(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料が塗抹される試料領域を有する試料プレート及び前記試料に接触して前記試料を染色する接触型パッチを格納するように構成されたパッチプレートを備えた試験キットを用いる診断装置であって、
前記試験キットが配置される載荷領域を有する本体と、
前記試験キットの前記パッチプレート及び前記試料プレートを互いに相対移動させることにより、前記試験キットに配置された前記試料が前記試料領域上で塗抹されるように構成された移動ユニットと、
前記接触型パッチが塗抹された前記試料に接触することにより、塗抹された前記試料が染色されるように、前記試験キットの構造体を移動させるように構成された接触ユニットと、
を備えた、診断装置。
前記移動ユニット及び前記接触ユニットから選択される少なくとも一つが、動力を発生させるように構成された動力発生装置及び前記動力を前記試験キットの前記構造体に伝達するように構成された動力伝達部材を具備した、請求項1に記載の診断装置。
染色された前記試料の前記画像が、染色された前記試料が配置された前記試験キット及び前記試験キットの前記構造体から選択される少なくとも一つが移動した後に生成される、請求項7に記載の診断装置。
染色された前記試料の取得された前記画像に基づいて前記試料の状態を診断するように構成された診断モジュールをさらに備えた、請求項7〜9のいずれか一項に記載の診断装置。
複数の接触型パッチが存在する場合に、前記接触ユニットが、前記複数の接触型パッチが前記試料領域に順次接触するように、前記試験キットの前記構造体に動力を伝達する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の診断装置。
前記接触ユニットが、所定の時間にわたって、前記試験キットの前記構造体に動力を伝達することにより、前記所定の時間にわたって、前記接触型パッチが前記試料領域に接触するようにする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載の実施形態は、本開示が関係する当業者に本開示の主旨を明確に説明することを目的としているため、本開示は本明細書に記載の実施形態に限定されず、本開示の範囲には、本開示の主旨から逸脱しない修正例又は改良例も含むものと解釈すべきである。
【0017】
現下、可能な限り広く使用している一般用語は、本開示における機能を考慮して本明細書で使用する用語として選択しているが、本開示が関係する当業者の意図及び実行又は新技術の到来等に応じて変更されてもよい。ただし、その代わりに、特定の用語がある意味で定義されて使用される場合は、当該用語の意味が別途説明されることになる。その結果、本明細書で使用する用語は、当該用語の名称に基づくのみならず、当該用語の実質的な意味及び本明細書全体の内容に基づいて解釈されるものとする。
【0018】
本明細書の添付の図面は、本開示を簡単に説明するためのものである。図面に示す形状は、本開示の理解の支援に必要なだけ誇張して図示している場合があるため、本開示は、図面によって限定されるものではない。
【0019】
本開示に関連する既知の構成又は機能の詳細な説明によって本明細書中の本開示の主旨が曖昧になると考えられる場合は、必要に応じて、関連する詳細な説明を省略する。
【0020】
本開示の一態様によれば、試料が塗抹される試料領域を有する試料プレート及び試料に接触して試料を染色する接触型パッチを格納するように構成されたパッチプレートを備えた試験キットを用いる診断装置であって、試験キットが配置される載荷領域を有する本体と、試験キットのパッチプレート及び試料プレートを互いに相対移動させることにより、試験キットに配置された試料が試料領域において塗抹されるように構成された移動ユニットと、接触型パッチが塗抹された試料に接触することにより、塗抹された試料が染色されるように、試験キットの構造体を移動させるように構成された接触ユニットと、を備えた、診断装置が提供される。
【0021】
この診断装置は、染色された試料の画像を取得するように構成された画像取得モジュールをさらに備えていてもよい。
【0022】
この診断装置は、染色された試料の取得された画像に基づいて試料(サンプル)の状態を診断するように構成された診断モジュールをさらに備えていてもよい。
【0023】
診断装置の相対移動は、パッチプレートが一方向に移動し、試料プレートが固定又は移動する形態を有していてもよく、試料プレートが一方向に移動する場合は、パッチプレートの移動速度が試料プレートの移動速度より大きくてもよい。
【0024】
載荷領域は、本体の内側に形成されていてもよく、この診断装置は、載荷領域を移動させるように構成された載荷領域移動ユニットをさらに備えていてもよい。載荷領域移動ユニットは、載荷領域の移動により、ユーザが試験キットを載荷領域に配置できるようにする。
【0025】
移動ユニットは、動力を発生させるように構成された動力発生装置及び動力を試験キットの構造体に伝達するように構成された動力伝達部材を具備していてもよい。
【0026】
動力発生装置及び動力伝達部材は、互いに係合していてもよく、移動ユニットは、動力伝達部材を通じて、試料プレート及びパッチプレートに動力を伝達するようにしてもよい。
【0027】
接触ユニットは、動力を発生させるように構成された動力発生装置及び動力を試験キットの構造体に伝達するように構成された動力伝達部材を具備していてもよい。
【0028】
動力発生装置及び動力伝達部材は、互いに係合していてもよく、接触ユニットは、動力伝達部材を通じて、パッチプレートに格納された接触型パッチに動力を伝達するようにしてもよい。
【0029】
移動ユニットは、接触型パッチが試料領域と接触している場合に、試験キットの相対移動を許可しないようにしてもよく、また、接触型パッチが試料領域と接触していない場合に、試験キットの相対移動を許可するようにしてもよい。
【0030】
染色された試料の画像は、染色された試料が配置された試験キット及び試験キットの構造体のうちの1つ又は複数が移動した後に生成されるようになっていてもよい。
【0031】
染色された試料の画像は、染色された試料の複数のフレーム画像の組み合わせにより生成されるようになっていてもよい。
【0032】
本開示の別の態様によれば、試料が塗抹される試料領域を有する試料プレート及び試料に接触して試料を染色する接触型染色パッチを格納するように構成されたパッチプレートを備えた試験キットを用いる診断装置であって、試験キットの構造体を移動させるように構成された移動ユニットを備えており、移動ユニットが、動力伝達部材を通じて、試料プレート及びパッチプレートのうちの1つ又は複数に動力を伝達し、パッチプレートの塗抹ユニットが試験キットの長手方向に沿って一方向に移動することにより、試料が試料領域において塗抹されるように、試料プレート及びパッチプレートを互いに相対移動させる、診断装置が提供される。
【0033】
パッチプレートは、塗抹ユニットを具備していてもよく、塗抹ユニットは、試料に接触して試料を広げるようにしてもよい。
【0034】
試料領域において試料を塗抹するため、移動ユニットは、試料プレート及びパッチプレートを互いに相対移動させることにより、試料と接触した
パッチプレートの塗抹ユニットが試料領域を掃引しながら移動させるようにしてもよい。
【0035】
移動ユニットは、試料プレート及びパッチプレートの相対移動速度を制御するようにしてもよい。相対移動速度の制御は、試料プレート及びパッチプレートのうちの1つ又は複数の速度の制御を含んでいてもよい。
【0036】
移動ユニットは、試料プレート及びパッチプレートの相対移動を停止させることにより、塗抹された試料が固定されるようにしてもよく、また、試料を固定するように構成された固定剤又は固定パッチによる塗抹された試料との接触又は接触の準備を可能とするようにしてもよい。
【0037】
本開示のさらに別の態様によれば、試料が塗抹される試料領域を有する試料プレート及び試料に接触して試料を染色する接触型パッチを格納するように構成されたパッチプレートを備えた試験キットを用いる診断装置であって、試料プレート及びパッチプレートを互いに相対移動させることにより、試料が試料領域において塗抹されるように構成された移動ユニットと、塗抹された試料を染色するように構成された接触ユニットと、を備えており、接触ユニットが、動力伝達部材を通じて、試験キットの構造体に動力を伝達し、試料が塗抹される試料領域に接触型パッチを接触するように、試料プレート及びパッチプレートのうちの1つ又は複数を移動させる、診断装置が提供される。
【0038】
移動ユニットは、試料プレート及びパッチプレートを互いに相対移動させることにより、パッチプレート及び試料プレートが整列するようにしてもよい。移動ユニットは、パッチプレート及び試料プレートを互いに相対移動させることにより、パッチプレートの接触型パッチが試料プレートの試料領域に配置されるようにしてもよい。
【0039】
複数の接触型パッチが存在する場合に、接触ユニットは、複数の接触型パッチがそれぞれ試料領域に接触するように、試験キットの構造体に動力を伝達するようにしてもよい。
【0040】
接触ユニットは、試験キットの構造体においてパッチプレートに格納された複数の接触型パッチに動力を伝達するようにしてもよい。
【0041】
接触ユニットは、所定の時間にわたって、試験キットの構造体に動力を伝達することにより、上記所定の時間にわたって、接触型パッチが試料領域に接触するようにしてもよい。
【0042】
本開示のさらに別の態様によれば、試料が塗抹される試料領域を有する試料プレート及び試料に接触して試料を染色する接触型パッチを格納するように構成されたパッチプレートを備えた試験キットを用いる診断装置であって、試験キットが配置される載荷領域を有する本体と、パッチプレート及び試料プレートが互いに相対移動することにより、試験キットに配置された試料が試料領域において塗抹されるように、試験キットのパッチプレートが搭載された第1の搭載部又は試料プレートが搭載された第2の搭載部に動力を伝達するように構成された移動ユニットと、接触型パッチが塗抹された試料に接触することにより、塗抹された試料が染色されるように、試験キットの構造体を移動させるように構成された接触ユニットと、を備えた、診断装置が提供される。
【0043】
本開示のさらに別の態様によれば、試料が塗抹される試料領域を有する試料プレート及び試料に接触して試料を染色する接触型染色パッチを格納するように構成されたパッチプレートを備えた試験キットを用いる診断方法であって、試料が配置された試験キットを載荷するステップと、パッチプレート及び試料プレートが互いに相対移動することにより、載荷した試験キットに配置された試料が塗抹されるよう、試験キットの構造体に動力を伝達するステップと、接触型パッチが移動して塗抹された試料に接触することにより、塗抹された試料が染色されるように、試験キットのパッチプレートの上面に動力を伝達するステップと、を含む、診断方法が提供される。
【0044】
1.接触型染色パッチ
1.1 ゲル相接触型染色パッチ
以下、本開示の一実施形態に係る、接触型染色パッチ100について説明する。
【0045】
本開示の実施形態に係る、接触型染色パッチ100は、試料Tに接触して試料Tを染色するようにしてもよい。
【0046】
例えば、接触型染色パッチ100は、1)染色対象の物体が染色試薬140と直接反応する技術であって、1−1)マラリアの検査に用いられる末梢血塗抹検査を含む血液塗抹検査を伴うギムザ染色技術若しくはライト染色技術及び1−2)単純な染色技術であるグラム染色技術若しくは細菌学的検査を伴うAFB[チール・ネールゼン]技術等、2)子宮頸がん検査に最もよく用いられるパパニコロウ塗抹試験、3)4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)等の蛍光染色技術、4)抗原抗体反応が用いられ、アイソトープ、蛍光物質、酵素等に結合された抗体を用いて検出される物体が放射線検出、蛍光発色、及び酵素によって間接的に発色し得る技術であって、4−1)がんのスクリーニングに用いられる特殊染色技術である免疫組織化学技術若しくは4−2)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)試験に用いられる酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)技術等、5)特定のDNA配列の確認のため、標的配列の補完として蛍光物質がDNAプローブに結合されて、標的配列を検出する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)技術、並びに6)抗原抗体反応を用いた沈殿技術若しくは凝集技術等の様々な方法で利用可能である。
【0047】
本開示において、接触型染色パッチ100の「染色」は、試料Tから検出する物体の間接的な染色に限られるものと解釈されるのではなく、検出対象の物体が蛍光発色可能な方法、放射線を検出可能な方法、酵素によって特定の物質に注入された場合に検出対象の物体が反応して発色し得る方法、及び凝集又は沈殿の誘導により検出対象の物体を検出可能な方法等、試料Tにおいて特定の標的物質を検出・確認可能なすべての方法を包括的に網羅する用語として解釈すべきである。
【0048】
言い換えると、本開示において、接触型染色パッチ100は、試験対象の物質を試料Tにおいて検出可能な状態とするのに役立つため、本開示の実際の技術的主旨によれば、接触型「検出誘導」パッチがより明確な表現となる。ただし、本開示の説明及び理解の便宜上、必要に応じて包括的な意味を伴いつつ、接触型「染色」パッチという用語を使用することになる。
【0049】
結果として、前述の用語と同様に、用語「染色」についても、検出対象の物体を直接染色する狭義の意味を有するものと解釈されるのではなく、検出対象の物体の蛍光発色、発色誘導、放射線検出、沈殿、凝集の誘導、及び他の検出可能な状態となるような検出対象の物体の誘導を含むあらゆる種類の「検出誘導」を網羅した広義の意味を有するものと解釈されるのが合理的である。
【0050】
上記と併せて、試料Tは、試験対象の物体である物質を表しており、血液、細胞、組織、染色体、DNA、寄生生物、細菌等、医学的試験を受けるすべての生物学的サンプルを網羅するものと解釈されるのが合理的である。
【0051】
接触型染色パッチ100を用いた試料Tの染色は、以下のように実行されるようになっていてもよい。
【0052】
まず、接触型染色パッチ100がゲル相で提供され、その中の細孔122に染色試薬140が収容されている。この状態において、接触型染色パッチ100が試料Tに接触すると、接触型染色パッチ100の内側の細孔122中の染色試薬140がゲルマトリクスのメッシュ構造を通過し、試料Tまで移動して、染色対象の物質を染色する。
【0053】
1.1.1 接触型染色パッチの基本構成
図1は、本開示の一実施形態に係る、接触型染色パッチ100の断面図である。
【0054】
図1を参照して、接触型染色パッチ100は、ゲル受容体120及び染色試薬140を含んでいてもよい。
【0055】
ゲル受容体120には、細孔122が形成された多孔性メッシュ構造を有するゲル相物質が設けられている。ゲル受容体120の細孔122は、染色試薬140を収容していてもよい。
【0056】
ゲル受容体120には、ゲルマトリクスを構成する様々な種類のゲルが設けられていてもよい。例えば、ゲル受容体120は、アガロースで構成されたゲルであってもよい。ここで、アガロースの代わりに寒天が用いられていてもよい。寒天とアガロースとを互いに比較した場合、寒天のポリガラクトース成分を精製した結果であるアガロースで構成されたゲル受容体120は、透明度又は硬度の制御に関して有利であるものの、寒天が用いられる場合は、精製プロセス等を省略可能であることから、大量生産の実行時のコストに関して有利となる可能性がある。
【0057】
上記のほか、ゲル受容体120として、シリコーンゲル、シリカゲル、シリコーンゴム、樹脂の主成分として知られるポリジメチルシロキサン(PDMS)ゲル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ゲル、及び他の様々な材料を用いたゲルが用いられるようになっていてもよい。
【0058】
通例は水溶液の形態の染色試薬140を保持可能なヒドロゲルがゲル受容体120として用いられるようになっていてもよいが、上記と異なり、非水溶液用の非ヒドロゲル物質が必要に応じて用いられるようになっていてもよい。
【0059】
染色試薬140は、試料Tと反応して試料Tを染色する物質である。ここで、染色試薬140は、上述の接触型染色パッチ100を使用可能な染色方法の例において、試料Tを直接染色する染色試薬のみならず、染色物質、蛍光物質等が結合され、染色対象の物質と反応して染色標的を検出可能にする抗体、DNAプローブ等、すべての物質を網羅する包括的な意味を有するものと解釈すべできある。
【0060】
例えば、染色試薬140は、酢酸カーミン、メチレンブルー、エオシン、酸性フクシン、サフラニン、ヤヌスグリーンB、ヘマトキシリン、ギムザ溶液、ライト溶液、並びにライト・ギムザ溶液、リーシュマン染色溶液、グラム染色溶液、石炭酸フクシン、及びチール・ネールゼン溶液等、ロマノスキー染色技術に用いられる様々な種類の染色溶液を含んでいてもよい。
【0061】
また、別の例として、染色試薬140は、DAPI蛍光色素、蛍光物質に結合されたDNAプローブ、及び酵素、蛍光物質、アイソトープ等に結合された抗体を含んでいてもよい。当然のことながら、染色試薬140は、上述の例に限定されず、前述の通り、染色対象の物質と反応して染色対象の物質を検出可能とする任意の物質であってもよい。
【0062】
1つの染色試薬140又は2つ以上の染色試薬140が混合され、細孔122に収容されていてもよい。
【0063】
例えば、接触型染色パッチ100を用いて単純な染色(細菌等をスライドSに固定して1つの染色試薬140で染色する方法)を実行しようとする場合は、その1つの染色試薬140が細孔122に収容されていてもよい。ここでは、メチレンブルー、クリスタルバイオレット、サフラニン等が染色試薬140として用いられるようになっていてもよい。これと同様に、接触型染色パッチ100を用いて特定の配列のみを検出しようとする場合は、当該特定の配列に対応するある種のDNAプローブに蛍光物質等の検出誘導物質が結合された1つの染色試薬140が用いられるようになっていてもよい。
【0064】
上の例と異なり、接触型染色パッチ100を用いてギムザ染色を実行しようとする場合は、細胞質レッドを染色するエオシン及び核バイオレットを染色するメチレンブルーを含む異種染色物質で構成された複合試薬(サンプル)が染色試薬140として用いられるようになっていてもよい。すなわち、エオシンである第1の染色試薬140−1及びメチレンブルーである第2の染色試薬140−2が混合され、細孔122に収容されていてもよい。
【0065】
当然のことながら、複合試薬が染色試薬140として用いられる染色技術において上述した通り、複数の染色試薬140を混合して細孔122に収容する代わりに、1つの染色試薬140をそれぞれ含む複数の接触型染色パッチ100が用いられるようになっていてもよい。例えば、ギムザ染色を実行しようとする場合は、エオシンパッチ(第1の染色試薬140−1としてエオシンを含む第1の接触型染色パッチ100−1)及びメチレンブルーパッチ(第2の染色試薬140−2としてメチレンブルーを含む第2の接触型染色パッチ100−2)のような別個の接触型染色パッチ100に染色試薬140が別々に含まれていてもよい。
【0066】
1.1.2 接触型染色パッチの緩衝液
染色試薬140は、必要に応じて、溶媒に溶ける形態でゲル受容体120の細孔122に収容されていてもよい。ここでは、染色試薬140と染色対象の物質との間で反応が起こる場合の反応条件を生成する緩衝液Bが溶媒として用いられるようになっていてもよい。
【0067】
緩衝液Bは、染色対象の物体と染色試薬140との間の反応が染色反応において容易に起こり得る反応環境を生成するのに役立つ。例えば、ギムザ染色等の染色反応においては、塩基性のメチレンブルーが負電荷を有する細胞核に結び付いて細胞核を染色し、酸性のエオシンが細胞質を染色するため、pH濃度が染色結果と密接に関連する。このため、染色を正しく実行するには、適当なpH濃度を与えるのが極めて重要と考えられる。結果として、この場合は、接触型染色パッチ100の染色試薬140を用いた反応に対して、緩衝液Bが最適なpHを維持するpH緩衝液であってもよい。
【0068】
緩衝パッチに関連する以下の記述でも説明するが、緩衝液Bとしては、染色反応の最適pHとpH濃度が等しい溶液が用いられるようになっていてもよい。
【0069】
或いは、染色反応の最適pHとpH濃度がわずかに異なる溶液が緩衝液Bとして用いられるようになっていてもよい。緩衝ステップにおいて染色される試料T上に大量の緩衝液Bが噴霧されて最適pHが設定される従来の染色プロセスと異なり、接触型染色パッチ100における緩衝液Bはゲル受容体120に含まれており、染色反応の最適pHは、接触型染色パッチ100及び試料Tが互いに接触するプロセスにおいて設定される。ここで、緩衝液Bは、ゲル受容体120に含まれる場合、染色試薬140等と反応するようになっていてもよく、緩衝液BのpHがわずかに調整されるようになっていてもよい。具体例を示すと、染色試薬140としてギムザ染料を使用する接触型染色パッチ100の場合、緩衝液BのpHは、接触型染色パッチ100の製造前の緩衝液BのpHと比較して、接触型染色パッチ100の製造後にわずかに上昇する。これは、緩衝液B、染色試薬140、及びゲル受容体120間の相互作用を原因とする因子と、従来の液体噴霧型の代わりにゲル接触型で緩衝作用が実行される場合に実際の作用pHがわずかに変化する事実とに起因する。この場合も、ギムザ染料の接触型染色パッチ100に関して、接触型染色パッチ100に含まれる緩衝液BのpHは、原材料緩衝液BのpHと比較して、約0.1〜0.4だけ上昇する可能性がある。反応の所望の最適pHが6.8である場合は、pH濃度が約6.4〜6.7である溶液が緩衝液Bとして用いられるようになっていてもよい。緩衝液BのpHを用いて接触型染色パッチ100の最適pHを設定することについては、以下の緩衝パッチの部でより明確に説明する。
【0070】
具体的に、pHが約6.5の緩衝液Bを用いて製造されたギムザ染色の接触型染色パッチ100が試料Tに接触して染色し、この染色された試料Tを観察した際には、pHが約6.6〜6.9の緩衝液Bの試料Tへの噴霧の結果と同様な実際の染色結果が観察された。
【0071】
言い換えると、特定のpH値を有する緩衝液Bを用いて製造された接触型染色パッチ100の有効pHは、緩衝液B自体のpH値とわずかに異なる値に変化する場合がある。ここで、有効pHとは、試料Tとパッチとの反応時の作用pHを表しており、例えば、液相の緩衝液Bが試料に噴霧された場合に試料Tに生じるpHであってもよい。
【0072】
結果として、接触型染色パッチ100を製造する場合は、緩衝液BのpHの調整によって、接触型染色パッチ100の有効pH値が染色技術の最適pH値と実質的に等しくなっていてもよい。
【0073】
すなわち、緩衝パッチに用いられる緩衝液B自体のpH値は、従来の染色技術において規定可能な染色を促進する最適pH値に対して、ゲルマトリクス中のゲル、染色試薬、及び緩衝液B間の相互作用によってバイアスされたpHを考慮してpH補償値により補償される値として設定されるようになっていてもよい。
【0074】
ここで、pH補償値は、ゲルの特性、染色試薬の種類、緩衝液Bに対する染色試薬又はゲル物質の量等に応じて決定されるようになっていてもよい。
【0075】
ここで、ゲルの特性に関して、pH補償値の大きさ(すなわち、絶対値)は、ゲル受容体120のゲルの濃度、硬度、多孔率、メッシュ構造の密度等に応じて増減するようになっていてもよい。例えば、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120のゲルの濃度が高くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、ゲルの濃度が低くなるにつれて減少するようになっていてもよい。また、例えばアガロースゲルがゲル受容体120として用いられる場合、pH補償値の大きさは、アガロースの濃度が高くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、アガロースの濃度が低くなるにつれて減少するようになっていてもよい。また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120が硬くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120が柔らかくなるにつれて減少するようになっていてもよい。また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120の多孔率が高くなるにつれて減少するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、多孔率が低くなるにつれて増大するようになっていてもよい。また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120のメッシュ構造の密度が高くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、密度が低くなるにつれて減少するようになっていてもよい。
【0076】
また、染色物質の相互作用に関しては、緩衝液Bに対する染色物質の量が増えるにつれて、より大きなpHシフトが生じるようになっていてもよく、酸性又は塩基性のどちらに向かってシフトするかは、染色物質の種類によって決定されるようになっていてもよい。ギムザ染色物質の場合は、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝に対して、塩基性の方向に向かう約0.1〜0.4のpHシフトが生じるようになっていてもよい。pHシフトは、緩衝液に対する染色物質の量が多くなるにつれて大きくなるようになっていてもよく、また、染色物質の種類が変わった場合には、塩基性に向かうpHシフトが生じるようになっていてもよい。
【0077】
上述の本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100において、ゲル受容体120は、染色試薬140を収容する機能を実行する。ここで、収容は、1)ゲル受容体120が内部に含まれる染色試薬140の外部への漏洩を防止することと、2)染色試薬140の外部からの汚染を防止することとを表す。収容機能は、1)ゲル受容体120のゲルマトリクスの構造的特性と、2)ゲル受容体120及び染色試薬140の電気化学的特性とに基づく。
【0078】
ゲル受容体120の構造的特性に基づく収容機能は、ゲル受容体120のメッシュ構造により細孔122に収容された染色試薬140がゲル受容体120の表面へと移動しないようにされることで実現されていてもよい。これについては、以下のように詳しく説明する。
【0079】
ゲル受容体120は、染色試薬140をゲル受容体120の内側に収容するメッシュ構造に細孔122を形成していてもよい。ここで、染色試薬140は、細孔122の内側から外側に出る場合、細孔122からゲル受容体120の表面まで移動する必要がある。このプロセスにおいては、染色試薬140がメッシュ構造を通過する必要があることから、細孔122の内側に収容された染色試薬140は、外側への漏洩が阻止される可能性がある。言い換えると、ゲル受容体120のメッシュ構造は、細孔122に収容された染色試薬140がゲル受容体120の表面を通じて蒸発又は漏洩することを妨げる。また、逆に言うと、染色試薬140の汚染に関しては、汚染物質が外側からゲル受容体120の表面を通過して、ゲル受容体120の内側の細孔122まで移動する必要がある。このプロセスにおいては、ゲル受容体120のメッシュ構造によって、異物のゲル受容体120への導入が妨げられ、ゲル受容体120の内側の染色試薬140の汚染を防止可能である。
【0080】
また、ゲル受容体120の電気化学的特性に基づく収容機能は、ゲル受容体120と染色試薬140との電気化学的反応性により実現されていてもよい。例えば、ゲル受容体120の細孔122に収容された染色試薬140が水溶液の形態の場合は、ゲル受容体120として親水性ゲルが準備され、染色試薬140のゲル受容体120から外側への漏洩が妨げられるようになっていてもよい。また、ゲル受容体120の特性によれば、逆特性の物質は外側からゲル受容体120へと浸透し得ない(例えば、疎水性汚染物質の親水性ゲル受容体120への浸透は阻止される)ことから、ゲル受容体120に含まれる染色試薬140は、汚染を防止可能である。
【0081】
また、ゲル受容体120の収容機能は、染色試薬140の漏洩及び汚染の単なる防止に限定されない。血液塗抹検査において血液を円滑に染色するには、染色の反応条件が極めて重要となる。例えば、適当なpH濃度が実現されていない場合は、染色試薬140と血液との反応が適正に行われない可能性があり、誤って染色された血液が顕微鏡で観察され、結果的に試験で誤りが生じる可能性がある。
【0082】
上記に関して、本開示においては、染色試薬140が適正な反応条件を有しつつ、ゲル受容体120の細孔122に収容されていてもよく、また、反応条件が維持された状態で、ゲル受容体120が染色試薬140を収容していてもよい。例えば、ギムザ染色は、7.2のpHにて実行される。この場合、ギムザ染色の染色試薬140は、pH7.2の水溶液の形態で、ゲル受容体120の細孔122に含まれていてもよい。染色試薬140又は水溶液の外側への漏洩又は異物による汚染がゲル受容体120のメッシュ構造により防止されることから、ギムザ染色の染色試薬140は、pHが7.2に維持された水溶液の形態でゲル受容体120の内側に収容されていてもよい。
【0083】
接触型染色パッチ100には、所望の反応条件を維持しつつ染色試薬140を長期間にわたって保護できる利点がある。これは、染色の実行のたびに染色試薬140の反応条件を設定する必要がある従来の染色技術が用いられる場合に大きな利点となる。
【0084】
1.1.3 接触型染色パッチの付加的構成
接触型染色パッチ100は、様々な付加的構成をさらに含んでいてもよい。染色試薬140と同様に、これら付加的な構成についても、接触型染色パッチ100に含まれるゲル受容体120の細孔122に収容されていてもよい。
【0085】
例えば、接触型染色パッチ100には、蒸発防止剤が含まれていてもよい。蒸発防止剤は、ゲル受容体120の内側の染色試薬140が蒸発によって外側に漏洩することを防止する役割を果たしていてもよい。上述の通り、水溶液等の形態でゲル受容体120の細孔122に収容された染色試薬140は、ゲルマトリクス構造又はゲル受容体120の水溶性の特性によって、外側への漏洩がある程度は妨げられているものの、ゲル受容体120に含まれる蒸発防止剤により接触型染色パッチ100の性能が維持された状態で長期間にわたって収容されるようになっていてもよい。蒸発防止剤は、重量比が5%以下であってもよく、好ましくは重量比が1%以下であってもよい。
【0086】
別の例においては、変性防止剤が接触型染色パッチ100に含まれていてもよい。接触型染色パッチ100における細菌の増殖を防止する消毒剤及び抗生剤と同様に、変性防止剤は、接触型染色パッチ100の内側の染色試薬140が様々な原因で変性するのを防止する機能を実行する。ゲル受容体120が露出している場合は、細菌又は病原菌が内部で増殖し、染色試薬140の汚染の結果として接触型染色パッチ100の性能が低下する可能性がある。変性防止剤が接触型染色パッチ100に添加された場合は、接触型染色パッチ100の保存可能期間が長くなる可能性がある。
【0087】
1.2 接触型染色パッチを用いた染色プロセス
図2は、従来の血液塗抹検査プロセスを示した図であり、
図3は、従来の血液塗抹検査プロセスの染色プロセスに関する図である。
【0088】
図2を参照して、従来の血液塗抹検査は、以下のように実施される。まず、染色溶液等の反応物質を準備する。次に、血液をスライドS上に滴下して塗抹する。血液をスライドS上で塗抹したら、固定して乾燥させる。塗抹血液の固定は主として、化学的固定手段を用いることにより実行可能である。塗抹血液をスライドSに固定したら、染色溶液を注いで血液を染色する。ここでは、染色溶液を血液に注ぐことにより、大量の染色溶液が血液と混ざり合うため、染色溶液及び血液の混合物を洗浄した後、再び乾燥させる。このプロセスの後、顕微鏡等を用いてスライドS上の染色された血液を観察することにより、血液塗抹検査を実施可能である。
【0089】
図3を参照して、従来の血液塗抹検査で血液を塗抹したスライドSへの染色溶液の噴霧の形態により染色を実行するが、この場合は、粉末状の染色試薬140を用いることにより、染色溶液をその場で製造する必要がある。その結果、染色試薬140と溶媒との比率を設定するには、熟練者の手仕事又は適正な比率を混合する別個の機器が必要となる。さらに、染色溶液を前もって製造する場合は、1)前もって製造した染色溶液が空気に触れて反応する可能性、2)染色溶液の内側で溶媒と染色試薬140との反応が起こる可能性、又は3)複数の染色試薬140を混合して染色溶液を製造・使用した場合に、異種染色試薬140間の反応が起こる可能性がある。したがって、染色溶液が汚染されたり、適正な反応条件が維持されなかったりする可能性があることから、染色溶液は、製造後の数時間だけ使用可能である。
【0090】
これに関して、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100は、所望の反応条件が維持された状態で、ゲル受容体120のメッシュ構造を構成する細孔122に染色試薬140を収容するため、染色試薬140の溶媒との混合により検査場所で染色溶液を製造する代わりに前もって製造可能であり、長期間にわたって検査に使用することができる。
【0091】
図4は、本開示の一実施形態に係る、接触型染色パッチ100の斜視図であり、
図5は、本開示の一実施形態に係る、接触型染色パッチ100と試料スライドSとの接触状態を示した図である。
【0092】
図4を参照して、接触型染色パッチ100の形状は、ゲル受容体120の形状により規定されていてもよく、試料Tに接触する接触面102が少なくとも一方の表面に形成されていてもよい。ここで、接触面102は、試料Tに直接接触する表面であり、好ましくは、スライドSに塗抹された試料Tとの接触を促進する平坦面であってもよい。例えば、接触型染色パッチ100は、
図4に示すように、柱状に設けられていてもよく、このような円柱状では、柱体の上面及び下面の一方が接触面102であってもよい。
【0093】
図5を参照して、試料Tが塗抹されたスライドSを
図4に示す接触型染色パッチ100の上面に載せること、又は逆に、試料Tが塗抹されたスライドSに染色パッチを載せることによって、接触型染色パッチ100が試料Tに接触することが分かる。
【0094】
接触型染色パッチ100の形状は、
図4に示す形状に限定されず、複数の接触面102を含んでいてもよい。例えば、接触型染色パッチ102は、六面体状に製造されていてもよく、その1つ又は複数の表面が接触面102として用いられるようになっていてもよい。また、別の例において、接触型染色パッチ100は、半球状に製造され、その底面が接触面102であってもよい。
【0095】
図6は、本開示の一実施形態に係る、接触型染色パッチ100を用いた染色プロセスに関連する図である。
【0096】
図6を参照して、接触型染色パッチ100は、スライドSに塗抹された試料Tに接触するようになっていてもよい。言い換えると、ゲル受容体120の接触面102は、試料Tに直接接触するようになっていてもよい。接触が生じた場合、染色試薬140は、メッシュ構造を通過して、試料T又は染色試薬140と反応する試料Tの特定の成分とゲル受容体120の内側に含まれる染色試薬140すなわち内部の細孔122に収容された染色試薬140との電気化学的作用により、接触面を通じて試料Tまで移動するようになっていてもよい。試料Tまで移動した染色試薬140は、試料T又は試料Tの特定の成分と反応して、試料Tを染色するようにしてもよい。
【0097】
ここでは、反応条件が維持された状態で染色試薬140がゲル受容体120の内側に収容されていることから、反応条件が別個に調整されなくても、染色を円滑に実行可能である。
【0098】
染色試薬140と試料T又は試料Tの特定の成分との間に作用する力により、染色試薬140がゲル受容体120のメッシュ構造を通過して試料Tまで移動するものの、メッシュ構造によりいくらか制限された状態で行われることから、非常に多くの染色試薬140又は染色溶液が試料Tまで移動できなくなる可能性がある。
【0099】
ここでは、メッシュ構造の密度及びゲルの流動性、多孔性等の程度の調整によって、試料Tまで移動する染色試薬140又は染色溶液の量が制御されるようになっていてもよい。すなわち、ゲルの硬度を適正に調整することによって、適正量の染色試薬140だけが接触型染色パッチ100から試料Tへと移行可能である。
【0100】
例えば、ギムザ染色の接触型染色パッチ100がアガロースゲルを用いて末梢血塗抹検査用に製造されている場合、アガロースの濃度は、好ましくは1〜5%であってもよい。アガロースの濃度が上記の範囲より高い場合は、染色試薬140の移動が遅れる可能性があり、十分な量の染色試薬140が血液に移動しないため、染色が行われない問題が生じる可能性がある。逆に、アガロースの濃度が上記の範囲より低い場合は、染色試薬140の過剰な移動が起こって、必要量以上の染色試薬140が血液へと移行する可能性がある。必要量以上の染色試薬140が移行した場合は染色を円滑に実行可能であるものの、染色試薬140の浪費によって残留物が血液に残されるため、この残留物を取り除く洗浄及び乾燥プロセスが後で必要となることが不利な点である。結果として、アガロースの濃度は、好ましくは1.5〜2.5%であってもよい。
【0101】
図5を再び参照して、接触型染色パッチ100は、試料Tと接触した場合、如何なる外圧もなく試料Tに接触するだけ(単純な垂直接触時に重力のみが作用し、圧力がほとんどないとも考えられる)の場合もあれば、両者間に所定の圧力が印加される場合もある。これは、接触型染色パッチ100の硬度に応じて適正に選択されるようになっていてもよい。例えば、接触型染色パッチ100がいくらか柔らかく製造された場合は、単純な接触のみで十分な量の染色試薬140が試料Tに移行可能であり、逆に、接触型染色パッチ100がいくらか硬く製造された場合は、適正な量の染色試薬140を試料Tへと移行させるのに、所定の圧力の印加が必要となる可能性がある。
【0102】
試料Tに直接接触して試料Tを染色する接触型染色パッチ100が用いられる場合は、1)反応条件が別個に調整されなくても、接触型染色パッチ100を試料Tに接触させるだけで、正しい反応条件下で染色を実行可能であり、2)染色試薬140の浪費を最小限に抑えることができ、3)染色前の試料Tの固定等の前処理プロセス又は染色後の洗浄及び乾燥等の後処理プロセスの省略によって、染色プロセスが簡素化される利点がある。
【0103】
図2及び
図3を再び参照して、染色溶液は、従来の血液塗抹検査における染色用にその場で製造する必要があり、オペレータのミスで適正な反応条件を設定できないことにより、染色の誤りが起こりやすい問題がある。或いは、染色試薬140を溶媒と適正に混合する別個の機器の使用により上記問題に対処する場合であっても、この混合機器の購入に別途コストを要するのみならず、染色作業の実行のたびに混合作業の実行が必要となる不都合により、時間及びコストの観点での損失が生じる。
【0104】
これに対して、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100は、適正な反応条件に維持された染色試薬140を収容し、接触型染色パッチ100を試料Tに接触させるだけで染色が正しく実行されるため、はるかに便利であるとともに、熟練していない医療従事者であっても染色を実行可能である。
【0105】
また、
図2及び
図3を参照して、従来の血液塗抹検査で血液を塗抹したスライドSへの染色溶液の噴霧の形態により染色を実行するが、この場合は、大量の染色試薬140が浪費される問題がある。一度噴霧された染色試薬140の再利用の困難さに起因するコストの観点での大きな損失のみならず、染色試薬140が残った場合は、染色試薬140を管理する負担も加わるため、環境に悪影響を及ぼす懸念もある。
【0106】
これに対して、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100では、染色試薬140又は染色溶液が収容された状態で試料Tに接触することにより、所要量の染色試薬140のみが血液に移行するため、染色試薬140を節約可能であり、流体状の染色試薬140が噴霧される代わりにゲル相の染色試薬140が接触するため、使用後の染色試薬140の回収もはるかに便利である。
【0107】
さらに、接触型染色パッチ100は、長期間にわたって保管可能なため、一度使用しただけで廃棄されず、複数回使用可能である。このため、接触型染色パッチ100が複数回使用される場合は、コスト及び環境保護の観点での利点がより明確となる。
【0108】
また、
図2及び
図3を参照して、従来の血液塗抹検査では、血液に染色溶液を噴霧する形態で染色を実行するため、血液が染色溶液で押し流されてしまわないように、血液をスライドSに固定する前処理プロセスが必要となる。
【0109】
これに対して、本開示の実施形態に係る接触型染色パッチ100では、単純な接触によって染色試薬140が血液に移行するため、このプロセスで試料TがスライドS上に残ったり、スライドSから接触型染色パッチ100の方に一部の血液が押し流されたりしても、それは少量であるため、必要に応じて、試料TをスライドSに固定する必要がなくなり得る。当然のことながら、試験結果をさらに最適化するため、試料Tを固定することが必要となる場合もあり得る。ただし、試料Tを固定することの利益は、試験プロセスの簡素化により生じる利益と類似するため、オペレータは、これらの利益を十分に考慮した上で試料Tを固定するか否かを選択するようにしてもよい。
【0110】
また、
図2及び
図3を参照して、血液の染色後は、噴霧されてスライドS上に残る染色溶液を取り除く必要があるため、従来の血液塗抹検査においては、洗浄及び乾燥等の後処理が必要となる。
【0111】
これに対して、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100においては、染色試薬140又は染色溶液がスライドSへと過剰に移行することがないため、残留物がスライドS上に残ることはなく、洗浄プロセスを省略可能であり、洗浄プロセスの省略によって乾燥プロセスも省略可能である。
【0112】
特に、従来の血液塗抹検査においては、例えば洗浄が長期間にわたって実行された場合の脱色の発生等、誤った染色結果が洗浄プロセスによってもたらされる問題がある。本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100が用いられる場合は、洗浄プロセス自体が不要であり、洗浄プロセスに起因する誤った染色自体を防止可能である。
【0113】
1.3 接触型染色パッチの製造方法
以下、本開示の一実施形態に係る、上述の接触型染色パッチ100の製造方法について説明する。
【0114】
接触型染色パッチ100の製造方法の一例には、ゲル受容体120を形成して、染色試薬140をゲル受容体120に吸い込むことを含んでいてもよい。
【0115】
まず、アガロース粉末等、ゲル構成物質、ゲル化可能物質等として機能するゲル原材料を用いてゲル受容体120を形成する。例えば、ゲル受容体120は、アガロース粉末及び水が適正な比率で混合され、その混合物が加熱及び冷却されることで製造されるようになっていてもよい。ここで、加熱方法としては、混合物の煮沸、マイクロ波による混合物の焼成等を利用可能である。また、ここで、冷却方法としては、自然冷却又は強制冷却が挙げられ、必要に応じて、撹拌プロセスが冷却方法に含まれていてもよい。
【0116】
次に、製造されたゲル受容体120に染色試薬140を吸い込むようにしてもよい。染色試薬をゲル受容体120に吸い込むため、染色試薬140が収容されたチャンバ、容器等において、ゲル受容体120を所定期間にわたって浸し、染色試薬140を十分に吸い込んだ後に取り出す方法が用いられるようになっていてもよい。
【0117】
別の例において、接触型染色パッチ100の製造方法としては、ゲル原材料、水溶液、及び染色試薬を混合してゲル受容体を構成する方法が挙げられる。例えば、接触型染色パッチ100は、アガロース、水溶液(又は、緩衝液)、及び染色試薬140(緩衝液と混合されていてもよい)を適正な比率で混合し、当該混合物を加熱及び冷却することにより製造されるようになっていてもよい。ここで、加熱・冷却手段は、上述の例と同様であってもよい。
【0118】
さらに別の例において、接触型染色パッチ100の製造方法としては、ゲル原材料及び溶液を混合して加熱した後、加熱した混合物を冷却するプロセスにおいて染色試薬140を注入する方法が挙げられる。例えば、アガロース及び水溶液を適正な比率で混合して加熱した後、加熱した混合物を冷却するプロセスにおいて染色試薬140を混合物に添加するようにしてもよい。
【0119】
1.4 接触型染色パッチの実験例
以下、本開示の一実施形態に係る、上述の接触型染色パッチ100の実験例について説明する。
【0120】
この実験例において、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100には、マラリア検査用の従来のギムザ染色技術が適用される。
【0121】
ギムザ染色技術は、この実験例を含む後述の様々な実験例におけるロマノスキー染色技術の代表として説明しているに過ぎないため、実施形態がギムザ染色技術に限定されることはなく、他の様々なロマノスキー染色技術にも適用可能である。また、本明細書に記載の接触型パッチ100を用いて実行される試料染色技術は、従来のロマノスキー染色技術及び他の様々な染色技術の効果が維持された状態で簡単な手順を有することから、それらの代替となることが期待される。本開示に関連して本出願人らが執筆する論文においては、試料染色技術を「ノウル(Noul)染色」と称する。
【0122】
接触型染色パッチ100は、以下の手順に従って製造した。
【0123】
1)アガロース、ギムザ粉末、及び緩衝液Bを混合した後、混合物を煮沸してから室温で冷却した。アガロースは、2%の濃度で使用し、緩衝液Bは、pHが7.2のものを使用した。また、混合物は、100℃以上に加熱した。ここで、アガロースの濃度は、1〜3%の範囲内で調整されていてもよい。また、緩衝液BのpH濃度は、6.4〜7.6のpH範囲に調整されていてもよい。
【0124】
このように製造した接触型染色パッチ100を、スライドS上の単層として塗抹した血液上に約5分間配置した後、100倍の顕微鏡を用いて染色結果を観察した。原虫(マラリア誘発原虫)に感染したマウスの眼から収集した血液を使用した。
【0125】
図7は、従来の流体噴霧手段に係る、標準的なギムザ染色プロセスすなわちギムザ染色技術を用いた染色の結果の画像であり、
図8は、各pH濃度について、標準的なギムザ染色プロセスに係る、ギムザ染色技術を用いた染色の結果の画像であり、
図9は、本開示の一実施形態に係る、接触型染色パッチ100が適用されたギムザ染色技術を用いた染色の結果の画像である。
【0126】
図7は、ギムザ染色の適当なpH濃度に従った染色の結果である。一方、
図8は、染色プロセスにおいてpH濃度が適正値から逸脱した場合の染色の結果である。
図9を参照して、上述の接触型染色パッチ100がギムザ染色技術に適用された結果は、適当なpH濃度に従った正しい染色結果と同様の結果を示している。これは、接触型染色パッチ100を用いた染色が適正に実行されたことを示唆している。
【0127】
特に、標準的なギムザ染色プロセスにおいて血液が塗抹されたスライドSに噴霧された染色溶液は、染色に20〜30分以上を要する。これに対して、接触型染色パッチ100が用いられる場合は、5分以内に同じ結果が得られる。さらに、従来の標準的なプロセスにおいては、染色溶液の準備又は染色実行後の洗浄、乾燥等に少なくとも数十分を要する。これに対して、接触型染色パッチ100が用いられる場合は、染色実行後の約数十秒の自然乾燥の後、顕微鏡を用いた観察を直ちに行うことができるため、時間短縮効果がなお一層高くなる。
【0128】
また、上述と同じ検査用の接触型染色パッチ100は、以下の手順に従って製造されていてもよい。
【0129】
2)0.4gのアガロースをpH7.2の緩衝液Bの20mlの混合溶液と混ぜ合わせた後、混合物をマイクロ波で30秒間加熱して撹拌しながら冷却した。そして、1mlのギムザ変性溶液を混ぜ合わせ、混合物をさらに冷却した後、硬化によってゲル相を得た。
【0130】
このように製造した接触型染色パッチ100を、スライドS上の単層として塗抹した血液上に約5分間配置した後、100倍の顕微鏡を用いて染色結果を観察した。原虫(マラリア誘発原虫)に感染したマウスの眼から収集した血液を使用した。
【0131】
図10は、本開示の一実施形態に係る、接触型染色パッチ100が適用されたギムザ染色技術を用いた染色の別の結果の画像である。
図10を参照して、上述の通りマイクロ波焼成により製造した接触型染色パッチ100がギムザ染色技術に適用された結果も、適当なpH濃度が見られる正しい染色結果と同様の結果を示している。したがって、この場合も、接触型染色パッチ100を用いた染色が適正に実行されたことを示唆している。
【0132】
これらの染色結果を鑑みるに、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100は、従来の標準的なプロセスに従って実行される染色方法よりも安定した染色性能を有することが期待される。
【0133】
以上、接触型染色パッチ100にギムザ染色技術を適用した実験例を説明したが、接触型染色パッチ100は、他の異なる染色技術にも適用可能であることが容易に了解され得る。
【0134】
図11は、標準的な染色技術及びライト染色技術に対して接触型染色パッチ100が適用された染色技術に係る、結果を示している。
【0135】
ライト染色の接触型染色パッチ100として、pH6.8の緩衝液Bをライト染色試薬140及びアガロースと混合した染色溶液を用いることにより、ゲル相接触型染色パッチ100を製造した。
図11は、接触型染色パッチ100を約5分間にわたって試料T上に配置した後の400倍の顕微鏡による観察結果を示している。
図11に示すように、ライト染色技術の場合も、標準的なプロセスに従って得られた結果とほとんど同じ結果が得られていることが確認された。
【0136】
図12は、DAPI染色技術に対して接触型染色パッチ100が適用された染色技術に係る、結果を示している。
【0137】
DAPI染色の接触型染色パッチ100として、0.4gのアガロース、20mlのPBS(リン酸緩衝食塩水)、及び20μlのDAPIを用いることにより、ゲル相接触型染色パッチ100を製造した。
図12は、接触型染色パッチ100を約5分間にわたって試料T上に配置した後の明視野20倍及び蛍光20倍による観察結果を示している。
図12に示すように、DAPI染色技術の場合も、その結果として、安定した蛍光発色が確認された。
【0138】
これらの染色結果を鑑みるに、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100は、従来実行されている染色技術の標準的なプロセスのほとんどを簡素化するとともに、安定した染色性能を保証することでその代替となることが期待される。
【0139】
1.5 接触型染色パッチの利用
上記を考慮して、接触型染色パッチ100を利用する代表例は、以下の通りである。
【0140】
1.5.1 染色パッチ
血液学で用いられる従来の染色技術においては、液相の染色溶液が血液細胞又は組織に噴霧される。ただし、この方法では、残留物が試料T上に残り、残留物の除去に必須の洗浄及び乾燥プロセスを一定に制御するのが困難である。また、使用する染色試薬の製造方法、製造期間、緩衝剤のpH濃度の変化等に係る変化の影響を結果が受けやすいため、安定した染色結果を得るのが困難である。さらに、従来の標準的なプロセスには、様々な種類の機器が必要であり、当該機器を使用する手順が相当複雑であることから、非熟練者がこの手順を実行するのは極めて困難である。
【0141】
染色パッチは、従来の染色技術の革新的な改良であり、基本的には、染色試薬140をヒドロゲル状態に保つゲル相受容体を表す。染色パッチは、必要に応じて染色粉末、ヒドロゲル、緩衝液B、安定剤、水等を適正に組み合わせて製造されるようになっていてもよく、製造した染色パッチを比較的短い時間にわたって血液細胞又は組織と接離させることで染色が完了する簡単な手順を実現可能である。
【0142】
この方法には、染色プロセス全体から洗浄及び乾燥プロセスを省略可能であり、染色自体の時間が短く、染料等の残留物が試料Tに残らず、サンプルの使用を最小限に抑えられ、従来方法と比較して結果が一定且つ安定しているという利点がある。
【0143】
結果として、染色パッチは、水等の緩衝物質がヒドロゲル中のように維持された状態で、染色試薬140と反応対象の物質との間に化学反応が誘発されるように水を保持しつつ、染色プロセスにおける反応条件(又は、環境条件)を生成するため、洗浄及び乾燥プロセスの必要性がなくなる。
【0144】
染色パッチの代表例としては、ギムザパッチ及びライトパッチ等のロマノスキー染色パッチ並びにパパニコロウ染色パッチが挙げられる。
【0145】
1.5.2 抗体パッチ
免疫組織化学又は酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)の実行において、抗体パッチは、抗体を運搬可能なパッチである。或いは、従来の液体状態の代わりとなるヒドロゲル状態において、蛍光物質等のレポータが結合された抗体を運搬可能なパッチである。
【0146】
染色パッチと同様に、抗体パッチは、所定の時間にわたって血液又は組織と接触する。この接触により、ゲルの内側に含まれる抗体は、抗原抗体反応により抗体パッチから出て、反応が終了となる。
【0147】
抗体パッチが用いられる場合は、従来の手段よりも迅速に結果が得られ、洗浄及び乾燥プロセスを省略可能であり、背景ノイズを最小限に抑えることができる。
【0148】
1.5.3 DNAパッチ
FISH試験等の実行において、DNAパッチは、蛍光物質レポータが結合されたDNAプローブを運搬するパッチであり、従来の液体状態の代わりとなるヒドロゲル状態において運搬されるパッチである。
【0149】
染色パッチと同様に、DNAパッチは、所定の時間にわたって血液、組織等の試料Tと接触した後、そこから取り外される。この接触により、DNAプローブがパッチから出てハイブリダイゼーションされ、反応が終了となる。
【0150】
また、DNA試験において、DNAパッチが用いられる場合は、従来の方法よりも迅速且つ正確な結果が得られ、洗浄及び乾燥プロセスを省略可能である。
【0151】
以上、接触型染色パッチ100を利用する様々な例を説明した。ただし、接触型染色パッチ100を利用可能な分野は、上述のものに限定されず、接触型染色パッチ100は、他の様々な種類の染色(本明細書に規定の「広義の染色」であって、試料の試験時に検出を誘導することを意味する)において利用可能である。ここで、染色試薬140は、接触型染色パッチ100が利用される分野に応じて適正に選択されるようになっていてもよい。例えば、染色パッチの場合は、染色物質が染色試薬140として用いられるようになっていてもよい。抗体パッチの場合は、抗体が染色試薬140として用いられるようになっていてもよい。DNAパッチの場合は、DNAプローブが染色試薬140として用いられるようになっていてもよい。
【0152】
2.接触型染色補助パッチ
反応対象の物質である試料Tと反応する染色試薬140を含む接触型染色パッチ100を説明した。以下では、例えば試料Tの固定又は緩衝、脱色、媒染、洗浄等、染色プロセスの全体を通して行われる他のプロセスを実行する、本開示の一実施形態に係る接触型染色補助パッチ100’について説明する。
【0153】
2.1 接触型染色補助パッチの例
基本的に、接触型染色補助パッチ100’の構成は、接触型染色パッチ100の構成と実質的に同じである。具体的には、接触型染色パッチ100と同様に、接触型染色補助パッチ100’は、ゲル受容体120を具備しており、染色試薬140の代わりに染色促進剤160を含んでいてもよい。
【0154】
染色促進剤160は、接触型染色補助パッチ100’が利用される分野に応じて選択されるようになっていてもよい。
【0155】
2.1.1 固定パッチ
例えば、試料Tの固定に用いられる場合、染色促進剤160は、試料TをスライドS等に固定するアルコール(エタノール、メタノール、又はその他)等の試料固定剤であってもよい。
【0156】
2.1.2 脱色パッチと媒染パッチ
別の例において、脱色又は媒染に染色促進剤160が用いられる場合は、脱色剤又は媒染剤が染色促進剤160として用いられるようになっていてもよい。グラム染色技術においては、主染色剤としてクリスタルバイオレットを用いることによりグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の両者が染色された後、媒染剤としてヨウ素を用いることにより主染色剤がグラム陽性細菌に固定され、アルコール(エタノール、メタノール、又はその他)等の脱色剤を用いることにより、グラム陰性細菌に固定されていない主染色剤がグラム陰性細菌から剥がされ、コントラスト染色剤としてサフラニンを用いることにより、脱色されたグラム陰性細菌が染色されるため、グラム陽性細菌が主染色剤により染色され、グラム陰性細菌がコントラスト染色剤により染色されて、結果的に両者が互いに異なる色を示す。このプロセスにおいて、実際の染色が主染色剤及びコントラスト染色剤のみで構成されている場合、媒染剤及び脱色剤は、染色自体は行わないものの、染色を補助する役割を果たす。グラム染色技術においては、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100として、クリスタルバイオレット(主染色剤)を染色試薬140として使用する主染色パッチ及びサフラニン0(コントラスト染色剤)を染色試薬140として使用するコントラスト染色パッチが準備されるとともに、本開示の一実施形態に係る接触型染色補助パッチ100’として、ヨウ素(媒染剤)を染色促進剤160として含む媒染パッチ及びアルコール(脱色剤)を染色促進剤160として含む脱色パッチが準備されるため、主染色パッチ、媒染パッチ、脱色パッチ、及びコントラスト染色パッチをこの順序で試料Tと接触させることによって、グラム染色技術を実行することができる。
【0157】
上述の固定剤又は脱色剤を用いて固定パッチ及び脱色パッチ等の
接触型染色補助パッチ100’が製造される場合は、ゲル受容体120の材料として、非ヒドロゲルが主に用いられるようになっていてもよい(当然のことながら、状況に応じてヒドロゲルも使用可能である)。試料TをスライドSに固定する固定剤として、高濃度(例えば、99%以上)のアルコールの使用が必要となる場合もある。ここで、ヒドロゲルが用いられる場合は、ゲル受容体120とアルコールとの相互作用によりアルコールの濃度が低下し、結果として固定作用が低下する可能性がある。これに対して、ゲル受容体120が非ヒドロゲルならば、上記の場合にアルコールの濃度を比較的十分に維持することができるため、固定性能又は脱色性能を向上可能である。非ヒドロゲルとしては、PDMSゲル、PMMAゲル、シリコーンゲル等が用いられるようになっていてもよい。
【0158】
また、固定パッチ又は脱色パッチは、ゲル受容体120の固化結果である固定剤又は脱色剤で置き換えられてもよい。例えば、固定パッチ又は脱色パッチとしては、固化メタノール自体が用いられるようになっていてもよい。
【0159】
2.1.3 緩衝パッチ
さらに別の例においては、染色促進剤160として緩衝液Bを使用する緩衝パッチが考えられる。緩衝パッチは、試料Tの染色前、染色後、又はその両者に試料Tと接触することで試料Tにおける染色の反応条件(環境条件)を生成するパッチであってもよい。ギムザ染色の場合、緩衝パッチは、ギムザ染色に適したpHの緩衝液Bが染色促進剤160としてゲル受容体120に収容された形態で設けられていてもよい。
【0160】
緩衝パッチに含まれる緩衝液BのpHは、反応条件に応じたpHすなわち最適pHと実質的に同じであってもよい。
【0161】
或いは、上記と異なり、緩衝液BのpHは、反応の最適pHといくらか異なっていてもよい。
【0162】
染色が実行される場合、適正な染色環境の生成、特に、適当なpHの生成は、染色を適正に行うための重要な因子となり得る。一般的に、従来の染色手順の緩衝ステップにおいては、染色対象、染色中、又は染色予定の試料に最適pHの緩衝液Bを噴霧又は滴下することによって、pH条件が設定される。これに対して、接触型染色補助パッチ100’を用いた緩衝ステップでは、緩衝パッチを試料Tと接触させることによって、試料にpH条件が生成される。その結果、接触型染色補助パッチ100’は、液相の緩衝液が試料に接触する従来の手段と異なるメカニズムに従って、試料T中に緩衝作用を生じさせる。
【0163】
具体的に、pHが約6.5の緩衝液Bを用いて製造された緩衝パッチが染色対象の試料Tに接触し、この染色された試料Tを観察した際には、pHが約6.6〜6.9の緩衝液Bの染色対象試料Tへの噴霧の結果と同様な染色結果が実際に観察される。
【0164】
逆に、pHが約7.6の緩衝液Bを用いて製造された緩衝パッチが染色対象の試料Tに接触し、この染色された試料Tを観察した際には、pHが約7.2〜7.4の緩衝液Bの染色対象試料Tへの噴霧の結果と同様な染色結果が実際に観察される。
【0165】
上記の点を考慮して、緩衝液Bがゲル受容体
120に含まれた状態で試料T上に設けられた場合の試料Tに生成されるpHは、緩衝液Bが液相で試料Tに直接噴霧された場合の生成pHよりも中性pH側にいくらかバイアスされていることを認識可能である。これは、緩衝パッチを用いて緩衝液Bが直接設けられている場合、緩衝液Bと試料Tとの間に起こる酸−塩基相互作用がゲルマトリクスのメッシュ構造を通じて生じるため、液相で噴霧された緩衝液Bと試料との間の酸−塩基相互作用よりもいくらか遅延するためである。
【0166】
言い換えると、特定のpH値を有する緩衝液Bを用いて製造された緩衝パッチの有効pHは、緩衝液B自体のpH値よりも中性pH側にいくらかバイアスされている。ここで、有効pHとは、試料Tに作用するpHを表しており、例えば、液相の緩衝液Bが試料に噴霧された場合に試料Tに生じるpHであってもよい。
【0167】
結果として、緩衝パッチの製造時には、緩衝液BのpHの調整により、緩衝パッチの有効pH値が、緩衝パッチが緩衝に用いられる染色技術の最適pH値と実質的に同じであってもよい。
【0168】
すなわち、緩衝パッチに用いられる緩衝液B自体のpH値は、従来の染色技術において規定可能な染色を促進する最適pH値に対して、酸−塩基相互作用がゲルマトリクスにより妨げられる程度を考慮してpH補償値により補償される値として設定されるようになっていてもよい。
【0169】
ここで、最適pHが酸性の場合、pH補償値は負の値であってもよい。例えば、最適pHが6.8の場合は、pH補償値が−0.3であってもよく、したがって、緩衝パッチの製造時に用いられる緩衝液BのpH値は、6.8の有効pHに対して6.5のpHであってもよい。
【0170】
また、ここで、最適pHが塩基性の場合、pH補償値は正の値であってもよい。例えば、最適pHが7.4の場合は、pH補償値が+0.2であってもよく、したがって、緩衝パッチの製造時に用いられる緩衝液BのpH値は、7.4の有効pHに対して7.6のpHであってもよい。
【0171】
pH補償値の大きさ(すなわち、絶対値)は、ゲル受容体120のゲルの濃度、硬度、多孔率、メッシュ構造の密度等に応じて増減するようになっていてもよい。
【0172】
pH補償値の大きさは、ゲル受容体120のゲルの濃度が高くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、ゲルの濃度が低くなるにつれて減少するようになっていてもよい。例えば、アガロースゲルがゲル受容体120として用いられる場合、pH補償値の大きさは、アガロースの濃度が高くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、アガロースの濃度が低くなるにつれて減少するようになっていてもよい。
【0173】
また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120が硬くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120が柔らかくなるにつれて減少するようになっていてもよい。
【0174】
また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120の多孔率が高くなるにつれて減少するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、多孔率が低くなるにつれて増大するようになっていてもよい。
【0175】
また、pH補償値の大きさは、ゲル受容体120のメッシュ構造の密度が高くなるにつれて増大するようになっていてもよく、また、pH補償値の大きさは、密度が低くなるにつれて減少するようになっていてもよい。
【0176】
緩衝パッチのpHシフト現象は、接触型染色パッチ100において染色試薬140が緩衝液Bと混合された場合に緩衝液BのpHがシフトする場合と異なる原因によってもたらされる。すなわち、緩衝パッチのpHシフトは、直前に記載の原因により生じるものの、接触型染色パッチ100のpHシフトは、直前に記載の原因と、接触型染色パッチ100の緩衝液Bに関連する記載の一部に係る原因とを含む複雑な原因によって生じ得る。
【0177】
緩衝液BのpH補償に関する上記説明は、緩衝パッチに含まれる緩衝液Bに適用されるのみならず、一般的には、緩衝液Bを有する接触型染色パッチ100又は接触型染色補助パッチ100’にも適用可能である。例えば、接触型染色パッチ100に含まれる染色試薬140が、染色粉末が緩衝液Bと混合された溶液の形態であったとしても、最適pHに対してpH補償値を加算又は減算した結果としてのpH値は、緩衝液BのpH値を最適pHに対応させる代わりに、緩衝液BのpH値として設定されていてもよい。
【0178】
2.1.4 洗浄パッチ
さらに別の例においては、洗浄パッチが存在していてもよい。洗浄パッチは、染色プロセス中に洗浄を実行するパッチであり、上述の接触型染色補助パッチ100’とはいくらか異なっていて、別個の染色促進剤160を含んでいなくてもよいし、染色促進剤160として少量の水、アルコール等を使用していてもよい。
【0179】
洗浄パッチは、試料Tに接触して、試料T上に残った異物等を取り除く役割を果たす。例えば、染色プロセスにおいて染料、媒染剤、脱色剤、固定剤等が試料Tに適用された場合は、いずれかの一部が試料T上に残っており、洗い流す必要がある。洗浄パッチが試料Tに接触した場合は、洗浄パッチのゲルマトリクスの細孔に異物が吸い込まれるため、試料Tを洗浄可能である。これは、洗浄パッチが溶液等を一切又は少量しか含んでいないため、接触した異物を吸収する洗浄パッチの特性に起因する。
【0180】
洗浄パッチは、染色プロセスにおいて試料T上の液体を吸収する機能を実行すると同時に、試料Tの洗浄及び乾燥も実行するため、乾燥パッチとも称し得る。
【0181】
また、洗浄パッチの洗浄及び乾燥機能は、洗浄パッチではなく緩衝パッチにより実行されるようになっていてもよい。緩衝パッチの場合は、洗浄パッチよりも比較的大量の溶液がゲル受容体120の内側に含まれるため、試料Tと接触した場合に試料T上の異物を吸収する性能は、いくらか低下する可能性がある。ただし、緩衝パッチのゲル受容体120もいくつかの細孔を有するため、緩衝パッチは、試料T上の残留物を吸収する機能をいくらか実行する。その結果、緩衝パッチは、試料Tに関して最適pHを設定する緩衝の役割のほか、洗浄及び乾燥の役割の一部を果たすことができる。これにより、染色プロセスにおいては、緩衝パッチを試料Tに接触させるだけで緩衝、洗浄、及び乾燥が実行されるため、染色プロセスを簡素化可能である。当然のことながら、非常に多くの残留物が存在する場合は、洗浄及び乾燥プロセスを別途実行することも可能である。
【0182】
また、洗浄パッチのゲル受容体1
20には、吸収剤が染色促進剤160として含まれ、洗浄パッチの吸収力を強化していてもよい。ゲル受容体1
20の多孔率は、接触した試料Tから異物を十分に吸収できるように、上述の通り別個の溶液をゲル受容体1
20に含まないこと、又は、少量の溶液しか含まないことによって向上可能である。ただし、吸収剤が染色促進剤160としてゲル受容体1
20に含まれて吸収力をさらに向上させている場合は、吸収剤が接触した試料T上の異物の吸収によって、吸収率を改善可能である。
【0183】
2.1.5 複合パッチ
以上、接触型染色補助パッチ100’の各機能を説明したが、染色補助パッチは場合により、2つ以上の機能を同時に有していてもよい。
【0184】
例えば、緩衝パッチは、染色する試料TにおけるpH濃度等の反応条件を緩衝する役割と、試料T上に残る残留物を洗浄する役割とを同時に実行するようにしてもよい。本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100を用いて試料Tが染色される場合は、実質的に、試料T上に残留物がほとんど残っていないものの、接触型染色パッチ100が試料Tから取り外された後に緩衝パッチが試料Tに接触した場合は、試料Tに存在し得る微量の残留物までもが完全に取り除かれる。
【0185】
以上、各役割にパッチを1つずつ割り当てて接触型染色補助パッチ100’が実装される旨を説明したが、上記説明と異なり、1つの接触型染色補助パッチ100’が複合染色促進剤160を含んで2つ以上の役割を果たしていてもよい。
【0186】
例えば、媒染パッチ及び脱色パッチが1つの媒染・脱色パッチとして実装されていてもよい。媒染剤及び脱色剤が同時に染色促進剤160としてゲル受容体120に含まれる媒染・脱色パッチは、試料Tに接触した場合、試料Tの媒染及び脱色を同時に実行するようにしてもよい。
【0187】
さらに、接触型染色パッチ100及び接触型染色補助パッチ100’は、互いに組み合わせて実装されていてもよい。例えば、グラム染色技術の主染色剤、媒染剤、脱色剤、及びコントラスト染色剤がゲル受容体120に収容され得る場合は、1つのパッチ(以下、「複合パッチ」と称する)を用いて接触型染色パッチ100及び接触型染色補助パッチ100’が実装されていてもよい。
【0188】
複合パッチは、染色プロセスを大幅に簡素化するため、使用が便利となる利点がある。ただし、ゲル受容体120の内側の染色試薬140間、染色促進剤160間、及び染色試薬140と染色促進剤160との間で反応が起こる場合は、染色に失敗したり、誤った染色結果が得られたりする場合がある。このため、複合パッチは、その長所及び短所を適正に考慮して使用するものとする。
【0189】
2.2 接触型染色補助パッチの製造方法
以下、本開示の一実施形態に係る、上述の接触型染色補助パッチ100’の製造方法について説明する。
【0190】
接触型染色補助パッチ100’の製造方法の一例には、ゲル受容体120を形成して、染色促進剤160をゲル受容体120に吸い込むことを含んでいてもよい。
【0191】
まず、アガロース粉末等、ゲル構成物質、ゲル化可能物質等として機能するゲル原材料を用いてゲル受容体120を形成する。例えば、ゲル受容体120は、アガロース粉末及び水が適正な比率で混合され、その混合物が加熱及び冷却されることで製造されるようになっていてもよい。ここで、加熱方法としては、混合物の煮沸、マイクロ波による混合物の焼成等を利用可能である。また、ここで、冷却方法としては、自然冷却又は強制冷却が挙げられ、必要に応じて、撹拌プロセスが冷却方法に含まれていてもよい。
【0192】
次に、製造されたゲル受容体120に染色促進剤160を吸い込むことができる。染色促進剤160をゲル受容体120に吸い込むため、染色促進剤160が収容されたチャンバ、容器等において、ゲル受容体120を所定期間にわたって浸し、染色促進剤160を十分に吸い込んだ後に取り出す方法が用いられるようになっていてもよい。
【0193】
別の例において、接触型染色補助パッチ100’の製造方法としては、ゲル原材料、水溶液、及び染色試薬を混合してゲル受容体を構成する方法が挙げられる。例えば、接触型染色補助パッチ100’は、アガロース、水溶液(又は、緩衝液)、及び染色促進剤160を適正な比率で混合し、当該混合物を加熱及び冷却することにより製造されるようになっていてもよい。ここで、加熱・冷却手段は、上述の例と同様であってもよい。
【0194】
さらに別の例において、接触型染色補助パッチ100’の製造方法としては、ゲル基材及び溶液を混合して加熱した後、加熱した混合物を冷却するプロセスにおいて染色促進剤160を添加する方法が挙げられる。例えば、アガロース及び水溶液を適正な比率で混合して加熱した後、加熱した混合物を冷却するプロセスにおいて染色促進剤160を添加する。
【0195】
2.3 接触型染色補助パッチの実験例
以下、本開示の一実施形態に係る、上述の接触型染色補助パッチ100’の実験例について説明する。
【0196】
この実験例において、本開示の一実施形態に係る接触型染色パッチ100及び接触型染色補助パッチ100’は、マラリア検査用の従来のギムザ染色技術において適用される。
【0197】
ギムザ染色試薬140であるメチレンブルー及びエオシンを1つの試薬としてそれぞれ有するように、2つの接触型染色パッチ100を製造した。
【0198】
上述の通り、試薬ごとに複数のパッチを製造することには、2つの染色試薬140を混ぜ合わせて1つのパッチを製造する場合よりも接触型染色パッチ100の保管期間が長くなる利点があり得る。具体例を示すと、メチレンブルーとエオシンとを混合して1つの接触型染色パッチに収容する場合、塩基性であるメチレンブルー及び酸性であるエオシンは、時間の経過とともに互いに反応するため、試料Tに対する反応性が低下してしまう可能性がある。一方、メチレンブルー及びエオシンについて接触型染色パッチ100を別個に製造した場合は、このような問題を緩和可能である。
【0199】
具体的な製造手順は、以下の通りである。
【0200】
1)アガロース、メチレンブルー、及び緩衝液Bを混ぜ合わせた後、マイクロ波で混合物を煮沸又は焼成してから室温で冷却して、メチレンブルーの染色パッチを製造した。
【0201】
2)アガロース、エオシン、及び緩衝液Bを混ぜ合わせた後、マイクロ波で混合物を煮沸又は焼成してから室温で冷却して、エオシンの染色パッチを製造した。
【0202】
プロセス1)及び2)においては、濃度が1〜5%のアガロースを使用し、いずれの場合も、緩衝液BのpH濃度を染色試薬140の最適pHとして設定した。
【0203】
その後、接触型染色補助パッチ100’を以下の手順に従って製造した。
【0204】
3)染色試薬140なく、アガロース及び緩衝液Bのみを混ぜ合わせた後、マイクロ波で混合物を煮沸又は焼成してから室温で冷却して、緩衝パッチを製造した。ここでは、pH7.2のPBS溶液を緩衝液Bとして使用した。
【0205】
上述のように製造したメチレンブルーパッチ、エオシンパッチ、及び緩衝パッチをこの順序で、スライドSに塗抹した血液に対して順次接触させてから取り外した。ここでは、メチレンブルーパッチを約30秒間にわたって血液に接触させ、エオシンパッチを約1分間にわたって血液に接触させた。そして、緩衝パッチを約3分間にわたって血液に接触させた。
【0206】
図13は、メチレンブルーパッチ及びエオシンパッチが血液に接触した後、緩衝パッチが血液に接触する前に観察された染色結果を示した図であり、
図14は、メチレンブルーパッチ及びエオシンパッチが血液に接触した後、緩衝パッチが血液に接触した後に観察された染色結果を示した図である。
【0207】
図13及び
図14を比較した場合、ギムザ染色の標準的な染色プロセスによる通常の染色の結果に対して、
図14がより類似していることを認識可能である。具体的には、
図13において、
図14よりも青色(メチレンブルー)が集中的に染色されており、エオシンにより染色された赤色は相対的に観察されない。これは、エオシンの前に血液と接触したメチレンブルーによって、後で血液に適用されたエオシンの反応が妨げられるためである。この状態において、緩衝パッチが血液に接触すると、血液に対する反応条件(pH濃度等)が反応に適した最適pHへと調整されるため、エオシンの不十分な反応を増大させつつメチレンブルーの過剰な反応を減少させることによって、通常の染色が実行される。
【0208】
また、
図13及び
図14を綿密に調べた場合、緩衝パッチとの接触前に観察された染色等(
図11の左上側)が緩衝パッチとの接触後になくなっていることを認識可能である。
【0209】
これらの点を考慮して、染色試薬140を組み合わせて使用する場合は、染色試薬140がそれぞれ十分に反応するように反応条件を適正に生成する機能及び洗浄によって異物を取り除く機能を緩衝パッチが同時に実行するものと認識可能である。
【0210】
また、緩衝パッチに含まれる非常に多くの緩衝液Bは、血液すなわち試料Tに向かって移動しないことから、付加的な乾燥手順が省略されるようになっていてもよいし、最低限の乾燥手順のみが必要であってもよい。
【0211】
3.試験キット
以下、本開示の一実施形態に係る、試験キットについて説明する。
【0212】
本開示の一実施形態に係る試験キットは、試料Tが挿入された場合に当該試料Tを染色する接触型染色パッチ100を含んでいてもよい。
【0213】
3.1 試験キットの形態
試験キットは、2つのプレートを具備していてもよい。ここで、2つのプレートのうちの一方は、接触型染色パッチ100を含むプレート(以下、「パッチプレート」と称する)であってもよく、2つのプレートのうちの他方は、試料Tが塗抹されるプレート(以下、「試料プレート」と称する)であってもよい。
【0214】
試験キットにおいては、2つのプレートすなわちパッチプレート及び試料プレートが結合して、互いに移動可能であってもよい。ここで、移動は、回転及び摺動を網羅する概念である。
【0215】
試験キットにおいて、試料Tが試料プレートに塗抹された場合は、パッチプレートが試料プレートに対して移動することにより、パッチプレートに格納された接触型染色パッチ100が試料Tの塗抹点に配設されるとともに、試料T及び染色パッチが互いに接触することにより、試料Tが染色されるようになっていてもよい。
【0216】
本開示において、試験キットは、様々な形態で設計されていてもよい。試験キットの代表的な形態としては、回転型及び摺動型が挙げられる。
【0217】
図16は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キットである試験キット1000の一例の斜視図であり、
図30は、本開示の一実施形態に係る、摺動型試験キットである試験キット2000の一例の側面図である。
【0218】
ここで、試験キットは、パッチプレートと試料プレートとの間の相対移動手段により区別される。回転型試験キット1000においては、2つのプレートが互いに回転した場合、染色パッチが試料Tの塗抹領域上に配置される。摺動型試験キット2000においては、2つのプレートが互いに摺動した場合、染色パッチが試料Tの塗抹領域上に配置される。
【0219】
図16及び
図30に示すように、一般的には、回転型試験キット1000が大抵はディスク形状を有し、摺動型試験キット2000が大抵は四角形の平板形状を有していてもよい。
【0220】
前述の形状を有する試験キットにおいては、パッチプレートが大抵は試料プレートの上方に配置されていてもよい。パッチプレートには、試料挿入のための開口又は載荷ユニットが設けられていてもよく、このような開口又は載荷ユニットを通じて、試料が試料プレートへと移動するようになっていてもよい。また、試料プレートにおいて試料を塗抹する塗抹ユニットがパッチプレートに設けられていてもよく、パッチプレート及び試料プレートが互いに相対移動した場合に、試料プレートにおいて試料Tが塗抹されるようになっていてもよい。パッチプレートにおいては、試料プレートに対向するように染色パッチが含まれていてもよく、試料プレート及びパッチプレートが互いに相対移動した場合に、試料Tが塗抹される領域上に染色パッチが配置されるようになっていてもよい。試料Tが塗抹される領域上に染色パッチが配置された場合は、パッチプレートと試料プレートとの間の間隙が狭まるか、又は、染色パッチの形状又は位置が試料プレート側に変形することにより、試料Tと染色パッチとが接触可能となっていてもよい。
【0221】
以下、2種類の試験キットについて、より詳しく説明する。ただし、以下に説明する回転型試験キット1000及び摺動型試験キット2000は、本開示の一実施形態に係る試験キットの例示に過ぎず、回転型試験キット1000及び摺動型試験キット2000は以下の記述に限定されない。さらに、試験キット1000及び2000は、本開示の一実施形態に係る試験キットの形態を説明する一例に過ぎず、本開示の一実施形態に係る試験キットの形態は、回転型試験キット1000及び摺動型試験キット2000に限定されないことに留意するものとする。
【0222】
3.2 回転型試験キットの構造
まず、回転型試験キット1000について説明する。
【0223】
図15は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の一例の分解斜視図であり、
図16は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の一例の斜視図である。
【0224】
図15及び
図16を参照して、試験キット1000においては、試料プレート1400がディスク状本体1402を有していてもよい。パッチプレート1200は、切開部を有するディスクの形状の本体1202を有していてもよい(例えば、扇形状プレート)。パッチプレート1200及び試料プレート1400は、互いに対向するように設けられていてもよく、また、ディスク状又は扇形状プレートの中心部分において、互いに結合され、互いに回転可能であってもよい。
【0225】
パッチプレート1200及び試料プレート1400の本体1202及び1402はそれぞれ、内側面、外側面、及び側面を有していてもよい。ここで、内側面は、互いに対向するパッチプレート1200及び試料プレート1400の表面であり、外側面は、内側面の反対の表面である。すなわち、パッチプレート1200の内側面1204は試料プレート1400に近い表面であり、パッチプレート1200の外側面は試料プレート1400から遠い表面であり、試料プレート1400の内側面1404はパッチプレート1200に近い表面であり、試料プレート1400の外側面はパッチプレート1200から遠い表面である。
【0226】
パッチプレート1200及び試料プレート1400は、それぞれの中心部分において互いに結合されていてもよい。例えば、
図15及び
図16に示すように、内側面に向かって突出する結合突起1208がパッチプレート1200及び試料プレート1400の中心部分のいずれか一方に形成されていてもよく、結合孔1408又は結合溝が他方の中心部分において形成され、結合突起1208が結合孔1408又は結合溝に挿入されることによって、パッチプレート1200及び試料プレート1400が互いに結合されるようになっていてもよい。ここで、2つのプレート間の結合を安定化させるため、結合孔を通過した結合突起の端部にナットが接続されていてもよいし、結合突起の端部から直径方向に延びた翼部が形成されていてもよいし、別個のピンを用いて2つのプレートが互いに結合されていてもよい。
【0227】
パッチプレート1200及び/又は試料プレート1400は、透明又は半透明材料で設けられていてもよい。パッチプレート1200及び/又は試料プレート1400が透明又は半透明の場合は、オペレータが試験キット1000を用いた染色プロセスを視覚検査で確認できる利点があり得る。
【0228】
3.2.1 パッチプレートの構造
図17は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000のパッチプレート1200の一例の斜視図である。
【0229】
図17を参照して、パッチプレート1200は、切開部を有するディスクの形状の本体を有していてもよい(例えば、扇形状プレート)。
【0230】
本体には、接触型染色パッチ100又は接触型染色補助パッチ100’を格納するように構成された収容部1220が形成されていてもよい。以下、接触型染色パッチ100及び接触型染色補助パッチ100’は、「接触型パッチ」と総称する。
【0231】
収容部1220は、パッチプレート1200の扇形状領域上に形成されていてもよく、より詳細には、パッチプレート1200の半径方向に所定距離だけ中心から離隔した位置に形成されていてもよい。
【0232】
パッチプレート1200には、1つ又は複数の収容部1220が形成されていてもよい。例えば、ギムザ染色技術に従って血液を染色しようとする場合、パッチプレート1200の収容部1220の数は、以下の通りであってもよい。パッチプレート1200において、1)メチレンブルー−エオシンパッチ(メチレンブルー及びエオシンという2つの染色試薬140を同時に含む接触型染色パッチ100)のみを格納する1つの収容部1220のみが形成されていてもよいし、2)メチレンブルーパッチ及びエオシンパッチをそれぞれ格納する2つの収容部1220のみが形成されていてもよいし、3)メチレンブルーパッチ、エオシンパッチ、及び緩衝パッチをそれぞれ格納する3つの収容部1220が形成されていてもよい。参考として、
図17は、2つの収容部1220が形成されたパッチプレート1200を図示している。
【0233】
複数の収容部1220が存在する場合、パッチプレート1200の内側面の方向から見て、パッチプレート1200の中心に対して収容部1220それぞれがなす角度は、均一であってもよい。例えば、パッチプレート1200の中心から、第1の収容部1220−1と第2の収容部1220−2との間の角度及び第2の収容部1220−2と第3の収容部1220−3との間の角度は、45°であってもよい。収容部1220間の角度間隔が互いに等しく設定されている場合は、本体を毎回同じ角度だけ回転させることによって接触型パッチを試料Tと順次接触させることができるため、後述の診断装置を容易に制御できる利点がある。
【0234】
収容部1220は、パッチプレート1200の内側面の方向に接触型染色パッチ100又は接触型染色補助パッチ100’が露出するように、接触型染色パッチ100又は接触型染色補助パッチ100’を含んでいてもよい。
【0235】
例えば、
図17に示すように、収容部1220は、溝の形態で形成されていてもよい。溝は、パッチプレート1200の内側面の方向に開口した形態であってもよい。すなわち、パッチプレートの内側面の方向に窪んだ形態であってもよい。これにより、収容部1220に含まれる接触型パッチは、試料プレート1400上に適用される試料Tに接触し得る。
【0236】
ここで、溝は、内部に含まれる接触型パッチに対応した形態を有していてもよい。
【0237】
接触型パッチは様々な形状で製造可能であるものの、説明の便宜上、以下では、円形状又は多角形状を有する上面及び下面である主面並びに上面及び下面を接続する側面を有する円筒形状又は多角柱形状に製造された接触型パッチに基づいて説明を行う。当然のことながら、接触型パッチは、半球形状、上面及び下面のサイズが異なる円筒形状又は多角柱形状、及び側面が凸形状の円筒形状又は多角柱形状等、他の様々な形状で製造されていてもよい。
【0238】
図18は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の溝状収容部1220の一例の断面図である。
【0239】
図17及び
図18を参照して、溝1220’は、開口面1222、底面1224、及び側面1226を有していてもよい。
【0240】
溝1220’を内側面1204の方向に見た場合、溝1220’の開口面1222及び底面1224は、接触型パッチの主面と同じ形態を有していてもよい。ここで、溝1220’を内側面1204の方向に見た場合、溝1220の開口面1222及び底面1224の少なくとも一方が接触型パッチの主面以下のサイズを有していてもよい。溝1220’の開口面1222又は底面1224のサイズが接触型パッチの主面のサイズよりも小さい場合は、接触型パッチがいくらか圧縮された状態で溝に含まれることから、収容部1220が接触型パッチを安定的に格納していてもよい。
【0241】
溝1220’の側面1226の深さは、接触型パッチの厚さ以下であってもよい。溝1220’の側面1226の深さが接触型パッチの厚さより小さい場合は、溝に含まれる接触型パッチの一部がパッチプレート1200の内側面から突出するため、接触型パッチと試料プレート1400上の試料Tとの接触をさらに促進可能である。
【0242】
溝1220’に含まれる接触型パッチの逸脱を防止するように構成された逸脱防止部材が溝1220’に設けられていてもよい。
【0243】
例えば、逸脱防止部材は、溝1220’の開口面1222に接触する側面1226から開口面1222の中心部分に向かって延びた逸脱防止段部として実装されていてもよい。収容部1220に含まれる接触型パッチは、逸脱防止段部によって溝の開口面1222に係止されるため、外側への逸脱が防止される。
【0244】
別の例において、逸脱防止部材は、溝1220’の側面1226から溝1220’の中心部分に向かって延びた逸脱防止突起として実装されていてもよい。接触型パッチは、逸脱防止突起によって圧縮され、収容部1220に含まれるため、収容部1220に安定して固定され、外側へ逸脱することがない。
【0245】
また、さらに別の例において、溝1220’の中心部分に向かって底面から開口面まで徐々に傾斜するように溝1220’の側壁1226が形成されている場合は、逸脱防止部材の代わりに側壁1226が、溝1220’に含まれる接触型パッチの外側への逸脱を防止する逸脱防止部材の機能を実行していてもよい。
【0246】
また、溝の底面には、溝に含まれる接触型パッチと試料プレート1400上の試料Tとの接触を促進する接触ガイド1228が設けられていてもよい。
【0247】
図19及び
図20は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の様々な接触ガイド1228を有する溝状収容部1220の断面図である。
【0248】
例えば、接触ガイド1228は、
図19に示す溝1220‘の底面1224から凸状に突出した接触ガイド突起1228’として実装されていてもよい。溝の底面の接触ガイド突起によって、収容部1220に含まれる接触型パッチの一部がパッチプレート1200の内側面から突出しているため、試料プレート1400上の試料Tとの接触が促進され得る。接触ガイド突起1228’は、必ずしも
図19に示す形態である必要はなく、
図20に示すように、溝1220’自体の底面1224が凸面1228’’として形成され、接触ガイド1228として機能していてもよい。
【0249】
収容部1220は、溝の形状で実装されるものとして説明したが、その代替として、孔の形状であってもよい。
【0250】
孔は、パッチプレート1200の内側面に形成された第1の開口面、外側面に形成された第2の開口面、及び側面を有していてもよい。ここで、第2の開口面には、内部に含まれる接触型パッチが第2の開口面の方向に逸脱しないように防止する逸脱防止部材が設けられていてもよい。例えば、逸脱防止部材は、逸脱防止メッシュとして実装されていてもよい。
【0251】
孔の形状の収容部1220に対しても、溝の形状の収容部1220の説明において記述した技術的特徴(例えば、開口面のサイズ、溝の深さ、逸脱防止段部、逸脱防止突起等)が適当に当てはまるようになっていてもよい。例えば、孔の直径が接触型パッチの直径以下であってもよいし、孔の長さが接触型パッチの厚さ以下であってもよいし、逸脱防止突起が孔の側面に形成されていてもよい。
【0252】
3.2.2 試料プレートの構造
図21は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の試料プレート1400の一例の斜視図である。
図21を参照して、上述の通り、試料プレート1400は、内側面1404、外側面、及び側面を有するディスク状本体1402を有していてもよい。内側面1404は、パッチプレート1200に対向する表面であり、本実施形態においては、円形状に設けられていてもよい。
【0253】
試料プレート1400の円形内側面には、試料領域1420が設けられていてもよい。ここで、試料領域1420は、試験キット1000に挿入(注入)された試料Tが配置される領域である。試料領域1420は単に、試料Tが配置される領域であってもよいが、血液塗抹検査のように試料Tが塗抹される場合に試料Tが塗抹される領域をも含む領域と考えるべきである。例えば、血液塗抹検査を実行しようとする場合、血液が液滴の形態で試料領域1420に注入された後、塗抹されるようになっていてもよい。
【0254】
試料領域1420は、試料プレート1400の本体の内側面の特定領域に設けられていてもよい。例えば、試料領域1420は、ディスクの中心に対して、内側面の所定角度範囲に位置付けることも可能である。
【0255】
後述の通り、試料領域1420に配置された試料Tは、パッチプレート1200に格納された接触型パッチに接触する必要があるとともに、観察孔を通じて観察される必要がある。このため、試料領域1420は、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して回転した場合にパッチプレート1200の各部(収容部1220、観察孔等)と整列する必要がある。
【0256】
また、試験キット1000を用いて血液塗抹検査が実施される場合を考慮して、試料領域1420は、注入血液の塗抹に十分な領域を与える必要がある。
【0257】
これらの点に鑑み、
図21に示すように、試料領域1420は、好ましくは内側面の約45〜90°の角度領域として設けられていてもよい。この領域は、血液塗抹が実行されるか否か等に関わらず、パッチプレート1200に格納された接触型パッチの数を考慮して調整されるようになっていてもよい。
【0258】
試料Tは、試料領域1420に滴下される際、試料領域1420に直接滴下されるようになっていてもよい。ここでは、試料領域1420が外側に露出するように、パッチプレート1200の切開部が試料領域1420で整列していてもよい。このため、試料領域1420の角度範囲及びパッチプレート1200の切開部の角度範囲は、互いに等しくなるように調整されていてもよい。
【0259】
また、試料領域1420の表面が特別に処理されていてもよい。例えば、試料領域1420の表面が親水性であってもよいし、疎水性であってもよい。具体的には、試料領域1420の表面が親水性又は疎水性となるように被覆されていてもよいし、試料プレート1400の試料領域1420の一部が疎水性又は親水性材料で作成されていてもよい。
【0260】
試料領域1420は、1)当該試料領域1420による試料Tの保持及び/又は2)当該試料領域1420による接触型パッチからの染色試薬140、緩衝液B等の受容を可能にするため、親水性又は疎水性を示すように構成されている。例えば、ギムザ染色技術を用いて血液塗抹検査を実行しようとする場合は、血液を保持し、接触型染色パッチ100からギムザ染色試薬140を受容するように、試料領域1420が親水性とされていてもよい。
【0261】
試料領域1420を除く試料プレート1400の内側面のその他の領域は、非試料領域1440であってもよい。非試料領域1440は、試料Tの配置も塗抹も予想されない領域であってもよい。
【0262】
非試料領域1440の表面は、試料領域1420の表面と反対の特性を示すように処理されていてもよい。例えば、試料領域1420が親水性の場合に非試料領域1440は疎水性であってもよく、逆に、試料領域1420が疎水性の場合に非試料領域1440は親水性であってもよい。
【0263】
非試料領域1440は、1)試料Tの当該非試料領域1440への移行の抑止及び/又は2)染色試薬140、緩衝液B等の接触型パッチからの移行の防止のため、親水性又は疎水性を示すように構成されている。特に、(試料領域1420と非試料領域1440との間に段差が存在していても)試料プレート1400に対してパッチプレート1200を回転させて接触型パッチを試料Tに接触させるプロセスにおいては、接触型パッチが試料プレート1400の非試料領域1440を掃引して通過するようになっていてもよい。このプロセスにおいては、接触型パッチから非試料領域1440への移行によって、染色試薬140又は緩衝液Bが不必要に浪費される場合もあるし、非試料領域1440上の異物によって接触型パッチが汚染される場合もあるため、非試料領域1440の親水性化又は疎水性化の処理によって、これらの状況を防止する。例えば、ギムザ染色技術を用いて血液塗抹検査を実行しようとする場合は、試料領域1420に滴下された血液の接触型染色パッチ100からの移行及び/又はギムザ染色試薬140の接触型染色パッチ100からの移行がないように、非試料領域1440が疎水性とされていてもよい。
【0264】
図22は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の試料領域1420と非試料領域1440との間に段差を有する試料プレート1400の一例の斜視図である。
【0265】
図22を参照して、非試料領域1440は、試料領域1420より高さが低くてもよい。例えば、試料領域1420と非試料領域1440との間の境界には、段差が形成されていてもよい。これにより、非試料領域1440に対応するパッチプレート1200の内側面と試料プレート1400の内側面との距離は、試料領域1420に対応するパッチプレート1200の内側面と試料プレート1400の内側面との距離より大きくてもよい。
【0266】
試料Tと接触型パッチとが互いに接触するプロセスにおいては、接触型パッチが試料領域1420と整列し得るように、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して回転する。試料領域1420と非試料領域1440との間に段差が存在する場合は、接触型パッチと試料領域1420上の試料Tとの接触が容易に維持された状態で、接触型パッチがパッチプレート1200の回転中に、試料プレート1400の非試料領域1440を掃引して通過することが防止されていてもよい。これにより、接触型パッチの染色試薬140又は緩衝液Bが非試料領域1440への移行により浪費されることが防止され、非試料領域1440との接触により接触型パッチの汚染が抑止されるようになっていてもよい。
【0267】
3.2.3 塗抹ユニット
試験キット1000は、試料領域1420に滴下された試料Tを塗抹するように構成された塗抹ユニット1240をさらに具備していてもよい。以下、試料を塗抹する塗抹ユニット1240について説明する。
【0268】
従来の染色技術において、試料Tの塗抹は、オペレータが手動で実行する。
【0269】
図23は、従来の血液塗抹検査プロセスに係る、血液塗抹手段を示した図である。
【0270】
図23を参照して、従来の血液塗抹検査プロセスにおいては、まず試料TをスライドS上に配置した後、試料Tが配置されたスライドSに別のスライドを接触させて、両者間に鋭角を形成する。そして、他方側のスライドの一端を試料Tに接触させたまま、試料Tが配置されたスライドSをオペレータが摺動すると、試料TがスライドS上で広がって塗抹され得る。試料Tを所望の形態(例えば、単層)に塗抹するため、スライド間の角度及び摺動速度を適正に調整する必要がある。その結果、すべてはオペレータ次第で、上記因子による低安定性の問題がある。
【0271】
図24は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の塗抹ユニット1240の断面図である。
【0272】
図15〜
図17に加えて
図24を参照するに、塗抹ユニット1240は、パッチプレート1200の切開部のいずれか一方側に設けられていてもよい。塗抹ユニット1240は、試料領域1420上に配置された試料Tを塗抹する機能を実行するようにしてもよい。
【0273】
塗抹ユニット1240は、側方から見た場合に対向する試料プレート1400の内側面と鋭角をなす傾斜面1242と、傾斜面1242に取り付けられた塗抹フィルム1244とを具備していてもよい。
【0274】
以下、塗抹ユニット1240を用いた試料塗抹プロセスについて簡単に説明する。ただし、説明の便宜上、血液塗抹に基づいて説明を与える。
【0275】
図25は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の塗抹ユニット1240を用いた血液塗抹プロセスを示した図である。
【0276】
まず、
図25の(a)のように、試料プレート1400の試料領域1420に血液を滴下する。ここでは、試料領域1420が外側に露出するように、パッチプレート1200の切開部と試料プレート1400の試料領域1420が互いに整列している。
【0277】
血液が注入された場合は、
図25の(b)のように、試料プレート1400に対してパッチプレート1200が回転することにより(この回転の方向を「逆方向」として規定)、塗抹ユニット1240が血液注入点へと移動する。結果として、塗抹フィルム1244と試料領域1420上に配置された血液滴とが互いに接触する。
【0278】
塗抹フィルム1244と血液とが互いに接触した場合は、毛細管現象により、パッチプレート1200の切開方向で塗抹フィルム1244に沿って、塗抹フィルム1244と試料領域1420の表面との間で血液が広がる。パッチプレート1200が扇形状プレートであり、ディスクが半径方向に切開されている場合は、半径方向に血液が広がる。
【0279】
血液が広がった状態でパッチプレート1200が試料プレート1400に対して正方向(逆方向の反対)に回転すると、血液が塗抹フィルム1244に沿って移動し、
図25の(c)に示すように塗抹され得る。
【0280】
ここで、塗抹ユニット1240の傾斜面は、好ましくは試料プレート1400の内側面に対して、約10〜60°の傾斜角を有していてもよい。傾斜角の大きさは、試料Tの特性に応じて適正に調整されていてもよい。
【0281】
傾斜角が大きすぎる場合(例えば、直角)は、塗抹フィルム1244と試料Tとが互いに接触する段差(
図25の(b)に示す段差)で毛細管現象が起こりにくく、パッチプレート1200の切開方向に試料Tが十分に広がらない可能性がある。また、正回転によって試料Tを塗抹しようとしている場合であっても、血液が塗抹フィルム1244に追従しないため、塗抹が適正に行われない場合がある。
【0282】
一方、傾斜角が小さすぎる場合は、塗抹フィルム1244の下端部以外の部分で塗抹フィルム1244と試料Tとが接触するため、毛細管現象が適正に起こらず、血液が塗抹フィルム1244に適正に追従しないため、塗抹が行われない場合がある。
【0283】
塗抹フィルム1244には、試料Tが容易に追従可能な材料が用いられていてもよい。例えば、試料Tが血液の場合は、パッチプレート1200の正回転中に塗抹フィルム1244を追従することで血液が塗抹されるように、親水性材料を塗抹フィルム1244に使用するものとする。血液である試料Tに対して疎水性の塗抹フィルム1244を使用した場合は、塗抹が行われない可能性がある。
【0284】
上から見た場合、塗抹フィルム1244は、パッチプレート1200の切開方向に沿って取り付け及び設置がなされていてもよい。上から見た場合、塗抹フィルム1244は、試料Tが毛細管現象によってパッチプレート1200の切開方向に十分広がり得る程度の長さを有するものとする。例えば、塗抹フィルム1244は、直径方向に切開面のおよそ30〜100%の長さを有していてもよい。
【0285】
横から見た場合、塗抹フィルム1244は、その傾斜角に沿って傾斜面で取り付け及び設置がなされていてもよい。ここで、塗抹フィルム1244は、試料プレート1400の内側面に接触し得るように設置されている。したがって、塗抹フィルム1244は、試料Tで毛細管現象を生じさせ得る。
【0286】
理論的には、塗抹フィルム1244の下端が試料プレート1400の内側面と正確に接触するように製造するのが好ましいものの、製造公差等を考慮すると、実際には不可能又はコスト高である。
【0287】
結果的に、塗抹フィルム1244は、試料領域1420と接触するため、試料プレート1400の内側面の方向にパッチプレート1200の内側面から下部が突出するように設置されていてもよい。これによれば、塗抹フィルム1244は、ある程度の柔軟性を有するため、下部が屈曲形状に丸まることで試料領域1420と接触可能である。これに加えて、塗抹フィルム1244の丸まった部分が収容される空間のため、傾斜面の下部に溝が形成されていてもよい。
【0288】
以上では、試料Tが注入されている場合に、オペレータが試料Tを試料領域1420に直接滴下することを説明したが、その代替として、試料Tが挿通される載荷ユニット1250が設けられていてもよい。
【0289】
図26は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の載荷ユニット1250を示した図であり、
図27は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の載荷ユニット1250を用いた試料Tの載荷に関連する図である。
【0290】
図26を参照して、載荷ユニット1250は、押圧プレート1252、収集ピン1254、及び載荷孔1256を具備していてもよい。
【0291】
押圧プレート1252は、試料Tが収集される被験者の身体部分により押圧される部分である。例えば、人間の指先から血液を収集しようとする場合、押圧プレート1252は、人間の指先による押圧に適正なサイズを有するプレートの形状で設けられていてもよい。押圧プレート1252は、試料プレート1400の試料領域1420への収集試料Tの移行を可能にする位置に設置されていてもよい。例えば、押圧プレート1252は、パッチプレート1200の切開面の外縁部又は試料領域1420の外縁部に配設されていてもよい。
【0292】
収集ピン1254は、押圧プレート1252から突出するように設置されたピンである。被験者の身体部分が押圧プレート1252を押すプロセスにおいて、収集ピン1254は、当該身体部分の皮膚に貫通して、被験者からの試料Tの収集を可能にする。収集ピン1254は、好ましくは押圧プレート1252の中心部分に配設され、試験キット1000の外側方向に向かって設置されていてもよい。
【0293】
載荷孔1256は、押圧プレート1252を通過する孔の形態で形成されており、押圧プレート1252の外側面(被験者の身体部分に接触する表面)から反対面まで通過することにより形成されていてもよい。したがって、載荷孔1256は、押圧プレート1252の外側から試験キット1000の内側へ、より具体的には、試料プレート1400の試料領域1420又は塗抹ユニット1240に向かって、試料Tを載荷するようにしてもよい。載荷孔1256は、収集ピン1254の近くに形成され、収集ピン1254により被験者の皮膚から収集された試料Tを受容するようにしてもよく、また、毛細管現象によって、試料Tを試料領域1420又は塗抹ユニット1240へと移行及び挿入するようにしてもよい。
【0294】
試料Tの載荷は、以下の通り実行されるようになっていてもよい。
【0295】
まず、
図27の(b)に示すように、被験者が指で押圧プレート1252を押すと、収集ピン1254によって、血液が指の皮膚から出てくる。
図27の(c)に示すように、血液は、載荷孔1256を通じて、塗抹フィルム1244に接触する試料領域1420の外側に移行する。移行した血液は、塗抹フィルム1244と試料領域1420との間の毛細管現象によって、試料領域1420の内側に移行する。そして、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して正方向に回転することにより、血液を塗抹可能である。
【0296】
このように載荷ユニット1250が用いられる場合は、オペレータが試料Tを試料領域1420に直接注入する代わりに、載荷ユニットを被験者の身体部分で押すだけで試料Tが試験キット1000に挿入され得る。
【0297】
試料Tを載荷する上述のプロセスにおいては、収集ピン1254が押圧プレート1252から省略されていてもよい。この場合は、
図27の(a)のように、押圧プレート1252が被験者の身体部分で押される前に、別個のピンの使用によって、対応する身体部分から試料Tを収集可能であってもよい。
【0298】
3.2.4 試験キットの回転及び持ち上げ動作
以上では、パッチプレート1200を試料プレート1400に対して回転させつつ、試料プレート1400に適用された試料Tに接触型パッチを接触させることによって、試料Tを染色するプロセスを実行可能であることを述べた。
【0299】
具体的に、接触型パッチ及び試料Tを互いに接触させるプロセスは、1)パッチプレート1200を試料プレート1400に対して回転させることにより、接触型パッチを試料T又は塗抹された試料T上に配置し、2)パッチプレート1200に格納された接触型パッチが試料Tに接触するように、試料プレート1400に対してパッチプレート1200を降下させることにより実行されるようになっていてもよい。
【0300】
パッチプレート1200及び試料プレート1400は基本的に、それぞれの内側面が所定間隔で互いに離隔するように結合されている。これは、回転プロセス中に、パッチプレート1200に格納された接触型パッチが試料プレート1400によって掃引されないようにするためである。その結果、接触型パッチが試料T上に配置された後、パッチプレート1200及び試料プレート1400は、互いに付着して、接触型パッチを試料Tに接触させるものとする。
【0301】
このため、パッチプレート1200及び/又は試料プレート1400には、持ち上げガイド1260及び1460が形成されていてもよい。持ち上げガイド1260及び1460は、パッチプレート1200及び試料プレート1400の相対的な回転によって、パッチプレート1200及び試料プレート1400の持ち上げを可能にするものであってもよい。
【0302】
図28は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の持ち上げガイド126
0を有するパッチプレート1200の斜視図であり、
図29は、本開示の一実施形態に係る、回転型試験キット1000の持ち上げガイド126
0を有する試料プレート1400の斜視図である。
【0303】
図28及び
図29を参照して、持ち上げガイド1260及び1460は、パッチプレート1200及び試料プレート1400の本体の外側に形成されていてもよい。2つのプレートに形成された持ち上げガイド1260及び1460はそれぞれ、本体の周囲を囲むように形成されたベースプレート1262及び1462と、ベースプレート1262及び1462上に所定のパターンで形成された持ち上げパターン1264及び1464とを具備していてもよい。
【0304】
ベースプレート1262及び1462は、パッチプレート1200及び試料プレート1400の本体よりも薄くパッチプレート1200及び試料プレート1400の本体の外周面を囲むように形成されている。言い換えると、ベースプレート1262及び1462は、パッチプレート1200及び試料プレート1400の内側面の境界線から外側面に向かって段差で屈曲して、パッチプレート1200及び試料プレート1400の縁部を構成している。
【0305】
図28においては、切開扇形状本体の代わりにディスク状本体がパッチプレート1200に用いられていてもよい。この場合は、切開部を通じた滴下の代わりに、試料挿入孔1230を通じた試料プレート1400への移行によって、試料Tが挿入されるようになっていてもよい。また、結合突起がパッチプレート1200に形成される旨を説明したが、
図28においては、結合突起の代わりに結合孔が形成されていてもよい。結合孔は、試料プレート1400の結合孔と連通しており、連通通路に嵌入された結合ピンによって、2つのプレートが互いに結合されていてもよい。ここで、扇形状形態及び
図28に係るディスク状本体はいずれも、本開示の主旨から逸脱しない改良例であることに留意するものとする。
【0306】
持ち上げパターン1264及び1464は、ベースプレートから突出した状態又は窪んだ状態で形成されていてもよい。持ち上げパターン1264及び1464は、2つのプレートが互いに結合された状態で、2つのプレート間の相対角度に従って2つのプレートの内側面間の間隔を調整する役割を果たすようにしてもよい。
【0307】
持ち上げパターン1264及び1464はそれぞれ、高点部H、低点部L、勾配部I、及び段差部Rを具備していてもよい。ここで、高点部Hは、持ち上げパターン1264及び1464の最も高い部分であり、低点部Lは、持ち上げパターンの最も低い部分である。例えば、高点部Hは、ベースプレートから最も突出した部分であってもよく、低点部Lは、ベースプレートから突出していない部分であってもよい。勾配部Iは、低点部から高点部に向かって徐々に増大する勾配を有する部分であってもよい。段差部Rは、高点部Hから低点部Lに向かって垂直に屈曲した部分であってもよい。
【0308】
パッチプレート1200は、試料プレート1400に対して回転した場合、その持ち上げパターンが試料プレート1400の持ち上げパターンの上部に沿って移動するため、試料プレート1400に対して持ち上げられ得る。ここで、持ち上げは、2つのプレート間の間隔の狭まり又は拡がりを表す。試料プレート1400から離れるパッチプレート1200は「上昇」と規定され、試料プレート1400に近づくパッチプレート1200は「下降」と規定される。
【0309】
試料プレート1400の高点部が他方のプレートの低点部と整列する状態は、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して最大限に下降した状態すなわち2つのプレート間の間隔が最小の状態である。
【0310】
試料プレート1400の高点部がパッチプレート1200の高点部と整列する状態は、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して最大限に上昇した状態すなわち2つのプレート間の間隔が最大の状態である。
【0311】
また、試料プレート1400の高点部がパッチプレート1200の勾配部に沿ってパッチプレート1200の低点部からパッチプレート1200の高点部に向かって移動する間、パッチプレート1200は、試料プレート1400に対して徐々に上昇する。逆に、試料プレート1400の高点部がパッチプレート1200の勾配部に沿ってパッチプレート1200の高点部からパッチプレート1200の低点部に向かって移動する間、パッチプレート1200は、試料プレート1400に対して徐々に下降する。
【0312】
また、試料プレート1400の高点部がパッチプレート1200の高点部からパッチプレート1200の低点部に向かう方向でパッチプレート1200の段差部を通過した場合、パッチプレート1200は、試料プレート1400に対して垂直に下降する。
【0313】
逆に、段差部がパッチプレート1200に形成され、試料プレート1400の高点部がパッチプレート1200の低点部からパッチプレート1200の高点部に向かう方向で移動しようとした場合は、試料プレート1400に対するパッチプレート1200の回転が段差部によって阻止されるようになっていてもよい。
【0314】
試験キット1000は、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して最大限に下降した場合に、パッチプレート1200に格納された接触型パッチが試料プレート1400の内側面の少なくとも一部と接触するように設計されていてもよく、以下、これを「接触状態」と規定する。例えば、接触状態において、収容部1220に含まれる接触型パッチは、試料領域1420に配置された試料Tに接触し得る。
【0315】
また、試験キット1000は、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して最大限に下降した状態以外の状態で、パッチプレート1200に格納された接触型パッチが試料プレート1400の内側面と接触しないように設計されていてもよく、以下、これを「分離状態」と規定する。例えば、分離状態において、収容部1220に含まれる接触型パッチは、非試料領域1440に接触し得ない。
【0316】
上記原理を考慮して、持ち上げパターンは、以下のように設計されていてもよい。
【0317】
持ち上げパターンは、パッチプレート1200の収容部1220が試料プレート1400の試料領域1420と整列する角度の場合に接触型パッチが接触状態となるように設計されていてもよい。これにより、収容部1220に含まれる接触型パッチは、試料Tに接触し得る。
【0318】
また、持ち上げパターンは、パッチプレート1200の収容部1220が試料プレート1400の非試料領域1440の上方に位置付けられる角度の場合に接触型パッチが接触状態とならないように設計されていてもよい。これにより、収容部1220に含まれる接触型パッチは、非試料領域1440に接触し得ない。
【0319】
図29を参照して、試料プレート1400の持ち上げパターンは、以下のように形成されていてもよい。
【0320】
高点部は、試料領域1420の縁部の1つ又は複数の部分に配設されている。ここで、この部分は、試料が配置される試料領域1420の縁部であってもよいし、試料Tの塗抹時に試料Tが塗抹される領域の中心点の縁部であってもよい。持ち上げパターンは、低点部が非試料領域1440の縁部に配設されるように形成されていてもよい。勾配部又は段差部は、高点部と低点部との間に配設されていてもよい。
【0321】
図28を再び参照して、パッチプレート1200の持ち上げパターンは、以下のように形成されていてもよい。
図28は、外側面の方向でパッチプレート1200を示している。
【0322】
低点部は、収容部1220の縁部の一部に配設されている。ここで、この部分は、パッチプレート1200の中心から収容部1220の中心に向かう直径方向の縁部であってもよい。高点部は、パッチプレート1200の縁部のその他の部分に配設されている。勾配部又は段差部は、高点部と低点部との間に配設されていてもよい。
【0323】
持ち上げパターンによれば、試験キット1000は、以下のように動作し得る。
【0324】
まず、試料領域1420が外側に露出するように、パッチプレート1200の切開部が試料プレート1400の試料領域1420の上部に配設されていてもよい。オペレータは、露出した試料領域1420に試料Tを直接滴下するようにしてもよい。試料Tが滴下されたら、試料プレート1400に対する逆方向へのパッチプレート1200の回転によって、塗抹ユニット1240を試料Tに接触させることにより、試料Tが塗抹ユニット1240に沿って広がるようにする。試料Tが広がったら、パッチプレート1200の正方向の回転によって、試料Tを塗抹するようにしてもよい。このプロセスにおいては、試料プレート1400の高点部がパッチプレート1200の高点部と接触しているため、収容部1220は、試料プレート1400の内側面(非試料領域1440)と接触しない。
【0325】
塗抹の完了後、パッチプレート1200が正方向にさらに回転すると、試料プレート1400の高点部は、収容部1220の縁部に配設されたパッチプレート1200の低点部に接触する。これにより、2つのプレートは接触状態となって、収容部1220に含まれる接触型パッチが試料領域1420の試料Tと接触する。
【0326】
ここでは、塗抹ユニット1240の縁部の高点部と収容部1220の低点部との間に段差部が設けられていてもよい。したがって、段差部を通過する間は、パッチプレート1200が試料プレート1400に対して垂直に下降するため、接触型パッチが型打ちによって試料Tに接触し得る。また、接触型パッチの型打ちの後は、段差部によってパッチプレート1200の逆回転が阻止されるようになっていてもよい。
【0327】
型打ちの後、パッチプレート1200が正方向にさらに回転すると、試料プレート1400の高点部がパッチプレート1200の勾配部を通過する。これにより、パッチプレート1200が試料プレート1400から上昇して、接触型パッチが試料Tから離れる。
【0328】
試料プレート1400の高点部は、パッチプレート1200の勾配部を通過した後、パッチプレート1200の高点部と再び接触して、分離が完了する。したがって、パッチプレート1200に格納された接触型パッチが非試料領域1440の上部を通過した場合、接触型パッチは、試料プレート1400の内側面と接触し得ない。
【0329】
1つ又は複数の収容部1220が存在する場合は、パッチプレート1200が正方向にさらに回転されるようになっていてもよい。ここで、試料プレート1400の高点部は、次の収容部1220に対応するパッチプレート1200の低点部に接触するため、次の接触型パッチが試料Tと接触する。このプロセスには、上述の勾配部による型打ちプロセス及び接触型パッチが試料Tから離れるプロセスが同様に後続する。
【0330】
試験キット1000に設けられたすべての接触型パッチに対して試料Tが接触した後、パッチプレート1200が正方向にさらに回転すると、試料プレート1400の高点部は、パッチプレート1200の観察部の縁部に形成された低点部に接触する。
【0331】
ここで、観察部には、パッチプレート1200の一点に形成された観察孔が形成されていてもよく、オペレータは、顕微鏡等を用いて、完全に染色された試料T等を観察・検査するようにしてもよい。
【0332】
3.3 摺動型試験キットの構造
以下、摺動型試験キット2000について説明する。
【0333】
ただし、以下の記述においては、摺動型試験キット2000及び回転型試験キット1000の両者に共通する技術的詳細の詳しい説明を必要に応じて省略する。
【0334】
ただし、詳細な説明の省略は、回転型キット1000に関して説明した技術的詳細が摺動型キット2000に当てはまらないことを意味するわけではない。言い換えると、別段の指示がない限り、回転型及び摺動型に起因して生じる相違点を除いて、上述の回転型試験キット1000に関する説明の詳細は、摺動型試験キット2000にも適用可能であることに留意するものとする。
【0335】
例えば、摺動型試験キット2000は、回転型試験キット1000の試料領域1420に対応する試料領域2420を含んでいてもよい。ここでは、上述の回転型試験キット1000の試料領域1420と同様に、試料領域2420の表面が親水性又は疎水性となるように処理されていてもよい。また、別の例において、摺動型試験キットは、塗抹ユニットを具備していてもよい。ここでは、回転型試験キットに関して上述した例のように、塗抹ユニットが約10〜60°の傾斜角を有していてもよい。
【0336】
図30は、本開示の一実施形態に係る、摺動型試験キット2000の一例の側面図である。
【0337】
図30を参照して、試験キット2000においては、パッチプレート2200及び試料プレート2400がそれぞれ、矩形板状本体2202及び2402を有していてもよい。
【0338】
プレート2200及び2400は、互いに対向して配設されており、互いに線形移動可能すなわち摺動可能となるように結合されていてもよい。ここでは、摺動方向が本体220
0及び240
0の長手方向に沿っていてもよい。例えば、2つのプレートのいずれか一方の外側では、その本体の長手方向に沿ってガイド突起が形成されていてもよく、他方のプレートには、ガイド突起と相補的な形状のガイド溝が設けられていてもよいため、2つのプレート220
0及び240
0は、ガイド突起がガイド溝に嵌入された形態で締結されるとともに、ガイド突起及びガイド溝に従って互いに相対摺動可能である。
【0339】
3.3.1 パッチプレートの構造
図31は、本開示の一実施形態に係る、摺動型試験キット2000のパッチプレート2200の一例の斜視図である。
【0340】
図31を参照して、パッチプレート2200は、四角形の板状本体2202を有していてもよい。
【0341】
本体2202は、接触型染色パッチ100又は接触型染色補助パッチ100’等の接触型パッチを格納するように構成された収容部2220と、試料Tが挿入される載荷ユニット2250と、試料Tを塗抹するように構成された塗抹ユニット2240とを具備していてもよい。
【0342】
載荷ユニット2250は、本体
2202の一方側に形成されている。載荷ユニット2250は、試料Tが挿入される入口2252と、挿入された試料Tが受容される受容ユニット2254と、受容された試料を塗抹ユニット2240へと案内するように構成されたチャネル部2256とを具備していてもよい。
【0343】
試料Tが入口2252を通じて滴下された場合は、この挿入された試料Tを受容ユニット2254が収容するようにしてもよい。チャネル部2256は、受容ユニット2254から塗抹ユニット2240まで接続された流路であり、受容ユニット2254に収容された試料Tを塗抹ユニット2240まで移動させるようにしてもよい。具体的に、チャネル部2256は、毛細管現象によって、試料Tを受容ユニット2254から塗抹ユニット2240まで移動させるようにしてもよい。
【0344】
ここで、入口2252及び受容ユニット2254は、円形状に設けられているものの、これらの形状はこれに限定されない。チャネル部2256は、受容ユニット2254から延びた直線状の流路の形態であってもよく、マイクロチャネルの種類でもよい。ただし、チャネル部2256の形状及び種類は、これに限定されない。
【0345】
塗抹ユニット2240は、回転型試験キット1000に関して説明した塗抹ユニット1240と同様の形状で設けられていてもよい。すなわち、塗抹ユニット2240は、側方から見た場合に対向する試料プレート2400の内側面と鋭角をなす傾斜面1242と、傾斜面に取り付けられた塗抹フィルム2244とを具備していてもよい。ここで、塗抹フィルム2244は、チャネル部2256の一端に接続されていてもよく、チャネル部2256から垂直方向に延びるように、傾斜面2242に取り付けられていてもよい。
【0346】
したがって、試験キット2000に挿入された試料Tが入口2252、受容ユニット2254、及びチャネル部2256を通じて塗抹フィルム2244と接触した場合は、毛細管現象により、塗抹フィルム2244が延びる方向(チャネル部2256から垂直方向)に塗抹フィルム2244に沿って、塗抹フィルム2244と試料領域2420の表面との間に血液が広がる。
【0347】
下端部が丸まったフィルム2244の材料又はフィルム2244の形態に関しては、回転型試験キット1000に関して説明した内容が当てはまり得る。
【0348】
複数の収容部2220が存在していてもよく、複数の収容部2220が存在する場合は、当該収容部2220が本体2202の長手方向に配設されていてもよい。その結果、本体2202においては、本体2202の長手方向の一方側から、載荷ユニット2250及び各収容部2220が並んで配設されていてもよい。また、塗抹ユニット2240は、載荷ユニット2250と収容部2220との間に配設されていてもよい。
【0349】
複数の収容部22
20は、互いに所定距離だけ離隔した位置に形成されていてもよい。参考として、
図31は、3つの収容部2220が形成されたパッチプレート2200を図示している。ここで、収容部2220は、第1の染色パッチ100−1、第2の染色パッチ100−2、及び染色補助パッチ100’をこの順序で順に格納するが、これはほんの一例に過ぎず、含まれる接触型パッチの種類、構成、及び数については、適当に変更されるようになっていてもよい。
【0350】
収容部2220は、パッチプレート2200の内側面の方向に接触型染色パッチ100又は接触型染色補助パッチ100’が露出するように、接触型染色パッチ100又は接触型染色補助パッチ100’を含んでいてもよい。言い換えると、接触面が試料プレート2400に対向するように、接触型パッチが収容部2220に含まれていてもよい。これにより、収容部2220に含まれる接触型パッチは、試料プレート2400上に滴下される試料Tに接触し得る。
【0351】
例えば、
図31に示すように、収容部2220は、孔の形態で形成されていてもよい。また、別の例において、収容部2220は、溝の形態を有していてもよく、この場合、収容部2220の底面(すなわち、パッチプレート2200の外側面)は、パッチプレート2200の外側面から内側面に向かって力が印加された場合に、含まれる接触型パッチの少なくとも一部が試料プレート2400に向かって移動するように、柔軟な材料で形成されていてもよい。
【0352】
また、回転型試験キット1000に関して説明した内容が収容部22
20にも当てはまり得る。
【0353】
3.3.2 試料プレートの構造
図32は、
図30に係る、摺動型試験キット2000の試料プレート2400の一例に関連する図である。
【0354】
図32を参照して、試料プレート2400は、内側面、外側面、及び側面を有する四角形(好ましくは、長方形)の板状本体2402を有していてもよい。内側面は、パッチプレート2200に対向する表面である。
【0355】
ここで、試料プレート2400は、ガラス材料で形成されていてもよい。例えば、試料プレート2400としては、スライドガラスが用いられていてもよい。
【0356】
試料プレート2400の内側面には、試料領域2420が設けられていてもよい。好ましくは、試料領域2420が長方形又は正方形領域として作成されていてもよい。試料領域2420のサイズは、収容部2220に含まれる接触型パッチの接触面のサイズより大きくてもよく、接触面は試料プレート2400の反対側である。
【0357】
試料Tは、試料領域2420において塗抹されるようになっていてもよい。具体的には、試料領域2420において、載荷ユニット2250に挿入された試料Tが塗抹ユニット2240へと移動し、塗抹ユニット2240が試料領域2420上を通過するプロセスによって試料Tが塗抹されるようになっていてもよい。ここでは、試料Tの塗抹を促進するように、試料領域2420の表面が特別に処理されていてもよい。
【0358】
試料領域2420を除く試料プレート2400の内側面の領域は、非試料領域2440であってもよい。回転型試験キットに関して上述した通り、非試料領域2440は、試料Tの配置も塗抹も予想されない領域であってもよい。このため、非試料領域2440の表面は、非試料領域2440が試料領域2420の表面と反対の特性を示すように処理されていてもよい。
【0359】
試料領域2420と非試料領域2440との間には、段差が設けられていてもよい。
【0360】
3.3.3 試験キットを用いた染色プロセス
以上では、試料プレート2400に対して摺動させつつ、試料プレート2400上の塗抹された試料Tに接触型パッチを接触させることによって、パッチプレート2200により試料Tの染色プロセスが実行可能であることを述べた。
【0361】
以下では具体的に、接触型パッチを試料Tに接触させて試験キット2000が染色を実行するプロセスについて説明する。
【0362】
図33は、
図30に係る、摺動型試験キット2000を用いた試料挿入動作の動作図である。
【0363】
まず、
図33の第1の図面を参照して、パッチプレート2200の塗抹ユニット2240が試料プレート2400の試料領域2420の端側に配設されるように、2つのプレート2200及び2400を整列させる。この状態で、試料Tを入口2252に挿通する。
【0364】
次に、
図33の第2の図面を参照して、挿入した試料Tを受容ユニット2254に滴下し、チャネル部2256を通じた流路に沿って、再び塗抹ユニット2240へと移動させる。
【0365】
その後、
図33の最後の図面を参照して、チャネル部2256が流路を通じて試料Tを塗抹フィルム2244まで移動させ、流路を通じて試料Tを受容したら、塗抹フィルム2244が当該塗抹フィルム2244の長手方向すなわち試験キット2000の長手方向から垂直方向に試料Tを広げる。
【0366】
図34は、
図30に係る、摺動型試験キット2000を用いた試料塗抹の動作図である。
【0367】
次に、
図34の第1の図面を参照して、塗抹フィルム2244に達した試料Tは、毛細管現象により、塗抹フィルム2244に沿って試料領域2420まで移動する。ここで、上述の通り、塗抹フィルム2244は、試料領域2420の端側の上部において、当該塗抹フィルム2244の長手方向に試料Tを広げる。
【0368】
この状態で、
図34の第2の図面を参照して、2つのプレート2200及び2400を互いに摺動させる。ここで、摺動方向は、試料領域2420の一端側から他端側へと塗抹フィルム2244が移動する方向であってもよい。したがって、試料Tは、塗抹フィルム2244により、試料領域2420上で塗抹されるようになっていてもよい。
【0369】
試料Tが塗抹されたら、
図34の最後の図面に示すように、2つのプレート2200及び2400を再び互いに移動させて、試料領域2420の全体又は一部を外側に露出させる。試料Tが塗抹された状態で試料領域2420が外側に露出したら、メタノール等の試料固定剤の試料領域Tへの添加によって、塗抹状態で試料Tを固定するようにしてもよい。このステップは、必要に応じて省略可能である。
【0370】
図35は、
図30に係る、摺動型試験キット2000を用いた染色の動作図である。
【0371】
図35の第1の図面を参照して、試料Tが塗抹された状態で試料領域2420及び収容部22
20が互いに反対に配設されるように、2つのプレート2200及び2400を摺動させる。ここで、2つのプレート2200及び2400は、垂直方向に見た場合に、試料領域2420及び収容部22
20の中心又は試料領域2420及び収容部22
20に含まれる接触型パッチの中心が実質的に一致するように、摺動させるようにしてもよい。この状態において、パッチプレート2200の外側面から接触型パッチに圧力又は力を印加することによって、接触型パッチを試料Tに接触させる。このように、接触型パッチによって、試料Tの染色が実行されるようになっていてもよい。
【0372】
複数の収容部22
20に複数の接触型パッチが含まれる場合は、
図35の第1〜第3の図面に示すように、載荷ユニット2250に最も近い収容部22
20から最も遠い収容部22
20の順序で収容部22
20を試料領域2420と順次整列させた後、接触型パッチを塗抹された試料Tと接触させて、染色プロセスを実行する。
【0373】
接触型パッチのすべてが試料Tと接触した場合は、
図35の最後の図面に示すように、2つのプレート2200及び2400を摺動させて、試料領域2420を外側に露出させる。ここで、摺動方向は、
図35に示すように載荷ユニット2250から遠い側で試料領域2420を露出させる任意の方向であってもよいし、
図34の最後の図面に示すように、載荷ユニット2250に近い側で試料領域2420を露出させる方向であってもよい。
【0374】
パッチプレート2200の上部には、観察孔が設けられていてもよい。ここで、2つのプレート2200及び2400は、試料領域2420が観察孔と整列する位置に試料領域2420が配設されるように摺動させてもよい。
【0375】
このような構成においては、顕微鏡若しくはカメラ等の光学装置又は視覚検査によって、試料Tの染色結果が観察されるようになっていてもよい。
【0376】
3.3.4 載荷ユニットの改良例
摺動型試験キット2000の上記説明においては、パッチプレート2200に配設されるものとして載荷ユニット2250を説明したが、その代替として、載荷ユニット2250は、試料プレート2400上に配設されていてもよい。
【0377】
図36は、本開示の一実施形態に係る、摺動型試験キット2000の別の例の側面図であり、
図37は、
図36に係る、摺動型試験キット2000の試料プレート2400の一例に関連する図である。
【0378】
図36及び
図37を参照して、上記説明と異なり、載荷ユニット2250が試料プレート2400上に配設されていることが分かる。
【0379】
ここで、パッチプレート2200には、試料Tが挿通される入口2252が設けられている。この入口2252を通じて、載荷ユニット2450が試料プレート2400上に設けられている。
【0380】
具体的に、試料プレート2400の載荷ユニット2450は、収容装置2252を具備していてもよい。収容装置2252は、入口2252に挿通された試料Tを収容する。
【0381】
収容装置2252は、受容ユニット2
456及びチャネル部2458を具備していてもよい。例えば、収容装置2252は、受容ユニット2
456及びチャネル部2458が形成されたフィルムの形態で設けられていてもよい。ここで、受容ユニット2
456は、最初に挿入された試料Tが受容される位置であってもよく、チャネル部2458は、受容ユニット2
456から塗抹ユニット2240までの流路であってもよい。一例として、この流路は、マイクロチャネルであってもよい。試料Tは、チャネル部2
458を通じて塗抹ユニット2240に供給される。
【0382】
載荷ユニット2450は、移動ガイド2454をさらに具備していてもよい。ここで、移動ガイド2454は、チャネル部2458と相互作用して、受容ユニット2456に収容された試料Tが流路を通じて塗抹ユニット2240に供給されるように、毛細管現象を案内する。
【0383】
移動ガイド2
254は、収容装置2252を部分的に覆うフィルムとして設けられていてもよい。移動ガイド2454は、毛細管現象の誘導が促進される環境が試料T中に生成されるように、チャネル部2458の少なくとも一部を覆って、チャネル部2458の流路のサイズを制限する。
【0384】
移動ガイド2454は、一部が収容装置2252の外側へと延びるように配設されていてもよい。移動ガイド2454は、好ましくはチャネル部2458の一端すなわち受容ユニット2456の他端から収容装置2252の外側へと延びるように配設されていてもよい。
【0385】
したがって、試料Tは,チャネル部2
258に沿って移動し、移動ガイド2454によって、チャネル部2
258の一端からチャネル部2
258と垂直な方向に広がるようになっていてもよい。このように、試料Tは、摺動方向から垂直方向に、試料領域2420へと広がるため、後々の摺動動作によって塗抹され得る。
【0386】
上記のように改良された摺動型試験キットが用いられる場合であっても、
図30に係る摺動型試験キット2000と実質的に同様に染色動作を実行可能であることが自明であろう。
【0387】
3.4 摺動型試験キットの改良例
以上では、摺動型試験キット2000の構造を説明した。ただし、摺動型試験キット2000の構造は、種々改良可能である。特に、載荷ユニット2250、収容部22
20、及び塗抹ユニット2240の配置順の種々改良によって、摺動動作の方向又は数を適正に調整するようにしてもよい。
【0388】
以下、様々な改良例の一例を説明する。ただし、以下の例は、様々な改良例を制限するものではなく、摺動型試験キット2000は、以下に説明する例以外の様々な形態で設けられていてもよい。
【0389】
図38は、本開示の一実施形態に係る、摺動型試験キット2000の改良例の斜視図であり、
図39は、本開示の一実施形態に係る、摺動型試験キット2000の改良例の平面図であり、
図40は、本開示の一実施形態に係る、摺動型試験キット2000の改良例の側面図である。
【0390】
図38〜
図40を参照して、改良例に係る摺動型試験キット2000は、パッチプレート2200及び試料プレート2400を具備していてもよく、上述の通り、パッチプレート2200及び試料プレート2400はそれぞれ、矩形板状本体2202及び2402を具備していてもよい。
【0391】
図40を参照して、パッチプレート2200及び試料プレート2400には、突起2001、溝2002等が形成されて、パッチプレート2200及び試料プレート2400が互いに結合されるようになっていてもよい。
【0392】
パッチプレート2200は、接触型パッチを格納するように構成された収容部2220と、試料Tが挿入される載荷ユニット2250と、試料Tを塗抹するように構成された塗抹ユニット2240とを具備していてもよい。
【0393】
試料プレート2400は、試料領域2420を含んでいてもよい。
【0394】
ここで、パッチプレート2200の上部の一方側から、塗抹ユニット2240、収容部2220、載荷ユニット2250、及び別の収容部2220がこの順序で順次配設されていてもよい。
【0395】
特に、試験キット2000には、少なくとも2つの収容部2220が配設されていてもよい。収容部2220のうちの一方が載荷ユニット2250と塗抹ユニット2240との間に配設されていてもよく、また、他方の収容部2220が塗抹ユニット2240の反対に配設され、両者間に載荷ユニット2250が配設されていてもよい。
【0396】
ここで、上述の収容部と同様に、塗抹ユニット2240の反対に配設された収容部2220は、接触型パッチを含んでいてもよい。
【0397】
載荷ユニット2250と塗抹ユニット2240との間に配設された収容部2220は、固定パッチすなわち固定に用いられるパッチを含んでいてもよい。固定パッチの代わりに、アルコール等の固定剤を保持する多孔性部材(例えば、スポンジ)が用いられていてもよい。これは、上述の実施形態すべてに適用可能である。
【0398】
或いは、載荷ユニット2250と塗抹ユニット2240との間に配設された収容部2220は、固定剤(例えば、エタノール又はメタノール等のアルコール)を収容していてもよい。ここで、収容部2220は、その内側部が外側から隔離された空間となるように形成されており、より詳細には、収容部2220の内側部に収容された液相の固定剤が特定動作によって外側に排出され得るように、収容部2220の下面が構成されている。例えば、収容部2220の下面は、膜で形成されていてもよく、2つのプレート2200及び2400を摺動させる動作又は型打ち動作によって対応する膜が引き裂かれるように構成されていてもよい(例えば、試料プレート2400に突起が形成されており、パッチプレート2200が試料プレート2400側に押された場合、突起によって膜が引き裂かれ、液相の固定剤が膜から出てくる)。
【0399】
このような形態を有する試験キット2000の動作は、以下の通りである。
【0400】
まず、試料Tを載荷ユニット2250に挿通する。入口2252を通じて、試料Tを試料領域2420上に配置する。
【0401】
この状態において、2つのプレート2200及び2400を一方向に摺動させることにより、試料Tを塗抹ユニット2240のフィルム2244と接触させた後、2つのプレート2200及び2400を別の方向に摺動させて、試料Tを試料領域2420において塗抹する。
【0402】
次に、2つのプレート2200及び2400を再び別の方向に摺動させて、試料Tが塗抹された領域上に、載荷ユニット2250と塗抹ユニット2240との間の収容部2220を配設する。
【0403】
この状態において、収容部2220に固定パッチが含まれる場合は、型打ちによって固定パッチを試料Tと接触させて、試料Tを固定する。
【0404】
固定パッチの代わりに液相の固定剤が収容部2220に収容されている場合は、型打ち動作により液相の固定剤が出てきて、試料Tへの適用により試料Tが固定されるようになっていてもよい。
【0405】
ここで、固定パッチ又は固定剤を用いて塗抹血液を固定する動作は、塗抹後の所定時間後に実行されるようになっていてもよい。このような状態で塗抹された試料に適用された固定パッチ又は固定剤に対して、十分に乾燥していない塗抹された試料が接触すると、当該試料が適正に固定されない可能性があり、血液(サンプル)が広がる現象が起こり得る。特に、血液が十分に乾燥する前に、血液と接触する代わりに、固定パッチが血液の近傍に配設される場合であっても、メタノール等の固定剤の蒸発によって血液が広がる現象が起こり得る。このため、試料Tが塗抹された後の所定時間後に摺動動作(又は、回転動作)を実行するのが好ましいと考えられる。
【0406】
試料Tが固定された場合は、固定された試料Tに対して再び、塗抹ユニット2240の反対の収容部22
20を配設することにより、各収容部22
20に含まれるパッチが試料Tに接触した状態で染色を実行する。
【0407】
上述の他の試験キット2000と異なり、本改良例に係る試験キット2000は、塗抹ユニット2240が試料Tと最初に接触した後、一方向への摺動のみで固定及び染色を実行可能である。このため、本改良例に係る試験キット2000には、ユーザが便利に当該試験キット2000を使用できる利点がある。
【0408】
以上では、塗抹中に塗抹ユニットが一方向に移動(摺動又は回転)して試料と接触することにより試料が広がった後、塗抹ユニットが別の方向に移動することで試料が試料領域において塗抹される例を説明した。ただし、上述の例と異なり、塗抹中は、前者の動作(試料と塗抹ユニットとが接触する動作)及び後者の動作(接触した試料を塗抹する動作)が同じ方向に実行されるようになっていてもよい。このため、塗抹フィルムの方向は、上述の例と同じ方向又は反対方向に設定されていてもよく、塗抹ユニットと試料領域との位置関係が逆となるように設計されていてもよい。
【0409】
3.5 塗抹方法
以上では、試験キットを用いた塗抹手段において、試料が滴下される方向(正方向)に塗抹フィルムが移動することでスライドSの長手方向に試料が広がった後、塗抹フィルムが別の方向(逆方向)に移動することでスライドSの試料領域1420及び2420において試料が塗抹されることを説明した。
【0410】
このような方法を
図41に示す。
図41は、本開示の一実施形態に係る、試料塗抹手段の一例である。摺動型試験キット2000を参照して
図41を説明したが、摺動型試験キット2000の摺動方向が回転方向に変更された場合は、この記述が回転型試験キット1000にも当てはまり得る。
【0411】
ただし、このような塗抹方法(塗抹方法)は、種々改良可能である。塗抹方法の改良例については、以下に詳しく説明する。
【0412】
3.5.1 塗抹手段
塗抹フィルムが正方向に試料Tまで移動し、試料Tと接触することによって塗抹フィルムの幅方向(すなわち、スライドSの幅方向)に試料が広がった後、逆方向に移動することにより試料領域において試料Tが塗抹される代わりに、試料Tに向かって正方向に移動する場合、塗抹フィルムは、(逆転位置まで)所定距離だけ試料Tを通過して移動した後、逆方向に移動するようになっていてもよい。
【0413】
図42は、本開示の一実施形態に係る、試料塗抹手段の別の例である。
【0414】
図42を参照して、例えば、塗抹フィルムは、初期位置から試料挿入(注入)位置まで移動した後、試料挿入位置で停止する代わりに、試料Tを掃引しつつ、試料挿入位置を挟んで初期位置の反対の逆転位置まで移動するようになっていてもよい。
図41の手段と異なり、逆転位置が試料挿入位置の背後にある場合、試料Tは、塗抹フィルムが試料挿入位置で停止している間に毛細管現象によって塗抹フィルムの幅方向に試料が広がる代わりに、試料Tを掃引しつつ塗抹フィルムが移動することによって、塗抹フィルムの幅方向に自然に広がるようになっていてもよい。
【0415】
そして、逆転位置から逆方向に塗抹フィルムが再び移動した場合に、試料Tが塗抹されるようになっていてもよい。
【0416】
ここで、試料挿入位置から逆転位置までの距離は、試料挿入位置から塗抹完了位置までの距離の約1/5であってもよい。
【0417】
3.5.2 塗抹フィルム
以上では、主に試料に適した塗抹フィルムに基づいて説明を行ってきたが、塗抹フィルムは、その表面の特性により、試料に適したフィルムと試料に適さないフィルムとに分類可能である。
【0418】
例えば、試料Tが血液である場合は、親水性の塗抹フィルムが用いられるようになっていてもよい。すなわち、塗抹フィルムの表面が親水性となるように覆われていてもよいし、塗抹フィルム自体が親水性材料で製造されていてもよい。
【0419】
上記の通り、試料Tに適した塗抹フィルムが用いられる場合は、塗抹動作において、塗抹フィルムを移動させて試料Tを掃引することなく、試料と塗抹フィルムとの接触のみで試料Tがフィルムの幅方向に広がり得る。
【0420】
塗抹フィルムが逆方向に移動する場合は、試料Tが塗抹フィルムに追従して、試料領域で塗抹されるようになっていてもよい。
【0421】
ただし、この場合、試料の挿入量の調整で不具合が生じた場合は、試料Tが単層で塗抹されるように、塗抹フィルムとスライドとがなす角度及び塗抹フィルムの移動速度の微調整が必要となる場合がある。
【0422】
ただし、角度及び速度の調整が容易な場合は、単層塗抹(薄い塗抹)及び多層塗抹(厚い塗抹)を自由に調整できる利点がある。
【0423】
例えば、がんのスクリーニングでは大抵、単層塗抹が必要となる一方、マラリアの検査では、多層塗抹が必要になる場合もあり、このような場合をそれぞれに応じて取り扱い可能である。
【0424】
上記と異なり、塗抹フィルムの表面は、試料(サンプル)に適していなくてもよい。
【0425】
例えば、試料Tが血液である場合は、疎水性の塗抹フィルムが用いられるようになっていてもよい。すなわち、塗抹フィルムの表面が疎水性となるように覆われていてもよいし、塗抹フィルム自体が疎水性材料で製造されていてもよい。
【0426】
上記のように、試料Tに適さない塗抹フィルムが用いられる場合は、塗抹動作において、塗抹フィルムの力により塗抹フィルムの幅方向に試料Tが広がるように、試料Tを掃引しつつ、塗抹フィルムを移動させるのが好都合と考えられる。また、
図41に示す手段は、スライドの表面特性及び塗抹フィルムの角度等に応じて適用可能である。
【0427】
試料(サンプル)に適さない塗抹フィルムが用いられる場合は、試料Tが塗抹フィルムに付着する力がいくらか弱くなるため、試料に適したフィルムを使用する場合よりも薄い塗抹がわずかに促進される利点がある。
【0428】
3.5.3 塗抹速度と塗抹角度
塗抹フィルムを用いた塗抹においては、塗抹速度及び塗抹フィルムとスライドとの間の角度が重要と考えられる。
【0429】
角度が小さくなると、毛細管現象がより顕著になって、試料Tがフィルムによく付着するようになる。逆に、角度が大きくなると、毛細管現象が顕著ではなくなり、試料Tがフィルムに付着する力が弱くなる。
【0430】
結果として、塗抹角度が小さい場合は塗抹速度が大きくなり、逆に、塗抹角度が大きい場合は塗抹速度が小さくなるようにしてもよい。
【0431】
薄い塗抹を実行しようとする場合は、角度を大きくするか、又は、塗抹速度を大きくするようにしてもよい。厚い塗抹を実行しようとする場合は、角度を小さくするか、又は、塗抹速度を小さくするようにしてもよい。
【0432】
本開示の一例によれば、適正な塗抹角度は、約30〜45°であってもよい。
【0433】
上記範囲の塗抹角度で塗抹速度が適正の調整される場合は、1回の塗抹で薄い塗抹及び厚い塗抹を同時に実行可能である。すなわち、塗抹の早い段階で塗抹速度が高く設定される一方、塗抹の遅い段階で塗抹速度が低く設定される場合は、薄い塗抹が前半部分に実行され、厚い塗抹が後半部分に実行されるようにしてもよい。当然のことながら、反対に実行されるようになっていてもよい。
【0434】
上記説明は、本開示の技術的主旨を示しているに過ぎず、本開示が関係する当業者であれば、本開示の本質的な特徴から逸脱しない範囲内で種々変更及び改良が可能と考えられる。したがって、本開示の上述の実施形態は、互いに別個に実装されていてもよいし、組み合わせて実装されていてもよい。
【0435】
以上から、本明細書に開示の実施形態は、本開示の技術的主旨を制限するものではなく、その説明を目的としており、本開示の技術的主旨の範囲は、そのような実施形態によって制限されない。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲により解釈されるものとし、同等の範囲内のすべての技術的主旨が本開示の範囲に属すると解釈されるものとする。
【0436】
4.診断システム
以上では、試料Tの挿入に際して試料Tを染色する試験キットについて説明した。以下では、上述の試験キットを使用して、試料Tの診断を自動的に実行する本開示の一実施形態に係る診断システム4300について説明する。
【0437】
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試験キットに挿入された試料Tの塗抹及び/又は染色のプロセスによって染色される試料Tの画像を取得し、取得した画像を解析・診断して、試料Tの状態の診断結果をフィードバックとして診断システム4300のユーザに提供する診断動作を実行するようにしてもよい。
【0438】
上述の試験キットを制御するとともに試料Tの状態を診断可能な診断システム4300を使用することにより、ユーザは、試験キットを直接手動で操作することによる試料Tの診断プロセスの面倒又は試料Tの診断結果の不正確さ等の問題を解決するようにしてもよい。
【0439】
ここで、診断システム4300が使用する試験キットとしては、上述の回転型試験キット、摺動型試験キット、及び/又はその改良例が挙げられる。以下、上述の試験キットの構造に関連する専門用語を参照して、診断システム4300の動作を説明する。
【0440】
図43は、本開示の一実施形態に係る、診断システム4300の構成例を示した図である。
【0441】
例えば、
図43を参照して、診断システム4300は、診断装置4310、サーバ4330、及び/又はユーザ端末4350を具備していてもよい。システムの要素は、無線インターネット又は無線通信ネットワーク等のネットワークを通じてデータリソース等を送信するように接続されていてもよい。
【0442】
本開示の一実施形態に係る診断装置4310は、試験キット中に配置された試料Tが塗抹される塗抹動作及び/又は試料Tが染色される
染色動作を含む診断動作を実行するようにしてもよい。診断装置4310は、一連の診断動作プロセスにおいて得られたデータを別の外部装置と交換するようにしてもよい。例えば、診断装置4310は、通信ネットワーク等を通じて、染色された試料Tから得られたデータをユーザ端末4350に送信してフィードバックデータを受信するようにしてもよく、また、サーバ4330とデータを交換するようにしてもよい。
【0443】
本開示の一実施形態に係るサーバ4330は、当該サーバ4330に接続された診断装置4310及び/又はユーザ端末4350等の外部装置とデータリソースを交換するようにしてもよく、データリソースを含んでいてもよい。サーバ4330は、外部装置に接続されて、外部装置の情報を統合するとともに、統合情報を提供して、診断システム4300のユーザが統合情報を便利に使用できるようにしてもよい。
【0444】
本開示の一実施形態に係るユーザ端末4350は、サーバ4330及び/又は診断装置4310に接続可能な如何なる装置を含んでいてもよい。例えば、ユーザ端末4350としては、モバイル端末、コンピュータ、ラップトップ、スマートフォン、個人用デジタル補助装置(PDA)、スマートバンド、スマートウォッチ等が挙げられる。
【0445】
以下、診断システム4300の診断動作を実行する診断装置4310の要素及び各要素の動作についてより詳しく説明する。
【0446】
4.1 診断装置
本開示の一実施形態に係る診断装置4310は、試験キット中に配置された試料Tを塗抹し、塗抹された試料Tを染色し、染色された試料Tの画像を取得するように構成された装置であってもよい。
【0447】
図44は、本開示の一実施形態に係る、診断装置4310を構成する要素の一例のブロック図である。
【0448】
例えば、
図44を参照して、診断装置4310は、試験キットの構造を移動させる一連の動作を実行するように構成された移動ユニット4311、パッチプレートに含まれる接触型パッチを試料Tと接触させて試料Tを染色する動作を実行するように構成された接触ユニット4313、画像取得ユニット4317、診断結果生成装置4319、及び/又は他の要
素を具備していてもよい。
【0449】
本開示の一実施形態に係る診断装置4310においては、試験キットを診断装置4310に提供可能な空間が形成されていてもよい。説明を容易にするため、試験キットを提供可能な空間は、載荷領域4610と称する。載荷領域4610は、試験キットを診断装置4310に提供可能な空間である限り、如何なる形状にも形成可能である。診断装置4310のユーザは、載荷領域4610を通じて、試験キットを診断装置4310に提供するようにしてもよい。本開示の一実施形態に係る載荷領域の形状については、「4.3 本開示の診断システムの実装」の項で説明する。
【0450】
本開示の一実施形態に係る移動ユニット4311は、試験キットの構造を移動させる要素で形成されていてもよい。
図45に示すように、移動ユニット4311は、動力を発生させるように構成された動力発生装置及び動力発生装置により発生した動力を試験キットの構造体に伝達するように構成された動力伝達部材を具備していてもよい。
【0451】
接触ユニット4313は、
図45に示すように試験キットが配置される載荷領域4610の上部に形成されていてもよいが、実施形態はこれに限定されず、診断装置4310の内側部又は診断装置4310の外側面等、如何なる位置に存在していてもよく、その位置において、試験キットに含まれる接触型パッチを試料Tと接触させる動作が行われるようになっていてもよい。
【0452】
以下、診断装置4310を構成可能な要素について、より詳しく説明する。
【0453】
4.1.1 移動ユニット
本開示の一実施形態に係る移動ユニット4311は、試験キットの構造を移動させて、試験キット中に配置された試料Tの塗抹及び/又は染色の動作を行うようにしてもよい。例えば、移動ユニットは、上述の試験キットの構造を構成するパッチプレート、試料プレート、塗抹ユニット、載荷領域4610等を移動させるようにしてもよい。以下、説明を容易にするため、移動ユニット4311が試験キットの構造体を移動させる動作は、移動動作と称する。
【0454】
図45は、本開示の一実施形態に係る、移動ユニット4311の一例を示したブロック図である。
【0455】
図45を参照して、移動ユニット4311は、動力を試験キットに伝達して移動動作が実行されるように構成された動力伝達部材4703及び/又は動力を発生させるように構成された動力発生装置4701を具備していてもよい。複数の動力伝達部材4703及び/又は複数の動力発生装置4701が存在していてもよく、動力伝達部材4703及び/又は動力発生装置4701は、状況に応じて存在していなくてもよい。
【0456】
動力発生装置4701は、移動ユニット4311の移動動作のための動力を発生可能である限り、如何なる形状で設けられていてもよい。動力伝達部材4703は、動力を試験キットに伝達可能である限り、如何なる形状で設けられていてもよい。
【0457】
ここで、動力伝達部材4703は、試験キットの試料プレート及び/若しくはパッチプレートを個別に移動可能な形態又は試料プレート及び/若しくはパッチプレートの一方のみが移動し、他方のプレートが固定された形態で実装されていてもよい。
【0458】
上述の所定の動力伝達部材4703は、載荷領域4610上に配置された試験キットの構造体に対して個別に接続されていてもよい。例えば、動力伝達部材は、載荷領域4610上に配置された試験キットのパッチプレートが搭載される第1の搭載部及び試料プレートが搭載される第2の搭載部を含む形態で実装されていてもよい。各プレートが移動する移動動作は、第1の搭載部及び/又は第2の搭載部を通じて試験キットの試料プレート及び/又はパッチプレートに動力が伝達されることにより実行されるようになっていてもよい。
【0459】
動力伝達部材4703及び/又は動力発生装置4701は、移動ユニット4311の様々な形態に応じて、様々な異なる形態で実装されていてもよい。以下、移動ユニット4311の様々な形態について説明する。
【0460】
本開示の一実施形態に係る移動ユニット4311は、機械的形態を有していてもよいし、電磁的形態を有していてもよい。
【0461】
ここで、機械的形態を有する移動ユニット4311は、動力を試験キットに伝達可能な動力伝達部材4703及び機械的動力を発生させるように構成された動力発生装置4701の相互接続及び/又は相互接触によって、動力発生装置4701により発生した動力を機械的接続手段によって試験キットに伝達可能な動力伝達部材4703の所定の構成を含む移動ユニット4311の一形態を表していてもよい。
【0462】
ここで、機械的動力を発生させるように構成された動力発生装置4701の形態は制限されておらず、動力発生装置4701は、様々な形態で実装されていてもよい。一例として、動力発生装置4701は、モータの形態で実装されていてもよい。動力発生装置4701は、回転動力を発生可能なDCモータ、ACモータ、DC/ACモータ、ブラシレスDCモータ、線型誘導モータ、同期リラクタンスモータ、ステッピングモータ等であってもよい。
【0463】
また、動力発生装置4701は、流体又はガスを使用するシリンダ型動力発生装置4701として実装されていてもよい。シリンダ型動力発生装置4701は、流体及び/又はガスによって生じる圧力の形態の動力を発生させ、発生した動力を試験キットの構造体に伝達し、移動ユニット4311の移動動作を実行するようにしてもよい。
【0464】
電磁的形態を有する移動ユニット4311は、動力発生装置4701が電気力及び/又は磁力の形態の動力を発生させ、試験キットに影響を及ぼして、移動動作を実行する形態を表していてもよい。
【0465】
例えば、電磁的形態を有する移動ユニット4311の動力発生装置4701は、電磁石を利用する動力発生装置4701であってもよい。電磁的形態を有する移動ユニット4311は、電磁的動力発生装置4701により発生した磁力の影響を試験キットが受けて試験キットの構造体が移動し得るようにすることで移動動作を実行するようにしてもよい。磁力によって試験キットの構造体を移動させる方法は、電磁的動力発生装置4701により発生した磁力の強度を調整して試験キットの構造体を移動させる方法、電磁的動力発生装置4701自体を移動させて、その影響を受けた動力伝達部材4703を移動させる方法等を含んでいてもよい。
【0466】
ここで、試験キットの構造体は、電磁的動力発生装置4701からの動力を受容可能な導体等の材料で形成されていてもよい。
【0467】
以上、移動動作を実行する移動ユニット4311の形態及び/又は構造について説明した。移動ユニット4311による移動動作中に塗抹及び染色動作を実行する相対移動動作並びに/又は画像取得動作の移動動作については、以下でより詳しく説明する。
【0468】
4.1.2 接触ユニット
本開示の一実施形態に係る接触ユニット4313は、試験キットの構造体を移動させて、塗抹された試料Tを染色するようにしてもよい。試験キットの構造体の移動により、接触ユニット4313は、パッチプレートに含まれる接触型パッチを試料Tと接触させるようにしてもよい。
【0469】
上述の通り、接触型パッチは、試料Tと接触して試料Tを染色する接触型染色パッチ、試料Tを固定する固定パッチ等の接触型染色補助パッチ、脱色パッチ及び/若しくは媒染パッチ、緩衝パッチ、洗浄パッチ、並びに複合パッチを含んでいてもよい。複数の接触型パッチが順次、パッチプレートに含まれるようになっていてもよい。
【0470】
以下、説明を容易にするため、試験キットの構造体を移動させて染色する接触ユニット4313の上記動作を接触動作と称する。
【0471】
接触ユニット4313が試験キットの構造体を移動させる点において、接触ユニット4313が移動ユニット4311と類似の機能を実行することから、接触ユニット4313を第2の移動ユニット4311と名付けるのがより適当と考えられるが、接触ユニット4313が接触型パッチを試料Tに接触させる特殊な目的を有する要素であることから、接触ユニット4313という名称を維持する。
【0472】
接触ユニット4313は、接触動作を単独で実行するようにしてもよいが、移動ユニット4311の上述の移動動作との関連で接触動作を実行するようにしてもよい。
【0473】
図46は、本開示の一実施形態に係る、接触ユニット4313の一例を示したブロック図である。
【0474】
図46を参照して、上述の移動ユニット4311と同様に、接触ユニット4313は、試験キットの構造体を移動させるように構成された動力伝達部材4903及び/又は動力を発生させるように構成された動力発生装置4901を具備していてもよい。複数の動力伝達部材4903及び/又は複数の動力発生装置4901が存在していてもよく、動力伝達部材4903及び/又は動力発生装置4901は、状況に応じて存在していなくてもよい。
【0475】
ここで、動力伝達部材4903は、動力発生装置4901により発生した動力を試験キットの構造体に伝達して、試験キットに含まれる接触型パッチが移動により試料Tと接触するように機能し得る。
【0476】
動力発生装置4901は、接触ユニット4313が接触動作を実行するための動力を発生可能である限り、如何なる形状で設けられていてもよい。動力伝達部材4903は、動力を試験キットに伝達可能である限り、如何なる形状で設けられていてもよい。
【0477】
上述の移動ユニット4311と同様に、接触ユニット4313は、様々な形態で実装されていてもよい。したがって、動力伝達部材4903及び/又は動力発生装置4901は、様々な形態を有していてもよい。
【0478】
本開示の一実施形態に係る接触ユニット4313は、機械的形態を有していてもよいし、電磁的形態を有していてもよい。
【0479】
ここで、機械的形態を有する接触ユニット4313は、機械的接触手段を用いることにより、動力伝達部材4903を通じて、機械的動力発生装置4901により発生した機械的動力が試験キットの構造体に伝達されて接触動作が実行される接触ユニット4313の形態を表していてもよい。
【0480】
機械的動力発生装置4901の説明については、移動ユニット4311の機械的動力発生装置4
701の説明と同じであるため省略する。
【0481】
動力伝達部材4903は、機械的動力発生装置4901により発生した動力を試験キットの構造体に伝達するようにしてもよい。例えば、動力伝達部材は、動力発生装置により発生した動力で試験キットの構造体を打撃可能な形態を有していてもよい。
【0482】
ここで、電磁的形態は、電気力及び/又は磁力の形態の動力が試験キットの構造体に伝達されることで試験キットの構造体が移動する形態を表していてもよい。
【0483】
以上、接触動作を実行する接触ユニット4313の形態及び/又は構造体について説明した。以下に説明する診断装置の染色動作用の接触ユニット4313の接触動作については、以下でより詳しく説明する。
【0484】
4.1.3 画像取得ユニット
本開示の一実施形態に係る画像取得ユニット4317は、染色された試料Tの画像を生成するようにしてもよい。
【0485】
本開示の一実施形態に係る画像取得ユニット4317は、染色された試料Tの画像を取得する手段を具備していてもよい。例えば、画像取得ユニット4317は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)画像センサ及び電荷結合素子(CCD)画像センサを含む画像センサ等の画像生成装置、染色された試料Tを透過するビームを生成可能な所定のビーム生成装置、並びに/又は透過ビームの像を画像生成装置上に形成するように構成された光学系を具備していてもよい。画像取得ユニット4317の要素はこれに限定されず、染色された試料Tの画像を生成可能な任意の要素が画像取得ユニット4317の要素であってもよい。
【0486】
本開示の一実施形態に係る光学系は、1つ又は複数のレンズで実装されていてもよい。レンズはガラスで形成されるのが好ましいものの、レンズの材料は制限されておらず、ビームの像を上述の画像生成装置上に形成する動作を実行し得る任意の材料でレンズが実装されていてもよい。
【0487】
画像取得ユニットの上述の手段によれば、画像取得ユニット4317は、ビーム生成装置から発せられたビームを光学系及び/又は染色された試料Tが配置された試験キットに透過させ、画像生成装置により透過ビームを取得して、画像を生成するようにしてもよい。
【0488】
画像取得ユニット4317から生成された染色された試料の画像は、様々な倍率を有していてもよい。例えば、生成画像は、染色された試料を拡大する倍率を有していてもよいし、染色された試料をその厳密なサイズで示す倍率を有していてもよい。
【0489】
画像取得ユニット4317は、染色された試料が配置された試験キットを移動可能な所定の動力伝達部材及び/又は動力発生装置を有していてもよい。このように、染色された試料の画像の取得を容易化可能である。
【0490】
4.1.4 診断結果生成装置
本開示の一実施形態に係る診断結果生成装置4319は、診断システム4300の診断動作により生成されたデータを解析して、試料Tの状態を診断するようにしてもよい。本実施形態において、診断結果生成装置4319は、染色された試料Tから得られた画像を解析して、試料Tの状態を診断するようにしてもよい。
【0491】
染色された試料Tの状態が診断される診断結果生成装置4319の動作については、以下の「4.
2.5 診断結果生成動作」の項で説明する。
【0492】
4.1.5 他の要素
図47は、本開示の一実施形態に係る、診断装置の他の要素に関連するブロック図である。
【0493】
図47に示す装置は必須のものではなく、他の要
素は多くても少なくてもよい。
【0494】
図47を参照して、診断装置4310の他の要
素としては、様々なデータを格納するように構成された格納モジュール5101、他の装置に対してデータを送受信するように構成された通信モジュール5103、ユーザからの様々な入力を受け付けるように構成された入力モジュール5105、データを視覚化するように構成された出力モジュール5107、及び/又は診断装置4310の各要素の動作を制御するように構成された制御モジュール5109が挙げられる。
【0495】
格納モジュール5101は、データを一時的又は半永久的に格納するようにしてもよい。格納モジュール5101には、診断装置4310を動作させるオペレーティングシステム(OS)、これに対応するファームウェア、ミドルウェア、及び様々なプログラムが格納されていてもよく、また、診断結果生成装置4319等の他の外部装置から受信したデータ等が格納されていてもよい。格納モジュール5101の代表例としては、ハードディスクドライブ(HDD)、固体ドライブ(SSD)、フラッシュメモリ、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、クラウドストレージ等が挙げられる。
【0496】
通信モジュール5103は、外部装置との通信を実行するようにしてもよい。例えば、通信モジュール5103は、外部装置に対してデータを送受信するようにしてもよい。一例として、通信モジュール5103は、診断装置4310により取得された染色された試料Tの画像を診断結果生成装置4319に送信するようにしてもよい。
【0497】
このような通信モジュール5103は、有線手段を用いて外部装置と通信するようにしてもよく、また、無線手段を用いて外部装置と通信するようにしてもよい。このため、通信モジュール5103としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)を通じてインターネット等につながるように構成された有線通信モジュール、モバイル通信基地局を通じてモバイル通信ネットワークにつながり、データを送受信するように構成されたロングタームエボリューション(LTE)等のモバイル通信モジュール、ワイヤレスフィデリティ(Wi−Fi)等の無線LAN(WLAN)ベースの通信手段若しくはBluetooth(登録商標)及びZigBee(登録商標)等の無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)ベースの通信手段を使用するように構成された短距離通信モジュール5103、全地球測位システム(GPS)等の全地球航法衛星システム(GNSS)を使用するように構成された衛星通信モジュール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0498】
格納モジュール5101は、制御装置のデータを一時的又は半永久的に格納するようにしてもよい。
【0499】
格納モジュール5101には、ローカル装置を動作させるOS、これに対応するファームウェア、ミドルウェア、及び様々なプログラムが格納されていてもよく、また、サーバ4330等の他の外部装置から受信したデータ等が格納されていてもよい。
【0500】
格納モジュール5101の代表例としては、HDD、SSD、フラッシュメモリ、ROM、RAM、クラウドストレージ等が挙げられる。
【0501】
入力モジュール5105は、診断装置4310の動作に関連する入力をユーザから受け付けるようにしてもよい。例えば、入力モジュール5105は、動作時間に関連するユーザ入力をユーザから受け付けて、診断装置4310の移動ユニット4311の動作時間を設定するようにしてもよい。
【0502】
ユーザ入力は、キー入力、タッチ入力、及び音声入力等の様々な形態であってもよい。入力モジュール5105は、従来の形態を有するキーパッド、キーボード、若しくはマウスのほか、ユーザのタッチを検知するように構成されたタッチセンサ、音声信号を受信するように構成されたマイク、画像認識によってジェスチャ等を認識するように構成されたカメラ、ユーザの接近を検知するように構成された照度センサ、赤外線センサ等の近接センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等を用いてユーザの動きを認識するように構成された運動センサ、並びに/又はその他様々な形態のユーザ入力を検知若しくは受信するように構成された様々な入力手段を網羅する概念である。ここで、タッチセンサは、ディスプレイパネルに取り付けられたタッチパネル又はタッチフィルムを通じてタッチを検知するように構成された圧電性又は容量性タッチセンサ、光学的手段によってタッチを検知するように構成された光学タッチセンサ等として実装されていてもよい。
【0503】
出力モジュール5107は、診断装置4310に関連する情報を出力するようにしてもよい。例えば、制御装置は、出力モジュール5107を通じて、診断装置4310の塗抹及び/又は染色装置の動作が行われているか否かを出力するようにしてもよい。
【0504】
出力モジュール5107としては、画像を出力するように構成されたディスプレイ、音声を出力するように構成されたスピーカ、振動を生成するように構成された触覚装置、及び/又はその他様々な形態の出力手段が挙げられる。以下、画像処理装置の出力モジュール5107の一例として、画像を視覚的に提供可能なディスプレイを説明する。ただし、画像処理装置のディスプレイによって必ずしも画像がユーザに出力されるわけではなく、その他任意の上記出力手段を通じてユーザに出力されるようになっていてもよい。ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機LED(OLED)ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ(FPD)、透明ディスプレイ、曲面ディスプレイ、可撓性ディスプレイ、3Dディスプレイ、ホログラフィックディスプレイ、プロジェクタ、及び/又は画像出力機能を実行可能なその他様々な形態の装置全てを含む、広い意味での画像表示装置を表す概念である。このようなディスプレイは、入力モジュール5105のタッチセンタと一体的に構成されたタッチディスプレイの形態であってもよい。また、それ自体で情報を外側に出力する装置の形態で実装される代わりに、出力モジュール5107は、外部出力装置を画像処理装置に接続するように構成された出力インターフェース(ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、パーソナルシステム2(PS/2)ポート等)の形態で実装されていてもよい。
【0505】
本開示の一実施形態に係る制御モジュールは、診断装置4310の各要素の全体動作を制御するようにしてもよい。例えば、制御モジュールは、上述の診断装置4310の要素が動作を開始するように、開始コマンドを与えるようにしてもよい。
【0506】
制御モジュールは、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせによって、コンピュータ又は類似の装置で実装されていてもよい。ハードウェアに関して、制御モジュールは、電気信号を処理して制御機能を実行する中央演算処理装置(CPU)チップ等の電子回路の形態で提供されていてもよい。ソフトウェアに関して、制御モジュールは、当該制御モジュールのハードウェアを動作させるプログラムの形態で提供されていてもよい。
【0507】
診断装置4310の試験キットの試料Tが塗抹され、塗抹された試料Tが染色され、染色された試料Tの画像が生成され、試料Tの状態が診断される診断システム4300の診断動作は、診断装置4310の上記要素の動作により実行されるようになっていてもよい。特段の記述がない限り、診断装置4310の各要素の動作は、制御モジュールにより制御されると考えられる。
【0508】
以上、診断装置4310に含まれる要素として、移動ユニット4311、接触ユニット4313、画像取得ユニット4317、診断結果生成装置4319、及び/又はその他の要
素を説明したが、これらの要素はそれぞれ、診断システムのサーバ4330、ユーザ端末4350等において実装されていてもよい。診断システムの要素において実装されている診断装置4310以外の要素はそれぞれ、当該要素それぞれに従属する要素が診断システムにおいて別個に実装されていてもよいことを表し得る。
【0509】
例えば、本開示の一実施形態に係る画像取得ユニット4317は、診断装置4310以外の診断システムの要素において実装されていてもよい。一例として、画像取得ユニット4317は、サーバ4330及び/又はユーザ端末4350において実装されていてもよい。画像取得ユニット4317の要素のうち、CCD画像センサ及びCMOS画像センサを含む画像センサ等の画像生成装置は、診断システムのサーバ4330及び/又はユーザ端末4350において実装されていてもよく、光学系及び/又は所定のビーム生成装置は、診断装置4310において実装されていてもよい。
【0510】
例えば、本開示の一実施形態に係る診断結果生成装置4319は、診断装置4310以外の診断システムの要素において実装されていてもよい。一例として、診断結果生成装置4319は、サーバ4330及び/又はユーザ端末4350において実装されていてもよい。
【0511】
診断結果生成装置4319は、データを解析するハードウェアの形態で実装されていてもよいが、診断を実行するためにインストールされたソフトウェアの形態で実装されていてもよい。
【0512】
診断結果生成装置4319は、別の外部装置の内側又は外側に単独で設けられていてもよい。すなわち、診断結果生成装置4319は、診断装置4310の内側に設けられて診断結果を生成していてもよいし、情報が統合されるサーバ4330中に存在し、サーバ4330により収集された情報に基づいて試料Tの診断結果を生成していてもよいし、診断システム4300を使用するユーザ端末4350にインストールされていてもよい。すなわち、診断結果生成装置4319は、診断システム4300の診断動作により生成されたデータを解析して、試料Tの状態を診断可能である限り、如何なる形態を有していてもよい。
【0513】
また、診断装置4310の上述の要素は、実装されていなくてもよい。要素が実装されていない場合、これらの要素が実行する後述の診断動作は、ユーザにより直接実行されるようになっていてもよい。
【0514】
診断装置4310の要素は、診断システム中に重複して存在していてもよい。要素が重複して存在する場合、重複要素の診断動作を実行する要素は、システムの重複要素から選択されるようになっていてもよい。このような選択は、ユーザによりなされるようになっていてもよいし、診断システムにおいて自動的になされるようになっていてもよい。
【0515】
以下、診断システムが試料Tの状態を診断する診断方法について説明する。
【0516】
4.2 診断動作
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試料Tの状態が診断される診断動作を実行するようにしてもよい。
【0517】
上述の通り、診断システム4300の各要素は、診断システム4300の異なる要素において別個に実装されていてもよいため、後述の診断動作は、診断システム4300の診断装置4310、サーバ4330、及び/又はユーザ端末4350によって別個に実行されるようになっていてもよい。
【0518】
本開示の一実施形態に係る診断システム4300の診断動作は、載荷動作、塗抹動作、染色動作、画像取得動作、及び/又は診断結果生成動作を含んでいてもよい。診断動作に含まれる上掲の各動作は、診断システム4300の要素の動作により実行されるようになっていてもよい。
【0519】
例えば、載荷動作、塗抹動作、及び/又は画像取得動作は、載荷領域4610に載荷された試験キットを診断システム4300に挿入可能となるように、載荷領域4610にある試験キットを移動ユニット4311が診断システム4300中に移動させる動作により実行されるようになっていてもよい。
【0520】
例えば、染色動作は、移動ユニット4311の移動動作及び/又は接触ユニット4313の接触動作が互いに関連して実行されることにより実行されるようになっていてもよい。
【0521】
診断動作は、診断システム4300に用いられる試験キットの種類により異なっていてもよい。その結果、診断システム4300は、試験キットの種類を確認する必要がある。試験キットの種類に関する情報は、ユーザ入力により取得されるようになっていてもよい。或いは、試験キットの種類に関する情報は、試験キットに含まれる近距離無線通信(NFC)、タグ、及び識別コード等、診断システム4300が識別可能な識別子等を通じて取得されるようになっていてもよい。
【0522】
以上から、診断動作に含まれる各動作については、診断システム4300の要素の上記動作との相関関係において説明する。
【0523】
4.2.1 載荷動作
本開示の一実施形態に係る診断装置4310は、診断動作が実行可能となるように試験キットが準備される載荷動作を実行するようにしてもよい。
【0524】
ここでは、試験キットを載荷する動作を実行するように構成された載荷領域移動ユニットが存在していてもよい。載荷領域移動ユニットは、試験キットが配置された載荷領域4610をユーザ及び/又は診断装置4310に提供可能となるように載荷領域4610を移動させることによって、載荷動作を実行するようにしてもよい。例えば、載荷領域移動ユニットは、所定の動力発生装置及び/又は動力伝達装置を具備し、動力伝達装置を通じて動力発生装置により発生した動力を載荷領域4610に伝達して載荷領域4610を移動させることにより、載荷動作を実行するようにしてもよい。
【0525】
載荷領域移動ユニットが診断装置4310に存在しない場合は、試験キットがユーザ及び/又は診断システム4300に提供される載荷動作を移動ユニット4311が実行するようにしてもよい。
【0526】
例えば、移動ユニット4311は、移動動作によって、載荷領域4610に配置された試験キットが診断装置4310に提供される載荷動作を実行するようにしてもよい。
【0527】
動力を発生させて伝達するように構成された上述の載荷領域移動ユニット及び/又は移動ユニットが存在しない場合は、診断装置4310の載荷領域4610に試験キットを手動で配置する動作をユーザが実行するようにしてもよい。
【0528】
4.2.2 塗抹動作
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試験キット中に配置された試料Tが塗抹される塗抹動作を実行するようにしてもよい。
【0529】
このような塗抹動作は主として、試験キットの構造体が移動する移動ユニット4311の移動動作及び/又は移動ユニット4311の移動動作を制御する制御装置4315の制御動作によって実行されるようになっていてもよい。
【0530】
上述の通り、塗抹動作においては、試料がパッチプレートの塗抹フィルムと接触することによって塗抹フィルムの幅方向に自然と広がるとともに、パッチプレートの塗抹ユニットが試料領域を掃引しつつ再び試料領域を通過することにより、試料領域において試料が塗抹される。
【0531】
以下、診断システム4300の塗抹動作を可能にする移動ユニット4311の相対移動動作について説明する。
【0532】
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試験キット中のプレートが互いに相対移動する移動ユニット4311の移動動作を実行することによって、診断動作を実行するようにしてもよい。ここで、プレート同士の相対移動は、試験キットの試料プレート及び/又はパッチプレートが移動する方向が同じでないことを表していてもよい。例えば、相対移動は、試料プレートが一方向に移動する場合、当該一方向と反対の別の方向にパッチプレートが移動することを表していてもよい。また、相対移動は、試験キットの試料プレート及びパッチプレートの一方が固定され、他方が移動することを表していてもよい。例えば、相対移動は、パッチプレートが固定され、試料プレートが一方向に移動することにより、パッチプレートが試料プレートに対して、当該一方向と反対の別の方向に配設されることを表していてもよい。相対移動の一方向に対する別の方向は、当該一方向の反対の方向として説明したが、この他方の方向は、反対方向に限定されず、当該一方向と同じではない任意の方向が上記他方の方向であってもよい。相対移動は、プレートが同じ方向に移動する場合であっても、異なる速度で移動することを表していてもよい。
【0533】
このような相対移動の代表例としては、プレートの相対的な摺動及び/又は回転が挙げられる。
【0534】
以下、試験キット中のプレートが互いに相対移動する移動ユニット4311の移動動作の上記動作は、相対移動動作と称する。
【0535】
図48及び/又は
図49は、本開示の一実施形態に係る、移動ユニット4311の相対移動動作に対する試験キットの移動に関連する一例を示した概念図である。
【0536】
図48及び/又は
図49を参照することにより、本開示の一実施形態に係る相対移動動作を移動ユニット4311が実行する場合に試料プレート又はパッチプレートが移動する方向が分かる。試料プレート上に配置された試料Tは、試験キット中のプレート同士の相対移動によって塗抹されるようになっていてもよい。
【0537】
試験キットを構成するパッチプレート及び/又は試料プレートは、移動ユニット4311の様々な相対移動動作に応じた様々な形態の相対移動を示していてもよい。
【0538】
例えば、試験キットの一要素が移動する移動ユニット4311の相対移動動作に係る形態の相対移動が存在していてもよい。具体的には、試料プレートが固定された状態でパッチプレートが一方向に移動する移動動作を移動ユニット4311が実行することによって、相対移動が実行されるようになっていてもよい。或いは、パッチプレートが固定された状態で移動ユニット4311が試料プレートを一方向に移動させることによって、相対移動が実行されるようになっていてもよい。
【0539】
別の例においては、試験キットの複数の要素が移動する移動ユニット4311の相対移動動作に係る形態の相対移動が存在していてもよい。すなわち、試験キットの複数の要素が移動する移動動作を移動ユニット4311が実行することによって、相対移動動作が実行されるようになっていてもよい。ここでは、相対移動の形態において、要素が同時に移動するようになっていてもよいし、各要素が順次移動するようになっていてもよい。具体的には、試料プレートが一方向に移動し、パッチプレートが当該一方向と異なる別の方向に移動するように、移動ユニット4311が移動動作を実行することによって、試験キットの相対移動動作が実行されるようになっていてもよい。
【0540】
試験キットの試料プレート及び/又はパッチプレートの移動速度が異なる状態で試料プレート及び/又はパッチプレートが同じ方向に移動する移動動作を移動ユニット4311が実行することによって、相対移動動作が実行されるようになっていてもよい。ただし、試料Tが塗抹される塗抹動作を実行するには、一方向のパッチプレートの移動速度が当該一方向の試料プレートの移動速度よりも大きくなるように、移動ユニット4311によって相対移動動作が実行される必要がある。
【0541】
上述の相対移動動作によれば、診断システム4300が塗抹動作を実行するようにしてもよい。試験キットの塗抹方法に関して上述した通り、塗抹動作には、試料Tをパッチプレートの塗抹ユニットに接触させて塗抹動作を実行する動作(以下、第1の塗抹動作と称する)と、試料プレートに対して塗抹ユニットを試料領域へと移動させることにより試料を塗抹する動作(以下、第2の塗抹動作と称する)とを含んでいてもよい。
【0542】
以下、診断システム4300が実行する第1の塗抹動作及び/又は第2の塗抹動作について説明する。
【0543】
4.2.2.1 第1の塗抹動作
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、移動ユニット4311の相対移動動作によって、試験キットの塗抹ユニットを試料Tと接触させる第1の塗抹動作を実行するようにしてもよい。
【0544】
試料が配置された方向に試験キットの塗抹ユニットが移動して試料に接触する相対移動動作を移動ユニットが実行することによって、第1の塗抹動作が実行されるようになっていてもよい。
【0545】
移動ユニットは、塗抹ユニットを試料に接触させる動作を実行した後、試験キットの構造体を移動させる動作をさらに実行することによって、第1の塗抹動作を実行するようにしてもよい。例えば、塗抹ユニットが試料に接触した後、移動ユニットは、試料が配置された方向に塗抹ユニットが移動した方向の正方向及び/又は逆方向に所定の距離だけ試験キットの構造体が移動する移動動作を実行するようにしてもよい。
【0546】
塗抹ユニットが試料と接触した後、移動ユニットが移動動作をさらに実行することによって、試験キットの塗抹ユニットが試料と接触可能であり、また、塗抹フィルムの幅方向の試料の広がりを効果的に促進可能である。これは、上述の通り、塗抹フィルムが試料に適している場合には塗抹フィルムが試料に接触するだけで塗抹フィルムの幅方向に試料が広がり得る一方、塗抹フィルムが試料に適さない場合には塗抹フィルムの幅方向に試料を広げるのが難しいことから、塗抹ユニットが試料に接触した後に試料の広がりを促進する所定のプロセスが必要となるためである。したがって、この所定のプロセスについては、塗抹ユニットが試料に接触した後、試料の塗抹前に塗抹フィルムを移動させて、塗抹フィルムの幅方向に試料が広がるようにする。
【0547】
4.2.2.2 第2の塗抹動作
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、移動ユニット4311の相対移動動作によって、試験キットの塗抹ユニットに試料領域の試料Tを塗抹させる第2の塗抹動作を実行するようにしてもよい。例えば、第1の塗抹動作の後、試料Tを塗抹するため、移動ユニットは、試験キットの構造体の相対移動によって、第1の動作の逆方向に試料プレートの試料領域を掃引しつつ塗抹ユニットが移動する第2の塗抹動作を実行するようにしてもよい。
【0548】
ここで、本開示の一実施形態に係る制御装置4315は、診断システム4300の第2の塗抹動作の実行に際して、移動ユニット4311の移動動作を制御するようにしてもよい。
【0549】
例えば、試料Tを塗抹する動作の後は、塗抹された試料Tを乾燥させて塗抹された試料Tを染色する必要がある。制御装置4315は、乾燥時間中に移動ユニット4311の移動動作が行われないように移動ユニット4311の移動動作を制御するようにしてもよい。
【0550】
また、上述の通り、試験キットの塗抹フィルムの種類及び塗抹速度に応じて、厚い塗抹又は薄い塗抹が実行されるようになっていてもよい。診断システム4300の診断動作に対してこれを適当に適用するため、制御装置4315は、移動ユニット4311の相対移動動作の速度を制御するようにしてもよい。
【0551】
図50は、本開示の一実施形態に係る、移動ユニット4311の相対移動動作の速度を制御装置4315が制御する一例を示した概念図である。
【0552】
図50を参照して、制御装置4315は、移動ユニット4311の相対移動速度の速度を制御するようにしてもよい。例えば、移動装置4311が試験キットの構造体を移動させる間に、制御装置4315は、移動ユニット4311がプレートを移動させる異なる速度を移動区分ごとに割り当てるようにしてもよい。具体的に、例えば、試料プレートが固定された状態でパッチプレートが一方向に移動する相対移動動作を移動ユニット4311が実行する場合、制御装置4315は、パッチプレートが区分x1で移動中に速度v1でパッチプレートを移動させるように移動ユニット4311を制御するようにしてもよく、パッチプレートが区分x2で移動中に速度v2でパッチプレートを移動させるように移動ユニット4311を制御するようにしてもよい。
【0553】
区分及び/又は速度は、診断システム4300中に存在する数値であってもよいが、ユーザ入力等を通じて受け付けられたデータに基づいて設定された数値であってもよい。
【0554】
試料Tの塗抹度を区分ごとに異ならせる制御装置4315の制御動作によって、診断システム4300は、区分ごとに異なる塗抹動作を実行するようにしてもよい。
【0555】
移動ユニット4311がプレートを移動させる速度を区分ごとに異ならせることによって、制御装置4315は、試料Tの塗抹度を変化させるようにしてもよい。診断システム4300は、塗抹度の調整によって、区分ごとに厚い塗抹又は薄い塗抹を実行するようにしてもよい。塗抹された試料Tが後で染色・診断される場合は、区分ごとに異なる診断手段を適用可能であることから、ユーザは、様々な方法で試料Tの状態の診断を実行するようにしてもよい。
【0556】
4.2.3 染色動作
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試験キット中の塗抹された試料Tが染色される染色動作を実行するようにしてもよい。上述の通り、接触型パッチが試料領域の塗抹された試料と接触するように接触ユニットが接触動作を実行することによって、染色動作が実行されるようになっていてもよい。
【0557】
本開示の一実施形態に係る染色動作には、試験キット中のプレートを整列させる整列動作及び/又は試験キット中に配置された試料Tを染色する染色動作を含んでいてもよい。
【0558】
上述の整列動作及び染色動作のような染色動作は、試験キットの構造体を移動させて試験キットに含まれる接触型パッチを試料Tと接触させる接触ユニット4313の上記接触動作、移動ユニット4311の移動動作、及び/又は制御装置4315の制御動作が実行される場合に実行されるようになっていてもよい。
【0559】
4.2.3.1 調整動作
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試験キット中のパッチプレートの位置及び/又は試料プレートの位置が染色動作用に調整される動作を実行するようにしてもよい。
【0560】
図35の図面を参照して、診断システム4300は、試験キットのパッチプレートに含まれる複数の収容部22
20が試料領域2420に対応する位置に順次配置される調整動作を実行するようにしてもよい。試料領域に対応する位置は、染色に適するように塗抹が実行された試料プレートの試料領域の領域の直上の位置を表していてもよい。
【0561】
このような調整動作は、移動ユニットの移動動作及び/又は移動動作を制御する制御装置の制御動作が実行される場合に実行されるようになっていてもよい。例えば、試料領域に対応する位置に収容部を配置可能となるように、試験キットの構造体が相対的に移動する動作を移動ユニットが実行するとともに、制御装置が相対移動動作を制御することによって、調整動作が実行されるようになっていてもよい。
【0562】
調整動作により、診断システム4300は、接触型パッチが塗抹された試料と効果的に接触し得るようにして、後述の染色動作において塗抹された試料の染色が効果的に実行されるようにしてもよい。
【0563】
4.2.3.2 染色動作
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試料Tが染色される染色動作を実行するようにしてもよい。
【0564】
上述の通り、診断システム4300は、試験キットのパッチプレートに含まれる接触型パッチを塗抹された試料領域に接触させる接触ユニットの接触動作によって、染色動作を実行するようにしてもよい。
【0565】
図51並びに/又は
図52(a)及び
図52(b)は、本開示の一実施形態に係る、接触ユニット4313の接触動作により試験キットの構造体が移動する一例を示した概念図である。
【0566】
図51を参照して、接触ユニット4313は、試験キットのプレートが移動する接触動作によって、染色動作を実行するようにしてもよい。例えば、パッチプレート及び/又は試料プレートが垂直方向に移動する接触動作を接触ユニット4313が実行することにより、診断システム4300は、染色動作を実行するようにしてもよい。すなわち、接触ユニット4313がパッチプレート及び/又は試料プレートを移動させると、パッチプレートに格納された接触型パッチが塗抹された試料Tに接触して、染色動作が実行されるようになっていてもよい。
【0567】
図52(a)及び
図52(b)に示すように、接触ユニット4313は、試験キットに含まれる接触型パッチが移動する接触動作の実行によって、染色動作を実行するようにしてもよい。例えば、接触ユニット4313は、パッチプレートに格納された接触型パッチが試料プレート上の塗抹された試料Tに接触する接触動作を実行することによって、試料が染色されるようにしてもよい。
【0568】
図53は、本開示の一実施形態に係る、本開示の染色動作が実行される一例を示した概念図である。
【0569】
図53を参照して、診断システム4300の染色動作は、接触ユニット4313の上記接触動作及び移動ユニット4311の移動動作が互いに関連して実行されることにより実行されるようになっていてもよい。例えば、試験キット中のプレートが一方向に移動する移動動作を移動ユニット4311が実行する間に接触ユニット4313が接触動作を実行することによって、染色動作が実行されるようになっていてもよい。
【0570】
具体的には、2つのプレートが互いに相対移動して試料領域及び収容部が互いに反対に配設される動作を移動ユニット4311が実行するとともに、移動ユニット4311の相対移動動作中に、接触型パッチが試料領域まで移動するようにパッチプレートの外側面で接触ユニット4313が接触動作を順次実行することによって、染色動作が実行されるようになっていてもよい。
【0571】
診断システム4300の染色動作における塗抹された試料Tの染色のため、接触型パッチが塗抹された試料Tと接触する少なくとも所定の染色時間が必要であり、塗抹された試料Tの染色後は、染色された試料Tを乾燥させる時間が必要となる場合もある。
【0572】
すなわち、上述の通り、所定の時間にわたって接触ユニット4313が接触動作を実行している間に移動ユニット4311が移動動作を継続的に実行する場合は、接触型パッチが試料Tから離されていてもよく、また、染色時間が満たされなくてもよい。移動ユニット4311及び接触ユニット4313が動作を継続的に実行する場合は、染色された試料Tの乾燥時間が満たされなくてもよい。したがって、接触ユニット4313が接触動作を実行する間は移動ユニット4311が移動動作を行わないこと又は移動ユニット4311が移動動作を再度行うことが必要となる。
【0573】
このため、制御装置4315は、染色時間及び乾燥時間に従って、接触ユニット4313の接触動作と移動ユニット4311の移動動作との間の時間間隔を設定するようにしてもよい。
【0574】
図54は、本開示の一実施形態に係る、染色動作における診断システムの要素の動作を制御装置が制御する一例を示した図である。
【0575】
図54を参照して、制御装置4315は、接触ユニット4313の接触動作及び/又は移動ユニット4311の移動動作間の時間間隔を制御するようにしてもよい。具体的には、例えば
図54を参照して、制御装置4315は、時間間隔に従って、所定の時間間隔Δt1にわたり実行され、所定の時間間隔Δt2にわたり実行されないように接触ユニット4313の接触動作を制御するようにしてもよい。また、試料Tの試料プレートへの塗抹後に試料Tを乾燥させる時間の後、移動ユニット4311が移動動作を実行するように、制御装置4315は、所定の時間間隔Δt1にわたり実行されず、所定の時間間隔Δt2にわたり実行されるように移動ユニット4311の移動動作を設定するようにしてもよい。
【0576】
(1)接触面から気泡を除去し、(2)接触型パッチの染色試薬の塗抹された試料への適正な移行を可能とし、又は(3)効果的な染色動作のために他の方法で染色動作を補完するため、本開示の一実施形態に係る接触ユニット4313は、試料に接触した接触型パッチが移動する動作を実行するようにしてもよい。例えば、効果的な染色動作のため、接触ユニット4313は、接触動作の実行によって、試料に接触した接触型パッチが試料と接触したまま転動するようにしてもよい。転動は、接触型パッチが試料と接触したまま試験キットの長手方向及び/又は長手方向と垂直な方向に振動し得ることを表していてもよい。また、例えば効果的な染色動作のため、接触ユニット4313は、接触動作の実行によって、接触型パッチが試料と接触したまま試験キットの幅広面と垂直な方向に移動し得るようにしてもよい。
【0577】
接触ユニット4313及び移動ユニット4311に関連する動作時間間隔は、診断システム4300中に予め設定された数値であってもよいが、ユーザ入力等を通じて受け付けられたデータに基づいて設定された数値であってもよい。
【0578】
4.2.4 画像取得動作
以下、上述の塗抹動作及び/又は染色動作により染色された試料Tの状態を診断するために実行される診断システム4300の画像取得動作について説明する。
【0579】
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、塗抹動作及び/又は染色動作により生成された試験キット中の染色された試料Tに関連する画像を取得する動作を実行するようにしてもよい。
【0580】
このような画像取得動作は、画像取得ユニット4317及び/又は画像取得ユニット4317が他の要素との関連で動作を実行することにより実行されるようになっていてもよい。
【0581】
診断装置4310以外のシステムの要素に画像取得ユニット4317が存在する場合は、画像取得動作に対して別の動作等が実行されるようになっていてもよい。例えば、診断システムの別の要素に実装された画像取得ユニット4317により画像取得動作が実行される場合、診断装置4310は、内部の試験キットを診断システムの別の要素に提供して、染色された試料Tの画像を取得可能な画像取得動作を診断システムの当該他の要素が実行し得るようにしてもよい。
【0582】
以下、画像取得動作について説明する。
【0583】
4.2.4.1 試験キットの移動
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試験キット中に配置された染色された試料の画像を取得する場合、試験キットの構造体を移動させて画像を取得するようにしてもよい。
【0584】
図55は、本開示の一実施形態に係る、試験キットの構造体の移動により画像が取得されるプロセスを示した図である。
【0585】
図55を参照して、移動ユニット4311は、移動動作の実行によって、試料プレートの試料領域が画像取得ユニット4317に対して露出するようにしてもよい。例えば、移動ユニット4311は、パッチプレート及び/又は試料プレートが互いに相対移動する移動動作の実行によって、試料プレートの試料領域が画像取得ユニット4317に対して露出するようにしてもよい。
【0586】
パッチプレートの上部に観察孔が設けられている場合、移動ユニット4311は、移動動作の実行によって、観察孔を通じて露出する位置に試料領域が配設されるようにしてもよい。
【0587】
試験キットの画像の生成を容易化するため、診断装置4310は、当該診断装置4310の別の空間に試験キットを移動させて画像を生成するようにしてもよい。
【0588】
図56は、本開示の一実施形態に係る、試験キットの別の空間への移動により画像が取得されるプロセスを示した図である。
【0589】
図56を参照して、移動ユニット4311は、診断システム4300の別の空間に試験キットを移動させるようにしてもよい。この場合、移動ユニット4311は、試料プレート及びパッチプレートを一緒に別の空間へ移動させるようにしてもよいし、試験キットの試料プレートのみを別の空間へ移動させるようにしてもよい。
【0590】
画像取得動作の実行のために試験キットが診断装置4310の別の空間に移動した場合、上述の画像取得のために試験キットの構造体を移動させる移動ユニット4311の移動動作は、画像取得動作との関連で実行されるようになっていてもよい。例えば、移動ユニットは、試験キットの別空間への移動後に、移動動作の実行によって、試料プレートの試料領域が露出するようにしてもよい。
【0591】
本開示の一実施形態に係る画像取得動作は、試験キットが移動していない状態であっても実行されるようになっていてもよい。例えば、画像取得ユニット4317の光学系間に試験キットを配置し得るように構造体を形成すること又はミラー等の反射器を用いて試験キットにビームを照射することにより、試験キットが移動しなくても画像取得動作が実行されるようになっていてもよい。
【0592】
4.2.4.2 画像フレームの組み合わせ
本開示の一実施形態に係る診断システム4300は、試験キットの構造体及び/又は試験キットが移動する上記動作の後、染色された試料Tの画像が取得される画像取得動作を実行するようにしてもよい。
【0593】
図57は、本開示の一実施形態に係る、画像を取得する一例を示した図である。
【0594】
図57を参照して、診断システム4300は、染色された試料Tの複数の画像フレームを取得し、取得した画像フレームを組み合わせることによって、染色された試料Tの画像を取得するようにしてもよい。これは、診断システム4300内の低照度状況又は制限された空間において単一のフレームで画像を取得する場合と比較して、複数のフレームの組み合わせにより画像を取得する場合は、高品質の画像を得られるためである。
【0595】
したがって、このため、画像を取得する動作を診断システム4300が実行している間に、試験キット及び/又は画像取得ユニット4317が移動する動作が実行されるようになっていてもよい。
【0596】
例えば、複数のフレーム画像を取得するとともに、画像生成装置、光学系、及び/又はビーム生成装置を含む画像取得ユニット4317を移動させるため、画像取得ユニット4317に接続された移動部材が別個に設けられていてもよいし、試験キットが移動する移動ユニット4311の移動動作が実行されるようになっていてもよい。
【0597】
図57に示すキャプチャ1〜9は、複数のフレームの取得の一例に過ぎず、画像取得ユニット4317が染色された試料の画像をキャプチャする手段は、
図57に示すキャプチャの数にも方向にも限定されない。
【0598】
4.2.5 診断結果生成動作
診断システム4300は、染色された試料の画像が解析されて診断結果が生成される動作を実行するようにしてもよい。
【0599】
本開示の一実施形態に係る診断結果は、上述の診断結果生成装置4319により染色された試料の画像を解析し、試料の状態を診断することによって生成されるようになっていてもよい。
【0600】
本開示の一実施形態に係る診断結果生成動作中に染色された試料の画像を解析する方法は、好ましくは画像処理技術により実現されていてもよい。例えば、診断結果生成動作は、染色された試料の画像の各画素のデータを検知し、検知したデータを解析することにより、診断結果生成装置4319に予め設定されたアルゴリズムに従って試料を自動的に診断する方法であってもよい。ここで、アルゴリズムは、染色された試料の予め格納された診断結果画像に対して染色された試料の画像を比較するアルゴリズムであってもよい。ただし、画像を解析する方法は、診断結果を解析するために実行可能である限り、上記手段に限定されない。
【0601】
また、本開示の一実施形態に係る診断結果生成動作では、診断結果生成装置4319等のハードウェア又はソフトウェア要素の動作なく、染色された試料の画像を解析し、試料の状態を診断し、診断結果を生成するようにしてもよい。例えば、診断結果生成動作は、診断システムにおいて、染色された試料の画像が管理者により解析され、試料の状態が診断され、診断結果がフィードバックとして与えられる方法であってもよい。
【0602】
最終的には、生成された診断結果が診断システム4300に格納されることから、診断結果生成装置4319は、ビッグデータを構成していてもよい。したがって、本開示の一実施形態に係る診断結果生成装置4319は、ビッグデータに基づいて診断結果
生成動作を実行するようにしてもよい。例えば、染色された試料の画像を解析し、診断結果生成装置4319により生成されたビッグデータに従って所定のアルゴリズムにより診断結果を生成することによって、診断結果における誤診断率を低減可能であり、また、ビッグデータに係る所定のアルゴリズムに従って、診断結果生成装置4319により生成された診断結果を確認することができる。
【0603】
上述のビッグデータに基づいて診断結果生成装置4319が診断動作を実行することにより、診断システム4300は、本開示に係る正確な診断結果をそれ自体で生成することを学習するようにしてもよい。
【0604】
本開示の一実施形態に係る診断システム4300の上述の診断動作はそれぞれ、個別に実行されるようになっていてもよい。
【0605】
本開示の一実施形態によれば、「各診断動作を個別に実行可能」は、上述の診断動作がそれぞれ、診断システム4300の各要素で別個に実行され得ることを表していてもよいし、上述の診断動作の一部が実行されなくてもよいことを表していてもよい。
【0606】
具体例として、診断動作のうちの塗抹動作及び染色動作が個別に実行される場合は、塗抹動作が診断システム4300の第1の診断装置により実行される一方、染色動作が第2の診断装置により実行されるようになっていてもよいし、診断システム4300の診断装置4310において塗抹動作のみが実行される一方、染色動作は実行されなくてもよいし、診断システム4300の診断装置4310において染色動作のみが実行される一方、塗抹動作は実行されなくてもよい。
【0607】
本開示の一実施形態に係る診断動作はそれぞれ、診断システム4300において複数回実行されるようになっていてもよい。
【0608】
本開示の一実施形態によれば、「各診断動作を複数回実行可能」は、1つの要素及び/又は別の要素のうちの1つ又は複数において各診断動作が複数回実行され得ることを表していてもよい。
【0609】
具体例として、診断動作のうちの染色動作が複数回実行される場合は、診断システム4300の診断装置4310において染色動作が複数回実行されるようになっていてもよいし、診断システム4300の複数の診断装置4310において染色動作が複数回実行されるようになっていてもよいし、診断システム4300の診断装置4310及び/又はユーザ端末4350において染色動作が複数回実行されるようになっていてもよい。
【0610】
本開示の一実施形態に係る診断装置4310の上述の要素は、診断動作がそれぞれ実行される上述の種類に従って診断システムで実装されていてもよい。例えば、診断動作のうちの塗抹動作及び染色動作が個別に実行され、診断システム4300の第1の診断装置により塗抹動作が実行される一方、第2の診断装置により染色動作が実行される場合は、第1の診断装置に第1の移動ユニットのみが実装され、第2の診断装置に第2の移動ユニット及び接触ユニットが実装されていてもよい。
【0611】
4.3 本開示の診断システムの実装
本開示の一実施形態に係る試験キットのユーザは、試験キットのパッチプレートに形成された試料注入部を通じて、試料プレートの試料領域に試料を注入するようにしてもよい。試験キットの試料プレート上に配置された試料の状態を診断するため、ユーザは、本開示の診断システム4300を使用してもよい。
【0612】
以下、本開示により実施された診断システム4300をユーザが使用する方法について説明する。
【0613】
図58は、本開示の一実施形態に係る、本開示により実施された診断装置の側面図である。
【0614】
図58を参照して、本開示により実施された診断装置4310は、移動ユニット4311、接触ユニット4313、及び画像取得ユニット4317を具備していてもよい。移動ユニット4311、接触ユニット4313、及び画像取得ユニット4317のほか、診断装置4310は、診断システムのユーザが試験キットを配置する載荷領域が当該診断装置の本体の内側に形成されていてもよい。
【0615】
図59は、本開示の一実施形態に係る、本開示により実施された診断装置4310の載荷領域を示している。
図59を参照して、載荷領域4610は、ユーザにより本体の内側から外側に引き出されて、ユーザが診断装置4310の外側から試験キットを当該載荷領域に配置できるようになっていてもよい。ここで、載荷領域4610は、上述の載荷領域移動ユニット及び/又は移動ユニットの移動動作によって、外側及び/又は内側に移動するようになっていてもよい。
【0616】
図60は、本開示の一実施形態に係る、本開示により実施された移動ユニットを示した図である。
【0617】
図60を参照して、本開示の一実施形態に係る移動ユニット4311が機械的形態で実装されていることが分かる。移動ユニット4311は、試験キットに動力を伝達するように構成された動力伝達部材4703(以下、第1の動力伝達部材と称する)、動力を発生させるように構成された動力発生装置4701、並びに/又は動力発生装置4701及びこれと係合する第1の動力伝達部材に動力が伝達されるように動力発生装置4701及び第1の動力伝達部材に接続された動力伝達部材4703(以下、第2の動力伝達部材と称する)を具備していてもよい。
【0618】
ここで、第2の動力伝達部材は、
図60に示すように動力発生装置4701の駆動軸と第1の動力伝達部材の被駆動軸とを接続してモータの回転力を伝達するベルトの形態で実装されていてもよい。ただし、第2の動力伝達部材の形状は、本実施態様に限定されない。例えば、第2の動力伝達部材は、動力発生装置4701の駆動軸に接続されたバーの形態で実装されていてもよいし、第1の動力伝達部材に動力を伝達する形態であってもよい。
【0619】
図61は、本開示の一実施形態に係る、本開示により実施された移動ユニットが実行する移動動作を示した図である。
【0620】
図61を参照して、本開示により実施された移動ユニット4311が実行する移動動作を説明する。動力発生装置4701により発生した回転動力を移動ユニット4311が第2の動力伝達部材に伝達し、第2の動力伝達部材が受け取った動力を第1の動力伝達部材に伝達し、第1の動力伝達部材が当該動力をラックギアの形態の試験キットの構造体に伝達することによって、試験キットの構造体が移動する移動動作が実行されるようになっていてもよい。実施された本開示において、第1の動力伝達部材は、試験キットのパッチプレートが搭載される第1の搭載部及び試料プレートが搭載される第2の搭載部を具備していてもよい。
【0621】
本開示の一実施態様においては、移動ユニット4311の上記移動動作によって、診断装置4310が塗抹動作を実行することにより、試験キットの試料プレートの試料領域に配置された試料が試料プレートの長手方向に試料領域で塗抹されるようになっていてもよい。
図61を参照して、診断装置4310の移動装置4311は、塗抹動作を実行する要素であってもよい。移動装置4311は、試験キットの試料プレートが搭載された第1の搭載部及びパッチプレートが搭載された第2の搭載部に接続された第2の動力伝達部材を通じて、動力発生装置により発生した動力を試験キットに伝達するとともに、試料プレート及び/又はパッチプレートを互いに相対移動させることによって、塗抹動作を実行するようにしてもよい。塗抹動作には、第1の塗抹動作及び第2の塗抹動作を含んでいてもよい。上述の相対移動動作により、移動ユニット4311は、パッチプレートの塗抹ユニットが試料プレートの試料に接触し得る第1の塗抹動作及び試料と接触した塗抹ユニットがプレートの長手方向に移動して試料領域を掃引する第2の塗抹動作を実行するようにしてもよい。第2の塗抹動作の後、固定溶液の塗抹された試料への適用又は固定パッチの塗抹された試料との接触によって塗抹された試料が固定される動作が実行されるようになっていてもよい。
【0622】
図62は、本開示の一実施形態に係る、本開示により実施された接触ユニットを示した図である。
【0623】
図62を参照して、本開示により実施された接触ユニット4313が機械的形態を有する接触ユニット4313であることを認識可能である。本開示の接触ユニット4313は、試験キットの構造体に動力を伝達するように構成された動力伝達部材4903及び動力を発生させるように構成された動力発生装置4901を具備していてもよい。
【0624】
動力伝達部材4903及び動力発生装置4901は、接続により互いに係合して、動力発生装置4901により発生した動力を試験キットの構造体に対して瞬時に伝達するようにしてもよい。例えば、
図62に示すように、動力伝達部材4903及び動力発生装置4901は、ラックギアの形態で係合して、動力発生装置4901により発生した機械式回転動力を動力伝達部材4903が伝達し得るように実装されていてもよい。このようにして、接触により動力発生装置4901の動力が試験キットの構造体に伝達され、受け取った動力に応じて試験キットの構造体が移動することで試験キットに含まれる接触型パッチが試料Tに接触する接触動作が実行されるようになっていてもよい。
【0625】
本開示の一実施態様においては、塗抹動作の実行後、試料領域の塗抹された試料を染色する染色動作を診断装置4310が実行するようにしてもよい。
【0626】
図63は、本開示の一実施形態に係る、診断装置の接触ユニットが実行する接触動作を示した図である。
【0627】
図61及び
図63を参照して、染色動作は、移動ユニット4311及び/又は接触ユニット4313の上述の動作により実行されるようになっていてもよい。染色動作に関して、移動ユニット4311は、パッチプレート及び/又は試料プレートに接続された第1の搭載部及び/又は第2の搭載部に動力を伝達することにより、パッチプレートに格納された接触型パッチが試料領域上に存在し得るようにして、パッチプレート及び/又は試料プレートを互いに相対移動させるようにしてもよい。ここで、試料プレート上の試料に対して複数の接触型パッチを順次接触させて試料を染色する場合、移動ユニット4311は、試料プレートに対して、接触型パッチが含まれる空間の上面を接触ユニット4313の動力伝達部材4903の直下の位置に順次移動させるようにしてもよい。移動ユニット4311がパッチプレート及び/又は試料プレートを互いに相対移動させるのに対して、接触ユニット4313は、
図63に示すように、動力伝達部材4903が移動して接触型パッチが含まれる空間の上面が打撃を受けることにより、接触型パッチが試料プレート上の試料に接触し得る接触動作を実行するようにしてもよい。診断装置4310の染色動作が実行される間に、制御装置は、接触型パッチが試料に接触することで染色が実行される時間及び染色後に乾燥が行われる時間を考慮して、移動ユニット4311及び接触ユニット4313の動作を制御するようにしてもよい。
【0628】
本開示の一実施態様においては、試料の染色後、染色された試料の画像が生成される動作を診断装置4310が実行するようにしてもよい。染色された試料の画像の生成を容易化するため、染色された試料の試験キットが診断装置4310内の別の空間に移動するようになっていてもよい。試験キットが移動する動作は、移動ユニット4311又は画像取得ユニット4317を構成する所定の動力伝達装置により実行されるようになっていてもよい。試験キットの移動後は、光源からの光が光学系により試験キットに集められるようになっていてもよく、この光が画像センサにより受光されて、染色された試料の拡大画像が生成されるようになっていてもよい。ここで、移動ユニット4311及び/又は画像取得ユニット4317を構成する所定の動力伝達装置が、
図57に示すように染色された試料が配置された試験キットを移動させる一方、本開示において実施された画像取得ユニット4317は、複数の画像をキャプチャして、染色された試料の拡大画像を生成するようにしてもよい。診断装置4310は、画像取得ユニット4317の光学系のレンズ厚を電子的に制御することにより、染色された試料の倍率を調整するようにしてもよい。
【0629】
染色された試料の拡大画像は、サーバ4330の診断結果生成装置4319により解析され、試料の診断結果が生成されるようになっていてもよい。このような試料の診断結果は、所定の通信ネットワーク等のネットワークを通じて診断装置4310に送信され、診断装置4310の出力モジュールを通じて出力されることにより、当該診断結果がユーザに提供されるようになっていてもよい。
【0630】
4.4 診断方法
以下、上述の診断システム4300に関連する一連のプロセス及び/又は診断システム4300が実行する診断動作について説明する。
【0631】
図64は、本開示の一実施形態に係る、診断方法を示したフローチャートである。
【0632】
図64を参照して、診断方法は、試験キットが診断装置4310に提供される載荷動作、試験キットの試料Tが塗抹される塗抹動作、試料Tが染色される染色動作、染色された試料Tの画像が取得される画像取得動作、及び画像により試料Tの状態が診断される診断結果生成動作を含んでいてもよい。ステップS6310〜S6390がすべて実行されるようになっていてもよいが、必ずしもステップS6310〜S6390がすべて実行される必要はなく、ステップS6310〜S6390のうちの少なくとも1つだけが実行されるようになっていてもよい。
【0634】
試験キットが診断装置4310に提供される載荷動作ステップS6310において、制御モジュール5109は、載荷領域4610における試験キットの状態を把握し、把握した状態をフィードバックとしてユーザに提供するようにしてもよい。例えば、試験キットが載荷領域4610に存在するか否かが検出され、検出結果がフィードバックとしてユーザに提供されるようになっていてもよい。試験キットが適正位置に配置されていない場合は、試験キットが適正位置に配置されていない事実がフィードバックとしてユーザに提供されるようになっていてもよい。
【0635】
試験キット中の試料Tが塗抹される塗抹動作ステップS6330においては、診断装置4310の移動ユニット4311及び/又はこれを制御するように構成された制御装置4315の動作に従って、試験キットの試料プレート上に配置された試料Tが試料プレートの試料領域上で塗抹されるようになっていてもよい。
【0636】
本開示の一実施形態に係る塗抹動作ステップS6330の後又は後述の染色動作ステップS6350の前には、染色された試料が固定される診断システム4300の動作が実行されるようになっていてもよい。固定動作において、好ましくは、化学的手段を用いた固定が実行されるようになっていてもよい。例えば、上述の通り、固定動作は、化学変化を生じて試料を固定するように構成された固定剤を含む固定パッチが塗抹された試料と接触する動作又は固定剤を含む固定溶液が塗抹された試料に適用される動作であってもよい。
【0637】
上述の固定動作は、診断システムの移動ユニット及び/又は接触ユニットの移動動作により実行されるようになっていてもよいが、診断システムのユーザにより実行されるようになっていてもよい。また、塗抹動作ステップS6330と染色動作ステップS6350との間の固定動作は、省略されてもよい。
【0638】
試料Tが染色される染色動作ステップS6350においては、診断装置4310の移動ユニット4311、接触ユニット4313、及び/又はこれらを制御するように構成された制御装置4315の動作に従って、試験キットの試料プレート上の塗抹された試料Tの染色が実行されるようになっていてもよい。
【0639】
染色された試料Tの画像が取得される画像取得動作ステップS6370において、染色された試料Tの複数のフレーム画像を取得するプロセスは、走査手段に加えて、染色された試料Tの複数のフレーム画像が取得されるプロセスであってもよく、取得された複数のフレーム画像の合成によって、染色された試料Tの画像が得られるようになっていてもよい。
【0640】
試料Tの状態が診断される診断結果生成動作ステップS6390において、診断システム4300の診断結果生成装置4319は、染色された試料Tの画像を解析して、試料Tの状態に関連する診断結果を生成するようにしてもよい。
【0641】
本開示の一実施形態に係る診断結果生成動作ステップにおいては、診断システム4300の塗抹動作及び/又は染色動作が個別に実行されてもよいし、実行されなくてもよい。その一例として、診断システム4300は、移動ユニット4311のみを具備することで塗抹動作のみを実行するようにしてもよいし、移動ユニット4311及び接触ユニット4313を具備することで染色動作のみを実行するようにしてもよいし、接触ユニットのみを具備する一方、相対移動がユーザにより実行されることで染色動作のみを実行するようにしてもよいし、複数の移動ユニット4311及び/又は接触ユニット4313を具備することで塗抹動作及び染色動作を個別に実行するようにしてもよい。
【0642】
試料Tの生成された診断結果は、診断結果生成装置4319に格納されていてもよいし、別の外部装置に送信されて格納されるようになっていてもよい。診断結果は、診断システム4300の診断装置4310、サーバ4330、及び/又はユーザ端末4350を通じてユーザが確認し得るように出力されることにより、フィードバックとして与えられるようになっていてもよい。
【0643】
上述の本開示に係る書記方法及び/又は閲覧方法において、各実施形態を構成するステップは必須ではないため、各実施形態は、上述のステップを選択的に含んでいてもよい。各実施形態を構成するステップは、必ずしも上述の順序で実行する必要がなく、後に記載されたステップが前に記載されたステップの前に実行されるようになっていてもよい。また、各ステップが実行される間に、任意の1つのステップが繰り返し実行されるようになっていてもよい。
【0644】
以上、本開示に係る実施形態に基づいて、本開示の構成及び特徴を説明したが、本開示はこれらに限定されず、本開示が関係する当業者には、本開示の主旨及び範囲内で種々変更又は改良が可能であることが明らかと考えられる。したがって、このような変更又は改良は、添付の特許請求の範囲に属することに留意するものとする。