特許第6773390号(P6773390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773390
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】コーンパウダーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20201012BHJP
   A23L 3/48 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A23L7/10 H
   A23L3/48
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-253404(P2014-253404)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-111965(P2016-111965A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年12月6日
【審判番号】不服2019-10237(P2019-10237/J1)
【審判請求日】2019年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小田木 貴志
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 村上 騎見高
【審判官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−153224(JP,A)
【文献】 特開2006−141287(JP,A)
【文献】 特開2011−103807(JP,A)
【文献】 特開平5−292934(JP,A)
【文献】 Carbohydrate Polymers,2011,Vol.83,pp.2011−2015
【文献】 Eur.Food Res.Technol.,2009,Vol.229,pp.115−125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00-7/25
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンペーストに、アミロペクチン分子の分岐部分であるα−1,6グルコシド結合を切断するデンプン枝切り酵素を作用させた後、ドラムドライヤにより乾燥させ、粉末化することにより得られるコーンパウダーの製造方法。
【請求項2】
前記デンプン枝切り酵素は、コーンペースト100g当たりプルラナーゼ力天野法で測定される酵素活性として30〜600ユニット添加される請求項1に記載のコーンパウダーの製造方法。
【請求項3】
前記デンプン枝切り酵素を作用させる前のコーンペーストに水を加えて混合した後、92℃まで加熱し、27℃まで冷却した後における粘度(mPa・s)(X)に対するデンプン枝切り酵素を作用させた後、92℃まで加熱し、27℃まで冷却した後におけるコーンペーストの粘度(mPa・s)(Y)の低下率((X−Y)・100/X)は、20〜80%である請求項1又は請求項2に記載のコーンパウダーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムドライヤを用いて得られるコーンパウダーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コーンペーストを乾燥させることにより得られるコーンパウダーは、スープ、菓子、各種調味料等の飲食品の分野において広く利用されている。従来より、コーンパウダーの乾燥方法として、特許文献1に開示されるドラムドライヤを用いた乾燥方法が知られている。ドラムドライヤは、スプレードライ法に比べ、風味の劣化を抑制しながら乾燥することができ、また、凍結乾燥法等に比べ、コスト等の生産性の向上にも優れる。
【0003】
また、従来より、特許文献2に開示される水分散性を向上させたコーンパウダーの製造方法が知られている。特許文献2は、コーンパウダーの水分散性をより向上させるために、カーネルコーンにα−1,4グルコシド結合を切断するα−アミラーゼを作用させ、凍結乾燥した後、粉砕して得たコーンパウダーについて開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−19783号公報
【特許文献2】特開2006−141287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、コーンペーストにα−アミラーゼを作用させた後、ドラムドライヤを用いて乾燥させた場合、デンプンの分解により生じた低分子量の糖により、乾燥処理を十分に行なうことができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的とするところは、ドラムドライヤを用いて得られるコーンパウダーの製造方法において、生産性を低下させることなく、水分散性を向上できるコーンパウダーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コーンペーストに特定のデンプン分解酵素を使用することにより、ドラムドライヤによる乾燥工程に影響を与えることなく、水分散性を向上できることを見出したことに基づくものである。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、コーンペーストに、アミロペクチン分子の分岐部分であるα−1,6グルコシド結合を切断するデンプン枝切り酵素を作用させた後、ドラムドライヤにより乾燥させ、粉末化することにより得られるコーンパウダーの製造方法が提供される。前記デンプン枝切り酵素は、コーンペースト100g当たりプルラナーゼ力天野法で測定される酵素活性として30〜600ユニット添加されることが好ましい。前記デンプン枝切り酵素を作用させる前のコーンペーストに水を加えて混合した後、92℃まで加熱し、27℃まで冷却した後における粘度(mPa・s)(X)に対するデンプン枝切り酵素を作用させた後、92℃まで加熱し、27℃まで冷却した後におけるコーンペーストの粘度(mPa・s)(Y)の低下率((X−Y)・100/X)は、20〜80%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性を低下させることなく、水分散性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化したコーンパウダーの一実施形態を説明する。
本実施形態のコーンパウダーの製造に用いられるトウモロコシの種類としては、特に限定されず、公知の品種、例えばスイートコーン、ポップコーン、デントコーン、フリントコーン、ワキシーコーン、ソフトコーン、フローアコーン、ポッドコーン、ジャイアントコーン等が挙げられる。
【0012】
コーンペーストは、脱粒して得られたホールコーンを粉砕処理することにより得られる。粉砕処理の前又は後に、必要に応じて水分、例えば水、牛乳等を添加してもよい。粉砕処理は、公知の粉砕機、例えば微粉砕機(例えば、アーシェル社製のコミトロール)、石臼式摩砕機(例えば、増幸産業社製のマスコロイダー)、剪断式粉砕機(チョッパー)、クラッシャー等を用いることができる。得られたコーンペーストは、必要に応じて、裏ごしをして流動性を向上させてもよい。裏ごしの実施としては、例えば裏ごし機(パルパーフィニッシャー)を用いることができる。
【0013】
上記のように得られたコーンペーストにデンプン枝切り酵素を作用させる。尚、コーンペーストは、凍結処理を経たトウモロコシを使用してもよく、生とうもろこしの状態のものを使用してもよい。コーンペーストに作用させるデンプン枝切り酵素としては、プルラナーゼ、イソアミラーゼ等が挙げられる。プルラナーゼは、アミロペクチン、デキストリン、プルラン等のα−1,6グルコシド結合を切断するエンド型酵素である。イソアミラーゼは、グリコーゲン、アミロペクチン、デキストリン等のα−1,6グルコシド結合を切断するエンド型酵素である。
【0014】
デンプン枝切り酵素の酵素添加量は、特に限定されないが、酵素添加量の下限は、好ましくはコーンペースト100g当たり30ユニット(unit)以上、より好ましくは60ユニット以上である。酵素添加量を30ユニット以上とすることにより、得られるコーンパウダーの水に対する分散性をより向上させることができ、酵素処理作業の効率性をより向上させることができる。一方、酵素添加量の上限は、好ましくはコーンペースト100g当たり600ユニット以下、より好ましくは450ユニット以下である。酵素添加量を600ユニット以下とすることにより、生産性の向上、例えばコストの低減等を図ることができる。
【0015】
尚、デンプン枝切り酵素の酵素活性は、プルラナーゼ力天野法で測定される。すなわち、プルランから1分間に1μmoLのブドウ糖に相当する還元糖を生成するとき1ユニット(unit/mL)とする(尚、pH6.0にて測定)。また、コーンペースト100g当たりとは、脱粒して得られたホールコーン100g当たりを示し、粉砕の際に添加する水等の添加剤は含めないものとする。
【0016】
デンプン枝切り酵素を用いたコーンペーストの処理は、酵素を添加したコーンペーストを、所定条件下で必要に応じて撹拌しながら反応させることにより実施される。酵素処理の温度は、酵素の種類、酵素の力価等により適宜設定されるが、反応の効率性等の観点から、好ましくは20〜70℃、より好ましくは30〜60℃、さらに好ましくは45〜55℃の条件下で行われる。酵素処理の時間は、酵素の種類、反応温度、酵素の力価等により適宜設定されるが、反応の効率性等の観点から、好ましくは5分〜3時間、より好ましくは10分〜1時間である。なお、この酵素処理は、酵素処理終了後の反応液を直ちに85〜100℃で5〜60分間加熱して前記酵素を失活させることが望ましい。
【0017】
コーンペーストにデンプン枝切り酵素を作用させることにより、炭水化物のα−1,6グルコシド結合が切断され、コーンペーストの粘度が低下する。コーンペーストの粘度に関し、デンプン枝切り酵素を作用させる前のコーンペーストの27℃における粘度(mPa・s)(X)に対するデンプン枝切り酵素を作用させた後のコーンペーストの27℃における粘度(mPa・s)(Y)の低下率(%)((X−Y)・100/X)の下限は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。低下率が20%以上の場合、得られるコーンパウダーの水に対する分散性をより向上させることができる。低下率の上限は、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。低下率が80%以下の場合、ドラムドライヤを用いた乾燥処理をより効率的に行うことができる。
【0018】
上記酵素処理後、コーンペーストをドラムドライヤにより乾燥させ、粉末化することによりコーンパウダーが得られる。ドラムドライヤは、まず回転する円筒状のドラムの内部に蒸気等の熱媒体を投入し、ドラム表面を加熱する。次に、その表面に液状原料を供給し、原料中の水分を蒸発させる伝導加熱型の乾燥機である。液状の原料は、ドラムの表面に薄層状に供給され、ドラムが1回転する間に乾燥・固定され、剥離板により、連続的にドラム表面より掻き取られ、シート状に回収される。
【0019】
ドラムドライヤの種類は、特に限定されず、生産効率等の観点から公知の装置の中から適宜選択することができる。例えば、圧力方式の異なる常圧式、及び真空式のいずれを使用してもよい。また、ドラムの本数が異なるダブルドラム型、ツインドラム型、及びシングルドラム型のいずれを使用してもよい。また、シングルドラム型について、給液方法の異なるディップ式、スプレ式、スプラッシュ式、上部ロール式(単段、多段)、サイドロール式、下部ロール式等のいずれを使用してもよい。ドラム表面の温度、並びにドラムの大きさ及び回転数は、生産効率等の観点から適宜設定することができる。回収されたシート状の乾燥物は、市販の粉砕機、例えばカッターミル、ピンミル等を用いて粉砕され、篩を用いて所定粒径のコーンパウダーを得ることができる。コーンパウダーの粒子径は、水(お湯)に対する分散性及び生産性等の観点から、45μm(325タイラーメッシュ)〜2mm(9タイラーメッシュ)が好ましく、106μm(150タイラーメッシュ)〜1mm(16タイラーメッシュ)がより好ましく、150μm(100タイラーメッシュ)〜500μm(32タイラーメッシュ)がさらに好ましい。
【0020】
次に、上記のように構成された本実施形態のコーンパウダーの作用を説明する。
原料であるコーンペーストに、デンプン枝切り酵素を作用させることにより、アミロペクチン分子の分岐部分であるα−1,6グルコシド結合が切断される。デンプン枝切り酵素は、アミロペクチン分子の分岐部分を切断し、α−1,4グルコシド結合は切断しない。それにより、ドラムドライヤにより乾燥工程に影響を与えることなく、水分散性を向上させることができる。
【0021】
本実施形態のコーンパウダーによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のコーンパウダーは、原料であるコーンペーストに、デンプン枝切り酵素を作用させた後、ドラムドライヤにより乾燥させ、粉末化することにより得られる。したがって、ドラムドライヤを用いて得られるコーンパウダーにおいて、生産性を低下させることなく、水分散性を向上することができる。
【0022】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のコーンパウダーは、水分散性を有すれば、粉末状、粒子状、顆粒状であってもよく、また、取扱い性を向上させるために、水分散性を阻害しない範囲内において、それらを所定形状、例えばキューブ状、タブレット状に固めてもよい。
【0023】
・上記実施形態において、デンプン枝切り酵素を用いたコーンペーストの酵素処理の際、コーンペーストのpHは、酵素の至適pHに調整してから行ってもよい。pH調整剤としては、公知のpH調整剤、例えば重曹、クエン酸等が挙げられる。
【0024】
・上記実施形態において得られたコーンパウダーの用途は、特に限定されず、水(例えば80℃以上のお湯、熱湯)への分散過程を伴うスープ、調味料等の飲食品の分野に利用することができる。
【0025】
・上記実施形態において得られたコーンパウダーは、各種用途に応じて飲食品の分野に適用可能な添加剤、例えば砂糖、食塩、アミノ酸等の調味料、砂糖以外の糖類、デンプン、デキストリン等の多糖類、増粘剤、乳化剤、分散剤、油脂、酸化防止剤、各種動植物エキス、及び脱脂粉乳等の乳製品を配合してもよい。
【0026】
・上記実施形態において、本発明の効果、特に生産性を阻害しない範囲内において、α−1,4グルコシド結合を切断する酵素を少量(例えばα−アミラーゼを5FAU以下、β−アミラーゼを100ユニット以下)添加することを妨げるものではない。ドラムドライヤを用いた生産性をより向上させる場合、かかる酵素は不可避的不純物として配合される成分以外添加しない方が好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記に記載される各例のコーンパウダーを製造し、水分散性、ドラムドライヤを用いた生産性について評価した。結果を表1に示す。
【0028】
(実施例1)
市販されている冷凍コーンペースト(とうもろこし100%、pH6.5〜7.5、水分74〜81%)を用いた。攪拌効率・酵素反応効率を上げるため、冷凍コーンペースト100gに対して、水75gを加え混合後、攪拌機(ニーダ)へ投入した。攪拌を行いながら加温し、酵素反応の至適温度である50℃に到達後、冷凍コーンペースト100gに対して、デンプン枝切り酵素としてプルラナーゼ(天野エンザイム社製、プルラナーゼ「アマノ」3)を300ユニット(0.1mL)を添加した。酵素反応は、50℃に維持した状態で攪拌しながら30分間行った。酵素反応終了後、92℃まで加温し酵素失活を行い、酵素処理コーンペーストを得た。
【0029】
次に、得られた酵素処理コーンペーストを、ドラムドライヤ(ダブルドラム)にて、乾燥処理を行った。ドラムドライヤは、常圧、ドラム表面温度135℃、回転速度30rpmの条件とした。ドラムドライヤの表面でシート状に乾燥した固形物を回収し、カッターミルにて粉砕した。得られた粉砕物は、篩(タイラーメッシュ42(目開き355μm))にて分級し、355μm以下の粒子とすることにより、実施例1のコーンパウダーを得た。
【0030】
(実施例2)
実施例1において、酵素反応時間を60分にした以外は、実施例1と同様に実施し、実施例2のコーンパウダーを得た。
【0031】
(実施例3)
実施例1において、酵素添加量をコーンペースト100gに対して、プルラナーゼ(天野エンザイム社製、プルラナーゼ「アマノ」3)を150ユニット(0.05mL)添加した以外は、実施例1と同様に実施し、実施例3のコーンパウダーを得た。
【0032】
(実施例4)
実施例1において、酵素添加量をコーンペースト100gに対して、プルラナーゼ(天野エンザイム社製、プルラナーゼ「アマノ」3)を90ユニット(0.03mL)添加した以外は、実施例1と同様に実施し、実施例4のコーンパウダーを得た。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、プルラナーゼの酵素を添加しなかった以外は、実施例1と同様に実施し、比較例1のコーンパウダーを得た。
【0034】
(比較例2)
実施例1において、プルラナーゼの代わりに、デンプン分解酵素α−アミラーゼ(ノボザイム社製、ファンガミル800L)を使用し、コーンペースト100gに対して、α−アミラーゼを80FAU(0.1g)添加した以外は、実施例1と同様に実施した。尚、比較例2は、ドラムドライヤによる乾燥処理を行うことができなかったため、その後の水分散性の評価を行っていない。
【0035】
(比較例3)
比較例3は、実施例1において、酵素としてプルラナーゼ(天野エンザイム社製、プルラナーゼ「アマノ」3)、及びデンプン分解酵素β−アミラーゼ(エイチビィアイ社製、ハイマルトシンG)を使用した以外同様に実施した。酵素は、コーンペースト100gに対して、プルラナーゼを300ユニット(0.1mL)、β−アミラーゼを2,000ユニット(0.2g)添加した。尚、比較例3は、ドラムドライヤによる乾燥処理を行うことができなかったため、その後の水分散性の評価を行っていない。
【0036】
(実施例5)
収穫後の生とうもろこしについて、直ちに皮を剥き、脱粒したホールコーンをコミトロール(アーシェル社製)で粉砕し、篩(タイラーメッシュ149(目開き105μm))にて分級し、平均粒径105μm以下のコーンペーストを得た。このコーンペーストを加温し、酵素反応至適温度である50℃に到達後、コーンペースト100gに対して、デンプン枝切り酵素としてプルラナーゼ(天野エンザイム社製、プルラナーゼ「アマノ」3)を300ユニット(0.1mL)を添加した。酵素反応は、50℃に維持した状態で、攪拌機(ニーダ)で攪拌しながら30分間行った。酵素反応30分終了後、さらに95℃まで加温し酵素失活を行い、酵素処理コーンペーストを得た。
【0037】
次に、得られた酵素処理コーンペーストを、ドラムドライヤ(ダブルドラム)にて、乾燥処理を行った。ドラムドライヤは、常圧、ドラム表面温度135℃、回転速度30rpmの条件とした。ドラムドライヤの表面でシート状に乾燥した固形物を回収し、ピンミルにて粉砕した。得られた粉砕物は、篩(タイラーメッシュ42(目開き355μm))にて分級し、355μm以下の粒子とすることにより、実施例5のコーンパウダーを得た。
【0038】
(実施例6)
実施例5において、急速バラ凍結された冷凍とうもろこし粒(IQFコーン)を使用した以外は、実施例5と同様に実施し、実施例6のコーンパウダーを得た。
【0039】
(比較例4)
実施例6において、プルラナーゼを添加しなかった以外は、実施例6と同様に実施し、比較例4のコーンパウダーを得た。
【0040】
<水分散性>
16オンス(約453.6g)の紙容器に各試料粉末(コーンパウダー)10.5gを入れ、200ccの水(熱湯98℃)を投入した。投入終了後、10秒間放置した後、200rpmにて20秒間撹拌した。攪拌終了後、篩(タイラーメッシュ10(目開き1700μm))にて溶解液を濾しながら、別容器へ移した。篩上に残った残渣を溶解不良物として紙容器へ戻した。その紙容器の質量を計測し、空の紙容器の質量を引いた値を溶け残りとして記録した。各例についてN=5の平均値を求め、溶け残り量とした。
【0041】
溶け残り量が1g未満の場合を「優れる:◎」、1g以上且つ2g未満の場合を「良好:○」、2g以上且つ4g未満の場合を「可:△」、4g以上の場合を「不可:×」として評価した。
【0042】
<生産性>
酵素処理後のコーンペースト(未実施のものは未処理のコーンペースト)を、ドラムドライヤを用いて乾燥処理する際の生産性について評価した。
【0043】
何ら問題なく乾燥処理することができる場合を「優れる:◎」、ドラム表面の乾燥後の固形物に、ややシワが生じるが、実用性に問題なく乾燥処理することができる場合を「良好:○」、ドラム表面の乾燥した固形物にシワが生じ、剥離工程をスムーズに行うことができない場合を「可:△」、ドラム表面の乾燥工程又は表面からの剥離工程を行うことができずドラムドライヤによる乾燥処理を行うことができない場合を「劣る:×」として評価した。
【0044】
<粘度測定>
コーンペーストの粘度に関し、デンプン枝切り酵素を作用させる前のコーンペーストの27℃における粘度(mPa・s)(X)に対するデンプン枝切り酵素を作用させた後のコーンペーストの27℃における粘度(mPa・s)(Y)の低下率(%)((X−Y)・100/X)を求めた。尚、各例において、酵素反応終了後の試料は、92℃まで加温し、酵素失活を行い、その後、27℃まで冷却したものを使用した。また、酵素を作用させる前の各試料も、92℃まで加温し、その後、27℃まで冷却したものを使用した。
【0045】
粘度測定は、東機産業社製TVB10型粘度計を用いて測定した。スピンドルNo.M3、回転数30rpm、測定温度27℃、測定時間180秒後に示した数値を粘度値とした。
【0046】
【表1】
表1に示されるように、コーンペーストをデンプン枝切り酵素を用いて処理した各実施例は、酵素処理していない各比較例に対し、水分散性の評価が向上していることが確認された。また、各実施例は、α−アミラーゼ又はβ−アミラーゼを使用した各比較例に対し、ドラムドライヤを用いた生産性の評価が向上していることが確認された。
【0047】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)デンプン枝切り酵素を用いたコーンペーストの酵素処理は、45〜55℃において、10分〜1時間行われる前記コーンパウダーの製造方法。(b)水への分散を伴う用途に適用される前記コーンパウダー。