【実施例】
【0020】
以下本発明の一実施例によるポンプ装置を搭載した作業車について説明する。
図1は本実施例によるポンプ装置を搭載した消防車の側面図、
図2は同消防車の上面図である。
本実施例による消防車は、車両フレーム10上に、乗車キャビン11とポンプ装置30とを搭載している。
ポンプ装置30は、車両両側面にそれぞれ吸水口21、吐水口22、中継口23を備えている。吸水口21には、吸水ホース24が接続されており、この吸水ホース24を用いて池やプールなどの貯水源から吸水を行う。吐水口22には、図示しない吐水ホースを接続する。中継口23には、図示しない中継ホースによって消火栓に接続する。
吸水口21は、車輌側面で、車輌後輪12よりも後方の位置に配置している。
吸水ホース24は、車輌後輪12の車軸13よりも後方の位置で、車輌側面に巻かれて装着される。
吸水口21及び吸水ホース24をともに車輌後方に位置させることで、吸水に要する作業時間の短縮を図れる。
ポンプ装置30には、吐水圧を変更する操作手段51が設けられている。操作手段51は、例えばエンジンへの燃料供給量を変更するスロットルである。
【0021】
図3から
図6は同消防車に搭載したポンプ装置を示し、
図3は同ポンプ装置の上面図、
図4は同ポンプ装置の側面図、
図5は同ポンプ装置の後方面図、
図6は同ポンプ装置の前方面図である。
【0022】
ポンプ装置30は、ポンプ吸入口31及びポンプ吐出口32を有するポンプ33と、吸水口21からポンプ吸入口31までを接続する吸水配管25と、ポンプ吐出口32に接続する逆流防止弁40と、逆流防止弁40から吐水口22までを接続する吐水配管26とを備えている。
ポンプ装置30は、吸水口21として、車輌の一方の側面に配置される第1吸水口21Lと、車輌の他方の側面に配置される第2吸水口21Rを有している。
吸水口21は、吸水コック21Cによって形成されている。吸水コック21Cは吸水口21の開閉を行う。
また、ポンプ装置30は、吐水口22として、車輌の一方の側面に配置される第1吐水口22LF及び第2吐水口22LBと、車輌の他方の側面に配置される第3吐水口22RF及び第4吐水口22RBとを有している。
吐水口22は、吐水コック22Cによって形成されている。吐水コック22Cは吐水口22の開閉を行う。
また、ポンプ装置30は、中継口23として、車輌の一方の側面に配置される第1中継口23Lと、車輌の他方の側面に配置される第2中継口23Rを有している。
中継口23は、中継コック23Cによって形成されている。中継コック23Cは中継口23の開閉を行う。
【0023】
ポンプ33と吸水口21とは、ポンプ吸入口31のポンプ吸入口仮想法線ベクトル31NVと、第1吸水口21Lの吸水口仮想法線ベクトル21LNVとが第1の角度以下となるように配置し、ポンプ吸入口仮想法線ベクトル31NVと、第2吸水口21Rの吸水口仮想法線ベクトル21RNVとが第4の角度以下となるように配置している。
吸水配管25の曲がりが少ないほど通水抵抗が低減されるため、第1の角度及び第4の角度は0度に近いほうがより好ましいが、配置寸法の制約等により吸水配管25を曲げざるを得ない場合には、通水抵抗が極力少なくなるように、出来る限り滑らかな曲げR(曲げ半径を大きく)とすればよい。したがって、第1の角度及び第4の角度は0度以上90度以下とすることが好ましい。本実施例においては、ポンプ33と吸水口21とは、ポンプ吸入口31のポンプ吸入口仮想法線ベクトル31NVと、第1吸水口21Lの吸水口仮想法線ベクトル21LNVとが90度の角度を有するように配置し、ポンプ吸入口仮想法線ベクトル31NVと、第2吸水口21Rの吸水口仮想法線ベクトル21RNVとが90度の角度を有するように配置している。
【0024】
吸水配管25は、吸水口21側の通路断面積よりもポンプ吸入口31側の通路断面積が大きいディフューザ継手としている。吸水配管25をディフューザ継手とすることで、吸水配管25における通水抵抗を低減でき、キャビテーション性能を向上でき、放水開始までの時間を短縮できる。
吸水配管25は、吸水口21に一端を接続する第1吸水配管部25Aと、ポンプ吸入口31に一端を接続する第2吸水配管部25Bとで構成し、第1吸水配管部25Aの他端と第2吸水配管部25Bの他端とを接続している。第1吸水配管部25Aは鋳造によって成形する。第1吸水配管部25Aの他端と第2吸水配管部25Bの他端とはフランジ接続とする。上述のとおり、吸水配管25は曲がりが少ないほうがより好ましいが、本実施例においては、配置寸法の制約上、第1吸水配管部を曲管とし、第2吸水配管部を直管としている。
第1吸水配管部25Aの一端は2股に分岐し、分岐した一方の第1吸水配管部25ALを第1吸水口21Lに接続し、分岐した他方の第1吸水配管部25ARを第2吸水口21Rに接続している。
一方の第1吸水配管部25ALは、第1吸水口21L側の通路断面積よりもポンプ吸入口31側の通路断面積が大きく、他方の第1吸水配管部25ARは、第2吸水口21R側の通路断面積よりもポンプ吸入口31側の通路断面積が大きい。
【0025】
逆流防止弁40は、第1吐出口41、第2吐出口42、及び第3吐出口43を有している。
吐水配管26は、第1吐水配管26A、第2吐水配管26B、及び第3吐水配管26Cとで構成している。
第1吐水配管26Aは、第1吐出口41から第1吐水口22LFまでを接続する。第2吐水配管26Bは、第2吐出口42から第3吐水口22RFまでを接続する。第3吐水配管26Cは、第3吐出口43から第2吐水口22LB及び第4吐水口22RBまでを接続する。第1吐水配管26A及び第2吐水配管26Bは途中に分岐を有さない。
本実施例によれば、第1吐水口22LFだけを接続する第1吐水配管26A、及び第3吐水口22RFだけを接続する第2吐水配管26Bは、途中で分岐させていないため、第2吐水口22LB及び第4吐水口22RBを接続する第3吐水配管26Cと比較して、通水抵抗を小さくできるため、第2吐水口22LB又は第4吐水口22RBを用いた場合よりも第1吐水口22LF及び第3吐水口22RFを用いた場合には、多くの水量を早く吐水できる。
【0026】
第1吐出口41と第1吐水口22LFとは、第1吐出口41の第1吐出口仮想法線ベクトル41NVと、第1吐水口22LFの第1吐水口仮想法線ベクトル22LFNVとが第2の角度以下となるように配置している。吐水配管26の曲がりが少ないほど通水抵抗が低減されるため、第2の角度は0度に近いほうがより好ましいが、配置寸法の制約等により吐水配管26を曲げざるを得ない場合には、通水抵抗が極力少なくなるように、出来る限り滑らかな曲げR(曲げ半径を大きく)とすればよい。したがって、第2の角度は0度以上45度以下とすることが好ましく、0度以上30度以下とすることがより好ましい。本実施例においては、第1吐出口41と第1吐水口22LFとは、第1吐出口41の第1吐出口仮想法線ベクトル41NVと、第1吐水口22LFの第1吐水口仮想法線ベクトル22LFNVとが30度以下の角度を有するように配置している。第1吐出口41と第1吐水口22LFとをこのように配置することで、第1吐水配管26Aの長さを短くできるとともに、曲り箇所が少ない配管にできるため、通水抵抗を更に低減できる。
第2吐出口42と第3吐水口22RFとは、第2吐出口42の第2吐出口仮想法線ベクトル42NVと、第3吐水口22RFの第3吐水口仮想法線ベクトル22RFNVとが第3の角度以下となるように配置している。第3の角度は第2の角度と同様に0度以上45度以下とすることが好ましく、0度以上30度以下とすることがより好ましい。本実施例においては、第2吐出口42と第3吐水口22RFとは、第2吐出口42の第2吐出口仮想法線ベクトル42NVと、第3吐水口22RFの第3吐水口仮想法線ベクトル22RFNVとが30度以下の角度を有するように配置している。第2吐出口42と第3吐水口22RFとをこのように配置することで、第2吐水配管26Bの長さを短くできるとともに、曲り箇所が少ない配管にできるため、通水抵抗を更に低減できる。
【0027】
中継配管27は、中継口23と吸水配管25とを接続する。中継配管27は、一端を中継口23に接続し、他端を開閉バルブ28を介して第2吸水配管部25Bに接続している。
本実施例によれば、開閉バルブ28を閉塞して吸水配管25から中継配管27を切り離すことで真空引きする対象空間を小さくできるため、真空引きの時間を短縮でき、揚水時間を短縮できる。
【0028】
第1吐水配管26A、第2吐水配管26B、及び第3吐水配管26Cには、排気弁29を設けている。排気弁29は、急速排気弁が好ましく、第1吐水口22LF、第2吐水口22LB、第3吐水口22RF、及び第4吐水口22RBにそれぞれ近接させて設けている。吐水配管26に排気弁29を設けることで、吐水配管26内のエアー溜まりを取り除くことができるため、通水性を向上でき、通水時間を短縮できる。
【0029】
第1吐水口22LFを形成する吐水コック22Cには、エアー管29aの一端を接続し、エアー管29aの他端を、第1吐水配管26Aに設けた排気弁29に接続している。
また、第3吐水口22RFを形成する吐水コック22Cには、エアー管29aの一端を接続し、エアー管29aの他端を、第2吐水配管26Bに設けた排気弁29に接続している。
本実施例のようにエアー管29aを用いて、吐水コック22Cと排気弁29とを接続することで、吐水コック22C内に残留しているエアー溜まりも取り除くことができるため、通水性を更に向上できる。
【0030】
図4に示すように、本実施例では、吸水口21とポンプ吸入口31とを同じ高さとしている。吸水口21を、ポンプ吸入口31の位置以下の高さとすることで、通水抵抗を更に低減できる。
【0031】
図7及び
図8は同ポンプ装置に用いる逆流防止弁を示し、
図7は同逆流防止弁の上面図、
図8は同逆流防止弁の側断面図である。
逆流防止弁40は、ポンプ吐出口32に接続する弁吸入口44と、弁吸入口44を閉塞する弁体45と、第1吐出口41、第2吐出口42、第3吐出口43、及び弁吸入口44と連通して弁体45が移動できる空間Sを形成する弁本体46とを有している。
弁吸入口44は弁本体46の下方に配置し、第1吐出口41、第2吐出口42、及び第3吐出口43は弁本体46の側方に配置し、弁体45は弁本体46の上方に配置している。
ポンプ吐出口32から流体圧が加わっている状態では、図示のように弁体45は、上方に位置し、空間Sによって、第1吐出口41、第2吐出口42、第3吐出口43、及び弁吸入口44が連通している。
ポンプ吐出口32から流体圧が加わらない状態では、弁体45は空間S内で下方に移動して弁吸入口44を閉塞することで、第1吐出口41、第2吐出口42、及び第3吐出口43から弁吸入口44に流体が逆流することを防止する。
本実施例による逆流防止弁40によれば、ポンプ33を逆流防止弁40の下方に配置し、第1吐出口41、第2吐出口42、及び第3吐出口43に吐水配管26を接続することで、通水抵抗を低減できる配管接続とすることができ、特に第1吐出口41に接続する第1吐水配管26A、及び第2吐出口42に接続する第2吐水配管26Bでの通水抵抗を低減できる。
【0032】
図9は同消防車の制御を示すブロック図である。
本実施例による消防車は、切り替えによって車輌走行又はポンプ33の回転に用いる駆動源52と、駆動源52の駆動力を変更する制御手段60とを備えている。駆動源52には、車両に搭載しているエンジンが用いられる他、電動モータを用いてもよい。
制御手段60は、吐水開始待機時の吐水圧をあらかじめ設定して記憶する設定圧記憶手段61と、吐水開始待機時には設定圧記憶手段61に記憶した吐水圧、吐水開始以降には操作手段51からの指示による吐水圧となるように駆動源52に回転数指示を出力する回転数指示手段62とを備えている。
設定圧記憶手段61に記憶する吐水圧は、駆動源52を車輌走行に用いる場合のアイドリング回転数による圧力よりも高く設定している。
従って、制御手段60は、吐水開始待機時には、車輌走行に用いる場合のアイドリング回転数よりも高い回転数で駆動源52を回転させる。
本実施例によれば、吐水開始待機時の吐水圧を、駆動源52を車輌走行に用いる場合のアイドリング回転数による圧力よりも高く設定することで、通水速度を速くでき、吐水口22から吐水ホース先端までの通水時間を短縮できる。
なお、吐水開始待機時に設定圧記憶手段61に記憶した吐水圧(ポンプ回転数)に達した場合には、表示手段53の「設定」LED灯が点滅するようにし、この点滅しているときに吐水開始すれば効率のよい放水が可能であることを操作員等に知らせるようにしてもよい。表示手段53としてLED灯を用いる場合には、表示手段53は、点滅に代えて点灯や消灯による表示、又は点滅や点灯における発光色の変更による報知とすることができる。また、操作員等に知らせる手段としては、LED灯による報知の他、表示手段53の液晶における表示、音、又は操作手段51の振動等であってもよい。また、吐水開始待機時に設定圧記憶手段61に記憶した吐水圧(ポンプ回転数)に達していない場合に、表示手段53の「設定」LED灯が点滅するようにし、この点滅しているときに吐水開始すれば効率のわるい放水になることを操作員等に知らせるようにしてもよい。
【0033】
本実施例による消防車は、吐水ホースの一端側に接続する吐水口22(吐水コック22C)の開閉動作を検出する第1センサ71と、吐水ホースの他端側の通水を検出する第2センサ72と、吐水配管26内の圧力を検出する吐水圧検出センサ73とを備えている。第1センサ71は、吐水口22(吐水コック22C)の開閉動作を検出することで通水を判断する。
また、第1センサ71は、吐水ホースの一端側の通水を検出するセンサであってもよく、この場合に第1センサ71は、吐水口22に接続する吐水ホースの端部に設ける他に、吐水口22を形成する吐水コック22Cや、この吐水コック22C近傍の吐水配管26に設けてもよい。
第2センサ72は、第1センサ71で通水を検出する吐水ホースに、又は吐水ノズルを接続する吐水ホースの端部に設ける他に、吐水ノズルに設けてもよい。
【0034】
制御手段60は、時間を計測する計時手段63と、計時手段63で計測する時間とともに操作手段51からの指示の情報を記憶する指示情報記憶手段64とを備えている。
制御手段60では、第1センサ71が通水を検出してから第2センサ72が通水を検出するまでの操作手段51での情報を指示情報記憶手段64に記憶し、記憶した情報を表示手段53に出力する。
【0035】
本実施例によれば、吐水に要する時間を客観的にかつ正確に測定でき、操作手段51での情報を出力することで、作業者の技能向上を図れる。
なお、本実施例では設定圧記憶手段61には、吐水開始待機時の設定吐水圧を記憶させた場合を説明したが、吐水開始以降の設定上限吐水圧を記憶し、吐水圧検出センサ73で検出される検出吐水圧が、設定上限吐水圧を越えないように、回転数指示手段62ではフィードバック制御してもよい。フィードバック制御によって吐水圧の異常上昇を防止することでキャビテーション性能を向上させることができる。また、このフィードバック制御に代えて、吐水圧検出センサ73で検出される検出吐水圧が、設定上限吐水圧になると、所定量又は既定値まで回転数を低下させる指示を回転数指示手段62から指示することもできる。または、操作手段51からの指示により吐水開始以降に設定圧記憶手段61に記憶した吐水圧(ポンプ回転数)に達した場合には、表示手段53の「設定」LED灯が点滅するようにし、この点滅によって吐水圧の異常上昇状態であることを操作員等に知らせるようにしてもよい。
また、吐水コック22Cの開放を第1センサ71で検出した後の放水開始時には、所定量又は既定値まで回転数を低下させる指示を回転数指示手段62から指示し、その後は、吐水圧検出センサ73で検出される検出吐水圧が、設定上限吐水圧を越えないように、回転数指示手段62によってフィードバック制御することもできる。または、吐水開始以降に操作手段51からの指示により設定圧記憶手段61に記憶した吐水圧(ポンプ回転数)に達した場合には、表示手段53の「設定」LED灯が点滅するようにし、この点滅によって設定上限吐水圧であることを操作員等に知らせるようにしてもよい。
【0036】
ここで、吐水コック22Cの開放後、吐水ホースの先端に取り付けた吐水ノズルから放水するまでの間における表示手段53での表示方法の他の実施例について説明する。
操作手段51がエンコーダ式のスロットルであり、スロットルの回転方向と回転量に応じて駆動源52の回転数が変化する場合には、ポンプ33の実際の回転数を操作手段51の操作によっては把握できない。
この場合のスロットル(操作手段)51は、例えばスロットル51を時計方向に回せば駆動源52の回転数が増加し、スロットル51を時計方向に回し続ければ、回転数が増加し続けるが、スロットル51を回さなければ、その時点の回転数を維持するものである。従って、駆動源52の回転数を低下させるには、スロットル51を反時計方向に回し、スロットル51を回し続ければ、回転数が低下し続ける。
このようなスロットル51では、駆動源52、すなわちポンプ33の実際の回転数を操作手段51では把握できないため、ポンプ33の回転数を増加しすぎることでキャビテーションを起こす可能性がある。
この場合には、ポンプ33の回転数を回転数検出手段74で検出し、回転数検出手段74で検出した検出回転数を、あらかじめキャビテーションを起こさない適正回転数として記憶している設定回転数と比較し、検出回転数が設定回転数を超えていないこと、又は検出回転数が設定回転数を超えたことを、表示手段72で表示する。
表示手段72で、吐水コック22Cの開放後、吐水ホースの先端に取り付けた吐水ノズルから放水するまでの間、ポンプ33の回転数が設定回転数を超えていないこと、又はポンプ33の回転数が設定回転数を超えたことを表示することで、吐出ノズルから放水されるまでの間でのキャビテーションを防止することができる。
【0037】
本発明によるポンプ装置30は、吸水配管25を、吸水口21側の通路断面積よりもポンプ33側の通路断面積が大きいディフューザ継手としたことで、吸水配管25における通水抵抗を低減でき、キャビテーション性能を向上でき、放水開始までの時間を短縮できる。
また、本発明によるポンプ装置30を搭載した作業車は、車輌後輪12の車軸13よりも後方の位置で、吸水ホース24が巻かれて装着され、吸水口21を、車輌後輪12よりも後方の位置に配置したことで、吸水口21及び吸水ホース24がともに車輌後方に位置するため、吸水に要する作業時間の短縮を図れる。