合を示した。
【0035】
実施例3.前立腺重量の測定
【0036】
動物を屠殺した後、各群(正常群:NC、前立腺肥大症誘発群:BPH、前立腺肥大症誘発群+シクンシ抽出物投与群:BPH+シクンシ、前立腺肥大症誘発群+フィナステリド投与群:BPH+フィナステリド)から前立腺を摘出し、その重量を測定した。
【0037】
図1は、前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による前立腺重量の変化を示した図である。図1に示されたように、TPで前立腺肥大症を誘発した群(BPH)より、シクンシ抽出物を投与した群(BPH+シクンシ)で前立腺の重量が有意に減少し、現在前立腺肥大症治療剤として使用されているフィナステリドと同等の効果を奏した。
【0038】
実施例4.前立腺のDHTの変化
前立腺の発生、成長及び維持に必須であるジヒドロテストステロン(DHT)の変化を測定するため、4週間の薬物投与後、屠殺時に分離した前立腺組織からタンパク質を分離した。タンパク質抽出用であるRIPAバッファー(20mMTris−HCl、150mM NaCl、1mMNa2EDTA、1mM EGTA、1%NP−40、1% デオキシコール酸ナトリウム、2.5mM ピロりん酸ナトリウム、1mMβ−グリセロりん酸、1mM NaVO、1μg/mlロイペプチン(米国、Cell−Signaling社))に、前立腺を入れて均質化した後、均質液を1400rpmで15分間遠心分離し、上澄液を収集した。タンパク質分析キット(Bio−Radprotein assay kit、Bio−Rad、米国)を用いて分離したタンパク質の濃度を測定した後、上澄液からDHTの含量を測定するため、DHTに特異的に反応するELISAキット(Cayman、米国)を使用し、メーカーの方法に従って前立腺内のDHT含量を測定した。測定した値は、定量的タンパク値に基づいて換算した後、統計学的な分析を行って差異を比較した。
【0039】
図2は、前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による前立腺のDHTの変化を示した図である。図2に示されたように、前立腺肥大症を誘発するDHTの濃度がシクンシ抽出物を投与した群で有意に減少することを確認した。
【0040】
実施例5.血中テストステロンの測定
前立腺肥大症動物モデルのテストステロンの数値を確認するため、実験終了後に分離した血液を12,000rpmで20分間遠心分離した後、上澄液を採取してELISAキット(Cayman、米国)を用いて血清からテストステロンの数値を測定した。
【0041】
図3は、前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による血中テストステロンの数値を示した図である。図3に示されたように、シクンシ抽出物を投与した群で有意にテストステロンの数値が減少した。
【0042】
実施例6.前立腺の組織病理学的変化
実験終了後、摘出した前立腺を10%中性緩衝ホルマリンで24時間固定し、パラフィン包埋(paraffinembedding)した。包埋した組織を厚さ4μmに薄切して切片を製作した後、ヘマトキシリン(Sigma−Aldrich、米国)とエオシンY(Sigma−Aldrich)で染色し、封入液で封じ込んで光学顕微鏡で検鏡した。
【0043】
図4は、前立腺肥大症動物モデルにおいて、シクンシ抽出物の処理による前立腺の組織病理学的変化を示した図である。図4に示されたように、前立腺肥大症誘発群では上皮細胞の高さと数が大きく上昇したが、シクンシ抽出物投与群では、上皮細胞の過増殖が減少することが観察できた。
【0044】
実施例7.血中ALT及びASTの測定
前立腺肥大症動物モデルにおけるシクンシ抽出物の毒性の有無を確認するため、実験終了後に分離した血液を12,000rpmで20分間遠心分離し、上澄液を採取して、血清から一般的な肝毒性指標であるALT(alaninetransaminase)とAST(aspartate transaminase)の数値を測定した。
【0045】
図5は、前立腺肥大症動物モデルにおける、シクンシ抽出物処理による毒性の有無を確認した結果を示した図である。図5に示されたように、ALT及びASTともに正常群と比較したとき、前立腺肥大症誘発群及びシクンシ抽出物投与群の何れからも有意な変化は観察されなかった。
【0046】
結果の解釈
上述した実施例によれば、ウィスターラットにテストステロンプロピオネート(TP)を4週間の皮下注射して前立腺肥大症を誘発し、同時にシクンシ抽出物及び前立腺肥大症治療剤として使用中のフィナステリドを4週間経口投与した。薬物投与の終了後、次のような変化を測定した。
【0047】
(1)屠殺したラットの前立腺を採取して重量を比べた結果、TPで前立腺肥大症を誘発した群と比較して、シクンシ抽出物を投与した群では前立腺の重量が減少することが確認でき、前立腺肥大症治療剤であるフィナステリドを投与した群と同等の効果を奏した。
(2)また、薬物投与後、前立腺肥大症を誘発するジヒドロテストステロン(DHT)の変化を比べた結果、シクンシ抽出物を投与した群でDHTの数値が有意に減少し、フィナステリドと同等の効果を奏した。
(3)前立腺の組織病理学的分析の結果、前立腺肥大症誘導群で観察された上皮細胞の過増殖(hyperplasia)がシクンシ抽出物の投与により減少した。
【0048】
したがって、本発明のシクンシ抽出物は前立腺重量の減少、前立腺肥大症誘発因子であるDHTの減少、及び前立腺上皮細胞の過増殖の抑制といった効果を奏することで、前立腺肥大症に対する効果的な治療剤として使用することができる。
【0049】
以下、本発明の組成物のための製造例を例示する。
製造例1.医薬製剤の製造
1−1.散剤の製造
本発明の実施例1の抽出物2g
乳糖1g
上記の成分を混合して気密布に充填して、散剤を製造した。
【0050】
1−2.錠剤の製造
本発明の実施例1の抽出物100mg
トウモロコシ澱粉100mg
乳糖100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
上記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法に従って打錠して、錠剤を製造した。
【0051】
1−3.カプセル剤の製造
本発明の実施例1の抽出物100mg
トウモロコシ澱粉100mg
乳糖100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
上記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法に従ってゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を製造した。
【0052】
製造例2.食品の製造
2−1.菓子及び粉食の製造
本発明の実施例1の抽出物0.5〜5.0重量部を小麦粉に添加し、その混合物を用いてパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を製造して健康増進用食品を製造した。
【0053】
2−2.乳製品の製造
本発明の実施例1の抽出物5〜10重量部を牛乳に添加し、この牛乳を用いてバター及びアイスクリームのような多様な乳製品を製造した。
【0054】
製造例3.飲料の製造
本発明の実施例1の抽出物1000mg
クエン酸1000mg
オリゴ糖100g
梅濃縮液2g
タウリン1g
精製水を加えて全体900ml
通常の健康飲料製造方法で、上記の成分を混合し、約1時間85℃で撹拌加熱した後、製造された溶液を濾過し、2リットルの滅菌容器に充填して密封滅菌した後、冷蔵保管し、本発明の健康食品の製造に使用した。
【0055】
以上、本発明を望ましい実施例を挙げて説明した。本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者であれば、本発明がその本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態に具現できることを理解できるであろう。したがって、開示された実施例は限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されねばならない。本発明の範囲は上述した説明ではなく、特許請求の範囲に示され、それと同等な範囲内の差異は何れも本発明に含まれると解釈されねばならない。
図1
図2
図3
図4
図5