特許第6773338号(P6773338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773338
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】手押し車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20201012BHJP
   B62B 5/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B62B3/00 A
   B62B5/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-188210(P2018-188210)
(22)【出願日】2018年10月3日
(65)【公開番号】特開2020-55462(P2020-55462A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2019年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】500551677
【氏名又は名称】株式会社島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】島 義弘
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−42223(JP,A)
【文献】 特開2016−147031(JP,A)
【文献】 特開平11−1102(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/027255(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/086659(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/107678(WO,A2)
【文献】 中国特許出願公開第105730968(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
B62B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端の操舵部より下方へ延びる操舵フレームの下端に前後輪を転動自在に支持する脚体フレームが設けられているとともに、前記脚体フレームの前端部に前記操舵部への操舵力に応じて前記前後輪のうちの前輪を上下軸回りに操舵する操舵支持部が設けられており、
前記操舵支持部は、
当該操舵支持部の後端部に水平方向へ延びる第1水平軸を介して上端が回転自在に支持され、かつ下端に水平方向へ延びる第2水平軸を介して前記前輪が転動自在に支持された上下方向へ延びる第1リンクと、
前記操舵支持部の前端部に水平方向へ延びる第3水平軸を介して上端が回転自在に支持され、下端に水平方向へ延びる第4水平軸を介して補助輪が転動自在に支持された上下方向へ延びる第2リンクと、
前記第1リンクの第2水平軸と前記第2リンクの第4水平軸とにそれぞれ回転自在に支持された前後方向へ延びる第3リンクとを備え、
前記第1〜第3リンクは、前記補助輪を前記前輪の走行面に対しその走行面上よりも高い段差の上を越える高さに保持する保持位置と、前記補助輪が先に上を越えた前記段差に対する前記前輪の当接により前記操舵支持部の前方への移動に伴う前記第1リンクの前記第1水平軸回りでの後方への回転により前記第3リンクを後方へ押しやった状態で前記第2リンクを前記第3水平軸回りに後方へ回転させた際に前記段差上に接地する前記補助輪の高さと同じ高さまで前記前輪を引き上げる引き上げ位置との間で揺動するように構成され、
前記第2リンクと前記第3リンクとの間には、前記各リンクを保持位置に復帰させる方向へ付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする手押し車。
【請求項2】
前記補助輪は、前記前輪の径よりも小径に設定されている請求項1に記載の手押し車。
【請求項3】
前記前輪は左右一対で設けられ、この左右一対の前輪を操舵する操舵支持部が前記脚体フレームの前端部の左右両位置にそれぞれ設けられている請求項1又は請求項2に記載の手押し車。
【請求項4】
前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記各リンクが保持位置にあるときに鉛直線に対し後傾姿勢に保持される一方、前記第2リンクは、前記各リンクが引き上げ位置にあるときに前記第1リンクが鉛直線に対し前傾姿勢に変換されるのに対しほぼ鉛直線上に位置するような後傾姿勢に変換されるように設定されており、
前記第1リンクは、前記第2リンクよりも短尺となるように設定されている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の手押し車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルバーカーや歩行器などの手押し車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の手押し車は、上端の操舵部より下方へ延びる操舵フレームの下端に前後輪を転動自在に支持する脚体フレームが設けられているとともに、脚体フレームの前端部に操舵部への操舵力に応じて前後輪のうちの前輪を上下軸回りに操舵する操舵支持部が設けられている。そして、前輪は、操舵支持部の水平軸回りに転動自在に支持され、操舵部の操舵力に応じて上下軸回りに操舵される。
【0003】
ところで、手押し車を使用して歩道間にある車道の横断歩道などを横断する際、横断歩道(車道)と歩道との境目などに20mm程度の段差が存在していることがある。その場合、手押し車の前輪が歩道の段差を乗り越えられずに当接して前輪の転動が規制されると、前輪が段差に当接した際の衝撃の逃げ場を無くして、手押し車が前のめりとなるおそれがある。
【0004】
このとき、手押し車を押す力は、手押し車を前進させる力と手押し車を押さえる力とに分散されるが、段差に当接する車輪つまり前輪が操舵支持部に水平軸を介してダイレクトに支持されている。このため、段差に前輪が当接した際に、手押し車を押す力は、手押し車を前進させる力が規制されて手押し車を押さえる力が大きく占め、段差を乗り越え難くしている。
【0005】
そこで、操舵支持部に、当該操舵支持部の前端部に水平方向へ延びる第1水平軸を介して上端が回転自在に支持され、かつ下端に水平方向へ延びる第2水平軸を介して第1補助輪が転動自在に支持された上下方向へ延びる第1リンクと、第1水平軸よりも後方に位置する操舵支持部の前後方向中間部付近に水平方向へ延びる第3水平軸を介して上端が回転自在に支持され、下端に水平方向へ延びる第4水平軸を介して第2補助輪が転動自在に支持された上下方向へ延びる第2リンクとを備えたものが提案されている(非特許文献1参照)。そして、前輪は、操舵支持部の後端に水平方向へ延びる第5水平軸を介して転動自在に支持されている。
【0006】
第1及び第2リンクは、互いの長手方向中途部において交差した状態で互いに揺動自在に支持され、第2補助輪を前輪の走行面に対しその走行面上よりも高い段差の上を越える高さ(例えば25mm〜30mm程度の高さ)に保持する保持位置と、第2補助輪が先に上を越えた段差に対する第1補助輪の当接により操舵支持部の前方への移動に伴って第1リンクを第1水平軸回りに後方へ回転させながら第2リンクを第3水平軸回りに後方へ回転させた際に段差上に接地する第2補助輪の高さと同じ高さまで前輪を引き上げる引き上げ位置との間で揺動するように構成されている。また、第2リンクと操舵支持部の前端との間には、各リンクを保持位置に復帰させる方向へ付勢する付勢手段が設けられている。
【0007】
このとき、手押し車を押す力は、段差に第1補助輪が当接した際に、操舵支持部の後端に第5水平軸を介してダイレクトに支持された前輪ではなく第1補助輪に作用するものの、操舵支持部の前方への移動に伴い第1リンクを第1水平軸回りに後方へ回転させながら第2リンクを第3水平軸回りに後方へ回転させることで、規制されることなく手押し車を押さえる力が小さく抑えられる。その際に、第2補助輪が段差上に接地した状態で第2リンクを鉛直線上に近付けるように後方へ回動させ、これによって、各リンクを引き上げ位置まで揺動させて前輪を段差の高さと同じ高さまで引き上げるようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「株式会社星光医療器製作所 アルコーSK型α(アルファ)用脚部ユニット:2018年9月6日検索」インターネット<URL:http://www.aruko.co.jp/new/frame_sk_a.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、前記提案のものでは、操舵支持部の後端にダイレクトに支持された前輪に対し段差との当接による衝撃が作用しないように前輪の他に2種類の補助輪が支持されているため、操舵支持部の部品点数が増大する上、構造も複雑となり、コストアップを招くことになる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操舵支持部の部品点数の増大を抑えて、構造のシンプル化を図るとともに、コストダウンを図ることができる手押し車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明では、手押し車として、上端の操舵部より下方へ延びる操舵フレームの下端に前後輪を転動自在に支持する脚体フレームを設けるとともに、この脚体フレームの前端部に前記操舵部への操舵力に応じて前記前後輪のうちの前輪を上下軸回りに操舵する操舵支持部を設ける。更に、前記操舵支持部に、当該操舵支持部の後端部に水平方向へ延びる第1水平軸を介して上端が回転自在に支持され、かつ下端に水平方向へ延びる第2水平軸を介して前記前輪が転動自在に支持された上下方向へ延びる第1リンクと、前記操舵支持部の前端部に水平方向へ延びる第3水平軸を介して上端が回転自在に支持され、下端に水平方向へ延びる第4水平軸を介して補助輪が転動自在に支持された上下方向へ延びる第2リンクと、前記第1リンクの第2水平軸と前記第2リンクの第4水平軸とにそれぞれ回転自在に支持された前後方向へ延びる第3リンクとを設ける。そして、前記第1〜第3リンクを、前記補助輪を前記前輪の走行面に対しその走行面上よりも高い段差の上を超える高さに保持する保持位置と、前記補助輪が先に上を越えた前記段差に対する前記前輪の当接により前記操舵支持部の前方への移動に伴う前記第1リンクの前記第1水平軸回りでの後方への回転により前記第3リンクを後方へ押しやった状態で前記第2リンクを前記第3水平軸回りに後方へ回転させた際に前記段差上に接地する前記補助輪の高さと同じ高さまで前記前輪を引き上げる引き上げ位置との間で揺動するように構成する。更に、前記第2リンクと前記第3リンクとの間に、前記各リンクを保持位置に復帰させる方向へ付勢する付勢手段を設けることを特徴としている。
【0012】
また、前記補助輪を、前記前輪の径よりも小径に設定していてもよい。
【0013】
また、前記前輪を左右一対で設け、この左右一対の前輪を操舵する操舵支持部を前記脚体フレームの前端部の左右両位置にそれぞれ設けていてもよい。
【0014】
更に、前記第1リンク及び前記第2リンクを、前記各リンクが保持位置にあるときに鉛直線に対し後傾姿勢に変換する一方、前記第2リンクを、前記各リンクが引き上げ位置にあるときに前記第1リンクが鉛直線に対し前傾姿勢に変換されるのに対しほぼ鉛直線上に位置するような後傾姿勢に変換するように設定している。そして、前記第1リンクを、前記第2リンクよりも短尺となるように設定していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上、要するに、第1〜第3リンクを、補助輪を前輪の走行面に対しその走行面上よりも高い段差の上を越える高さに保持する保持位置と、補助輪が先に上を越えた段差に対する前輪の当接により操舵支持部の前方への移動に伴う第1リンクの第1水平軸回りでの後方への回転により第3リンクを後方へ押しやった状態で第2リンクを第3水平軸回りに後方へ回転させた際に段差上に接地する補助輪の高さと同じ高さまで前輪を引き上げる引き上げ位置との間で揺動するように構成することで、段差に前輪が当接すると、操舵支持部の前方への移動に伴い第1リンクが第1水平軸回りに後方へ回転しながら第3リンクを後方へ押しやる。このとき、手押し車を押す力は、段差に前輪が当接した際に当該前輪に作用するものの、操舵支持部の前方への移動に伴い第1リンクを第1水平軸回りに後方へ回転させながら第2リンクを第3水平軸回りに後方へ回転させることで、規制されることなく手押し車を押さえる力が小さく抑えられる。その際に、第2リンクが第3水平軸回りに後方へ回転して段差上に補助輪を接地させ、前輪の当接により手押し車を押さえる力が大きく占めることがなくなって手押し車が前のめりとなることを解消しつつ、補助輪が段差上に接地した状態で第2リンクを鉛直線上に近付けるように後方へ回動させ、これによって、各リンクを引き上げ位置まで揺動させて前輪を段差の高さと同じ高さまで引き上げるようにしている。これにより、操舵支持部に前輪の他に単一の補助輪を支持するだけで済み、操舵支持部の部品点数の増大を抑えて構造のシンプル化を図ることができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0016】
また、補助輪を前輪の径よりも小径に設定することで、保持位置にある補助輪が越えられないような高い段差に当該補助輪が当接した際にも手押し車が前のめりとなることを回避することが可能となる。このとき、段差に対して当接する補助輪の乗り越え可能な段差の高さは、保持位置にある補助輪の回転軸つまり第4水平軸の高さに依存するため、保持位置の第4水平軸よりも低い段差であれば補助輪が当接しても当該段差を登坂することが可能であることから、補助輪が段差に当接した際に手押し車が前のめりとなることを回避することが可能となる。
【0017】
具体的には、保持位置にある補助輪が越えられないような高くかつ第4水平軸よりも低い段差に当接した際の手押し車を押す力は、操舵支持部の前方への移動に伴い第2リンクを第3水平軸回りに後方へ回転させながら第3リンクを後方へ押しやることで、規制されることなく手押し車を押さえる力が小さく抑えられる。その際に、補助輪が段差上に接地した状態で第2リンクを第3水平軸回りにさらに後方へ回転させることで、各リンクを引き上げ位置まで揺動させて前輪を段差の高さと同じ高さまで引き上げるようにしている。これにより、第4水平軸よりも低い段差であれば補助輪が段差に当接した際の手押し車を押す力によって前のめりとなることを解消しつつ当該段差に対する補助輪の登坂性能を確保することが可能となる上、前輪の径よりも小径な補助輪を目立ち難くすることも可能となり、高い段差であっても第4水平軸よりも低ければ前輪をスムーズに引き上げることができる。
【0018】
また、左右に設けた前輪毎にそれぞれ操舵支持部を設けることで、左右の前輪が段差を乗り越える際に操舵支持部に掛かる力が左右に分散され、左右の前輪をよりスムーズに引き上げることができる。
【0019】
更に、第1リンク及び第2リンクを、各リンクが保持位置にあるときに鉛直線に対し後傾姿勢に変換する一方、各リンクが引き上げ位置にあるときに短尺な第1リンクを鉛直線に対し前傾姿勢に変換するのに対し第2リンクをほぼ鉛直線上に位置するような後傾姿勢に変換するように設定することで、各リンクが引き上げ位置にあるときに第1リンク及び第2リンクの長さを有効利用して前輪をより一層スムーズに引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る手押し車を斜め前方から視た斜視図である。
図2図1の手押し車を正面から視た正面図である。
図3図1の手押し車を側方から視た側面図である。
図4図3の手押し車の前輪が段差に近付いた保持位置での状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図5図4の手押し車の前輪が段差に当接した状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図6図5の手押し車の前輪が段差に当接した状態から操舵支持部の前方への移動に伴い補助輪が段差に接地するまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図7図6の手押し車の補助輪が段差に接地した状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図8図7の手押し車の補助輪が段差に接地した状態から前輪を引き上げ始めるまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図9図8の手押し車の前輪を引き上げ始めた状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図10図9の手押し車の前輪を引き上げ始めた状態から段差上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図11図10の手押し車の前輪を引き上げ始めた後の途中の状態から段差上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図12図11の手押し車の前輪を段差上に引き上げ完了し終えた引き上げ位置での状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図13図12の手押し車の前輪を段差上に引き上げ完了して走行し始めた保持位置での状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図14】本発明の第2の実施の形態に係る手押し車の前輪が段差に近付いた保持位置での状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図15図14の手押し車の前輪が段差に当接した状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図16図15の手押し車の前輪が段差に当接した状態から操舵支持部の前方への移動に伴い補助輪が段差に接地するまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図17図16の手押し車の補助輪が段差に接地した状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図18図17の手押し車の補助輪が段差に接地した状態から前輪を引き上げ始めるまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図19図18の手押し車の前輪を引き上げ始めた状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図20図19の手押し車の前輪を引き上げ始めた状態から段差上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図21図20の手押し車の前輪を引き上げ始めた後の途中の状態から段差上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図22図21の手押し車の前輪を段差上に引き上げ完了し終えた引き上げ位置での状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
図23図22の手押し車の前輪を段差上に引き上げ完了して走行し始めた保持位置での状態を操舵支持部の各リンクの動作により説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る手押し車を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る手押し車を斜め前方から視た斜視図、図2図1の手押し車を正面から視た正面図、図3図1の手押し車を側方から視た側面図をそれぞれ示している。この図1図3に示すように、手押し車Aは、シルバーカーとして用いられ、上端の操舵部としての左右方向へ延びるハンドル部11の左右両端よりそれぞれ下方へ延びる操舵フレームとしてのハンドルフレーム12,12を備えている。
【0023】
各ハンドルフレーム12の下端には、左右の前輪13,13及び後輪14,14を転動自在に支持する脚体フレーム15が設けられている。脚体フレーム15は、ハンドル部11の左右両端よりそれぞれ斜め前方へ向かって下方へ延びる前輪側脚体フレーム16,16と、各前輪側脚体フレーム16の上端部より斜め後方へ向かって下方へ延びる後輪側脚体フレーム17,17とを備えている。各前輪側脚体フレーム16の上端には、ハンドル部11の各ハンドルフレーム12の下端がそれぞれ挿通されて支持されている。
【0024】
各前輪側脚体フレーム16の下端には、ハンドル部11への操舵力に応じて前輪13を上下軸回りに操舵する操舵支持部2が設けられている。左右の前輪13,13は、それぞれ内外で対をなす内外前輪13a,13bを備え、この内外前輪13a,13b同士の間に操舵支持部2が配置されている。そして、左右の内外前輪13a,13bは、それぞれ操舵支持部2を介して各前輪側脚体フレーム16の下端に支持されている。
【0025】
また、各操舵支持部2は、略ボックス状の筐体20を備え、この筐体20に対し鉛直方向から貫通する支持部29が設けられている。この支持部29には、各前輪側脚体フレーム16の下端が上下軸となって回転自在に挿通され、各内外前輪13a,13bを操舵可能に支持している。一方、各後輪側脚体フレーム17の下端には、それぞれ左右方向外方向きに突出する左右軸10回りに各後輪14が転動自在に支持されている。
【0026】
各前輪側脚体フレーム16の上下両端は、左右方向へ延びる横フレーム18,18によって強固に連結されている。また、各後輪側脚体フレーム17は、その上端が各前輪側脚体フレームの上端に強固に連結され、下端が左右方向へ延びる横フレーム19によって強固に連結されている。
【0027】
図4図3の手押し車Aの前輪13(内側前輪13a)が段差に近付いた保持位置での状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図を示している。この図4において、各操舵支持部2は、当該各操舵支持部2の筐体20の左右両側面後端部に水平方向へ延びる第1水平軸21(図4では一方のみ示す)を介して上端が回転自在に支持され、かつ下端に水平方向へ延びる第2水平軸22(図4では一方のみ示す)を介して左右の内外前輪13a,13bが転動自在に支持された上下方向へ延びる一対の第1リンク31,31を備えている。
【0028】
また、各操舵支持部2は、当該各操舵支持部2の筐体20の左右両側面前端部に水平方向へ延びる第3水平軸23を介して上端が回転自在に支持され、かつ下端に水平方向へ延びる第4水平軸24を介して補助輪4が転動自在に支持された上下方向へ延びる一対の第2リンク32,32を備えている。更に、各操舵支持部2は、その筐体20の左右両側面において各第1リンク31の第2水平軸22と各第2リンク32の第4水平軸24とにそれぞれ回転自在に支持された前後方向へ延びる一対の第3リンク33,33を備えている。補助輪4は、各内外前輪13a,13bの径(約140mm)よりも小径、具体的には各内外前輪13a,13bの径の約4割強程度の径(約50mm)に設定されている。
【0029】
図5図4の手押し車Aの前輪13が段差に当接した状態を操舵支持部2の各第1〜各第3リンク31〜33の動作により説明する説明図、図6図5の手押し車Aの前輪13が段差に当接した状態から操舵支持部2の前方への移動に伴い補助輪4が段差に接地するまでの状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図をそれぞれ示している。また、図7図6の手押し車Aの補助輪4が段差に接地した状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図、図8図7の手押し車Aの補助輪4が段差に接地した状態から前輪13を引き上げ始めるまでの状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図をそれぞれ示している。
【0030】
更に、図9図8の手押し車Aの前輪13を引き上げ始めた状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図、図10図9の手押し車Aの前輪13を引き上げ始めた状態から段差上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図をそれぞれ示している。また、図11図10の手押し車Aの前輪13を引き上げ始めた後の途中の状態から段差上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図、図12図11の手押し車Aの前輪13を段差上に引き上げ完了し終えた引き上げ位置での状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図、図13図12の手押し車Aの前輪13を段差上に引き上げ完了して走行し始めた保持位置での状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図をそれぞれ示している。
【0031】
図5図13にも示すように、各第1〜各第3リンク31〜33は、補助輪4を各前輪13の走行面Gに対しその走行面G上よりも高い(例えば20mm程度高い)段差Lの上を越える高さ(例えば25mm〜30mm程度の高さ)に保持する保持位置(図4図5及び図13に示す位置)と、補助輪4が先に上を越えた段差Lに対し各内外前輪13a,13bが当接して各第1リンク31を第1水平軸21回りに後方へ回転させながら各第3リンク33を後方へ押しやった際に各第2リンク32を第3水平軸23回りに後方へ回転させて段差L上に補助輪4を接地させた高さと同じ高さに各内外前輪13a,13bを引き上げる引き上げ位置(図12に示す位置)との間で揺動するように構成されている。このとき、各内外前輪13a,13bが段差Lに当接した際の衝撃は、各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い各第1〜各第3リンク31〜33が保持位置から揺動することで逃がされる。なお、具体的な各第1〜各第3リンク31〜33の動きについては後述する。
【0032】
更に、各第2リンク32の長手方向略中間部と各第3リンク33の長手方向略中間部との間には、各第1〜各第3リンク31〜33を保持位置に復帰させる方向へ付勢する付勢手段としての付勢スプリング34がそれぞれ設けられている。この付勢スプリング34は、各第2リンク32と各第3リンク33との狭角を狭める方向へ付勢している。
【0033】
各操舵支持部2の筐体20の左右両側面には、各第1〜各第3リンク31〜33を保持位置に保持する保持位置規制ピン25が設けられている。この保持位置規制ピン25は、付勢スプリング34によって各第1〜各第3リンク31〜33が保持位置に復帰した際に各第1リンク31を当接させることで付勢スプリング34によるそれ以上の揺動を規制して各第1〜各第3リンク31〜33を保持位置に保持している。また、各操舵支持部2の筐体20の左右両側面には、各第1〜各第3リンク31〜33が引き上げ位置まで揺動した際に各第2リンク32が当接することでそれ以上の揺動を規制する引き上げ位置規制ピン26が設けられている。
【0034】
各第1リンク31及び各第2リンク32は、各第1〜各第3リンク31〜33が保持位置にあるときに鉛直線n(図4に表れる)に対し後傾姿勢に保持されている一方、各第1〜各第3リンク31〜33が引き上げ位置にあるときに鉛直線n(図12に表れる)に対し前傾姿勢に変換されている。また、各第1リンク31は、各第2リンク32よりも短尺(例えば略半分の長さ)とされ、各第1〜各第3リンク31〜33が保持位置にあるときに各第2リンク32よりも鉛直線nに対する後傾姿勢が小さくなるように設定されている。
【0035】
ここで、手押し車Aの前輪13が段差Lを乗り越える際の各操舵支持部2の各第1〜各第3リンク31〜33の動きを図4図13に基づいて説明する。
【0036】
先ず、図4に示すように、手押し車Aの各前輪13(内側の前輪13aで表す)が走行面G上を走行している際には、各第1〜各第3リンク31〜33は、付勢スプリング34の付勢力によって各第1リンク31が保持位置規制ピン25に当接することで、付勢スプリング34によるそれ以上の揺動を規制して保持位置に保持されている。このとき、補助輪4は、走行面G上より20mm程度高い段差Lの上を越えるに十分な高さ、つまり走行面G上より30mm程度高い高さに保持されることになる。
【0037】
次いで、図5に示すように、補助輪4が段差Lの上を越え、前輪13が段差Lに当接すると、各第1〜各第3リンク31〜33は、図6及び図7に示すように、図6の二点鎖線で示す位置から図6及び図7に実線で示す位置まで各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い揺動し、補助輪4を段差L上に接地させる。具体的には、各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い各第1リンク31を第1水平軸21回りに後方へ回転させながら各第3リンク33を後方へ引き寄せ、その際に各第2リンク32を第3水平軸23回りに後方へ回転するように各第1〜各第3リンク31〜33が揺動し、補助輪4を段差L上に接地させる。
【0038】
その後、各第1〜各第3リンク31〜33は、図8及び図9に示すように、補助輪4を段差L上に接地させた状態で、図8の二点鎖線で示す位置から図8及び図9に実線で示す位置まで各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い揺動し、前輪13を走行面Gから上方へ持ち上げ始める。
【0039】
しかる後、各第1〜各第3リンク31〜33は、図10及び図11に示すように、補助輪4を段差L上に接地させた状態で、図10の二点鎖線で示す位置から図11の二点鎖線で示す位置を経るように、各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴ってさらに揺動する。その後、図10図12に実線で示すように、各第3リンク33を後方へ押しやって各第2リンク32を第3水平軸23回りに後方へ回転させることで、前輪13を段差L上に引き上げる。このとき、各第1〜各第3リンク31〜33は、付勢スプリング34の付勢力に抗して各第2リンク32が引き上げ位置規制ピン26に当接することで、それ以上の揺動を規制して引き上げ位置まで変換される。
【0040】
それから、各第1〜各第3リンク31〜33は、図13に示すように、各前輪13の前方への転動に伴って付勢スプリング34により各第2リンク32と各第3リンク33との狭角を狭める方向へ付勢し、各第1リンク31も第1水平軸21回りに前方へ回転させる。これにより、各第1〜各第3リンク31〜33は、各操舵支持部2の筐体20を後方へ移動させながら補助輪4を段差L上から離間させ、各第1リンク31が保持位置規制ピン25に当接することで、付勢スプリング34によるそれ以上の揺動を規制して保持位置に復帰する。
【0041】
したがって、前記第1の実施の形態では、各第1〜各第3リンク31〜33は、補助輪4を前輪13(内外前輪13a,13b)の走行面Gに対しその走行面G上よりも20mm程度高い段差Lの上を越える高さに保持する保持位置と、補助輪4が先に上を越えた段差Lに対する前輪13の当接により各操舵支持部2の前方への移動に伴う各第1リンク31の第1水平軸21回りでの後方への回転により各第3リンク33を後方へ押しやった状態で各第2リンク32を第3水平軸23回りに後方へ回転させた際に段差L上に接地する補助輪4の高さと同じ高さまで前輪13を引き上げる引き上げ位置との間で揺動するように構成されているので、段差Lに前輪13が当接すると、各操舵支持部2の前方への移動に伴い各第1リンク31が第1水平軸21回りに後方へ回転しながら各第3リンク33を後方へ押しやる。このとき、手押し車Aを押す力は、段差Lに前輪13が当接した際に当該前輪13に作用するものの、各操舵支持部2の前方への移動に伴い各第1リンク31を第1水平軸21回りに後方へ回転させながら各第2リンク32を第3水平軸23回りに後方へ回転させることで、規制されることなく手押し車Aを押さえる力が小さく抑えられる。その際に、各第2リンク32が第3水平軸23回りに後方へ回転して段差L上に補助輪4を接地させ、前輪13の当接により手押し車Aを押さえる力が大きく占めることがなくなって手押し車Aが前のめりとなることを解消しつつ、補助輪4が段差L上に接地した状態で各第2リンク32を鉛直線n上に近付けるように後方へ回動させ、これによって、各第1〜各第3リンク31〜33を引き上げ位置まで揺動させて前輪13を段差Lの高さと同じ高さまで引き上げるようにしている。これにより、各操舵支持部2に前輪13の他に単一の補助輪4を支持するだけで済み、各操舵支持部2の部品点数の増大を抑えて構造のシンプル化を図ることができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0042】
また、補助輪4が各内外前輪13a,13bの径よりも小径、つまり各内外前輪13a,13bの径の約4割強程度の径に設定されているので、各内外前輪13a,13bよりも前方に位置する補助輪4が目立ち難いものとなり、各操舵支持部2のコンパクト化に寄与することができる。
【0043】
また、左右の前輪13,13毎にそれぞれ操舵支持部2が設けられているので、左右の前輪13,13が段差Lを乗り越える際に操舵支持部2に掛かる力が左右に分散され、左右の前輪13,13をよりスムーズに引き上げることができる。
【0044】
更に、各第1リンク31及び各第2リンク32は、各第1〜各第3リンク31〜33が保持位置にあるときに鉛直線nに対し後傾姿勢に変換される一方、各第1〜各第3リンク31〜33が引き上げ位置にあるときに短尺な各第1リンク31が鉛直線nに対し前傾姿勢に変換されるのに対し各第2リンク32がほぼ鉛直線n上に位置するような後傾姿勢に変換されるように設定されているので、各第1〜各第3リンク31〜33が引き上げ位置にあるときに各第1リンク31及び各第2リンク32の長さを有効利用して左右の前輪13,13をより一層スムーズに引き上げることができる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態を図14図23に基づいて説明する。
【0046】
この実施の形態では、補助輪の径を変更している。なお、各第1〜各第3リンク及び補助輪を除くその他の構成は、前記第1の実施の形態の場合と同じであり、同一の部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0047】
図14は本発明の第2の実施の形態に係る手押し車Aの前輪13が段差Lに近付いた保持位置での状態を操舵支持部2の各リンクの動作により説明する説明図を示している。この図14に示すように、各操舵支持部2は、当該各操舵支持部2の筐体20の左右両側面後端部に水平方向へ延びる第1水平軸51(図14では一方のみ示す)を介して上端が回転自在に支持され、かつ下端に水平方向へ延びる第2水平軸52(図14では一方のみ示す)を介して左右の内外前輪13a,13bが転動自在に支持された上下方向へ延びる一対の第1リンク61,61を備えている。
【0048】
また、各操舵支持部2は、当該各操舵支持部2の筐体20の左右両側面前端部に水平方向へ延びる第3水平軸53を介して上端が回転自在に支持され、かつ下端に水平方向へ延びる第4水平軸54を介して補助輪7が転動自在に支持された上下方向へ延びる一対の第2リンク62,62を備えている。更に、各操舵支持部2は、その筐体20の左右両側面において各第1リンク61の第2水平軸52と各第2リンク62の第4水平軸54とにそれぞれ回転自在に支持された前後方向へ延びる一対の第3リンク63,63を備えている。補助輪7は、各内外前輪13a,13bの径(約140mm)よりも小径、具体的には各内外前輪13a,13bの径の約6割弱程度の径(約80mm)に設定されている。
【0049】
図15図14の手押し車Aの前輪13が段差Lに当接した状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図、図16図15の手押し車Aの前輪13が段差Lに当接した状態から操舵支持部2の前方への移動に伴い補助輪7が段差Lに接地するまでの状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図をそれぞれ示している。図17図16の手押し車Aの補助輪7が段差Lに接地した状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図、図18図17の手押し車Aの補助輪7が段差Lに接地した状態から前輪13を引き上げ始めるまでの状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図をそれぞれ示している。
【0050】
更に、図19図18の手押し車Aの前輪13を引き上げ始めた状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図、図20図19の手押し車Aの前輪13を引き上げ始めた状態から段差L上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図をそれぞれ示している。また、図21図20の手押し車Aの前輪13を引き上げ始めた後の途中の状態から段差L上に引き上げ完了し終えるまでの状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図を示している。更に、図22図21の手押し車Aの前輪13を段差L上に引き上げ完了し終えた引き上げ位置での状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図、図23図22の手押し車Aの前輪13を段差L上に引き上げ完了して走行し始めた保持位置での状態を操舵支持部2の各リンク61〜63の動作により説明する説明図をそれぞれ示している。
【0051】
図15図23にも示すように、各第1〜各第3リンク61〜63は、補助輪7を各前輪13の走行面Gに対しその走行面G上よりも高い(例えば20mm程度高い)段差Lの上を越える高さ(例えば25mm〜30mm程度の高さ)に保持する保持位置(図14図15及び図23に示す位置)と、補助輪7が先に上を越えた段差Lに対し各内外前輪13a,13bが当接して各第1リンク61を第1水平軸51回りに後方へ回転させながら各第3リンク63を後方へ押しやった際に各第2リンク62を第3水平軸53回りに後方へ回転させて段差L上に補助輪7を接地させた高さと同じ高さに各内外前輪13a,13bを引き上げる引き上げ位置(図22に示す位置)との間で揺動するように構成されている。このとき、各内外前輪13a,13bが段差Lに当接した際の衝撃は、各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い各第1〜各第3リンク61〜63が保持位置から揺動することで逃がされる。なお、具体的な各第1〜各第3リンク61〜63の動きについては後述する。
【0052】
更に、各第2リンク62の長手方向略中間部と各第3リンク63の長手方向略中間部との間には、各第1〜各第3リンク61〜63を保持位置に復帰させる方向へ付勢する付勢手段としての付勢スプリング64がそれぞれ設けられている。この付勢スプリング64は、各第2リンク62と各第3リンク63との狭角を狭める方向へ付勢している。
【0053】
各操舵支持部2の筐体20の左右両側面には、各第1〜各第3リンク61〜63を保持位置に保持する保持位置規制ピン55が設けられている。この保持位置規制ピン55は、付勢スプリング64によって各第1〜各第3リンク61〜63が保持位置に復帰した際に各第1リンク61を当接させることで付勢スプリング64によるそれ以上の揺動を規制して各第1〜各第3リンク61〜63を保持位置に保持している。また、各操舵支持部2の筐体20の左右両側面には、各第1〜各第3リンク61〜63が引き上げ位置まで揺動した際に各第2リンク62が当接することでそれ以上の揺動を規制する引き上げ位置規制ピン56が設けられている。
【0054】
各第1リンク61及び各第2リンク62は、各第1〜各第3リンク61〜63が保持位置にあるときに鉛直線n(図14に表れる)に対し後傾姿勢に保持されている一方、各第1〜各第3リンク61〜63が引き上げ位置にあるときに鉛直線n(図22に表れる)に対し前傾姿勢に変換されている。また、各第1リンク61は、各第2リンク62よりも短尺(例えば略8割弱の長さ)とされ、各第1〜各第3リンク61〜63が保持位置にあるときに各第2リンク62よりも鉛直線nに対する後傾姿勢が小さくなるように設定されている。
【0055】
ここで、手押し車Aの前輪13が段差Lを乗り越える際の各操舵支持部2の各第1〜各第3リンク61〜63の動きを図14図23に基づいて説明する。
【0056】
先ず、図14に示すように、手押し車Aの各前輪13(内側の前輪13aで表す)が走行面G上を走行している際には、各第1〜各第3リンク61〜63は、付勢スプリング64の付勢力によって各第1リンク61が保持位置規制ピン55に当接することで、付勢スプリング64によるそれ以上の揺動を規制して保持位置に保持されている。このとき、補助輪7は、走行面G上より20mm程度高い段差Lの上を越えるに十分な高さ、つまり走行面G上より30mm程度高い高さに保持されることになる。
【0057】
次いで、図15に示すように、補助輪7が段差Lの上を越え、前輪13が段差Lに当接すると、各第1〜各第3リンク61〜63は、図16及び図17に示すように、図16の二点鎖線で示す位置から図16及び図17に実線で示す位置まで各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い揺動し、補助輪7を段差L上に接地させる。具体的には、各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い各第1リンク61を第1水平軸51回りに後方へ回転させながら各第3リンク63を後方へ引き寄せ、その際に各第2リンク62を第3水平軸53回りに後方へ回転するように各第1〜各第3リンク61〜63が揺動し、補助輪7を段差L上に接地させる。
【0058】
その後、各第1〜各第3リンク61〜63は、図18及び図19に示すように、補助輪7を段差L上に接地させた状態で、図18の二点鎖線で示す位置から図18及び図19に実線で示す位置まで各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴い揺動し、前輪13を走行面Gから上方へ持ち上げ始める。
【0059】
しかる後、各第1〜各第3リンク61〜63は、図20及び図21に示すように、補助輪7を段差L上に接地させた状態で、図20の二点鎖線で示す位置から図21の二点鎖線で示す位置を経るように、各操舵支持部2の筐体20の前方への移動に伴ってさらに揺動する。その後、図20図22に実線で示すように、各第3リンク63を後方へ押しやって各第2リンク62を第3水平軸53回りに後方へ回転させることで、前輪13を段差L上に引き上げる。このとき、各第1〜各第3リンク61〜63は、付勢スプリング64の付勢力に抗して各第2リンク62が引き上げ位置規制ピン56に当接することで、それ以上の揺動を規制して引き上げ位置まで変換される。
【0060】
それから、各第1〜各第3リンク61〜63は、図23に示すように、各前輪13の前方への転動に伴って付勢スプリング64により各第2リンク62と各第3リンク63との狭角を狭める方向へ付勢し、各第1リンク61も第1水平軸51回りに前方へ回転させる。これにより、各第1〜各第3リンク61〜63は、各操舵支持部2の筐体20を後方へ移動させながら補助輪7を段差L上から離間させ、各第1リンク61が保持位置規制ピン55に当接することで、付勢スプリング64によるそれ以上の揺動を規制して保持位置に復帰する。
【0061】
したがって、前記第2の実施の形態では、各第1〜各第3リンク61〜63は、補助輪7を前輪13(内外前輪13a,13b)の走行面Gに対しその走行面G上よりも20mm程度高い段差Lの上を越える高さに保持する保持位置と、補助輪7が先に上を越えた段差Lに対する前輪13の当接により各操舵支持部2の前方への移動に伴う各第1リンク61の第1水平軸51回りでの後方への回転により各第3リンク63を後方へ押しやった状態で各第2リンク62を第3水平軸53回りに後方へ回転させた際に段差L上に接地する補助輪7の高さと同じ高さまで前輪13を引き上げる引き上げ位置との間で揺動するように構成されているので、段差Lに前輪13が当接すると、各操舵支持部2の前方への移動に伴い各第1リンク61が第1水平軸51回りに後方へ回転しながら各第3リンク63を後方へ押しやる。このとき、手押し車Aを押す力は、段差Lに前輪13が当接した際に当該前輪13に作用するものの、各操舵支持部2の前方への移動に伴い各第1リンク61を第1水平軸51回りに後方へ回転させながら各第2リンク62を第3水平軸53回りに後方へ回転させることで、規制されることなく手押し車Aを押さえる力が小さく抑えられる。その際に、各第2リンク62が第3水平軸53回りに後方へ回転して段差L上に補助輪7を接地させ、前輪13の当接により手押し車Aを押さえる力が大きく占めることがなくなって手押し車Aが前のめりとなることを解消しつつ、補助輪7が段差L上に接地した状態で各第2リンク62を鉛直線n上に近付けるように後方へ回動させ、これによって、各第1〜各第3リンク61〜63を引き上げ位置まで揺動させて前輪13を段差Lの高さと同じ高さまで引き上げるようにしている。これにより、各操舵支持部2に前輪13の他に単一の補助輪7を支持するだけで済み、各操舵支持部2の部品点数の増大を抑えて構造のシンプル化を図ることができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0062】
また、補助輪7が各内外前輪13a,13bの径よりも小径、つまり各内外前輪13a,13bの径の約6割弱程度の径に設定されているので、保持位置にある補助輪7が越えられないような高い段差に当該補助輪7が当接した際にも手押し車Aが前のめりとなることを回避することが可能となる。このとき、段差に対して当接する補助輪7の乗り越え可能な段差の高さは、保持位置にある補助輪7の回転軸つまり第4水平軸54の高さに依存するため、保持位置の第4水平軸54よりも低い段差であれば補助輪7が当接しても当該段差を登坂することが可能であることから、補助輪7が段差に当接した際に手押し車Aが前のめりとなることを回避することが可能となる。
【0063】
具体的には、保持位置にある補助輪7が越えられないような高くかつ第4水平軸54よりも低い段差に当接した際の手押し車Aを押す力は、各操舵支持部2の前方への移動に伴い各第2リンク62を第3水平軸53回りに後方へ回転させながら各第3リンク63を後方へ押しやることで、規制されることなく手押し車Aを押さえる力が小さく抑えられる。その際に、補助輪7が段差上に接地した状態で各第2リンク62を第3水平軸53回りにさらに後方へ回転させることで、各第1〜各第3リンク61〜63を引き上げ位置まで揺動させて前輪13を段差の高さと同じ高さまで引き上げるようにしている。これにより、第4水平軸54よりも低い段差であれば補助輪7が段差に当接した際の手押し車Aを押す力によって前のめりとなることを解消しつつ当該段差に対する補助輪7の登坂性能を確保することが可能となる上、前輪13の径よりも小径な補助輪7を目立ち難くすることも可能となり、高い段差であっても第4水平軸54よりも低ければ前輪13をスムーズに引き上げることができる。
【0064】
更に、各第1リンク61及び各第2リンク62は、各第1〜各第3リンク61〜63が保持位置にあるときに鉛直線nに対し後傾姿勢に変換される一方、各第1〜各第3リンク61〜63が引き上げ位置にあるときに短尺な各第1リンク61が鉛直線nに対し前傾姿勢に変換されるのに対し各第2リンク62がほぼ鉛直線n上に位置するような後傾姿勢に変換されるように設定されているので、各第1〜各第3リンク61〜63が引き上げ位置にあるときに各第1リンク61及び各第2リンク62の長さを有効利用して左右の前輪13,13をより一層スムーズに引き上げることができる。
【0065】
なお、本発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記各実施の形態では、左右の前輪13,13を内外一対の内外前輪13a,13bにより構成したが、左右の前輪がそれぞれ単一の前輪により構成されていてもよい。また、単一の前輪と左右の後輪とからなる3輪の歩行器といった手押し車であってもよく、その場合には単一の前輪にのみ操舵支持部が設けられる。
【0066】
また、前記各実施の形態では、補助輪4を各前輪13の径の約4割強程度の径に、補助輪7を各前輪13の径の約6割弱程度の径にそれぞれ設定したが、補助輪の径はこれに限定されるものではなく、各前輪の径よりも小径に設定されていればよい。
【0067】
また、前記各実施の形態では、各前輪13を内外前輪13a,13bにより二輪ずつで構成したが、各前輪が一輪ずつで構成されていてもよい。また、前記各実施の形態では、各操舵支持部2の筐体20の左右両側面に一対の各第1〜各第3リンク31〜33を設けたが、各操舵支持部の筐体の左右両側面のいずれか一方に単一の第1〜各第3リンクが設けられていてもよい。
【0068】
また、前記各実施の形態では、各操舵支持部2の筐体20の左右両側面に保持位置規制ピン25,55及び引き上げ位置規制ピン26,56を設けたが、各第2リンク及び各第1リンク同士をそれぞれロッド状部材で連結し、付勢スプリングの付勢力により各第1リンク間のロッド状部材及び各第2リンク間のロッド状部材のいずれか一方が保持位置まで揺動した際に当該ロッド状部材を操舵支持部の筐体に当接させることで、それ以上の揺動を規制して各第1〜各第3リンクが保持位置に位置決めされる一方、付勢スプリングの付勢力に抗して他方のロッド状部材が引き上げ位置まで揺動した際に当該ロッド状部材を操舵支持部の筐体に当接させることで、それ以上の揺動を規制して各第1〜各第3リンクが引き上げ位置に位置決めされるようにしてもよい。
【0069】
また、前記各実施の形態では、各第2リンク32,62と各第3リンク33,63との間に付勢スプリング34,64を設けたが、各第1リンクと各操舵支持部2の筐体との間に、各第1〜各第3リンクを保持位置に復帰させる方向へ付勢する付勢スプリングが別途設けられていてもよい。その場合、各第1リンクと各操舵支持部2の筐体との間の付勢スプリングは、各第2リンクと各第3リンクとの間の付勢スプリングの付勢力をアシストするためのものであり、付勢力自体は各第2リンクと各第3リンクとの間の付勢スプリングよりも弱めに設定している。
【0070】
更に、前記各実施の形態では、手押し車Aをシルバーカーとして用いた場合について述べたが、歩行器や乳母車などの手押し車に適用してもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0071】
11 ハンドル部(操舵部)
12 ハンドルフレーム(操舵フレーム)
13 前輪
14 後輪
15 脚体フレーム
16 前輪側脚体フレーム
2 操舵支持部
21 第1水平軸
22 第2水平軸
23 第3水平軸
24 第4水平軸
31 第1リンク
32 第2リンク
33 第3リンク
34 付勢スプリング(付勢手段)
4 補助輪
51 第1水平軸
52 第2水平軸
53 第3水平軸
54 第4水平軸
61 第1リンク
62 第2リンク
63 第3リンク
64 付勢スプリング(付勢手段)
7 補助輪
A 手押し車
G 走行面
L 段差
n 鉛直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23