特許第6773466号(P6773466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773466
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】機械固定治具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/00 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   B23Q1/00 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-133824(P2016-133824)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-1363(P2018-1363A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】今道 健信
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏隆
(72)【発明者】
【氏名】井納 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 卓也
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−089752(JP,U)
【文献】 実開昭56−097693(JP,U)
【文献】 特開2012−139811(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3188204(JP,U)
【文献】 実開平07−029035(JP,U)
【文献】 米国特許第01681412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00
F16M 11/00 − 11/02
F16M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械を設置面に対して固定するための機械固定治具であって、
鉛直方向に長い長孔が形成された起立面と、前記起立面の上部から前記機械側の凸部に向けて横方向に延びた上側面を備えた固定用ブラケットと、
前記起立面の長孔を通して前記凸部のネジ穴に締め付けられる固定用ボルトと、
前記上側面に取り付けられて前記凸部に対し上方から突き当てられる突き当て部材と、を有し、
前記起立面には内周面にネジ部を備えたボルト挿通孔が形成され、前記突き当て部材が、前記ボルト挿通孔に螺合する突き当てボルトであることを特徴とする機械固定治具。
【請求項2】
前記機械側の凸部は、前記機械の側部に対してネジ止めされた固定用ブロックであることを特徴とする請求項1に記載の機械固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置面に対して機械を固定するための機械固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などに機械を設置する場合、床面などの設置面に対して機械を固定するための固定手段が用いられる。大きな地震が発生したような場合であっても、設置された機械に対して転倒や位置ズレなどを防止するためである。機械を固定するための手段としては、下記特許文献1に機械固定治具が開示されている。この機械固定治具は、機械に形成された突出部を上側から押え込むことで機械の浮き上がりを防止するものである。具体的には、床面に対してアンカーボルトによって基台が固定され、その基台に円柱形状の2本の支柱が立設され、更にその支柱に対して押え部材が取付けられた後、押え部材が上側から拘束部材によって拘束される。
【0003】
押え部材は、板部材に2本の支柱が貫通する貫通孔が形成されているが、その孔径が支柱の外径よりも大きいため傾斜した姿勢で取り付けられ、その傾斜した先端部分が機械の突出部の上側面に当てられる。一方、押え部材の上側に重なるように取り付けられた拘束部材は、同じく2本の支柱が貫通する貫通孔が形成され、その孔径が支柱の外径よりも大きいため傾斜した姿勢で取り付けられる。そして、その拘束部材には板面を直交方向に貫通すボルトが締め付けられ、突き出したネジ部先端が下側の押え部材との距離を押し広げるように力が作用し、傾斜した姿勢が保たれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−125846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した従来の機械固定治具は、機械を上方へ移動させる力が作用した場合に押え部材によって機械の浮き上がりを防止するものであるが、機械を押え込もうとする力は支柱と押え部材との摩擦力にすぎない。従って、エネルギーの大きな地震が発生したような場合には、摩擦力を超えた力が作用することが考えられ、機械の浮き上がりを防止することができないおそれがある。すなわち、機械の転倒は防げたとしても高さ方向の基準位置がずれてしまう。そして、工場内の加工機などにおける基準位置の位置ズレは、その後、機械の設置状態を戻すためにセッティングを行わなければならなくなるが、それが非常に手間のかかるものである。また、従来の機械固定治具は、床面にはアンカーボルトによって固定された基台、その基台に立設された2本の支柱、そして支柱に対して取り付けられる押え部材や拘束部材などが必要であり、治具を構成するための部品点数が多くなってしまっている。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、機械に対する浮き上がりを防止する機械固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る機械固定治具は、機械を設置面に対して固定するためのものであって、鉛直方向に長い長孔が形成された起立面と、前記起立面の上部から前記機械側の凸部に向けて横方向に延びた上側面を備えた固定用ブラケットと、前記起立面の長孔を通して前記凸部のネジ穴に締め付けられる固定用ボルトと、前記上側面に取り付けられて前記凸部に対し上方から突き当てられる突き当て部材とを有し、前記起立面には内周面にネジ部を備えたボルト挿通孔が形成され、前記突き当て部材が、前記ボルト挿通孔に螺合する突き当てボルトである

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固定用ブラケットを介して機械を設置面に固定するが、その固定用ブラケットには突き当てボルトが螺合され、機械側の凸部に上方から突き当てられるため、機械に対する浮き上がりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】機械固定治具の実施形態の取り付け状態を示した斜視図である。
図2】機械固定治具の実施形態の取り付け状態を示した側面図である。
図3】機械固定治具の実施形態を示した図2のA−A断面図である。
図4】従来の機械固定治具を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る機械固定治具の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の機械固定治具を示した斜視図である。また、図2は、本実施形態の機械固定治具を示した側面図である。この機械固定治具1は、旋盤などの加工機100を工場の設置面200に固定するためのものである。その加工機100は、例えば他の加工機と並設され、ワーク搬送装置によって自動でワークの受渡しが行われる。そのため、工場への設置に際して、3軸方向の位置合わせをしたセッティングが行われる。そして、セッティングされた加工機100に対して、機械固定治具1を使用した設置面200への固定処理が行われる。
【0011】
機械固定治具1は、固定用ブラケット11を介して設置面200に加工機100を固定するように構成されたものである。その固定用ブラケット11は、いわゆるZ型をした板部材であり、補強プレート12が上下方向に接合された起立面31と、その起立面31の上下端部において直交する上側面32および下側面33が設けられている。固定時の固定用ブラケット11は、図示するように、上側面32が加工機100側に延びるように内側に位置し、下面33は上側面32とは反対の外側に延びて位置する。
【0012】
固定用ブラケット11は、その下側面33がアンカーボルト20によって設置面200に固定される。そして、起立面31を貫通した固定用ボルト13によって加工機100側に固定される。すなわち、起立面31には、上下方向に長い長孔34が2箇所に形成され、その長孔34に対して外側からワッシャ14を通した固定用ボルト13が貫通する。そして、その固定用ボルト13が加工機10側に固定された固定用ブロック15に締め付けられ、固定用ブラケット11が加工機100側に固定される。よって、この固定用ブラケット11を介して加工機100が設置面200に固定されることとなる。
【0013】
更に、本実施形態の機械固定治具1には、固定用ブラケット11の上側面32に突き当てボルト16が取り付けられ、加工機100に対する浮き上がりを防止する構成がとられている。固定用ブラケット11には、上側面32にネジ孔であるボルト挿通孔35が形成され、そのボルト挿通孔35に対して突き当てボルト16が螺合している。突き当てボルト16は、固定用ブラケット11に対して鉛直方向に取り付けられ、その下側先端が固定用ブロック15の上面に突き当てられている。そして、突き当てボルト16には上側面32に当たる位置まで位置決めナット17が締め付けられ、その突き当てボルト16に対する突き当て状態の位置決めが行われている。よって、接地面200に固定された固定用ブラケット11は、突き当てボルト16を介して加工機100(固定用ブロック15)を上から押さえ込む構成となっている。
【0014】
ところで、図4は、従来の機械固定治具を示した斜視図であるが、本実施形態の固定用治具1は、その従来の機械固定治具からの変更が容易な構成がとられている。加工機100を固定する従来の機械固定治具110は、L型に形成された固定用ブラケット111が使用されている。そして、その固定用ブラケット111が設置面にアンカーボルト120によって固定され、長孔134を通した固定用ボルト113が加工機100の壁面に締め付けられている。よって、加工機100は、この場合でも固定用ブラケット111を介して設置面200に固定されることとなる。
【0015】
しかし、長孔134を通して加工機100に固定用ボルト113を締結する構成では、上下方向のズレ防止はボルトの締め付けによって生じる摩擦力であるため、前記課題でも述べたように大きなエネルギーの振動が生じた場合には上下方向に加工機100がズレを生じてしまう。そこで、当該課題を解決するため、簡単な構成の変更として考えられるのは長孔134を丸穴にすることである。丸穴内では固定用ボルト113の上下方向の移動が制限され、加工機100の同方向のズレが防止されるからである。
【0016】
ただし、このような構成は、固定用ブラケット111の丸穴と加工機100のネジ孔との位置精度が求められるため、位置ズレが生じている場合には固定用ボルト113が締め付けられなくなる。そこで、通常は予め加工機100にネジ孔が形成されているが、丸穴を採用した場合には、実際に工場で設置する時に加工機100にネジ孔を加工するか、或いは固定用ブラケットを作成する必要が生じてしまう。すなわち、機械固定治具の取り付けは、取り付け易さを考慮すると長孔が好ましく、上下方向のズレを防止するための解決手段として丸穴を使用することは妥当ではない。
【0017】
そこで、本実施形態では、前述したような固定用ブロック15や突き当てボルト16を使用し、加工機100を上方から押え込む構成が採用されている。この場合、加工機100側に凸部が一体的に形成されていれば、そこに突き当てボルト16を突き当てるように構成すればよい。しかし、図4にも示すように、加工機100には該当する凸部は存在しない。そこで、本実施形態では、固定用ブロック15を加工機100へ固定する構造とした。その際、加工機100には従来の固定用ブラケット111を固定するネジ孔が形成されているため、固定用ブロック15の固定にはそのネジ孔を利用している。
【0018】
ここで、図3は、本実施形態の機械固定治具1を示した図2のA−A断面図である。加工機100は、機体を構成する壁板101の一部に座面102が設けられ、その壁板101には座面102から貫通したネジ孔105が形成されている。図4に示す従来例では、このネジ孔105に固定用ボルト113を螺合させていた。一方、本実施形態では、座面102に固定用ブロック15が当てられ、ネジ孔105に螺合したブロック用ボルト21によって固定されている。これにより、固定用ブロック15が加工機100の凸部として構成されている。
【0019】
固定ブロック15には、2か所にブロック用ボルト21を挿入する貫通したボルト挿通孔22と、固定用ボルト13を螺合するネジ孔23とが、それぞれ2か所ずつ形成されている。従って、ブロック用ボルト21により加工機100に対して固定用ブロック15が固定され、その固定用ブロック15に対して、固定用ボルト13により固定用ブラケット11が固定される。そして、前述したように、固定用ブラケット11の上側面32に突き当てボルト16が螺合され、その下側先端が固定用ブロック15の上面に突き当てられる。
【0020】
よって、本実施形態の機械固定治具1によれば、加工機100を固定用ブラケット11により工場などの設置面200に固定しているが、その固定用ブラケット11には固定用ブロック15に上方から突き当てボルト16が突き当てられているため、加工機100に対する浮き上がりを防止することができる。加工機100に対しする固定用ブラケット11の固定は、長孔34に固定用ボルト13を通して行う構成であるため、取り付け作業は従来通り簡単に行うことができる。
【0021】
また、本実施形態の固定構造では、加工機100側に凸部が必要になるが、加工機100のネジ孔105を利用して固定用ブロック15を固定するようにしたため、従来の加工機100に対して改良を加えことなく機械固定治具1の使用が可能である。更に、本実施形態では、突き当てボルト16をボルト挿通孔35に螺合させて加工機100を上から押さえ込むように構成しているため、加工機100の凸部(本実施形態では固定用ブロック15)と固定用ブラケット11の上側面32との距離が一定でなくても、確実に押さえ込み状態とすることができる。
【0022】
以上、本発明の機械固定治具の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、固定用ブロック15をネジ止めして加工機100側の凸部を構成したが、固定用ブロックを加工機100に溶接したものであってもよい。
また、前記実施形態では、突き当てボルト16をボルト挿通孔35に螺合するように構成したが、例えば、ボルト挿通孔35を単なる貫通孔とし、位置決めナット17を上側面32に対して下側から当たるように締め付けることにより、突き当てボルト16を位置決めするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1…機械固定治具 11…固定用ブラケット 12…補強プレート 13…固定用ボルト 15…固定用ブロック 16…突き当てボルト 17…位置決めナット 21…ブロック用ボルト 22…ボルト挿通孔 23…ネジ穴 31…起立面 32…上側面 33…下側面 34…長孔 35…ボルト挿通孔 100…加工機 200…設置面



図1
図2
図3
図4