特許第6773368号(P6773368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773368
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】免疫発達促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/745 20150101AFI20201012BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20201012BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20201012BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201012BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20201012BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20201012BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20201012BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20201012BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   A61K35/745
   A61K31/7016
   A61K31/702
   A61P37/02
   A61P43/00 107
   A61P43/00 121
   A23L33/125
   A23L33/135
   A23K10/16
   A23K20/163
   !C12N1/20 A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-500972(P2018-500972)
(86)(22)【出願日】2016年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2016075071
(87)【国際公開番号】WO2017145415
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2018年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-35957(P2016-35957)
(32)【優先日】2016年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100168996
【弁理士】
【氏名又は名称】諌山 雅美
(74)【代理人】
【識別番号】100188606
【弁理士】
【氏名又は名称】安西 悠
(72)【発明者】
【氏名】江原 達弥
(72)【発明者】
【氏名】和泉 裕久
(72)【発明者】
【氏名】松原 毅
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−175867(JP,A)
【文献】 特開2014−065669(JP,A)
【文献】 ZHENG, Bin et al.,Bifidobacterium breve Attenuates Murine Dextran Sodium Sulfate-Induced Colitis and Increases Regulatory T Cell Responses,PLoS One,2014年,Vol.9 Iss.5,e95441
【文献】 de Kivit,S et al.,Galectin-9 induced by dietary synbiotics is involved in suppression of allergic symptoms in mice and humans,Allergy,2012年,Vol.67,pp.343-352
【文献】 SAGAR, Seil et al.,The combination of Bifidobacterium breve with non-digestible oligosaccharides suppresses airway inflammation in a murine model for chronic asthma,Biochim. Biophys. Acta,2014年,Vol.1842,pp.573-583
【文献】 名倉泰三ほか,プレバイオティクスと免疫,臨床栄養,2003年,Vol.102 No.5,pp.556-559
【文献】 江原達弥ほか,オリゴ糖の組み合わせがビフィズス菌の増殖に与える影響の検討,日本農芸化学会大会講演要旨集[online],2015年 3月 5日,講演番号:3F37p20, [2020年3月23日検索],インターネット<URL:https://www.jsbba.or.jp/MeetingofJSBBA/2015/MeetingofJSBBA2015.pdf>
【文献】 香山尚子ほか,ビフィドバクテリウムによるTr1細胞の誘導,臨床免疫・アレルギー科,2014年,Vol.62, No.2,pp.134-139
【文献】 ABE, F. et al.,Safety Evaluation of Two Probiotic Bifidobacterial Strains, Bifidobacterium breve M-16V and Bifidobacterium infantis M-63, by Oral Toxicity Tests Using Rats,Bioscience Microflora,2009年,Vol.28, No.1,pp.7-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/745
A61K 31/70−31/739
A23L 33/10
A23L 33/135
A23K 10/16
A23K 20/163
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を含む、乳児用の免疫発達促進剤であって、
該免疫発達促進が、Foxp3陽性細胞、RORgt陽性細胞、Th17細胞、及び腸間膜リンパ節リンパ球の少なくともいずれかの増加促進である、免疫発達促進剤。
【請求項2】
前記Foxp3陽性細胞がFoxp3陽性制御性T細胞である、請求項1に記載の免疫発達促進剤。
【請求項3】
前記乳児が健常である、請求項1又は2に記載の免疫発達促進剤。
【請求項4】
前記細菌がビフィドバクテリウム・ブレーベM−16Vである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫発達促進剤。
【請求項5】
ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の重量比が、1〜9:1〜9:1〜9である、請求項1〜のいずれか一項に記載の免疫発達促進剤。
【請求項6】
前記細菌の量が、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の合計量1gに対して1×106〜1×1012cfuである、請求項1〜のいずれか一項に記載の免疫発達促進剤。
【請求項7】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を含む、乳仔用の免疫発達促進用飼料であって、
該免疫発達促進が、Foxp3陽性細胞、RORgt陽性細胞、Th17細胞、及び腸間膜リンパ節リンパ球の少なくともいずれかの増加促進である、飼料。
【請求項8】
前記Foxp3陽性細胞がFoxp3陽性制御性T細胞である、請求項7に記載の飼料。
【請求項9】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を有効成分とする、乳児用の免疫発達促進用飲食品組成物であって、
該免疫発達促進が、Foxp3陽性細胞、RORgt陽性細胞、Th17細胞、及び腸間膜リンパ節リンパ球の少なくともいずれかの増加促進である、飲食品組成物。
【請求項10】
前記Foxp3陽性細胞がFoxp3陽性制御性T細胞である、請求項9に記載の飲食品組成物。
【請求項11】
飲食品組成物が保健機能食品である、請求項9又は10に記載の飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫発達促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、腸内細菌と免疫系との関係が注目されており、プロバイオティクスやプレバイオティクスによる腸内菌叢の改善や免疫調節について研究されている。
プロバイオティクスについては、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)及びラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)が、慢性ぜんそくのモデルマウスにおける炎症に有効であることが報告されている(非特許文献1)。また、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999、及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベLMG23729が、乳幼児のアレルギー疾患を予防できることが報告されている(特許文献1)。
【0003】
プレバイオティクスについては、ガラクトオリゴ糖とイヌリンの混合物をマウスの母体に投与すると、胎仔における食品アレルギーを防止し、免疫寛容を促進することが報告されている(非特許文献2)。また、難消化性オリゴ糖がヒト単球由来の樹状細胞に対して免疫調節作用を有することが報告されている(非特許文献3)。さらに、ラクチュロース、フラクトオリゴ糖及び/又はガラクトオリゴ糖、並びにラフィノースを有効成分として含有するビフィズス菌増殖促進組成物(特許文献2)などが知られている。
【0004】
プロバイオティクスとプレバイオティクスの組み合わせについては、ビフィドバクテリウム・ブレーベとscFOS(短鎖フルクトオリゴ糖)、lcFOS(長鎖フルクトオリゴ糖)、及びAOS(pectin-derived acidic-oligosaccharides:ペクチン由来酸性オリゴ糖)のよう
な難消化性オリゴ糖が、慢性ぜんそくのモデルマウスにおける気道炎症を抑制することが報告されている(非特許文献4)。また、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V、及び
、ガラクトオリゴ糖又はフラクトオリゴ糖が、腸間膜リンパ節におけるFoxp3のmRNAを増
加させることが報告されている(非特許文献5)。
【0005】
しかし、ビフィドバクテリウム・ブレーベと、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖との組み合わせにより、免疫発達が促進されることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−065669号公報
【特許文献2】特開平10−175867号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sager, S. et al., Respiratory Research, 15:46, 2014
【非特許文献2】Bouchaud, G. et al., Allergy, 71(1):68-76, 2016
【非特許文献3】Lehmann, S. et al., PLOS ONE, DOI:10.1371/journal.pone.0132304, July 6, 2015
【非特許文献4】Sager, S. et al., Biochim. Biophys. Acta, 1842:573-583, 2014
【非特許文献5】de Kivit, S. et al., Allergy, 67:343-352, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、免疫発達を促進する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ビフィドバクテリウム・ブレーベと、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖とを哺乳動物に摂取させると、免疫発達を促進し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を含む、免疫発達促進剤を提供する。
前記免疫発達促進剤は、免疫発達促進がT細胞数の増加促進であることを好ましい態様としている。
また前記免疫発達促進剤は、前記細菌がビフィドバクテリウム・ブレーベM−16V(LMG23729)であることを好ましい態様としている。
また前記免疫発達促進剤は、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の重量比が、1〜9:1〜9:1〜9であることを好ましい態様としている。
また前記免疫発達促進剤は、前記細菌の量が、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の合計量1gに対して1×106〜1×1012cfuであることを好ましい態様としている。
【0011】
本発明はまた、前記免疫発達促進剤を含む飼料を提供する。
本発明はまた、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を有効成分とする、免疫発達促進用の飲食品組成物を提供する。
また、前記飲食品組成物は、飲食品組成物が保健機能食品であることを好ましい態様としている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の免疫発達促進剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の三種のオリゴ糖を含む。
【0013】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌は、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖と共に哺乳動物に摂取させたときに、免疫発達を促進し得るものであれば特に制限されないが、例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベM−16V(LMG23729)等が挙げられる。同細菌は、ベルギーの保存機関であるベルジアン コーディネイテッド コレクションズ オブ マイクロオーガニズムズ(Belgian Coordinated Collections of Microorganisims)(BCCM)(http://bccm.belspo.be/、Universiteit Gent, Laboratorium voor Microbiologie, K.L. Ledeganckstraat, 35 9000 Gent Belgium)に一般寄託(Public deposit)として保存されており、同機関からLMG23729の菌株番号で入手することができる。ビフィドバクテリウム・ブレーベM−16Vは、上記寄託菌に制限されず、上記寄託菌と実質的に同等の細菌であってもよい。上記寄託菌と実質的に同等の細菌とは、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌であって、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖とともに哺乳動物に摂取させたときに免疫発達を促進することができ、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは99.86%以上、さらに好ましくは99.93%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託菌と同一の細菌学的性質を有する細菌である。また、ビフィドバクテリウム・ブレーベM−16Vには、同細菌を親株とする変異株及び遺伝子組換え株も含まれる。
【0014】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌は、細菌の菌体であってもよく、菌体を含む培養物であってもよい。細菌は、生菌であっても死菌であってもよく、生菌及び死菌の両方であってもよいが、生菌であることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない限り、培養後に凍結乾燥等の種々の追加操作を行うことができる。追加の操作は、生菌の生残性が高いものであることが好ましい。
【0015】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌は、同細菌を培養することにより容易に増殖させることができる。培養する方法は、前記細菌が増殖できる限り特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌(ビフィズス菌)の培養に通常用いられる方法を必要により適宜修正して用いることができる。例えば、培養温度は25〜50℃でよく、30〜40℃であることが好ましい。また、培養は好ましくは嫌気条件下で行われ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養しても良い。
【0016】
培養に用いる培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を必要により適宜修正して用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、調製済みの培地としては、例えばMRS培地を好適に用いることができる。
【0017】
ラクチュロースは、フルクトースとガラクトースからなる二糖(4−O−β−D−ガラクトピラノシル−D−フルクトース、Gal β1-4 Fru)であり、公知の方法、例えば、特開平3−169888号公報及び特開平6−228179号公報に記載の方法により、製造することができる。また、ラクチュロースは、市販品(例えば、森永乳業社製等)を使用することもできる。
【0018】
ラフィノースは、フルクトース、ガラクトース、及びグルコースが1つずつ結合した三糖(β−D−フルクトフラノシル−α−D−ガラクトピラノシル−(1−6)−α−D−グルコピラノシド、Gal α1-6 Glc α1-2β Fru)であり、公知の方法、例えば、「食品新素材有効利用技術シリーズNo.6、「ラフィノース」、第2ページ、社団法人菓子総合技術センター、1996年」に記載の方法により、製造することができる。ラフィノースは、市販品(例えば、日本甜菜製糖社製等)を使用することもできる。
【0019】
ガラクトオリゴ糖(GOS)は、Gal-(Gal)n-Glc(nは1〜3,β−1,4結合またはβ−1,6結合)で表される構造を持つオリゴ糖又はその混合物である。ガラクトオリゴ糖は、工業的には乳糖を原料としてβ−ガラクトシダーゼによる転移反応により製造され、主成分は乳糖の非還元末端にガラクトースが1つ結合した3糖の4'−ガラクトシルラクトース(4'-GL)である。ガラクトオリゴ糖は、市販品(例えば、ヤクルト薬品工業社製等)を使用することもできる。ガラクトオリゴ糖は、1種でもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0020】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を哺乳動物に摂取させると、免疫発達を促進することができる。
【0021】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を含む組成物は、医薬、飲食品、及び飼料として広く用いることができる。たとえば、免疫発達促進用医薬、免疫発達促進用飲食品、免疫発達促進用飲食品組成物、免疫発達促進用保健機能食品、免疫発達促進用飼料を提供することができる。
【0022】
本発明の薬剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を含有する限り特に制限されない。本発明の薬剤は、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖をそのまま使用してもよく、生理的に許容される液体又は固体の製剤担体を配合し製剤化して使用してもよい。ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌と、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖は、一体として製剤化されてもよく、別体として二剤又は三剤以上に分けて製剤化されてもよい。
【0023】
本発明の薬剤の製剤形態は特に限定されず、錠剤(糖衣錠、腸溶性コーティング錠、バッカル錠を含む。)、散剤、カプセル剤(腸溶性カプセル、ソフトカプセルを含む。)、顆粒剤(コーティングしたものを含む。)、丸剤、トローチ剤、封入リポソーム剤、液剤、又はこれらの製剤学的に許容され得る徐放製剤等を例示することができる。製剤化にあたっては、製剤成分として通常の経口薬剤に汎用される、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、溶剤等の添加剤を使用できる。また、本発明の効果を損わない限り、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖と、公知の、もしくは将来的に見出される免疫発達促進作用を有する薬剤、又は医薬組成物とを併用してもよい。併用する医薬組成物は、本発明の薬剤中に有効成分の一つとして含有させてもよいし、本発明の薬剤中には含有させずに別個の薬剤として組み合わせて商品化してもよい。
【0024】
上記の製剤に用いる担体及び賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等を、結合剤としては例えば澱粉、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を、それぞれ例示することができる。
【0025】
また、崩壊剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウム等を例示することができる。
【0026】
更に、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、及びポリエチレングリコール等を、着色剤としては医薬品に添加することが許容されている赤色2号、黄色4号、及び青色1号等を例示することができる。
【0027】
錠剤及び顆粒剤は、必要に応じ白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸重合体等により被膜することもできる。
【0028】
また、本発明の他の態様は、免疫発達促進用の医薬の製造における、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の使用である。また、本発明の他の態様は、免疫発達促進用に用いられるビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖である。また、本発明の他の態様は、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖、又は本発明の薬剤を哺乳動物に投与する、免疫発達を促進する方法である。また、本発明の他の態様は、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を哺乳動物に投与する、免疫発達の促進によって予防又は治療され得る疾患の予防又は治療方法である。哺乳動物としては、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ等が挙げられる。
【0029】
本発明の薬剤中に含まれるビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌の量は、剤形、用法、対象の年齢、性別、疾患の種類、疾患の程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、通常、1×106〜1×1012cfu/gまたは1×106〜1×1012cfu/mlの範囲内であることが好ましく、1×107〜1×1011cfu/gまたは1×107〜1×1011cfu/mlの範囲内であることがより好ましい。細菌が死菌の場合、cfu/gまたはcfu/mlは、個細胞/gまたは個細胞/mlと置き換えることができる。「cfu」は、colony forming unit(コロニー形成単位)を表す。
【0030】
また、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌の量は、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の合計量1gに対して1×106〜1×1012cfu、好ましくは1×107〜1×1012cfu、より好ましくは1×108〜1×1012cfuであることが好ましい。
また、ラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の重量比は、1〜9:1〜9:1〜9、好ましくは2〜8:2〜8:2〜8、より好ましくは3〜7:3〜7:3〜7であることが好ましい。
【0031】
本発明の薬剤は、哺乳動物の免疫発達を促進するのに有用である。免疫は、動物の出生後、成育するにつれて発達する。免疫発達の促進とは、そのような免疫の発達を早めること、及び、免疫の発達の度合いを高めることの両方を含む。また、免疫発達促進としては、T細胞数の増加促進が挙げられる。
【0032】
動物の出生後、成育するにつれて、大腸や腸間膜リンパ節などの臓器や組織が大きくなり、T細胞等のリンパ球の数も増加する。T細胞の中でも、Foxp3陽性細胞、すなわち過剰な免疫反応を抑制するヘルパーT細胞の一つである制御性T細胞(regulatory T cell、Treg)は、成育とともに細胞数が増加し、T細胞に占める割合も増加する傾向がある。本発明の薬剤は、そのような制御性T細胞の細胞数の増加を早めること、または制御性T細胞の細胞数を増加促進することができる。したがって、本明細書において、「免疫発達促進」は、「Foxp3陽性細胞増加」、又は「制御性T細胞増加」に置き換えることができる。
【0033】
また、RORgt陽性細胞、すなわちIL-17高産生を特徴とする、炎症誘導性のヘルパーT細胞の一つであるTh17細胞は、出生後、成育するにつれて、T細胞における割合は低下するが、T細胞数が増加するため、Th17細胞の細胞数は増加する傾向がある。本発明の薬剤は、そのようなTh17細胞の細胞数の増加を早めること、またはTh17細胞の細胞数を増加促進することができる。したがって、本明細書において、「免疫発達促進」は、「RORgt陽性細胞増加」、又は「Th17細胞増加」に置き換えることができる。また、「免疫発達促進」は、「Foxp3陽性細胞、制御性T細胞、RORgt陽性細胞、及びTh17細胞の少なくともいずれかの増加」に置き換えることができる。
【0034】
本発明は、免疫発達の中でも過剰な免疫反応を抑制する制御性T細胞、例えばFoxp3陽性細胞等を増加させることが可能である。したがって、本発明の薬剤が有効な疾患、又は、免疫発達促進によって予防又は治療され得る疾患もしくは症状としては、自己免疫疾患、アレルギー疾患、拒絶反応、感染症、脂肪組織炎症から派生する疾患等のような過剰な免疫反応によって惹き起こされる疾患が挙げられる。
【0035】
自己免疫疾患としては、強皮症による皮膚炎、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、播種性血管内凝固症候群、川崎病、グレーブス病(バセドウ病)、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、腎臓における顕微鏡的血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、敗血症候群、悪液質、エイズ(後天性免疫不全症候群)、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変症、溶血性貧血、多腺性機能不全症候群1型、多腺性機能不全症候群2型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、クラミジア感染症、エルシニア・サルモネラ感染に関する関節症、動脈硬化症、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA疾患、自己免疫性溶血性貧血、クームス試験陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋肉脊髄炎、ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、原因不明自己免疫性肝炎、後天性免疫不全関連疾患、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、肺線維症、原因不明の線維化性肺胞炎、間質性肺炎、混合性結合組織病に合併する間質性肺疾患、全身性硬化症による間質性肺疾患、関節リウマチ間質性肺疾患、全身性エリテマトーデスによる肺疾患、皮膚筋炎、多発性筋炎に合併する肺疾患、シェーグレン病による肺疾患、強直性脊椎炎に関連する肺疾患、汎血管炎による肺疾患、ヘモジデリン沈着症による肺疾患、薬剤誘発性の間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性の肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性又はルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎抗(抗LKM1抗体陽性肝炎)、自己免疫性低血糖、黒色表皮腫によるインスリン受容体異常症B型、副甲状腺機能低下症、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎疾患NOS、糸球体腎炎、腎臓における顕微鏡的血管炎、円板状エリテマトーデス、特発性男性不妊症NOS、精子に関連する自己免疫疾患、交感性眼炎、肺高血圧症による結合組織病、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ様脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、高安病、動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫・甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体起因性ぶどう膜炎、原発性血管炎、白斑、皮膚エリスマトーデス等が挙げられる。NOSは、「他に分類されない」ことを示す。
【0036】
アレルギー疾患としては、アトピー性皮膚炎、アトピー性アレルギー、食物アレルギー、花粉アレルギー、アレルギー性鼻炎(花粉アレルギー)、アナフィラキシー、ペットアレルギー、ラテックスアレルギー、薬物アレルギー、アレルギー性鼻炎結膜炎、好酸球性食道炎、好酸球増加症候群、好酸球性胃腸炎等が挙げられる。
【0037】
拒絶反応としては、移植片対宿主拒絶反応等が挙げられる。
【0038】
感染症としては、サルモネラ、赤痢菌、クロストリジウム・ディフィシル、マイコバクテリウム(疾患としては結核)、原虫(疾患としてはマラリア)、糸状線虫類(疾患としてはフィラリア症)、住血吸虫(疾患としては住血吸虫症)、トキソプラズマ(疾患としてはトキソプラズマ症)、リーシュマニア(疾患としてはリーシュマニア症)、HCV及びHBV(疾患としてはC型肝炎及びB型肝炎)、単純ヘルペスウィルス(疾患としてはヘルペス)等による感染症が挙げられる。
【0039】
脂肪組織炎症から派生する疾患としては、メタボリックシンドローム、内臓肥満、インスリン抵抗性、高血糖、脂質代謝異常、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症、血圧上昇、動脈硬化性疾患、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)等が挙げられる。
【0040】
本発明の薬剤の投与量は、投与対象の年齢、性別、状態、その他の条件等により適宜選択され得る。ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌の量として、好ましくは2×104〜2×109cfu/kg/日、より好ましくは2×106〜2×109cfu/kg/日の範囲となる量を目安とするのが良い。
【0041】
本発明の薬剤の投与時期は特に限定されず、投与対象の状態に応じて適宜選択することが可能である。また、予防的に投与してもよく、維持療法に用いてもよい。また、投与形態は製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、患者の症状やその程度等に応じて決定されることが好ましい。
【0042】
なお、本発明の薬剤は、いずれの場合も1日1回又は複数回に分けて投与することができ、また、数日又は数週間に1回の投与としてもよい。
【0043】
本発明の薬剤、又はその有効成分であるビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖は、飲食品(飲料又は食品)に含有させることもできる。
【0044】
また、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖、又は本発明の薬剤を有効成分として飲食品に含有させ、免疫発達促進剤の一態様として、免疫発達促進作用を有する飲食品として加工することも可能である。すなわち、本発明は、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を有効成分とする、免疫発達促進用の飲食品組成物を提供する。
【0045】
飲食品としては、免疫発達促進の効果を損なわず、経口摂取できるものであれば形態や性状は特に制限されず、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を含有させること以外は、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
【0046】
上記のような飲食品としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品);栄養補助食品等が挙げられる。
【0047】
本発明の飲食品は、免疫発達促進用との用途が表示された飲食品として販売することができる。また、そのような飲食品には、「免疫発達促進用」等の表示をすることができる。また、これ以外でも、免疫発達促進によって二次的に生じる効果を表す文言であれば、使用できることはいうまでもない。
【0048】
前記「表示」とは、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為を意味し、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。
具体的には、本発明の飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為、商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が例示でき、特に包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等への表示が好ましい。
【0049】
また、表示としては、行政等によって許可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましい。例えば、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができ、その他消費者庁によって認可される表示、例えば、保健機能食品、より具体的には特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を例示することができる。さらに詳細には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示等を例示することができる。
【0050】
ビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖を有効成分として飼料中に含有させ、免疫発達促進剤の一態様として、免疫発達促進作用を有する飼料として加工することも可能である。
【0051】
飼料の形態としては特に制限されず、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を配合することにより製造できる。飼料の形態としては、例えば、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【0052】
本発明の飲食品(飼料を含む)中に含まれるビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌、並びにラクチュロース、ラフィノース、及びガラクトオリゴ糖の量は、特に限定されず適宜選択すればよいが、好ましくは、前記した本発明の薬剤と同様である。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
〔実施例1〕マウス大腸粘膜固有層リンパ球及び腸間膜リンパ節リンパ球中のCD4陽性細胞におけるFoxp3陽性細胞及びRORgt陽性細胞の割合、及び細胞数の経齢変化
生後2日齢のC57BL/6J雄マウスを母獣とともに日本エスエルシーより購入した。乳仔マウスには母獣の母乳を自由摂餌させた。乳仔マウスを体重に偏りが生じないように2群に分け、一群は生後14日齢で、他の群は21日齢で、各々解剖を行い、大腸、及び腸間膜リンパ節(mesenteric lymph node。以下「MLN」と記載することがある。)を採取した。
【0055】
得られた大腸サンプルは、縦に切り開き、5 mM EDTA、1 mM DTT、及び2%ウシ胎児血清(FCS)を含むDPBS(ダルベッコPBS)に移し、37℃の恒温槽内で30分間振盪した。その後、サンプルを70μmのメッシュに通し、上皮細胞を含む液を除いた。残った大腸サンプルを、0.5mg/mlコラゲナーゼ(シグマ社)、25μg/ml DNase I(ロシュ・ダイアグノスティックス社)、50μg/mlディスパーゼ(Gibco社)、0.01M HEPES、及び2% FCSを含むRPMI 1640培地に入れ、37℃で30分間消化した。消化後の溶液を70μmのメッシュで濾過し、得られた濾液を340×g、4℃で5分間遠心し、細胞懸濁液を得た。得られた細胞懸濁液とパーコール溶液を混合し、40%パーコール細胞懸濁液とし、90%パーコール溶液の上層に重層した。720×g、室温で25分間遠心を行ない、40%パーコール溶液と90%パーコール溶液の境界に存在する粘膜固有層リンパ球(lamina propria lymphocyte。以下「LPL」と記載することがある。)を回収した。
【0056】
腸間膜リンパ節リンパ球(MLN lymphocyte。以下「MLNL」と記載することがある。)は、70μmのメッシュ上ですりつぶし、メッシュを通過した細胞懸濁液を得た。
【0057】
得られたLPL、MLNLを、FITCラベル化抗マウスCD4抗体(クローン番号:RM4-5、BD Biosciences社製)、APC(アロフィコシアニン)ラベル化抗ラット/マウスFoxp3(クローン番号:FJK-16a、e-Bioscience社製)、PE(フィコエリスリン)ラベル化抗ヒト/マウスRORgt(クローン番号:AFKJS-9、e-Bioscience社製)、Foxp3 Staining Buffer set(e-Bioscience社製)を用いて染色し、FACSCantoフローサイトメーター(BD Biosciences社製)を用いて細胞の分析を行ない、FlowJoソフトウェア(TreeStar社製)を用いてデータ解析を行なった。
【0058】
CD4陽性細胞におけるFoxp3陽性細胞及びRORgt陽性細胞の割合(平均値、単位:%)を、表1〜4に示す。大腸LPLでは、CD4陽性細胞におけるFoxp3陽性細胞(Treg細胞)の割合は、日齢の増加とともに増加したが、MLNLでは、CD4陽性細胞におけるFoxp3陽性細胞の割合は、日齢が増加しても変化はなかった(表1、2)。尚、大腸LPL、及びMLNL中のCD4陽性細胞は、ほぼT細胞である。
【0059】
一方、CD4陽性細胞におけるRORgt陽性細胞(Th17細胞)の割合は、いずれも日齢の増加に伴って減少した(表3、4)。
また、MLNL中の総細胞数、Foxp3陽性細胞、及びRORgt陽性細胞の個数(平均値、単位:×106)を、表5〜7に示す。日齢の増加に伴っていずれの細胞数も増加した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
〔実施例2〕マウス大腸LPL及びMLNL中のCD4陽性細胞におけるFoxp3陽性細胞及びRORgt陽性細胞の割合に対するビフィドバクテリウム・ブレーベ及び3種オリゴ糖の効果
澱粉に倍散したビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vの菌体粉末(2.4×1011cfu/g、森永乳業社製)を生理食塩水に懸濁し、2.5×109cfu/mlのビフィズス菌液を調製した。
【0068】
ラクチュロース(森永乳業社製)、ラフィノース(製品名ニッテンラフィノース、日本甜菜製糖株式会社製)、及びガラクトオリゴ糖を蒸留水に1:1:1の重量比で混合溶解し、合計終濃度250mg/mlのオリゴ糖液を調製した。ガラクトオリゴ糖は、市販品(製品名オリゴメイト55N、ヤクルト薬品工業社製)から単糖及び二糖を除去したものであり、Galβ1-4Galβ1-4Glc(4'-ガラクトシルラクトース)を約65重量%、Galβ1-6Galβ1-4Glc(6'-ガラクトシルラクトース)を約15重量%程度含有する。
【0069】
生理食塩水、上記ビフィズス菌液を生理食塩水で5倍希釈した希釈液(終濃度5×108cfu/mlビフィズス菌)、及び、ビフィズス菌液とオリゴ糖液を1:4の容量比で混合したもの(終濃度5×108cfu/mlビフィズス菌、200mg/mlオリゴ糖)を、投与物とした。
【0070】
生後2日齢のC57BL/6J雄マウスを母獣とともに日本エスエルシーより購入した。乳仔マウスには母獣の母乳を自由摂餌させた。生後5日齢で体重に偏りが生じないように以下の3群に分けた。
【0071】
A:Vehicle群(生理食塩水を投与)
B:ビフィズス菌群(ビフィズス菌液希釈液を投与)
C:オリゴ糖+ビフィズス菌群(オリゴ糖とビフィズス菌の混合液を投与)
【0072】
生後6日齢から13日齢までの間、各群の乳仔マウスに、生理食塩水、ビフィズス菌液希釈液、又はビフィズス菌液とオリゴ糖液の混合液(1:4)を毎日一回100μl投与した。すなわち、一回の投与につき、ビフィズス菌群には5×107cfuビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vが、オリゴ糖+ビフィズス菌群には20mgオリゴ糖と5×107cfuビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vが投与された。
【0073】
14日齢で各々解剖を行い、大腸、及びMLNを採取し、実施例1と同様にして、大腸LPL、MLNL中のCD4陽性細胞におけるFoxp3陽性細胞及びRORgt陽性細胞の割合を調べた。結果を表8、9(Foxp3陽性細胞の割合、平均値、単位:%)、及び表10、11(RORgt陽性細胞の割合、平均値、単位:%)に示す。表中、「M-16V」はビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vを、「M-16V+オリゴ糖」はビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vと、ラクチュロース、ラフィノース及びガラクトオリゴ糖の混合物を意味する。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
表8、9に示されるように、生後14日時点において、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vとオリゴ糖(ラクチュロース+ラフィノース+ガラクトオリゴ糖)の混合投与(M-16V+オリゴ糖)により、LPL及びMLNL中のCD4陽性細胞におけるFoxp3陽性細胞の割合がVehicle群(コントロール)及びビフィズス菌群(M-16V)に比べて増加した。
一方、表10、11に示されるように、生後14日時点において、M-16Vとオリゴ糖の混合投与は、LPL及びMLNL中のCD4陽性細胞におけるRORgt陽性細胞の割合に影響しなかった。
【0079】
〔実施例3〕マウスMLNL中のCD4陽性のFoxp3陽性細胞及びRORgt陽性細胞の個数に対するビフィドバクテリウム・ブレーベ及び3種オリゴ糖の効果
実施例2と同様にして、各投与物を投与した乳仔マウスを14日齢で解剖を行い、MLNL中のCD4陽性細胞のFoxp3陽性細胞及びRORgt陽性細胞の個数を調べた。結果を表12〜14(平均値、単位:×106)に示す。生後14日時点において、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vとオリゴ糖の混合投与により、MLNL中の総細胞数、CD4陽性Foxp3陽性細胞、及びCD4陽性RORgt陽性細胞の個数が増加した。
【0080】
【表12】
【0081】
【表13】
【0082】
【表14】
【0083】
以上の結果を、模式的に表15にまとめて示す。
【0084】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の免疫発達促進剤は、哺乳動物の免疫発達を促進するのに有効である。免疫発達促進剤は、免疫発達を促進することが有効な種々の疾患の予防、治療に有用である。