(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記原子炉容器の内部において開口する前記一次冷却系の配管を連結させるバイパス治具を取り付けてから、前記一次冷却系において前記除染剤を循環させることを特徴とする請求項1に記載の加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法。
前記蒸気発生器に前記除染剤を循環させた後に、前記蒸気発生器を前記一次冷却系の配管から隔離して単独で除染することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法。
前記境界弁の全てを少なくとも閉止に設定して、前記化学体積制御系の熱交換器を配管から隔離して単独で除染する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法。
前記境界弁の全てを少なくとも閉止に設定して、前記余熱除去系の熱交換器を配管から隔離して単独で除染する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法。
前記境界弁の全てを少なくとも閉止に設定して、前記余熱除去系のポンプ及び熱交換器を配管から隔離して一括して除染する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法。
前記化学体積制御系及び前記余熱除去系の少なくとも一方の除染に使用した除染液を前記一次冷却系の洗浄に再利用する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法の説明に入る前に、加圧水型原子力発電プラントの原子炉冷却系の説明を行う。
図1に示すように加圧水型原子力発電プラントの原子炉冷却系60は、一次冷却系51と、余熱除去系52と、化学体積制御系53といった系統を含んで構成されている。
【0012】
そして、一次冷却系51と余熱除去系52とは第1の境界弁10(10A,10B,10C)を介して相互に接続し合い、一次冷却系51と化学体積制御系53とは第2の境界弁20(20A,20B,20C)を介して相互に接続し合い、余熱除去系52と化学体積制御系53とは第3の境界弁30を介して相互に接続し合う。
【0013】
一次冷却系51は、原子炉容器1で加熱された冷却材(軽水)を蒸気発生器3A,3Bに循環させる配管2A,2Bと、この冷却材に循環するための動力を付与するポンプ4A,4Bとから構成されている。
なお、
図1の一次冷却系51は、A,Bの二系統の場合を例示しているが、単系統もしくは三系統以上から構成される場合もある。
【0014】
ここで、符号に付記される“A”の添え字は、一次冷却系51のA系統から他の系統に送出される冷却材が、通過する部材であることを意味する。
また符号に付記される“B”の添え字は、一次冷却系51のB系統から他の系統に送出される冷却材が、通過するものであることを意味する。
また符号に付記される“C”の添え字は、他の系統から一次冷却系51のA系統及びB系統のいずれかに帰還する冷却材が、通過するものであることを意味する。
また符号に付記される“D”の添え字は、余熱除去系52から化学体積制御系53に送出される冷却材が、通過するものであることを意味する。
【0015】
配管2A,2Bからは、A,B両系統ともに、ポンプ4A、4Bの下流側から加圧器5へ向かう配管6A,6Bが分岐している。
これら分岐配管6A,6Bは、それぞれ開閉弁7A、7Bを経由した後に互いに合流し、加圧器5に接続される。
【0016】
この加圧器5は、開閉弁7Cを経由した後に、A系統の配管2Aのみに対し、原子炉容器1及び蒸気発生器3Aの間に接続する。
このように設置される加圧器5は、配管2A,2B及び原子炉容器1を循環する冷却材を、沸騰しないよう高温高圧状態に維持するものである。
【0017】
このように構成される一次冷却系51は、原子炉容器1内の炉心における核分裂による反応熱を、冷却材の循環により蒸気発生器3A,3Bに伝達するものである。プラント運転中において一次冷却系51は、常に高温高圧の冷却材にさらされる環境におかれている。このため一次冷却系51は、余熱除去系52および化学体積制御系53と比較して、冷却材に接する配管および機器内面に、放射性の金属腐食生成物が最も多く付着すると考えられる。
【0018】
余熱除去系52は、原子炉容器1及び蒸気発生器3A,3Bの間に挟まれる配管2A,2Bから分岐する配管9A,9Bから始まる。そして分岐配管9A,9Bは、第1の境界弁10A、10B、ポンプ11A,11B、熱交換器12A,12Bを経由した後に互いに合流し、第1の境界弁10Cを経由し、B系統の配管2Bのポンプ4Bの下流へ戻される。なお熱交換器12A、12Bの前後に接続される配管には前後弁14A,14B,15A,15Bが配置されている。
【0019】
このように構成される余熱除去系52は、原子炉容器1の炉心の核分裂反応を停止させた後も発生する崩壊熱および顕熱を、除去する機能を有する。
余熱除去系52は、プラントの運転を停止させた後に、一次冷却系51を循環する冷却材の温度を、所定の時間内に所定の温度まで下げる機能を有している。
配管2A,2Bから余熱除去系52に冷却材が抽出される箇所は、原子炉容器1と蒸気発生器3A,3Bとの間に位置し高温である。
このため余熱除去系52には、一次冷却系51程ではないものの、放射性の金属腐食生成物が比較的多く付着すると考えられる。
【0020】
化学体積制御系53は、一次冷却系51のA系統から分岐する配管16A、一次冷却系51のB系統から分岐する配管16B及び余熱除去系52のA系統から分岐する配管16Dから始まる。そして、最終的に化学体積制御系53は、配管16Cが、一次冷却系51のB系統の配管2Bのポンプ4Bの下流に戻って終わる。
【0021】
分岐配管16Aは、蒸気発生器3A及びポンプ4Aに挟まれる配管2Aの経路上に始端が接続されている。
分岐配管16Bは、蒸気発生器3B及びポンプ4Bに挟まれる配管2Bの経路上に始端が接続されている。
分岐配管16Dは、余熱除去系52の熱交換器12A及びその下流側の前後弁15Aに挟まれる分岐配管9Aの経路上に始端が接続されている。
【0022】
分岐配管16Aは、第2の境界弁20A、再生熱交換器19の管側、開閉弁25、さらに非再生熱交換器21を経由して、体積制御タンク17に至る。
分岐配管16Bは、第2の境界弁20B、余剰抽出水熱交換器22及び封水熱交換器23を経由して体積制御タンク17に至る。
分岐配管16Dは、第3の境界弁30を経由して、非再生熱交換器21の上流側で分岐配管16Aと合流し、体積制御タンク17に至る。
【0023】
体積制御タンク17からは、充填ポンプ24及び再生熱交換器19の胴側を経由する戻り配管16Cが、B系統の配管2Bのポンプ4Bの下流側に接続する。
この戻り配管16Cにおいて、再生熱交換器19胴側の上流には開閉弁26が設けられ、さらにその下流には第2の境界弁20Cが設けられている。
【0024】
このように構成される化学体積制御系53は、冷却材の浄化(不純物・核分裂生成物・金属腐食生成物などの除去)、一次冷却系51に対する冷却材の充填補給、反応度制御のための冷却材のほう酸濃度調整、及び、冷却材の保有量調整・維持等の機能を発揮する。
配管2A,2Bから化学体積制御系53に冷却材が抽出される箇所は、蒸気発生器3A,3Bとポンプ4A,4Bとの間に位置し低温である。
しかしプラント運転中において、一次冷却系51と化学体積制御系53との間で頻繁に冷却材の流入/流出が繰り返されるため、化学体積制御系53は、一次冷却系51程ではないものの、放射性の金属腐食生成物が比較的多く付着すると考えられる。
【0025】
次に、
図2に基づいて実施形態に係る化学除染方法が適用される加圧水型原子力発電プラントの原子炉冷却系60(適宜、
図1参照)の除染区分および除染範囲を説明する。
原子炉冷却系60の除染区分は、第1の境界弁10、第2の境界弁20及び第3の境界弁30で仕切られる一次冷却系51,余熱除去系52,化学体積制御系53を
図2において大区分に設定し、この大区分をさらに細かくした小区分を設定する。
なお、
図2における小区分の設定は、配管上に配置される機器毎に設定されているが、一定範囲の配管のみ、又は弁を含む一定範囲の配管を設定する場合もある。
【0026】
図2で設定した除染範囲1,2,3,4,5,6,7に対応する、加圧水型原子力発電プラントの原子炉冷却系60の領域を、
図3,4,5,6,7に表す。
【0027】
なお、化学除染は例えば酸化反応と還元反応を交互に行う方法で実施される。化学除染に使用する化学薬品は、還元剤および酸化剤である。還元剤の代表例としては、ジカルボン酸、特にシュウ酸が挙げられる。また酸化剤の代表例としては、過マンガン酸、過マンガン酸カリ、過酸化水素、オゾン等が挙げられる。
【0028】
原子力発電プラントの原子炉冷却系は各系統や部位ごとに線量が異なるため、原子炉冷却系を一括して化学除染する場合、高線量部位の化学除染よって低線量部位が汚染されることがある。そのため、各系統や各部位を所望の線量に低減させるために、複数回にわたって全系統を除染する必要が生じる場合がある。
【0029】
一方、本実施形態においては、化学除染を系統や部位ごとに行うことができる。化学除染による再汚染を防ぐことができるため、複数回にわたって全系統を除染する必要が無く、廃止措置計画に沿って効率よく化学除染を行うことができる。
【0030】
また、系統や部位によっては、化学除染によって線量を低減させるよりも、しばらく放置して線量を低下させる方が効率的な場合がある。そのため廃止措置計画においても、特定範囲のみの化学除染を要する場合がある。本実施形態においては、化学除染を系統や部位ごとに行うことができる。そのため、廃止措置計画に沿って効率的よく化学除染を行うことができる。
【0031】
例えば、廃止措置において、一次冷却系に設けられた蒸気発生器は特に線量が高いため、しばらく放置して線量が低減してから廃止措置及び化学除染を行うことが要求される。その場合、蒸気発生器を一次系から分離させ、蒸気発生器以外の一次系を化学除染することで、蒸気発生器のために一次冷却系全体、ひいては廃止措置工程全体を遅延させることなく効率的に化学除染及び廃止措置を行うことができる。
【0032】
(第1実施形態)
図3に示す原子炉冷却系に設定した除染範囲1(
図2(A)(B)参照)に基づいて化学除染方法の第1実施形態を説明する。まず、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定する。さらに、加圧器5に対する開閉弁7A,7B,7Cを閉止し、さらに原子炉容器1の内部において配管2A,2Bの開口をバイパス治具28により連結する。これにより、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bが除染範囲1として設定され、除染剤を循環させることにより、これらが一括して除染される。これは、
図2(B)において除染パターン(イ)に該当する。ここで、除染範囲に含まれる各機器及び各部位が、除染範囲内で隔離されることなく除染される除染方法を範囲内一括除染Xと呼称する。
【0033】
なお、加圧器5、その前後配管6A,6B,6C及び原子炉容器1は、閉止した上述の開閉弁7A,7B,7C及びバイパス治具28の機能により、除染範囲から隔離されている。同様に、余熱除去系52及び化学体積制御系53も除染範囲から隔離されている。
なお、除染範囲から隔離する方法は、境界弁の閉止設定に限定されることはなく、隔離治具の使用、又は配管の切断により実施することもできる。
【0034】
ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bは原子力プラントの中でも特に線量の高い箇所である。廃止措置の計画において、汚染レベルの低い部分の再汚染のリスクを最小限にとどめるために、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bを限定して除染することが望まれる場合がある。除染パターン(イ)は、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bをそのほかの部分から隔離して化学洗浄することができる。そのため、再汚染された箇所のために再度除染をする機会を低減させることができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0035】
(第2実施形態)
図3に示す原子炉冷却系に設定した除染範囲1(
図2参照)に基づいて化学除染方法の第2実施形態を説明する。
第2実施形態では、第1実施形態に記載した除染を実施した後に、蒸気発生器3A,3Bを一次冷却系51の配管2A,2Bからを隔離し、蒸気発生器3A,3Bを単独で除染する。これは、
図2(b)において除染パターン(ロ)に該当する。以下、除染範囲内一括除染Xを行った後に、除染範囲に含まれる各機器や各部位の一部を隔離し、さらに単独で除染する除染方法を、一括除染後単独除染Yと呼称する。一括除染後単独除染Yにおいて、1回目の除染(範囲内一括除染Xに相当)を第1除染、第1除染に続いて一部の機器や部位に対して行う単独除染を第2除染と呼称する。
【0036】
図8に基づいて、第2除染の手順について説明する。
図8(A)及び(B)において、機器31は、第2除染で単独除染される対象の機器であり、ここでは蒸気発生器2A,2Bであるものとする。
図8(A)は第2除染前の状態であり、機器31の入口32及び出口33のそれぞれに、配管2,2が、アダプタ管35,35を仲介して接続している状態を示している。
図8(B)は、機器31に単独除染用の循環路40を取り付けた状態を示している。この循環路40は、隔離する機器31における冷却材の入口32側と出口33側とを閉ループで接続し、洗浄剤を循環させるものである。
【0037】
この循環路40は、除染剤のタンク41と、このタンク41から除染剤を送出路43に送出させるポンプ42と、この送出路43の先端が固定され機器の入口32側の開口を封止して除染剤を機器31に送り込む第1封止版44と、機器の出口33側の開口を封止して機器31を通過した除染剤を帰還路46を介してタンク41に帰還させる第2封止版45と、から構成されている。
【0038】
機器31を単独で除染する場合、アダプタ管35,35を取り外して、機器の入口32側の開口及び出口33側の開口に対し、それぞれ第1封止版44及び第2封止版45をとりつける。なお、配管2の開口にも、漏液を防止するために封止版36,36それぞれ設ける。
【0039】
このように第2除染対象となる機器31に対し、単独除染用の循環路40を取り付けた後、ポンプ42を起動させ、タンク41と機器31との間で除染剤を循環させる。なお、機器31を隔離する方法としては、
図8(B)に例示する方法に限定されるものでなく、機器31の上流側及び下流側の直近に配置されている弁を利用する方法、接続する配管を切断して行う方法等、が挙げられる。
【0040】
蒸気発生器3A,3Bの機器は、複雑な形状を有するため、配管2A,2Bとの一括洗浄では、単純形状の配管と比較して除染効率が低い場合がある。また、蒸気発生器3A,3Bは、材質の一部にニッケル基合金材が用いられており、その他大部分の箇所に用いられるステンレス材とは異なる除染挙動を示す場合がある。そのため、廃止措置の計画において、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bを一括で除染した後、蒸気発生器3A,3Bを単独で除染することが望まれる場合がある。
【0041】
除染パターン(ロ)では、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bを一括で除染した後、蒸気発生器3A,3Bを単独で除染することができる。そのため、除染範囲1を化学除染することができ、かつ、蒸気発生器の除染条件を最適化することができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0042】
(第3実施形態)
図3に示す原子炉冷却系に設定した除染範囲1(
図2(A)、(B)参照)に基づいて化学除染方法の第3実施形態を説明する。
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定する。さらに、加圧器5に対する開閉弁7A,7B,7Cを閉止し、さらに原子炉容器1の内部において配管2A,2Bの開口をバイパス治具28により連結する。
第3実施形態では、除染剤を循環させる前に、引き続いて蒸気発生器3A,3Bの各々を
図8(B)の機器31のように隔離する。さらに
図8(C)に示すように、これら蒸気発生器3A,3Bを隔離した後に分離した二つの配管2,2の開口を、バイパス配管48の両端に接続し、両者を連結させる。
【0043】
そして、蒸気発生器3A,3Bを隔離してバイパス配管48で連結した一次冷却系51に対し、除染剤を投入し、ポンプ4A,4Bを起動してこれを循環させ、配管2A,2B及びポンプ4A,4Bを除染する。
配管2A,2B及びポンプ4A,4Bの除染後、隔離した蒸気発生器3A,3Bの除染を実施する(
図8(B)参照)。これは、
図2(b)において除染パターン(ハ)に該当する。ここで、除染範囲に含まれる各機器や各部位を隔離して各々を単独で除染する除染方法を、範囲内単独除染Z(一括除染後単独除染Yの第2除染に該当)と呼称する。なお、除染する順番は逆であってもよく、蒸気発生器3A,3Bを除染した後に配管2A,2B及びポンプ4A,4Bの除染を行ってもよい。
【0044】
蒸気発生器3A,3Bは冷却系の中でも特に線量が高い部分であり、また、形状が複雑であり、構成材料が他の部分とは異なる。そのため、化学除染時に配管2A,2B及びポンプ4A,4Bが蒸気発生器3A,3Bによって汚染されることを防ぎ、また、蒸気発生器3A,3Bの除染条件を最適化するために、廃止措置の計画において、一次冷却系51の配管2A,2B及びポンプ4A,4Bと蒸気発生器3A,3Bをそれぞれ単独で除染することが望まれる場合がある。
【0045】
除染パターン(ハ)では、次冷却系51の配管2A,2B及びポンプ4A,4Bと蒸気発生器3A,3Bをそれぞれ単独で除染することができる。そのため、配管2A,2B及びポンプ4A,4Bが蒸気発生器3A,3Bによって汚染されることを防ぎ、また、蒸気発生器3A,3Bの除染条件を最適化することができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0046】
これまでにおいて
図3に示す除染範囲1に適用する実施形態について説明してきた。
第1実施形態から第3実施形態で説明した範囲内一括除染X、一括除染後単独除染Y、範囲内単独除染Zは、
図4に示す除染範囲2(
図2(A)参照)対しても適用することができる。除染範囲2における範囲内一括除染X、一括除染後単独除染Y、範囲内単独除染Zはそれぞれ、
図2(B)における除染パターン(ニ)、(ホ)、(へ)に該当する。
【0047】
除染範囲2は以下のように設定される。
図4に示すように、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定する。さらに原子炉容器1の内部において配管2A,2Bの開口をバイパス治具28により連結する。なお、加圧器5に対する開閉弁7A,7B,7Cは開放する。これにより、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bに加えて加圧器5が除染範囲2として設定される。
【0048】
除染範囲2における範囲内一括除染Xは、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3B及び加圧器5が隔離されることなく一括して除染されることで実施される。
原子炉容器は原子力プラントの中でも特に容量が大きい構成であり、化学除染の際には多量の洗浄液が必要となる。そのため、廃止措置の計画において、一次冷却系を化学除染する際、除染液量を低減させるために、一次冷却系の内、原炉容器1以外の構成を一括して除染することが望まれる場合がある。
【0049】
除染パターン(ニ)は、一次冷却系の内、原炉容器1以外の構成を一括して除染することができる。そのため、一次系冷却系の化学除染に必要な除染液量を低減させることができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
除染範囲2における一括除染後単独除染Yは、第1除染として除染範囲2を範囲内一括除染Xした後に、第2除染として蒸気発生器3A,3Bのみを除染することで実施される。第2除染は
図8(A)(B)と同様に行われ、蒸気発生器3A,3Bはそれぞれ、他の機器から隔離された後、単独で除染される。
【0050】
廃止措置の計画において、一次冷却系を化学除染する際、除染液量を低減させるために、一次冷却系の原炉容器1以外の構成を一括して除染することが望まれる場合がある。かつ、形状が複雑で構成材料が特殊な蒸気発生器3A,3Bの除染条件を最適化するため、廃止措置の計画において、蒸気発生器3A,3Bを単独で除染することが望まれる場合がある。
【0051】
除染パターン(ホ)では、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bを一括で除染した後、蒸気発生器3A,3Bを単独で除染することができる。そのため、一次冷却系の原炉容器1以外の構成を一括して除染することができ、かつ、蒸気発生器の除染条件を最適化することができるため、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0052】
除染範囲2における範囲内単独除染Zは、まず、
図8(B)で説明したように、ポンプ4A,4B、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5をそれぞれに隔離する。その後、
図8(C)に示すように、蒸気発生器3A,3Bの上流側配管及び下流側配管をバイパス配管で連結させる。同様に加圧器5の上流側配管及び下流側配管もバイパス配管で連結させる。そして、一次冷却系51の配管2A,2B及びポンプ4A,4Bとバイパス配管で構成された循環経路に除染液を投入し除染を行う。その後、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5にそれぞれ循環ポンプを接続し、単独除染を順に行う。一次冷却系51の配管2A,2B及びポンプ4A,4Bの除染、蒸気発生器3A,3Bの除染、及び加圧器5の除染を行う順番は、任意である。蒸気発生器3A,3Bの除染を行った後に、一次冷却系51の配管2A,2B及びポンプ4A,4Bの除染を行い、最後に加圧器5の除染を行うものとしても良い。
【0053】
原炉容器は一次冷却系の中で特に容量が大きな構成である。また、蒸気発生器3A,3B及び加圧器は冷却系の中でも特に線量が高い部分である。また、加圧器5の蒸気発生器と同様に形状が複雑である。そのため、除染液の循環量を低減させ、かつ、化学除染時に配管2A,2B及びポンプ4A,4Bが蒸気発生器3A,3Bや加圧器によって汚染されることを防ぎ、かつ、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5の除染条件をそれぞれ最適化するために、廃止措置の計画において、除染範囲から原炉容器を除外し、一次冷却系51の配管2A,2Bとポンプ4A,4B、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5をそれぞれ単独で除染することが望まれる場合がある。
【0054】
除染パターン(へ)では、次冷却系51の配管2A,2Bとポンプ4A,4B、蒸気発生器3A,3B、及び加圧器5をそれぞれ単独で除染することができる。そのため、配管2A,2B及びポンプ4A,4Bが蒸気発生器3A,3Bや加圧器によって汚染されることを防ぎ、また、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5の除染条件をそれぞれ最適化することができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0055】
第1実施形態と第2実施形態で説明した範囲内一括除染X、一括除染後単独除染Yは、
図5に示す除染範囲3(
図2(a)参照)対しても適用することができる。除染範囲3における範囲内一括除染X、一括除染後単独除染Yはそれぞれ、
図2(b)における除染パターン(ト)、(チ)に該当する。
【0056】
除染範囲3は以下のように設定される。
図5に示すように、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定し、加圧器5に対する開閉弁7A,7B,7Cを閉止する。なお、原子炉容器1の内部において配管2A,2Bの開口は連結しない(バイパス治具28を用いない)。これにより、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3Bに加えて原子炉容器1が除染範囲3として設定される。
【0057】
除染範囲3における範囲内一括除染Xは、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B、蒸気発生器3A,3B、及び原子炉容器1が隔離されることなく一括して除染されることで実施される。
【0058】
加圧器は一次冷却系を構成する他の機器や配管よりも上方向に突出しているため、加圧器はそのほかの構成に比べて汚染が軽度であることが多い。そのため、廃止措置の計画において、一次冷却系を化学除染する際に加圧工程を省き、加圧器5以外の構成を一括して除染することが望まれる場合がある。除染パターン(ト)は、一次冷却系の内、加圧器5以外の構成を一括して除染することができる。そのため、加圧に必要な工程や機器を省略することができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0059】
除染範囲3における一括除染後単独除染Yは、第1除染として除染範囲3を範囲内一括除染Xした後に、第2除染として蒸気発生器3A,3Bのみを除染することで実施される。第2除染は
図8(A)(B)と同様に行われ、蒸気発生器3A,3Bはそれぞれ、他の機器から隔離された後、単独で除染される。
【0060】
廃止措置の計画において、一次冷却系を化学除染する際、加圧に必要な工程や機器を省略するために、一次冷却系の加圧器5以外の構成を一括して除染することが望まれる場合がある。かつ、形状が複雑で構成材料が特殊な蒸気発生器3A,3Bの除染条件を最適化するため、廃止措置の計画において、蒸気発生器3A,3Bを単独で除染することが望まれる場合がある。
【0061】
除染パターン(チ)では、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B、蒸気発生器3A,3B及び原子炉容器1を一括で除染した後、蒸気発生器3A,3Bを単独で除染することができる。そのため、一次冷却系の加圧器5以外の構成を一括して除染することができ、かつ、蒸気発生器の除染条件を最適化することができるため、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0062】
また、第1実施形態と第2実施形態で説明した範囲内一括除染X、一括除染後単独除染Yは、
図6に示す除染範囲4(
図2(a)参照)に対しても適用することができる。除染範囲4における範囲内一括除染X、一括除染後単独除染Yはそれぞれ、
図2(b)における除染パターン(リ)、(ヌ)に該当する。
【0063】
除染範囲4は以下のように設定される。
図6に示すように、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定し、加圧器5に対する開閉弁7A,7B,7Cを開放する。また、原子炉容器1の内部において配管2A,2Bの開口は連結しない(バイパス治具28を用いない)。これにより、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3B、加圧器5及び原子炉容器1が除染範囲4として設定される。
【0064】
除染範囲4における範囲内一括除染Xは、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B及び蒸気発生器3A,3B、加圧器5及び原子炉容器1が隔離されることなく一括して除染されることで実施される。
【0065】
一次冷却系全体である除染範囲4は、余熱除去系52及び化学体積制御系53と比較して線量が高い系統である。一次冷却系51、余熱除去系52及び化学体積制御系53を一括で化学洗浄する場合、一次冷却系51により余熱除去系52及び化学体積制御系53が汚染させる可能性がる。そのため、廃止措置の計画において、一次冷却系51により余熱除去系52及び化学体積制御系53が汚染されるリスクを最小限にとどめるために、一次冷却系51に限定して除染することが望まれる場合がある。除染パターン(リ)は、一次冷却系51を構成する配管2A,2B、ポンプ4A,4B、蒸気発生器3A,3B、加圧器及び原子炉圧力容器1を余熱除去系52及び化学体積制御系53から隔離して化学洗浄することができる。そのため、余熱除去系52及び化学体積制御系53の再汚染を抑制することができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0066】
除染範囲3における一括除染後単独除染Yは、第1除染として除染範囲4を範囲内一括除染Xした後に、第2除染として蒸気発生器3A,3B及び加圧器5をそれぞれ単独に除染することで実施される。第2除染は
図8(A)(B)と同様に行われ、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5はそれぞれ、他の機器から隔離された後、単独で除染される。蒸気発生器3A,3B及び加圧器5をそれぞれ単独に除染される順序は任意であり。第1除染の後であれば、加圧器の単独除染を蒸気発生器3A,3Bの単独除染よりも前に行っても良い。
【0067】
形状が比較的複雑な蒸気発生器と加圧器は比較的複雑な形状をしており、十分な除染効果を得るためには、それぞれの除染条件を最適化する必要がある場合がる。そのため、廃止措置の計画において、除染範囲4を一括して除染した後、蒸気発生器3A,3B及び加圧機5をそれぞれ単独で除染することが望まれる場合がある。
【0068】
除染パターン(ヌ)では、一次冷却系51の配管2A,2B、ポンプ4A,4B、蒸気発生器3A,3B、加圧器5及び原子炉容器1を一括で除染した後、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5を単独で除染することができる。そのため、一次冷却系全体を迅速に除染し、かつ、蒸気発生器3A,3B及び加圧器5の除染効果を高めることができ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0069】
(第4実施形態)
図7に示す原子炉冷却系に設定した除染範囲5(
図2(a)参照)に基づいて化学除染方法の第4実施形態を説明する。
【0070】
第4実施形態では、第1実施形態と同様に、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定する。そして、化学体積制御系53の熱交換器19を配管から隔離して、単独除染用の循環路40(
図8(B)参照)を取り付け、洗浄剤を循環させて単独で除染する。
【0071】
化学体積制御系53の熱交換器19においては、一次冷却系51から流入する高温高圧の冷却材が、最初に到達し急速に冷却される。このため、化学体積制御系53を構成する機器のなかにおいて、熱交換器19の汚染レベルが一番高くなることが多い。そのため、廃止措置の計画において、化学体積制御系53の熱交換器19を単独で除染することが望まれる場合がある。
【0072】
第4の実施形態では、化学体積制御系の熱交換器を単独で除染することができる。そのため、化学体積制御系の熱交換器の化学除染時に、より線量が低い部位を汚染することを防ぎ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0073】
(第5実施形態)
図7に示す原子炉冷却系に設定した除染範囲6(
図2(a)参照)に基づいて化学除染方法の第5実施形態を説明する。
第5実施形態では、第1実施形態と同様に、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定する。そして、余熱除去系52の熱交換器12Bを配管から隔離して、単独除染用の循環路40(
図8(B)参照)を取り付け、洗浄剤を循環させて単独で除染する。なお図示を省略しているが熱交換器12Aに対しても同様に取り扱える。
【0074】
余熱除去系52の熱交換器12A,12Bでは、一次冷却系51から流入する高温高圧の冷却材が急速に冷却される。このため、余熱除去系52を構成する機器のなかにおいて、熱交換器12A,12Bの汚染レベルが高いと考えられる。そのため、廃止措置の計画において、余熱除去系52の熱交換器12A,12Bを単独で除染することが望まれる場合がある。
【0075】
第5の実施形態では、余熱除去系52の熱交換器12A,12Bを単独で除染することができる。そのため、余熱除去系52の熱交換器12A,12Bの化学除染時に、より線量が低い部位を汚染することを防ぎ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である。
【0076】
(第6実施形態)
図6に示す原子炉冷却系に設定した除染範囲7(
図2(a)参照)に基づいて化学除染方法の第6実施形態を説明する。
第6実施形態では、第1実施形態と同様に、一次冷却系51と接続する境界弁の全て(第1の境界弁10、第2の境界弁20)を閉止に設定する。そして、余熱除去系52のポンプ11A及び熱交換器12Aを配管から隔離して、単独除染用の循環路40(
図8(B)参照)を取り付け、洗浄剤を循環させて一括で除染する。なお図示を省略しているがポンプ11B及び熱交換器12Bに対しても同様に取り扱える。
【0077】
余熱除去系52のポンプ11A,11B及び熱交換器12A,12Bでは、一次冷却系51から流入する高温高圧の冷却材が最初に到達し急速に冷却される。このため、余熱除去系52を構成する機器のなかにおいて、熱交換器12A,12Bと同様にポンプ11A,11Bの汚染レベルが高いと考えられる。そのため、廃止措置の計画において、余熱除去系52のポンプ11A,11B及び熱交換器12A,12Bをそれぞれ単独で除染することが望まれる場合がある。
【0078】
第5の実施形態では、余熱除去系52のポンプ11A,11B及び熱交換器12A,12Bをそれぞれ単独で除染することができる。そのため、余熱除去系52のポンプ11A,11B及び熱交換器12A,12Bの化学除染時に、より線量が低い部位を汚染することを防ぎ、原子力プラントの廃止措置を計画に沿って効率的に進めることが可能である
【0079】
上述した実施形態を組み合わせて実施するにあたり、一次冷却系51、余熱除去系52及び化学体積制御系53に対する除染作業の順番は、特に限定されない。
しかし、一次冷却系51の汚染レベルが、他の余熱除去系52及び化学体積制御系53よりも高いことを鑑みれば、化学体積制御系53及び余熱除去系52の少なくとも一方を先に除染して、使用済の除染液を一次冷却系51の洗浄に再利用することで、除染剤の使用量及び二次廃棄物の発生量の削減効果が期待できる。
【0080】
ところで、上述した実施形態を組み合わせて実施しても、原子炉冷却系60において、除染範囲に含まれない配管、機器、弁等が存在する。
そこで、一次冷却系51に関する第1から第3の実施形態のうち少なくとも一つを実施した後に、第1の境界弁10及び第2の境界弁20のうち少なくとも一つを開放して、系統間をまたぐ除染を実施してもよい。
【0081】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の加圧水型原子力発電プラントの化学除染方法によれば、余熱除去系と一次冷却系とを接続する第1の境界弁、並びに、化学体積制御系と一次冷却系とを接続する第2の境界弁の全てを閉止して、一次冷却系に除染剤を循環させることにより、廃止措置の計画にそって、放射性物質が付着した原子炉冷却系の汚染レベルを効率的に低減させることが可能となる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。また、
図1、3〜7に示す構成は加圧水型原子力発電プラントの一例であり、加圧水型原子力発電プラントによっては取合い弁の箇所や場所はプラントにより多少異なることがある。