【実施例1】
【0013】
以下、本発明を適用した周辺リスク表示装置の実施例1について説明する。
図1は、本発明を適用した周辺リスク表示装置の実施例1が設けられる車両の構成を模式的に示すブロック図である。
実施例1の周辺リスク表示装置は、例えば、自動運転機能を有する乗用車等の自動車である車両1に設けられ、ユーザ(例えば手動運転時のドライバ)等のユーザ等に対して、自車両周辺のリスクに関する情報等を画像表示するものである。
ユーザは、自動運転時においては周辺リスク表示装置が提示する情報に基づいて、周辺リスクを監視するとともに自動運転制御における目標走行軌跡設定の妥当性を検証することができる。
また、ユーザ自身がドライバとして手動運転を行う場合にも、適切な走行軌跡の案内を含む運転支援を受けることができる。
【0014】
図1に示すように、車両1は、エンジン制御ユニット10、トランスミッション制御ユニット20、挙動制御ユニット30、電動パワーステアリング(EPS)制御ユニット40、自動運転制御ユニット50、環境認識ユニット60、ステレオカメラ制御ユニット70、レーザスキャナ制御ユニット80、後側方レーダ制御ユニット90、ナビゲーション装置100、路車間通信装置110、車車間通信装置120、周辺リスク認識ユニット200、表示装置210等を備えている。
上述した各ユニットは、例えば、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を有するユニットとして構成される。これらの各ユニットは、例えばCAN通信システム等の車載LANシステムを介して相互に通信が可能となっている。
【0015】
エンジン制御ユニット10は、車両1の走行用動力源であるエンジン及びその補機類を統括的に制御するものである。
エンジンとして、例えば、4ストロークガソリンエンジンが用いられる。
エンジン制御ユニット(ECU)10は、エンジンのスロットルバルブ開度、燃料噴射量及び噴射時期、点火時期等を制御することによって、エンジンの出力トルクを制御することが可能である。
車両1がドライバの運転操作に応じて運転される状態においては、エンジン制御ユニット10は、アクセルペダルの操作量等に基いて設定されるドライバ要求トルクに、エンジンの実際のトルクが近づくようエンジンの出力を制御する。
また、車両1が自動運転を行う場合には、エンジン制御ユニット10は、自動運転制御ユニット50からの指令に応じてエンジンの出力を制御する。
【0016】
トランスミッション制御ユニット(TCU)20は、エンジンの回転出力を変速するとともに、車両の前進、後退を切り替える図示しない変速機及び補機類を統括的に制御するものである。
車両1が自動運転を行う場合には、トランスミッション制御ユニット20は、自動運転制御ユニット50からの指令に応じて、前後進等のレンジ切替や変速比の設定を行う。
変速機として、例えば、チェーン式、ベルト式、トロイダル式等のCVTや、複数のプラネタリギヤセットを有するステップAT、DCT、AMT等の各種自動変速機を用いることができる。
変速機は、バリエータ等の変速機構部のほか、例えばトルクコンバータ、乾式クラッチ、湿式クラッチ等の発進デバイスや、前進走行レンジと後退走行レンジとを切替える前後進切替機構等を有して構成されている。
【0017】
トランスミッション制御ユニット20には、前後進切替アクチュエータ21、レンジ検出センサ22等が接続されている。
前後進切替アクチュエータ21は、前後進切替機構に油圧を供給する油路を切り替える前後進切替バルブを駆動し、車両の前後進を切替えるものである。
前後進切替アクチュエータ21は、例えば、ソレノイド等の電動アクチュエータである。
レンジ検出センサ22は、変速機において現在選択されているレンジが前進用のものであるか、後退用のものであるかを判別するセンサ(スイッチ)である。
【0018】
挙動制御ユニット30は、左右前後輪にそれぞれ設けられた液圧式サービスブレーキのホイルシリンダ液圧を個別に制御することによって、アンダーステアやオーバステア等の車両挙動を抑制する挙動制御や、制動時のホイルロックを回復させるアンチロックブレーキ制御を行うものである。
挙動制御ユニット30には、ハイドロリックコントロールユニット(HCU)31、車速センサ32等が接続されている。
【0019】
HCU31は、液圧式サービスブレーキの作動流体であるブレーキフルードを加圧する電動ポンプ、及び、各車輪のホイルシリンダに供給される液圧を個別に調節するバルブ等を有する。
車両1が自動運転を行う場合には、HCU31は、自動運転制御ユニット50からの制動指令に応じて、各車輪のホイルシリンダに制動力を発生させる。
車速センサ32は、各車輪のハブ部に設けられ、車輪の回転速度に比例する周波数の車速パルス信号を発生するものである。
車速パルス信号の周波数を検出し、所定の演算処理を施すことによって、車両の走行速度(車速)を算出することが可能である。
【0020】
電動パワーステアリング(EPS)制御ユニット40は、ドライバによる操舵操作を電動モータによってアシストする電動パワーステアリング装置、及び、その補機類を統括的に制御するものである。
EPS制御ユニット40には、モータ41、舵角センサ42等が接続されている。
【0021】
モータ41は、車両の操舵系にアシスト力を付与してドライバによる操舵操作をアシストし、あるいは、自動運転時に舵角を変更する電動アクチュエータである。
車両1が自動運転を行う場合には、モータ41は、自動運転制御ユニット50からの操舵指令に応じて、操舵系の舵角が所定の目標舵角に近づくように操舵系にトルクを付与して転舵を行わせる。
舵角センサ42は、車両の操舵系における現在の舵角を検出するものである。
舵角センサ42は、例えば、ステアリングシャフトの角度位置を検出する位置エンコーダを備えている。
【0022】
自動運転制御ユニット50は、自動運転モードが選択されている場合に、上述したエンジン制御ユニット10、トランスミッション制御ユニット20、挙動制御ユニット30、EPS制御ユニット40等に制御指令を出力し、車両を自動的に走行させる自動運転制御を実行するものである。
【0023】
自動運転制御ユニット50は、自動運転モードが選択された時に、環境認識ユニット60から提供される自車両周辺の状況に関する情報、及び、図示しないドライバからの指令等に応じて、自車両が進行すべき目標走行軌跡を設定し、車両の加速(発進)、減速(停止)、前後進切替、転舵などを自動的に行い、予め設定された目的地まで車両を自動的に走行させる自動運転を実行する。
また、自動運転モードは、ユーザが手動運転を希望する場合、あるいは、自動運転の続行が困難である場合等に、ユーザからの所定の解除操作に応じて中止され、ドライバによる手動運転を行う手動運転モードへの復帰が可能となっている。
【0024】
自動運転制御ユニット50には、入出力装置51が接続されている。
入出力装置51は、自動運転制御ユニット50からユーザへの警報や各種メッセージ等の情報を出力するとともに、ユーザからの各種操作の入力を受け付けるものである。
入出力装置51は、例えば、LCD等の画像表示装置、スピーカ等の音声出力装置、タッチパネル等の操作入力装置等を有して構成されている。
【0025】
環境認識ユニット60は、自車両周囲の情報を認識するものである。
環境認識ユニット60は、ステレオカメラ制御ユニット70、レーザスキャナ制御ユニット80、後側方レーダ制御ユニット90、ナビゲーション装置100、路車間通信装置110、車車間通信装置120等からそれぞれ提供される情報に基づいて、自車両周辺の駐車車両、走行車両、建築物、地形、歩行者等の障害物や、自車両が走行する道路の車線形状等を認識するものである。
【0026】
ステレオカメラ制御ユニット70は、車両の周囲に複数組設けられるステレオカメラ71を制御するとともに、ステレオカメラ71から伝達される画像を画像処理するものである。
個々のステレオカメラ71は、例えば、レンズ等の撮像用光学系、CMOS等の固体撮像素子、駆動回路及び信号処理装置等からなるカメラユニットを、並列に例えば一対配列して構成されている。
ステレオカメラ制御ユニット70は、公知のステレオ画像処理技術を利用した画像処理結果に基づいて、ステレオカメラ71によって撮像された被写体の形状及び自車両に対する相対位置を認識する。
レーザスキャナ制御ユニット80は、レーザスキャナ81を制御するとともに、レーザスキャナ81の出力に基づいて車両周囲の車両や障害物等の各種物体を3D点群データとして認識するものである。
【0027】
後側方レーダ制御ユニット90は、車両の左右側部にそれぞれ設けられる後側方レーダ91を制御するとともに、後側方レーダ91の出力に基づいて自車両後側方に存在する物体を検出するものである。
後側方レーダ91は、例えば、自車両の後側方から接近する他車両を検知可能となっている。
後側方レーダ91として、例えば、レーザレーダ、ミリ波レーダ等のレーダが用いられる。
【0028】
図2は、実施例1の車両において車両周囲を認識するセンサ類の配置を示す模式図である。
ステレオカメラ71は、車両1の前部、後部、左右側部にそれぞれ設けられている。
レーザスキャナ81は、車両1の周囲に実質的に死角が生じないよう分布して複数設けられている
後側方レーダ91は、例えば、車両1の車体左右側部に配置され、検知範囲を車両後方側かつ車幅方向外側に向けて配置されている。
【0029】
ナビゲーション装置100は、例えばGPS受信機等の自車両位置測位手段、予め準備された地図データを蓄積したデータ蓄積手段、自車両の前後方向の方位を検出するジャイロセンサ等を有する。
地図データは、道路、交差点、インターチェンジ等の道路情報を車線レベルで有する。
道路情報は、3次元の車線形状データのほか、各車線(レーン)の右左折可否や、一時停止位置、制限速度等の走行上の制約となる情報も含む。
ナビゲーション装置100は、後述するインストルメントパネル340に組み込まれたディスプレイ101を有する。
ディスプレイ101は、ナビゲーション装置100がドライバに対して出力する各種情報が表示される画像表示装置である。
ディスプレイ101は、タッチパネルを有して構成され、ドライバからの各種操作入力が行われる入力部としても機能する。
【0030】
路車間通信装置110は、所定の規格に準拠する通信システムによって、図示しない地上局と通信し、渋滞情報、交通信号機点灯状態、道路工事、事故現場、車線規制、天候、路面状況などに関する情報を取得するものである。
【0031】
車車間通信装置120は、所定の規格に準拠する通信システムによって、図示しない他車両と通信し、他車両の位置、方位角、加速度、速度等の車両状態に関する情報や、車種、車両サイズ等の車両属性に関する情報を取得するものである。
【0032】
周辺リスク認識ユニット200は、環境認識ユニット60が認識した情報に基づいて、自車両との衝突リスクが存在するリスク対象物を抽出し、リスク対象物によるリスクポテンシャル(リスクの大きさ)の高低、及び、リスクが及ぶ範囲の分布を、リスク対象物の周囲の全方位にわたって推定するものである。
リスクポテンシャルの推定は、例えば、リスク対象物の種類、移動方向、移動速度等に基づいて行われる。
例えば、各種のリスク対象物の進行方向に対する方向(前方、後方、側方)ごとに、基本パターンとなるリスクポテンシャルの分布を予めマップ化して保持し、この基本パターンをもとに、リスクの高低や分布範囲を補正して個別のリスク対象物に係るリスク分布を設定する構成とすることができる。
リスク対象物の種類に応じた具体的なリスクポテンシャル分布の例については、後に詳しく説明する。
【0033】
図3は、実施例1の周辺リスク表示装置を有する車両におけるユーザ(手動運転時におけるドライバ)視界の一例を示す図である。
図3に示すように、車両は、フロントガラス310、フロントドアガラス320、サイドミラー330、インストルメントパネル340、ステアリングホイール350、Aピラー360、ルーフ370、ルームミラー380等を有する。
【0034】
フロントガラス310は、ドライバの前方側に配置されている。
フロントガラス310は、実質的に横長の矩形状に形成され、前方が凸となる方向に湾曲した2次曲面ガラスである。
フロントガラス310は、上端部が下端部に対して車両後方側となるように後傾して配置されている。
【0035】
フロントドアガラス320は、乗員の乗降に用いられる左右フロントドアの上部であって、ドライバの側方に設けられている。
フロントドアガラス320は、昇降式の本体部321、及び、本体部321の前部に設けられた固定式の三角窓部322を有する。
【0036】
サイドミラー330は、ドライバが左右後方視界を確認するものである。
サイドミラー330は、左右フロントドアのアウタパネルから車幅方向外側に突出している。
ユーザ視界において、サイドミラー330は、例えば、フロントドアガラス320の本体部321の前端部近傍に見えるようになっている。
【0037】
インストルメントパネル340は、車室内においてフロントガラス310の下方に設けられた内装部材である。
インストルメントパネル340は、各種計器類、表示装置、スイッチ類、空調装置、助手席エアバッグ装置、膝部保護エアバッグ装置等が収容される筐体としても機能する。
インストルメントパネル340は、コンビネーションメータ341、マルチファンクションディスプレイ342、ナビゲーション装置100のディスプレイ101等が設けられる。
【0038】
コンビネーションメータ341は、運転席の正面に設けられ、速度計、エンジン回転計、距離計などの各種計器類をユニット化したものである。
コンビネーションメータ341には、表示装置210が内蔵されている。
マルチファンクションディスプレイ342は、インストルメントパネル340の車幅方向中央部における上部に設けられた例えばLCD等の画像表示装置である。
ナビゲーション装置100のディスプレイ101は、インストルメントパネル340の車幅方向中央部における下部に設けられている。
【0039】
ステアリングホイール350は、ドライバが手動運転時に操舵操作を入力する環状の操作部材である。
ステアリングホイール350は、ドライバの前方に実質的に正対して設けられる。
コンビネーションメータ341は、ユーザ視界において、ステアリングホイール350の上半部における内径側から目視可能となっている。
【0040】
Aピラー360は、フロントガラス310の側端部及びフロントドアガラス320の前端部に沿って配置された柱状の車体構造部材である。
Aピラー360の車室内側の面部は、樹脂製のピラートリムによってカバーされている。
【0041】
ルーフ370は、フロントガラス310の上端部から後方にのびて形成されている。
ルーフ370の車室内側の面部は、樹脂製のルーフトリムによってカバーされている。
ルーフ370の車幅方向中央部における前端部には、前方撮影用のステレオカメラ71が収容されるステレオカメラ収容部371が設けられている。
【0042】
ルームミラー380は、車室内に設けられた後方確認用のミラーである。
ルームミラー380は、図示しないステーを介してフロントガラス310の車幅方向中央部における上端部近傍に設けられている。
【0043】
表示装置210は、車両のドライバと対向して配置された画像表示装置である。
表示装置210として、例えば、
図3に示すようにインストルメントパネル340のコンビネーションメータ341に組み込まれたLCDを用いることができる。
【0044】
表示装置210は、周辺リスク認識ユニット200が推定したリスク対象物周囲のリスクポテンシャル分布を、以下説明する等高線表示によって表示する機能を有する。
図4は、表示装置における画像表示の一例を示す図である。
図4は、例えば、左側通行片側3車線の高速道路(高規格の自動車専用道)を走行中の状態を示している。
画像表示は、環境認識ユニット60が認識した車線形状(白線形状)を含む。
図4においては、左側から順に、左側走行車線LL、右側走行車線LR、追越車線LPが表示されている。
また、左側走行車線LLには、自車両OV(車両1の構成を有するもの)の前方側において、合流車線LMが左側より合流している。
【0045】
図4に示す例においては、自車両OVは3車線のうち中央に配置された右側走行車線LRを走行している。
右側通行車線LRにおける自車両OVの前方には、乗用車PC1が走行している。
左側通行車線LLにおける自車両OVの側方には、乗用車PC2が走行している。
追越車線LPにおける自車両OVの斜め前方側には、二輪車MC2が走行している。
【0046】
また、表示装置210は、画像表示内において、周囲の車両等のリスク対象物の周辺におけるリスクポテンシャル分布を、等高線Cによって表示する機能を備えている。
この等高線表示は、リスク対象物の周囲において、リスクポテンシャルの大きさが同等であると推定される点を結ぶことによって、リスク対象物の周囲に環状の線(等高線C)を設定し、これを表示したものである。
このような等高線表示は、複数の異なったリスクポテンシャルの大きさについてそれぞれ設定される。
【0047】
図4に示すような俯瞰表示においては、等高線Cは、リスクポテンシャルの増加に応じて、画像上において路面からの高さが大きく見えるように表示される。
その結果、リスク対象物の周囲には、異なった大きさのリスクポテンシャルを示す複数の等高線Cが表示され、それぞれの等高線Cを滑らかな曲面で繋いだ形状は、実質的に上方が窄みかつ内部にリスク対象物(車両等)を収容する山型に表示される。
【0048】
図5は、実施例1の周辺リスク表示装置におけるリスク対象物が乗用車である場合のリスクポテンシャルの等高線表示の一例を示す図である。
図5(a)は乗用車を側面から見た状態、
図5(b)は正面から見た状態をそれぞれ示している。(後述する
図6、
図7において同じ)
リスク対象物である乗用車PCと重畳する領域は、自車両OVが進入した場合に確実に衝突することから、リスクポテンシャルは最大となる。その結果、等高線表示においてももっとも高く表示される。
ここでのリスクポテンシャルの大きさ(等高線の高さ)は、例えば、リスク対象物の走行速度、自車両に対する相対速度、大きさ(大きいほど車重が重いと推定される)の増加に応じて増加するように設定される。
【0049】
図5に示すように、リスクポテンシャルを示す等高線Cは、乗用車PCの前方、後方、側方にそれぞれ存在する。
リスクポテンシャルの高さ(等高線Cの高さ)は、乗用車PCからの距離の増加に応じて漸減するように設定される。
【0050】
リスク対象物の前方においては、リスクポテンシャルの分布は、リスク対象物が自車両を追走する場合に自車両が追突被害を受ける可能性を考慮して設定される。
例えば、リスク対象物の走行速度、自車両に対する相対速度、大きさ(大きいほど車重が重いと推定される)の増加に応じて、リスクポテンシャルが広く分布するように設定される。
また、自車両が減速状態にある場合や、自車両前方に渋滞、停止車両などの障害物が存在する場合にも、今後自車両と追走中のリスク対象物との相対速度(速度差)が増大するものとして、リスクポテンシャルの分布範囲は広くなるように設定される。
【0051】
リスク対象物の後方においては、リスクポテンシャルの分布は、リスク対象物を自車両が追走する場合に、自車両がリスク対象物に追突する可能性を考慮して設定される。
例えば、リスク対象物の走行速度、自車両に対する相対速度、大きさ(大きいほど車重が重いと推定される)の増加に応じて、リスクポテンシャルが広く分布するように設定される。
また、先行するリスク対象物のブレーキランプ点灯が検出された場合、リスク対象物の減速が検出された場合、路車間通信などにより前方に渋滞、停止車両などの障害物が存在する場合にも、今後自車両と追走中のリスク対象物との相対速度(速度差)が増大するものとして、リスクポテンシャルの分布範囲は広くなるように設定される。
【0052】
リスク対象物の側方においては、リスクポテンシャルの分布は、自車両とリスク対象物とが併走した場合に、自車両、リスク対象物の少なくとも一方の道路内横位置の移動によって衝突する可能性を考慮して設定される。
例えば、周囲の交通量が多く、多数のリスク対象物が存在する場合には、リスク対象物となる車両が車線変更する可能性が高いものと考慮して、リスクポテンシャルの分布範囲は広くなるように設定される。
また、リスク対象物が走行中の車線の前方に渋滞、停止車両等が存在する場合や、リスク対象物となる車両のターンシグナルランプの点滅が検出された場合にも、リスクポテンシャルの分布範囲は広くなるように設定される。
【0053】
図6は、実施例1の周辺リスク表示装置におけるリスク対象物がトラックである場合のリスクポテンシャルの等高線表示の一例を示す図である。
図5に示す乗用車の場合と対比した場合、トラック等の大型車、重量車の場合には、運動エネルギが大きく衝突時の危険性がより大きいことから、リスクポテンシャルの最大値は大きく設定される。
また、制動時に発生し得る最大の減速度も乗用車より小さく制動距離が長くなると推定されることから、車速が同程度の場合には、トラックTの前方におけるリスクポテンシャルの分布範囲は、乗用車PCの場合よりも広く設定される。
さらに、リスク対象物(トラック)からの距離に応じたリスクポテンシャルの変化率は、乗用車PCの場合よりも小さく設定される。これは、リスク対象物からの距離が同等である場合に、リスクポテンシャルが乗用車PCよりも大きいことを意味する。
【0054】
一方、最大減速度が小さいということは、トラックTの後方を追走する場合の追突リスクは比較的小さいことを意味しており、トラックTの後方におけるリスクポテンシャルの分布範囲は、乗用車PCの場合よりも狭く設定される。
また、トラックT等の大型車の場合には、乗用車PCに対して急激な車線変更、進路変更を行いにくいと推定されるため、トラックTの側方におけるリスクポテンシャルの分布範囲は、乗用車PCの場合よりも狭く設定される。
さらに、リスク対象物(トラック)からの距離に応じたリスクポテンシャルの変化率は、乗用車PCの場合よりも大きく設定される。これは、リスク対象物からの距離が同等である場合に、リスクポテンシャルが乗用車PCよりも小さいことを意味する。
【0055】
図7は、実施例1の周辺リスク表示装置におけるリスク対象物が自動二輪車である場合のリスクポテンシャルの等高線表示の一例を示す図である。
図5に示す乗用車の場合と対比した場合、自動二輪車の場合には、乗用車PCに対して急激な車線変更、進路変更が行われる可能性が高く、かつ、路面の不整等の外乱によって転倒するリスクも推定されるため、自動二輪車MCの側方におけるリスクポテンシャルの分布範囲は、乗用車PCの場合よりも広く設定される。
また、リスク対象物からの横方向距離に応じたリスクポテンシャルの変化率は、乗用車PCの場合よりも小さく設定されている。
【0056】
図8は、実施例1の周辺リスク表示装置におけるリスク対象物が歩行者である場合のリスクポテンシャルの等高線表示の一例を示す図である。
図8(a)は、自車両の接近方向に対して直交する水平方向(側方)から見た状態を示し、
図8(b)は自車両側から見た図を示す。
歩行者PEの場合には、それ自体の移動速度は車両等に対して小さいため、リスクポテンシャルの推定においては、歩行者PE自体の移動によるものよりは、自車両が歩行者の位置に向かって進行する場合の衝突リスクが支配的となる。
このため、
図8に示すように、リスクポテンシャルの分布範囲は、歩行者PEから見て自車両が接近する側の方位において集中的に広くなり、その他の方位においては狭くなる。
また、例えば建造物や、駐車車両、地形等の静止しているリスク対象物に起因するリスクポテンシャルの分布範囲も、これと同様の傾向を示す。
【0057】
また、周辺リスク認識ユニット200は、同一方向に併走する複数の車線が存在する場合に、対向車線との境界である中央分離帯に近い側の車線(センターレーン)を走行する車両がリスク対象物である場合のリスクポテンシャルを、他の車線の車両に対して相対的に高く表示する。
これは、センターレーン側の車両は、例えば対向車線から逸脱した対向車両に対する回避動作をとったり、対向車両と衝突事故を起こすリスクが比較的高いと考えられるからである。
【0058】
自動運転制御ユニット50は、自車両前方の車線形状、他車両等のリスク対象物の分布、リスク対象物の周囲のリスクポテンシャル分布等に基づいて、リスク対象物及びリスクポテンシャルが高い領域を回避するように理想的な自車両の目標軌跡である想定走行軌跡を設定するとともに、自車両の実際の軌跡が想定走行軌跡に近づくよう車両1を走行させる。
想定走行軌跡は、極力リスクポテンシャルが低い領域を選択して設定され、例えばリスクポテンシャルの分布範囲が重畳する程度に近接する複数のリスク対象物の間を走行しなければならない場合には、等高線表示の谷間に沿って設定される。
【0059】
図9は、実施例1の周辺リスク表示装置における想定走行軌跡の一例を示す図である。
なお、実際の表示画像は
図4と同様の俯瞰画像であるが、理解を容易とするため、
図9においては平面視で図示している。(
図10において同じ)
図9に示す例においては、自車両OVは3車線のうち中央に配置された右側通行車線LRを走行している。
右側通行車線LRにおける自車両OVの前方には、乗用車PCaが走行している。
左側通行車線LLにおける乗用車PCaの斜め前方には、トラックTが走行している。
追越車線LPにおける乗用車PCa及びトラックTよりも前方には、他の乗用車PCbが走行している。
各車両の周囲には、リスクポテンシャルが等高線Cによって表示される。
【0060】
自動運転制御ユニット50は、自車両前方の道路上においてリスクポテンシャルが低く安全に走行可能な箇所を選択し、通過点P1〜P5を設定するとともに、これらを順次結んで想定走行軌跡APを設定する。
ここで、通過点P1〜P5を、例えばベジェ曲線等によって単純に補間した場合には、補間線IL(実際には表示されない)のように、ラインとしては滑らかであっても、車線内を蛇行する挙動を示すなど、車両の走行軌跡としては不適切な箇所がみられる。
そこで、自動運転制御ユニット50は、自車両OVの車線内横位置が極力中央に近付くよう、車線形状に適合させる補正を施して想定走行軌跡APとする。
また、想定走行軌跡APが曲線路を通過する場合には、自動運転制御ユニット50は、想定走行軌跡APの曲率が道路の曲率に近付くよう設定する。
【0061】
図9に示す例においては、想定走行軌跡APは、先ず追越車線LPに車線変更をして乗用車PCaを追越し、その後右側走行車線LRに車線変更して直進するよう設定されており、これら一連の走行において、所定以上のリスクポテンシャルが存在する領域は通過しないよう設定されている。
ユーザは、想定走行軌跡APが各車両(リスク対象物)の周囲のリスクポテンシャル分布を示す等高線C表示に対してどのような位置関係にあるのか、一目瞭然に理解することができ、
図9に示すようにリスクポテンシャルが及ぶ範囲を避けて想定走行軌跡APが設定されている場合は、この想定走行軌跡APが安全かつ妥当なものであると評価することができる。
一方、想定走行軌跡APがリスクポテンシャルの存在する箇所を通過する場合には、ユーザは、リスク対象物などの監視を行い、危険と判断した場合には直ちに手動運転に切り替えて運転操作を引き継ぎ、回避動作を行う。
この場合にも、リスク対象物及びリスクポテンシャル分布と自車両との位置関係を容易に把握できることから、ユーザ(ドライバ)は、危険回避のためにとるべき運転操作を容易に判断することができる。
【0062】
図10は、実施例1の周辺リスク表示装置における想定走行軌跡の他の例を示す図である。
図10に示す例では、
図9に対して乗用車PCaと乗用車PCbとの間隔が小さく、この間隔内は、両者のリスクポテンシャルが重畳されることによって比較的危険な領域となっている。
この場合、通過点P1〜P4までは
図9と同様にリスクポテンシャルが十分に低い(実質的に存在しない)領域のみを通過して走行できるが、通過点P4からP5に到達するには、危険な領域を通過しなければならない。
図10に示す場合においては、表示装置210は、リスクポテンシャルが所定の閾値以上となる領域を含む通過点P4以遠の領域については、想定走行軌跡APの表示を行なわないようになっている。
【0063】
以上説明したように、実施例1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)自車両OVの周辺に存在する他車両PCa、PCb、T及びその周囲のリスクポテンシャル分布と、リスクポテンシャルが高い箇所を避けるよう設定された自車両の想定走行軌跡APとを関連付けて容易に把握することができ、想定走行軌跡APとリスクポテンシャル分布との位置関係等に基づいて、想定走行軌跡APの安全性、妥当性を容易に判断することができる。
また、自動運転からドライバが運転操作を引き継ぐ場合に、どのような運転操作をするべきか容易に判断することができる。
例えば、リスクポテンシャルの高い領域に進入することなくどのような運転操作が可能か、容易に把握することができる。
(2)想定走行軌跡APを、車線形状に適合するよう補正することによって、車線形状に対して自然な想定走行軌跡APを設定することが可能となり、不自然な挙動により自車両の乗員や外部の人間に違和感を与えることを防止できる。
(3)リスクポテンシャル分布を等高線Cで表示することにより、リスクポテンシャルの分布をユーザに直感的かつ容易に理解させることができる。
(4)想定走行軌跡APが、所定の閾値以上のリスクポテンシャルを有する領域を通過する場合には、このような領域への到達箇所以遠の想定走行軌跡APを表示しないことにより、ユーザに安全に通過できるかのような誤解を与えることを防止することができる。
また、自動運転中においては、想定走行軌跡APの設定に問題が生じていることをユーザに認識させ、異なった想定走行軌跡の設定や手動運転への切替えなどの対応を促すことができる。