特許第6773399号(P6773399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773399
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】光素子搭載用パッケージおよび電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20201012BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01S5/022
   H01L23/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-189904(P2015-189904)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-69267(P2017-69267A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将
(72)【発明者】
【氏名】福田 康雄
【審査官】 大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−134350(JP,A)
【文献】 特開2011−119521(JP,A)
【文献】 特開2000−349384(JP,A)
【文献】 実開昭61−127661(JP,U)
【文献】 特開平05−037089(JP,A)
【文献】 特開昭59−151484(JP,A)
【文献】 特開2001−015814(JP,A)
【文献】 米国特許第09054482(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 − 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口する凹部と、該凹部の底面に設けられた段差部と、前記凹部の底面のうち前記段差部の上側の該段差部側に設けられた光素子の搭載部とを有する基体を含んでおり、前記搭載部は、前記段差部の上側の前記凹部の底面および前記段差部の側面に開口する溝状の切欠き部に設けられており、
前記段差部の上側の前記凹部の底面と前記切欠き部における奥側の側面および奥側から前記段差部側の側面とが成す角は鈍角であり、
前記切欠き部における前記奥側の側面および前記奥側から前記段差部側の側面は、前記搭載部側の端部から前記段差部の上側における前記凹部の底面側の端部にかけて傾斜していることを特徴とする光素子搭載用パッケージ。
【請求項2】
前記切欠き部の対向する側面のうち前記搭載部に対応する部分に設けられた、前記光素子の電極が接合される搭載用金属層を有していることを特徴とする請求項1に記載の光素子搭載用パッケージ。
【請求項3】
前記切欠き部の長手方向の寸法が前記搭載部の長手方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光素子搭載用パッケージ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光素子搭載用パッケージと、
該光素子搭載用パッケージの前記搭載部に搭載された光素子と、
前記凹部を塞ぐように前記基体に接合された蓋体とを有していることを特徴とする電子装置。
【請求項5】
前記光素子が側面に電極を有しており、
該電極が前記搭載用金属層に対向して接合されていることを特徴とする請求項2を引用する請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記光素子の上面が前記段差部の上側の前記凹部の底面から上に出ていないことを特徴とする請求項5に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光通信分野、プロジェクタまたはヘッドアップディスプレイ等の各種画像表示分野、およびヘッドライト等の各種照明分野で用いられる、各種の光素子を搭載する光素子搭載用パッケージおよび電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザーダイオード等の発光素子としての光素子を搭載した電子装置が、光通信分野に加えて、各種画像表示分野および各種照明分野等で展開されようとしている。
【0003】
このような電子装置用の光素子搭載用パッケージとして、例えば光素子が搭載される凹部を有する基体を備えているものがある。光素子は、接合材を介して凹部に搭載され、この凹部は例えば蓋体によって覆われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−68691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子装置における光の高出力化に伴い、光素子が高温で発熱するものとなっている。しかしながら、上述の電子装置においては、光素子の下面が凹部の底面に接合されており、電子装置を作動させた際に、光素子の熱が光素子搭載用パッケージを介して外部へ十分放出されず、電子装置における光の出力特性が低下する可能性が高くなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様に係る光素子搭載用パッケージは、上面に開口する凹部と、該凹部の底面に設けられた段差部と、前記凹部の底面のうち前記段差部の上側の該段差部側に設けられた光素子の搭載部とを有する基体を含んでおり、前記搭載部は、前記段差部の上側の前記凹部の底面および前記段差部の側面に開口する溝状の切欠き部に設けられており、前記段差部の上側の前記凹部の底面と前記切欠き部における奥側の側面および奥側から前記段差部側の側面とが成す角は鈍角であり、前記切欠き部における前記奥側の側面および前記奥側から前記段差部側の側面は、前記搭載部側の端部から前記段差部の上側における前記凹部の底面側の端部にかけて傾斜している。
【0007】
本発明の1つの態様に係る電子装置は、上記構成の光素子搭載用パッケージと、該光素子搭載用パッケージの前記搭載部に搭載された光素子と、前記凹部を塞ぐように前記基体に接合された蓋体とを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1つの態様に係る光素子搭載用パッケージによれば、上記の構成により、光素子が搭載部に搭載される場合に、例えば光素子が段差部に設けた切欠き部の内面に接合材を介して接合されるものとなり、電子装置を作動させた際に、光素子の熱が光素子搭載用パッケージの切欠き部を介して基体から外部へと良好に放出され、光素子の放熱性が向上したものとなり、電子装置における光の出力特性が良好なものとなる。
【0009】
本発明の1つの態様に係る電子装置は、上記構成の光素子搭載用パッケージと、光素子搭載用パッケージの搭載部に搭載された光素子と、凹部を塞ぐように基体に接合された蓋体とを有していることによって、光素子の放熱性が良好で、必要な光量を発する電子装置
とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態における、蓋体を除いた電子装置の一例を示す上面図である。
図2】(a)は図1における蓋体を含んだ電子装置のA−A線における縦断面図であり、(b)は(a)のC部における要部拡大縦断面図である。
図3】(a)は図1における蓋体を含んだ電子装置のB−B線における縦断面図であり、(b)は(a)のD部における要部拡大縦断面図である。
図4】本発明の実施の形態における電子装置の他の例を示す要部拡大縦断面図である。
図5】本発明の実施の形態における電子装置の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の例示的な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1図5を参照して本発明の実施の形態における電子装置について説明する。本発明の実施の形態における電子装置は、光素子搭載用パッケージ1と、光素子搭載用パッケージ1に搭載された光素子2と、窓部材3と、蓋体4とを有している。
【0013】
本発明の実施の形態の光素子搭載用パッケージ1は、例えばレーザーダイオード等の光素子2が搭載される凹部13を有する基体11を含んでいる。
【0014】
本実施形態では、基体11は、底面に光素子2が搭載される凹部13を有しており、凹部13の側壁13aには、搭載される光素子2に対向するように設けられた開口部14を有している。
【0015】
基体11は、光素子2を搭載するための搭載部材として機能し、凹部13の底面のうち搭載部11aに設けられた搭載用金属層16(配線導体12に含まれていてもよい)に、光素子2が半田等の接合材5を介して接合されて搭載される。
【0016】
基体11には、例えば酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体またはガラスセラミック焼結体等のセラミックスを用いることができる。基体11は、このようなセラミックスからなる複数の絶縁層が積層されて形成されていてもよいし、所定の形状に成形できるような金型を用いて、セラミックグリーンシートを加圧することによって成形されていてもよい。
【0017】
また、基体11が樹脂材料を用いて作製される場合は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、または四フッ化エチレン樹脂を始めとするフッ素系樹脂等を用いることができる。
【0018】
基体11が例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る複数の絶縁層が積層されて形成されている場合であれば、まず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダーおよび溶剤等を添加混合して泥漿状とする。次に、これをドクターブレード法やカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシートを得る。その後、セラミックグリーンシートに適当な打抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層する。そして、これを高温(約1600℃)で焼成することによって製作される。また、所定の形状に成形できるような金型を用いて、セラミックグリーンシートを加圧することによって所定の形状に成形し、これを同様に高温で焼成することによって製作してもよい。
【0019】
凹部13は、底面に設けられた段差部11b、および段差部11bの上側の底面(主面)のうち段差部11bの上側に光素子2を搭載する搭載部11aを有している。図1図5に示す例においては、凹部13の側壁は底面に対して垂直な側面を有しており、搭載部11aに光素子2が搭載されている。なお、凹部13の底面と側壁の側面との角度は95°〜100°の鈍角と
してもよい。
【0020】
また、凹部13は、段差部11bの上側の凹部13の底面および段差部11bの側面に開口する溝状の切欠き部15を有しており、この切欠き部15に搭載部11aが設けられている。このような構成とすることによって、光素子2が搭載部11aに搭載される場合に、例えば光素子2が段差部11bに設けた切欠き部15の内面に接合材5を介して接合されるものとなり、電子装置を作動させた際に、光素子2の熱が光素子搭載用パッケージ1を介して外部へ良好に放出され、光素子2の放熱性が向上したものとなり、電子装置における光の出力特性が良好なものとなる。
【0021】
このような段差部11b、搭載部11aおよび切欠き部15が設けられた凹部13は、基体11用の複数のセラミックグリーンシートにレーザー加工や金型による打抜き加工等によって段差部11b、搭載部11aおよび切欠き部15を含む凹部13となる貫通孔をそれぞれ形成し、これらのセラミックグリーンシートを貫通孔を形成していないセラミックグリーンシート上に積層することで形成できる。また、基体11の厚みが薄い場合には、凹部13となる貫通孔は、セラミックグリーンシートを積層した後にレーザー加工や金型による打抜き加工等によって形成してもよい。この場合も凹部13を精度よく加工できるので好ましい。なお、所定の形状の凹部13を有する基体11にセラミックグリーンシートを成形できるような金型を用いて、いわゆるプレス加工によって凹部13を形成してもよい。
【0022】
なお、搭載部11aには、接合材5を介して光素子2を良好に接合するために搭載用金属層16が設けられるが、搭載用金属層16が溝状の切欠き部15の内面のうち対向する側面の搭載部11aに対応する部分に設けられて、これに光素子2の側面に形成された電極が接合されるようにしてもよい。このようにすると、光素子2が搭載部11aに搭載される場合に、光素子2が段差部11bに設けた切欠き部15の側面に接合材5を介して接合されるものとなり、電子装置を作動させた際に、光素子2の熱が光素子搭載用パッケージ1の切欠き部15の側面を介して外部へ良好に放出され、光素子2の放熱性が向上したものとなり、電子装置における光の出力特性が良好なものとなる。
【0023】
また、図4に示すように、段差部11bの上側の凹部13の底面と切欠き部15の側面との角部の角度αが95°〜100°の鈍角であると、光素子2を搭載部11aに搭載する場合に、仮
に光素子2を搭載する位置が切欠き部15の側面側にずれたとしても、光素子2と切欠き部15の側面との間に接合材5が良好に溜まりやすくなり、接合強度を向上させることができる。
【0024】
搭載用金属層16は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)または銅(Cu)等の金属材料を用いることができる。基体11が例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、まず、W、MoまたはMn等の高融点金属粉末に適当な有機バインダーおよび溶媒等を添加混合して、搭載用金属層16用の導体ペーストを用意する。次に、この導体ペーストを基体11となるセラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等によって所定のパターンに印刷塗布する。そして、この所定のパターンの導体ペーストを基体11となるセラミックグリーンシートと同時に焼成する。これによって、基体11の所定位置に搭載用金属層16が被着形成される。なお、前述の金型を用いて、予め搭載用金属層16用の導体ペーストのパターンを形成したセラミックグリーンシートを加圧することによって凹部13を有する基体11を成形し、これを焼成して基体11の所定位置に搭
載用金属層16を形成するようにしてもよい。
【0025】
また、切欠き部15は、段差部11bの側面に向かって長い溝状になっているので、光素子2が搭載部11aに搭載される場合に、光素子2が段差部11bに設けた切欠き部15内に良好に搭載されるものとなり、電子装置を作動させた際に、光素子2の熱が光素子搭載用パッケージ1の切欠き部15を介して基体11から外部へ良好に放出され、光素子2の放熱性が向上したものとなり、電子装置における光の出力特性が良好なものとなる。
【0026】
また、図1に示すように、切欠き部15の長手方向の寸法W1が搭載部11aの長手方向の寸法W2よりも大きいと、光素子2が搭載部11aに搭載される場合に、仮に切欠き部15において光素子2を接合する接合材5の量が多くなったとしても、寸法W1と寸法W2との差に相当する切欠き部15の奥側の側面(端面)と光素子2の対応する側面(端面)との間の空間に接合材5が溜まりやすくなり、光素子2の段差部11b側の側面(端面)において接合材5が這い上がるのを抑制することができる。したがって、光素子2からは例えば開口部14側の側面(端面)から開口部14に向けて光が発せられるのに対して、この光素子2から発せられた光の一部が接合材5によって遮られにくくなるので、光量の減少が抑制されるものとなる。その結果、光素子2を搭載した電子装置を、必要な光量を発するものとすることができる。なお、この場合には、切欠き部15の長手方向における搭載用金属層16の長さを、搭載部11aに対応する長さよりも切欠き部15の奥側に長いものとしておくと、切欠き部15の奥側の空間に接合材5が溜まりやすいものになるので好ましい。
【0027】
また、図5に示す例のように、段差部11bの側面は、段差部11bの下側の凹部13の底面に向かって傾斜していてもよい。このような構成とすることによって、光素子2を搭載部11aに搭載する場合に、切欠き部15で反射した光と段差部11bの側面で反射した光とのコントラストが付きやすくなって画像認識等における視認性が高まるので、切欠き部15と段差部11bの側面との境界すなわち切欠き部15の底面と段差部11bの側面との角部17を位置決めの基準として、光素子2を搭載部11aに精度良く搭載できるものとなる。
【0028】
また、切欠き部15の底面と段差部11bの側面との角部17の角度βが鈍角であると、光素子2を搭載部11aに搭載する場合に、切欠き部15で反射した光と段差部11bの側面で反射した光とのコントラストが付きやすくなって視認性も良好になるので、切欠き部15と段差部11bの側面との境界すなわち切欠き部15の底面と段差部11bの側面との角部17を位置決めの基準として、光素子2を搭載部11aにより精度良く搭載できるものとなる。なお、角部17の角度βが95°〜100°であると、切欠き部15で反射した光と段差部11bの側面で反
射した光とのコントラストが効果的に付きやすくなるので好ましい。
【0029】
なお、切欠き部15の底面と段差部11bの側面との角部17には、光素子2を搭載部11aに搭載する際の位置決めの基準とする場合には、C面またはR面は設けなくてもよい。角部17にC面またはR面を設ける場合には、縦断面視でC0.1mm以下またはR0.1mm以下とすることが好ましい。これによって、光素子2を搭載部11aに搭載する場合に、切欠き部15で反射した光と段差部11bの側面で反射した光との境界が明瞭なものとなりやすくなって視認性も良好になるので、角部17を位置決めの基準としやすいものとなり、光素子2を搭載部11aに精度良く搭載できるものとなる。
【0030】
また、図5に示す例では、段差部11bの側面が段差部11bの下側の底面に向かって傾斜しており、段差部11bの側面が凹部13の側壁13aと離れている。このような構成とすることによって、切欠き部15の底面と段差部11bの側面との角部17の角度βが大きくなり過ぎることがなく、光素子2から発せられた光の一部が凹部13の側壁13aおよび段差部11bの側面で不必要に反射されるのが抑制され、光量の減少が抑制されるものとなる。その結果、光素子2を搭載した電子装置を、必要な光量を発するものとすることができる。
【0031】
開口部14は、上述のように、段差部11bの側面に対向する凹部13の側壁13aに設けられている。このような構成とすることによって、光素子2から発せられた光が、開口部14の内側を通過し、基体11の外部へ放出されることとなる。
【0032】
このような開口部14は、凹部13と同様に、セラミックグリーンシートにレーザー加工や金型による打抜き加工等によって、凹部13となる貫通孔に連結するように開口部14となる貫通孔をセラミックグリーンシートに形成し、これらのセラミックグリーンシートを、貫通孔を形成していないセラミックグリーンシートに積層することで形成できる。なお、開口部14を基体11の凹部13の側壁13aに同時に成形できるような金型を用いて、セラミックグリーンシートを加圧することによって凹部13とともに開口部14を成形してもよい。
【0033】
また、凹部13の底面に設けられた配線導体12を、搭載部11aから段差部11bの下側の底面にかけて設けられたものとすると、光素子2の動作時に、光素子2から発せられた熱が搭載部11aだけでなく段差部11bの下側の底面にも配線導体12を介して伝わるものとなり、光素子2から発せられた熱を外部に放散しやすいものとすることができる。
【0034】
配線導体12は、基体11の表面(下面、凹部13の底面)および内部に設けられている。配線導体12の一端部は、例えば凹部13の底面に位置しており、配線導体12の他端部は、基体11の下面に位置している。また、これらは基体11の内部に貫通導体あるいは層間導体あるいは基体11の側面を引き回された側面導体として設けられた配線導体(図示せず)で接続されている。配線導体12は、光素子搭載用パッケージ1に搭載された光素子2と外部の回路基板とを電気的に接続するためのものである。また、配線導体12は搭載用金属層16を含むように設けてもよく、図3および図4に示す例においては、段差部11bの上側の凹部13の底面から切欠き部15の側面にかけて設けている。これによって、光素子2の動作時に、光素子2から発せられた熱が搭載部11aだけでなく段差部11bの上側の底面に光素子2の両側面から伝わるものとなり、光素子2から発せられた熱を外部に放散しやすいものとすることができる。
【0035】
配線導体12には、搭載用金属層16と同様の金属材料を用いることができる。基体11が例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、まず、W、MoまたはMn等の高融点金属粉末に適当な有機バインダーおよび溶媒等を添加混合して配線導体12用の導体ペーストを用意する。次に、この導体ペーストを基体11となるセラミックグリーンシートにスクリーン印刷法によって所定のパターンに印刷塗布する。そして、この所定のパターンの導体ペーストを基体11となるセラミックグリーンシートと同時に焼成する。これによって、基体11の所定位置に配線導体12が被着形成される。配線導体12が貫通導体である場合は、金型やパンチングによる打抜き加工またはレーザー加工によってグリーンシートに貫通孔を形成して、この貫通孔に印刷法によって配線導体12用の導体ペーストを充填しておくことによって形成される。なお、搭載用金属層16と同様に、前述の金型を用いて、予め所定のパターンの配線導体12用の導体ペーストを形成したセラミックグリーンシートを加圧することによって基体11を成形し、これを焼成して基体11の所定位置に配線導体12を形成するようにしてもよい。
【0036】
配線導体12および搭載用金属層16の露出する表面には、電気めっき法または無電解めっき法によってめっき層を被着するのが好ましい。このめっき層は、ニッケル、銅、金または銀等の耐食性および光素子2の電極2aに接合される接合材5との接合性に優れる金属から成るものである。めっき層としては、例えばニッケルめっき層と金めっき層とが、あるいはニッケルめっき層と銀めっき層とが順次被着される。
【0037】
光素子2が搭載される搭載用金属層16(または配線導体12)上では、厚さが10〜80μm
程度の銅めっき層を被着させておくことにより、光素子2の熱を良好に放熱させやすくしてもよい。下面の配線導体12には、厚さが10〜80μm程度の銅めっき層を被着させておくことにより、光素子搭載用パッケージ1から外部の回路基板に放熱させやすくしてもよい。
【0038】
また、めっき層として、上記以外の金属からなる例えばパラジウムめっき層等を介在させていても構わない。
【0039】
電子装置は、光素子搭載用パッケージ1の切欠き部15内の搭載部11aに光素子2が搭載され、開口部14を塞ぐように窓部材3が設けられ、凹部13を塞ぐように蓋体4が設けられることによって作製される。光素子2は、半田等の接合材5によって搭載用金属層16(配線導体12に含まれていてもよい)に固定されるとともに、接合材5によって光素子2の電極と配線導体12とが電気的に接続されることによって、光素子搭載用パッケージ1に搭載される。なお、図1図2および図5に示す例において、窓部材3は、開口部14を外側から塞ぐように設けられているが、開口部14に嵌め込んで開口部14を塞ぐように設けられていてもよいし、内側(凹部13側)から開口部14を塞ぐように設けられていてもよい。
【0040】
光素子2は、例えばレーザーダイオード(Laser Diode)等の光半導体素子である。
【0041】
凹部13は、ろう材等からなる封止材を介して、セラミックスまたは金属等からなる蓋体4によって封止される。なお、シールリングを介して溶接で蓋体4によって封止するようにしてもよい。また、開口部14は、低融点ガラス等からなる封止材を介して、透光性のガラス等からなる窓部材3によって封止される。このようにして、光素子搭載用パッケージ1が封止される。
【0042】
また、光素子2は、端部の端(すなわちエッジまたは端面)が角部17に重なるように搭載部11aに搭載されていると、光素子2から発せられた光の一部が角部17で遮られにくくなるので、光量の減少が効果的に抑制されるものとなり、その結果、光素子2を搭載した電子装置を必要な光量を発するものとすることができる。
【0043】
また、光素子2は例えば両側面に電極2aを有しており、これらの電極2aが搭載用金属層16と対向するように接合されていると、光素子2の電極2aと搭載用金属層16とが互いに大きい面積の領域で接合されて、電気的な接続が良好なものとなる。
【0044】
また、光素子2は上面が段差部11bの上側の凹部13の底面から上に出ていないと、光素子2の側面の全体が段差部11bに設けた切欠き部15の側面に接合材5を介して接合されるものとなり、電子装置を作動させた際に、光素子2の熱が光素子搭載用パッケージ1を介して外部へ良好に放出され、光素子2の放熱性が向上したものとなり、電子装置における光の出力特性が良好なものとなる。
【0045】
次に、本実施形態の光素子搭載用パッケージ1の製造方法について説明する。
【0046】
基体11は、例えば酸化アルミニウム(Al)質焼結体からなり、底面に光素子2の搭載部11aが設けられた凹部13を有している。この基体11は、主成分が酸化アルミニウム(Al)である酸化アルミニウム質焼結体から成る場合は、Alの粉末に焼結助材としてシリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)等の粉末を添加し、さらに適当なバインダー、溶剤および可塑剤を添加して、これらの混合物を混錬してスラリー状にする。その後、ドクターブレード法等の成形方法によって多数個取り基体用のセラミックグリーンシートを得る。
【0047】
このセラミックグリーンシートを用いて、以下の(1)〜(5)の工程により、光素子搭載用パッケージ1を作製する。
【0048】
(1)段差部11b、切欠き部15、搭載部11aを有する凹部13、および開口部14となる部位の打抜き金型を用いた打抜き工程。
【0049】
なお、段差部11bの側面が段差部11bの上側の底面から段差部11bの下側の底面に向かって傾斜している場合には、セラミックグリーンシートに治具等を押し当てることによって、段差部11bの側面が傾斜面になるように形成してもよい。
【0050】
(2)凹部13の底面、側面および基体11の内部、上面、外側面、下面となる部位に所定のパターンで形成され、内部導体および貫通導体を含む配線導体12、ならびに凹部13の切欠き部15の側面となる部位に形成される搭載用金属層16をそれぞれ形成するための、導体ペーストの印刷塗布および充填工程。
【0051】
(3)絶縁層となるセラミックグリーンシートを積層してセラミックグリーンシート積層体を作製する工程。またはこれら(1)〜(3)の工程の代わりに、(3)’個々の基体11に対応して段差部11b、切欠き部15、搭載部11aを有する凹部13、および開口部14となる形状に成形可能な金型を用いて、所定のパターンに配線導体12用の導体ペーストを形成したセラミックグリーンシートを加圧して、成型体を作製する工程。
【0052】
(4)セラミックグリーンシート積層体または成型体を約1500〜1800℃の温度で焼成して、配線導体12および搭載用金属層16を有する基体11が縦横の並びに複数配列された多数個取り基板を得る工程。
【0053】
(5)焼成して得られた多数個取り基板に光素子搭載用パッケージ1の外縁となる箇所に沿って分割溝を形成しておき、この分割溝に沿って破断させて、個々の基体11に分割する工程、または多数個取り基板をスライシング法等によって光素子搭載用パッケージ1の外縁となる箇所に沿って個々の基体11に切断する工程。
【0054】
なお、分割溝は、焼成後にスライシング装置によって多数個取り基板にその厚みよりも小さく切り込むことによって形成することができる。あるいは、多数個取り基板用のセラミックグリーンシート積層体または成型体にカッター刃を押し当てたり、スライシング装置によってセラミックグリーンシート積層体にその厚みよりも小さく切り込んだりすることによって形成してもよい。成型体を作製する場合は、金型として分割溝を有するものとなる形状に成形可能なものとして、セラミックグリーンシートを加圧するようにしてもよい。
【0055】
また、上述の工程において、配線導体12および搭載用金属層16は、基体11用のセラミックグリーンシートに導体ペーストをスクリーン印刷法等によって所定のパターンで印刷して、その導体ペーストを基体11用のセラミックグリーンシートと同時に焼成することによって、個々の基体11のそれぞれの所定位置に形成される。配線導体12のうち、セラミックグリーンシートを厚み方向に貫通する貫通導体を形成するには、セラミックグリーンシートに形成した貫通孔に印刷によって導体ペーストを充填しておけばよい。このような導体ペーストは、タングステン、モリブデン、マンガン、銀または銅等の金属粉末に適当な溶剤およびバインダーを加えて混練することによって、適度な粘度に調整して作製される。なお、導体ペーストは、基体11との接合強度を高めるために、ガラスまたはセラミックス等を含んでいても構わない。
【0056】
また、配線導体12および搭載用金属層16の露出した表面に、厚さが0.5〜5μmのニッ
ケルめっき層および厚さが0.1〜3μmの金めっき層を順次被着させるか、または厚さが
1〜10μmのニッケルめっき層および厚さが0.1〜1μmの銀めっき層を順次被着させる
のがよい。これによって、配線導体12および搭載用金属層16が腐食することを効果的に抑制できるとともに、搭載用金属層16と光素子2との接合材5による接合、および配線導体12と外部の回路基板の配線との接合を強固なものにできる。
【0057】
このようにして形成された光素子搭載用パッケージ1に光素子2が搭載されて封止された電子装置を、外部回路基板にはんだ等のろう材を介して搭載することで、電子装置の内部の光素子2が配線導体12を介して外部回路基板に電気的に接続される。このとき、光素子2の各電極は、接合材5等によって光素子搭載用パッケージ1の配線導体12に電気的に接続されている。
【0058】
本実施形態の光素子搭載用パッケージ1によれば、上面に開口する凹部13と、凹部13の底面に設けられた段差部11bと、凹部13の底面のうち段差部11bの上側の部分の段差部11b側に設けられた光素子2の搭載部11aとを有する基体11を含んでおり、段差部11bの上側の凹部13の上面および段差部11bの側面に開口する溝状の切欠き部15に搭載部11aが設けられていることから、光素子2が搭載部11aに搭載される場合に、例えば光素子2が段差部11bに設けた切欠き部15の内面に接合材5を介して接合されるものとなり、電子装置を作動させた際に、光素子2の熱が光素子搭載用パッケージ1の切欠き部15を介して基体11から外部へ良好に放出され、光素子2の放熱性が向上したものとなり、電子装置における光の出力特性が良好なものとなる。
【0059】
本実施形態の電子装置によれば、上記構成の光素子搭載用パッケージ1と、光素子搭載用パッケージ1の搭載部11aに搭載された光素子2と、凹部13を塞ぐように基体11に接合された蓋体4とを有していることから、必要な光量を発する電子装置とすることができる。
【0060】
なお、以上の実施形態の例では、搭載部11aに搭載された光素子2に対向するように基体11の側壁13aに開口部14を設けて、この開口部14から光素子2が発する光を外部に放出するようにしていたが、光素子2から発せられた光を基体11の外部に放出する構造は、開口部14に限られるものではない。例えば、凹部13の段差部11bの下側の底面に光素子2に対向するように光反射部材を配置して、光素子2から発せられた光を光反射部材の反射面によって上方、側方あるいは下方に反射させ、その先の蓋体4、凹部13の側壁あるいは凹部13の底面に開口部14および窓部材3を設けておいて、その窓部材3から外部に光を放出させるようにしてもよい。また、開口部14と窓部材3との組合せに代えて、少なくともその部分を透明(透光性)な材料で形成した基体11または蓋体4を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1・・・・光素子搭載用パッケージ
11・・・・基体
11a・・・搭載部
11b・・・段差部
13・・・・凹部
13a・・・側壁
14・・・・開口部
15・・・・切欠き部
16・・・・搭載用金属層
17・・・・角部
2・・・・光素子
3・・・・窓部材
4・・・・蓋体
5・・・・接合材
図1
図2
図3
図4
図5