(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773362
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】経口摂取又は投与用皮膚保湿剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/9066 20060101AFI20201012BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20201012BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
A61K36/9066
A61K31/12
A61P17/16
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-214622(P2015-214622)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-81874(P2017-81874A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和希
(72)【発明者】
【氏名】小原 達矢
(72)【発明者】
【氏名】室山 幸太郎
【審査官】
鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−075632(JP,A)
【文献】
特許第5543651(JP,B2)
【文献】
特開2006−166807(JP,A)
【文献】
特開2002−136267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/9066
A61K 31/00−33/44
A61K 8/9789
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウコン(Curcuma longa LINNE)の水抽出物を含有し、前記抽出物がビサクロンを含有し、前記抽出物中のクルクミン含有量が0.5重量%以下であることを特徴とする、経口摂取又は投与用皮膚保湿剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は他の動物により経口摂取又は投与されて皮膚での保湿作用を発揮する皮膚保湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は表皮と真皮とから構成される。表皮の機能の一つは体内から水分が逃げないようにする水分保持機能である。一方、真皮は、細胞が少なく、細胞外マトリックスと水とを主成分とする。細胞外マトリックスは、コラーゲン線維、エラスチン線維等の皮膚の張りや弾力性に関わるタンパク質線維や、保水性の維持に重要なプロテオグリカン(ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸等)の基質により構成される。真皮に含まれる細胞の1つが線維芽細胞であり、線維芽細胞は細胞外マトリックス成分を合成しており、線維芽細胞の活動状態が細胞の張りや弾力性に重要な影響を及ぼす。
【0003】
皮膚の老化は、加齢に伴い顕著になる、皮膚のシワ、シミ、タルミ等の現象を含む。
非特許文献1によれば、老化の原因には外的因子と内的因子とがあり、皮膚の老化を促進する外的因子としては紫外線、酸化、乾燥が挙げられ、内的因子としては女性ホルモンの減少、血流量減少、メンタル面でのストレスが挙げられる。これらの因子が関与して、皮膚の老化が生じる。
【0004】
皮膚の乾燥が生じる原因としては多数知られており、非特許文献1には以下の原因が挙げられている。
【0005】
(表皮の皮脂層の減少)皮脂膜は皮膚の水分を保ち、蒸発を防ぐ役割がある。加齢とともに皮脂膜が減少すると皮膚の乾燥が生じる。
【0006】
(表皮の細胞のターンオーバーの低下による、バリア機能の増大)皮脂層の下の角質層は、ケラチノサイト由来の角質細胞と、細胞間脂質(セラミド、コレステロール、脂肪酸)とから構成される。加齢とともにケラチノサイトの増殖が低下するため表皮が薄くなる。一方で、加齢とともに細胞のターンオーバー時間が延長し角質層は厚くなり、体内から表皮を介して失われる水分量は低下し、バリア機能はむしろ増す。この結果、老人では、皮膚のバリア機能が高くなり、外気の乾燥により皮膚表面が乾燥したときに、体内から表皮を介しての角質層への水分補給が少なく、皮膚の乾燥を食い止めることができない。
【0007】
(表皮でのセラミド量の減少)加齢とともにセラミド量が減少すると角質水分量は低下し、皮膚の乾燥と柔軟性の低下につながる。
【0008】
(表皮でのNMFの減少)加齢とともに、NMF(自然保湿因子)の前駆物質であるフィラグリンの分解に由来するアミノ酸量が低下し、角質層の保湿機能が損なわれることによっても、皮膚の乾燥と柔軟性の低下につながる。
【0009】
(真皮での細胞外マトリックス量の減少)真皮では、加齢とともに、細胞外マトリックスを産生する線維芽細胞の増殖能が減少し、細胞外マトリックスの量も減少し、組織の代謝が遅くなり、皮膚の張りや弾力が失われ、水分の保持がされなくなり、乾燥を生じる。
【0010】
また、非特許文献2では皮膚の乾燥の原因として、加齢や日焼けに伴う表皮細胞でのアクアポリン3の発現量の低減が挙げられている。アクアポリン3を含むアクアポリンは表皮細胞の細胞膜に存在し、水チャネルとして機能するタンパク質である。
【0011】
非特許文献1では、皮膚の乾燥を防ぐための既存の技術の類型として複数のものが挙げられている。
(1)表皮の成分であるセラミド、水溶性アミノ酸等を含む美容食品を摂取する。
(2)真皮の成分であるコラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の細胞外マトリックスを含む美容食品を摂取する。
(3)表皮に含まれる表皮角化細胞に対して、増殖促進作用、角化正常化作用、セラミド合成促進作用、フィブリン合成促進作用等を有する皮膚細胞賦活素材や、皮膚細胞代謝活性化素材を摂取する。
(4)真皮に含まれる皮膚線維芽細胞に対して、増殖促進作用、コラーゲン合成促進作用、ヒアルロン酸合成促進作用、コラーゲン分解酵素阻害作用等を有する皮膚細胞賦活素材や、皮膚細胞代謝活性化素材を摂取する。
【0012】
一方、ウコン(
Curcuma longa LINNE)は東南アジアを中心に、世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培されるショウガ科ウコン属の薬用植物である。特許文献1〜9では、下記の通り、ウコンの根茎等の部位の抽出物を経口摂取することにより皮膚の状態を改善する技術が提案されている。
【0013】
特許文献1ではショウガ科ウコン属植物から選択される植物の抽出物を含有する真皮線維芽細胞賦活剤が開示されている。
【0014】
特許文献2ではウコンなどの植物の抽出物を有効成分として含有するATP産生促進剤及び表皮細胞賦活化剤が開示されている。特許文献2では皮膚の保湿機能や弾力性の低下は、皮膚の表皮細胞の活動低下や分裂能低下に伴う表皮ターンオーバー速度の遅延が、皮膚の菲薄化や角質層肥厚などの分化不全を引き起こすことにより生じるという認識のもと、ATP産生促進剤及び表皮細胞賦活化剤を提供している。
【0015】
特許文献3ではウコン等の植物より水もしくは低級アルコールまたは低級アルコール水溶液により抽出された抽出物等を有効成分として含有するムコ多糖類断片化抑制剤が開示されている。ムコ多糖類はヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸などを包含する。ムコ多糖類は皮膚の真皮内の主要成分であり、活性酸素及び紫外線によって断片化されると皮膚の老化に結びつくと特許文献3には記載されている。
【0016】
特許文献4ではセリ、サンシン、ショウキョウ、コウカ、ウコン及びヨクイニンからなる生薬混合物の水又は水性アルコール抽出エキスを有効成分とする皮膚賦活食品が開示されている。特許文献4では上記食品を実際にヒトが経口摂取し皮膚の肌荒れ、しみ、かゆみが改善したことが確認されている。
【0017】
特許文献5では発酵ウコンの抽出物を含む抗老化剤が開示されている。特許文献5の抗老化剤は皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかの作用を有する。
【0018】
特許文献6ではショウガ科ウコン属(Curcuma属)植物の地下茎の芽の抽出物を有効成分とする、美白剤、抗酸化剤、皮膚外用剤、機能性経口組成物が開示されている。
【0019】
特許文献7ではウコンの抽出物を含有するNF−κB活性化抑制剤が開示されている。特許文献7によれば、NF−κB活性化抑制剤は、皮膚剥離、肥厚、肌荒れ、きめの乱れ、色素沈着、真皮構成成分の変性・破壊又はかゆみの予防・改善等の効果を有するため、皮膚の生理的加齢及び光老化に伴う症状の予防、改善に有用であるとされている。
【0020】
特許文献8ではウコン抽出物を含むエラスターゼ活性阻害剤が開示されている。特許文献8の発明は、エラスターゼの活性を抑えて皮膚のハリ、弾力を回復・維持することにより、皮膚の老化を防止し、シワやタルミのない若々しい肌を保つ効果を奏することを目的とする。
【0021】
特許文献9では、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)の抽出物が抗しわ剤および/または抗老化剤の例として記載されている。
【0022】
特許文献1〜3、5〜9では、各文献で所定のウコン由来材料を含む組成物が化粧料等の皮膚に外用する形態だけでなく、経口摂取される飲食品の形態であってもよいと記載されているが、実際に経口摂取して目的とする効果を達成できることは確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2004−75632号公報
【特許文献2】特開2009−256272号公報
【特許文献3】特開平6−24937号公報
【特許文献4】特開昭59−106277号公報
【特許文献5】特開2009−242263号公報
【特許文献6】特開2011−246375号公報
【特許文献7】特開2005−192246号公報
【特許文献8】特開2002−205950号公報
【特許文献9】特表2013−533226号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】美容食品の効用と展望、シーエムシー出版、猪居武監修
【非特許文献2】美肌食品素材の評価と開発、シーエムシー出版、山本哲郎監修
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
非特許文献1に記載の通り、皮膚の乾燥は皮膚の老化(シワ、シミ、タルミ等)の原因の一つであるため、皮膚の水分を上昇させる又は保持することで皮膚の老化を抑制できる可能性がある。そこで経口摂取により皮膚の水分を上昇させる又は保持することを可能にする手段が求められている(なお本明細書では、皮膚の水分を上昇させること、又は皮膚の水分を保持することを皮膚の保湿という。ここで水分の「保持」には、水分の減少を抑制することも含む。)。
【0026】
ところが皮膚の乾燥は、上記の通り、表皮及び真皮における様々な要因により生じるものであり、特定の1つの原因にのみによるものではないため、皮膚の保湿を実現するための手段の提供は容易なことではない。非特許文献1では経口摂取により皮膚の乾燥を防ぐ手段として前記4種の類型が挙げられているが、皮膚の乾燥を生じる種々の要因のうち1つだけを取り除いたとしても、皮膚の乾燥を防ぐことはできない。
【0027】
特許文献1〜5、7及び8に記載されているウコン由来成分を含有する組成物は皮膚の保湿を意図した組成物ではない。これらの組成物は、非特許文献1に記載の前記類型のいずれかに類似した作用を有するが、皮膚の乾燥を生じる種々の要因の幾つかを個別に解消するに過ぎず、皮膚の保湿を実現することができるかどうかは全く予想することができない。
【0028】
特許文献6ではショウガ科ウコン属植物の地下茎の芽の抽出物が美白作用及び抗酸化作用を有することが記載されており、特許文献9ではクルクマ・ロンガの抽出物が抗しわ剤および/または抗老化剤として有用であると記載されている。しかし、皮膚の老化は、非特許文献1に記載の通り、紫外線、酸化、乾燥等の外的因子と、女性ホルモンの減少、血流量減少、メンタル面でのストレス等の内的因子とが原因となって生じるものであるから、特許文献6及び9に記載の組成物による美白作用及び抗しわ作用、すなわち抗老化作用が、皮膚の保湿を通じて実現したものであるか否かは不明である。
【0029】
本発明は、経口摂取又は投与により皮膚を保湿することを可能にする新たな手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するための手段として本発明者らは以下の方法が有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)ウコン抽出物を含有することを特徴とする、経口摂取又は投与用皮膚保湿剤。
(2)前記ウコン抽出物がビサクロンを含有する、(1)の経口摂取又は投与用皮膚保湿剤。
(3)ビサクロンを含有することを特徴とする、経口摂取又は投与用皮膚保湿剤。
【発明の効果】
【0031】
本発明の経口摂取用皮膚保湿剤は、経口摂取又は経口投与することにより皮膚を保湿することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ビサクロンを含有するウコン抽出物を摂取したヘアレスマウスの群と対照群とのUV−B照射後3日目及び4日目の皮膚水分量の測定結果を示す。皮膚水分量を、UV−B照射前の各群の皮膚水分量を100とした平均値±標準偏差の値で示す。*は対照群に対してp<0.05で有意に高いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の皮膚保湿剤は、少なくともウコン抽出物又はビサクロンを含有することを特徴とする。
本発明の皮膚保湿剤は、ウコン抽出物又はビサクロン以外の成分を含んでも良い。
本発明の皮膚保湿剤は、一実施形態では、ウコン抽出物又はビサクロンからなる。
本発明の皮膚保湿剤は、少なくとも1種の他の成分とともに皮膚保湿剤組成物として製剤化することができる。
【0034】
本発明において、「含有する」とは、混合状態又は併存状態を含む。併存状態とは、使用前はそれぞれが分離されているが併存した組み合わせ状態にあって、使用時に混合して使用する状態をいう。
【0035】
<ウコン抽出物>
本発明においてウコン抽出物とは、ショウガ科ウコン属の植物に由来する植物原料の抽出溶媒による抽出物(ウコンエキス)をいい、必要に応じてさらに加熱及び/又は減圧等により抽出溶媒を揮発し、乾燥させたものであってもよい。これらの加熱、減圧、乾燥の方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法を使用することができる。
【0036】
前記植物原料としては、ショウガ科ウコン属の植物であるCurcuma longa(ウコン)、Curcuma aromatica、Curcuma zedoaria、Curcuma phaeocaulis、Curcuma kwangsiensis、Curcuma wenyujin、及び/又は、Curcuma xanthorrhizaの根茎等が挙げられる。これらの根茎は土中から採取したものを使用してよく、根茎の適当な部位を原型のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットしたもの、あるいは粉砕物の形態にしたものを使用することができる。これらの植物原料は適宜乾燥されたものであってよい。植物原料は、好ましくは、発酵処理されたものではない。
【0037】
植物原料からのウコン抽出物の抽出方法は特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。抽出溶媒としては、水及び有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種(2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい)であることが好ましい。有機溶媒としては、ヘキサンなどの疎水性有機溶媒や、アルコール、アセトン等の親水性有機溶媒を使用することができる。抽出溶媒は、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水、親水性有機溶媒、水と親水性有機溶媒の混合溶媒等が特に好ましい。親水性有機溶媒は複数種の親水性有機溶媒の混合溶媒であってもよい。「水」とは温度は特に限定されず熱水も包含する。親水性有機溶媒としては少なくとも1種のアルコール(複数種のアルコールの混合溶媒であってもよい)が好ましく、アルコールとしては、特に限定されないが、エタノールが好ましい。
【0038】
本発明において、親水性有機溶媒と水との混合溶媒を用いる場合、その混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。抽出する際の温度は、特に限定されない。
【0039】
前記抽出溶媒として水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種を用いて抽出されたウコン抽出物は、抽出溶媒として酢酸エチル等の疎水性有機溶媒を用いて抽出されたウコン抽出物と比較して、水溶性のより高い化合物が含有されているものである。従って、これらの抽出物は、含有される成分組成が互いに明らかに異なるものである。
【0040】
本発明では抽出溶媒として水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種を用いて抽出されたウコン抽出物を「水溶性ウコン抽出物」と称することがある。
【0041】
本発明において、ウコン抽出物としては、上述のようにして得られたウコン根茎の抽出物をそのまま使用することができるし、該ウコン根茎の抽出物を、さらに、希釈、濃縮、乾燥等の処理を施したものを使用することもできる。希釈、濃縮、乾燥等の方法は、従来公知の方法を使用することができる。
【0042】
本発明に用いるウコン抽出物は、好ましくは、ビサクロンを含むことを特徴とする。ビサクロンは、ウコン抽出物全量に対して好ましくは0.1重量%以上、好ましくは0.15重量%以上含有される。ウコン抽出物中のビサクロンの量は、ウコン抽出物を酢酸エチルと混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付すことにより求めることができる。
【0043】
本発明においてビサクロンとは、ビサボラン型セスキテルペン類に分類される化合物であり、下記の平面構造式を有する化合物又はその塩を意味する。ビサクロンは平面構造式中*印で示した位置に不斉炭素を有し、そのため数種の光学異性体が存在するが、本明細書におけるビサクロンとはそのいずれの光学異性体も包含する概念である。
【0045】
本発明で用いるウコン抽出物は好ましくはクルクミン含有量が0.5重量%以下であり、より好ましくはクルクミンを含有しない。
【0046】
本発明の皮膚保湿剤は有効成分としてビサクロンを含むものであってもよい。ビサクロンはウコン抽出物から分離され、必要に応じて精製されたものであってもよい。ビサクロンはまた、ウコン以外の他の天然素材から分離されたものや、人為的に合成されたものであってもよい。
【0047】
本発明で用いるウコン抽出物は好ましくはセリ、サンシン、ショウキョウ、コウカ、ウコン、及びヨクイニンからなる生薬混合物の抽出物ではない。
【0048】
<経口摂取又は投与用皮膚保湿剤>
本発明の経口摂取又は投与用皮膚保湿剤は、ヒト又は動物を対象とし、経口摂取又は経口投与により前記対象での皮膚の水分含量を保持する作用及び/又は水分含量の低下を抑制する作用を有する。ここで「経口摂取」とは前記対象が自発的な意思により経口経路で体内に取り入れることを指し、「経口投与」とは対象がヒトである場合は医師等の意思により、対象が動物である場合は飼育者又は獣医師の意思により、経口経路で体内に取り入れることを指す。以下「経口摂取又は投与用皮膚保湿剤」を単に「皮膚保湿剤」と表記する場合がある。
【0049】
本発明の皮膚保湿剤は、皮膚の中でも特に表皮における保湿のために効果的である。従って、本発明の皮膚保湿剤は、より好ましくは、経口摂取又は投与用の表皮保湿剤である。
【0050】
本発明の皮膚保湿剤は、日焼け等によりUV照射を受けた後の皮膚の保湿のために効果的である。従って、本発明の皮膚保湿剤は、より好ましくは、UV照射を受けた後(好ましくは日焼け後)の皮膚のための経口摂取又は投与用皮膚保湿剤である。
【0051】
本発明の皮膚保湿剤がウコン抽出物を含有する実施形態では、皮膚保湿剤中のウコン抽出物の含有量は、特に限定されない。
【0052】
本発明の皮膚保湿剤がビサクロンを含有するウコン抽出物を含有する実施形態では、皮膚保湿剤中のウコン抽出物の含有量は、特に限定されないが、例えば、本発明の皮膚保湿剤の対象1個体(対象がヒトである場合、好ましくは成人1人)あたりの1日の経口摂取又は経口投与量あたり、ビサクロンとして好ましくは0.01〜30mg、より好ましくは0.15〜3mgとなる量である。本発明の皮膚保湿剤は、対象の体重1Kgあたりの1日の経口摂取又は経口投与量がビサクロンとして好ましくは0.17μg〜500μg、より好ましくは2.5μg〜50μgとなる量のウコン抽出物を含有する。
【0053】
本発明の皮膚保湿剤がビサクロンを含有する実施形態では、皮膚保湿剤中のビサクロンの含有量は、特に限定されないが、例えば、本発明の皮膚保湿剤の対象1個体(対象がヒトである場合、好ましくは成人1人)あたりの1日の経口摂取又は経口投与量あたり、ビサクロンとして0.01〜30mg、より好ましくは0.15〜3mgである。本発明の皮膚保湿剤は、対象の体重1Kgあたりの1日の経口摂取又は経口投与量が好ましくは0.17μg〜500μg、より好ましくは2.5μg〜50μgとなる量のビサクロンを含有する。
【0054】
ここで「本発明の皮膚保湿剤の対象1個体あたりの1日の経口摂取又は経口投与量」とは、本発明の皮膚保湿剤が他の成分と組み合わされた組成物の量として0.1g〜500gであり、飲料組成物の形態であれば好ましくは50〜500g又は50〜500mL、最も好ましくは90〜200g又は90〜200mLである。本発明の皮膚保湿剤は、継続的に摂取又は投与して用いてもよいし、必要時に摂取又は投与して用いてもよい。
【0055】
本発明の皮膚保湿剤をそのまま摂取又は投与してもよいし、少なくとも1種の他の成分とともに製剤化して得られる各種組成物の形態で摂取又は投与してもよい。
【0056】
本発明の皮膚保湿剤の経口摂取又は投与により、皮膚の水分量を上昇させ、皮膚の湿潤状態を改善することができる。
【0057】
本発明の皮膚保湿剤はまた、経口摂取又は投与により、皮膚の水分量を保持して、皮膚の恒常性維持、障害予防、障害改善を可能にする。
【0058】
<製剤化>
本発明の皮膚保湿剤が少なくとも1種の他の成分とともに製剤化された組成物は経口摂取又は経口投与により上記の皮膚保湿作用を有する組成物であり、より好ましくは皮膚保湿用組成物である。
【0059】
前記組成物は、本発明の皮膚保湿剤以外の他の成分1種又は2種以上を、さらに含む。前記組成物としては、特に限定されないが、好ましくは、医薬品(ヒト又は動物用)、飲食品、飼料、食品添加剤、飼料添加剤等の、経口経路で摂取又は投与される組成物が挙げられる。
【0060】
他の成分としては、例えば、他の植物抽出物、ビタミン類、食物繊維、果糖ブドウ糖液糖、デキストリン、酸味料、増粘剤、ウコン色素、イノシトール、香料、環状オリゴ糖、甘味料、ミネラル、酸化防止剤、乳化剤、水等が挙げられる。
【0061】
他の植物抽出物としては、サンザシ抽出物、ベニバナ抽出物、ユリネ抽出物等が挙げられる。
【0062】
ビタミン類としては、ナイアシン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンE等が挙げられる。
【0063】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、或いはこれらの塩等が挙げられる。
【0064】
増粘剤としては、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。
【0065】
ウコン色素は、ウコンの根茎部分より、温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、又は室温時〜熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して得られるものであり、主にクルクミンを含むことが好ましい。前記組成物におけるウコン色素の量は、対象1個体あたりの1日の経口摂取又は経口投与量あたり、クルクミンが約3mg〜50mg、より好ましくは約5mg〜40mg、特に好ましくは約6mg〜30mgとなる量のウコン色素が配合されるのがよい。
【0066】
ミネラルとしては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0067】
酸化防止剤としては、ビタミンC、酵素処理ルチン等が挙げられる。
甘味料としては、果糖、ブドウ糖、液糖等の糖類、はちみつ、スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム等の高甘味度甘味料が挙げられる。
【0068】
本発明の皮膚保湿剤が少なくとも1種の他の成分とともに製剤化された経口摂取又は経口投与用の組成物の形状は経口経路に適したものであれば特に限定されず、液体状、半固形状(ゲル状等)、固形状等の各種形態が挙げられる。
【0069】
前記組成物が飲食品である場合、飲料、菓子類(例えば、ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック菓子、ゼリー、グミ、錠菓等)等の一般的な飲食品の形状や、サプリメント等の健康補助食品の形状などであることができる。サプリメントの形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等が挙げられる。これらは、常法に従って製造することができる。
【0070】
本発明の皮膚保湿剤がウコン抽出物を含有する実施形態では、それを含む前記組成物中のウコン抽出物の含有量は、特に限定されない。
【0071】
本発明の皮膚保湿剤がビサクロンを含有するウコン抽出物を含有する実施形態では、それを含む前記組成物中のウコン抽出物の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記組成物の対象1個体(対象がヒトである場合、好ましくは成人1人)あたりの1日の経口摂取又は経口投与量あたり、ビサクロンとして0.01〜30mg、より好ましくは0.15〜3mgとなる量である。前記組成物は、対象の体重1Kgあたりの1日の経口摂取又は経口投与量がビサクロンとして好ましくは0.17μg〜500μg、より好ましくは2.5μg〜50μgとなる量のウコン抽出物を含有する。
【0072】
本発明の皮膚保湿剤がビサクロンを含有する実施形態では、それを含む前記組成物中のビサクロンの含有量は、特に限定されないが、例えば、前記組成物の対象1個体(対象がヒトである場合、好ましくは成人1人)あたりの1日の経口摂取又は経口投与量あたり、ビサクロンとして0.01〜30mg、より好ましくは0.15〜3mgである。前記組成物は、対象の体重1Kgあたりの1日の経口摂取又は経口投与量が好ましくは0.17μg〜500μg、より好ましくは2.5μg〜50μgとなる量のビサクロンを含有する。
【0073】
ここで「前記組成物の対象1個体あたりの1日の経口摂取又は経口投与量」とは、0.1g〜500gであり、飲料組成物の形態であれば好ましくは50〜500g又は50〜500mL、最も好ましくは90〜200g又は90〜200mLである。前記組成物は、継続的に摂取又は投与して用いてもよいし、必要時に摂取又は投与して用いてもよい。
【実施例】
【0074】
<保湿作用の評価>
ヘアレスマウスであるHos:HR−1マウス(雄、5週齢、日本エスエルシー株式会社)を41日間馴化させた後、試験食として、AIN−93G(EPS益新株式会社)に0.05重量%のウコン抽出物を配合して得たウコン抽出物配合食と水を19日間自由摂食させた。なお、対照群にはAIN−93Gと水を自由摂食させた。ウコン抽出物摂食群は上記マウスを11匹、対照群は上記マウスを12匹とした。
【0075】
前記ウコン抽出物は、ウコン(ショウガ科ウコン、
Curcuma longa LINNE)の根茎部分より、水を抽出溶媒として用いて得られたものである。前記ウコン抽出物はビサクロンを0.15重量%の濃度で含有する。従って、前記ウコン抽出物配合食はビサクロンを0.000075重量%含有する。マウス一個体が摂取する一日あたりの摂取量は、ウコン抽出物が50mg/Kg体重、ビサクロンが75μg/Kg体重となるようにした。
【0076】
(UV−B単回照射)
試験食摂食開始後15日目に、マウス背部にUV−B(54mJ/cm
2)を1分間照射した。
【0077】
(皮膚水分含量の測定)
UV−B照射前、UV−B照射後3日目、及びUV−B照射後4日目の皮膚水分含量を、マルチプローブアダプターMPA5と測定プローブとしてCorneometer (型番CM825MP、株式会社インテグラル製)を用い測定した。Corneometerは、静電容量法の原理により、皮膚表面から約15μm(主に角層)の水分量を瞬時に測定できる。
【0078】
UV−B照射前の各群の皮膚水分量を100として、UV−B照射後3日目、及びUV−B照射後4日目の皮膚水分量の測定結果を
図1に示す。照射後4日目において、ウコン抽出物摂取群の皮膚水分量は対照群と比較して有意に高値だった(
図1)。