(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はそれに該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本発明は添付の図面に制限されない。また、本発明の実施の形態では、PERC型太陽電池セルを例に挙げて説明するが、本発明はPERC型太陽電池セルに限定されない。
本発明の太陽電池モジュール及び本発明の接続部付太陽電池セルを合わせてこれを本発明と称する場合がある。
本明細書において、インターコネクタとアルミニウム電極との接続性に優れることを単に接続性に優れるということがある。
本明細書において、接続部によるインターコネクタとアルミニウム電極との接着性(密着性を含む)を「広義の接着性」と称することがある。また、粘着層による裏面アルミニウム電極と銅箔との接着性(密着性を含む)を「狭義の接着性」と称することがある。
【0013】
[接続部付太陽電池セル]
本発明の接続部付太陽電池セル(本発明の太陽電池セル)は、
太陽電池セルと接続部とを有し、
上記太陽電池セルが、表面電極と光電変換部と裏面アルミニウム電極とを有し、
上記接続部が、粘着層と銅箔とを有し、
上記裏面アルミニウム電極の上に上記粘着層があり、上記粘着層の上に上記銅箔があり、
上記接続部でインターコネクタと接続する、接続部付太陽電池セルである。
【0014】
本発明の太陽電池セルはこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
従来、太陽電池セルの銀電極とインターコネクタとは、銀と半田との融着により接合するか、バインダ樹脂として例えばエポキシ樹脂を含有する導電フィルムで接着されていた。
上記のような導電フィルムを、太陽電池セルのアルミニウム電極とインターコネクタとの接着に適用しようとした場合、上記導電フィルムがこれらを接着できず、接続性が低いことが明らかとなった。
エポキシ樹脂を含有する導電性組成物が有する上記の問題は、上記導電性組成物を硬化させてアルミニウム電極とインターコネクタとを接着させる際、上記導電性組成物の硬化収縮で生じる応力によって、アルミニウム電極が太陽電池セルから剥がれやすくなることが原因ではないかと推察された。
これに対して、本発明は、接続部が銅箔を有することによって銅箔とインターコネクタとが、例えば加熱等により融着し、接合することができる。また、接続部が粘着層を有し、粘着層は粘着性を有することによって、粘着層は裏面アルミニウム電極と銅箔とを接着させること(狭義の接着)ができる。そして、接続部は、上記銅箔の接合及び上記粘着層の接着によって、裏面アルミニウム電極を有する太陽電池セルとインターコネクタとを接着(広義の接着)させることができる。
このように本発明は裏面アルミニウム電極とインターコネクタとを効果的に接着(密着を含む)させることができ、これによって、裏面アルミニウム電極とインターコネクタとの間を通電させることができる。上記事項から、本発明は上記効果を得ることができると本発明者らは推察する。
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳述する。
【0015】
図4は、本発明の接続部付太陽電池セルの一態様を模式的に表す断面図である。
図4において、本発明の接続部付太陽電池セル70は、太陽電池セル50と接続部80とを有する。
太陽電池セル50は、表面電極15、光電変換部10及び裏面アルミニウム電極60を有する。
表面電極15は、複数のバスバー電極20及びフィンガー電極30を有する。
光電変換部10は、p型シリコン半導体基板36と、p型シリコン半導体基板36の上に、n型不純物層34と、反射防止膜又は表面パッシベーション層32(以下これを単に反射防止膜32と称することがある。)を有する。光電変換部10は、p型シリコン半導体基板36の下に、開口部37と裏面パッシベーション層38とを有する。
バスバー電極20は反射防止膜32を貫通して、n型不純物層34と導通する。
光電変換部10と裏面アルミニウム電極60とは開口部37を介して電気的に接続される。
【0016】
接続部80は、粘着層82と銅箔84とを有する。
図4において、裏面アルミニウム電極60の上に粘着層82があり、粘着層82の上に銅箔84がある。接続部80において、粘着層82は櫛形であり、銅箔84は粘着層82の間を充填する。
本発明において、粘着層は層状であってもよい。
なお、本発明において、裏面アルミニウム電極の上に粘着層があるとは、粘着層が、裏面アルミニウム電極を挟んで表面電極及び光電変換部の反対側にあることを意味する。
【0017】
<<太陽電池セル>>
本発明の接続部付太陽電池セルに使用される材料としての太陽電池セルは、表面電極と光電変換部と裏面アルミニウム電極とを有する。光電変換部は、光入射により光生成キャリアを発生する。表面電極及び裏面アルミニウム電極は、光電変換部で発生した光生成キャリアを取り出すための正負1対の電極である。
【0018】
裏面にアルミニウム電極を有する太陽電池セルとしては、例えば、PERC型太陽電池セル、BSF型太陽電池セル、n型Alエミッタ太陽電池、TOPCon太陽電池、IBC太陽電池が挙げられる。
【0019】
本発明の接続部付太陽電池セルに使用される材料としての太陽電池セルはその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0020】
<表面電極>
本発明において、太陽電池セルの光電変換部の表面上にある電極を表面電極という。表面電極としては、例えば、フィンガー電極、バスバー電極が挙げられる。
【0021】
図2は、本発明の太陽電池モジュール又は接続部付太陽電池セルを構成する太陽電池セルの受光面の一態様を模式的に表す拡大平面図である。
図2において、太陽電池セル50の光電変換部10の表面上には、光電変換部10が生成する電気を集電するフィンガー電極30と、複数のフィンガー電極30に接続されたバスバー電極20とが形成されている。
複数の直線状のフィンガー電極30は、互いに平行に、光電変換部10の表面に均一な間隔で配置される。
バスバー電極20は、フィンガー電極30に対して垂直な方向に配置され、複数のフィンガー電極30が収集した電流を更に集電する。
【0022】
表面電極は、入射光を遮る面積をできるだけ小さくするために、複数の幅狭のフィンガー電極と幅広のバスバー電極とを組み合わせて形成することができる。表面電極は例えば櫛型状の形状に形成することができる。
フィンガー電極は光電変換部の光入射面のほぼ全域にわたって配置することができる。フィンガー電極は、例えば100μm以下の幅、好ましくは40〜80μmの幅を有するライン状の電極を2mm前後おきに配置することができる。
【0023】
バスバー電極は、例えば、0.2〜2.0mmの幅で総てのフィンガー電極と交差するように、ライン状に配置することができる。バスバー電極の数は、太陽電池セルの大きさや抵抗を考慮して適宜適当な数に設定できる。
【0024】
表面電極は、例えば、銀で構成することができる。
表面電極は、例えば、セルロース系の樹脂およびガラスフリット(粉末状のガラス)を含む銀ペーストを光電変換部の表面に塗布し、700〜900℃の条件下で焼結させることにより形成することができる。
【0025】
<光電変換部>
本発明において、光電変換部は特に制限されない。例えば、上記太陽電池セルが有する光電変換部と同様のものが挙げられる。
光電変換部としては具体的には例えば、厚みが180〜250μmのp型シリコン半導体基板(p型を与える不純物がドープされたシリコン層)と、上記p型シリコン半導体基板の受光面側(p型シリコン半導体基板の上)に、厚みが0.3〜0.6μmのn型不純物層(n型を与える不純物がドープされたシリコン層)と、上記n型不純物層の上に、反射防止膜(又は表面パッシベーション層)とを有する光電変換部が挙げられる。
反射防止膜としては、例えば、窒化シリコン膜が挙げられる。
【0026】
図3は、本発明の太陽電池モジュール又は接続部付太陽電池セルを構成する太陽電池セルの一態様を模式的に表す断面図である。なお、
図3は、
図2に示すI−I線で切断した断面図である。
図3において、太陽電池セル50は、表面電極15、光電変換部10及び裏面アルミニウム電極60を有する。
表面電極15は、複数のバスバー電極20及びフィンガー電極30を有する。
光電変換部10は、p型シリコン半導体基板36と、p型シリコン半導体基板36の上に、n型不純物層34と、反射防止膜(表面パッシベーション層)32とを有する。光電変換部10は、p型シリコン半導体基板36の下に、開口部37と裏面パッシベーション層38とを有する。
バスバー電極20は反射防止膜32を貫通してn型不純物層34と導通する。
光電変換部10と裏面アルミニウム電極60とは開口部37を介して電気的に接続される。
【0027】
本発明の接続部付太陽電池セルを構成する太陽電池セルがPERC型太陽電池セルである場合、受光面と反対側の裏面に、裏面パッシベーション層と、裏面アルミニウム電極が光電変換部(シリコン半導体)とコンタクトを取るための開口部とを有する。
裏面パッシベーション層としては、例えば、酸化アルミニウム膜及び窒化シリコン膜の積層膜が挙げられる。
開口部との形成方法としては、例えば、光電変換部(シリコン半導体)の上の裏面パッシベーション層にレーザー照射又はエッチングを施し、裏面パッシベーション層の一部を除去することによって開口部を形成する方法が挙げられる。
開口部の形態としては、例えば、直線状、曲線状、破線状、点状等が挙げられる。上記形態は特に制限されない。
【0028】
<裏面アルミニウム電極>
本発明において、太陽電池セルは、裏面にアルミニウム電極を有する。
【0029】
太陽電池セルが裏面に銀電極を有しないことが発電効率および経済性に優れるという観点から好ましい。
【0030】
太陽電池セルの裏面の全面が、アルミニウム電極であることが発電効率および経済性に優れるという観点から好ましい。
【0031】
裏面のアルミニウム電極の形成方法としては、材料としての太陽電池セルの裏面(例えば、裏面シリコン、裏面パッシベーション層)に、例えば、アルミニウムペーストを塗布し焼成することによる形成方法、アルミニウム箔を貼り付けることによる形成方法、アルミニウムの蒸着による形成方法が挙げられる。
【0032】
なかでも、アルミニウムペーストを使用して裏面アルミニウム電極を形成する方法が好ましい態様の1つとして挙げられる。アルミニウムペーストは特に制限されない。例えば、アルミニウム粉末、ガラス粉末及び有機ビヒクルを含有するアルミニウムペーストが挙げられる。
【0033】
(アルミニウム粉末)
アルミニウム粉末は、平均粒径1〜10μmであることが好ましい。アルミニウム粉末の平均粒径はレーザー回折式粒度分布計を用いて測定することができる。
アルミニウム粉末は、球状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0034】
(ガラス粉末)
ガラス粉末は、アルミニウム粉末とシリコンとの反応やアルミニウム粉末自身の焼結を助ける作用があるとされている。ガラス粉末としては、Pb、Bi、V、B、Si、Sn、P及びZnからなる群から選択される1種、または2種以上を含有してもよい。また、鉛を含むガラス粉末、もしくは、ビスマス系、バナジウム系、錫−燐系、ホウ珪酸亜鉛系、アルカリホウ珪酸系、などの無鉛のガラス粉末を用いることができる。特に人体への影響を鑑みると、無鉛のガラス粉末の利用が望ましい。また、ガラス粉末は、軟化点が750℃以下のものであることが好ましい。軟化点が750℃を超えるガラス粉末では、特定のパッシベーション膜を用いた際にパッシベーション膜の性能を著しく損なわせてしまうおそれがある。また、ガラス粉末の平均粒子径としては、1μm以上3μm以下が好ましい。アルミニウムペースト中に含まれるガラス粉末の含有量は特に限定されないが、アルミニウム粉末100質量部に対して、0.5質量部以上40質量部以下であることが好ましい。導電性アルミニウムペースト中のガラス粉末の含有量が0.5質量部未満ではウェハおよびパッシベーション膜との密着性が低下し、40質量部を越えると電極としての電気抵抗が増加してしまうおそれがあるためである。
【0035】
(有機ビヒクル)
有機ビヒクルとしては、溶剤に、必要に応じて各種添加剤および樹脂を溶解したものが使用される。溶剤としては公知のものが使用可能であり、具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。各種添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、腐食抑制剤、消泡剤、増粘剤、タックファイヤー、カップリング剤、静電付与剤、重合禁止剤、チキソトロピー剤、沈降防止剤等を使用することができる。具体的には、たとえば、ポリエチレングリコールエステル化合物、ポリエチレングリコールエーテル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンエステル化合物、ソルビタンアルキルエステル化合物、脂肪族多価カルボン酸化合物、燐酸エステル化合物、ポリエステル酸のアマイドアミン塩、酸化ポリエチレン系化合物、脂肪酸アマイドワックス等を使用することができる。樹脂としては公知のものが使用可能であり、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニールブチラール、フェノール樹脂、メラニン樹脂、ユリア樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート化合物、シアネート化合物などの熱硬化樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ4フッ化エチレン、シリコン樹脂等の二種以上を組み合わせて用いることができる。アルミニウムペースト中に含まれる有機ビヒクルの含有量は特に限定されないが、アルミニウム粉末100質量部に対して70質量部以上200質量部以下であることが好ましい。有機ビヒクルの含有量が70質量部未満、または200質量部を越えると、ペーストの印刷性が低下するおそれがあるためである。
【0036】
アルミニウムペーストの製造方法としては、例えば、アルミニウム粉末、ガラス粉末及び有機ビヒクルを周知の混合機にて混合することによって、アルミニウムペーストを製造する方法が挙げられる。
【0037】
裏面アルミニウム電極の形成方法としては、具体的には例えば、開口部の形成されたPERC型太陽電池セルの裏面全面にアルミニウムペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、乾燥させた後、660℃を越える温度にて短時間焼成することによって、裏面アルミニウム電極を形成することができる。また、上記焼成の際、開口部の内部のアルミニウムペーストと光電変換部(シリコン)が接している部分において、アルミニウムとシリコンが反応して、p+層(アクセプタ不純物を高濃度にドープしたp型層:BSF層)及びアルミニウムシリコン合金層を形成することができる。このp+層の存在により、電子の再結合を防止し、生成キャリアの収集効率を向上させるBSF効果を得ることができる。
【0038】
<<接続部>>
本発明において、接続部は、粘着層と銅箔とを有する。銅箔は、本発明の接続部付太陽電池セルを適用することができるインターコネクタと例えば加熱等によって融着し接合することができる。粘着層は、太陽電池セルの裏面アルミニウム電極と銅箔とを接着させることができる(狭義の接着)。粘着層及び銅箔の上記の機能によって、接続部は太陽電池セルの裏面アルミニウム電極とインターコネクタとを接着させ(広義の接着)、接続(接着及び/又は電気的な接続)させることができる。
【0039】
<銅箔>
銅箔は、銅の膜又は層である。
銅箔は、インターコネクタと融着し接合することができる。
銅箔は両面又は片面が平坦であるものを使用することができる。また、銅箔として、例えば、粘着剤が塗布される面が凹凸加工したものを使用しても良い。
【0040】
銅箔の厚さは、50μm以下であることが好ましく、8〜30μmがより好ましい。
【0041】
銅箔の幅は、接続性により優れるという観点から、インターコネクタの幅の0.5倍以上とすることができ、インターコネクタの幅の0.8〜4.0倍の大きさであることが好ましく、0.9〜2.0倍がより好ましい。
銅箔の幅は、1〜8mmとすることができる。
【0042】
また、本発明において、銅箔として例えば、細い導線で織ったテープ状(リボン状)のものを使用してもよい。
銅箔はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0043】
<粘着層>
粘着層は粘着性を有する層である。
粘着層は、太陽電池セルの裏面アルミニウム電極の上(太陽電池セルにおいて、裏面アルミニウム電極を挟んで表面電極及び光電変換部の反対側)にある。
粘着層は裏面アルミニウム電極と銅箔とを接着させることができる(狭義の接着)。
【0044】
(粘着層を構成するポリマー)
粘着層を構成するポリマー(粘着層に含有されるポリマー)としては、例えば、シリコーン系、(メタ)アクリル系、ウレタン系、天然ゴム系、ブチルゴム系などのポリマーが挙げられる。上記ポリマーは、ゴム又は樹脂(レジン)の何れであってもよく、単独重合体又は共重合体の何れであってもよい。
粘着層を構成するポリマーは、シリコーン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。
【0045】
・シリコーン系ポリマー
粘着層を構成するシリコーン系ポリマーは主鎖骨格としてポリシロキサンを有するポリマーである。
上記シリコーン系ポリマーの主鎖はオルガノポリシロキサンが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記主鎖に結合得る有機基としては、例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状及び環状のうちの何れであってもよい)、フェニル基のような芳香族炭化水素基又はこれらの組合せが挙げられる。
ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲンが挙げられる。ヘテロ原子は別のヘテロ原子、水素原子又は炭素原子と結合して置換基を形成してもよい。置換基は特に制限されない。
【0046】
・(メタ)アクリル系ポリマー
粘着層を構成する(メタ)アクリル系ポリマーは(メタ)アクリロイル基を有する単量体で構成される繰り返し単位を有する重合体であれば特に制限されない。(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリル系ポリマーは上記単量体で構成される繰り返し単位以外に更にエチレン性不飽和結合を有する単量体で構成される繰り返し単位を有することができる。エチレン性不飽和結合を有する単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンのようなオレフィン;スチレンのようなビニル基を有する芳香族炭化水素化合物が挙げられる。
(メタ)アクリル系ポリマーは、部分架橋したアクリル酸エステルゴムであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0048】
・ウレタン系ポリマー
粘着層を構成するウレタン系ポリマーは、ウレタン結合を有するポリマーであれば特に制限されない。
【0049】
(粘着剤)
粘着層は、粘着剤を用いて形成することができる。粘着剤としては、例えば、シリコーン系、(メタ)アクリル系、ウレタン系、天然ゴム系、ブチルゴム系などの粘着剤が例示される。
粘着剤は、シリコーン系、(メタ)アクリル系の粘着剤が好ましい。
【0050】
粘着剤には、例えば、溶液に溶かされたものを乾燥させることにより粘着性を発現するタイプ、過酸化物架橋又はハイドロシリレーションなどの反応を伴って粘着性を発現するタイプがあるが、本発明ではいずれも使用可能である。
粘着剤は、例えば加熱等により太陽電池セルとインターコネクタとを接着(接合)する際、硬化収縮による応力をエポキシ樹脂を含有する導電性組成物に比べて極めて小さくすることができ狭義の接着性に優れ、接続性により優れるという観点から、化学反応を殆んど伴わないものが好ましい態様の1つとして挙げられる。また、粘着剤は例えば、原料として原料ポリマーを含むものが好ましい態様の1つとして挙げられる。粘着剤は、原料ポリマー以外に更に溶剤、後述する添加剤を含有してもよい。
【0051】
・原料ポリマー
粘着剤としては、例えば、シリコーン系、(メタ)アクリル系、ウレタン系、天然ゴム系、ブチルゴム系などの原料ポリマーを含有するものが挙げられる。
【0052】
粘着剤に含有されるシリコーン系原料ポリマーは、官能基として、例えば、加水分解性シリル基、シラノール基、ビニル基のようなアルケニル基、Si−H基;メチル基のようなアルキル基を有することができる。加水分解性シリル基は特に制限されない。例えば、アルコキシシリル基が挙げられる。
シリコーン系粘着剤が例えばメチル基などの官能基を有するシリコーン原料ポリマーを含有する場合、過酸化物を使用して、メチル基などの官能基を過酸化物によって架橋させ、粘着層(シリコーン系ポリマー)を形成することができる。
官能基は原料ポリマーの末端に結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。ポリマー1分子は官能基を1個又は2個以上有することができる。
【0053】
原料ポリマー又は粘着層を構成する上記ポリマーの重量平均分子量は、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜500,000がより好ましい。上記重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0054】
粘着層は、接続性により優れ、耐熱性に優れるという観点から、シリコーン系ポリマーおよび(メタ)アクリル系ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0055】
・シリコーン系粘着剤
シリコーン系粘着剤は原料ポリマーとしてシリコーン系原料ポリマーを含有する粘着剤であれば特に制限されない。
原料ポリマーとしてのシリコーン系原料ポリマーは、例えば、加水分解性シリル基又はシラノール基を有するシリコーンポリマー;アルケニル基を有するシリコーンポリマー及びSi−H基を有するシリコーンポリマーとの組合せ(付加硬化型粘着剤に含有される。);メチル基などの官能基を有するシリコーンポリマー(この場合過酸化物によって上記官能基を架橋させることができる)が挙げられる。
【0056】
・(メタ)アクリル系粘着剤
(メタ)アクリル系粘着剤は原料ポリマーとして(メタ)アクリル系原料ポリマーを含有する粘着剤であれば特に制限されない。例えば、粘着層を構成する上記(メタ)アクリル系ポリマーと同様のものが挙げられる。
【0057】
・ウレタン系粘着剤
ウレタン系粘着剤は原料ポリマーとしてウレタン系原料ポリマー(例えばウレタンプレポリマー)を含有する粘着剤であれば特に制限されない。ウレタンプレポリマーは特に制限されない。
ウレタンプレポリマーを形成するポリイソシアネート及びポリオールは特に制限されない。ウレタンプレポリマーを形成するポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。ウレタンプレポリマーを形成するポリオールとしては例えば、ポリオキシプロピレングリコールのようなポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
【0058】
(導電粒子)
粘着層が導電粒子を含まない場合であっても、本発明の接続部付太陽電池セルとインターコネクタとを接続することにより、裏面アルミニウム電極はインターコネクタと通電することができるが、粘着層は、接続性により優れ、太陽電池モジュールの高効率化に優れるという観点から、更に、導電粒子を含むことが好ましい。
導電粒子としては、例えば、銀、銅、ニッケル、半田粉(錫−鉛、錫−銀−銅、錫−ビスマスなどの合金)のような金属;グラファイトなどが挙げられる。
【0059】
また、導電粒子として、例えば、コアシェル構造を有するフィラーを使用することができる。コア部分としては例えばポリマー又はグラファイトを使用することができる。シェル部分としては例えば上記金属が挙げられる。上記フィラーとしては例えば、ニッケルでコートしたスチレンビーズ、ニッケルでコートしたグラファイトなどが挙げられる。
【0060】
導電粒子は、最表面にニッケルを有することが好ましく、ニッケルでコートされたグラファイトがより好ましい。
【0061】
導電粒子の平均粒径(導電粒子がコアシェル構造を有するフィラーである場合、コア部分又は上記フィラーの平均粒径。)は5〜50μmが好ましい。本発明において、導電粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて体積基準の粒度分布を測定して求められる、累積50%における粒子径(50%体積累積径)をいう。このようなレーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、堀場製作所製のLA−500(商品名)に準ずる装置が挙げられる。
【0062】
導電粒子の含有量は、通電性とその安定性に優れるという観点から、粘着剤の0〜50体積%であることが好ましく、1〜30体積%がより好ましい。
導電粒子の含有量は、通電性とその安定性に優れるという観点から、粘着剤100質量部に対して、0〜70質量部であることが好ましく、5〜50質量部がより好ましい。
【0063】
粘着層は、更に、添加剤を含有してもよい。添加剤としては例えば、導電粒子以外の粒子;白金触媒、加水分解縮合触媒のような触媒;タッキファイヤー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、充填剤が挙げられる。
【0064】
粘着層を形成するために使用される材料が粘着剤以外に上記導電粒子又は添加剤を更に含有する場合、上記材料(粘着剤組成物)の製造方法としては、例えば、ロール、プラレタリーミキサー、自転公転ミキサーを使用してこれらを混合し、粘着剤組成物とすることができる。
【0065】
(本発明の太陽電池セルの製造方法)
本発明の太陽電池セルの製造方法としては、例えば、銅箔に上記粘着剤又は粘着剤組成物を塗布して積層体を得る塗布工程と、上記積層体を乾燥または硬化させて接続部用積層体を得る乾燥硬化工程と、接続部用積層体を太陽電池セルの裏面アルミニウム電極に貼り合せる貼り合せ工程とを有する方法1が挙げられる。
【0066】
・塗布工程
塗布工程において、銅箔に上記粘着剤又は粘着剤組成物を塗布して積層体を得る。
塗布工程において使用される銅箔は、上記と同様である。
銅箔に上記粘着剤等を塗布する方法は特に制限されない。
【0067】
・乾燥硬化工程
乾燥硬化工程において、塗布工程で得られた積層体を乾燥または硬化させて接続部用積層体を得る。
乾燥または硬化の温度は、60〜200℃が好ましい。
【0068】
・貼り合せ工程
貼り合せ工程において、乾燥硬化工程で得られた接続部用積層体を、太陽電池セルの裏面アルミニウム電極に貼り合せる。
貼り合せ工程では、接続部用積層体を、接続部用積層体の粘着層が裏面アルミニウム電極に接するように、裏面アルミニウム電極に貼り合せ、裏面アルミニウム電極と接続部用積層体の粘着層とを接着させ、接続部付太陽電池セルを製造する。
貼り合せ工程において加熱をする場合、加熱温度は30〜80℃が好ましい。
貼り合せ工程において加圧をする場合、圧力は0.01〜0.1MPaが好ましい。
【0069】
また、貼り合せ工程において使用される接続部用積層体として市販品を使用することができる。接続部用積層体の市販品としては、例えば、竹内工業株式会社製銅箔テープCUシリーズ(CU−8T,CU−8STなど)、3M社製金属箔テープ CU−18C、CU−9C、1245、2245が挙げられる。
【0070】
本発明の太陽電池セルの別の製造方法としては、例えば、太陽電池セルの裏面アルミニウム電極に上記粘着剤又は粘着剤組成物を塗布する塗布工程と、次いで、塗布工程後の太陽電池セルを乾燥または硬化させる乾燥硬化工程と、乾燥硬化工程の太陽電池セルの裏面アルミニウム電極に銅箔を配置してこれらを貼り合せる貼り合せ工程とを有する方法2が挙げられる。方法2における塗布工程、乾燥硬化工程及び貼り合せ工程の条件は、上記方法1の塗布工程、乾燥硬化工程及び貼り合せ工程の条件と同様とすることができる。
【0071】
本発明の太陽電池セルが有する粘着層の厚さは、接続性により優れ、粘着力が大きく、太陽電池モジュールを作製する上で好ましいという観点から、5〜80μmが好ましく、特に、10〜50μmがより好ましい。
本発明の太陽電池セルが有する粘着層の幅は、1〜8mmとすることができる。粘着層の幅は銅箔の幅と同じであってもよい。
【0072】
本発明の太陽電池セルが有する粘着層は、使用される環境下(例えば−40〜+80℃の温度環境下)において高い粘着力を有することが好ましい。このため、粘着層を構成するポリマー(樹脂)又は粘着剤に含有される原料ポリマーのガラス転移温度は−40℃以下であることが好ましい。
本発明において、ガラス転移温度は、JIS K7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示差熱分析機器を用いて5℃/分の昇温温度で熱流速の変化を測定した時に得られる曲線において、変曲点を読み取った値である。
【0073】
(インターコネクタ)
本発明の太陽電池セルは接続部においてインターコネクタと接続して太陽電池モジュールを形成することができる。
【0074】
本発明の太陽電池セルに適用することができるインターコネクタは特に制限されない。インターコネクタとしては、例えば、心材を有し、心材がコートされるものが好ましい態様の1つとして挙げられる。
心材としては、例えば、銅が挙げられる。
心材をコートする材料としては例えば、半田が挙げられる。半田は特に制限されない。
例えば、錫鉛半田、鉛フリー半田が挙げられる。
心材をコートするコート層の厚さは、15〜45μmが好ましい。
インターコネクタの幅は0.8〜2.0mmが好ましい。
インターコネクタはその製造方法について特に制限されない。
【0075】
インターコネクタは、第1の太陽電池セルの表面電極と第2の太陽電池セルの裏面アルミニウム電極とを接続することができる。
インターコネクタと接続する表面電極はバスバー電極が好ましい。
表面電極は、インターコネクタの一端と接続することができる。
表面電極とインターコネクタとは、直接又は接着層を介して接続することができる。接着層は特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂及び導電性フィラーを含有する組成物を用いて接着層を形成することができる。
裏面アルミニウム電極は、接続部を介してインターコネクタの他端と接続する。
【0076】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、
複数の太陽電池セルとインターコネクタとを有し、
上記太陽電池セルが、表面電極と光電変換部と裏面アルミニウム電極とを有し、
上記インターコネクタが、第1の太陽電池セルの表面電極と第2の太陽電池セルの裏面アルミニウム電極とを接続し、
上記裏面アルミニウム電極は、接続部を介して上記インターコネクタと接続し、
上記接続部は、粘着層と銅箔とを有し、
上記裏面アルミニウム電極の上に上記粘着層があり、上記粘着層の上に上記銅箔がある、太陽電池モジュールである。
【0077】
本発明の太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルは複数であり、2個又は3個以上とすることができる。
太陽電池セルのそれぞれは、隣接する他の太陽電池セルとインターコネクタを介して直列に接続することができる。
隣接する太陽電池セルを接続するインターコネクタの数は特に制限されない。上記数は1本〜4本とすることができる。
【0078】
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一態様を模式的に表す断面図である。
図1において、本発明の太陽電池モジュール90は複数の太陽電池セル50とインターコネクタ40とを有する。
太陽電池セル50は、表面電極15と光電変換部10と裏面アルミニウム電極60とを有する。表面電極15は複数のフィンガー電極30とバスバー電極20とを有する。
インターコネクタ41は、第1の太陽電池セル51のバスバー電極21と第2の太陽電池セル52の裏面アルミニウム電極62とを接続する。
裏面アルミニウム電極62は、第2の接続部付太陽電池セル72が有する接続部80を介してインターコネクタ41の端部44と接続する。裏面アルミニウム電極62はインターコネクタ41と導通する。
接続部80は、粘着層と銅箔とを有する。
裏面アルミニウム電極60の上に粘着層があり、粘着層の上に銅箔がある。
バスバー電極21はインターコネクタ41の端部43と接続する。バスバー電極21はインターコネクタ41と導通する。なお、表面電極(バスバー電極)は接着層を介してインターコネクタと接続してもよい。
第2の接続部付太陽電池セル72と第3の接続部付太陽電池セル73とは、第1の接続部付太陽電池セル71と第2の接続部付太陽電池セル72とがインターコネクタ41を介して接続することと同様に、インターコネクタ42を介して接続することができる。
なお、インターコネクタ40において心材を省略する。
【0079】
本発明の太陽電池モジュールが有する太陽電池セル及び接続部は、それぞれ、本発明の接続部付太陽電池セルが有する太陽電池セル及び接続部と同様である。本発明の太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セル及び接続部として、本発明の接続部付太陽電池セル(
図1における接続部付太陽電池セル70)を使用することができる。
本発明の太陽電池モジュールに使用されるインターコネクタは、本発明の接続部付太陽電池セルに適用することができるインターコネクタと同様である。
【0080】
本発明の太陽電池モジュールおいて、インターコネクタで連結された複数の太陽電池セルのうち、端部の太陽電池セルはインターコネクタを介して外部出力用コネクタと接続することができる。
【0081】
本発明の太陽電池モジュールは、例えば封止材により封止されてもよい。封止材としては例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の透光性を有する封止材;ガラス、透光性プラスチックのなどの透光性を有する表面保護材とポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム或いはアルミニウム箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造の積層フィルム等からなる背面保護材との組合せが挙げられる。
【0082】
(本発明の太陽電池モジュールの製造方法)
本発明の太陽電池モジュールの製造方法としては、例えば、複数の本発明の接続部付太陽電池セルとインターコネクタとを用いて製造することができる。具体的には例えば、インターコネクタの一端を第1の接続部付太陽電池セルのバスバー電極に合わせ、上記インターコネクタの他端を第2の接続部付太陽電池セルの接続部に合わせて、複数の接続部付太陽電池セルとインターコネクタとを連結する。上記のとおりインターコネクタで連結させた接続部付太陽電池セルを加圧しながら加熱して、インターコネクタが接続部付太陽電池セルと接した部分を融着し、複数の接続部付太陽電池セルとインターコネクタとを接合する接合工程を有する方法が挙げられる。
【0083】
・接合工程
接合工程における温度は180〜350℃が好ましい。
接合工程における圧力は0.05〜1.0MPaが好ましい。
【0084】
本発明の太陽電池モジュールが有する粘着層は、使用される環境下(例えば−40〜+80℃の温度環境下)において高い粘着力を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。このため、粘着層を構成するポリマー(樹脂)又は粘着剤に含有される原料ポリマーのガラス転移温度は−40℃以下であることが好ましい。
【0085】
・封止工程
本発明の太陽電池モジュールが封止材によって封止される場合、上記接合工程の後に、更に封止工程を設けることができる。
封止工程は、接合工程で得られた太陽電池モジュールを封止材で封止する工程である。
封止工程で使用される封止材は特に制限されない。例えば、上記と同様の物が挙げられる。
封止工程において、接合工程で得られた太陽電池モジュールを封止材で封止する方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0086】
本発明によれば、裏面に銀電極を有さずアルミニウム電極を有する太陽電池セルとインターコネクタとの接続性に優れる。しかもその優れた接続性は、高温から低温までの環境下でも長期にわたり変化が少ない。このことから、本発明の太陽電池モジュールは、いかなる温度環境下で使用されても、長期間にわたり優れた通電性を維持することができると考えられる。このように通電性に優れることは太陽電池モジュールの高効率化にとって極めて重要である。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<粘着剤組成物の調製>
下記第1表の粘着剤組成物の調製欄に示す各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、粘着剤組成物を製造した。
【0088】
<粘着層を有する積層体の調製>
銅箔(厚さ18μm、電解銅箔CF−T9FZ−STD、福田金属箔粉工業株式会社製)を第1表の銅箔の幅欄に示す値でスリットした。
上記のとおり調製された各粘着剤組成物を、上記のとおり所定の幅でスリットした銅箔の片面全体に層状に塗布し(塗布工程)、80℃の条件下で乾燥又は硬化させ、粘着層を有する積層体を調製した(乾燥硬化工程)。上記粘着層の厚さは35μmであった。
【0089】
<アルミニウムペーストの調製>
平均粒径5μm、純度99%以上の球状のアルミニウム粉末100質量部に対して、ガラス粉末7質量部、有機ビヒクル140質量部を加えて、これらを混合機にて混合し、アルミニウムペーストを調製した。
【0090】
<裏面アルミニウム電極を有する太陽電池セルの製造>
(太陽電池セル)
裏面アルミニウム電極を有する太陽電池セルの製造において、材料として以下のPERC型太陽電池セルを用いた。
材料としてのPERC型太陽電池セルは、光電変換部として、平面寸法が156mm×156mmであり厚みが180μmであるp型シリコン半導体基板の受光面側に、厚みが0.3μmのn型不純物層を有し、n型不純物層の上に、窒化シリコン膜からなる反射防止膜(パッシベーション膜)を有し、上記p型シリコン半導体基板の受光面と反対側に、酸化アルミニウム膜及び窒化シリコン膜の積層膜(裏面パッシベーション層)と、p型シリコン半導体基板とコンタクトを取るための開口部とを有する。開口部の形態は、直線状であり、開口部の大きさは、縦154mm、幅50μm、深さ0.1μmであり、開口部の数は150本である。
また、上記PERC型太陽電池セルは、表面電極として複数の銀のフィンガー電極(銀ペーストによって形成される)とバスバー電極(銀ペーストによって形成される)3本とを有する。
【0091】
(裏面アルミニウム電極の形成)
上記PERC型太陽電池セルの裏面全面に、上記のとおり調製したアルミニウムペーストをスクリーン印刷機によって厚さ15μmで塗布し、乾燥させた。スクリーンメッシュには400Meshを使用した。
乾燥後、700℃以上の温度条件下で3秒間焼成することによって、表面銀電極、光電変換部及び裏面全面にアルミニウム電極を有するPERC型太陽電池セルを製造した。開口部のアルミニウムペーストとシリコンが接している部分にて、アルミニウムとシリコンが反応して、p+層、アルミニウムシリコン合金層及びアルミニウム電極層が形成された。
【0092】
<接続部付太陽電池セルの製造>
上述のとおり製造した太陽電池セルの裏面アルミニウム電極の上の表面のバスバー電極に対向する位置に、上記のとおり調製された積層体を、裏面アルミニウム電極と積層体の粘着層とが接するように貼り合せて、30℃、0.1MPaの条件下で加熱しながら加圧し、接続部付太陽電池セルを製造した(貼り合せ工程)。各実施例の接続部付太陽電池セルが有する粘着層の厚さは35μmであった。
【0093】
なお、比較例1では、上記PERC型太陽電池セルの裏面アルミニウム電極の上に第1表に示すエポキシ系銀ペーストを幅1.5mmで塗布し、200℃、30分の条件下で硬化させて、比較接続部付太陽電池セルを製造した。比較例1の比較接続部付太陽電池セルは銅箔を有さない。
【0094】
<太陽電池モジュールの製造>
(接合工程)
上記のとおり製造された接続部付太陽電池セル1個及びインターコネクタ(1.5mm幅、230μm厚さ、心材:銅、心材を錫鉛半田でコート、丸正社製)6本及び外部出力用コネクタ(5.0mm幅、230μm厚さ、心材:銅、心材を錫鉛半田でコート、丸正社製)2本を準備した。上記接続部付太陽電池セルの3本の表面バスバー銀電極と3本のインターコネクタの一端とをそれぞれ接続し、上記3本のインターコネクタの他端を第一の外部出力用コネクタと接続した。同様に上記接続部付太陽電池セルの銅箔と3本のインターコネクタの一端とをそれぞれ接続し、上記3本のインターコネクタの他端を第二の外部出力用コネクタと接続した。上記のとおりインターコネクタと接続した接続部付太陽電池セルを、300℃、0.2MPaの条件下で加圧しながら加熱して、インターコネクタが接続部付太陽電池セルと接した部分を融着接合させ、初期の太陽電池モジュールを製造した。各実施例の初期の太陽電池モジュールが有する粘着層の厚さは35μmであった。
【0095】
(封止工程)
上記の通り製造された、インターコネクタと接続した接続部付太陽電池セルを、ガラス板及びEVA樹脂シートと、上記とは別のEVA樹脂シート及びバックシート(品番QPL、東洋アルミニウム社製)との間に挟みこみ(このときバックシートの上にEVA樹脂シートがあり、EVA樹脂シートの上にインターコネクタと接続した接続部付太陽電池セルがあり、インターコネクタと接続した接続部付太陽電池セルの上にもう1層別のEVA樹脂シートがあり、上記別のEVA樹脂シートの上にガラス板がある。)、140℃、60MPa条件下にて10分間保持することにより、ガラス板及びバックシート間に太陽電池セルを封止した。
【0096】
<評価>
(初期接着強度)
上記のとおり製造された接合工程後の太陽電池モジュールを用いて、接続部と接続したから3本のインターコネクタのうちの1本を180°の角度で剥離する剥離試験をJIS K 6854−1:1999に準じて室温条件下で行い、初期接着強度を測定した。なお上記初期接着強度は、1.5mm(インターコネクタの幅)あたりの強度である。結果を第1表に示す。
【0097】
(太陽電池モジュールの初期発電効率)
上記のとおり製造された封止工程後の太陽電池モジュールにソーラーシミュレーター(ワコム社製)にて生成された擬似太陽光を1sunの条件で照射し、上記太陽電池モジュールの電流電圧特性を測定し、太陽電池モジュールの初期発電効率を算出した。
【0098】
(耐湿熱試験後の発電効率の維持率)
上記のとおり製造された封止工程後の太陽電池モジュールを85℃、85%HRの条件下に200時間置く耐湿熱試験を行い、耐湿熱試験後の太陽電池モジュールを得た。
上記のとおり製造された耐湿熱試験後の太陽電池モジュールを用いて、上記太陽電池モジュールの初期発電効率と同様にして電流電圧特性を測定し、耐湿熱試験後の太陽電池モジュールの発電効率を算出した。
【0099】
(耐湿熱試験後の発電効率の維持率)
耐湿熱試験後の太陽電池モジュールの発電効率維持率を、以下の式から求めた。結果を第1表に示す。
耐湿熱試験後の発電効率維持率(%)=[(耐湿熱試験後の発電効率)/(初期発電効率)]×100
【0100】
【表1】
【0101】
第1表の粘着剤組成物の調製欄に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・シリコーン系粘着剤:付加硬化型粘着剤SD4584(ダウコーニング社製)100質量部と、白金触媒SRX212(ダウコーニング社製)0.9質量部との混合物。
シリコーン系粘着剤1に使用される上記SD4584は原料ポリマーとしてのシリコーン系ポリマーを含有する。
シリコーン系粘着剤1を用いて硬化させた硬化後のシリコーン系ポリマーのガラス転移温度は−91℃であった。
【0102】
・(メタ)アクリル系粘着剤:1717DT(綜研化学社製)。
上記粘着剤は原料ポリマーとしてのアクリル酸エステル樹脂を含有する。上記アクリル酸エステル樹脂のガラス転移温度は−40℃以下であった。
【0103】
・ウレタン系粘着剤:重量平均分子量2,000のポリオキシプロピレングリコールと2,4−トリレンジイソシアネートから合成されるウレタンプレポリマー、酢酸エチルおよびエチルエチルケトンを含有するウレタン系粘着剤(横浜ゴム社製)。
上記ウレタンプレポリマーの硬化物のガラス転移温度は−42℃である。
上記ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、86,000である。
【0104】
・導電粒子1(Ni−G):平均粒径20μmのグラファイトの表面にニッケルをコートしたもの。ニッケルの量はグラファイトの70〜80質量%である。
・導電粒子2(銀):東洋化学工業 銀粉T7001PM、平均粒径9.7μm
【0105】
・エポキシ系銀ペースト:エポキシ樹脂と銀とを含有するペースト。銀の含有量はエポキシ系銀ペースト全量に対して90質量%である。
【0106】
第1表に示す結果から明らかなように、接続部が銅箔を有さない比較例1は密着強度(初期接着強度)、初期発電効率及び発電効率の維持率が低く、接続性が悪かった。また、比較例1の剥離試験の結果、裏面アルミニウム電極が太陽電池セルから剥離した。
【0107】
これに対して、本発明の太陽電池モジュールはインターコネクタとアルミニウム電極との接続性に優れた。実施例1〜10の剥離試験の結果、太陽電池セルから裏面アルミニウム電極が剥離することはなく、粘着層が裏面アルミニウム電極から剥離した。
実施例5、2及び4を比較すると、銅箔の幅が大きくなるほど初期接着強度が高く、接続性により優れた。
実施例2、6及び7を比較すると、実施例6の初期接着強度が最も高く、粘着層が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、接続性により優れた。
また、実施例2、6及び7を比較すると、実施例2の初期発電効率及び耐湿熱試験後の発電効率維持率が最も高く、粘着層がシリコーン系ポリマーを含む場合、接続性により優れた。