(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6773351
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】窒素−リン系膨張性難燃剤、及び水性ポリウレタン塗料の調整方法への応用
(51)【国際特許分類】
C09K 21/12 20060101AFI20201012BHJP
C09K 21/10 20060101ALI20201012BHJP
C09K 21/08 20060101ALI20201012BHJP
C09K 21/06 20060101ALI20201012BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20201012BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20201012BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20201012BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20201012BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20201012BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20201012BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20201012BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20201012BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20201012BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20201012BHJP
C08G 18/64 20060101ALI20201012BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
C09K21/12
C09K21/10
C09K21/08
C09K21/06
C09D175/04
C09D5/02
C09D5/18
C09D7/20
C09D7/63
C08G18/10
C08G18/08 085
C08G18/00 C
C08G18/44
C08G18/75 010
C08G18/64 046
C08G18/67 080
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-236699(P2019-236699)
(22)【出願日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年1月7日
(31)【優先権主張番号】2019106431795
(32)【優先日】2019年7月17日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519464120
【氏名又は名称】烟台大学
【氏名又は名称原語表記】YANTAI UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100145517
【弁理士】
【氏名又は名称】宮原 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】タン ホウエイ
(72)【発明者】
【氏名】オウ ゼンケツ
(72)【発明者】
【氏名】オウ キケン
(72)【発明者】
【氏名】キュウ ドウサイ
【審査官】
宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−011792(JP,A)
【文献】
特開平08−092266(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104046224(CN,A)
【文献】
特開平06−016975(JP,A)
【文献】
特開2018−002812(JP,A)
【文献】
特表2006−504815(JP,A)
【文献】
特開2009−019184(JP,A)
【文献】
特開昭53−020697(JP,A)
【文献】
特表2008−520753(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/063922(WO,A1)
【文献】
特表2010−534757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K21
C09D
C08G
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素−リン系膨張性難燃剤の調整方法であって、
亜リン酸ジメチル、アルカリ性触媒であるナトリウムメトキシド及びアクリルアミドを混合した後、70〜90℃の温度で3〜5h反応させ、3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドを中間体として得て、中間体を降温してチャー形成剤及び物質Aを加え、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、撹拌しながら溶液のpHを6.5〜7.0に安定化させ、次に、物質B及び物質Cを加えて、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、濃縮させて窒素−リン系膨張性難燃剤を得て、
前記チャー形成剤は、トリメチルクロロシラン、シアヌル酸クロリド及びトリメチロールプロパンのうちのいずれか1種であり、
前記物質Aは、酒石酸カリウムナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム及びp−ニトロ安息香酸のうちのいずれか1種であり、
前記物質Bは、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、無水イタコン酸及びシトラコン酸のうちのいずれか1種であり、
前記物質Cは、1,3,5−トリアジン、インドール−3−アセトアミド及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのうちのいずれか1種である、ことを特徴とする窒素−リン系膨張性難燃剤の調整方法である。
【請求項2】
亜リン酸ジメチル1molに、亜リン酸ジメチルの質量に対して10%のアルカリ性触媒であるナトリウムメトキシドを加え、次に、アクリルアミド0.9〜1.2molを加えて、70〜90℃で3〜5h反応させ、3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドを中間体Aとして得て、中間産物の温度を50℃〜55℃に下げて、チャー形成剤0.9〜1.3mol及び物質A 0.1molを加え、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、撹拌しながら溶液のpHを6.5−7.0に調整し、さらに、物質B 3.1〜8.7g及び物質C 0.2g〜0.4gを加えて、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、固形分90%以上となるまで濃縮させて、窒素−リン系膨張性難燃剤を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の窒素−リン系膨張性難燃剤の調整方法である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の窒素−リン系膨張性難燃剤を用いた水性ポリウレタン塗料の調整方法であって、
ジオール、イソシアネート及びジブチル錫ジラウレートを反応させてポリウレタンプレポリマーを得て、ポリウレタンプレポリマーに親水性鎖延長剤、前記窒素−リン系膨張性難燃剤及びアセトン溶剤を加えて反応させ、次に、トリエチルアミンを加えて中和し、最後に、水を加えて乳化して親水性ポリウレタン塗料を得る、ことを特徴とする水性ポリウレタン塗料の調整方法である。
【請求項4】
撹拌装置、温度制御表示装置及び凝縮管を備えた容器に、ジオール45g、イソシアネート21.6g〜24.8g及びジブチル錫ジラウレート0.12g〜0.15gを加えて、60〜80℃で2h〜4h反応させ、次に、ポリペプチド0.5〜0.7gと2−tert−ブチル−p−クレゾール0.2〜0.4gを加えて、50〜70℃で1〜2h撹拌して反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得るステップと、
ポリウレタンプレポリマーに、親水性鎖延長剤2.2g〜3.4g、前記窒素−リン系膨張性難燃剤1.3g〜1.7g、及びアセトン溶剤6.1〜8.2gを加えて、60〜80℃の条件で1h〜2h反応させるステップと、
さらに、ポリペプチド0.6〜1.2g及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド0.2〜0.4gを加えて、50〜60℃で1〜2h撹拌して反応させ、次に、トリエチルアミン2.0〜4.5gを加えて中和し、最後に、水150g〜160gを加えて20〜40min乳化し、親水性ポリウレタン塗料を得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の水性ポリウレタン塗料の調整方法である。
【請求項5】
ジオールは、ポリカーボネートジオール又はヘキサンジオールである、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の水性ポリウレタン塗料の調整方法である。
【請求項6】
前記ポリカーボネートジオールの重量平均分子量が2000である、ことを特徴とする請求項5に記載の水性ポリウレタン塗料の調整方法である。
【請求項7】
イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項3又は4に記載の水性ポリウレタン塗料の調整方法である。
【請求項8】
前記親水性鎖延長剤は、ジメチロールプロピオン酸である、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の水性ポリウレタン塗料の調整方法である。
【請求項9】
前記ポリペプチドの調整方法は、クロム含有革屑10g、水200〜240g、酸化カルシウム6〜8g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6〜0.7gを混合して、6〜8h撹拌して前処理を行い、次に、酸化カルシウム5〜6gを加え、70〜90℃に昇温して5〜6h撹拌し、加水分解液を得て一回目の吸引ろ過を行い、吸引ろ過済みの加水分解液にシュウ酸を加えて加水分解液のpH値を6.5〜7.5に調整し、さらに吸引ろ過して、静置し、吸引ろ過液が安定的になると、沈殿を濾別して、吸引ろ過液をベークして、ポリペプチドを得ることである、ことを特徴とする請求項4に記載の水性ポリウレタン塗料の調整方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤及び水性ポリウレタン塗料の
調整方法に関し、特に窒素−リン系膨張性難燃剤の
調整方法、及び窒素−リン系膨張性難燃剤を用いた水性ポリウレタン塗料の
調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃剤は、主にプラスチック、ゴム、織物や塗料などの分野で使用される。難燃剤には、主に、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤など、数百種類が含まれる。ハロゲン難燃剤は、費用対効果が高いという利点を有するが、燃焼プロセスに大量の有毒ガスや強腐食性ガス、たとえばHXを放出し、また、ペンタブロモジフェニルエーテルやオクタブロモジフェニルエーテルなどのハロゲン難燃剤は、人間に対して発がん性がある。
【0003】
マグネシア及びアルミナは、一般的な無機系難燃剤であり、これらは、燃焼プロセスに吸熱するので、燃焼プロセスの熱量を減少させ、また、燃焼プロセスに水分子を放出するため、燃焼領域の酸素濃度を低減させ、さらに燃焼プロセスに生じるマグネシア及びアルミナのいずれも耐火材料であり、燃焼物表面を覆うと燃焼の進行を遅らせる。しかしながら、無機系難燃剤は、添加量が大きく、且つ有機材料との相溶性に劣るという欠点を有するため、材料の機械的特性の低下を引き起こしやすい。
【0004】
膨張性難燃剤(IFR)は、環境に優しい難燃剤であり、ハロゲンフリーで、また、酸化アンチモンを相乗剤として使用せず、系自体が相乗作用を有するものである。膨張性難燃剤を含むプラスチックは、燃焼するときに表面に炭素質発泡層が形成されて、断熱、酸素バリア、発煙抑制、滴下防止などの効果を奏し、優れた難燃性能を有するとともに、低発煙性、低毒性であり、腐食性ガスを発生させることがなく、将来の難燃剤の研究開発の動向に合致し、中国国内外で研究が盛んに行われている難燃剤の一つとなっている。
【0005】
膨張性難燃剤には、3つの基本要素がある。つまり、酸源、炭素源及びガス源である。酸源は、脱水剤又は炭化促進剤とも呼ばれ、一般には、無機酸又は燃焼プロセスに酸をその場で生成できる化合物、例えばリン酸、ホウ酸、硫酸やリン酸エステルなどであり、炭素源は、チャー形成剤とも呼ばれ、発泡炭化層を形成する基礎であり、主に、たとえば、デンプン、スクロース、デキストリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、フェノール樹脂などの炭素含有量の高いポリヒドロキシ化合物であり、ガス源は、発泡源とも呼ばれ、たとえば、尿素、メラミン、ポリアミドなどの含窒素化合物である。3種類の成分のうち、酸源は、最も重要であり、割合が最大であり、且つ難燃性元素が酸源に含まれているため、酸源は、本質的な難燃剤であり、炭素源及び発泡剤は、相乗剤である。
【0006】
IFRの難燃作用は、主に材料の表面に固体、液体及び気体産物を含む多相系である多孔質発泡性コークス層を形成することに依存している。炭素層の難燃性質は、熱が凝縮相に浸透しにくいようにして、酸素が燃焼領域に入ることを防ぎ、分解によって生成された気体又は液体の生成物が材料の表面まで溢れることを防止するということに主に現れている。コークス層は、以下のように形成される。約150℃で、酸源がポリオールをエステル化可能であり且つ脱水剤として機能できる酸を生成し、わずかに高い温度では、酸が炭素源とエステル化反応を行い、系におけるアミン基がエステル化反応の触媒として反応を促進し、エステル化反応の前及びエステル化過程に系が融解し、反応過程に生成された不燃性ガスが融解した系を膨張して発泡させ、それと同時に、ポリオールとエステルが脱水して炭化し、無機物及び炭素残留物を形成し、系がさらに発泡し、反応がほぼ完了するとき、系がゲル化して硬化し、最終的に多孔質発泡炭素層を形成する。
【0007】
水性ポリウレタン塗料は、水性ポリウレタン樹脂を基材、水を分散媒とする塗料である。架橋により変性された水性ポリウレタン塗料は、良好な貯蔵安定性、塗膜の機械的性質、耐水性、耐溶剤性及び耐老化性を有し、且つ、従来の溶剤系ポリウレタン塗料の性能と類似しており、水性ポリウレタン塗料の重要な開発方向である。主に、熱硬化性ポリウレタン塗料とブロックイソシアネート含有水性ポリウレタン塗料などの複数の種類がある。
【0008】
ブロックトイソシアネート含有水性ポリウレタン塗料の成膜原料は、ポリイソシアネート成分とヒドロキシル含有成分から構成される。ポリイソシアネートは、フェノール又は単官能基として活性水素原子を含む他の化合物によってブロックされているため、2つの部分が反応せずに結合して、単一成分塗料になることができ、且つ、優れた貯蔵存安定性を有する。ポリイソシアネート成分は、フェノール、マロン酸エステルやカプロラクタムなどのブロッキング剤と反応してウレタン結合を形成し、ウレタン結合は、加熱されると分解してイソシアネートを形成し、さらにヒドロキシル成分と反応してポリウレタンを生成する。したがって、ブロック型ポリウレタン水性塗料の成膜は、主に異なる構造のウレタン結合の熱安定性の違いを利用して、弱いウレタン結合をより安定的なウレタン結合に置き換えることである。ブロッキング剤は、多くの種類があるが、芳香族イソシアネート水性ポリウレタン塗料には、主にフェノール又はクレゾールが使用される。脂肪族水性ポリウレタン塗料は、変色を避けるためにフェノールを使用せず、乳酸エチル、カプロラクタム、マロン酸ジエチル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどを使用できる。
【0009】
有機溶剤系PUと比較して、水性PUは、使用コストが低く、公害がなく、処置しやすく、粘着効果が高く、接着剤及び塗料業界で将来性が期待できる。PUイオンポリマーは、天然ゴムや合成ゴムの両方の表面に対して良好に接着性を示し、履物の製造に使用され得る。水性PUは、主に家具用塗料、電気泳動塗料、電着塗料、建築用塗料、紙処理塗料、ガラス繊維塗料などに使用され、そのほか、水性塗料は、安全ガラスの中間膜として使用されて、自動車、飛行機、船や航空宇宙機器で広く使用されている破裂しない安全ガラスを製造するなど、いくつかの特別な用途がある。水性分散体は、主に、車体の耐食性を向上させるための自動車用プライマーで広く使用されているカチオン電着塗料などの金属塗料として使用される。
【0010】
中国特許201811556512.0は、ホウ素−窒素−リン系複合膨張性難燃剤及びその
調整方法を開示しており、ポリプロピレン材料と膨張性難燃剤を十分に完全に混合するステップ(1)と、二軸スクリュー押出機で押出造粒して、混合固体粒子を形成し、前記ホウ素−窒素−リン系複合膨張性難燃剤を得るステップ(2)とを含む。本発明は、配合法でポリリン酸アンモニウム、ペンタエリスリトール、ホウ酸及びメラミンを原料として用いることによって、添加量が少なく、難燃効率が高く、材料適合性が良好であり、溶融滴下の発生を抑制し、低毒性であり環境にやさしいなどの特徴を有する窒素−リン系複合膨張性難燃剤を得る。主な欠点は、難燃剤が配合されているため、機械的性質が低下し、つまり、無機材料であるポリリン酸アンモニウムと有機材料であるポリアクリル酸が混合するので、相溶性の低下を引き起こしやすく、また、配合したものであるから、ポリプロピレンとの溶融混合に適するが、水性反応には適していないことである。
【0011】
中国特許201710275245.9は、ハロゲンフリー窒素−リン系複合膨張性難燃剤及びその
調整方法に関するものであり、窒素及びリンを主成分とした複合難燃剤である。当該製品は、特殊な配合成分及びプロセスで製造され、難燃効果が顕著であり、白色(結晶又はアモルファス)粉末の外観を有する混合物であり、PーN相乗効果により、PPに対して難燃効果を果たし、難燃性に優れて、熱安定性が高く、分解温度が280℃を超え、チャー生成率が高く、吸湿性が低く、極めて優れた分散性を有し、化学的安定性が良好であり、化学変化を引き起こしにくくて他の物質と混合できる。主な欠点は、複合難燃剤であるため、材料の機械的性質の一部の低下を引き起こしやすいことにある。
【0012】
中国特許201410325853.2は、難燃性水性ポリウレタン塗料の
調整方法を開示しており、ジブチル錫ジラウレート触媒の作用により10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドをヘキサメチレンジイソシアネートと混合し、90〜110℃で1〜4h反応させた後、反応系に窒素リン化合物を加えて、70〜110℃で30〜60min反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得て、ポリウレタンプレポリマーに鎖延長剤とブタノン溶媒を加え、60〜85℃の条件で2〜5h反応させ、トリエチルアミンを加えて20〜40minの中和反応を行い、水を加えて乳化して、水性ポリウレタンを形成し、マンガン塩分散液、5−ヒドロキシトリプトファン、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン及びγ−ジビニルトリアミンプロピメチルジメトキシシランをポリウレタンに添加し、pH7の条件で、せん断撹拌を30〜80min実施して、難燃性水性ポリウレタン塗料を得る。得られたポリウレタンは、難燃性や機械的性質がともに大幅に向上する。主な欠点は、得られたポリウレタンの有炎燃焼時間と煙濃度が比較的大きく、安全性に関するリスクを引き起こしやすい。
【0013】
前記のとおり、従来の水性ポリウレタン塗料は、難燃性が悪く、従来の研究によれば、その有炎燃焼時間と煙濃度が大きく、また、プラスチックとしてのポリウレタンは、燃焼プロセスに溶融滴下が発生して、二次災害を引き起こしやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】中国特許出願公開第109438852号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第106939088号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第104046224号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、窒素―リン系膨張性難燃剤の調製及び水性ポリウレタン塗料の
調整方法への応用を提供することを目的とし、解決しようとする技術的課題は、従来の複合又は疎水性膨張性難燃剤の代替品として水性窒素−リン系膨張性難燃剤を合成し、且つ、水性ポリウレタン塗料の難燃性指標(主な指標は、酸素指数、煙濃度、有炎燃焼時間及び無炎燃焼時間である)をさらに改善又は向上させ、また、燃焼するときの溶融液滴の発生及びその滴下を効果的に抑制し、耐火性を有し、溶融滴下を低減させる水性ポリウレタン塗料を得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の技術案は、以下のとおりである。
【0017】
窒素−リン系膨張性難燃剤の
調整方法であって、
亜リン酸ジメチル、アルカリ性触媒であるナトリウムメトキシド及びアクリルアミドを混合した後、70〜90℃の温度で3〜5h反応させ、3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドを中間体として得て、中間体を降温してチャー形成剤及び物質Aを加え、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、撹拌しながら溶液のpHを6.5〜7.0に安定化させ、次に、物質B及び物質Cを加えて、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、濃縮させて窒素−リン系膨張性難燃剤を得て、
前記チャー形成剤は、トリメチルクロロシラン、シアヌル酸クロリド及びトリメチロールプロパンのうちのいずれか1種であり、
前記物質Aは、酒石酸カリウムナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム及びp−ニトロ安息香酸のうちのいずれか1種であり、
前記物質Bは、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、無水イタコン酸及びシトラコン酸のうちのいずれか1種であり、
前記物質Cは、1,3,5−トリアジン、インドール−3−アセトアミド及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルのうちのいずれか1種である、ことを特徴とする。
【0018】
亜リン酸ジメチル1molに、亜リン酸ジメチルの質量に対して10%のアルカリ性触媒であるナトリウムメトキシドを加え、次に、アクリルアミド0.9〜1.2molを加えて、70〜90℃で3〜5h反応させ、3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドを中間体Aとして得て、中間産物の温度を50℃〜55℃に下げて、チャー形成剤0.9〜1.3mol及び物質A 0.1molを加え、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、撹拌しながら溶液のpHを6.5〜7.0に調整し、さらに、物質B 3.1〜8.7g及び物質C 0.2g〜0.4gを加えて、60〜80℃で2〜5h撹拌して反応させ、固形分90%以上となるまで濃縮させて、窒素−リン系膨張性難燃剤を得るステップを含む。
【0019】
前記窒素−リン系膨張性難燃剤を用いた水性ポリウレタン塗料の
調整方法であって、ジオール、イソシアネート及びジブチル錫ジラウレートを反応させてポリウレタンプレポリマーを得て、ポリウレタンプレポリマーに親水性鎖延長剤、前記窒素−リン系膨張性難燃剤及びアセトン溶剤を加えて反応させ、次に、トリエチルアミンを加えて中和し、最後に、水を加えて乳化して親水性ポリウレタン塗料を得ることを特徴とする。
【0020】
撹拌装置、温度制御表示装置及び凝縮管を備えた容器に、ジオール45g、イソシアネート21.6g〜24.8g及びジブチル錫ジラウレート0.12g〜0.15gを加えて、60〜80℃で2h〜4h反応させ、次に、ポリペプチド0.5〜0.7gと2−tert−ブチル−p−クレゾール0.2〜0.4gを加えて、50〜70℃で1〜2h撹拌して反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得るステップと、
ポリウレタンプレポリマーに、親水性鎖延長剤2.2g〜3.4g、前記窒素−リン系膨張性難燃剤1.3g〜1.7g、及びアセトン溶剤6.1〜8.2gを加えて、60〜80℃の条件で1h〜2h反応させるステップと、
さらに、ポリペプチド0.6〜1.2g及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド0.2〜0.4gを加えて、50〜60℃で1〜2h撹拌して反応させ、次に、トリエチルアミン2.0〜4.5gを加えて中和し、最後に、水150g〜160gを加えて20〜40min乳化し、親水性ポリウレタン塗料を得るステップと、を含む。
【0021】
好ましくは、ジオールは、ポリカーボネートジオール又はヘキサンジオールである。
【0022】
好ましくは、前記ポリカーボネートジオールの重量平均分子量が2000である。
【0023】
好ましくは、イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0024】
好ましくは、前記親水性鎖延長剤は、ジメチロールプロピオン酸である。
【0025】
好ましくは、前記ポリペプチドの
調整方法は、以下のとおりである。クロム含有革屑10g、水200〜240g、酸化カルシウム6〜8g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6〜0.7gを混合して、6〜8h撹拌して前処理を行い、次に、酸化カルシウム5〜6gを加え、70〜90℃に昇温して5〜6h撹拌し、加水分解液を得て一回目の吸引ろ過を行い、吸引ろ過済みの加水分解液にシュウ酸を加えて加水分解液のpH値を6.5〜7.5に調整し、さらに吸引ろ過して、静置し、吸引ろ過液が安定的になると、沈殿を濾別して、吸引ろ過液をベークして、ポリペプチドを得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0027】
(1)、本発明は、従来の膨張性難燃剤の利点を組み合わせて、水性窒素−リン系膨張性難燃剤を合成し、窒素−リン系膨張性難燃剤の良好な難燃効果を利用して、水性ポリウレタン塗料の難燃性を向上させる。従来の難燃には、大量の煙を放出して燃焼領域の酸素濃度を下げることで難燃の目的を達成する難燃方式と、放出される煙が十分に少なく、有炎燃焼時間を短縮することにより難燃効果を達成する難燃方式とがあり、前者の場合は、火災において人の窒息死亡を引き起こす主な原因である煙が放出される。後者は、最も理想的な処理方法であり、本発明の主な目標でもある。
【0028】
(2)、本発明は、亜リン酸ジメチル及びアクリルアミドをアルカリ性触媒の作用により反応させて、中間体3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドを生成し、チャー形成剤(トリメチルクロロシラン、シアヌル酸クロリド、トリメチロールプロパン)の作用により窒素−リン系膨張性難燃剤を得るものであり、窒素−リン系膨張性難燃剤は、酸源、ガス源及び炭素源の3つの部分から構成されるため、燃焼プロセスに酸源の作用により加熱されるとチャー形成剤が炭化して比較的緻密な炭化層を形成し、また、緻密な炭化層の形成により加熱で放出されたガスが緻密な炭化層から放出できず、炭化層を膨張させて膨張系を形成する。
【0029】
(3)、窒素−リン系膨張性難燃剤の炭化層の緻密性は、難燃の重要な要素の1つであり、酒石酸カリウムナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム及びp−ニトロ安息香酸を用いて炭化層の緻密性(チャー生成率によりも示される)を向上させ、外部の熱量と被燃焼物の接触を防ぎ、また、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、無水イタコン酸及びシトラコン酸を使用して燃焼プロセスの有炎燃焼時間を短縮させ、被燃焼物における炎を迅速に窒息させ、1,3,5−トリアジン、インドール−3−アセトアミド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルで燃焼により放出される煙を減らし、このように、煙の放出、有炎燃焼時間の制御、炭層の緻密性の点から窒素−リン系膨張性難燃剤の難燃性を向上させる。
【0030】
(4)、本発明は、窒素−リン系膨張性難燃剤をポリウレタンにグラフトすることで、ポリウレタンの難燃性をさらに改善し、難燃剤とポリウレタンを一体化するという効果を達成し、ポリウレタンの元の特性を維持するとともに、難燃効果を果たすことに有利である。
【0031】
(5)ポリウレタンが燃焼するときの最大の欠点は、溶融滴下が発生して、二次災害を引き起こすことにある。本発明では、クロム含有革屑が加水分解して得たポリペプチドでポリウレタンを変性し、且つ2−tert−ブチル−p−クレゾール、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを使用してポリペプチドとポリウレタンの結合を促進し、ポリペプチドが樹脂鎖の分岐鎖に均一に分散されるようにし、調製されたポリウレタン樹脂の燃焼によって生成される溶融滴下量がさらに減少し、2−tert−ブチル−p−クレゾールがポリウレタンプレポリマーにおいてポリペプチドと反応し、プレポリマーの溶融滴下を低減させ、2−tert−ブチル−p−クレゾールは、ポリウレタンの溶融液滴の滴下を抑制し、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドは、ポリペプチドと相乗作用してポリウレタンの溶融滴下を低減させ、その中、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドは、溶融滴下の低減を促進する効果を奏する。
【0032】
(6)本発明の難燃剤は、水性であり、チャー生成率が高く、膨張高さが大きく、環境に優しく、無毒であるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、具体例、比較例及び技術的効果のデータを参照しながら本発明をさらに説明する。
【0034】
実施例1
(1)、窒素−リン系膨張性難燃剤の調製
亜リン酸ジメチル1molに、アルカリ性触媒として亜リン酸ジメチルの重量の1/10のナトリウムメトキシドを加え、次に、アクリルアミド0.9molを加えて、70℃の反応温度で3h反応させ、3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドである中間体Aを得て、中間産物の温度を50℃に下げて、トリメチルクロロシラン0.9mol及び酒石酸カリウムナトリウム0.1molを加え、60℃で2h撹拌して反応させ、撹拌しながら水酸化ナトリウムで溶液のpHを調整し、溶液のpHを6.5−7.0に安定化させ、次に、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン3.1g及び1,3,5−トリアジン0.2gを加えて、60℃で2h撹拌して反応させ、固形分90%(92%以下)となるまで濃縮させて、当該窒素−リン系膨張性難燃剤を得た。
【0035】
(2)、撹拌パドル、温度計、凝縮管を備えた500mlの三口フラスコに、分子量2000のポリカーボネートジオール45g、イソホロンジイソシアネート21.6g、ジブチル錫ジラウレート0.12gを加えて、60℃で2h反応させ、次に、ポリペプチド0.5gと2−tert−ブチル−p−クレゾール0.2gを加えて、50℃で1h撹拌して反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得た。ポリウレタンプレポリマーに親水性鎖延長剤としてジメチロールプロピオン酸2.2g及びステップ(1)の窒素−リン系膨張性難燃剤1.3g、アセトン溶剤6.1gを加えて、60℃の条件で1h反応させた。さらに、ポリペプチド0.6g及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド0.2gを加えて、50℃で1h撹拌して反応させ、次に、トリエチルアミン2.0gで中和し、水150gを加えて20min乳化し、水性ポリウレタン塗料を得た。
【0036】
前記ポリカーボネートジオールの重量平均分子量は、2000である。
【0037】
前記ポリペプチドの
調整方法は、以下のとおりである。クロム含有革屑(文登制革廠製牛皮革屑、三酸化クロム4%未満、下同)10g、水200g、酸化カルシウム6g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gを混合して、6h撹拌して前処理を行い、次に、酸化カルシウム5gを加え、70℃に昇温して5h撹拌し、加水分解液を得て一回目の吸引ろ過を行い、吸引ろ過済みの加水分解液にシュウ酸を加えて加水分解液のpH値を6.5〜7.5に調整し、さらに吸引ろ過して、静置し、吸引ろ過液が安定的になると、沈殿を濾別して、吸引ろ過液をベークして、ポリペプチドを得た。
【0038】
実施例2
(1)、窒素−リン系膨張性難燃剤の調製
亜リン酸ジメチル1molに、アルカリ性触媒として亜リン酸ジメチルの重量の1/10のナトリウムメトキシドを加え、次に、アクリルアミド1.2molを加えて、90℃の反応温度で5h反応させ、3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドである中間体Aを得て、中間産物の温度を55℃に下げて、シアヌル酸クロリド1.3mol及びニトリロ三酢酸ナトリウム0.1molを加え、80℃で5h撹拌して反応させ、撹拌しながら水酸化ナトリウムで溶液のpHを調整し、溶液のpHを6.5−7.0に安定化させ、次に、無水イタコン酸8.7g及びインドール−3−アセトアミド0.4gを加えて、80℃で5h撹拌して反応させ、固形分90%(92%以下)となるまで濃縮させて、該窒素−リン系膨張性難燃剤を得た。
【0039】
(2)、撹拌パドル、温度計、凝縮管を備えた500mlの三口フラスコに、ヘキサンジオール45g、ヘキサメチレンジイソシアネート24.8g、ジブチル錫ジラウレート0.15gを加えて、80℃で4h反応させ、次に、ポリペプチド0.7gと2−tert−ブチル−p−クレゾール0.4gを加えて、70℃で2h撹拌して反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得た。ポリウレタンプレポリマーに親水性鎖延長剤としてジメチロールプロピオン酸3.4g及びステップ(1)の窒素−リン系膨張性難燃剤1.7g、アセトン溶剤8.2gを加えて、80℃の条件で2h反応させた。さらに、ポリペプチド1.2g及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド0.4gを加えて、60℃で2h撹拌して反応させ、次に、トリエチルアミン4.5gで中和し、水160gを加えて40min乳化し、親水性ポリウレタン塗料を得た。
【0040】
前記ポリペプチドの
調整方法は、以下のとおりである。クロム含有革屑10g、水240g、酸化カルシウム8g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7gを混合して、8h撹拌して前処理を行い、次に、酸化カルシウム6gを加え、90℃に昇温して6h撹拌し、加水分解液を得て一回目の吸引ろ過を行い、吸引ろ過済みの加水分解液にシュウ酸を加えて加水分解液のpH値を6.5〜7.5に調整し、さらに吸引ろ過して、静置し、吸引ろ過液が安定的になると、沈殿を濾別して、吸引ろ過液をベークして、ポリペプチドを得た。
【0041】
実施例3
(1)、窒素−リン系膨張性難燃剤の調製
亜リン酸ジメチル1molに、アルカリ性触媒として亜リン酸ジメチルの重量の1/10のナトリウムメトキシドを加え、次に、アクリルアミド1.05molを加えて、80℃の反応温度で4h反応させ、3−ジメトキシホスホリルプロピオンアミドである中間体Aを得て、中間産物の温度を50℃に下げて、トリメチロールプロパン1.1mol及びp−ニトロ安息香酸0.1molを加え、70℃で3.5h撹拌して反応させ、撹拌しながら水酸化ナトリウムで溶液のpHを調整し、溶液のpHを6.5−7.0に安定化させ、次に、シトラコン酸5.9g及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル0.3gを加えて、70℃で3.5h撹拌して反応させ、固形分量90%(92%以下)となるまで濃縮させて、当該窒素−リン系膨張性難燃剤を得た。
【0042】
(2)、撹拌パドル、温度計、凝縮管を備えた500mlの三口フラスコに、ポリカーボネートジオール45g、イソホロンジイソシアネート23.2g、ジブチル錫ジラウレート0.13gを加えて、70℃で3h反応させ、次に、ポリペプチド0.6gと2−tert−ブチル−p−クレゾール0.3gを加えて、60℃で1.5h撹拌して反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得た。ポリウレタンプレポリマーに親水性鎖延長剤としてジメチロールプロピオン酸2.8g及びステップ(1)の窒素−リン系膨張性難燃剤1.5g、アセトン溶剤7.1gを加えて、70℃の条件で1.5h反応させた。さらに、ポリペプチド0.9g及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド0.3gを加えて、55℃で1.5h撹拌して反応させ、次に、トリエチルアミン3.2gで中和し、水155gを加えて30min乳化し、親水性ポリウレタン塗料を得た。
【0043】
前記ポリペプチドの
調整方法は、以下のとおりである。クロム含有革屑10g、水220g、酸化カルシウム7g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.65gを混合して、7h撹拌して前処理を行い、次に、酸化カルシウム5.5gを加え、80℃に昇温して5.5h撹拌し、加水分解液を得て一回目の吸引ろ過を行い、吸引ろ過済みの加水分解液にシュウ酸を加えて加水分解液のpH値を6.5〜7.5に調整し、さらに吸引ろ過して、静置し、吸引ろ過液が安定的になると、沈殿を濾別して、吸引ろ過液をベークして、ポリペプチドを得た。
【0044】
チャー生成率及び膨張高さの測定
サンプル1gを秤量して、使用される坩堝の質量の変化を記録し、サンプルを加えた坩堝をマッフル炉に入れて、450℃になると、坩堝を取り出し、このときのサンプルの高さ及び加熱後の坩堝の質量M1を測定した。
【0045】
ASTM E 662及びGB8323−87のいずれにも煙濃度測定方法が規定され、この方法は、米国国立標準局(NBS)(現在のアメリカ国立標準技術研究所、NITS)により開発され、使用される設備は、煙濃度ボックスである。7.6cm×7.6cm×2.5cmの試料を91cm×91cm×63cmのボックスに垂直に固定し、加熱器により発生する熱の流量が25kW/m
2であった。試験を行うときに、試料をボックスにおいて燃焼させて煙を発生させ、煙を透過した平行ビームの透光率の変化を測定し、次に比光学密度、すなわち、単位面積の試料により発生した煙が単位容積の煙ボックスの単位光路長まで拡散した場合の煙濃度を計算し、Dsで示した。
【0046】
GB/T5455−1997『織物燃焼性能垂直試験法』によってポリウレタン塗料からなる膜の有炎燃焼時間(残炎時間)を測定した。
【0047】
窒素−リン系膨張性難燃剤の性能
【表1】
【0048】
比較サンプル2は、中国特許201710275245.9の実施例2で調製される難燃剤であり、従来の窒素−リン系膨張性難燃剤のほとんとは、水に不溶であり、ポリウレタンの合成に使用しにくく、本発明の難燃剤は、チャー生成率も膨張高さも良好であり、本発明で得られた難燃剤及び比較サンプルは、すべてベークした条件で比較した。
【0049】
水性ポリウレタン塗料からなる膜の性能
【表2】
【0050】
比較サンプル1は、中国特許201410325853.2の実施例2であり、有炎燃焼時間及び煙濃度の指標が引例1の実施例2よりも優れ、燃焼時の溶融滴下現象については、有炎燃焼において燃焼時の加熱による膜の変化を観察した。本発明の煙濃度等級を調べて、ポリウレタン塗料膜の煙放出特性を示した。
窒素−リン系膨張性難燃剤の性能(物質A未添加)
【0052】
表3から明らかなように、物質A未添加の場合は、チャー生成率がある程度低下し、その結果、一部の気体が放出されるため、膨張高さが低下した。
【0053】
水性ポリウレタン塗料からなる膜の性能(物質B未添加)
【表4】
【0054】
表4から明らかなように、物質B未添加の場合は、有炎燃焼時間が向上し、煙濃度には変化が有意ではなかった。
【0055】
水性ポリウレタン塗料からなる膜の性能(物質C未添加)
【表5】
【0056】
表5から明らかなように、物質C未添加の場合は、煙濃度等級が大幅に向上した。
【0057】
水性ポリウレタン塗料からなる膜の性能(上記物質のいずれか未添加)
【表6】
【0058】
表6から明らかなように、上記物質のいずれかを添加しない場合、溶融液滴が発生して滴下し、そのため、上記ポリペプチド、2−tert−ブチル−p−クレゾール及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドの相乗作用が必要であり、それによって、微量の溶融液滴が発生したが、滴下しない効果を果たした(たとえば、テリレンの燃焼効果)。
【要約】
【課題】炎を迅速に窒息させ、煙の放出、有炎燃焼時間の制御、チャー層の緻密性の点から窒素−リン系膨張性難燃剤の難燃性を向上させる。また、本発明は、窒素−リン系膨張性難燃剤をポリウレタンにグラフトすることで、ポリウレタンの難燃性をさらに改善する。
【解決手段】窒素−リン系膨張性難燃剤の調製及び水性ポリウレタン塗料の調製方法への応用に関し、亜リン酸ジメチル、アルカリ性触媒であるナトリウムメトキシド及びアクリルアミドを混合して反応させて中間体を得て、チャー形成剤及び物質Aを加え、撹拌しながら溶液のpHを6.5〜7.0に安定化させ、次に、物質B及び物質Cを加えて、さらに撹拌して反応させ、濃縮させて窒素−リン系膨張性難燃剤を得て、窒素−リン系膨張性難燃剤を用いて水性ポリウレタン塗料を調製する。