(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記染色標的を染色するために構成された前記染色試薬が、酸性染色試薬、塩基性染色試薬及び中性染色試薬のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の染色パッチ。
マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、前記マイクロキャビティに、血液中に存在する染色標的を染色するための染色試薬を含有するように構成された染色パッチが、前記染色標的の染色による血液検査を行うために使用された、血液検査方法であって、
反応領域に血液を配置するステップ;並びに
前記染色試薬を含有するように構成された前記染色パッチを使用して、前記反応領域に前記染色試薬を提供するステップ
を含み、
前記染色パッチを使用して、前記反応領域に前記染色試薬を提供するステップが、
前記染色パッチを前記反応領域と接触させて、前記染色試薬が前記反応領域に移動可能にすること;及び
前記反応領域から前記染色パッチを分離すること
を含み、
前記染色パッチが前記反応領域と接触したときに、含有される前記染色試薬の一部が前記反応領域に送達され;
前記染色パッチが、前記反応領域から分離されたときに、前記染色標的と反応していない残留染色試薬が、前記反応領域から除去される、血液検査方法。
前記血液を配置するステップが、血液をプレートに固定する方法、試料をプレートに塗抹する方法、又は試料をプレートに塗抹し、前記試料を前記プレートに固定する方法のうちのいずれか1つによって行われる、請求項5〜10のいずれか一項に記載の血液検査方法。
洗浄液を含有するように構成された洗浄パッチを使用して、前記反応領域から、前記反応領域に残留した前記残留染色試薬及び外来物質を吸収するステップをさらに含む、請求項5〜11のいずれか一項に記載の血液検査方法。
前記最適なpHを提供するステップが、前記第1の染色試薬の提供及び前記第2の染色試薬の提供の間の時点、並びに前記第2の染色試薬の提供の後の時点のうちの少なくとも1つの時点の間に行われる、請求項14に記載の血液検査方法。
前記第1の染色試薬及び第2の染色試薬を提供するステップの後、緩衝液を含有するように構成された緩衝パッチを使用して、前記反応領域に対して最適な前記染色試薬のpHを提供するステップをさらに含む、請求項16に記載の血液検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で説明される実施形態は、本開示が関連する当業者に、本開示の要旨を明確に説明するためのものであるので、本開示は、本明細書で説明される実施形態に限定されず、本開示の範囲は、本開示の要旨から逸脱することなく、改変例又は変形例を含むものとして、解釈されるべきである。
【0028】
現在、可能な限り広く使用されている一般用語を、本開示における機能を考慮して本明細書において使用する用語として選択しているが、この用語は、本開示に関連する当業者の意図及び慣例、又は新たな技術の出現などに従って変更することができる。しかしながら、その代わりに、特定の用語が、ある意味として定義され、使用される場合、その用語の意味は、別々に説明される。それ故に、本明細書で使用される用語は、その用語の名前に単に基づく代わりに、本明細書にわたって用語及び内容の実質的な意味に基づいて、解釈されるべきである。
【0029】
本明細書に添付する図面は、本開示を容易に説明するためのものである。図面に示された形状は、本開示の理解を助けるために必要な程度に誇張して描かれていることがあるので、本開示は、図面によって限定されるものではない。
【0030】
本開示に関する公知の配置又は機能の詳細な説明が、本明細書における本開示の主旨を曖昧にすると考えられる場合、それらに関する詳細な説明は、必要により、省略する。
【0031】
本開示の一態様によれば、血液中に存在する染色標的を染色するために構成された染色試薬、並びに染色試薬が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、血液が配置される反応領域と接触し、含有される染色試薬の一部が反応領域に提供されるように構成されたメッシュ構造体を含む、染色パッチが提供される。
【0032】
染色標的を染色するために構成された染色試薬は、酸性染色試薬、塩基性染色試薬及び中性染色試薬のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0033】
染色試薬は、染色標的が蛍光色を発するように構成された蛍光染色試薬を含んでいてもよい。
【0034】
染色標的は、血液中に存在する、血球、細菌及び寄生生物のうちの少なくとも1つを含んでいてもよく、染色試薬は、染色標的の、細胞質、核及び顆粒のうちの少なくとも1つを染色し得る。
【0035】
複数の染色標的が存在していてもよく、染色試薬は、染色標的の第1の染色標的を染色するために構成された第1の染色試薬、及び染色標的の第2の染色標的を染色するために構成された第2の染色試薬を含んでいてもよい。
【0036】
本開示の別の態様によれば、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに、血液中に存在する染色標的を染色するための染色試薬を含有するように構成されたメッシュ構造体を含むパッチが、染色標的の染色による血液検査を行うために使用される血液検査方法であって、反応領域に血液を配置するステップ、及び染色試薬を含有するように構成されたパッチを使用して、反応領域に染色試薬を提供するステップを含む、血液検査方法が提供される。
【0037】
血液検査方法は、提供された染色試薬によって染色された血液の画像を取得するステップをさらに含んでいてもよい。
【0038】
染色標的は、血液中の血球であってもよく、血液検査方法は、画像に基づいて、血球の種類の情報、血球の数の情報、及び血球の形態の情報のうちの少なくとも1つを取得するステップをさらに含んでいてもよい。
【0039】
血液検査方法は、取得された情報に基づいて、全血球算定(CBC)を行うステップをさらに含んでいてもよい。
【0040】
染色標的は、血液中の寄生生物又は細菌であってもよく、血液検査方法は、寄生生物又は細菌の存在に関する情報、寄生生物又は細菌の種類に関する情報、寄生生物又は細菌に関する情報、及び寄生生物又は細菌についての形態の情報のうちの少なくとも1つを取得するステップをさらに含んでいてもよい。
【0041】
血液検査方法は、取得された情報に基づいて、末梢血塗抹標本検査を行うステップをさらに含んでいてもよい。
【0042】
血液の配置は、血液をプレートに固定する方法、試料をプレートに塗抹する方法、又は試料をプレートに塗抹し、試料をプレートに固定する方法のうちのいずれか1つによって行うことができる。
【0043】
パッチを使用する反応領域への染色試薬の提供は、パッチを反応領域と接触させて、染色試薬が反応領域に移動可能にすること、及び反応領域からパッチを分離することを含んでいてもよく、パッチが、反応領域から分離されたときに、染色標的と反応していない残留染色試薬は、反応領域から除去することができる。
【0044】
血液検査方法は、洗浄液を含有するように構成された洗浄パッチを使用して、反応領域から、反応領域に残留した残留染色試薬及び外来物質を吸収するステップをさらに含んでいてもよい。
【0045】
パッチを使用する反応領域への染色試薬の提供は、染色標的の中から細胞質及び核のうちのいずれか1つを染色するための第1の染色試薬を含有するように構成された第1のパッチを使用すること、及び反応領域に第1の染色試薬を提供すること、並びに、染色標的の中から細胞質及び核のうちの他の1つを染色するための第2の染色試薬を含有するように構成された第2のパッチを使用すること、及び反応領域に第2の染色試薬を提供することを含んでいてもよい。
【0046】
血液検査方法は、緩衝液を含有するように構成された第1の緩衝パッチを使用して、反応領域に最適なpHを提供するステップをさらに含んでいてもよい。
【0047】
最適なpHの提供は、第1の染色試薬の提供及び第2の染色試薬の提供の間の時点、並びに第2の染色試薬の提供の後の時点の中から少なくとも1つの時点の間に行われてもよい。
【0048】
染色パッチは、染色標的の中から細胞質を染色するために構成された第1の染色試薬、及び染色標的の中から核を染色するために構成された第2の染色試薬を含有していてもよく、パッチを使用する反応領域への染色試薬の提供は、染色パッチが、染色標的の中から細胞質及び核の両方を染色するように、反応領域に第1の染色試薬及び第2の染色試薬を提供することを含んでいてもよい。
【0049】
第1の染色試薬及び第2の染色試薬の提供の後、血液検査方法は、緩衝液を含有するように構成された緩衝パッチを使用して、反応領域に最適なpHを提供するステップをさらに含んでいてもよい。
【0050】
本開示のさらに別の態様によれば、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含む、パッチを使用する血液検査デバイスであって、染色標的の染色によって血液検査を行うために、マイクロキャビティに、血液中に存在する染色標的を染色するための染色試薬を含有するように構成された、血液検査デバイスであって、血液が配置される反応領域が配置されたプレートをサポートするために構成されたプレートサポーターと、染色試薬が反応領域に提供されるように、染色試薬を含有及び反応領域に対してパッチの相対的な位置を制御するために構成された、パッチを使用するために構成されたパッチコントローラーと、血液を検査するために、血液中に存在する染色標的の染色の結果を検出するために構成された反応検出器とを備える、血液検査デバイスが提供される。
【0051】
1.パッチ
1.1 パッチの意味
本出願において、液体物質を管理するためのパッチが開示される。
【0052】
液体物質は、液体状態にあって、流動することができる、物質を意味し得る。
【0053】
液体物質は、流動性を有する単一成分で形成される物質であってもよい。或いは、液体物質は、複数の成分で形成される物質を含む混合物であってもよい。
【0054】
液体物質が、単一成分で形成される物質である場合、液体物質は、単一の化学元素で形成される物質又は複数の化学元素を含む化合物であってもよい。
【0055】
液体物質が混合物である場合、複数の成分で形成される物質の一部は、溶媒としての機能を果たしてもよく、他の部分は、溶質としての機能を果たしてもよい。すなわち、混合物は溶液であってもよい。
【0056】
物質を形成する混合物を構成する複数の成分は、均一に分布していてもよい。或いは、複数の成分で形成される物質を含む混合物は、均一に混合された混合物であってもよい。
【0057】
複数の成分で形成される物質は、溶媒、及び溶媒に溶解せず、均一に分布する物質を含んでいてもよい。
【0058】
複数の成分で形成される物質の一部は、不均一に分布していてもよい。不均一に分布した物質は、溶媒中に、不均一に分布した粒子成分を含んでいてもよい。この場合において、不均一に分布した粒子成分は、固相中にあってもよい。
【0059】
例えば、パッチを使用して管理され得る物質は、1)単一成分で形成される液体、2)溶液、又は3)コロイドの状態であってもよく、状況により、4)固体粒子が、別の液体物質内に不均一に分布している状態であってもよい。
【0060】
本明細書の以下において、本出願によるパッチをより詳細に説明する。
【0061】
1.2 パッチの一般的性質
1.2.1 配置
図1及び
図2は、本出願によるパッチの一例を示す図である。本出願によるパッチを、
図1及び
図2を参照して、以下に説明する。
【0062】
図1を参照すると、本出願によるパッチPAは、メッシュ構造体NS及び液体物質を含むことができる。
【0063】
液体物質として、塩基性物質BS及び添加物質ASを、別々に考慮に入れることができる。
【0064】
パッチPAは、ゲル状態(ゲル型)であってもよい。パッチPAは、コロイド分子が結合して、メッシュ組織を形成する、ゲル型の構造体として、実施されてもよい。
【0065】
本出願によるパッチPAは、液体物質SBを管理するための構造であり、三次元メッシュ(網様)構造体NSを含むことができる。メッシュ構造体NSは、連続的に分布した固体構造であってもよい。メッシュ構造体NSは、複数のマイクロスレッドがより合わされたメッシュ構造を有していてもよい。しかしながら、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロスレッドがより合わされたメッシュ形態に限定されず、複数のマイクロ構造の接続によって形成される任意の三次元マトリックスの形態で実施されてもよい。例えば、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロキャビティを含むフレーム構造体であってもよい。言い換えれば、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロキャビティMCを形成していてもよい。
【0066】
図2は、本出願の一実施形態によるパッチの構造を示す。
図2を参照すると、パッチPAのメッシュ構造体は、スポンジ構造SSを有することができる。スポンジ構造SSのメッシュ構造体は、複数のマイクロホールMHを含んでいてもよい。本明細書の以下において、マイクロホールMH及びマイクロキャビティMCという用語は、互換可能に使用することができ、他に特に言及がない限り、マイクロキャビティMCという用語は、マイクロホールMHの概念を包含するものとして定義される。
【0067】
メッシュ構造体NSは、規則的又は不規則なパターンを有していてもよい。さらにまた、メッシュ構造体NSは、規則的なパターンを有する領域、及び不規則なパターンを有する領域の両方を含んでいてもよい。
【0068】
メッシュ構造体NSの密度は、所定の範囲内の値を有していてもよい。所定の範囲は、パッチPAに捕捉された液体物質SBの形態が、パッチPAに対応する形態に維持される限度内に設定され得ることが好ましい。密度は、メッシュ構造体NSが、高密度である程度、又はメッシュ構造体NSがパッチ内で占める、質量比、体積比などとして、定義してもよい。
【0069】
本出願によるパッチは、三次元メッシュ構造を有することによって、液体物質SBを管理することができる。
【0070】
本出願によるパッチPAは、液体物質SBを含むことができ、パッチPAに含まれる液体物質SBの流動性は、パッチPAのメッシュ構造体NSの形態によって制限され得る。
【0071】
液体物質SBは、メッシュ構造体NS内で、自由に流動してもよい。言い換えれば、液体物質SBは、メッシュ構造体NSによって形成される複数のマイクロキャビティに配置される。液体物質SBの交換は、隣接するマイクロキャビティの間で生じてもよい。この場合において、液体物質SBは、液体物質SBがメッシュ組織を形成するフレーム構造体に浸透する状態で、存在することができる。このような場合において、液体物質SBが浸透することができるナノサイズの孔が、フレーム構造体に形成されていてもよい。
【0072】
さらに、液体物質SBが、メッシュ構造のフレーム構造体を満たしているか否かは、パッチPAに捕捉されている液体物質SBの分子量又は粒子径に応じて、決定することができる。比較的大きな分子量を有する物質は、マイクロキャビティに捕捉されてもよく、比較的小さな分子量を有する物質は、フレーム構造体によって捕捉されてもよく、メッシュ構造体NSのマイクロキャビティ及び/又はフレーム構造体を満たしていてもよい。
【0073】
本明細書において、「捕捉する」という用語は、液体物質SBが、メッシュ構造体NSによって形成される、複数のマイクロキャビティ及び/又はナノサイズの孔に配置されている状態として定義してもよい。上記の説明のように、液体物質SBがパッチPAに捕捉されている状態は、液体物質SBが、マイクロキャビティ及び/又はナノサイズの孔の間で流動することができる状態を含むものとして定義される。
【0074】
下記のように、塩基性物質BS及び添加物質ASは、液体物質SBとして、別々に考慮に入れることができる。
【0075】
塩基性物質BSは、流動性を有する液体物質SBであってもよい。
【0076】
添加物質ASは、塩基性物質BSと混合された、流動性を有する物質であってもよい。言い換えれば、塩基性物質BSは、溶媒であってもよい。添加物質ASは、溶媒に溶解した溶質であってもよく、又は溶媒に溶融していない粒子であってもよい。
【0077】
塩基性物質BSは、メッシュ構造体NSによって形成されたマトリックスの内部で流動する能力がある物質であってもよい。塩基性物質BSは、メッシュ構造体NSに均一に分布していてもよく、又はメッシュ構造体NSの一部の領域にのみ分布していてもよい。塩基性物質BSは、単一成分を有する液体であってもよい。
【0078】
添加物質ASは、塩基性物質BSと混合されるか、又は塩基性物質BSに溶解する物質であってもよい。例えば、塩基性物質BSが溶媒であると同時に、添加物質ASは、溶質としての機能を果たしてもよい。添加物質ASは、塩基性物質BSに均一に分布していてもよい。
【0079】
添加物質ASは、塩基性物質BSに溶解していない微粒子であってもよい。例えば、添加物質ASは、コロイド分子及び微生物などの微粒子を含んでいてもよい。
【0080】
添加物質ASは、メッシュ構造体NSによって形成されるマイクロキャビティよりも大きい粒子を含んでいていてもよい。マイクロキャビティのサイズが、添加物質ASに含まれる粒子のサイズよりも小さい場合、添加物質ASの流動性は、制限され得る。
【0081】
一実施形態によれば、添加物質ASは、パッチPAに選択的に含まれる成分を含んでいてもよい。
【0082】
添加物質ASは、上述の塩基性物質BSと比較して、量が少ないか、又は機能が劣る物質を、必ずしも指すわけではない。
【0083】
本明細書の以下において、パッチPAに捕捉された液体物質SBの特性は、パッチPAの特性と推定することができる。すなわち、パッチPAの特性は、パッチPAに捕捉された物質の特性に依存し得る。
【0084】
1.2.2 特性
上記の説明のように、本出願によるパッチPAは、メッシュ構造体NSを含むことができる。パッチPAは、メッシュ構造体NSによって、液体物質SBを管理することができる。パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBが、その固有の特性の少なくともいくつかを維持することを、可能にし得る。
【0085】
例えば、液体物質SBが分布するパッチPAの領域において、物質の拡散が生じてもよく、表面張力などの力が作用する状態であってもよい。
【0086】
パッチPAは、標的物質の拡散が、物質の熱運動又は物質の密度若しくは濃度の相違に起因して引き起こされる、液体環境を提供することができる。一般に、「拡散」とは、物質を構成する粒子が、濃度の相違に起因して、濃度が高い側から、濃度が低い側に広がる現象を指す。このような拡散現象は、基本的に、分子の運動(気体又は液体中での並進運動、固体中での振動運動など)に起因して引き起こされる現象として、理解され得る。本出願において、粒子が、濃度又は密度の相違に起因して、濃度が高い側から、濃度が低い側に広がる現象を指すのに加えて、「拡散」とは、粒子が、濃度が均一な場合であっても生じる分子の不規則運動に起因して移動する現象も指す。「不規則運動」という表現はまた、他に特に言及がない限り、「拡散」と同じ意味を有し得る。拡散した物質は、液体物質SBに溶解した溶質であってもよく、拡散した物質は、固体、液体又は気体状態で提供されてもよい。
【0087】
より詳細には、パッチPAによって捕捉された液体物質SB中に不均一に分布した物質は、パッチPAによって提供される空間に拡散することができる。言い換えれば、添加物質ASは、パッチPAによって規定される空間に拡散することができる。
【0088】
パッチPAによって管理される液体物質SB中に不均一に分布した物質又は添加物質ASは、パッチPAのメッシュ構造体NSによって提供されるマイクロキャビティ内に拡散することができる。不均一に分布した物質又は添加物質ASが拡散し得る領域は、別の物質と、接続又は接触しているパッチPAによって、変化し得る。
【0089】
パッチPA内又はパッチPAに接続された外部領域内での不均一に分布した物質又は添加物質ASの拡散の結果として、物質又は添加物質ASの濃度が均一になった後でさえ、物質又は添加物質ASは、パッチPAの内部及び/又はパッチPAに接続された外部領域内での分子の不規則運動に起因して、絶え間なく、移動することができる。
【0090】
パッチPAは、親水性又は疎水性の性質を示すように実施されてもよい。言い換えれば、パッチPAのメッシュ構造体NSは、親水性又は疎水性の性質を有し得る。
【0091】
メッシュ構造体NS及び液体物質SBの性質が類似している場合、メッシュ構造体NSは、液体物質SBを、より効果的に管理することが可能であり得る。
【0092】
塩基性物質BSは、極性の親水性物質又は非極性の疎水性物質であってもよい。添加物質ASは、親水性又は疎水性の性質を示してもよい。
【0093】
液体物質SBの性質は、塩基性物質BS及び/又は添加物質ASに関係していてもよい。例えば、塩基性物質BS及び添加物質ASの両方が、親水性である場合、液体物質SBは、親水性であってもよく、塩基性物質BS及び添加物質ASの両方が、疎水性である場合、液体物質SBは、疎水性であってもよい。塩基性物質BS及び添加物質ASの極性が異なる場合、液体物質SBは、親水性又は疎水性であってもよい。
【0094】
メッシュ構造体NS及び液体物質SBの両方の極性が、親水性又は疎水性である場合、引力が、メッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用する状態であり得る。メッシュ構造体NS及び液体物質SBの極性が正反対である場合、例えば、メッシュ構造体NSの極性が疎水性であって、液体物質SBの極性が親水性である場合、反発力が、メッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用し得る。
【0095】
上述の性質に基づけば、パッチPAは、単独で使用されてもよく、複数のパッチPAが使用されてもよく、又はパッチPAは、所望の反応を誘導する別の媒体とともに使用されてもよい。本明細書の以下において、パッチPAの機能的な態様を説明する。
【0096】
しかしながら、本明細書の以下において、説明の便宜上、パッチPAを、親水性溶液を含み得るゲル型であると仮定する。言い換えれば、他に特に言及がない限り、パッチPAのメッシュ構造体NSは、親水性の性質を有すると仮定する。
【0097】
しかしながら、本出願の範囲は、親水性の性質を有するゲル型パッチPAに限定されるものと解釈されるべきではない。疎水性の性質を示す溶液を含むゲル型パッチPAに加えて、溶媒が除去されたゲル型パッチPA及び、さらにゾル型パッチPAも、本出願による機能を実施する能力がある限り、本出願の範囲に属し得る。
【0098】
2.パッチの機能
上述の特性に起因して、本出願によるパッチは、いくつかの有用な機能を有し得る。言い換えれば、液体物質SBを捕捉することによって、パッチは、液体物質SBの挙動に関与するようになり得る。
【0099】
したがって、本明細書の以下において、パッチPAに関する物質の挙動の形態に従って、物質の状態がパッチPAによって形成された所定の領域に規定されたリザーバー機能、及び物質の状態がパッチPAの外部領域を含む領域に規定されたチャネリング機能を、別々に説明する。
【0100】
2.1 リザーバー
2.1.1 意味
上記で説明するように、本出願によるパッチPAは、液体物質SBを捕捉することができる。言い換えれば、パッチPAは、リザーバーとしての機能を果たすことができる。
【0101】
パッチPAは、メッシュ構造体NSを使用して、メッシュ構造体NSに形成された複数のマイクロキャビティに、液体物質SBを捕捉することができる。液体物質SBは、パッチPAの三次元メッシュ構造体NSによって形成された微細なマイクロキャビティの少なくとも一部を占めていてもよく、又はメッシュ構造体NSに形成されたナノサイズの孔中に浸透していてもよい。
【0102】
パッチPAに配置された液体物質SBは、液体物質SBが複数のマイクロキャビティに分布している場合でさえ、液体の性質を失わない。すなわち、液体物質SBは、パッチPA中においてさえ、流動性を有し、物質の拡散は、パッチPAに分布した液体物質SBにおいて生じてもよく、適切な溶質は、物質に溶解していてもよい。
【0103】
パッチPAのリザーバー機能を、より詳細に以下で説明する。
【0104】
2.1.2 含有
本出願において、パッチPAは、上述の特性に起因して、標的物質を捕捉することができる。パッチPAは、所定の範囲内で、外部環境の変化に対する抵抗性を有していてもよい。この方法において、パッチPAは、物質が捕捉された状態を維持することができる。捕捉される標的である液体物質SBは、三次元メッシュ構造体NSを占めていてもよい。
【0105】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「含有」と称する。
【0106】
しかしながら、「液体物質を含有するパッチPA」は、液体物質が、メッシュ構造によって形成される空間に含有される場合、及び/又は、液体物質が、メッシュ構造体NSを構成するフレーム構造体に含有される場合を包含するものとして定義される。
【0107】
パッチPAは、液体物質SBを含有することができる。例えば、パッチPAは、パッチPAのメッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用する引力に起因して、液体物質SBを含有することができる。液体物質SBは、所定の強度又はそれより高い引力でメッシュ構造体NSと結合することができ、パッチPAに含有され得る。
【0108】
パッチPAに含有される液体物質SBの性質は、パッチPAの性質に従って分類することができる。より詳細には、パッチPAが親水性の性質を示す場合、パッチPAは、一般に、極性である、親水性の液体物質SBと結合することができ、三次元マイクロキャビティに親水性の液体物質SBを含有することができる。或いは、パッチPAが疎水性の性質を示す場合、疎水性の液体物質SBは、三次元メッシュ構造体NSのマイクロキャビティに含有され得る。
【0109】
パッチPAに含有され得る物質の量は、パッチPAの体積に比例していてもよい。言い換えれば、パッチPAに含有される物質の量は、パッチPAの形態に寄与する支持体として機能する三次元メッシュ構造体NSの量に比例していてもよい。しかしながら、パッチPAに含有され得る物質の量及びパッチPAの体積の間に一定の比例係数は存在せず、したがって、パッチPAに含有され得る物質の量及びパッチPAの体積の間の関係は、メッシュ構造の設計又は製造方法に従って変化し得る。
【0110】
パッチPAに含有される物質の量は、時間とともに、蒸発、喪失などに起因して、減少することがある。パッチPAに含有される物質の含量を増加又は維持するために、物質を、パッチPAに追加で注入してもよい。例えば、水分の蒸発を抑制するための水分保持剤を、パッチPAに添加してもよい。
【0111】
パッチPAは、液体物質SBを保管するのに容易な形態で実施されてもよい。これは、物質が、湿度レベル、光の量及び温度などの環境要因によって影響を受ける場合に、パッチPAが、物質の変性を最小限にして、実施することができることを意味する。例えば、パッチPAが細菌などの外部要因に起因して変性するのを阻止するために、パッチPAは、細菌阻害剤で処理されてもよい。
【0112】
複数の成分を有する液体物質SBが、パッチPAに含有されていてもよい。この場合において、複数の成分で形成される物質は、基準時点の前に、パッチPAに一緒に配置されてもよく、又は、当初に注入された物質は、最初にパッチPAに含有されてもよく、次いで、二番目の物質は、所定の時間の後、パッチPAに含有されてもよい。例えば、2つの成分で形成される液体物質SBが、パッチPAに含有される場合、2つの成分は、パッチPAの製造の際にパッチPAに含有されてもよく、1つの成分のみがパッチPAの製造の際にパッチに含有され、他の成分は後でパッチPAに含有されてもよく、又は、2つの成分は、パッチPAが製造された後に、パッチPAに連続して含有されてもよい。
【0113】
上記で説明するように、パッチに含有される物質は、流動性を示してもよく、物質は、不規則に移動してもよく、又はパッチPA中での分子運動に起因して拡散してもよい。
【0114】
2.1.3 反応空間の提供
図3及び
図4は、本出願によるパッチの機能の一例として、反応空間を提供することを示す図である。
【0115】
図3及び
図4に示されるように、本出願によるパッチPAは、空間を提供する機能を果たすことができる。言い換えれば、パッチPAは、液体物質SBが、メッシュ構造体NSによって形成される空間及び/又はメッシュ構造体NSを構成する空間の至るところで移動することができる、空間を提供することができる。
【0116】
パッチPAは、粒子の拡散及び/又は粒子の不規則運動以外の活動(本明細書の以下において、拡散以外の活動と称する)のための空間を提供してもよい。拡散以外の活動は、限定されるものではないが、化学反応を指してもよく、物理状態の変化を指してもよい。より詳細には、拡散以外の活動としては、活動の後に物質の化学組成が変化する化学反応、物質に含まれる成分の間の特異的な結合反応、物質に含まれ、不均一に分布した溶質若しくは粒子の均質化、物質に含まれるいくつかの成分の縮合、又は物質の一部の生物学的な活動を挙げることができる。
【0117】
複数の物質が活動に関与するようになる場合、複数の物質は、基準時点の前に、パッチPAに一緒に配置されていてもよい。複数の物質は、パッチPAに、連続的に挿入されてもよい。
【0118】
パッチPAの環境条件を変更することによって、パッチPAにおける拡散以外の活動のための空間を提供する機能の効率を、増強することができる。例えば、活動は、促進されてもよく、又は活動の開始は、パッチPAの温度条件の変更又は電気的条件を加えることによって、誘発されてもよい。
【0119】
図3及び
図4によれば、パッチPAに配置された第1の物質SB1及び第2の物質SB2は、パッチPAの内部で反応することができ、第3の物質SB3に変形してもよく、又は第3の物質SB3を発生させてもよい。
【0120】
2.2 チャネル
2.2.1 意味
物質の移動は、パッチPA及び外部領域の間で生じてもよい。物質は、パッチPAからパッチPAの外部領域に移動してもよく、又は外部領域からパッチPAに移動してもよい。
【0121】
パッチPAは、物質の移動経路を形成してもよく、又は物質の移動に関与していてもよい。より詳細には、パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBの移動に関与してもよく、又はパッチPAに捕捉された液体物質SBを通じた外部物質の移動に関与してもよい。塩基性物質BS又は添加物質ASは、パッチPAから外に移動してもよく、又は外部物質は、外部領域からパッチPAに導入されてもよい。
【0122】
パッチPAは、物質の移動経路を提供することができる。すなわち、パッチPAは、物質の移動に関与してもよく、物質の移動チャネルを提供してもよい。パッチPAは、液体物質SBの固有の性質に基づいて、物質の移動チャネルを提供してもよい。
【0123】
パッチPAが、外部領域と接続されているか否かに従って、パッチPAは、液体物質SBがパッチPA及び外部領域の間で移動可能な状態であってもよく、又は液体物質SBがパッチPA及び外部領域の間で移動不可能な状態であってもよい。パッチPA及び外部領域の間でチャネリングが始まる場合、パッチPAは、固有の機能を有することができる。
【0124】
本明細書の以下において、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を最初に説明し、パッチPAの固有の機能を、パッチPA及び外部領域が接続されているか否かに関連して詳細に説明する。
【0125】
基本的に、物質の不規則運動及び/又は拡散は、パッチPA及び外部領域の間の液体物質SBの移動の根本的要因である。しかしながら、パッチPA及び外部領域の間の物質の移動を制御するために、外部環境要因を制御すること(例えば、温度条件を制御すること、電気的条件を制御することなど)は、既に説明されている。
【0126】
2.2.2 移動可能な状態
物質が移動可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び/又は外部領域に配置された物質の間で、流れが生じてもよい。物質が移動可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間で、物質の移動が生じてもよい。
【0127】
例えば、物質が移動可能な状態において、液体物質SB又は液体物質SBのいくつかの成分は、外部領域に拡散してもよく、又は不規則運動に起因して移動してもよい。或いは、物質が移動可能な状態において、外部領域に配置された外部物質又は外部物質のいくつかの成分は、パッチPA中の液体物質SBに拡散してもよく、又は不規則運動に起因して移動してもよい。
【0128】
物質が移動可能な状態は、接触によって引き起こされてもよい。接触は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間の接続を指してもよい。接触は、液体物質SB及び外部領域の流動領域の間で少なくとも部分的に重なり合うことを指してもよい。接触は、パッチPAの少なくとも一部と接続されている外部物質を指してもよい。捕捉された液体物質SBが流動し得る範囲は、物質が移動可能な状態に拡大していることが理解され得る。言い換えれば、物質が移動可能な状態において、液体物質SBが流動し得る範囲は、捕捉された液体物質SBの外部領域の少なくとも一部を含むように拡大してもよい。例えば、液体物質SBが外部領域と接触している場合、捕捉された液体物質SBが流動し得る範囲は、接触している外部領域の少なくとも一部を含むように拡大してもよい。より詳細には、外部領域が外部プレートである場合、液体物質SBが流動し得る領域は、液体物質SBと接触している外部プレートの領域を含んで拡大してもよい。
【0129】
2.2.3 移動不可能な状態
物質が移動不可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間で、物質の移動は生じなくてもよい。しかしながら、物質の移動は、パッチPAに捕捉された液体物質SBにおいて、及び外部領域に配置された外部物質において、それぞれ、生じてもよい。
【0130】
物質が移動不可能な状態は、接触が解放された状態であってもよい。言い換えれば、パッチPA及び外部領域の間で接触が解放された状態において、パッチPAに残留した液体物質SB及び外部領域又は外部物質の間で、物質の移動は不可能である。
【0131】
より詳細には、接触が解放された状態は、パッチPAに捕捉された液体物質SBが外部領域に接続されていない状態を指してもよい。接触が解放された状態は、液体物質SBが、外部領域に配置された外部物質に接続されていない状態を指してもよい。例えば、物質の移動が不可能な状態は、パッチPA及び外部領域の間の分離によって引き起こされてもよい。
【0132】
本明細書において、「移動可能な状態」は、「移動不可能な状態」と区別された意味を有するが、時間の経過、環境の変化などに起因して、状態の間で、移行が生じてもよい。言い換えれば、パッチPAは、移動可能な状態になった後に移動不可能な状態になってもよく、移動不可能な状態になった後に移動可能な状態になってもよく、又は移動可能な状態になった後、移動不可能な状態になった後に、再び移動可能な状態になってもよい。
【0133】
2.2.4 機能の区別
2.2.4.1 送達
本出願において、上述の特性に起因して、パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部を、所望の外部領域に送達することができる。物質の送達は、満足された所定の条件に起因する、パッチPAからの、パッチPAに捕捉された液体物質SBの一部の分離を指してもよい。液体物質SBの一部の分離は、パッチPAによって影響を受ける領域から、物質の一部の抽出、放出又は解放を指してもよい。これは、パッチPAの上述のチャネリング機能に従属する概念であり、パッチPAの外部へのパッチPAに配置された物質の移動(送達)を定義するものとして理解することができる。
【0134】
所望の外部領域は、別のパッチPA、乾燥領域又は液体領域であってもよい。
【0135】
送達が生じる所定の条件は、温度の変化、圧力の変化、電気的特性の変化及び物理的状態の変化などの環境条件として設定することができる。例えば、パッチPAが、液体物質SBに結合する力がパッチPAのメッシュ構造体NSに結合する力よりも大きい物体と接触する場合、液体物質SBは、接触した物体と化学的に結合することができ、結果として、液体物質SBの少なくとも一部が、物体に提供され得る。
【0136】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「送達」と称する。
【0137】
送達は、パッチPA及び外部領域の間で、液体物質SBが移動可能な状態、及び液体物質SBが移動不可能な状態を介して、パッチPA及び外部領域の間で生じてもよい。
【0138】
より詳細には、液体物質SBが移動可能な状態である場合、液体物質SBは、パッチPA及び外部領域の間で拡散してもよく、又は不規則運動に起因して外部領域に移動してもよい。言い換えれば、液体物質SBに含まれる塩基性溶液及び/又は添加物質ASは、パッチPAから外部領域に移動してもよい。液体物質SBが移動不可能な状態において、液体物質SBは、パッチPA及び外部領域の間で移動することは不可能である。言い換えれば、移動可能な状態から移動不可能な状態への移行に起因して、液体物質SBの拡散及び/又は不規則運動に起因してパッチPAから外部領域に移動した物質の一部は、パッチPAに戻ることは不可能になる。したがって、液体物質SBの一部は、外部領域に提供され得る。
【0139】
送達は、液体物質SB及びメッシュ構造体NSの間の引力、並びに液体物質SB及び外部領域又は外部物質の間の引力の間の相違に起因して行われてもよい。引力は、極性又は特異的な結合の関係の間で、同様に引き起こされ得る。
【0140】
より詳細には、液体物質SBが親水性であり、外部領域又は外部物質が、メッシュ構造体NSよりも親水性である場合、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、移動可能状態及び移動不可能状態を介して、外部領域に提供され得る。
【0141】
液体物質SBの送達は、選択的に行うこともできる。例えば、液体物質SB及び外部物質に含まれるいくつかの成分の間に特異的な結合の関係が存在する場合、いくつかの有効成分は、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を介して、選択的に送達され得る。
【0142】
より詳細には、パッチPAが、平板の形態である外部プレートPAに物質を提供すると仮定すると、パッチPAに捕捉された液体物質SBの一部(例えば、溶質の一部)と特異的に結合する物質を、外部プレートPLに適用することができる。この場合において、パッチPAは、移動可能状態及び移動不可能状態を介して、パッチPAからプレートPLに、外部プレートPLに適用された物質に特異的に結合する溶質の一部を、選択的に送達することができる。
【0143】
パッチPAの機能としての送達は、物質が移動される異なる領域のいくつかの例により、以下で説明する。しかしながら、詳細な説明を行うにあたり、液体物質SBの「解放」及び液体物質SBの「送達」の概念は、互換可能に使用することができる。
【0144】
ここで、液体物質SBがパッチPAから分離した外部プレートPLに提供される場合を説明する。例えば、物質がパッチPAからプレートPL、例えば、スライドガラスに移動する場合を考慮に入れてもよい。
【0145】
パッチPA及びプレートPLが接触すると、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、プレートPLに拡散するか、又は不規則運動に起因して移動する。パッチPA及びプレートPLの間の接触が解放されると、パッチPAからプレートPLに移動した物質の一部(すなわち、液体物質SBの一部)は、パッチPAに戻ることは不可能になる。結果として、物質の一部は、パッチPAからプレートPLに提供され得る。この場合において、提供される物質の一部は、添加物質ASであってもよい。接触及び分離によって「提供される」パッチPA中の物質のために、物質及びプレートPLの間で作用する引力並びに/又は結合力が存在しなければならず、引力及び/又は結合力は、物質及びパッチPAの間で作用する引力よりも大きくなければならない。したがって、上述の「送達条件」が満たされないと、物質の送達は、パッチPA及びプレートPLの間で生じ得ない。
【0146】
物質の送達は、温度条件又は電気的条件をパッチPAに提供することによって制御してもよい。
【0147】
パッチPAからプレートPLへの物質の移動は、パッチPA及びプレートPLの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及びプレートPLの間の物質移動効率は、パッチPA及びプレートPLが接触する面積の範囲に従って、増加又は減少し得る。
【0148】
パッチPAが複数の成分を含む場合、いくつかの成分のみが、外部プレートPLに選択的に移動してもよい。より詳細には、複数の成分のいくつかに特異的に結合する物質は、外部プレートPLに固定されていてもよい。この場合において、外部プレートPLに固定された物質は、液体状態若しくは固体状態であってもよく、又は異なる領域に固定されていてもよい。この場合において、複数の成分の物質の一部は、プレートPLに移動し、パッチPA及び異なる領域の間での接触に起因してプレートPLに特異的に結合し、パッチPAがプレートPLから分離されると、いくつかの成分のみが、プレートPLに選択的に開放され得る。
【0149】
図5〜
図7は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の送達の一例として、パッチPAから外部プレートPLへの物質の送達を示す。
図5〜
図7によれば、パッチPAが外部プレートPLと接触することによって、パッチPAに含有される物質の一部が、プレートPLに提供され得る。この場合において、物質の提供は、物質が移動可能なようにプレートと接触するパッチPAによって可能になり得る。この場合において、水膜WFは、プレート及びパッチPAが接触する接触面の近傍で形成されてもよく、物質は、形成された水膜WFを通して移動可能であり得る。
【0150】
ここで、液体物質SBがパッチPAから流動性を有する物質SLに提供される場合を説明する。流動性を有する物質SLは、他の含有空間に保持されるか、又は流動する、液体物質であってもよい。
【0151】
パッチPA及び流動性を有する物質が接触すると(例えば、パッチPAを、溶液中に入れる)、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、不規則運動に起因して、流動性を有する物質SLに拡散又は移動し得る。パッチPA及び流動性を有する物質SLが分離されると、パッチPAから流動性を有する物質に移動した液体物質SBの一部は、パッチPAに戻ることが不可能になり、パッチPA中の物質の一部は、流動性を有する物質に提供され得る。
【0152】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質の移動は、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質移動効率は、パッチPA及び流動性を有する物質SLが接触する面積の程度(例えば、パッチPAが、溶液に浸漬された深さなど)に従って、増加又は減少し得る。
【0153】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質の移動は、パッチPA及び流動性を有する物質の間の物理的な分離によって制御することができる。
【0154】
液体物質SB中の添加物質ASの部分濃度及び流動性を有する物質中の添加物質ASの部分濃度は、異なっていてもよく、添加物質ASは、パッチPAから流動性を有する物質に提供されてもよい。
【0155】
しかしながら、流動性を有する物質SLに液体物質SBを提供するパッチPAにおいて、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物理的な分離は必須ではない。例えば、パッチPAから流動性を有する液体に移動する物質が引き起こす力(推進力/偶然の力)が、消失するか、又は基準値若しくはそれより下に減少すると、物質の移動は停止し得る。
【0156】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の「送達」において、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の上述の「送達条件」は、必要ではないことがある。流動性を有する物質SLに既に移動した物質が、流動性を有する物質SL中の不規則運動に起因して拡散及び/又は移動し、移動した物質及びパッチPAの間の距離が、所定の距離より大きくなると、物質が、流動性を有する物質SLに提供されたと理解することができる。プレートPLの場合では、接触に起因して拡大した移動可能な範囲が極めて限定されており、したがって、パッチPA及びプレートPLに移動した物質の間の引力が大きな影響を与え得るので、パッチPA及び流動性を有する物質の間の関係において、パッチPA及びプレートPLの間の接触に起因して拡大した移動可能な範囲は、比較的大きくなり、したがって、パッチPA及び流動性を有する物質SLに移動した物質の間の引力は重要ではない。
【0157】
図8〜
図10は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の送達の一例として、パッチPAから流動性を有する物質への物質の送達を示す。
図8〜
図10によれば、パッチPAは、パッチPAに含有される物質の一部を、流動性を有する外部物質に送達することができる。含有された物質の一部の送達は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び流動性を有する物質の間で物質の移動が可能となるように、パッチPAを、流動性を有する物質に挿入又は接触させることにより、行うことができる。
【0158】
ここで、物質が、パッチPAから別のパッチPAに移動すると仮定する。パッチPA及び他のパッチPAが接触する接触領域において、パッチPAに提供された液体物質SBの少なくとも一部は、他のパッチPAに移動することができる。
【0159】
接触領域において、それぞれのパッチPAに提供された液体物質SBは、拡散して、他のパッチPAに移動することができる。この場合において、物質の移動に起因して、それぞれのパッチPAに提供された液体物質SBの濃度は変化し得る。また、本実施形態において、上記で説明するように、パッチPA及び他のパッチPAは、分離されていてもよく、パッチPA中の液体物質SBの一部は、他のパッチPAに提供され得る。
【0160】
パッチPA及び他のパッチPAの間の物質の移動は、物理的状態の変化を含む、環境条件の変化によって行うことができる。
【0161】
パッチPA及び他のパッチPAの間の物質の移動は、パッチPA及び他のパッチPAの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及び他のパッチPAの間の物質移動効率は、パッチPAが他のパッチPAと接触する面積の範囲に従って、増加又は減少し得る。
【0162】
図11〜
図13は、本出願によるパッチPAの機能の中で、物質の送達の一例として、パッチPA1から別のパッチPA2への物質の送達を示す。
図11〜
図13によれば、パッチPA1は、パッチPA1に含有される物質の一部を、他のパッチPA2に送達することができる。物質の一部の送達は、パッチPA1を他のパッチPA2と接触させることによって、並びにパッチPA1に捕捉された液体物質SB及び他のパッチPA2に捕捉された物質を交換可能な状態にすることによって、行うことができる。
【0163】
2.2.4.2 吸収
説明の前に、本出願によるパッチPAの機能の中で、「吸収」は、いくつかの実施形態において、上述の「送達」と同様に使用し得ることに留意すべきである。例えば、物質が、物質間の濃度の相違に起因して移動する場合において、「吸収」は、液体物質SBの濃度、特に、添加物質ASの濃度を変化させて、物質が移動する方向を制御し得る点で「送達」と同様であり得る。「吸収」は、パッチPAとの物理的な接触の解放によって、物質の移動及び選択的な吸収を制御する点で、「送達」と同様であり得、これは、本出願が関連する当業者によって、明確に理解され得る。
【0164】
上述の特性に起因して、本出願によるパッチPAは、外部物質を捕捉することができる。パッチPAは、パッチPAによって規定された領域の外側に存在する外部物質を、パッチPAによって影響を受ける領域の方向に引き込むことができる。引き込まれた外部物質は、パッチPAの液体物質SBと一緒に捕捉され得る。外部物質の引き込みは、外部物質及びパッチPAによって既に捕捉された液体物質SBの間の引力によって引き起こされてもよい。或いは、外部物質の引き込みは、外部物質及び液体物質SBによって占められていないメッシュ構造体NSの領域の間の引力によって引き起こされてもよい。外部物質の引き込みは、表面張力の力によって引き起こされてもよい。
【0165】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「吸収」と称する。吸収は、パッチPAの上述のチャネリング機能に従属する概念として理解することができ、この概念はパッチPAへの外部物質の移動を定義する。
【0166】
吸収は、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を介して、パッチPAによって生じ得る。
【0167】
パッチPAによって吸収可能な物質は、液体状態又は固体状態であってもよい。例えば、パッチPAが、固体状態の物質を含む外部物質と接触する場合、物質の吸収は、外部物質に含まれる固体状態の物質及びパッチPAに配置された液体物質SBの間の引力に起因して行われ得る。別の例として、パッチPAが、液体の外部物質と接触する場合、吸収は、液体の外部物質及びパッチPAに配置された液体物質SBの間の結合に起因して行われ得る。
【0168】
パッチPAに吸収された外部物質は、パッチPAを形成するメッシュ構造体NSのマイクロキャビティを通してパッチPAの内部に移動してもよく、又はパッチPAの表面に分布していてもよい。外部物質が分布する位置は、外部物質の分子量又は粒子径に基づいて設定することができる。
【0169】
吸収が行われる間に、パッチPAの形態は変化してもよい。例えば、パッチPAの体積、色などが変化してもよい。パッチPAへの吸収が行われる間、パッチPAへの吸収は、パッチPAの吸収環境に、温度の変化及び物理的状態の変化などの外部条件を加えることによって、活性化又は遅延させることができる。
【0170】
吸収を、吸収が生じるときにパッチPAに吸収される物質を提供する外部領域のいくつかの例に従って、パッチPAの機能として、以下に説明する。
【0171】
本明細書の以下において、パッチPAが、外部プレートPLから外部物質を吸収すると仮定する。外部プレートの一例として、外部物質が配置され得るが、外部物質が吸収されない、プレートPLを挙げることができる。
【0172】
物質は、外部プレートPLに適用されてもよい。特に、物質は、プレートPLに、粉末の形態で適用されてもよい。プレートPLに適用された物質は、単一成分、又は複数の成分の混合物であってもよい。
【0173】
プレートPLは、平板形状を有していてもよい。プレートPLの形状は、物質などと含有する能力を改善するために変形させてもよい。例えば、物質を含有する能力を改善するためにウェルを形成してもよく、プレートPLの表面をエッチング若しくはエンボス加工によって変形させてもよく、又はパッチPAとの接触を改善するためにパターン形成プレートPLを使用してもよい。
【0174】
本出願のパッチPAによるプレートPLからの物質の吸収は、プレートPL及びパッチPAの間の接触によって行うことができる。この場合において、プレートPL及びパッチPAの間の接触表面の近傍の接触領域において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び/又はプレートPLに適用された物質に起因して、水膜WFが形成されてもよい。水膜(アクアプレーン、ハイドロプレーン)WFが接触領域に形成されると、プレートPLに適用された物質は、水膜WFによって捕捉されてもよい。水膜WFに捕捉された物質は、パッチPA内で自由に流動してもよい。
【0175】
パッチPAが、プレートPLから、所定の距離又はそれ以上に離れて間隔が空いて、分離されると、水膜WFは、パッチPAと一緒に移動してもよく、プレートPLに適用された物質は、パッチPAに吸収され得る。パッチPAが、プレートPLから所定の距離又はそれ以上離れて、分離されるにつれて、プレートPLに適用された物質は、パッチPAに吸収され得る。パッチPA及びプレートPLが離れて分離されると、パッチPAに提供された液体物質SBは、プレートPLに移動しなくてもよく、又はそのわずかな量のみが、パッチPAに吸収されてもよい。
【0176】
プレートPLに適用された物質の一部又はすべてが、パッチPAに捕捉された物質の一部又はすべてと、特異的に反応してもよい。この点において、パッチPAによるプレートPLからの物質の吸収は、選択的に行われ得る。特に、吸収は、パッチPAが、パッチPAに捕捉された物質の一部に関して、プレートPLよりも強い引力を有する場合に、選択的に行われ得る。
【0177】
一例として、物質の一部は、プレートPLに固定されていてもよい。言い換えれば、物質の一部は、物質の別の一部が、流動性を有するか、又は固定されないように適用されると同時に、プレートPLに固定されてもよい。この場合において、パッチPA及びプレートPLが接触及び分離される場合、プレートPLに適用された物質のプレートPLに固定された物質の一部を除いて、物質は、パッチPAに選択的に吸収されてもよい。その代わりに、物質が固定されるか否かに関わらず、プレートPLに配置された物質及びパッチPAに捕捉された物質の極性に起因して、選択的な吸収が生じてもよい。
【0178】
別の例として、パッチPAに捕捉された液体物質SBが、プレートPLに適用された物質の少なくとも一部と特異的に結合する場合、パッチPAが、プレートPLに適用された物質と接触して、次いで、分離されるときに、液体物質SBと特異的に結合したプレートPLに適用された物質の一部のみが、パッチPAに吸収され得る。
【0179】
さらに別の例として、プレートPLに適用された物質の一部は、予めプレートPLに固定された物質と特異的に反応してもよい。この場合において、プレートPLに物質が適用されるより前に、プレートPLに予め固定された物質と特異的に反応する物質を除く、残留する物質のみが、パッチPAに吸収され得る。
【0180】
図14〜
図16は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の吸収の一例として、パッチPAによる外部プレートPLからの物質の吸収を示す。
図14〜
図16によれば、パッチPAは、外部プレートPLに配置された物質の一部を、外部プレートPLから吸収することができる。物質の吸収は、パッチPAを、外部プレートPL、外部プレートPA及びパッチPAの間の接触領域の近傍で形成される水膜WF、及び水膜WFを通じてパッチPAに移動可能な物質を、接触させることによって行うことができる。
【0181】
ここで、物質は、パッチPAに、流動性を有する物質SLから吸収されると仮定する。流動性を有する物質SLは、他の含有空間に保持されるか、又は流動する、液体の外部物質を指していてもよい。より詳細には、流動性を有する物質SL及びパッチPAに捕捉された液体物質SBが互いに流動し得る環境を有することによって、流動性を有する物質SLの一部又はすべてが、パッチPAに吸収され得る。この場合において、流動性を有する物質SL及び液体物質SBが互いに流動し得る環境は、パッチPAが、流動性を有する物質SLの少なくとも一部と、接触することによって形成され得る。
【0182】
パッチPAが、流動性を有する物質SLと接触すると、パッチPAは、物質が流動性を有する物質SLから移動可能である状態であり得る。パッチPAが、流動性を有する物質SLから分離されると、流動性を有する物質SLの少なくとも一部は、パッチPAに吸収され得る。
【0183】
流動性を有する物質SLからパッチPAへの物質の吸収は、パッチPAに捕捉された物質及び流動性を有する物質SLの間の濃度の相違に依存し得る。言い換えれば、所定の添加物質ASに対するパッチPAに捕捉された液体物質SBの濃度が、所定の添加物質ASに対する流動性を有する物質SLの濃度よりも低い場合、所定の添加物質ASは、パッチPAに吸収され得る。
【0184】
物質が、流動性を有する物質SLからパッチPAに吸収される場合、パッチPA及び流動性を有する物質SLが上記の説明のようにして接触する間の濃度の相違に応じた吸収に加えて、パッチPAへの吸収は、電気的要因の追加又は物理的状態の変化によって制御することもできる。さらに、パッチPAに捕捉された物質及び吸収される物質の間の直接的な接触がなく、物質の吸収は、媒体を介して、それらの間の間接的な接触を通して行われてもよい。
【0185】
図17〜
図19は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の吸収の一例として、パッチPAによる流動性を有する物質SLからの物質の吸収を示す。
図17〜
図19によれば、パッチPAは、流動性を有する物質SLの一部を吸収することができる。物質の吸収は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び流動性を有する物質SLが互いに移動可能であるように、パッチPAを、流動性を有する物質SLに浸漬、又は流動性を有する物質SLと接触させることによって、行うことができる。
【0186】
ここで、パッチPAが、別のパッチPAから外部物質を吸収すると仮定する。
【0187】
パッチPAによる別のパッチPAからの外部物質の吸収は、吸収された外部物質及びパッチPAに既に捕捉された物質の間、並びに吸収された外部物質及びパッチPAに吸収されていない外部物質の間の結合力の相違に起因して、行われてもよい。例えば、吸収された物質が親水性の性質を示す場合、パッチPAは、親水性の性質を示し、吸収された物質及びパッチPAの間の引力は、他のパッチPA及び吸収された物質の間の引力よりも強く(すなわち、パッチPAが、他のパッチPAよりも親水性である場合)、外部物質の少なくとも一部は、パッチPA及び他のパッチPAが、接触後に分離されたときに、パッチPAに吸収され得る。
【0188】
図20〜
図22は、本出願によるパッチPAの機能の中で、物質の吸収の一例として、パッチPA3による別のパッチPA4からの物質の吸収を示す。
図20〜
図22によれば、パッチPA3は、他のパッチPA4に配置された物質の一部を吸収することができる。物質の吸収は、パッチPA3を他のパッチPA4と接触させることによって、行うことができ、パッチPA3に捕捉された液体物質SB及び他のパッチPA4に捕捉された液体物質SBを交換可能にする。
【0189】
パッチPAと吸収された外部物質との結合力は、パッチPAの総体積に対する、パッチPAを構成する三次元メッシュ構造体NSのフレーム構造体の割合に従って、変化し得る。例えば、全パッチPA中、フレーム構造体によって占められている体積の割合が増加するにつれて、構造体に捕捉された物質の量が減少し得る。この場合において、パッチPA及び標的物質の間の結合力は、標的物質及びパッチPAに捕捉された物質の間の接触面積の減少などの理由に起因して、減少し得る。
【0190】
これに関して、メッシュ構造体NSを構成する原料の比率は、パッチPAの極性が制御されるように、パッチPAの製造プロセス中に、調整することができる。例えば、アガロースを使用して製造されたパッチPAの場合において、アガロースの濃度は、吸収の程度を調整するために制御することができる。
【0191】
ある領域が、パッチPAから提供される物質に対して、パッチPAよりも弱い結合力を有する場合、並びにパッチPA及び別のパッチPAが、接触して、次いで分離される場合、吸収された外部物質は、パッチPAとともに他のパッチPAから分離され得る。
【0192】
2.2.4.3 環境の提供
上述の特性に起因して、本出願によるパッチPAは、所望の領域の環境条件を調整する機能を果たすことができる。パッチPAは、所望の領域に、パッチPAに起因する環境を提供することができる。
【0193】
パッチPAに起因する環境条件は、パッチPAに捕捉された液体物質SBに依存し得る。パッチPAは、パッチPAに収容される物質の特性に基づいて、又はパッチPAに収容される物質の特性に対応する環境を作成する目的のために、外部領域に配置された物質に、所望の環境を発生させることができる。
【0194】
環境の調整は、所望の領域の環境条件を変化させるとして理解することができる。所望の領域の環境条件の変化は、パッチPAによって影響を受ける領域が、拡大して、所望の領域の少なくとも一部を含む形態、又はパッチPAの環境を所望の領域と共有する形態で、実施することができる。
【0195】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「環境の提供」と称する。
【0196】
パッチPAによる環境の提供は、物質が、パッチPA及び環境が提供される外部領域の対象の間で移動可能である状態で、行われてもよい。パッチPAによる環境の提供は、接触によって行われてもよい。例えば、パッチPAが、所望の領域(例えば、外部物質、プレートPLなど)と接触すると、特定の環境が、パッチPAによって所望の領域に提供され得る。
【0197】
パッチPAは、適切なpH、浸透圧、湿度レベル、濃度、温度などを伴う環境を提供することによって、標的領域TAの環境を調整することができる。例えば、パッチPAは、標的領域TA又は標的物質に流動性(fluidity)(流動性(liquidity))を提供することができる。このような流動性の提供は、パッチPAに捕捉された物質の一部の移動に起因して生じ得る。水分環境は、パッチPAに捕捉された液体物質SB又は塩基性物質BSによって、標的領域TAに提供されてもよい。
【0198】
パッチPAによって提供される環境要因は、目的に従って、一定に維持されてもよい。例えば、パッチPAは、所望の領域に、ホメオスタシスを提供してもよい。別の例として、環境の提供の結果として、パッチPAに捕捉された物質は、所望の領域の環境条件に適応し得る。
【0199】
パッチPAによる環境の提供は、パッチPAに含まれる液体物質SBの拡散からもたらされてもよい。すなわち、パッチPA及び所望の領域が接触すると、物質は、パッチPA及び所望の領域の間の接触に起因して形成される接触領域を通して移動可能になり得る。これに関して、浸透圧に起因する環境の変化、イオン濃度の変化に起因する環境の変化、水分環境の提供及びpHレベルの変化は、物質が拡散する方向に従って、実施することができる。
【0200】
図23〜
図25は、本出願によるパッチPAの機能の中で、環境の提供の一例として、パッチPAによる外部プレートPLへの所定の環境の提供を示す。
図23〜
図25によれば、パッチPAは、所定の環境を、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が配置された外部プレートPLに提供することができる。例えば、パッチPAは、所定の環境を、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が反応して、第6の物質SB6を形成するために、プレートPLに提供することができる。環境の提供は、水膜WFが、接触領域の近傍で形成され、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が、水膜WFに捕捉されるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって、行うことができる。
【0201】
3.パッチの適用
本出願によるパッチPAは、上述のパッチPAの機能を適切に適用することによって、実施して、様々な機能を果たすことができる。
【0202】
本出願の技術的要旨を、いくつかの実施形態を開示することによって、以下に説明する。しかしながら、本出願によって開示されるパッチPAの機能が適用される技術的範囲は、当業者によって容易に到達され得る範囲内で、広い意味で解釈することができ、及び本出願の範囲は、本明細書に開示される実施形態によって限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0203】
3.1 パッチ内
パッチPAは、物質のために反応領域を提供することができる。言い換えれば、物質の反応は、パッチPAによって影響を受ける空間領域の少なくとも一部で起こり得る。この場合において、物質の反応は、パッチPAに捕捉された液体物質SBの間の反応並びに/又は捕捉された液体物質SB及びパッチPAの外側から提供された物質の間の反応であってもよい。物質のための反応領域の提供は、物質の反応を活性化又は促進することができる。
【0204】
この場合において、パッチPAに捕捉された液体物質SBは、パッチPAの製造の際に添加される物質、パッチPAの製造後のパッチPAへの添加物であって、パッチPAに含有される物質、及びパッチPAに一時的に捕捉された物質のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。言い換えれば、物質がパッチPAに捕捉される形態に関わらず、パッチPA内での反応が活性化される時点で、パッチPAに捕捉されたあらゆる物質が、パッチPA内で反応することができる。さらに、パッチPAの製造後に注入された物質は、反応開始剤として作用することもできる。
【0205】
パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、実施形態の観点で、上述の2.1.3項(すなわち、反応空間の提供)に従属する概念であってもよい。或いは、パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、上述の2.1.3項及び2.2.4.2項(すなわち、吸収)の組み合わされた機能を果たす、複数の概念からなっていてもよい。パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、限定されないが、2つ又はそれ以上の機能が組み合わされた形態で実施されてもよい。
【0206】
3.1.1 第1の実施形態
本明細書の以下において、パッチPAへの吸収の機能及び反応空間の提供の機能(本明細書の以下において、「機能の提供」と称する)が、単一のパッチPAによって果たされると仮定することによって、説明を行う。この場合において、吸収機能及び機能の提供は、同時に果たされる機能、異なる時点で果たされる機能、又は連続して果たされて、別の機能を果たす機能であってもよい。吸収及び機能の提供に加えて他の機能をさらに含むパッチPAは、本実施形態に属するものとして考えることもできる。
【0207】
上記で説明するように、パッチPAは、物質を捕捉する機能を果たしてもよく、物質は、物質が捕捉されたときでさえ、流動性を有することができる。液体物質SBのいくつかの成分が不均一に分布している場合、不均一な成分は、拡散してもよい。液体物質SBの成分が均一に分布している場合でさえ、液体物質SBは、粒子の不規則運動に起因する所定のレベルの移動性を有することができる。この場合において、物質の間の反応、例えば、物質の間の特異的な結合は、パッチPAの内部で生じてもよい。
【0208】
例えば、パッチPAにおいて、捕捉された物質の間の反応に加えて、パッチPAに新たに捕捉された流動性を有する物質、及びパッチPAに捕捉されていた物質が、互いに特異的に結合する形態での反応も、可能であり得る。
【0209】
流動性を有する物質及びパッチPAに捕捉されていた物質の間の反応は、物質パッチが、提供された空間から分離された後に、起こってもよい。例えば、パッチPAが、任意の空間から、流動性を有する物質を吸収した後、パッチPAを、任意の空間から分離することができ、吸収された物質及びパッチPAに捕捉されていた物質の間の反応が、パッチPAにおいて起こり得る。
【0210】
加えて、パッチPAは、流動性を有する物質に関して、吸収機能を果たすことによって、パッチAに捕捉された物質の反応を起こすことが可能であり得る。言い換えれば、パッチPAによる流動性を有する物質の吸収は、吸収された物質及びパッチPAに捕捉されている物質の間の反応のための引き金として作用し得る。反応は、パッチPAによって規定された空間の内部で起こってもよい。
【0211】
パッチPAに捕捉された液体物質SBの組成は、パッチPAの内部で起こる反応に起因して、変化してもよい。特に、パッチPAの内部に捕捉された物質が、化合物である場合、その化学組成は、反応の前後で変化してもよい。或いは、物質の組成分布は、パッチPA中の物質の位置に従って、変化してもよい。例えば、これは、分散又は別の物質に特異的な引力を有する粒子に起因していてもよい。
【0212】
液体物質SBの組成が、パッチPAの内部での反応に起因して変化する場合、物質の一部が、パッチPA及びパッチPAの外側の物質(パッチPAと接触する物質が存在する場合、相当する物質)の間の濃度の相違に起因して、パッチPAに吸収されてもよく、又は物質は、パッチPAから、パッチPAの外側の物質に放出されてもよい。
【0213】
3.1.2 第2の実施形態
本明細書の以下において、少なくとも所定の時間で、パッチPAの含有する機能及び物質のための反応空間の提供の機能が一緒に果たされる実施態様を説明する。より詳細には、パッチPAは、パッチPAに含有される液体物質SBの少なくとも一部が反応するための空間を提供する機能を果たすことができる。
【0214】
パッチPAは、物質を含有することができ、含有された物質のための反応空間を提供することができる。この場合において、パッチPAによって提供される反応空間は、パッチPAのメッシュ構造体NSによって形成されるマイクロキャビティ、又はパッチPAの表面領域であってもよい。特に、パッチPAに含有される物質及びパッチPAの表面に適用される物質が反応する場合、反応空間は、パッチPAの表面領域であってもよい。
【0215】
パッチPAによって提供される反応空間は、特異的な環境条件を提供する機能を果たしてもよい。反応がパッチPAに配置された液体物質SB中で起こる間に、反応の環境条件は、パッチPAによって調整されてもよい。例えば、パッチPAは、緩衝液としての機能を果たすことができる。
【0216】
メッシュ構造によって物質を含有することによって、パッチPAは、独立して、容器を必要としない。パッチPAの反応空間がパッチPAの表面である場合、反応は、パッチPAの表面を通して、容易に観察することができる。このため、パッチPAの形状を、観察を容易にする形状に変形させてもよい。
【0217】
パッチPAに含有される液体物質SBは、異なる種類の物質で、変性又は反応してもよい。パッチPAに含有される液体物質SBの組成は、時間とともに変化してもよい。
【0218】
この反応は、化学式が変化する化学反応、物理的状態の変化、又は生体反応を指してもよい。この場合において、パッチPAに含有される液体物質SBは、単一成分で形成された物質、又は複数の成分を含む混合物であってもよい。
【0219】
3.2 移動経路の提供(チャネリング)
本明細書の以下において、物質の移動経路を提供する機能を果たすパッチPAを説明する。より詳細には、上記で説明するように、パッチPAは、流動性を有する物質を、捕捉、吸収、放出及び/又は含有することができる。物質の移動経路を提供する機能を果たすパッチPAの様々な実施形態は、上述のパッチPAの機能のそれぞれ、又はこれらの組み合わせによって実施することができる。しかしながら、いくつかの実施形態を、よりよい理解のために開示する。
【0220】
3.2.1 第3の実施形態
パッチPAは、上述のパッチPAの機能の中で、2.2.4.1項(すなわち、送達に関する項)及び2.2.4.2項(すなわち、吸収に関する項)に説明された機能を果たすために実施され得る。この場合において、吸収機能及び送達機能は、一緒に提供されてもよく、又は連続して提供されてもよい。
【0221】
パッチPAは、物質の移動経路を提供するために、吸収及び送達機能を一緒に果たすことができる。特に、パッチPAは、外部物質を吸収することができ、吸収した外部物質を、外部領域に提供することができ、それによって、外部物質への移動経路が提供される。
【0222】
パッチPAによる外部物質の移動経路の提供は、外部物質の吸収及び外部物質の放出によって行うことができる。より詳細には、パッチPAは、外部物質と接触し、外部物質を吸収し、外部領域と接触し、外部物質を外部領域に送達することができる。この場合において、外部物質の捕捉及びパッチPAによって捕捉された外部物質の外部領域への送達は、上述の吸収及び送達のプロセスと同様のプロセスによって行われてもよい。
【0223】
パッチPAに吸収され、提供される外部物質は、液相又は固相であってもよい。
【0224】
この方法において、パッチPAは、外部物質の一部を、別の外部物質に提供することを可能にし得る。外部物質及び他の外部物質は、同時に、パッチPAと接触してもよい。外部物質及び他の外部物質は、異なる時点で、パッチPAと接触してもよい。
【0225】
外部物質及び他の外部物質は、異なる時点で、パッチPAと接触してもよい。外部物質が、異なる時点で、パッチPAと接触する場合、外部物質は、最初のパッチPAと接触してもよく、外部物質及びパッチPAが分離された後、パッチPA及び他の外部物質が接触してもよい。この場合において、パッチPAは、外部物質から、捕捉された物質を一時的に含有し得る。
【0226】
パッチPAは、物質の移動経路を同時に提供してもよく、さらに、時間の遅延を提供してもよい。パッチPAは、別の外部物質に提供される物質の量及びそのような提供の速度を、適切に調整する機能を果たしてもよい。
【0227】
このような一連のプロセスは、パッチPAに対して、一方向で行われてもよい。具体例として、物質の吸収は、パッチPAの表面を通して行うことができ、環境は、パッチPAの内部表面に提供され得、物質は、表面に面した別の表面を通して放出され得る。
【0228】
3.2.2 第4の実施形態
パッチPAは、パッチPAの上述の機能の中で、物質の吸収及び放出、並びに、同時に、物質のための反応空間の提供を果たすことができる。この場合において、物質の吸収及び放出、並びに反応空間の提供は、同時に又は連続して行われてもよい。
【0229】
実施形態によれば、外部物質の吸収及び放出のプロセスを行うにあたり、パッチPAは、反応空間を、吸収された外部物質に、少なくとも所定の時間、提供することができる。パッチPAは、吸収された外部物質を含む、パッチPAに捕捉された液体物質SBに、少なくともある時間、特異的な環境を提供することができる。
【0230】
パッチPAに捕捉されている液体物質SB及びパッチPAに捕捉された外部物質は、パッチPAの内部で反応してもよい。パッチPAに吸収された外部物質は、パッチPAによって提供された環境の影響を受けてもよい。パッチPAから放出された物質は、反応中に発生した物質の少なくとも一部を含んでいてもよい。外部物質は、外部物質の組成、特性などが変化した後、パッチPAから放出されてもよい。
【0231】
吸収された物質は、パッチPAから放出されてもよい。パッチPAに吸収され、パッチPAから放出された外部物質は、パッチPAを通過する外部物質として理解され得る。パッチPAを通過した外部物質は、パッチPAの内部での反応又はパッチPAによって提供された環境の影響に起因して、完全性を失ってもよい。
【0232】
上述の外部物質の吸収、物質の反応及び物質の提供のプロセスは、一方向で行われてもよい。言い換えれば、物質の吸収は、パッチPAの1つの位置で行われてもよく、環境の提供は、パッチPAの別の位置で行われてもよく、物質の放出は、パッチPAのさらに別の位置で行われてもよい。
【0233】
図26〜
図28は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、2つのプレートPLの間の物質の移動経路の提供を示す。
図26〜
図28によれば、パッチPAは、第7の物質SB7が適用されたプレートPL1及び第8の物質SB8が適用されたプレートPL2の間の物質の移動経路を提供することができる。具体例として、第7の物質SB7が、第8の物質と結合する能力があり、第8の物質が、プレートPL2に固定される場合、パッチPAは、第7の物質SB7が、パッチPAを通って移動し、第8の物質SB8と結合するように、プレートPL1及びPL2と接触することができる。第7の物質SB7及び第8の物質SB8は、プレートPL1及びPL2と接触しているパッチPAによって形成された水膜WFを通して、パッチPAと接続されていてもよい。
【0234】
図29及び
図30は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、2つのパッチの間の物質の移動経路の提供を示す。
図29及び
図30によれば、移動経路を提供するために構成されたパッチPA6は、移動する物質を含有するように構成されたパッチPA5、及び移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7と接触することができる。移動経路を提供するために構成されたパッチPA6は、移動する物質を含有するように構成されたパッチPA5、移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7と接触することができ、移動する物質は、移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7に移動することができる。パッチ間の物質の移動は、パッチ間の接触領域の近傍で形成される水膜WFによって行われてもよい。
【0235】
図31及び
図32は、本出願によるパッチの一実施形態として、2つのパッチの間の物質の移動経路の提供を示す。図
31及び
図32によれば、移動経路を提供するために構成されたパッチPA9は、第9の物質SB9を含有するように構成されたパッチPA8、及び物質を受け取るために構成されたパッチPA10と接触することができる。移動経路を提供するパッチPA9は、第9の物質SB9を含有して、第9の物質SB9を吸収するために構成されたパッチPA8と接触することができる。吸収された第9の物質SB9は、移動経路を提供し、第11の物質を発生させるために構成されたパッチPA9に含有される第10の物質SB10と反応することができる。第11の物質SB11は、移動経路を提供するために構成されたパッチPA9から、物質を受け取るために構成されたパッチPA10に提供され得る。パッチPA間の物質の移動は、パッチPA間の接触領域の近傍で形成される水膜WFを通して行われてもよい。
【0236】
3.3 複数パッチ
パッチPAは、単独で使用されてもよく、又は複数のパッチPAが一緒に使用されてもよい。この場合において、一緒に使用することが可能な複数のパッチPAは、複数のパッチPAが連続的に使用される場合、及び複数のパッチPAが同時に使用される場合を含む。
【0237】
複数のパッチが同時に使用される場合、パッチPAは、異なる機能を果たしてもよい。複数のパッチPAのそれぞれのパッチPAは、同じ物質を含有していてもよいが、複数のパッチPAは、異なる物質を含有していてもよい。
【0238】
複数のパッチPAが、同時に使用される場合、パッチPAは、物質の移動が、パッチPA間で生じないように、互いに接触しなくてもよく、又は所望の機能は、パッチPAに含有された物質が交換可能である状態で果たされてもよい。
【0239】
一緒に使用される複数のパッチPAは、互いに類似の形状又は同じサイズで製造されてもよいが、複数のパッチPAは、複数のパッチPAが異なる形状を有する場合であっても、一緒に使用され得る。複数のパッチPAを構成するそれぞれのパッチPAは、メッシュ構造体NSの密度が異なるか、又はメッシュ構造体NSを構成する成分が異なるように、製造されてもよい。
【0240】
3.3.1 複数のパッチとの接触
複数のパッチPAが使用される場合、複数のパッチPAは、単一の標的領域TAと接触してもよい。複数のパッチPAは、単一の標的領域TAと接触し、所望の機能を果たすことができる。
【0241】
複数の標的領域TAが存在する場合、複数のパッチPAは、異なる標的領域TAと接触してもよい。複数の標的領域TAが存在する場合、複数のパッチPAは、それぞれ、対応する標的領域TAと接触し、所望の機能を果たすことができる。
【0242】
複数のパッチPAは、標的領域TAに適用された物質と接触してもよい。この場合において、標的領域TAに適用される物質は、固定されていてもよく、又は流動性を有していてもよい。
【0243】
所望の機能は、物質を提供又は吸収する機能であり得る。しかしながら、それぞれのパッチPAは、必ずしも、同じ物質を提供せず、又は同じ物質を吸収せず、パッチPAは、標的領域TAに異なる物質を提供してもよく、又は標的領域TAに配置された物質とは異なる成分を吸収してもよい。
【0244】
所望の機能は、複数のパッチPAを構成するそれぞれのパッチPAについて、異なっていてもよい。例えば、1つのパッチPAは、標的領域TAに物質を提供する機能を果たすことができ、別のパッチPAは、標的領域TAから物質を吸収する機能を果たすことができる。
【0245】
複数のパッチPAは、異なる物質を含んでいてもよく、異なる物質は、単一の標的領域TAに提供されて、所望の反応を引き起こすために使用することができる。複数の物質の成分が、所望の反応を起こすために必要である場合、複数の成分は、複数のパッチPAに、それぞれ含有され、標的領域TAに提供され得る。複数のパッチPAのそのような使用は、反応のために必要な物質が、単一のパッチPAに含有されるなどの理由のために混合されるときに、所望の反応のために必要な物質の性質が喪失又は変化する場合、特に有用であり得る。
【0246】
一実施形態によれば、複数のパッチPAが、異なる成分で形成される物質を含み、異なる成分で形成される物質が、異なる特異的な結合の関係を有する場合、異なる成分で形成される物質は、標的領域TAに提供され得る。複数のパッチPAは、異なる成分を含む物質を提供することによって、標的領域TAに適用された物質から、複数の特異的な結合を検出するために使用することができる。
【0247】
別の実施形態によれば、複数のパッチPAは、同じ成分で形成される物質を含んでいてもよいが、それぞれのパッチPAは、同じ成分で形成される物質に関して、異なる濃度を有していてもよい。同じ成分で形成される物質を含む複数のパッチPAは、標的領域TAと接触し、複数のパッチPAに含まれる物質の濃度に従って、影響を決定するために使用することができる。
【0248】
複数のパッチPAが、上記の説明のように使用される場合、パッチPAは、より効率的な形態にグループ化し、使用されてもよい。言い換えれば、使用される複数のパッチPAの配置は、複数のパッチPAが使用されるたびに変更することができる。複数のパッチPAは、カートリッジの形態で製造され、使用されてもよい。この場合において、使用されるそれぞれのパッチPAの形態は、適切に、規格化及び製造され得る。
【0249】
カートリッジの形態の複数のパッチPAは、複数の種類の物質を含有するように構成されたパッチPAが、製造され、必要により選択されることによって使用される場合に、適切であり得る。
【0250】
特に、複数の種類の物質を使用して、標的領域TAから、それぞれの物質の特異的な反応を検出しようとする場合、検出される特異的な反応の組み合わせは、検出が行われるたびに変更することができる。
【0251】
図33は、本出願によるパッチPAの実施形態として、複数のパッチPAが一緒に使用される場合を示す。
図33によれば、本出願の実施形態による複数のパッチPAは、プレートPLに配置された標的領域TAと、同時に接触することができる。複数のパッチPAを構成するパッチPAは、規格化された形態を有していてもよい。複数のパッチPAは、第1のパッチ及び第2のパッチを含むことができ、第1のパッチに含有される物質は、第2のパッチに含有される物質と異なっていてもよい。
【0252】
図34は、複数のパッチPAが使用され、プレートPLが複数の標的領域TAを含む場合を示す。
図34によれば、本出願の一実施形態による複数のパッチPAは、プレートPLに配置された複数の標的領域TAと、同時に接触することができる。複数のパッチPAは、第1のパッチPA及び第2のパッチPAを含むことができ、複数の標的領域TAは、第1の標的領域及び第2の標的領域を含むことができ、第1のパッチは、第1の標的領域と接触することができ、第2のパッチは第2の標的領域と接触することができる。
【0253】
3.3.2 第5の実施形態
複数のパッチPAは、複数の機能を果たすことができる。上記で説明するように、パッチPAは、複数の機能を同時に果たすことができ、パッチPAは、異なる機能を同時に果たすこともできる。しかしながら、実施形態は、上記に限定されず、機能を、組み合わせることもでき、複数のパッチPA中で果たすこともできる。
【0254】
最初に、パッチPAが、複数の機能を同時に果たす場合において、パッチPAは、物質の含有及び放出の両方を行うことができる。例えば、パッチPAは、異なる物質を含有し、標的領域TAに含有される物質を放出することができる。この場合において、含有される物質は、同時又は連続して、放出されてもよい。
【0255】
次に、パッチPAが、異なる機能を同時に果たす場合において、パッチPAは、別々に、物質の含有及び放出を行うことができる。この場合において、いくつかのパッチPAのみが、標的領域TAと接触し、標的領域TAに物質を放出してもよい。
【0256】
3.3.3 第6の実施形態
複数のパッチPAが使用される場合、上記で説明するように、複数のパッチPAは、複数の機能を果たすことができる。最初に、パッチPAは、物質の含有、放出及び吸収を同時に行ってもよい。或いは、パッチPAはまた、物質の含有、放出及び吸収を、別々に行ってもよい。しかしながら、実施形態は、これらに限定されず、機能を、組み合わせることもでき、複数のパッチPA中で果たすこともできる。
【0257】
例えば、複数のパッチPAの少なくともいくつかは、物質を含有することができ、含有された物質を、標的領域TAに放出することができる。この場合において、複数のパッチPAの少なくとも残りは、標的領域TAから物質を吸収することができる。複数のパッチPAのいくつかは、標的領域TAに配置された物質と特異的に結合する物質を放出することができる。この場合において、特異的な結合は、別のパッチPAを使用して、標的領域TAに配置された物質からの、特異的な結合を形成しない物質の吸収によって検出することができる。
【0258】
3.3.4 第7の実施形態
複数のパッチPAが使用される場合、パッチPAは、物質の含有及び放出、並びに環境の提供を、同時に行ってもよい。或いは、パッチPAは、物質の含有及び放出、並びに環境の提供を、別々に行ってもよい。しかしながら、実施形態は、これらに限定されず、機能は、複数のパッチPAを組み合わせて、果たすこともできる。
【0259】
例えば、複数のパッチPAの中で、パッチPAは、含有されている物質を、標的領域TAに放出することができる。この場合において、別のパッチPAは、標的領域TAに環境を提供することができる。ここで、環境の提供は、他のパッチPAに含有される物質の環境条件が、標的領域TAに提供される形態で、実施することができる。より詳細には、反応する物質は、パッチPAによって、標的領域TAに提供することができ、他のパッチPAは、標的領域TAと接触し、緩衝する環境を提供することができる。
【0260】
別の例として、複数のパッチPAは、互いに接触していてもよい。この場合において、少なくとも1つのパッチPAは、物質を含有し、含有されている物質を、環境を提供するために構成された別のパッチPAに、放出することができる。本実施形態において、環境を提供するために構成されたパッチPAは、物質を放出し、環境を提供するために構成されたパッチPAと接触していない少なくとも1つの他のパッチPAと接触し、パッチPAから物質を吸収することができる。
【0261】
4.血液検査(血液学的診断)
4.1 意味
本出願のパッチは、血液検査において使用することができる。血液検査は、被験者の健康状態、疾病又は疾患の存在、疾病又は疾患の進行などを診断するために、血液学的手法に従った、血液についての試験を指す。
【0262】
本出願のパッチは、血液の数の情報及び形態の情報を得る、様々な血液試験法において使用することができる。本明細書の以下において、本出願のパッチを使用する、いくつかの典型的な血液検査を述べる。しかしながら、血液検査が、本出願において以下で説明する例に限定されないことに留意すべきである。
【0263】
本出願のパッチを血液検査に適用する際、上述の塩基性物質BS及び添加物質ASは、パッチが適用される部位に従って、適切に変更することができる。
【0264】
4.2 血液検査の典型例
4.2.1 全血球算定(CBC)
血液検査の典型例として、CBC(全血球算定)を挙げることができる。CBSは、血球、すなわち、赤血球、白血球及び血小板についての数の情報又は形態の情報を使用する、最も基本的な血液検査の1つであり、疾患の診断、処置及び監視を含む、様々な臨床的適応を有する。
【0265】
4.2.2 末梢血塗抹標本検査
血液検査の別の典型例として、末梢血塗抹標本検査を挙げることができる。末梢血塗抹標本検査は、採取した血液を、スライドガラスに塗抹し、次いで、染色して、顕微鏡によって、血球の数若しくは形態の情報を検査するか、又は血液中の細菌若しくは寄生生物を発見する、検査である。例えば、赤血球は、貧血の識別及び貧血の原因を確定するのに使用されてもよく、白血球は、骨髄異形成症候群、白血病、感染症又は炎症の原因及び巨赤芽球性貧血を確定するのに有益であり得る。また、血小板は、骨髄増殖性疾患、血小板衛星現象などを確定するのに有益である。加えて、血小板は、結核菌などの細菌性病原体、又は血液中に存在する細菌を含む、様々な寄生生物を検出するために使用することもできる。
【0266】
4.3 染色法の例
本出願において、血液検査は、主に、スライドガラスなどのプレートPLに血液を塗抹すること、血液を染色すること、次いで、染色された血液を観察することによって、行うことができる。ここで、様々な染色法を、必要により、使用することができる。例えば、ギムザ染色法、ライト染色法及びギムザ−ライト染色法などのロマノフスキー染色法を、血液の染色において使用することができる。加えて、単染色法、グラム染色法又は細菌学的検査に付随するAFB(チール−ネールゼン)染色法などの染色法、及び子宮頸がん検査において主に使用されるパパニコロウ染色法を、本出願の血液検査において使用することができる。
【0267】
4.4 血液検査の実施
4.4.1 試料の調製
ここで、血液検査において使用される試料、すなわち、血液の調製を説明する。
【0268】
試料は、本出願のパッチPAを使用して、血液について検査するために、プレートPL上で調製することができる。
【0269】
ここで、プレートPLは、一般的なスライドガラス、及びポリスチレン、ポリプロピレンなどで製造されたプレートなどの固体プレートを指してもよい。異なる形状の底部又は異なる透明度を有するプレートを、検出方法に従って、プレートPLとして使用することができる。プレートPLは、パッチPAと接触し得るか、又は所望の反応を起こし得る、反応領域を含むことができる。
【0270】
4.4.2 パッチの調製
本出願において血液検査を行うにあたり、上述のパッチPAを使用することができる。
【0271】
パッチPAは、染色試薬を含有し、染色試薬をプレートPLに送達することができる。ここで、染色試薬は、血液検査の目的、又は血液検査を行うための染色法に従って、様々な方法に変更することができる。染色試薬の典型例としては、酢酸カルミン、メチレンブルー、エオシン、酸性フクシン、サフラニン、ヤヌスグリーンB、ヘマトキシリン、ギムザ溶液、ライト溶液及びライト−ギムザ溶液などのロマノフスキー染色法において使用される染色溶液、リーシュマン染色溶液、グラム染色溶液、石炭酸フクシン並びにチール−ネールゼン溶液が挙げられる。当然ながら、本開示における染色試薬は、上述の例に限定されず、血液を染色するための様々な他の物質を、必要により、染色試薬として使用することもできる。
【0272】
単一の染色試薬のみが、パッチPAに含有されていてもよい。例えば、単染色法などの1種類の染色試薬のみを使用する染色法を行おうとする場合、パッチPAは、単染色法において使用される、メチレンブルー、クリスタルバイオレット、サフラニンなどの中の1種類の染色試薬のみを含有することができる。
【0273】
ここで、2つ又はそれ以上の染色試薬が、パッチPAに一緒に含有されていてもよい。例えば、ギムザ染色法などの2つ又はそれ以上の染色試薬を一緒に使用する染色法を行おうとする場合、細胞質を赤く染色するエオシン、及び核を紫に染色するメチレンブルーなどの2つの染色試薬は、パッチPAに同時に含有されていてもよい。
【0274】
当然ながら、2つ又はそれ以上の染色試薬を一緒に使用する染色法を行おうとする場合であっても、パッチPAが上記で説明した染色法において使用されるすべての染色試薬を含有していることが、常に必要であるわけではない。すなわち、パッチPAは、染色法において使用される複数の染色試薬のいくつかのみを含有していてもよい。例えば、ギムザ染色法は、単一の染色試薬としてエオシンのみを含有するパッチPA及び単一の試薬としてメチレンブルー又はアズールブルーのみを含有するパッチPAを同時に使用することによって、行うこともできる。
【0275】
染色試薬として、細胞を直接染色するための物質を含むことに加えて、パッチPAはまた、脱色又は媒染のための物質を含んでいてもよい。例えば、グラム染色法を行おうとする場合、主染色試薬であるクリスタルバイオレットを含有するパッチPA、対比染色剤であるサフラニンを含有するパッチPA、媒染剤であるヨウ素を含有するパッチPA、及び脱色剤であるアルコールを含有するパッチPAを調製することができる。
【0276】
パッチPAは、固定液及びプレートPL上の固定塗抹された血液を含有していてもよい。メタノール若しくはエタノールなどのアルコール、又はホルムアルデヒドを固定液として使用することができる。
【0277】
パッチPAに含有される物質が疎水性である場合、パッチPAは、親水性の性質を有するように調製することもできる。例えば、これは、固定液又は脱色剤であるアルコールを含むパッチPAに適用される。ポリジメチルシロキサン(PDMS)ゲル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ゲル、シリコーンゲルなどを、疎水性のパッチPAの原料として使用することができる。
【0278】
或いは、固定剤又は脱色剤を含有するパッチPAにおいて、固定剤又は脱色剤は、固定剤又は脱色剤の凝固物質である固体物質によって置き換えることができる。これらの例は、凝固したメタノールなどを含むことができる。
【0279】
パッチPAは、洗浄液を含有でき、及びプレートPLからの残留物を吸収できる。洗浄液を含有し、パッチPAと接触し、次いで、そこから分離されるパッチPAによって、パッチPAは、プレートPLから不純物などを吸収及び除去することができる。上記で使用される洗浄液は、Twee20を含むトリス緩衝食塩水(TBS)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)であってもよい。
【0280】
パッチPAは、緩衝液を含有し、プレートPLに環境を提供することができる。この場合において、緩衝液は、適切に行われる血液検査のそれぞれのステップを容易にすることができる。したがって、それぞれのステップで使用される緩衝液は、異なる成分を含有することができる。それぞれの染色法について最適なpHを有する溶液を、緩衝液として使用することができる。
【0281】
上述のパッチPAは、別々に使用されてもよく、又は組み合わせて使用されてもよい。例えば、パッチPAは、染色試薬及び緩衝液を一緒に含有していてもよい。
【0282】
パッチPAを使用する血液検査の実施を、以下に、詳細に説明する。
【0283】
4.4.3 血液検査方法
ここで、本出願の上述のパッチPA及びプレートPLを使用する血液検査を行う方法のいくつかの典型例を説明する。
【0284】
しかしながら、本開示の血液検査方法は、以下に説明する例に限定されるものではなく、複数の変形された検出方法が存在し得るので、本方法は、パッチPAを使用して行われる血液検査方法のあらゆる場所で適用することができる。
【0285】
血液検査は、本出願のパッチPA及びプレートPLを使用して行うことができる。
【0286】
パッチPA及びプレートPLを使用する血液検査は、プレートPLに配置された試料を塗抹すること、パッチPAを、塗抹された試料と接触させて試料を染色すること、及び染色の結果を検出することによって行うことができる。
【0287】
4.4.3.1 血液の塗抹
プレートPLへの血液の塗抹は、様々な方法によって行うことができる。ここで、血液は、単層、又は必要により多層に塗抹されてもよい。
【0288】
図35及び
図36は、本開示の一実施形態による血液を塗抹する方法の一例に関する図である。
【0289】
一例によれば、プレートPLへの試料の塗抹は、プレートPLに血液滴を滴下すること、次いで、塗抹部材(別のスライドガラス、塗抹膜など)を使用して、プレートPLに血液を塗抹することを含むことができる。
【0290】
図35を参照すると、スライドガラスに滴下された血液滴を一方向に通過させる塗抹部材SMをスライドすることによって、血液をスライドガラスに塗抹することができる。この場合において、血液は、塗抹部材によって物理的に押し付けられる結果として、スライドガラス上に広がることができる。
【0291】
或いは、
図36を参照すると、血液は、塗抹部材SMがスライドガラスに滴下された血液滴と接触するポイントまで、一方向に塗抹部材SMをスライドさせ、次いで、塗抹部材SMを逆の方向にスライドさせることによって、スライドガラスに塗抹することができる。この場合において、塗抹部材及びスライドガラスの間で生じる毛細管作用に起因して、血液は、逆の方向に塗抹部材が進められることによって、スライドガラス上に広がることができる。
【0292】
図37は、本開示の一実施形態による血液を塗抹する方法の別の例に関する図である。
【0293】
別の例によれば、プレートPLへの試料の塗抹は、プレートPLに単層で血液を噴霧するために構成された塗抹ノズルを移動させることによって、プレートPLに血液を塗抹することを含むことができる。ここで、塗抹ノズルは、マイクロ流体チャネルを使用して、単層に、挿入された血液を噴霧することができる。
【0294】
図37を参照すると、スライドガラス上で、所定の経路に沿って移動しながら、血液を噴霧する塗抹ノズルSNによって、血液を、スライドガラスに塗抹することができる。
【0295】
4.4.3.2 血液の染色
血液の染色は、パッチPAに、プレートPLに塗抹された血液と接触する染色試薬を含ませることによって行ってもよい。塗抹された血液及びパッチPAが接触すると、パッチPAに含まれる染色試薬は、血液に移動し、血液中の、細胞質の内部に存在する顆粒、核、白血球などを染色することができる。
【0296】
核染色試薬を含むパッチPAは、血液中の核を染色することができる。塩基性染色試薬は、核染色試薬として主に使用され、塩基性染色試薬の典型例としては、メチレンブルー、トルイジンブルー及びヘマトキシリンが挙げられる。塩基性染色試薬は負に帯電しているので、パッチPAが、血液と接触すると、塩基性染色試薬は、パッチPAから血液に移動し、血液中の正に帯電した核と結合して、核を染色することができる。
【0297】
細胞質染色試薬を含むパッチPAは、血液中の細胞質又は細胞外構造を染色することができる。酸性染色試薬は、細胞質染色試薬として主に使用され、酸性染色試薬の典型例としては、エオシン、酸性フクシン及びオレンジGが挙げられる。酸性染色試薬は正に帯電しているので、パッチPAが、血液と接触すると、酸性染色試薬は、パッチPAから血液に移動し、血液中の負に帯電した細胞質又は細胞外部分と結合して、細胞質又は細胞外部分を染色することができる。
【0298】
顆粒は、塩基性染色試薬及び酸性染色試薬によって、適切な色に染色することができる。例えば、顆粒は、メチレンブルー及びエオシンによって紫に染色することができる。
【0299】
当然ながら、血液の染色は、上述の染色試薬を使用して、常に行う必要があるわけではない。
【0300】
例えば、パッチPAは、正に帯電した部分及び負に帯電した部分を同時に含む中性染色試薬を含有していてもよい。中性染色試薬を含有するパッチPAが、血液と接触すると、染色試薬の負に帯電した部分は、血液中の正に帯電した部分(例えば、細胞質)と結合し、所定の色で正に帯電した部分を染色することができ、染色試薬の正に帯電した部分は、血液中の負に帯電した部分(例えば、核)と結合し、所定の色とは異なる色で負に帯電した部分を染色することができる。中性染色試薬の典型例としては、ライト染色試薬を挙げることができる。
【0301】
上記の説明において、存在する染色標的の色を発現させるための染色プロセスを主に説明したてきたが、これとは違って、染色試薬の代わりに、染色標的が蛍光色を発することを可能にする蛍光物質を使用することもできる。例えば、核を観察しようとする場合、核は、核と結合する物質に蛍光物質を添加する方法によって、蛍光色を発生させることが可能になり得る。
【0302】
4.4.3.3 血液の検査
血液についての検査は、染色された血液に関する画像を取得すること及び取得した画像を解析することによって行うことができる。
【0303】
ここで、画像の取得は、光学デバイスを使用して行うことができる。血液中の染色された赤血球、白血球又は血小板などの血球、又は血液中の細菌などの病原体を検出するために適切な倍率で、染色された血液の画像を取得することが可能なあらゆるデバイスを、光学デバイスとして使用することができる。例えば、光学デバイスは、電荷結合素子(CCD)又は相補型MOS(CMOS)で構成された光学センサー、光学経路を提供するために構成された鏡筒、倍率又は焦点距離を調節するために構成されたレンズ、及びCCD又はCMOSによって取得された画像を保存するために構成された記憶装置を含むことができる。
【0304】
図38及び
図39は、本開示の一実施形態による、染色された血液の画像の取得に関する図である。
【0305】
図38及び
図39を参照すると、光学デバイスODは、パッチPAを使用して染色された血液を、プレートPLに塗抹しながら、画像を直接取得することができる。ここで、光学デバイスODは、光源LSから照射され、染色された血液が塗抹されたプレートPLを通過する光を受信し、染色された血液の画像を取得することができる。
【0306】
一例として、
図38を参照すると、光学デバイスODは、血液が塗抹されたスライドガラスの表面(本明細書の以下において、「前面」と称する)に配置することができ、光源LSは、スライドガラスの、前面の逆の表面、すなわち、裏面に配置することができる。このような配置に起因して、光学デバイスODは、スライドガラスの裏側で光源LSから放射され、スライドガラスを通過する光を受信し、染色された血液の画像を取得することができる。
【0307】
別の例として、
図39を参照すると、光学デバイスODは、スライドガラスの裏面に配置することができ、光源LSは、スライドガラスの前面に配置することができる。このような配置に起因して、光学デバイスODは、スライドガラスの前側で光源LSから放射され、スライドガラスを通過する光を受信し、染色された血液の画像を取得することができる。
【0308】
ここで、プレートPLは、光源からの光出力が、可能な限り容易に透過する材料で、製造され得ることが好ましい。光源は、白色光、又は特定の波長域の波長を出力し得る。
【0309】
しかしながら、画像を高倍率でチェックする必要がある場合、プレートPL又はパッチPAを透過した光なしで、観察を行うことが好ましくあり得る。
【0310】
血液検査は、取得された画像から、様々な情報を取得することによって行うことができる。
【0311】
一例として、画像は、コンピューター又は医療機器のモニターを通して、試験者に提供され得る。試験者は、血球の数、血球の形態、細菌の存在、細菌の数、形態などを特定し、特定された結果に基づいて、被験者の健康状態又は疾患の状態を決定することができる。
【0312】
別の例として、画像解析プログラムがインストールされた電子デバイスは、光学デバイスから画像を取得することができ、血球の数若しくは形態、又は細菌の存在、数若しくは形態に対する情報を、画像から生成することができる。生成された情報は、コンピューター又は医療機器のモニターを通して、試験者に提供され得る。試験者は、受信した情報に基づいて、被験者の健康状態又は疾患の状態を決定することができる。
【0313】
さらに別の例として、画像解析プログラムがインストールされた電子デバイスによって生成された情報は、血液検査プログラムがインストールされた電子デバイスに提供することができ、血液検査プログラムがインストールされた電子デバイスは、提供された情報に基づいて、被験者の健康状態又は疾患の状態を決定することができる。ここで、画像解析プログラム及び血液検査プログラムの両方がインストールされた単一の電子デバイスは、画像解析の動作及び血液検査の動作の両方を行うこともできる。
【0314】
画像解析プログラムは、取得された画像を解析することができる。詳細には、画像解析プログラムは、取得された画像から、血液中の血球又は細菌の数の情報及び形態の情報を取得することができる。
【0315】
画像解析プログラムは、取得された画像から血球の種類を決定することができる。血球の種類としては、白血球、赤血球又は血小板が挙げられ、より詳細には、ある種の白血球を挙げることもできる。画像解析プログラムは、血球が異常であるか否かを決定することもできる。ここで、画像解析プログラムは、画像中の血球のサイズ又は形態に基づいて、血液の種類又は異常を決定することができる。
【0316】
画像解析プログラムは、血液中の細菌の存在を決定することができる。
【0317】
画像解析プログラムは、異なる種類の血球の数、異常な血球の数又は細菌の数を計数することができる。
【0318】
血液検査プログラムは、血球又は細菌に関する数の情報(例えば、それぞれの種類の血球の数、異常な血球の数、細菌の数など)及び形態の情報(血球の形態又は細菌の形態)に基づいて、被験者の健康状態、疾患の存在、疾患の進行などを決定することができる。
【0319】
少なくとも1つの上述の画像解析プログラム及び血液検査プログラムは、予め設定されているアルゴリズムに従うか、又はディープラーニングなどの機械学習によって形成されたアルゴリズムに従う、上述の決定プロセスを行うことができる。
【0320】
4.5 血液検査の実施形態
図40は、本出願による血液検査方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
【0321】
本出願の実施形態による血液検査方法は、試験される標的である血液を反応領域に配置するステップ(S200)、血液を染色するための染色試薬を含有するパッチPAを使用して、反応領域に染色試薬を提供するステップ(S300)を含むことができる。
【0322】
試験される標的である血液の配置(S200)は、プレートPLに試料を塗抹する上述の方法によって行うことができる。
【0323】
図41は、本出願の実施形態による血液検査方法において、反応領域への染色試薬の提供の一例を説明するためのフローチャートを示す。
【0324】
図41を参照すると、反応領域への染色試薬の提供(S300)は、染色試薬が反応領域に移動可能であるように、パッチを反応領域に接触させるステップ(S310)、及び反応領域からパッチPAを分離するステップを含むことができる。
【0325】
染色試薬を含有するパッチPAが血液と接触すると(S310)、パッチPA中の染色試薬は、反応領域に移動し、血液を染色することができる。例えば、塩基性染色試薬を含有するパッチPAが、血液と接触すると、塩基性染色試薬は、反応領域に移動し、血球の中から、白血球の核又は血液中に存在する細菌の核を染色することができる。別の例として、酸性染色試薬を含有するパッチPAが、血液と接触すると、酸性染色試薬は、反応領域に移動し、血球又は細菌の細胞質若しくは細胞外構造を染色することができる。
【0326】
パッチPAは、反応領域から分離される(S320)。パッチPA及び反応領域の間の接触を維持する時間が、極めて短い場合、十分な染色を行うことは困難である。反対に、接触を維持する時間が極めて長い場合、血液検査全体に要する時間が増加するだけでなく、過剰量の染色試薬が血液に移動し、染色の品質が低下することがある。したがって、パッチPAは、パッチPAが反応領域に移動した後の一定の時間後、接触領域から分離される。接触を維持する時間は、パッチPAの染色試薬の濃度、ゲル型構造の密度、及び温度条件などの外部条件を考慮して、適切に設定することができる。
【0327】
図42は、本出願の一実施形態による血液検査方法において、反応領域への染色試薬の提供の別の例を説明するためのフローチャートを示す。
【0328】
図42を参照すると、反応領域への染色試薬の提供(S300)は、第1の染色試薬が反応領域に移動可能であるように、第1のパッチPAを反応領域と接触させるステップ(S330)、反応領域から第1のパッチPAを分離するステップ(S340)、第2の染色試薬が反応領域に移動可能であるように、第2のパッチPAを反応領域と接触させるステップ(S350)、及び反応領域から第1のパッチPAを分離するステップ(S360)を含むことができる。
【0329】
ここで、第1のパッチPA及び第2のパッチPAは、血液の異なる成分を染色するために、第1の染色試薬及び第2の染色試薬をそれぞれ含有するパッチPAである。例えば、第1の染色試薬は、塩基性染色試薬及び酸性試薬のいずれか1つであってもよく、第2の染色試薬は、塩基性染色試薬及び酸性染色試薬の他の1つであってもよい。したがって、第1のパッチPA及び第2の染色パッチPAの一方は、血液中の、血球の細胞質若しくは細胞外構造又は細菌の細胞質若しくは細胞外構造を染色してもよく、他方は、血液中の、血球の核又は細菌の核を染色してもよい。
【0330】
3つ又はそれ以上の染色試薬(例えば、主染色剤、対比染色剤、媒染剤など)が、血液の染色において使用が必要である場合、同じ数の染色パッチPAを必要により追加することができ、反応領域との染色パッチの接触及び反応領域からの染色パッチの分離は、それぞれ追加された染色パッチPAについて行うことができる。
【0331】
図43は、本出願による血液検査方法の別の例を説明するためのフローチャートを示す。
【0332】
図43を参照すると、血液検査方法は、試料の配置(S200)及び反応領域への染色試薬の提供(S300)に加えて、洗浄パッチPAを使用して、反応領域から外来物質を吸収するステップ(S600)をさらに含むことができる。ここで、洗浄パッチPAは、洗浄液を含有するパッチPAであり得る。
【0333】
図44は、本出願の別の実施形態による血液検査方法において、反応領域からの外来物質の除去の一例を説明するためのフローチャートを示す。
【0334】
図44を参照すると、洗浄パッチPAを使用する反応領域からの外来物質の吸収(S600)は、外来物質が反応領域から洗浄パッチPAに移動可能であるように、パッチPAを反応領域と接触させるステップ(S610)、及び反応領域からパッチPAを分離するステップ(S620)を含むことができる。
【0335】
洗浄液を含有するパッチPAが血液と接触すると(S610)、反応領域に残留した外来物質は、染色プロセス中に、パッチPAに吸収され得る。次いで、洗浄パッチPAが反応領域から分離されると(S620)、パッチPAは、プレートPL及びパッチPAの間で形成された水膜を吸収する間に、水膜WF中の外来物質を吸収することができる。
【0336】
図45は、本出願による血液検査方法のさらに別の例を説明するためのフローチャートを示す。
【0337】
図45を参照すると、血液検査方法は、試料の配置(S200)及び反応領域への染色試薬の提供(S300)に加えて、緩衝パッチPAを使用して、反応領域に所定の環境を提供するステップ(S800)をさらに含むことができる。ここで、緩衝パッチPAは、緩衝液を含有するパッチPAであり得る。
【0338】
図46は、本出願の別の実施形態による血液検査方法において、反応領域への所定の環境の提供の一例を説明するためのフローチャートを示す。
【0339】
図46を参照すると、緩衝パッチPAを使用する反応領域への所定の環境の提供(S800)は、所定の環境が反応領域に提供されるように、緩衝パッチPAが反応領域と接触させるステップ(S810)、及び反応領域から緩衝パッチPAを分離するステップ(S820)を含むことができる。
【0340】
緩衝液を含有するパッチPAが反応領域と接触すると(S810)、血液を染色する染色試薬に必要な所定の条件を、反応領域に作り出すことができる。例えば、緩衝パッチPAが反応領域と接触すると、緩衝パッチPA及びプレートPLの間の水膜WFの酸性度は、緩衝液に起因して染色に必要な最適pHに達することができ、したがって、染色品質が改善され得る。過剰量の染色試薬が染色パッチPAから血液に移動し、血球若しくは細菌が過度染色される場合、又は血液が、複数の染色試薬を使用するために、第1の染色パッチPA及び第2の染色パッチPAを使用して、2つ又はそれ以上の染色試薬で染色される場合、緩衝パッチPAは、反応領域に染色のために適した環境を作り出すことができ、染色品質が改善され得る。
【0341】
緩衝パッチPAが反応領域から分離されると(S820)、水膜WFは、緩衝パッチPAに吸収されてもよく、血液と結合していない残留した染色試薬は、水膜WFと一緒に緩衝パッチPAに吸収されてもよい。したがって、過剰量の染色試薬が血液に適用される場合であっても、染色品質の劣化は、緩衝パッチPAが、反応領域と接触して、次いで、分離される場合に、防止することができる。
【0342】
図47は、本出願による血液検査方法のさらに別の例を説明するためのフローチャートを示す。
【0343】
図47を参照すると、本出願の血液検査を行う方法は、プレートPLに血液を塗抹するステップ(S100)、及び塗抹された血液を固定するステップ(S120)をさらに含むことができる。
【0344】
プレートPLへの血液の適用(S100)は、血液を、単層又は単層に類似の薄層で、塗抹することを含むことができる。
【0345】
診断が、単層に類似の形状で塗抹された血液によって行われる場合、上記で説明するように、プレートPLに塗抹された血液及びプレートPLと接触するパッチPAの間の有効表面積は、最大化され得る。言い換えれば、血液を塗抹すること、及び標的が検出されるようにパッチPAを血液と接触させることによって、少量の血液であっても、有効な結果を取得することができる。反応領域は、血液が分布する領域が、有効表面積を拡大するために複雑に設計され、診断が行われる、従来の血液検査方法と比較して、非常に単純に実施することができる。
【0346】
さらに、血液が薄層で塗抹される場合、画像解析によって疾患の検査又はCBCを行う場合に、定性分析が可能であるという利点がある。
【0347】
血液は、必要に応じて、薄層での塗抹に代えて、所定の厚さの厚い層で塗抹することもできる。
【0348】
プレートPLへの血液の固定(S120)は、血液を、単層又は単層に類似の薄層で、塗抹すること、及び血液を固定することを含むことができる。
【0349】
上記に説明する、洗浄パッチPAを使用する反応領域からの外来物質の吸収(S600)及び緩衝パッチPAを使用する反応領域への所定の環境の提供(S800)は、染色試薬を含有するパッチPAを使用して、染色試薬が血液に提供される前及び後の時点のうちの少なくとも1つの時点の間に行うことができる。しかしながら、ステップS600又はS800は、最終の染色品質を改善するために、染色試薬の提供後に行われることが好ましくあり得る。
【0350】
異なる染色試薬を含有する複数のパッチPAが、血液と接触し、そこから分離される場合、ステップS600及びS800のそれぞれは、複数のパッチPAが血液と接触する前の時点、接触の後の時点、及び複数のパッチPAが血液と接触している間の時点のうちの少なくとも1つの時点中に行うことができる。しかしながら、ステップS600及びS800は、最終の染色品質を改善するために、染色試薬の送達後に行われることが好ましくあり得る。
【0351】
緩衝パッチPAは、洗浄パッチPAとしての機能を果たすこともできるので、ステップS600は、緩衝パッチPAを使用して行うこともできる。それに応じて、緩衝パッチPAは、血液と接触する際に、洗浄機能及び緩衝機能を果たすので、ステップS800は、ステップS800が緩衝パッチPAによって行われるプロセス中に、一緒に行うことができる。
【0352】
同様に、洗浄パッチPAは、緩衝パッチPAとしての機能を果たすこともできるので、ステップS800は、洗浄パッチPAを使用して行うこともできる。これによれば、洗浄パッチPAは、血液と接触する際に、緩衝機能及び洗浄機能を果たすので、ステップS600は、ステップS600が洗浄パッチPAによって行われるプロセス中に、一緒に行うことができる。
【0353】
染色試薬を含有するパッチPAが、溶媒として緩衝液を使用する場合、染色試薬を含有するパッチPAは、緩衝パッチPAとしての機能を果たすこともできる。これによれば、染色パッチPAは、血液と接触する際に、緩衝機能及び染色機能を果たすので、ステップS800は、ステップS200が染色パッチPAによって行われるプロセス中に、一緒に行うことができる。
【0354】
染色試薬を含有するパッチPAが、溶媒として洗浄液を使用する場合、染色試薬を含有するパッチPAは、洗浄パッチPAとしての機能を果たすこともできる。これによれば、染色パッチPAは、血液と接触する際に、洗浄機能及び染色機能を果たすので、ステップS600は、ステップS200が染色パッチPAによって行われるプロセス中に、一緒に行うことができる。
【0355】
染色試薬を含有するパッチPAが、内部溶媒として洗浄液又は緩衝液を使用する場合、染色試薬を含有するパッチPAは、洗浄パッチPA及び緩衝パッチPAとしての機能を果たすこともできる。これによれば、染色パッチPAは、血液と接触する際に、洗浄機能及び緩衝機能並びに染色機能を果たすので、ステップS600及びS800は、ステップS200が染色パッチPAによって行われるプロセス中に、一緒に行うことができる。
【0356】
本明細書の以下において、パッチPA及びプレートPLを使用して血液検査を行う具体的な方法を、いくつかの実施形態を使用して説明する。
【0357】
4.5.1 参照実施形態1−単染色
本出願の一実施形態による血液検査は、プレートPL及びパッチPAを使用する単染色法によって行うことができる。
【0358】
図48は、本出願による血液検査方法の一例として、単染色による血液検査方法を説明するためのフローチャートを示す。
【0359】
本出願の一実施形態による、単染色による血液検査方法は、反応領域に血液を配置するステップ(S200)、反応領域に染色試薬を提供するステップ(S300)、染色結果に関する画像を取得するステップ(S400)及び画像を解析し、血液検査を行うステップ(S500)を含むことができる。
【0360】
単染色による血液検査における染色試薬の提供(S300)は、血液に単一の染色試薬を提供することを含む。本実施形態において、これは、主に、単一の染色試薬を含有する単一の染色パッチを使用して、行うことができる。
【0361】
染色試薬の提供(S300)は、最初に、染色試薬を含有する染色パッチPAを、スライドガラスなどのプレートPL上の反応領域と接触させるステップ(S310)及びプレートPLから染色パッチPAを分離するステップを含むことができる。
【0362】
図49は、染色試薬が、本出願による、単染色による血液検査方法において提供されるプロセスを示す図である。
【0363】
図49を参照すると、染色パッチPAは、染色試薬を含有し、プレートPL上に配置された血液に染色試薬を提供することができる(S310)。パッチPAによるプレートPLへの染色試薬の提供は、染色試薬が、接触領域の近傍で形成される水膜WFによって、プレートPL又はプレートPL上の反応領域に移動可能であるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって行うことができる。
【0364】
プレートPLへの染色試薬の提供は、染色試薬と、血液、特に、血球の核、細胞質、細胞外構造など、又は血液中に含まれる細菌との間の反応に起因し得る。言い換えれば、染色パッチPAが、反応領域と接触すると、染色試薬は、染色パッチPAから、反応領域に塗抹され、固定された血液に移動することができ、移動した染色試薬は、血液中の標的物質と結合して、標的物質を染色することができる。
【0365】
ここで、緩衝液が、染色パッチPAにおいて溶媒として使用される場合、染色が容易になり得る。当然ながら、緩衝パッチは、染色反応に適した所定の環境を与えるために使用することができる。
【0366】
染色試薬が血液に十分に提供されると、染色パッチPAは、反応領域から分離される(S320)。この場合において、血液中の標的物質と反応する染色試薬は、標的物質と結合している間、反応領域に残留していてもよく、標的物質と結合していない残留した染色試薬は、染色パッチPAに再吸収され得る。
【0367】
詳細には、染色試薬を含有するパッチPAがプレートPLから分離されると、血液と結合することなくプレートPLに移動した染色試薬は、染色パッチPAに吸収され得、プレートPLから除去され得る。ここで、残留した染色試薬の染色パッチPAへの吸収は、染色パッチPA及びプレートPLの間の接触によって形成された水膜WF中に残留した残留染色試薬によって、並びに染色パッチPAがプレートPLから分離されるときに、染色パッチPAと一緒に移動する水膜WFによって、行うことができる。
【0368】
このプロセスにおいて、染色試薬の少なくとも一部は、染色パッチに吸収されることなく、血液中に残留していてもよい。残留した染色試薬は、残留した染色試薬と接触して、そこから分離される、緩衝パッチ又は洗浄パッチによって、反応領域から除去することができる。
【0369】
当然ながら、残留染色試薬は、染色パッチの分離だけによってプレートPLから除去されるので、従来の血液検査のために染色を行うのに実質的に必要な洗浄プロセス及び緩衝プロセスを、省略することもできる。言い換えれば、本実施形態によれば、洗浄液を使用して、プレートPLから残留した染色試薬を除去するための洗浄プロセスを省略することができる。
【0370】
染色が終了すると、プレートPLの反応領域の画像は、染色画像を取得するために取得され(S400)、取得された画像は解析されて、血液検査を行うことができる(S500)。
【0371】
本出願の実施形態による、単染色による血液検査方法は、上記に説明した、プレートPLへの血液の塗抹(S100)、塗抹された血液の固定(S120)、洗浄パッチPAを使用する反応領域の洗浄(S600)、及び緩衝パッチPAを使用する反応領域への所定の環境の提供(S800)のうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。ここで、ステップS100及びS120は、ステップS200の前に行ってもよい。加えて、ステップS600及びS800は、ステップS200及びS400の間の1つ又は複数の時に行ってもよい。
【0372】
洗浄パッチPAを使用する反応領域の洗浄(S600)は、プレートPLと接触しているパッチPAを洗浄すること、及び残留物を吸収することを含み得る。洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、プレートPLと接触しているパッチPAを洗浄すること、及び反応領域に存在する、固定された血液又は様々な外来物質の少なくとも一部と反応していない染色試薬を吸収することを含むことができる。
【0373】
したがって、洗浄(S600)は、上記に説明するように、血液がプレートPLに固定された後、反応領域への染色試薬の提供(S300)の前若しくは後、又は反応領域への染色試薬の提供(S300)の前及び後の両方に、行うことができる。或いは、洗浄(S600)は、画像取得(S400)の前若しくは後、又は画像取得(S400)の前及び後の両方に、行うこともできる。
【0374】
緩衝パッチPAを使用する反応領域への所定の環境の提供(S800)は、緩衝パッチPAをプレートPLと接触させること、並びに染色試薬及び血液中の標的物質の間の反応を容易にすることを含むことができる。緩衝パッチPAは、染色試薬の提供(S300)の後に使用することができ、緩衝パッチPAが、反応領域と接触すると、主な成分として緩衝パッチPAに含有される緩衝液を有する水膜WFがプレートPL及びパッチPA上に形成され得、水膜は、染色試薬及び標的物質の間の反応のための最適なpHを提供することができ、染色試薬及び標的物質は、最適なpH条件下、水膜中で反応することができる。したがって、染色試薬による標的物質の染色を容易にすることができる。
【0375】
ここで、緩衝(S800)及び洗浄(S600)は、上記の緩衝パッチPA及び洗浄パッチPAによって、別々に行われるように説明してきたが、2つのステップは、洗浄機能及び緩衝機能を有する単一のパッチPAを用いて一緒に行うこともできる。
【0376】
本実施形態によれば、血液の染色、反応領域の洗浄、反応領域への所定の環境の提供などは、パッチPAを使用して行うことが必ずしも必要ではないことがある。言い換えれば、いくつかのプロセスは、パッチPAの使用に代えて、対応するプロセスに必要な溶液を使用して行うことができる。例えば、反応領域の洗浄は、洗浄パッチPAを反応領域と接触させることに代えて、反応領域上に洗浄液を噴霧することによって行ってもよい。
【0377】
本実施形態において、血液の染色、反応領域の洗浄、反応領域への所定の環境の提供などが、パッチPAを血液と接触させることによって行われる場合、対応するプロセスは、直接溶液を噴霧することによる対応するプロセスを行う場合と比較して、少量の溶液又は試薬で完了することができ、経済的な利益を得ることができる。また、本実施形態によれば、パッチPAに含有される様々な溶液をプレートPLに直接噴霧することと比較して、反応物の染色の程度、洗浄の程度、緩衝の程度を制御することが容易であり、過剰反応を防止することができ、対応するプロセスを、より正確に行うことができ、結果として、染色品質が改善され得る。
【0378】
図50〜
図52は、本出願による、単染色による血液検査方法において取得された画像に関する図である。
【0379】
上述の単染色は、通常、血液中の細菌を検出するため、又は細菌感染の程度、細菌の増殖などの程度をチェックするために使用することができる。
図50を参照すると、クリスタルバイオレットを染色試薬として使用すると、血液中の大腸菌を染色することができる。
図51を参照すると、メチレンブルーを染色試薬として使用すると、血液中のジフテリア菌を染色することができる。上記の細菌を検出するために、核を染色するための塩基性染色試薬を、主に、血液中の細菌と赤血球とを識別するために使用することができる。しかしながら、実施形態は、これらに必ずしも限定されるものでなく、酸性染色試薬又は中性染色試薬も、染色標的に応じて、使用することができる。
【0380】
加えて、上述の単染色は、CBCのために使用することもできる。
図52を参照すると、メチレンブルーを染色試薬として使用すると、血液中の白血球を染色することができる。この方法において、血液中の白血球の数を定量化することができる。
図53を参照すると、エオシンを染色試薬として使用すると、血液中の血球を染色することができる。この場合において、赤血球又は血小板の細胞質、及び白血球は、すべて染色され、異なる血球は、血球の形態又はサイズに基づいて、画像解析により識別することができる。異なる血球が識別されると、血液中の血球のそれぞれの種類を定量化することができる。したがって、CBCを完了することができる。
【0381】
本実施形態による血液検査において使用され得るパッチPAの実施形態を以下で説明する。それぞれのパッチPAはいくつかの成分を含有するものとして説明され、それぞれの成分は、上述の塩基性物質BS又は添加物質ASとして理解され得る。しかしながら、それぞれのパッチPAに含有され得るように説明されている成分は、それぞれのパッチPAに含有されるすべての構成要素を表すものではなく、それぞれのパッチPAは、他の列挙されていない成分を含有することもできる。
【0382】
4.5.1.1 染色パッチ
本出願の血液検査は、染色試薬を含有する染色パッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、パッチPAは、血液中の標的物質と反応し、標的物質を染色する染色試薬を含有することができ、プレートPLに染色試薬を送達することができる。
【0383】
染色試薬は、パッチPAに含有される添加物質ASであってもよい。言い換えれば、パッチPAは、染色試薬を含む溶液を含有していてもよい。染色試薬が含有されるパッチPAは、染色試薬又は染色試薬を含有する溶液に加えて、染色試薬が血液中の標的領域と容易に結合することを可能にする、塩基性物質BS又は添加物質ASを含有することもできる。
【0384】
染色試薬は、標的物質と主に電気化学的に結合し、発色する物質であってもよい。染色試薬の例として、塩基性染色試薬、中性染色試薬及び酸性染色試薬が挙げられる。染色試薬の例は上記で詳細に説明したので、染色試薬の詳細な説明は省略する。
【0385】
本実施形態におけるように、染色試薬がパッチPAに含有され、プレートPLに提供される場合、プレートPLに固定された血液と反応しない染色試薬の一部は、パッチPAに再吸収され得る。したがって、洗浄プロセスは省略することができ、パッチPAは、いくつかの場合において、再利用することができ、迅速で効率的な診断を実現することができる。
【0386】
本出願の実施態様によるパッチPAは、標的物質と反応するために構成された染色試薬を含む、染色試薬含有パッチPA、並びに、染色試薬を含有するマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、含有される染色試薬の一部が反応領域に提供されるように、血液が配置された反応領域と接触するように構成されたメッシュ構造体NSであってもよい。
【0387】
4.5.1.2 洗浄パッチ
本実施形態による血液検査方法は、残留物を吸収するために構成された洗浄パッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、本実施形態による血液検査方法において、残留物は、プレートPLと接触し、プレートPLから分離される洗浄パッチPAによって吸収され得る。残留物は、それぞれのパッチに吸収されない残留物を指し、上述の染色パッチPAが、プレートPLと接触し、次いでプレートPLから分離されるときに、除去され得る。
【0388】
洗浄パッチPAは、洗浄液を含有することができる。洗浄液は、その部分に添加されたTween20を有するTBS又はPBSを含むことができる。洗浄液は、吸収される残留物に応じて、残留物を溶解することができる溶液として提供され得る。洗浄液を含有するパッチPAは、洗浄を助ける塩基性物質BS又は添加物質ASをさらに含有していてもよい。
【0389】
パッチPAが洗浄液を含有し、プレートPLと接触し、次いで、プレートPLから分離されることによって、プレートPL上の不純物又は残留物、例えば、結合していない染色試薬又は他の外来物質は、洗浄パッチPAに吸収され、除去することができる。
【0390】
洗浄パッチPAへの残留物の吸収において、水膜WFが形成されるように、洗浄パッチPAは、プレートPL、すなわち、血液が配置されるプレートPLの領域と接触することができ、残留物を、水膜WFに溶解することができる。水膜WFに溶解した残留物は、水膜WFがプレートPLから分離され、洗浄パッチPAと一緒に移動するときに、洗浄パッチPAに吸収され得る。
【0391】
4.5.1.3 緩衝パッチ
本実施形態による血液検査方法は、緩衝パッチを使用して行うことができる。言い換えれば、緩衝パッチPAは、緩衝液を含有することができ、プレートPLに所定の環境を提供することができる。緩衝パッチPAは、血液検査のそれぞれのステップを容易にする緩衝液を含有することができる。緩衝液は、主に、所望の塩基性の反応に必要な最適のpHを有する緩衝液であってもよい。
【0392】
4.5.2 参照実施形態2−ロマノフスキー染色
本出願の実施形態による血液検査は、プレートPL及びパッチPAを使用するロマノフスキー染色法によって行うことができる。
【0393】
図54は、本出願による血液検査方法の別の例として、ロマノフスキー染色による血液検査方法を説明するためのフローチャートを示す。
【0394】
本出願の実施形態による、ロマノフスキー染色による血液検査方法は、反応領域に血液を配置するステップ(S200)、反応領域に染色試薬を提供するステップ(S300)、染色結果に関する画像を取得するステップ(S400)及び画像を解析し、血液検査を行うステップ(S500)を含むことができる。
【0395】
ロマノフスキー染色による血液検査における染色試薬の提供(S300)は、血液に少なくとも2つ又はそれ以上の染色試薬を提供することを含む。本実施形態において、これは、主に、複数の染色試薬の1つをそれぞれ含有する複数の染色パッチを使用して行うことができる。しかしながら、説明の便宜上、2つの染色試薬を使用して血液を染色するための、2つの染色パッチPA,すなわち、第1の染色パッチPA及び第2の染色パッチPAの使用に基づいて、以下に説明する。しかしながら、本実施形態において、染色パッチPAの数は、2つに限定されるものではなく、3つ又はそれ以上の染色パッチPAを使用することもできる。以下の説明において、3つ又はそれ以上の染色パッチPAが使用される変形例は、当業者の創作性なく適用することができるので、この変形例は、本実施形態に属するものとして理解されるべきである。
【0396】
染色試薬の提供(S300)は、最初に、染色試薬を含有する第1の染色パッチPAを、スライドガラスなどのプレートPL上の反応領域との接触させるステップ(S330)、第2の
染色パッチPAを、第2の染色試薬が反応領域に移動可能なように、反応領域と接触させるステップ(S350)、及び反応領域から第1の
染色パッチPAを分離するステップ(S360)を含むことができる。
【0397】
図55は、第1の染色試薬が、本出願による、ロマノフスキー染色による血液検査方法に提供されるプロセスを示す図であり、
図56は、第2の染色試薬が、本出願による、ロマノフスキー染色による血液検査方法に提供されるプロセスを示す図である。
【0398】
図55及び56を参照すると、第1の染色パッチPAは、第1の染色試薬を含有し、プレートPLに配置された血液に染色試薬を提供する(S330)。次いで、第1の染色試薬が血液に十分に提供されると、第1の染色パッチPAは、反応領域から分離される(S340)。次に、第2の染色パッチPAは、第2の染色試薬を含有し、プレートPLに配置された血液に染色試薬を提供する(S350)。次いで、第2の染色試薬が血液に十分に提供されると、第2の染色パッチPAは、反応領域から分離される(S360)。
【0399】
ここで、第1の染色試薬及び第2の染色試薬は、血液中の異なる標的物質を染色することができる。例えば、第1の染色試薬は、核を染色する塩基性染色試薬及び細胞質を染色する酸性染色試薬のうちのいずれか1つであってもよく、第2の染色試薬は、他のものであってもよく、又は、逆であってもよい。詳細には、第1の染色試薬は、メチレンブルーであってもよく、第2の染色試薬は、エオシンであってもよい。当然ながら、第1の染色試薬及び第2の染色試薬の種類は、上述の例に限定されるものではないことに留意すべきである。
【0400】
再び
図55を参照すると、第1の染色パッチPAが、反応領域と接触すると、第1の染色試薬は、第1の標的物質を染色することができる。再び
図56を参照すると、第2の染色パッチPAが、反応領域と接触すると、第2の染色試薬は、第2の標的物質を染色することができる。ここで、第1の標的物質は、核及び細胞質のうちのいずれか1つであってもよく、第2の標的物質は、核及び細胞質のうちの他の1つであってもよい。
【0401】
染色試薬が標的物質を染色するプロセスは、ステップS310に関して既に説明したので、その詳細な説明は省略する。
【0402】
再び
図55及び
図56を参照すると、第1の染色パッチPA及び第2の染色パッチPAのそれぞれを反応領域から分離するプロセスにおいて、接触領域の近傍で形成される水膜WFは、染色パッチPAに吸収される。この場合において、反応することなく血液中に残留する残留染色試薬も、染色パッチに吸収され得る。染色パッチPAによる残留する染色試薬の吸収は、ステップS320に関して上記で既に説明したので、その詳細な説明は省略する。
【0403】
染色が終了すると、プレートPLの反応領域の画像は、染色画像を取得するために取得され(S400)、取得された画像は解析されて、血液検査が行われる(S500)。
【0404】
本出願の実施形態による単染色による血液検査方法は、上記に説明した、プレートPLへの血液の塗抹(S100)、塗抹された血液の固定(S120)、洗浄パッチを使用する反応領域の洗浄(S600)、及び緩衝パッチPAを使用する反応領域への所定の環境の提供(S800)のうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。ここで、ステップS100及びS120は、ステップS200の前に行ってもよい。加えて、ステップS600及びS800は、ステップS200及びS400の間の1つ又は複数の時に行ってもよい。
【0405】
洗浄パッチPAを使用する反応領域の洗浄(S600)は、洗浄パッチPAをプレートPLと接触させること、及び残留物を吸収することを含むことができる。このステップは、本開示による単染色による血液検査方法に関して既に説明している。しかしながら、本実施形態において、洗浄(S600)は、反応領域からの第1の染色パッチPAの分離(S340)及び反応領域との第2の染色パッチPAの接触(S350)の間、反応領域からの第2の染色パッチPAの分離(S360)の後、又は両方の時点で行うことができる。
【0406】
緩衝パッチPAを使用する反応領域への所定の環境の提供(S800)は、緩衝パッチPAをプレートPLに接触させること、並びに染色試薬及び血液中の標的物質の間の反応を促進することを含むことができる。
【0407】
本ステップS800は、2つのパッチ、第1の染色試薬の染色反応のための最適pHを有する第1の緩衝液を含有する第1の緩衝パッチPA、及び第2の染色試薬の染色反応のための最適pHを有する第2の緩衝液を含有する第2の緩衝パッチPAを使用して、行うことができる。すなわち、ステップS800は、第1の緩衝パッチPAを使用して、第1の染色試薬による第1の染色のための第1の環境を提供するステップ(S810)、及び第2の緩衝パッチPAを使用して、第2の染色試薬による第2の染色のための第2の環境を提供するステップ(S820)を含むことができる。ここで、第1の緩衝ステップ(S810)及び第2の緩衝ステップ(S820)は、それぞれ、第1の染色パッチPAの分離(S340)及び第2の染色パッチの分離(S360)の後に行うことができる。
【0408】
或いは、本ステップS800は、単一の緩衝パッチPAによって行うこともできる。この場合において、緩衝(800)は、ステップS340及びS360の後の時点のうちの少なくとも1つの時点中に、行うことができる。
【0409】
ここで、緩衝(S800)及び洗浄(S600)は、それぞれ、緩衝パッチPA及び洗浄パッチPAによって、別々に行われるように説明したが、2つのステップは、洗浄機能及び緩衝機能を有する単一のパッチPAを用いて一緒に行うこともできる。
【0410】
図57及び
図58は、本出願による、ロマノフスキー染色による血液検査方法において取得された画像に関する図である。
【0411】
図57及び
図58を比較すると、
図57は、緩衝(S800)なしに行われた染色の結果に関し、
図58は、ステップS360の後に緩衝(S800)ありで行われた染色の結果に関する。血液の染色品質は、2つの染色試薬が使用される場合に、染色試薬間の沈殿に起因して、劣化することがあるので、緩衝(S800)のために、2つ又はそれ以上の染色試薬が反応領域に存在するステップS360の後に行われることが好ましくあり得る。
【0412】
図59は、第1の染色試薬及び第2の染色試薬が、本出願による、ロマノフスキー染色による血液検査方法において一緒に提供されるプロセスを示す図である。
【0413】
血液検査が、複数の染色試薬の1つをそれぞれ含む、複数の染色パッチPAを使用して行われることを上記で説明した。しかしながら、血液の染色が、
図59に示されるように、複数の染色試薬を必要とする場合であっても、単一の染色パッチPAのみを使用することができる。
【0414】
例えば、メチレンブルーを含有する第1の染色パッチPA、及びエオシンを含有する第2の染色パッチPAは、本実施形態におけるように、メチレンブルー及びエオシンを使用するロマノフスキー染色を行うために使用することができ、代わりに、メチレンブルー及びエオシンが混合された、ギムザ溶液、ライト溶液などは、単一の染色パッチPAに含有され得、次いで血液は、単染色として同様に染色することができる。
【0415】
しかしながら、このような場合において、沈殿が、染色の際にパッチPAに含有される染色試薬の間で生じることがあるので、染色後に行われることが、緩衝プロセスには好ましくあり得る。
【0416】
複数のパッチPAが、単一の染色物質のみをそれぞれ含有することを上記で説明したが、これとは違って、複数のパッチPAの少なくとも1つが、複数の染色物質を含有してもよい。例えば、ライト溶液は、第1の染色パッチに含有されていてもよく、ギムザ溶液は、第2の染色パッチに含有されて、ライト−ギムザ染色が行われてもよく、ライト−ギムザ染色は、行われる本実施形態によるそれぞれのステップによって行われてもよい。
【0417】
本実施形態を、ロマノフスキー染色法に基づいて、上記で説明したが、本実施形態が、少なくとも2つ又はそれ以上の染色物質が使用される染色法のために普遍的に使用され得ることに留意すべきである。
【0418】
本実施形態において、パッチPAを使用して行われる、血液の染色、反応領域の洗浄、反応領域への所定の環境の提供などは常に必要ではない。言い換えれば、いくつかのプロセスは、パッチPAの使用に代えて、対応するプロセスに必要な溶液を使用して行うことができる。例えば、第1の染色は、第1の染色試薬に適合する染色溶液を使用して行うことができ、第2の染色は、第2の染色パッチPAを使用して行うことができる。
【0419】
本実施形態において、血液の染色、反応領域の洗浄、反応領域への所定の環境の提供などが、パッチPAを接触させることによって行われる場合、対応するプロセスは、直接溶液を噴霧することによって対応するプロセスを行う場合と比較して、少量の溶液又は試薬で完了することができ、本実施形態はより経済的であり得る。また、本実施形態によれば、パッチPAに含有される様々な溶液をプレートPLに直接噴霧することと比較して、染色反応の程度、洗浄の程度、緩衝の程度を制御することが容易であり、したがって、過剰反応が防止することができ、対応するプロセスをより正確に行うことができ、結果として、染色品質が改善され得る。
【0420】
4.5.3 参照実施形態3−グラム染色
本出願の実施形態による血液検査は、プレートPL及びパッチPAを使用するグラム染色法によって行うことができる。
【0421】
図60は、本出願による血液検査方法のさらに別の例として、グラム染色による血液検査方法を説明するためのフローチャートである。
【0422】
本出願の実施形態による、グラム染色による血液検査方法は、反応領域に血液を配置するステップ(S200)、反応領域に染色試薬を提供するステップ(S300’)、染色結果に関する画像を取得するステップ(S400)及び画像を解析し、血液検査を行うステップ(S500)を含むことができる。
【0423】
グラム染色による血液検査における染色試薬の提供(S300’)は、血液に、主染色試薬、媒染試薬、脱色試薬及び対比染色試薬を提供することを含むことができる。本実施形態において、これは、主に、主染色試薬、媒染試薬、脱色試薬及び対比染色試薬のうちの少なくとも1つをそれぞれ含有する複数のパッチPAを使用して、行うことができる。
【0424】
ここで、複数のパッチPAは、グラム染色に関する単一の試薬をそれぞれ含有することができる。例えば、パッチPAは、主染色試薬を含有する主染色パッチPA、媒染試薬を含有する媒染パッチPA、脱色試薬を含有する脱色パッチPA、及び対比染色試薬を含有する対比染色パッチPAを含むことができる。
【0425】
ここで、グラム染色に関する試薬のいくつかは、パッチPAに含有される形態で、反応領域に提供される代わりに、溶液が直接噴霧される形態で、反応領域に提供することができる。例えば、脱色プロセスは、脱色剤を含有するパッチPAを反応領域に接触させる代わりに、血液に脱色剤を噴霧することによって行うことができる。染色プロセスが、パッチPAを接触させる代わりに、溶液を噴霧することによって行われる場合、下記に説明するステップS300のいくつかの特定のステップを、溶液を噴霧するステップに変更することができる。
【0426】
ここで、複数のパッチPAの少なくともいくつかは、グラム染色に関する複数の試薬を含有することができる。しかしながら、グラム染色は、主染色、媒染、脱色及び対比染色の順で行われなければならず、媒染及び脱色は連続して行われなければならない。上記を考慮すると、例えば、主染色試薬及び媒染試薬は、単一のパッチPAに一緒に含有され得る。
【0427】
しかしながら、説明の便宜上、複数のパッチPAが、グラム染色に関する単一の試薬をそれぞれ含む場合に基づいて、以下に説明を行う。
【0428】
グラム染色に関して、染色試薬の提供(S300’)は、最初に、スライドガラスなどのプレートPL上の反応領域と主染色パッチPAを接触させるステップ(S310’)、反応領域から主染色パッチPAを分離するステップ(S320’)、媒染パッチPAを反応領域と接触させるステップ(S330’)、反応領域から媒染パッチPAを分離するステップ(S340’)、脱色パッチPAを反応領域と接触させるステップ(S350’)、反応領域から脱色パッチPAを分離するステップ(S360’)、対比染色パッチPAを反応領域と接触させるステップ(S370’)、及び反応領域から対比染色パッチPAを分離するステップ(S380’)を含むことができる。
【0429】
図61〜
図63は、本出願による、ロマノフスキー染色による血液検査方法における、主染色、媒染、脱色及び対比染色プロセスを示す図である。
【0430】
図61を参照すると、主染色パッチPAは、反応領域と接触し(S310’)、主染色試薬は、血液に提供され、主染色パッチPAは、反応領域から分離される(S3
20’)。反応領域及びパッチPAの間の水膜WFによって血液に提供される主染色試薬は、主染色試薬に対して陽性及び陰性である両方の物質を染色してもよい。例えば、グラム染色の主染色剤は、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌を紫色に染色してもよい。
【0431】
媒染パッチPAは、反応領域と接触し(S330’)、媒染試薬は、血液に提供され、媒染パッチPAは、反応領域から分離される(S340’)。反応領域及びパッチPAの間の水膜WFによって血液に提供される媒染試薬は、主染色試薬及び主染色試薬に対して陽性の物質の間の結合を強めることができ、又は逆に、主染色試薬及び主染色試薬に対して陰性の物質の間の結合を弱めることができる。例えば、グラム染色において、媒染剤は、グラム主染色剤及びグラム陽性細菌の間の結合を強めることができる。陽性物質が、脱色試薬に起因して脱色されない場合があるので、陽性物質が、染色法の種類に従って媒染されない場合であっても、ステップS330’及びS340’は必須ではない。
【0432】
図62を参照すると、脱色パッチPAは、反応領域と接触し(S350’)、脱色試薬は、血液に提供され、脱色パッチPAは、反応領域から分離される(S360’)。反応領域及びパッチPAの間の水膜WFによって血液に提供される脱色試薬は、主染色試薬に対して陰性の物質を脱色する。すなわち、脱色試薬は、主染色剤に対して陰性の物質から、主染色剤を分離することができる。
【0433】
図63を参照すると、対比染色パッチPAは、反応領域と接触し(S370’)、対比染色試薬は、血液に提供され、対比染色パッチPAは、反応領域から分離される(S380’)。反応領域及びパッチPAの間の水膜WFによって血液に提供される対比染色試薬は、主染色試薬に対して陰性の物質に結合し、陰性物質を染色する。例えば、グラム対比染色試薬は、グラム陰性細菌を赤色に染色することができる。主染色に対して陽性の物質のみを、染色法の種類に応じて、観察しようとする場合があるので、ステップS370’及びS380’は必須ではない。
【0434】
染色が終了すると、プレートPLの反応領域の画像は、染色画像を取得するために取得され(S400)、取得された画像は解析されて、血液検査を行うことができる(S500)。
【0435】
本出願の実施形態による、単染色による血液検査方法は、上記に説明した、プレートPLへの血液の塗抹(S100)、塗抹された血液の固定(S120)、洗浄パッチPAを使用する反応領域の洗浄(S600)、及び緩衝パッチPAを使用する反応領域への所定の環境の提供(S800)のうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。
【0436】
ここで、ステップS600及びS800は、ステップS300の後に行われてもよい。より詳細には、ステップS600及びS800は、ステップS310’及びS380’の間の時点、並びにステップS380’の後のうちの少なくとも1つの時点中に行ってもよい。
【0437】
4.6 血液検査デバイスの実施形態
本出願の血液検査は、血液検査デバイスを使用して行うことができる。
【0438】
図64は、本出願の実施形態による血液検査デバイス10を示す。
【0439】
本出願の実施形態による血液検査デバイスは、プレートサポーター200、パッチコントローラー300及びイメージングデバイス
(反応検出器)400を備え得る。本実施形態による血液検査デバイスは、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体NSを備えていてもよく、液体物質SBがマイクロキャビティに含有され得るパッチを使用して、血液を染色することができ、染色画像を取得することができる。
【0440】
プレートサポーター200は、診断される試料SMが反応領域に配置されたプレートPLをサポートすることができる。
【0441】
パッチコントローラー300は、本開示の実施形態による血液検査方法において使用される上述のパッチPAの少なくとも1つ又はそれ以上を使用することができ、染色試薬が反応領域に提供されるように、反応領域に対するパッチPAの位置を制御することができる。
【0442】
イメージングデバイス400は、反応領域の画像を取得することができ、染色された血液に関する画像を取得することができる。
【0443】
詳細には、イメージングデバイス400は、画像取得モジュールを含むことができる。ここで、画像取得モジュールは、カメラモジュールを含むことができる。
【0444】
したがって、イメージングデバイス400は、反応領域の部分画像をそれぞれ取得することができる。また、イメージングデバイス400は、部分画像を組み合わせることができる。
【0445】
血液検査デバイスは、コントローラー100をさらに含んでいてもよい。
【0446】
画像解析プログラム及び血液検査プログラムのうちの少なくとも1つは、コントローラー100にインストールされていてもよく、コントローラーにインストールされたプログラムを動作させることによって、コントローラー100は、染色された血液の画像から、血球の種類、細菌の存在などを決定することができ、血球及び細菌の数を計数することができ、決定された結果に基づいて、血球についての数若しくは形態の情報、又は細菌の存在についての情報、及び細菌についての数若しくは形態の情報を生成することができ、最終的に、被験者の健康状態、疾病の存在、疾患の進行などを決定することができる。
【0447】
図65は、本出願による血液検査デバイス10の実施形態におけるパッチコントローラー300の一例を示す。
【0448】
本出願の実施形態による血液検査デバイス10において、パッチコントローラー300は、パッチ選択モジュール310及び接触コントロールモジュール330を含むことができる。
【0449】
パッチ選択モジュール310は、パッチPAを選択して、制御することができる。パッチセレクターによって制御されるパッチPAの選択
モジュールは、染色試薬を含有する1つ又は複数の染色パッチPA、又は固定液、洗浄液、脱色剤、媒染剤若しくは緩衝液を含有する様々なパッチPAの選択を含むことができる。
【0450】
接触制御モジュール330は、選択されたパッチPA及び反応領域の間の接触の状態を制御することができる。接触状態の制御は、反応領域に対するパッチPAの位置を制御することを含むことができる。
【0451】
上記の説明は、本開示の技術的要旨を単に例示するものであって、本開示が関係する当業者は、本開示の実質的な特徴から逸脱しない範囲内で、様々な変形及び変更を行うことが可能であろう。したがって、上述の本開示の実施形態は、別々に、又は組み合わせて、実施することもできる。
【0452】
本明細書に開示される実施形態は、本開示の技術的要旨を、限定する代わりに、説明するためのものであって、本開示の技術的要旨の範囲は、そのような実施形態によって限定されるものではない。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲に基づいて解釈されるべきであり、均等範囲内のすべての技術的要旨は、本開示の範囲に属するものであると解釈されるべきである。