特許第6773432号(P6773432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6773432-負圧ブースタ用チェックバルブ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773432
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】負圧ブースタ用チェックバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20201012BHJP
   B60T 13/52 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F16K15/06
   B60T13/52
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-69583(P2016-69583)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-180700(P2017-180700A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】日信ブレーキシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】六川 明浩
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−017481(JP,U)
【文献】 実開平06−055915(JP,U)
【文献】 米国特許第04886085(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00−15/20
B60T 13/00−13/74
B60T 15/00−17/22
F04B 25/00−37/20;41/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧ブースタ(11)の負圧室(14)に通じる通路に配置される負圧ブースタ用チェックバルブであって、
前記通路の軸線と直交する平面に沿って延びる平面状の弁座(33)を備えたハウジング(26)と、
前記弁座(33)との対向位置に配置される平面状の円板(39)と当該円板(39)の外周から前記弁座(33)に向かって立ち上がる円筒形状のシールリップ(41)とを有して弁体を構成する環状のシール部材(37)と、
前記シール部材(37)が取り付けられ、前記シール部材(37)の背後で前記シール部材(37)よりも外径方向に突出するフランジ部(42)を有するシール支持部材(38)とを備え、
前記シールリップ(41)が前記弁座(33)と直交する方向から前記弁座(33)に当接する前記シール部材(37)の着座状態で、前記フランジ部(42)と前記ハウジング(26)の内周壁との間の隙間(g)が最も狭くなる
ことを特徴とする負圧ブースタ用チェックバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の負圧ブースタ用チェックバルブにおいて、前記ハウジング(26)は、前記シール支持部材(38)の前記フランジ部(42)に向き合って、前記弁座(33)から遠ざかるにつれて拡径する傾斜面(53)を備え、着座状態で、前記フランジ部(42)と前記傾斜面(53)との一部が弁体軸方向で重なるように配置される
ことを特徴とする負圧ブースタ用チェックバルブ。
【請求項3】
請求項2に記載の負圧ブースタ用チェックバルブにおいて、前記ハウジング(26)は、
前記傾斜面(53)を区画する第1ハウジング部材(26b)と、
前記第1ハウジング部材(26b)の開放端に結合されて、前記第1ハウジング部材(26b)との間に前記シール部材(37)および前記シール支持部材(38)を収容する弁室(27)を区画する第2ハウジング部材(26a)と
を有することを特徴とする負圧ブースタ用チェックバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のブレーキ装置用負圧ブースタに接続されて利用される負圧ブースタ用チェックバルブに関し、例えば、負圧ブースタの負圧室に通じる通路に配置される弁座と、弁座に着座する軟質のシール部材と、シール部材を背後から支持する硬質のシール支持部材とを備える負圧ブースタ用チェックバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2は負圧ブースタ用チェックバルブを開示する。負圧源から負圧が作用しなければ、弁ばねの弾性力を受けて弁体は弁座に着座する。負圧が増大すると、弁ばねの弾性力に抗して弁体は弁座から離れる方向に変位する。弁体は、軟質のシール部材と、硬質のシール支持部材とを備える。柔軟性を有するシール部材が着座することで良好な気密性は実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−202229号公報
【特許文献2】実開平6−10671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軟質のシール部材は、前面で負圧ブースタ(負圧室)に通じる空間に面し、後面で負圧源に通じる空間に面する。使用環境等の要因に応じてシール部材(弁体)の開弁圧が変化して開弁性能にばらつきが生じてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、開弁性能のばらつきを抑制することができる負圧ブースタ用チェックバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、負圧ブースタの負圧室に通じる通路に配置される負圧ブースタ用チェックバルブであって、前記通路の軸線と直交する平面に沿って延びる平面状の弁座を備えたハウジングと、前記弁座との対向位置に配置される平面状の円板と当該円板の外周から前記弁座に向かって立ち上がる円筒形状のシールリップとを有して弁体を構成する環状のシール部材と、前記シール部材が取り付けられ、前記シール部材の背後で前記シール部材よりも外径方向に突出するフランジ部を有するシール支持部材とを備え、前記シールリップが前記弁座と直交する方向から前記弁座に当接する前記シール部材の着座状態で、前記フランジ部と前記ハウジングの内周壁との間の隙間が最も狭くなる負圧ブースタ用チェックバルブは提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記ハウジングは、前記シール支持部材の前記フランジ部に向き合って、前記弁座から遠ざかるにつれて拡径する傾斜面を備え、着座状態で、前記フランジ部と前記傾斜面との一部が弁体軸方向で重なるように配置される。
【0008】
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記ハウジングは、傾斜面を区画する第1ハウジング部材と、前記第1ハウジング部材の開放端に結合されて、前記第1ハウジング部材との間に前記シール部材および前記シール支持部材を収容する弁室を区画する第2ハウジング部材とを有する。
【発明の効果】
【0009】
第1側面によれば、弁体であるシール部材が着座時に、シール支持部材とハウジングの内周壁との間の隙間が最も狭くなるとともに、シール部材よりも大径のフランジ部に負圧源の負圧が作用することから、弁座から離れる方向にシール部材を引く力が十分に得られる。その結果、使用環境等により開弁圧が多少変化しても、開弁タイミングの遅れを極力抑制することができ、開弁性能のばらつきを抑制することができる。
【0010】
第2側面によれば、着座状態で、シール支持部材とハウジングの内周壁との間の隙間を最も狭くすることができるとともに、負圧源の負圧が作用して、シール部材およびシール支持が弁座から遠ざかるに従ってシール支持部材のフランジ部が傾斜面から離れることで、隙間は増大する。したがって、一度開弁した後には瞬時に十分な流量が確保されるので、負圧導入の応答性を維持することができる。
【0011】
第3側面によれば、第1ハウジング部材には、開放端に向かって広がる傾斜面を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る負圧ブースタの構成を概略的に示す部分断面の側面図である。
図2】第1実施形態に係るチェックバルブの拡大断面図である。
図3】チェックバルブの要部の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図4】開弁状態でチェックバルブの要部の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図5】第2実施形態に係るチェックバルブの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は一実施形態に係る負圧ブースタの構成を概略的に示す。負圧ブースタ11はブースタシェル12を備える。ブースタシェル12の内部空間はダイヤフラム13で前側の負圧室14および後側の作動室15に仕切られる。負圧室14には負圧導管16を介して負圧源17が接続される。負圧導管16中にはチェックバルブ18が配置される。こうした負圧ブースタ11は例えば自動車のブレーキ装置に利用される。この場合には、負圧源17としてエンジンの吸気マニホールドが利用される。吸気マニホールドからの負圧が負圧室14に作用する。
【0015】
負圧ブースタ11はブースタシェル12内に収容されるブースタピストン19を備える。ブースタピストン19はダイヤフラム13に結合される。ブースタピストン19には図示しない制御弁を介して入力軸21が連結される。入力軸21は、軸方向に前後移動自在にブースタシェル12の後壁に支持される。入力軸21の後端にはヨーク22を介してブレーキペダル23のアーム23aが連結される。
【0016】
ブースタシェル12の前壁にはブレーキマスタシリンダ24が接続される。ブースタピストン19は、図示しない出力軸を介してブレーキマスタシリンダ24のピストンに連結される。負圧ブースタ11の休止時には、ブースタピストン19および入力軸21が後退限に位置して、負圧室14の負圧が図示しない制御弁を介して作動室15に伝達され、負圧室14および作動室15は同圧とされる。ブレーキペダル23が踏み込まれ入力軸21が前進すると、制御弁の作動に応じて作動室15に大気圧が導入される。作動室15と負圧室14との圧力差に応じてブースタピストン19は前進してブレーキマスタシリンダ24を倍力作動する。
【0017】
チェックバルブ18はハウジング26を備える。図2に示されるように、ハウジング26は、内部に弁室27を区画する円筒形の第2ハウジング部材26aと、弁室27の開放端を閉じる第1ハウジング部材26bとで形成される。第2ハウジング部材26aおよび第1ハウジング部材26bはいずれも例えば合成樹脂から成形されればよい。第1ハウジング部材26bは第2ハウジング部材26aの開放端に結合される。結合にあたって第2ハウジング部材26aの内壁面には中心軸線Xis回りで溝28が形成される。弁室27の開放端に嵌まり込む第1ハウジング部材26bの円筒部には溝28に対応して係り爪29が形成される。係り爪29は遠心方向に外向きに円筒部の円筒面から突き出る。係り爪29が溝28に嵌まることで第2ハウジング部材26aおよび第1ハウジング部材26bの結合は維持される。
【0018】
第1ハウジング部材26bにはグロメット31が装着される。グロメット31はゴムなどの弾性材から成形される。ブースタシェル12の前壁に穿たれた取り付け孔32にグロメット31は嵌め込まれる。グロメット31の働きでチェックバルブ18は気密に取り付け孔32に差し込まれる。
【0019】
弁室27内には弁座33が配置される。弁座33は第1ハウジング部材26bに形成される。弁座33は環状の平面33aを区画する。平面33aは円柱形空間の負圧出口ポート34を囲む。負圧出口ポート34は弁室27にブースタシェル12の負圧室14を接続する。こうして負圧室14に通じる通路の開口に弁座33は配置される。
【0020】
第2ハウジング部材26aには負圧入口ポート35を区画する接続管36が形成される。接続管36には負圧導管16が接続される。負圧入口ポート35は弁室27に吸気マニホールドを接続する。吸気マニホールドの負圧は弁室27に作用する。
【0021】
弁室27内には弾性体のシール部材37および金属体(または硬質樹脂成形体)のシール支持部材38が配置される。シール部材37は、円板39と、当該円板39の外周から弁座33に向かって立ち上がる円筒形状のシールリップ41とを有する。円板39およびシールリップ41は負圧出口ポート34の中心軸線Xisに同軸に配置される。シール部材37が中心軸線Xisの方向に後退位置から弁座33に向かって前進すると、シールリップ41の先端は弁座33の平面33aに着座する。着座したシール部材37は負圧出口ポート34を塞ぐ。
【0022】
シール部材37はシール支持部材38の前端に装着される。装着にあたって、シール支持部材38は、先端に円錐形状を有して円板39の中心を貫通し円板39に係り止めされる係止部38aを有する。シール部材37の円板39はシール支持部材38で背後から支持される。シール支持部材38は、シール部材37の背後でシール部材37よりも外径方向に突出するフランジ部42を有する。
【0023】
シール支持部材38には後方に延びる弁軸43が形成される。弁軸43は負圧出口ポート34の中心軸線Xisに同軸に配置される。弁軸43は、弁室27内に配置される案内ボス44に差し込まれる。案内ボス44には、前後方向にスライド自在に弁軸43を受け入れる案内孔45が区画される。案内ボス44は複数のリブ46を介して接続管36から連続する。リブ46によって弁室27と負圧入口ポート35とが連通される。
【0024】
弁室27内には弁ばね47が収容される。弁ばね47は弁室27の後壁とシール支持部材38との間に配置される。弁ばね47は、弁座33に向かってシール部材37を押し付ける弾性力を発揮する。負圧入口ポート35から導入される負圧がシール部材37に作用して、弁ばね47の押し付け力を上回ると、弁ばね47の弾性力に抗してシール部材37はシール支持部材38とともに後退する。後退に応じてシールリップ41は弁座33の平面33aから離れ、負圧出口ポート34から負圧室14に負圧は導入される。
【0025】
図3に示されるように、シール部材37は、負圧室14に通じる負圧出口ポート34内の空間に面する円形の受圧面51を形成する。受圧面51は第1面積を有する。第1面積はシールリップ41の外径D1で規定される。シール支持部材38のフランジ部42は、負圧源17(負圧入口ポート35)に通じる空間に面する円形の受圧面52を形成する。受圧面52は第1面積より大きい第2面積を有する。すなわち、シール支持部材38のフランジ部42はシールリップ41の外径D1よりも大きい外径D2を有する。
【0026】
ハウジング26(ここでは第1ハウジング部材26b)には弁座33の外周から連続して開放端に向かって広がる傾斜面53が区画される。傾斜面53はシール部材37の着座時にシール支持部材38のフランジ部42に向き合わせられる。こうしてシール支持部材38のフランジ部42外周には隙間gが形成される。シール部材37の着座状態で、隙間gが最も小さく(狭く)なるようになっている。また、着座状態で、傾斜面53とフランジ部42とは、弁体の軸方向において一部が重なるように配置される。傾斜面53は、着座状態で、弁座33の平面33aから遠ざかるにつれてシール支持部材38のフランジ部42外周へ近づき、開放端で第1ハウジング部材26bに接続される。図4に示されるように、シール支持部材38の前後移動に応じてシール部材37が弁座33の平面33aから遠ざかると、シール支持部材38の外周の隙間gは増大する。
【0027】
負圧源17からの負圧が作用しない状態では、弁ばね47の弾性力を受けて弁体のシール部材37のシールリップ41が弁座33の平面33aに着座することで負圧ブースタ11の負圧室14と弁室27との間が遮断される。このとき、シール支持部材38のフランジ部42外周には隙間gが維持される。
【0028】
負圧源17からの負圧が弁室27に作用して、弁ばね47の付勢力を上回ると、弁ばね47の弾性力に抗してシール部材37は弁座33から離れる方向に変位する。このとき、隙間gは着座状態で最も狭くなっており、負圧源17の負圧が第1面積よりも大きい第2面積の受圧面52に作用する。したがって、弁座33から離れる方向にシール部材37およびシール支持部材38を引く力が十分に得られるため、使用環境等により開弁圧が多少変化したとしても、開弁タイミングの遅れを極力抑制することができ、開弁性能のばらつきは抑制される。
【0029】
ハウジング26の傾斜面53はシール支持部材38のフランジ部42に向き合う。傾斜面53は、着座状態で弁座33から遠ざかるにつれてシール支持部材38のフランジ部42外周へ近づく。一方で、負圧源17の負圧がシール支持部材38の受圧面52に作用して、シール部材37が弁座33から遠ざかる(開弁)に従ってシール支持部材38のフランジ部42が傾斜面53から離れることで、隙間gは増大する。したがって、チェックバルブ18では、いちど開弁した後には瞬時に十分な流量が確保されるので、負圧導入の応答性は維持されることができる。
【0030】
チェックバルブ18では、第1ハウジング部材26bに弁座33から開放端に向かって広がる傾斜面53が区画される。第1ハウジング部材26bの開放端に第2ハウジング部材26aが結合されて弁室27は形成される。こうして第1ハウジング部材26bには、開放端に向かって広がる傾斜面53を容易に形成することができる。
【0031】
なお、図5に示されるように、チェックバルブ18は負圧導管16中に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
11…負圧ブースタ、14…負圧室、18…負圧ブースタ用チェックバルブ、26…ハウジング、26a…第2ハウジング部材、26b…第1ハウジング部材、27…弁室、33…弁座、37…シール部材、38…シール支持部材、42…フランジ部、51…受圧面、52…受圧面、53…傾斜面、g…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5