特許第6773410号(P6773410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773410
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ポリアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/28 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   C08G69/28
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-236821(P2015-236821)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-101179(P2017-101179A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月21日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/研究開発項目2.木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発/木質バイオマスから各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】秋月 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】望月 学
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓馬
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−524953(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/005812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00−69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを主成分とするジアミン成分と、ジカルボン酸成分とからなり、数平均分子量が5000以上であるポリアミドの製造方法であって、
前記ジアミン成分と前記ジカルボン酸成分とからなる塩を、前記塩の融点以上の沸点を有する溶媒を用いて、前記塩の融点以上、(得られるポリアミドの融点−20℃)以下の温度で重合することを特徴とするポリアミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを用いたポリアミドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化や石油資源枯渇の問題が深刻化しつつあり、地球環境保全の見地から、バイオマスプラスチックの利用が注目されている。バイオマスプラスチックとしては、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート、さらに最近ではバイオポリエチレン等も開発されている。しかしながら、これらのバイオマスプラスチックは融点が180℃未満で耐熱性に劣るものである。プラスチックの耐熱性を高める方法として、芳香族モノマーや脂環式モノマーを用いることが有効であるが、バイオマス由来で芳香族モノマーや脂環式モノマーは限られている。その中で、近年、バイオマスから得られる2,5−ビス(アミノメチル)フランや2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランが注目され、これを用いたポリアミドは、上記バイオマスプラスチックより耐熱性が高いことが期待されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014−524953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のポリアミドは、分子量が低く、成形体とした場合に脆くて使用しにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを構成に有しつつ、耐熱性、機械強度に優れたポリアミドを提供することを目的とする。
【0006】
本発明者らは、このような課題を解決するため鋭意検討の結果、対応する塩を、塩の融点以上、(得られるポリアミドの融点−20℃)以下の温度で重合することにより、ポリアミドの分子量を高くすることができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを主成分とするジアミン成分と、ジカルボン酸成分とからなり、数平均分子量が5000以上であるポリアミドの製造方法であって、
前記ジアミン成分と前記ジカルボン酸成分とからなる塩を、前記塩の融点以上の沸点を有する溶媒を用いて、前記塩の融点以上、(得られるポリアミドの融点−20℃)以下の温度で重合することを特徴とするポリアミドの製造方法。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを構成に有しつつ、耐熱性、機械強度に優れたポリアミドを提供することができる。
【0009】
本発明のポリアミドは、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成される。
【0010】
ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0011】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェノキシエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸が挙げられる。
【0012】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸が挙げられる。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸が挙げられる。
【0014】
ジカルボン酸成分の中でも、得られるポリアミドの熱安定性の観点から、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸がより好ましい。ジカルボン酸成分は、上記のジカルボン酸を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ジアミン成分としては、2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを主成分として用いる必要がある。ジアミン成分において、2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの含有量は、全ジアミン成分に対して、50〜100モル%とすることが好ましく、80〜100モル%とすることがより好ましい。前記モノマーの含有量を50〜100モル%とすることにより、環境面でのメリットが大きくなる。
【0016】
2,5−ビス(アミノメチル)フランは、例えば、5−(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)を還元してフラン−2,5−ジメタノールを得たのち、塩素化、アジド化、還元することにより得ることができる。また、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランは、例えば、HMFを還元してテトラヒドロフラン−2,5−ジメタノールを得たのち、スルホン化、アジド化、還元することにより得ることができる。
【0017】
ジアミン成分には、他のジアミンとして、2,5−ビス(アミノメチル)フランとは異なる芳香族ジアミンや、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランとは異なる脂環族ジアミンや、脂肪族ジアミンを用いてもよい。
【0018】
2,5−ビス(アミノメチル)フランとは異なる芳香族ジアミンとしては、例えば、パラジアミノベンゼン、メタジアミノベンゼン、オルトジアミノベンゼンが挙げられる。
【0019】
2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランとは異なる脂環族ジアミンとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)が挙げられる。
【0020】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが挙げられる。
【0021】
上記のジアミンの中でも、耐熱性や成形性を高くすることができるため、炭素数5〜12の脂肪族ジアミンまたは炭素数が6以上の含脂環ジアミンが好ましく、生物由来の原料の割合を増やすことができるため、炭素数が5、8、9、10の直鎖状脂肪族ジアミンがより好ましい。炭素数が5、8、9、10の直鎖状脂肪族ジアミンは、植物由来の原料から、バイオ発酵またはオゾン分解等により、対応するジカルボン酸を合成し、さらに、それをアミノ化することにより得ることができる。例えば、1,5−ペンタンジアミンであれば、廃糖蜜の発酵で得られるL−リジンをアミノ化することにより得ることができ、1,8−オクタンジアミンや1,9−ノナンジアミンであれば、オリーブ油や米糠油から得られるオレイン酸をアミノ化することにより得ることができ、1,10−デカンジアミンであれば、ひまし油から得られるリシノール酸をアミノ化することにより得ることができる。
【0022】
本発明のポリアミドは、対応する塩を、塩の融点以上、(得られるポリアミドの融点−20℃)以下の温度で重合することが好ましい。本発明において、前記温度範囲で重合するとは、全重合時間のうち、90%以上の時間、前記温度範囲で重合することをいう。塩の融点未満の温度で重合した場合、得られるポリアミドの数平均分子量が5000未満となるので好ましくない。一方、(得られるポリアミドの融点−20℃)を超える温度で重合した場合、得られるポリアミドの色調が悪くなったり、数平均分子量が5000未満となったりする場合がある。なお、前記対応する塩とは、得られるポリアミドの原料の塩のことである。
【0023】
重合温度は、重合中、常に一定としてもよいし、重合の進行に応じて、適宜変更してもよい。反応時間は、反応温度に達してから0.5〜6時間とすることが好ましい。圧力は、生成する水を系外に排出しつつ、ジアミン成分の揮発を抑制するため、大気圧以上10MPa以下とすることが好ましい。
【0024】
本発明においては、重合する際、系内の粘度を低下させるため、塩の融点以上の沸点を有する溶媒を用いることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、デカリン(沸点:185〜195℃)、ウンデカン(沸点:196℃)、ドデカン(沸点:216℃)が挙げられる。
【0025】
なお、塩の重合をおこなった後、さらに分子量を上げるため、常圧下、不活性ガス流通下で重合を継続しておこなってもよいし、また減圧下で重合を継続しておこなってもよい。不活性ガス流通下で重合を継続する場合、不活性ガスの流量は0.01〜10L/(kg・分)とすることが好ましい。また、減圧下で重合を継続する場合、減圧度は1000Pa以下とすることが好ましい。
【0026】
対応する塩を得る方法は特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸成分とジアミン成分を水中や有機溶媒中で反応させて塩を得る方法が挙げられる。用いる水や有機溶媒の量は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計100質量部に対して、2質量部以上とすることが好ましく、10質量部以上とすることがより好ましい。反応温度は、常圧下では80〜100℃とすることが好ましく、加圧条件下では100〜150℃で反応させることが好ましい。反応時間は、反応温度に達してから0.1〜3時間とすることが好ましく、0.1〜2時間とすることがより好ましい。
【0027】
ポリアミドを重合する際、重合速度向上の点から、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計のモル数に対して、2モル%以下とすることが好ましい。
【0028】
また、重合度調整や分解、着色抑制等の目的で、末端封鎖剤を用いてもよい。末端封鎖剤としては、モノカルボン酸、モノアミンが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、ラウリン酸、安息香酸が挙げられ、モノアミンとしては、例えば、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。末端封鎖剤の使用量は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計のモル数に対して、5モル%以下とすることが好ましい。
【0029】
本発明のポリアミドの数平均分子量は5000以上とすることが必要で、8000以上とすることが好ましい。数平均分子量が5000未満の場合、成形体とした場合に脆くて使用しにくいので好ましくない。なお、数平均分子量は、重合時の温度と時間をコントロールすることにより制御することができる。
【0030】
本発明のポリアミドを成形体とした場合の吸水率は、1.0質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以下とすることがより好ましい。吸水率を1.0質量%以下とすることにより、長時間保管時の寸法変化をより抑制することができる。また、ポリアミドを成形体とした場合の引張強度は、50MPa以上とすることが好ましく、55MPa以上とすることがより好ましい。
【0031】
本発明のポリアミドには、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、繊維状補強材、充填材、顔料等の添加剤を加えてもよい。繊維状補強材としては、例えば、ガラス繊維や炭素繊維が挙げられ、充填材としては、例えば、タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイト、フィラーが挙げられ、顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラックが挙げられる。添加剤は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計に対して、20質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
本発明のポリアミドは、射出成形、押出成形、ブロー成形等公知の成形方法により、各種成形品に加工することができる。
【0033】
本発明のポリアミド成形品は、自動車部品、電気・電子部品として好適に用いることができる。
自動車部品としては、例えば、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、エンジンカバーが挙げられる。
電気・電子部品としては、例えば、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICやLEDのハウジングが挙げられる。
【0034】
また、本発明のポリアミドは公知の製膜方法や紡糸方法により、フィルム、シート、繊維に加工することができる。
フィルム、シートは、例えば、スピーカー振動板、フィルムコンデンサ、絶縁フィルム、各種包装フィルムとして用いることができる。
繊維は、例えば、エアーバッグ基布、フィルターとして用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0036】
1.原料
(1)2,5−ビス(アミノメチル)フラン
エタノール中に、HMF(225.0質量部)と、水素化ホウ素ナトリウム(90.0質量部)を連続して添加し、20℃で16時間撹拌した。反応終了後、10%塩酸水溶液をゆっくりと添加してpHを7とした。その後、40℃で、減圧蒸留により溶剤を蒸発させ、エタノールから白色固体を再結晶化させ、フラン−2,5−ジメタノールを得た。
得られたフラン−2,5−ジメタノール(215.0質量部)を、ピリジン(346.5質量部)に溶解し、それを、(−20〜0℃)の塩化チオニル(579.7質量部)を含有する酢酸エチルに1時間かけて滴下した。その後、室温に昇温し、石油エーテルを添加し、さらに氷冷水を加えた。有機相を、10%炭酸カリウム水溶液を用いて洗浄し、乾燥させ、その後、減圧蒸留により溶剤を蒸発させ、2,5−ビス(クロロメチル)フランを得た。
得られた2,5−ビス(クロロメチル)フラン(162.0質量部)と、アジ化ナトリウム(192.0質量部)を、ジメチルスルホキシドに添加し、50℃で16時間撹拌した。反応終了後、氷冷水と石油エーテルを用いて有機相を抽出し、乾燥させ、減圧濃縮し、2,5−ビス(アジドメチル)フランを得た。
得られた2,5−ビス(アジドメチル)フラン(157.5質量部)と、Raneyニッケル(68.0質量部)を、メタノールに添加し、1気圧の水素下、室温で40時間撹拌した。反応終了後、反応物を濾過し、濾液を濃縮し、2,5−ビス(アミノメチル)フランを得た。
【0037】
(2)2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン
メタノール中に、HMFと、Raneyニッケル(HMFに対して1.5当量)を添加し、5.76気圧の水素圧力下、60℃で20時間攪拌した。反応終了後、濾過と蒸留を繰り返すことにより精製し、テトラヒドロフラン−2,5−ジメタノールを得た。
得られたテトラヒドロフラン−2,5−ジメタノール(118.8質量部)と、トリエチルアミン(454.5質量部)を、0℃のジクロロメタンに添加し、さらに、メタンスルホニルクロリド(307.8質量部)を滴下し、0℃で1時間攪拌した。その後、氷冷水を添加し、有機相を分離した。有機相を、希釈(1M)塩酸溶液で洗浄した後、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、(テトラヒドロフラン−2,5−ジイル)ビス(メチレン)ジメタンスルホネートを得た。
得られた(テトラヒドロフラン−2,5−ジイル)ビス(メチレン)ジメタンスルホネート(236.7質量部)と、アジ化ナトリウム(270.0質量部)を、ジメチルスルホキシドに添加し、95℃で一晩撹拌した。反応終了後、氷冷水に添加し、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて洗浄した。その後、濃縮して2,5−ビス(アジドメチル)テトラヒドロフランを得た。
得られた2,5−ビス(アジドメチル)テトラヒドロフラン(166.5質量部)と、炭素担持パラジウム(10%、10.8質量部)を、メタノールに添加し、1気圧の水素圧力下、室温で一晩撹拌した。反応終了後、反応物を濾過し、濾液を真空下で濃縮し、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを得た。
得られた2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを、13C−NMR分析により、重水素化メタノールを用いて分析したところ、シス/トランス異性体比は90/10であった。
【0038】
2.分析方法
(1)樹脂組成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製ECA500 NMR)を用いて、H−NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた(分解能:500MHz、溶媒:トリフルオロ酢酸−d/重水=9/1(体積比)、温度:25℃)。
【0039】
(2)数平均分子量
ポリアミド7〜8mgをヘキサフルオロイソプロパノール5mLに溶解後、0.45μmフィルターで濾過したサンプルを、東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。
検出器:東ソー社製 示差屈折率検出器RI−8020
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−H
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを10mM含有するヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.4mL/分
測定温度:40℃
標準試料:Agilent Technologies社製 ポリメチルメタクリレート Easi Vial PM(登録商標)
【0040】
(3)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用いて、常温から300℃まで20℃/分で昇温した後、5分間保持後、500℃/分で25℃まで降温し、5分間保持後、300℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温時に得られた曲線の融解に由来するピークの頂点を融点とした。
【0041】
(4)吸水率
ポリアミドを十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC−100型)を用いて成形し、長さ125mm×幅12mm×厚み0.8mmの試験片を作製した。なお、シリンダ温度は(得られるポリアミドの融点+20℃)、金型温度は100℃とした。
得られた試験片を、25℃の水中に24時間静置し、静置前の試験片の質量の値を基準として、下記式により吸水率を算出した。
吸水率(%)=(静置後の試験片の質量)/(静置前の試験片の質量)×100
【0042】
(5)引張強度
ポリアミドを十分に乾燥した後、熱プレス機(林機械製作所社製)を用いてプレスした後、冷却し、長さ150mm×幅10mmとなるように切り抜き、試験片を得た。なお、熱プレス機のプレス板温度は、(得られるポリアミドの融点+20℃)に設定した。
得られた試験片を用いて、JIS K−7127に準拠して、model−2020(INTESCO社製)を用いて測定した。使用セルは1000N、試験速度は50mm/分、チャック間隔は100mmとした。
【0043】
実施例1
アジピン酸28.41質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン24.53質量部を滴下し、3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、ポリアミド塩を得た。
得られたポリアミド塩27質量部とデカリン50質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
【0044】
実施例1〜5、比較例1〜3
表1の記載の樹脂組成になるように用いる原料を変更し、表1に記載のように製造条件を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。
【0045】
比較例4
アジピン酸23質量部と、2,5−ビス(アミノメチル)フラン20質量部とを、水に20質量%で溶解させ、それを80℃で2時間加熱し、ポリアミド塩を得た。
得られたポリアミド塩を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、200℃で3時間加熱撹拌し、ポリアミドを得た。
【0046】
比較例5
表1に記載のように製造条件を変更する以外は、比較例4と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。
【0047】
表1に、実施例および比較例で得られたポリアミドの製造条件、樹脂組成および特性値を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1〜5のポリアミドは、塩の融点以上、(得られるポリアミドの融点−20℃)未満の温度で重合したため、数平均分子量が5000以上であって、引張強度が50MPa以上であった。
【0050】
比較例1のポリアミドは、塩の融点よりも低い温度で重合したため、数平均分子量が低かった。
比較例2のポリアミドは、(ポリアミドの融点−20℃)を超える温度以上で重合したため、数平均分子量が低かった。
比較例3のポリアミドは、ポリアミドの融点以上の温度で重合したため、数平均分子量が低かった。そのため、試験片を得ることができず、吸水率や引張強度を測定することができなかった。
比較例4、5のポリアミドは、ポリアミドの融点以上の温度で重合したため、数平均分子量が低かった。