(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルターは、前記キャビティの上流側に位置する上流フィルターを更に有し、前記香料カプセルは前記上流フィルターに配設されている、請求項4に記載の喫煙物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルター内の粉末を吸引することで、味や香り、又はその両方を楽しむシガレットが知られている。この従来技術では、粉末の味や香り、又はその両方を楽しむことができるが、製造時や輸送時など、意図しないタイミングで粉末がこぼれてしまうことがある(以下、粉末がこぼれることを粉こぼれともいう)。上記シガレットの一例である特許文献1に記載のシガレットは、径が異なる流路や空隙がフィルター内に組み込まれている。しかしながら、このシガレットは、フィルターの構造が複雑になるばかりで、粉末の通る流路が遮られているものではない。そのため、粉こぼれが起こり得る。
【0005】
また、フィルター付きシガレットの一例として、特許文献3には、粉末が内包されたカプセルを有するフィルタシガレットが開示されている。この従来のシガレットは、カプセルに2以上の孔が形成されており、孔を通じてカプセルに内包された粉末を吸引する。そのため、粉末が通る流路が完全に遮られているわけではない。また、孔の数を少なくし孔の径を小さくすることで、粉こぼれの抑制効果を向上することができる。但し、孔の数が少なく、かつ、孔の径が小さいと、粉末の吸引が困難になることが想定される。
【0006】
なお、上記課題は、シガレットに限られず、葉巻、シガリロ、電子デバイス加熱または炭素熱源などの喫煙具、および非加熱型でたばこの喫煙具を含む喫煙物品全般についてもあてはまる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、喫煙者のタイミングで味や香り、又はその両方を含む粉末を容易に吸引することができ、製造時や輸送時など、意図しないタイミングでの粉こぼれを抑制できる喫煙物品に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を、外力を加えることで粉末となる、一塊の粉末含有物とし、粉末が通過する流路の内径を粉末含有物の外径よりも小さくすることとした。
【0009】
より詳細には、本発明に係る喫煙物品は、たばこ刻を含むたばこロッドと、チップペーパーを介して前記たばこロッドの端部に接続されるフィルターと、を備え、前記フィルターは、呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊とした粉末含有物であって、外力を加えることで粉末となる粉末含有物と、当該粉末含有物が配置されたキャビティと、当該キャビティと吸口端とを連通し、前記粉末が通る流路であって、前記粉末含有物の外径よりも小さい内径を有する流路と、を含む。
【0010】
本発明に係る喫煙物品によれば、喫煙者は、外力を加えて粉末含有物を粉末にすることで、粉末を吸引することができる。その結果、味や香り、又はその両方を得ることができる。また、粉末は、容易に流路を通過することができる。そのため、喫煙者のタイミングで粉末を容易に吸引することができる。また、流路は、粉末含有物の外径よりも小さい内径を有する。そのため、粉末含有物が流路を通過することはない。換言すると、製造時や輸送時など、意図しないタイミングでの粉末のこぼれ(粉こぼれ)を抑制することができる。
【0011】
流路が粉末含有物の外径よりも小さい内径を有するとは、換言すると、流路が粉末含有物を通さないように構成されていることを意味する。したがって、例えば、流路が複数存在する場合には、全ての流路が粉末含有物の外径よりも小さい内径を有すること、換言すると、全ての流路が粉末含有物を通さないように構成されていることを意味する。なお、流路の内径は、一定の内径である必要は無く、変化していてもよい。流路の内径が変化する場合、最小の内径が粉末含有物の外径よりも小さければよい。最小の内径が設けられる位置は特に限定されない。最小の内径が設けられる位置は、流路の途中でもよく、流路の端部でもよい。流路の端部には、上流側の端部(キャビティ側の端部)、下流側の端部(吸い口側の端部)が例示される。
【0012】
喫煙物品には、シガレット、葉巻、シガリロ、電子デバイス加熱または炭素熱源などによりたばこの喫味や香味、又はその両方を吸引する喫煙具、および非加熱型でたばこの喫味や香味、又はその両方を吸引する喫煙具が例示される。
【0013】
粉末含有物は、粉末成形体、粉末打錠成形体、粉末含有カプセルのうち、少なくとも何れか一つを含むものとすることができる。粉末成形体は、例えば、粉末成形体の核剤(原料粉末)となる単糖・二糖・多糖類またはその誘導体に、水を混合した後、成形・乾燥することによって得ることができる。なお、原料としてバインダーを加えてもよい。また、水と共に香料を加えてもよい。粉末含有物の形状や数は、特に限定されない。粉末含有物は、例えば、球体、楕円体、円柱、中空円筒、円錐、角錐、トーラス体、立方体や直方体といった多面体、またはこれらの形状の粉末含有物を組み合わせたものでもよい。
【0014】
粉末含有物の外径は、キャビティの外郭を形成する壁との間に空隙が形成されるように設計するとよい。これにより、例えば、製造時において、キャビティの外郭を形成する壁と粉末含有物との接触による意図しない粉末含有物の粉末化を抑制することができる。したがって、例えば喫煙物品のキャビティの内径が8mmを上回る場合には、粉末含有物の外径は、1mm以上8mm以下としてもよい。好ましくは、粉末含有物の外径は、2mm以上6mm以下とするとよい。キャビティとは、フィルターをフィルターもしくはたばこロッドと間隔を設けて配置することで形成された空間、もしくはフィルターの内部に形成された空間を意味する。キャビティの外郭を形成する壁とは、フィルター内において、キャビティとそれ以外の領域とを区画するものである。キャビティは、円柱状、球状など、立体的形状を有していればよい。また、キャビティは、複数でもよい。例えば、キャビティがフィルターの長手方向に沿った円柱状の場合、キャビティの外郭を形成する壁には、キャビティの上流側又は下流側を区画する壁と、キャビティの周面を区画する壁が含まれる。「上流」及び「下流」は、主流煙の流れを基準とした相対的な位置関係を意味する。
キャビティの上流側を区画する壁には、たばこロッドの下流側の端面(たばこロッドの後端の面)や、キャビティの上流側に隣接する上流フィルターの下流側の端面(上流フィルターの後端の面)が例示される。また、キャビティの下流側の端面に形成される壁には、キャビティの下流側に隣接する下流フィルターの上流側の端面(下流フィルターの前端の面)が例示される。キャビティの周面を区画する壁は、チップペーパーや巻取紙のようにフィルターを覆っている紙の一部によるものでもよく、所謂センターホールフィルターにおける外周の壁のようにフィルター部分によるものでもよい。
【0015】
外力とは、例えば、製造時や輸送時にかかる力よりも強い力や、喫煙する際の吸引力よりも強い力である。外力には、喫煙者が指で加える力(潰す力)が例示される。例えば、粉末含有物が粉末となる破壊強度は、5N以上60N以下としてもよい。好ましくは、粉末含有物が粉末となる破壊強度は、20N以上30N以下、より好ましくは、20N以上25N以下とするとよい。
【0016】
また、前記粉末含有物は、10μm以上600μm以下の粒子径を有する前記原料粉末が前記粉末含有物の全体重量の50重量(wt)%以上としてもよい。好ましくは、粉末含有物は、50μm以上300μm以下の粒子径を有する前記原料粉末が前記粉末含有物の全体重量の30重量%以上としてもよい。これにより、粉末含有物は、外力を加えることで容易に吸引に適した粒子径の粉末となる。
【0017】
また、前記チップペーパーにおいて、前記キャビティに対応する位置にフィルター内部に希釈用空気を取り入れる通気孔が設けられていてもよい。これによって、シガレットのタール値をあまり変化させることなく、粉末含有物に外力を加えることで得られた粉末による味覚強度等を顕著に変化させることができる。なお、希釈用空気を取り入れる通気孔は、上流フィルターに対応する位置に設けてもよいし、下流フィルターに対応する位置に設けてもよい。
【0018】
また、前記フィルターは、前記キャビティの上流側に位置する上流フィルターと前記キャビティの下流側に位置する、前記粉末が通る流路が形成された下流フィルターと、を有し、前記チップペーパーにおける前記通気孔が、前記キャビティに対応する位置に加えて、前記上流フィルターに対応する位置に設けられていてもよい。このように構成し、トータルの希釈空気量が略同等になるように設計することで、喫煙物品のタール値を略一定に保ったまま、粉末含有物に外力を加えることで得られた粉末による味覚強度等を最適に設計することができる。
【0019】
また、前記フィルターには、更に、香料を封入した香料カプセルが設けられていてもよい。このように構成することで、例えば粉末含有物に味覚成分(「呈味成分」ともいう)を含ませ、香料カプセルに香り成分を含ませることで、ユーザ自身が選択的に何れかを潰すことで、味覚成分の強度と香り成分の強度を選択的にカスタマイズすることができる。或いは、粉末含有物及び香料カプセルの双方をユーザが潰すことで、ユーザは、味覚成分及び香り成分の両方の強度をカスタマイズすることができる。
【0020】
また、前記フィルターは、前記キャビティの上流側に位置する上流フィルターを更に有し、前記香料カプセルは前記上流フィルターに配設されていてもよい。このように構成することで、フィルターを製造する際の製造容易性を向上させることができる。また、香料カプセルを粉末含有物と離れた部位に配置することで、香料カプセル及び粉末含有物のうち、潰したい方を選択的に潰すことがユーザによって容易なものとなる。また、上記のように香料カプセルを上流フィルターに配設する場合、上流フィルターに通気孔を設けると共に、当該通気孔の下流側(吸口側)に香料カプセルを配置することがより好ましい。通気孔より下流側の領域は上流側の領域に比べて相対的に流量が多く、そのような位置に香
料カプセルを配置することで香り成分をより多く放出させることができる。これによれば、香料カプセルを潰した際に、主流煙への香り成分を移行させ易くすることができる。つまり、香料カプセルを潰した際におけるフレーバーの発現をカスタマイズできる。
【0021】
ここで、本発明は、上述した喫煙物品のフィルターとして特定してもよい。具体的には、本発明は、呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊とした粉末含有物であって、外力を加えることで粉末となる粉末含有物と、前記粉末含有物が配置されたキャビティと、前記キャビティと吸口端とを連通し、前記粉末が通る流路であって、前記粉末含有物の外径よりも小さい内径を有する流路と、を備える、喫煙物品のフィルターである。
【0022】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて採用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、喫煙者のタイミングで呈味成分を含む原料粉末を容易に吸引することができ、製造時や輸送時など、意図しないタイミングでの粉こぼれを抑制できる喫煙物品に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るフィルター付きシガレットの実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。本実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
<実施形態1>
(構成)
図1から
図3に示すように、シガレット1は、たばこロッド2と、このたばこロッド2
の一端にチップペーパー3を介して接続されたフィルター4とを備えるフィルター付きシガレットである。
【0027】
たばこロッド2は、たばこ刻21を巻紙22で巻き取って円柱状(棒形状)に成形したものであり、「単巻」とも呼ばれる。フィルター4は、シガレット1の喫煙時に発生する主流煙を通過させた際に、主流煙に含まれる煙成分を濾過(ろか)するための部材であり、たばこロッド2と実質的に同径の円柱状に成形されている。
【0028】
フィルター4は、巻取紙45及びチップペーパー3によって巻装されており、チップペーパー3を介してたばこロッド2の後端側に接続されている。チップペーパー3は、たばこロッド2の端部とフィルター4を一体に巻き取ることで、これらを接続(連結)する。以下、たばこロッド2の長手方向(軸方向)において、フィルター4と接続される方の端部を「後端」と呼び、それとは反対側の端部を「前端」(先端)と呼ぶ。また、フィルター4の長手方向(軸方向)において、たばこロッド2と接続される方の端部を「前端」と呼び、前端と反対側の端部を「吸い口端」と呼ぶ。また、シガレット1(たばこロッド2、フィルター4)の長手方向(軸方向)に沿った断面を「縦断面」と定義し、それとは直交する方向の断面を「横断面」と定義する。また、「上流」及び「下流」は、主流煙の流れを基準とした相対的な位置関係を意味する。なお、
図3に示す符号CLは、シガレット1(たばこロッド2、フィルター4)の中心軸を示す。
【0029】
フィルター4は、たばこロッド2の後端側に接続された上流フィルター41、吸い口端側に位置する下流フィルター42、上流フィルター41と下流フィルター42との間に形成されたキャビティ43、キャビティ43に収容された粉末含有物44を含む構成である。粉末含有物44は、原料粉末を一塊とした粉末含有物の一例である。粉末含有物44が破壊されると粉末となる。詳細については、後述する。また、巻取紙45によって、上流フィルター41と下流フィルター42とキャビティ43が包まれている。更に、巻取紙45の外側のチップペーパー3によって、フィルター4全体とたばこロッド2の一部が包まれている。
【0030】
上流フィルター41は、一般に良く知られているアセテートフィルターやチャコールフィルターの他、セルロース等チャコール以外の粒状物が入ったフィルターや、ひも入りフィルターまたは同心状に同一もしくは複数の異なるフィルターが配置されたセンターコアフィルターであってもよい。また、上流フィルター41は、2つ以上のセグメントで構成されていてもよい。上流フィルターの長さは、例えば、5〜20mmである。また、上流フィルター41の直径は、例えば、5〜10mmである。
【0031】
上流フィルター41の充填材には、例えば、綿、麻、マニラ麻、ヤシ、イグサなどの植物繊維、羊毛、カシミヤなどの動物繊維、レーヨンなどのセルロース系再生繊維、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどのセルロース系半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維あるいはそれらの組合せを使用することができる。
【0032】
上流フィルター41の可塑剤には、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル、トリエチル、クエン酸アセチル、トリブチル、酒石酸ジブチル、エチルフタリル、エチルグリコレート、メチルフタリル、エチルグリコレート、トリアセチン、りん酸トリエチル、りん酸トリフェニル、トリプロピオニンあるいはそれらの組合せを使用することができる。また、上流フィルター41は、可塑剤を使用しないものでもよい。
【0033】
下流フィルター42も上流フィルター41と同様に、アセテートフィルターやチャコールフィルターによって構成することができる。
【0034】
下流フィルター42には、中心部に、キャビティ43と吸い口端と連通する円柱状の流路421が形成されている。下流フィルターの長さは、例えば、5〜15mmである。また、下流フィルター42の直径は、例えば、5〜10mmである。なお、下流フィルター42は、2つ以上のセグメントで構成されていてもよい。また、流路421は、複数形成されていてもよい。また、流路421は、曲線状、らせん状でもよい。更に、流路421は、途中で分岐や合流があってもよい。また、流路421は、流路途中で径が変化するものでもよい。また、下流フィルター42は、貫通する流路421に加えて、非貫通の流路(図示せず)を更に備えるものでもよい。非貫通の流路を設けることで、貫通する流路421の流速を抑制することができる。その結果、粉末の供給量を抑制することができる。流路421の長さは、5〜15mmとすることができる。流路421の内径は、粉末含有物44の外径よりも小さければよい。なお、フィルター4に外力を加えた際の流路421の変形を抑制するため、下流フィルター42には可塑剤を用いることが好ましい。
【0035】
また、流路421の横断面形状は、円形に代えて、楕円形、三角形、四角形、ひし形、平行四辺形、台形、十字型などの多角形の形状またはそれらの形状を組み合わせた形状とすることができる。なお、吸い口端は、前端側に窪むリセス形状としてもよい。リセス形状とすることで、流路421の意匠性を向上することができる。
【0036】
フィルター4に使用する巻取紙45は、一般的な製品に使用される通気性を有する巻取紙でもよく、また、通気性を有しないものでもよい。巻取紙45の材質には、一般的には植物性の繊維で作製された紙が用いられるが、ポリマー系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなど)の化学繊維を用いたシートまたはポリマー系のシートを用いてもよく、また、アルミ箔のような金属箔を用いてもよい。
【0037】
なお、フィルター4には、所謂ノンラップフィルターを用いてもよい。ノンラップフィルターとは、フィルター材と、このフィルター材を円筒状に成形する外皮層とを有し、この外皮層はフィルター材の熱成形により得ることができる。ノンラップフィルターを用いた場合には巻取紙は省略することができる。
【0038】
チップペーパー3には、一般的には植物性の繊維で作製された紙が用いられるが、ポリマー系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなど)の化学繊維を用いたシートまたはポリマー系のシートを使用してもよいし、アルミ箔のような金属箔を用いてもよい。なお、フィルター4は、メンソールなどの香料を含有するものでもよい。香料の加香方法は特に限定されてないが、例えば香料を吸着させた、ひも状の物質をフィルター4に配置する、あるいはフィルター4の充填物に香料を含有させる、あるいはカプセルなどの香料を固定化した材料をフィルター4に配置する方法が知られている。
【0039】
巻取紙45、及びチップペーパー3のうち、キャビティ43よりも前端側には、ベンチレーション用の空気(外気)をフィルター4内に導入して主流煙を希釈する複数の通気孔31が環状に形成されている。通気孔31は、例えば、針状の歯型(ポンチ)によりプレス開孔する機械的な方法、コロナ放電による電気的な方法、あるいはフィルターチップを連続走行させながらレーザー発振器から出力された連続出力ビームを回転チョッパーを使ってパルス状に分配して照射し開孔する方法によって開孔することができる。
【0040】
キャビティ43は、フィルター4の内部に形成された空間であり、詳細には、上流フィルター41の後端の面と下流フィルター42の前端の面と巻取紙45によって囲まれた円柱状の空間からなる。キャビティ43は、粉末含有物44を設置できる大きさを有していればよい。粉末含有物44を複数設置する場合、キャビティ43は、複数の粉末含有物44を設置できる大きさとする必要がある。キャビティ43の長さは、例えば、5〜20m
mである。また、キャビティ43の内径は、例えば、5〜10mmである。なお、キャビティ43を設けず、粉末含有物44をフィルター内に設置してもよい。この場合、たばこ刻21と粉末含有物44の混合を抑制するため、粉末含有物44よりも前端側に貫通孔を有しないフィルターを設置することが好ましい。キャビティ43の形状は、特に限定されない。キャビティ43は、例えば、球状など、他の立体的形状でもよい。また、キャビティ43は、複数でもよい。
【0041】
粉末含有物44は、原料粉末を一塊とした球状であり、外力を加えることで粉末となる。外力とは、例えば、製造時や輸送時にかかる力よりも強い力や、喫煙する際の吸引力よりも強い力である。外力には、喫煙者が指で加える力(潰す力)が例示される。例えば、粉末含有物44が粉末となる破壊強度は、5N以上60N以下である。好ましくは、粉末含有物44が粉末となる破壊強度は、20N以上30N以下、より好ましくは、20N以上25N以下である。粉末含有物44の形状は限定されてない。粉末含有物44は、楕円体、円柱、中空円筒、円錐、角錐、トーラス体、立方体や直方体といった多面体、またはそれらの形状を組み合わせてもよい。また粉末含有物44は、複数でもよい。
【0042】
粉末は、少なくとも一部が流路421を通過可能な粒子径を有している。換言すると、原料粉末の粒子径が好ましくは10μm以上、300μm以下であり、例えば、50〜300μmの範囲の粒子径を有する。
【0043】
粉末含有物44は、原料粉末としての核剤に水を適量加え混合後に成形し、乾燥させることで製造することができる。原料としてバインダーを加えてもよい。また、水と共に香料を加えてもよい。核剤としては、単糖・二糖・多糖類またはその誘導体が使用できる。なかでもケトトリオース(ジヒドロキシアセトン)、アルドトリオース(グリセルアルデヒド)、ケトテトロース(エリトルロース)、アルドテトロース(エリトロース、トレオース)、ペントース ケトペントース(リブロース、キシルロース)アルドペントース(
リボース、アラビノース、キシロース、リキソース)、デオキシ糖(デオキシリボース)ケトヘキソース(プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、アルドヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、デオキシ糖(フコース、フクロース、ラムノース)、セドヘプツロース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、ラフィノース、 メレジトース、マルトトリオース、アカルボース、 スタキオース、グルコース、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、デキストリン、グルカン、フルクトース等が挙げられる。これらの単糖、二糖、多糖類またはその誘導体は、単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。核剤は、口腔内で実質的に溶解可能であることが好ましい。
【0044】
バインダーとしては、水溶性ポリマー、例えば、デキストリン、ゼラチン、アラビアガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。バインダーの添加量としては、核剤に対し10wt%以下であることが好ましい。
【0045】
核剤に加える香料は特に限定されず、既存の香料を使用できる。なかでも、粉末香料および油性香料が適している。主な粉末香料としては、カモミール、フェヌグリーク、メンソール、ハッカ、シンナモン、ハーブ等を粉末にしたものが挙げられる。また、主な油性香料としては、ラベンダー、シンナモン、カルダモン、セレリー、チョウジ、カスカリラ、ナッツメグ、サンダルウッド、ベルガモット、ゼラニウム、ハチミツエッセンス、ローズ油、バニラ、レモン、オレンジ、ハッカ、ケイ皮、キャラウエー、コニャック、ジャスミン、カモミール、メントール、カシヤ、イランイラン、セージ、スペアミント、フェンネル、ピメント、ジンジャー、アニス、コリアンダ、コーヒー等の油が挙げられる。これらの粉末香料および油性香料は、単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。粉末
香料を用いる場合、その粒径は500μm以下であることが好ましい。香料は液体もしくは口腔内で実質的に溶解可能であることが好ましい。香料成分の添加量は、核剤に対し10wt%以下であることが好ましい。
【0046】
呈味香料としては、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸Na、ネオテーム、ソーマチン、ステビア、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、アスパルテーム、ルチン、ヘスぺリジン、シュウ酸、タンニン酸、カテキン、ナリンジン、キニーネ、キナ酸、リモニン、カフェィン、カプサイシン、ビタミン類、アミノ酸類、ポリフェノール類、アルギン酸、フラボノイド、レシチン、等が挙げられる。呈味香料は液体もしくは口腔内で実質的に溶解可能であることが好ましい。呈味香料の添加量は、核剤に対し10wt%以下であることが好ましい。なお、粉末含有物44は、粉末を内包するプラスチックカプセル、打錠成形体、顆粒としてもよい。
【0047】
<効果>
実施形態に係るシガレット1によれば、喫煙者は、外力を加えて粉末含有物44を粉末とすることで、粉末を吸引することができる。その結果、味や香り、又はその両方を得ることができる。また、粉末含有物44が粉末となると、粉末は容易に流路421を通過することができる。そのため、喫煙者のタイミングで粉末を容易に吸引することができる。また、流路421は、粉末含有物44の外径よりも小さい内径を有する。そのため、粉末含有物44が流路421を通過することはない。換言すると、喫煙以外における粉末のこぼれ(粉こぼれ)を抑制することができる。
【0048】
<実施例>
<<粉末成形体の破壊強度測定>>
上述した粉末含有物44の核剤(原料粉末)として、ラクトース(DFE pharma社製Pharmatose100M)を用いて成形体を作製した。核剤に対して香料を適量加え混合したものに対して、適量の水を加えて混合したものを、直径が約4.5mmの球体に成形し室温で24時間乾燥させ、粉末含有物44としての香料粉末成形体を作製した。
【0049】
破壊強度の測定には測定にクリープメータ(株式会社山電製、RHEOMETER II)を使用した。クリープメータの粉末成形体を設置するステージに直径50mm、クリープメータの押圧部に直径7.5mmにカットしたシリコーンフィルム(ゴム硬度10°
厚さ1mm)を、粉末含有物44を固定するために設置した。押圧する際のステージ移動速度は、0.5mm/sec、データ検出速度は0.2secとした。破壊強度は、ステージ移動速度0.5mm/secで押圧した際の最大荷重の値とした。
【0050】
<<水添加量による影響>>
図4は、破壊強度と水添加量との関係を示す。
図4より、水の添加量を増加させる程、破壊強度が増加していることが確認された。これは添加した水に濡れたラクトースが粘性を持ちバインダーの役割を果たすことに起因していると考えられる。水添加量が10wt%以下の場合は、バインダーとして作用するラクトース量が少なくなるため、添加量の減少と共に成形することが困難となる。一方で、水添加量が25wt%を超えたあたりから、ラクトースに水を加えたスラリー状原料の粘性が低くなり、成形が困難となる。水添加量が10wt%から20wt%の間では、成形体の強度が水添加量つまりバインダーとして作用するラクトース量に比例して増加していくことが確認された。
【0051】
<<香料添加による影響>>
水を20wt%添加したラクトースに、呈味香料として、クエン酸、酒石酸をそれぞれラクトースに対して10wt%添加し、破壊強度を測定した。
図5は、水を20wt%添
加したラクトースに、呈味香料として、クエン酸、酒石酸をそれぞれラクトースに対して10wt%添加した場合の破壊強度の測定結果を示す。呈味香料を加えることで、大きく破壊強度が低下した比較例と、それほど低下しなかった比較例があることがわかる。これは添加した呈味香料の吸湿性に起因するものと考えられる。吸湿性が高いつまり水への溶解度が高い香料を添加することで、成形・乾燥後に大気中の水分を吸収し溶解することで、成形体の強度が低下するものと考えられる。
【0052】
<<成形体破壊後の粒度分布測定>>
粉末含有物44を破壊することで得られる粉末の粒度分布を測定した。具体的には、粉末含有物44を破壊することで得られる粉末を、電子天秤(AB104−S、METTLER TOLEDO社)で重量を測定したステンレス篩(SANPO製ステンレス篩75×20、目開き、53μm,100μm、150μm、212μm、300μm、600μm)の目開き600μmのステンレス篩に入れ、目開きが細かいステンレス篩から順に重ね、それをふるい振とう機AS200コントロール(Retsch製)を用いて、Amplitude 1.50 mm/gで120秒間振とうした。各ステンレス篩の重量の増加量を電子天秤で測定することで、粉末含有物44を破壊することで得られる粉末を測定した。
【0053】
図6は、原料ラクトースと、ラクトースに水を20wt%加え成形後乾燥させた粉末含有物を、上記の破壊強度測定と同様の方法で破壊することで得られた粉末の粒度分布を示す。原料ラクトース(
図6において、「原料」で示す。)は100〜212μmの範囲内の粒子径を有する粉末重量が全粉末重量の75wt%以上存在し、212μm以上の粒子径を有する粉末重量は5wt%未満となっている。対して粉末含有物(
図6において「粉末形成体」で示す。)は100〜212μmの範囲内の粒子径を有する粉末重量が全粉末重量の50wt%以上、212μm以上の粒子径を有する粉末重量は20wt%未満となった。つまり、原料粉末では、粉末重量が全粉末重量の75wt%であり、成形、かつ破壊後の粉末では、粉末重量が全粉末重量の50wt%であることが確認された。したがって、成形、かつ破壊後において、吸引に適した100〜212μmの範囲内の粒径の粉末を非常に高い割合で得られることが確認できた。
【0054】
<<粉末含有物の形態選定>>
粉末含有物44の形態として、(1)プラスチックカプセル、(2)打錠成形体、(3)顆粒、(4)パウダーボール(実施形態相当)を準備し、粉こぼれ、デリバリー、Crush感の確認を行った。「粉こぼれ」は、製造時や輸送時における意図しない粉末化による粉末の損失を確認するものであり、デリバリーは、粉末がキャビティ43から吸い口端に容易に移動するかを確認するものであり、Crush感は、粉末含有物44を粉末にする際の感覚の変化を確認するものである。デリバリー、Crush感は、換言すると、シガレット1を容易に使用できるか否かを確認するものである。(1)プラスチックカプセルは、プラスチックカプセル内に粉末を内包して作製した。(2)打錠成形体は、中空円筒型、及び円盤型の打錠成形体を作製した。(3)顆粒は、原料粉末に水を加えたスラリーを押出成形、乾燥させて作製した。乾燥条件は、50℃で1時間とした。(4)パウダーボール(実施形態相当)は、原料粉末に水を加えたスラリーを球状に成形、乾燥させて作製した。乾燥条件は、50℃で1時間とした。
【0055】
その結果、(4)パウダーボール(実施形態相当)が、粉こぼれ、デリバリー、Crush感の何れにおいても良好な結果を得ることができた。
【0056】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るシガレット1Aについて説明する。ここでは、
図1から
図3に示した実施形態1のシガレット1との相違点を中心に説明する。
図7は、実施形態2に係
るシガレット1Aの概略構成図である。シガレット1Aのフィルター4は、チップペーパー3のうち、キャビティ43に対応する位置に通気孔(以下、「キャビティ領域通気孔」という)31Aが更に設けられている。すなわち、シガレット1Aのフィルター4は、上流フィルター41に対応する位置に設けられた通気孔(以下、「上流フィルター領域通気孔」という)31と、キャビティ領域通気孔31Aとがチップペーパー3を貫通する貫通孔として形成されており、これらを通じてフィルター4内に主流煙を希釈する希釈用空気を取り込むことができるようになっている。なお、本実施形態においては、チップペーパー3に予めVf開孔が形成されたプレ開孔チップペーパーを用いることが好ましい。これにより、例えばオンマシンレーザーによるVf開孔を用いる場合に比べてキャビティ43に配置された粉末含有物44にダメージを与える虞がない。なお、巻取紙45については、通気度の高い適宜の巻取紙を用いることで、チップペーパー3のキャビティ領域通気孔31Aを通じて外部から取り込まれる空気を、キャビティ43内側へ透過させることができる。これにより、巻取紙45の強度が増大し、折れにくくなるという利点がある。
【0057】
本実施形態におけるシガレット1Aのフィルター4は、希釈用空気を取り込む通気孔を、キャビティ43上と上流フィルター41上の双方に設けたので、これらからの空気流入量のバランスを調整することで、フィルター4全体としてのVf値(全通気流量に占めるフィルターからの空気流入量の割合)を変化させずに、粉末含有物44を潰して形成される粉末(例えば、香料粉体)のデリバリー量を変化させることができる。これによれば、例えばシガレット1Aのタール値を一定に保ったまま、香料粉体による味覚(呈味)強度を最適に設計することが可能となる。
【0058】
<実施例>
上述したシガレット1Aを製作し、吸引時の粉体のデリバリー量を測定した。
図8に実施形態2における実施例に係るシガレット1Aの詳細を示す。シガレット1Aのフィルター4は、たばこロッド2側から上流フィルター41、キャビティ43、下流フィルター42をこれらの順に配置した。上流フィルター41の長さは14mm、キャビティ43の長さは7mm、下流フィルター42の長さは7mmとした。また、上流フィルター41はアセテートフィルターとし、下流フィルター42は中心に直径2mmのセンターホールを有するセンターホールフィルターとした。粉末成形体を破砕した後の状態を想定し、粉末含有物44の核剤(原料粉末)をキャビティ43に収容した。粉末含有物44の原料粉末として、ラクトース50mg(DFE pharma社製Pharmatose100M)を用いた。
【0059】
キャビティ通気孔31Aは、吸い口端から10mmの位置に形成した。また、キャビティ上流通気孔31は、吸い口端から20mmの位置に形成した。チップペーパーに対するキャビティ通気孔31A及びキャビティ上流通気孔31の開孔は、市販のVf開孔機(KEYENCE 3-Axis CO2 LASER MARKER)を用いて形成した。その際、開孔文字は「×」とし、
幅を0.1mm、高さを0.4mm、文字(開孔)間隔を0.508mmとし、所定のVf値が得られるようにVf開孔機のレーザー強度を調整した。
【0060】
上記のように製作したキャビティ43にラクトース粉体からなる粉末含有物44を備えるシガレット1Aにおいて、レーザー開孔条件を調整してフィルター4からの空気流入割合(Vf値)を変更し、吸引時の粉体(ラクトース)デリバリー量を測定した。
【0061】
Vf値の測定は、S.A.S社製造のSODIMAX D74/SODIMを使用した。Vf値の測定結果一覧を
図9に示す。なお、
図9中における「AF上開孔」が上流フィルター領域通気孔31に対応し、「Cavity上開孔」がキャビティ領域通気孔3に対応する。
【0062】
粉体デリバリー量の測定には、
図10に示す喫煙器を使用した。本実施例では、Borgwa
ldt社製一本掛け喫煙器を用い、着火しない状態で吸引実験を行い、粉体デリバリー量を
測定した。吸引実験は、吸引流量を35mL/2sec、吸引回数を5回、測定本数を5
本として行った。また、粉体デリバリー量は、吸引毎に粉体捕集パッド(ケンブリッジパ
ッド)を取り外し、電子天秤にて重量を測定し、吸引前後の重量差から算出した。
【0063】
図11に、実施例に係る粉体デリバリー量の測定結果を示す。上流フィルター領域通気孔31(
図11中、「AF上開孔」)の場合、Vf値を変化させても粉体デリバリー量があまり変化しないのに対し、キャビティ領域通気孔31A(
図11中、「Cavity上開孔」)の場合、Vf値が12%〜31%の範囲で粉体デリバリー量に顕著な増加が認められた。以上より、Vf値が同一であっても、上流フィルター領域通気孔31及びキャビティ領域通気孔31Aからフィルター4内に取り込まれる空気の流入バランスを調整することで、粉体デリバリー量をコントロールできることが示された。例えば、Vf値が80%で粉体デリバリー量が20mg程度のシガレットに調整する場合、キャビティ領域通気孔31Aから25%、上流フィルター領域通気孔31から55%の空気流入割合となるように開孔条件を調節することで、所望のシガレットを得ることができる。本実施例の場合、キャビティ領域通気孔31AのVf値と上流フィルター領域通気孔31のVf値のバランスを変更することにより、粉体デリバリー量を7.7〜43.4mgの範囲で変更することができた。このようにして、同じVf値で香料粉体量を5倍程度の範囲で変化させることができるため、シガレットのタール値を一定に保ったまま、香料粉体による味覚強度を最適に設計することができる。
【0064】
<変形例>
なお、実施形態2におけるシガレット1Aは、フィルター4における上流フィルター41に対応する位置と、キャビティ43に対応する位置にそれぞれ上流フィルター領域通気孔31と、キャビティ領域通気孔31Aを設けたが、上流フィルター領域通気孔31を省略して、キャビティ領域通気孔31Aのみを設けるようにしてもよい。フィルター4におけるキャビティ43に対応する位置に、チップペーパー3を貫通するキャビティ領域通気孔31Aを設け、キャビティ領域通気孔31Aの開口面積(複数のキャビティ領域通気孔31Aを配置する場合には総開口面積)を調整することでVf値を調節してもよい。シガレットのタール値をVf値によって設計し、香料粉体を最大限デリバリーさせることができる。
【0065】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るシガレット1Bについて説明する。ここでは、実施形態1及び2との相違点を中心に説明する。
図12は、実施形態3に係るシガレット1Bの縦断面を示す図である。シガレット1Bのフィルター4には、呈味成分や香料成分を含む原料粉末を一塊としたパウダーボールである粉末含有物44に加えて、香料を封入した香料カプセル46が更に設けられている。
図12に示す例では、フィルター4におけるキャビティ43の上流側に位置する上流フィルター41のフィルター繊維(例えば、アセテート繊維)に、香料カプセル46は埋め込まれるようにして配設されている。香料カプセル46は、市販のカプセルシガレットに使用されているシームレスカプセルであってもよい。
【0066】
本実施形態におけるシガレット1Bによれば、例えばパウダーボール等といった粉末含有物44に味覚成分を含ませ、香料カプセル46に香り成分を含ませることで、ユーザ自身が選択的に何れかを潰すことで、味覚成分の強度と香り成分の強度を選択的にカスタマイズすることができる。或いは、粉末含有物44及び香料カプセル46の双方をユーザが潰すことで、ユーザは、味覚成分及び香り成分の両方の強度をカスタマイズすることができる。
【0067】
また、シガレット1Bは、粉末含有物44と香料カプセル46の双方に香り成分を含ま
せてもよく、このようにすることで、複数の香り成分を単独または混合させ、味の変化を愉しむことができる。また、香り成分は比較的揮発しやすいため、蔵置安定性を担保するための保香機能を付与することが好ましい。ここで、粉末含有物44にその保香機能を付与して製造することも可能であるが、粉末含有物44を不揮発性の味覚成分のみで構成することで蔵置安定性の担保を容易に達成すると共に、蔵置安定性が高いシームレスカプセル等によって香料カプセル46を構成することで香り成分を補完してもよい。これにより、優れた蔵置安定性を担保しつつ、ユーザの好みに応じた香り成分の強度のカスタマイズが可能なシガレットを提供することができる。
【0068】
なお、
図12に示す例では、香料カプセル46を上流フィルター41に配設しているが、キャビティ43或いは下流フィルター42に配設してもよい。但し、
図12に示すように、上流フィルター41に香料カプセル46を配設した方が以下の点で好ましい。例えばセンターホールとしての流路421が形成される下流フィルター42に香料カプセル46を配置する場合に比べて、上流フィルター41に香料カプセル46を配置する方がフィルター4を製造する際の製造容易性(搭載容易性)の観点から好ましい。また、下流フィルター42に香料カプセル46を配置する場合、主流煙は下流フィルター42における中空状の流路421を流れるため、香料カプセル46を潰した際に主流煙への香り成分が移行しにくくなることが懸念される。そこで、下流フィルター42に香料カプセル46を配置するよりも、上流フィルター41に香料カプセル46を配置した方が、フレーバー発現を強める観点からも好ましいと言える。
【0069】
また、キャビティ43にはパウダーボール等の粉末含有物44が配置されるため、ユーザが選択的に香料カプセル46と粉末含有物44を潰すことの利便性を考慮すると、これらをキャビティ43に配置するよりも香料カプセル46を上流フィルター41に配置する方が好ましいと言える。香料カプセル46を粉末含有物44と離れた部位に配置することで、ユーザは、香料カプセル46及び粉末含有物44のうち潰したい方を選択的に容易に潰すことができる。
【0070】
更に、
図12に示す例では、上流フィルター41における上流フィルター領域通気孔31よりも下流側(吸口側)に香料カプセル46を配置しているが、上流フィルター領域通気孔31と香料カプセル46との位置関係は特に限定されない。例えば、上流フィルター41における香料カプセル46の搭載位置は、上流フィルター領域通気孔31の直下でもよいし、上流フィルター領域通気孔31よりも上流側(たばこロッド2側)であってもよい。但し、
図12に示すように、上流フィルター41における上流フィルター領域通気孔31の下流側(吸口側)は、上流側(たばこロッド2側)に比べて流量が多く、そのような位置に香料カプセル46を配置することで香り成分をより多く放出させることができるという利点がある。
【0071】
一方、上流フィルター41における上流フィルター領域通気孔31の上流側(たばこロッド2側)は、下流側(吸口側)に比べて流量が少ないものの、香料カプセル46から香り成分を放出させた際に当該香り成分が希釈用空気よりも主流煙に接触し易くなるため、主流煙に香り成分がなじみ易くなるという利点がある。また、実施形態2の変形例で説明したように、フィルター4におけるキャビティ43に対応する位置にキャビティ領域通気孔31Aを設けてもよく、このような構成の場合にも、主流煙への香り成分のなじみが良くなるという効果が得られ易い。また、上流フィルター41における香料カプセル46を、上流フィルター領域通気孔31の直下に搭載する場合には、オンマシンレーザー開孔(Vf開孔機によるレーザー開孔)ではなく、予め通気孔が開孔されたプレチップ開孔チップペーパーを用いると良い。そうすることで、香料カプセル46の搭載位置または上流フィルター領域通気孔31の開孔位置にずれ(誤差)が生じた場合においても、香料カプセル46が破砕されることを懸念する必要がない。
【0072】
なお、上述した各実施形態においては、フィルター4の下流フィルター42を、単一の流路421を有するセンターホールフィルターとする場合を例に説明したが、
図13に示すシガレット1Cに係るフィルター4の如く、下流フィルター42に複数の流路421を設けてもよい。例えば、
図13に示す例では、下流フィルター42を軸方向に貫通する3本の流路421が設けられている。このように、複数の流路421を下流フィルター42に設ける場合、全ての流路421の内径を粉末含有物44の直径よりも小さくすることが好ましい。これにより、全ての流路421を、粉末含有物44を通さないように構成することができる。なお、流路421の内径は、一定の内径である必要は無く、変化していてもよい。この場合、流路421の長手方向において最も内径が小さくなる箇所で、その内径が粉末含有物44の外径よりも小さく設定されていればよい。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るシガレット1は、可能な限り各実施形態を組み合わせて実施することができる。