(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係るシートベルトシステム1の構成の一例を示す図である。シートベルトシステム1は、車両に搭載されたシステムの一例である。シートベルトシステム1は、例えば、シートベルト4と、リトラクタ3と、ショルダーアンカー6と、タング7と、バックル8と、ECU(Electronic Control Unit)100とを備える。
【0015】
シートベルト4は、車両のシート2に座る乗員11を拘束するウェビングの一例であり、リトラクタ3に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルト4の先端のベルトアンカー5は、車体の床又はシート2に固定される。
【0016】
リトラクタ3は、シートベルト4の巻き取り又は引き出しを可能にする巻き取り装置の一例であり、車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知されると、シートベルト4がリトラクタ3から引き出されることを制限する。リトラクタ3は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。リトラクタ3は、シートベルトリトラクタの一例である。
【0017】
リトラクタ3は、モータの動力によりシートベルト4をスプールに巻き取る。リトラクタ3は、車両衝突前に、ミリ波レーダー等のセンサからの信号に基づいてモータを作動してシートベルト4をスプールに巻き取り、シートベルト4にプリテンションを与えてシートベルト4による乗員拘束を迅速に行う。また、リトラクタ3は、タング7とバックル8との係合が解除された時にモータを作動してシートベルト4をスプールで巻き取る。更に、リトラクタ3は、モータを作動してシートベルト4の張力をドライビングシチュエーション(車両の状態)に応じて調整することで、シートベルト4による乗員の拘束性やシートベルト4の装着時の快適性をそれぞれ向上させる。
【0018】
車両の状態とは、例えば、シートベルト4の引き出しの有無、乗員11の有無、車両の走行速度、車両の加速度、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作、バックル8の操作、ドア操作、乗員が操作可能な車載の選択スイッチの操作入力などを表す状態をいう。
【0019】
ショルダーアンカー6は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、リトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員11の肩部の方へガイドする部材である。
【0020】
タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー6によりガイドされたシートベルト4にスライド可能に取り付けられた部品である。
【0021】
バックル8は、タング7が着脱可能に連結される部品であり、例えば、車体の床又はシート2に固定される。
【0022】
タング7がバックル8に係合された状態で、ショルダーアンカー6とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員11の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部9である。タング7がバックル8に係合された状態で、ベルトアンカー5とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員11の腰部を拘束するラップベルト部10である。
【0023】
ECU100は、リトラクタ3と通信可能に一又は複数本のワイヤハーネス101を介して接続された制御装置の一例である。
【0024】
<第1の実施形態>
図2は、リトラクタ3Cの構成の一例を模式的に示す図である。リトラクタ3Cは、
図1に示されたリトラクタ3の一例である。リトラクタ3Cは、ベースフレーム17と、スプール20と、スプリングユニット74とを備える。なお、
図2では、スプリングユニット74の一部の断面形状が示されている。
【0025】
スプール20は、ベースフレーム17に回転可能に支持されてシートベルト4を巻き取る。スプール20は、シートベルト4を巻き取る回転部材である。スプール20の回転軸は、シャフト20aと、シャフト20aの一端に固定されたブッシュ31とを含んで構成される。
【0026】
ブッシュ31は、円筒状のボス26と、フランジ状のラチェット27とを有する。ボス26とラチェット27とは一体に形成されている。シャフト20aは、ボス26の中央部に形成された貫通孔とラチェット27の中央部に形成された貫通孔とを貫通する。ボス26もラチェット27も、シャフト20aに対して回転不能に固定されている。
【0027】
スプリングユニット74は、ブッシュ31と、スパイラルスプリング22と、スプリングケース33と、パウル36と、ユニットカバー30とを有する。
【0028】
スパイラルスプリング22は、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に付勢する弾性体の一例である。スパイラルスプリング22は、スプール20に一体回転可能に取り付けられたブッシュ31のボス26に接続された内側端末部と、スプリングケース33の外周壁28に接続された外側端末部とを有し、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に常時付勢する。
【0029】
スプリングケース33は、スプール20の回転軸を中心にベースフレーム17に対して回転可能に設けられ、スパイラルスプリング22を収容する。スプリングケース33は、円形の底壁29と、底壁29の外周縁から底壁29の法線方向に突き出る外周壁28とを有する。底壁29の中央部には、ボス26が貫通する貫通孔が形成されている。スプリングケース33は、ブッシュ31に対して回転可能にボス26の周りに配置されている。
【0030】
スプリングケース33は、底壁29に対してスプール20側の収容部にラチェット27を収容し、底壁29に対してスプール20とは反対側の収容部にスパイラルスプリング22を収容する。
【0031】
ユニットカバー30は、スプリングケース33に収納されたラチェット27及びスパイラルスプリング22をスプリングケース33と共に覆う。ユニットカバー30は、シャフト20aを支える軸受を有する。
【0032】
図3は、巻き部分がスプリングケース33の外側に偏倚した弛緩状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す図である。
図3は、スプリングケース33がスパイラルスプリング22を収容する形態を
図2に示される矢視Aで透過的且つ模式的に示している。
【0033】
スパイラルスプリング22は、シャフト20aに対して回転不能に固定されたボス26に接続された内側端末部22aと、スプリングケース33の外周部に位置する引っ掛け壁37に接続された外側端末部22bとを有する。内側端末部22aは、スパイラルスプリング22の渦巻き方向内側の端末部の一例であり、外側端末部22bは、スパイラルスプリング22の渦巻き方向外側の端末部の一例である。引っ掛け壁37は、外側端末部22bが引っ掛けられる引っ掛け部の一例である。
【0034】
内側端末部22aは、例えば、ボス26に形成された引っ掛け溝31aに引っ掛けられることによって、ボス26に接続されている。外側端末部22bは、例えば、引っ掛け壁37に引っ掛けられることによって、引っ掛け壁37に接続されている。外側端末部22bが引っ掛け壁37で折り返される方向は、内側端末部22aが引っ掛け溝31aで折り返される方向とは逆向きである。引っ掛け壁37は、スプリングケース33の外周部の一例である。引っ掛け壁37は、スプリングケース33の外周壁28の一部でもよいし、外周壁28とは別の部分でもよい。
【0035】
図4は、スパイラルスプリング22の巻き部分がスプリングケース33の外側に偏倚した弛緩状態(つまり、
図3が示す状態)でのラチェット27とパウル36との位置関係の一例を示す図である。
図4は、スプリングケース33がラチェット27及びパウル36の爪部35を収容する形態を
図2に示される矢視Aで透過的且つ模式的に示している。
【0036】
パウル36は、
図3及び
図4に示されるように、引っ掛け壁37と爪部35とを有し、スプリングケース33に設けられている。パウル36は、スパイラルスプリングの外寄り部分にスプリングケースの内側に向けて押されることで、スプールの回転軸と当該スプリングケースとを連結する連結部の一例である。引っ掛け壁37は、スパイラルスプリング22の外寄り部分にスプリングケース33の内側に向けて押される被押部の一例である。爪部35は、シャフト20a及びボス26と一体に回転するラチェット27の外歯27aと噛み合い可能な部位である。パウル36は、底壁29に位置が固定された転回軸34を中心に転回する。転回軸34は、底壁29に対して直角に延伸するように底壁29に設けられている。
図2には、転回軸34が底壁29を貫通する形態が例示されている。
【0037】
図5は、巻き部分がスプリングケース33の内側に偏倚した巻き上げ状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す図である。
図5は、スプリングケース33がスパイラルスプリング22を収容する形態を
図2に示される矢視Aで透過的且つ模式的に示している。
図6は、スパイラルスプリング22の巻き部分がスプリングケース33の内側に偏倚した巻き上げ状態(つまり、
図5が示す状態)でのラチェット27とパウル36との位置関係の一例を示す図である。
図6は、スプリングケース33がラチェット27及びパウル36の爪部35を収容する形態を
図2に示される矢視Aで透過的且つ模式的に示している。
【0038】
例えば、スプリングケース33の回転が固定された状態で、スプール20がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、シャフト20aがスパイラルスプリング22の巻き上げ方向Bに回転する。これにより、スパイラルスプリング22は、
図3の状態から
図5の状態に遷移するように、スプリングケース33の内側に向けて移動する。
【0039】
巻き部分がスプリングケース33の内側に偏倚した巻き上げ状態(
図5の状態)のスパイラルスプリング22を更に巻き上げる力が強まると、当該スパイラルスプリング22の外寄り部分をスプリングケース33の内側に寄せる力が強まる。スパイラルスプリング22の外寄り部分には、外側端末部22bが含まれる。当該スパイラルスプリング22の外寄り部分をスプリングケース33の内側に寄せる力が強まると、当該外寄り部分が引っ掛かる引っ掛け壁37は、当該外寄り部分にスプリングケース33の内側に向けて押される。引っ掛け壁37は、当該外寄り部分にスプリングケース33の内側に向けて押されると、転回軸34を中心に爪部35とともにスプリングケース33の内側に向けて転回するので、爪部35がラチェット27の外歯27aと噛み合う。これにより、シャフト20aとスプリングケース33とが、スパイラルスプリング22を介さずにラチェット27を介して、パウル36により連結される。
【0040】
このように、シャフト20aとスプリングケース33とがパウル36を介して連結されることで、シャフト20aとスプリングケース33とが一体に同一方向に回転するので、スパイラルスプリング22を更に巻き上げる力の強まりを抑制することができる。したがって、巻き上げ状態のスパイラルスプリング22の外側端末部22bに入る過剰な負荷を低減することができる。その結果、例えば、外側端末部22bに入る過剰な負荷によって外側端末部22bが引っ掛け壁37から外れることを防止することができる。
【0041】
スパイラルスプリング22の外寄り部分は、引っ掛け壁37をスプリングケース33の内側に向けて押す。図示の形態では、スパイラルスプリング22の外寄り部分のうち、スパイラルスプリング22の最も外側の巻き部分が、引っ掛け壁37をスプリングケース33の内側に向けて押す。スパイラルスプリング22の最も外側の巻き部分が、引っ掛け壁37をスプリングケース33の内側に向けて押すことにより、スパイラルスプリング22の付勢力を発生させるためのスパイラル長を最大限確保することができる。しかし、スパイラルスプリング22の外寄り部分のうち、スパイラルスプリング22の最も外側の巻き部分から少し内側の巻き部分(例えば、最も外側の巻き部分から一巻き内側の巻き部分)が、引っ掛け壁37をスプリングケース33の内側に向けて押してもよい。
【0042】
<第2の実施形態>
図7は、リトラクタ3Dの構成の一例を模式的に示す図である。リトラクタ3Dは、
図1に示されたリトラクタ3の一例である。リトラクタ3Dは、ベースフレーム17と、スプール20と、スプリングユニット75とを備える。なお、
図2では、スプリングユニット75の一部の断面形状が示されている。
【0043】
スプール20は、ベースフレーム17に回転可能に支持されてシートベルト4を巻き取る。スプール20は、シートベルト4を巻き取る回転部材である。スプール20の回転軸は、シャフト20aと、シャフト20aの一端に固定されたブッシュ81とを含んで構成される。
【0044】
ブッシュ81は、円筒状のボス86と、フランジ部85とを有する。ボス86とフランジ部85とは一体に形成されている。シャフト20aは、ボス86の中央部に形成された貫通孔とフランジ部85の中央部に形成された貫通孔とを貫通する。ボス86もフランジ部85も、シャフト20aに対して回転不能に固定されている。
【0045】
スプリングユニット75は、ブッシュ81と、スパイラルスプリング22と、スプリングケース83と、パウル96と、ユニットカバー90とを有する。
【0046】
スパイラルスプリング22は、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に付勢する弾性体の一例である。スパイラルスプリング22は、スプール20に一体回転可能に取り付けられたブッシュ81のボス86に接続された内側端末部と、スプリングケース83の外周壁88に接続された外側端末部とを有し、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に常時付勢する。
【0047】
スプリングケース83は、スプール20の回転軸を中心に回転可能に設けられ、スパイラルスプリング22を収容する。スプリングケース83は、円形の底壁89と、底壁89の外周縁から底壁89の法線方向に突き出る外周壁88とを有する。底壁89の中央部には、ボス86が貫通する貫通孔が形成されている。スプリングケース83は、ボス86に対して回転可能にボス86の周りに配置されている。
【0048】
スプリングケース83は、底壁89に対してスプール20側の収容部にフランジ部85を収容し、底壁89に対してスプール20とは反対側の収容部にスパイラルスプリング22を収容する。
【0049】
ユニットカバー90は、スプリングケース83に収納されたフランジ部85及びスパイラルスプリング22をスプリングケース83と共に覆う。ユニットカバー90は、シャフト20aを支える軸受を有する。
【0050】
図8は、巻き部分がスプリングケース83の内側に偏倚した巻き上げ状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す図である。
図8は、スプリングケース83がスパイラルスプリング22を収容する形態を
図7に示される矢視Cで透過的且つ模式的に示している。
【0051】
スパイラルスプリング22は、シャフト20aに対して回転不能に固定されたボス86に接続された内側端末部22aと、スプリングケース33の外周部に位置する引っ掛け壁98に接続された外側端末部22bとを有する。引っ掛け壁98は、外側端末部22bが引っ掛けられる引っ掛け部の一例である。
【0052】
内側端末部22aは、例えば、ボス86に形成された引っ掛け溝81aに引っ掛けられることによって、ボス26に接続されている。外側端末部22bは、例えば、引っ掛け壁98に引っ掛けられることによって、引っ掛け壁98に接続されている。外側端末部22bが引っ掛け壁98で折り返される方向は、内側端末部22aが引っ掛け溝81aで折り返される方向とは逆向きである。引っ掛け壁98は、スプリングケース33の外周部の一例である。引っ掛け壁98は、スプリングケース83の外周壁88の一部でもよいし、外周壁88とは別の部分でもよい。
【0053】
図9は、スパイラルスプリング22の巻き部分がスプリングケース83の内側に偏倚した巻き上げ状態(つまり、
図8が示す状態)でのラチェット87とパウル96との位置関係の一例を示す図である。
図9は、スプリングケース83がフランジ部85及びパウル96の爪部95を収容する形態を
図7に示される矢視Cで透過的且つ模式的に示している。
【0054】
パウル96は、
図8及び
図9に示されるように、引っ掛けピン97と爪部95とを有し、フランジ部85に設けられている。パウル96は、スパイラルスプリングの内寄り部分にスプリングケースの外側に向けて押されることで、スプールの回転軸と当該スプリングケースとを連結する連結部の一例である。引っ掛けピン97は、スパイラルスプリング22の内寄り部分にスプリングケース83の外側に向けて押される被押部の一例である。爪部95は、スプリングケース83と一体に回転するラチェット87の内歯87aと噛み合い可能な部位である。ラチェット87は、スプリングケース83の底壁89に対してスプール20側の外周壁88に形成された部位である。内歯87aは、外周壁88の内面に形成されている。
【0055】
パウル96は、シャフト20a及びボス86と一体に回転するフランジ部85に位置が固定された転回軸94を中心に転回する。転回軸94は、フランジ部85に対して直角に延伸するようにフランジ部85に設けられている。
図7及び
図8には、引っ掛けピン97が底壁89に形成されたガイド孔89aを貫通する形態が例示されている。ガイド孔89aは、湾曲した孔形状を有する。
【0056】
図10は、巻き部分がスプリングケース83の外側に偏倚した弛緩状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す図である。
図10は、スプリングケース83がスパイラルスプリング22を収容する形態を
図7に示される矢視Cで透過的且つ模式的に示している。
図11は、スパイラルスプリング22の巻き部分がスプリングケース83の外側に偏倚した弛緩状態(つまり、
図10が示す状態)でのラチェット87とパウル96との位置関係の一例を示す図である。
図11は、スプリングケース83がフランジ部85及びパウル96の爪部95を収容する形態を
図7に示される矢視Cで透過的且つ模式的に示している。
【0057】
例えば、スプリングケース83の回転が固定された状態で、スプール20がシートベルト4の巻き取り方向に回転すると、シャフト20aがスパイラルスプリング22の弛緩方向(解放方向)Eに回転する。これにより、スパイラルスプリング22は、
図8の状態から
図10の状態に遷移するように、スプリングケース83の外側に向けて移動する。
【0058】
巻き部分がスプリングケース83の外側に偏倚した弛緩状態(
図10の状態)のスパイラルスプリング22を更に弛緩させる力が強まると、当該スパイラルスプリング22の内寄り部分をスプリングケース83の外側に寄せる力が強まる。スパイラルスプリング22の内寄り部分には、内側端末部22aが含まれる。当該スパイラルスプリング22の内寄り部分をスプリングケース83の外側に寄せる力が強まると、当該内寄り部分が引っ掛かる引っ掛けピン97は、当該内寄り部分にスプリングケース83の外側に向けて押される。引っ掛けピン97は、当該内寄り部分にスプリングケース83の外側に向けて押されると、転回軸94を中心に爪部95とともにスプリングケース83の外側に向けて転回するので、爪部95がラチェット87の内歯87aに噛み合う。これにより、シャフト20aとスプリングケース83とが、スパイラルスプリング22を介さずにラチェット87を介して、パウル96により連結される。
【0059】
このように、シャフト20aとスプリングケース83とがパウル96を介して連結されることで、シャフト20aとスプリングケース83とが一体に同一方向に回転するので、スパイラルスプリング22を更に弛緩させる力の強まりを抑制することができる。したがって、弛緩状態のスパイラルスプリング22の内側端末部22aに入る過剰な負荷を低減することができる。その結果、例えば、内側端末部22aに入る過剰な負荷によって内側端末部22aが引っ掛け溝81aから外れることを防止することができる。
【0060】
スパイラルスプリング22の内寄り部分は、引っ掛けピン97をスプリングケース83の外側に向けて押す。図示の形態では、スパイラルスプリング22の内寄り部分のうち、スパイラルスプリング22の最も内側の巻き部分が、引っ掛けピン97をスプリングケース83の外側に向けて押す。スパイラルスプリング22の最も内側の巻き部分が、引っ掛けピン97をスプリングケース83の外側に向けて押すことにより、スパイラルスプリング22の付勢力を発生させるためのスパイラル長を最大限確保することができる。しかし、スパイラルスプリング22の内寄り部分のうち、スパイラルスプリング22の最も内側の巻き部分から少し外側の巻き部分(例えば、最も内側の巻き部分から一巻き外側の巻き部分)が、引っ掛けピン97をスプリングケース83の外側に向けて押してもよい。
【0061】
<第3の実施形態>
図12は、リトラクタ3Aの構成の一例を示す斜視図である。リトラクタ3Aは、
図1に示されたリトラクタ3の一例である。
図12において、リトラクタ3Aは、例えば、ベースフレーム17と、ベースフレーム17に対して回転可能に支持されてシートベルト4を巻き取るスプール20とを備える。
【0062】
図13は、リトラクタ3Aの構成の一例を示す正面図である。
図14は、リトラクタ3Aの構成の一例を示す側面図である。
【0063】
リトラクタ3Aは、スプール20と、スパイラルスプリング22と、スプリングケース33と、第1の回転ディスク38と、第1の回転検知部40と、第2の回転ディスク58と、第2の回転検知部60と、演算部73と、モータ24とを備える。
【0064】
スプール20は、シートベルト4を巻き取る回転部材である。スプール20の回転軸は、シャフト20aと、シャフト20aの一端に固定されたブッシュ21とを含んで構成される。
【0065】
スパイラルスプリング22は、スプール20の回転軸に接続された一端22aと、スプリングケース33の外周壁に接続された他端とを有し、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に付勢する弾性体の一例である。スパイラルスプリング22は、スプール20に一体回転可能に取り付けられたブッシュ21に一端22aが接続されて、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に常時付勢する。スパイラルスプリング22の一端22aは、ブッシュ21に形成された引っ掛け溝21aに引っ掛けられている。
【0066】
スプリングケース33は、スパイラルスプリング22の他端が接続された外周壁を有し、スパイラルスプリング22を当該外周壁の内側に収容する。スプリングケース33は、スプール20の回転軸を中心にベースフレーム17に対して回転可能に設けられている。つまり、スプリングケース33は、スプール20の回転軸と同軸に回転可能に設けられている。スプリングケース33の外周壁には、外歯33aが形成されている。
【0067】
第1の回転ディスク38は、ベースフレーム17に対して回転可能に取り付けられている。第1の回転ディスク38は、円環状の第1のマグネット保持部材42と、第1のマグネット保持部材42に一体回転可能にかつ円環状に配設された第1のマグネット41とを有している。円環状の第1のマグネット41は、N極マグネット41aとS極マグネット41bとが第1のマグネット41の円周方向に交互に配設されて形成されている。N極マグネット41aの着磁幅が第1のマグネット41の円周方向に所定の第1の角度幅に設定されているとともに、S極マグネット41bの着磁幅が第1のマグネット41の円周方向に所定の第2の角度幅に設定されている。第2の角度幅は、第1の角度幅と同じでも違ってもよい。第1のマグネット保持部材42は、第1のマグネット保持部材42と同心に配設された外歯43a(
図14参照)を有する筒状の第1の被伝動ギア43を一体に有している。第1のマグネット41は、第1の被伝動ギア43の回転に伴って、第1の被伝動ギア43と一体に第1の被伝動ギア43の回転軸と同軸に回転する。
【0068】
スプール20の回転軸のシャフト20aには、伝動ギア44がシャフト20aと一体回転可能にかつ同心に取り付けられている。伝動ギア44の外周部には外歯44aが形成されている。第1の被伝動ギア43の外歯43aは、伝動ギア44の外歯44aと噛み合っている。
【0069】
第1の回転検知部40は、スプール20の回転を検知する回転検知部の一例である。第1の回転検知部40は、例えば、第1のマグネット41の回転を検知することによってスプール20の回転を検知する。第1の回転検知部40は、例えば、第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bと有する。第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bは、それぞれ、第1のマグネット41の回転に伴って変化する磁気を検知する。第1の磁気検知部40a及び第2の磁気検知部40bの具体例として、ホール素子が挙げられる。ホール素子は、ホール効果によって磁気変化を検出する半導体素子の一例である。
【0070】
スプール20がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプール20の回転軸と一体に回転する伝動ギア44が回転する。伝動ギア44が回転すると、伝動ギア44の外歯44aと噛み合っている外歯43aが形成された第1の被伝動ギア43が回転するので、第1の回転ディスク38の第1のマグネット41が回転する。つまり、スプール20がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプール20の回転に連動して、シートベルト4の引き出し方向に対応する回転方向に第1のマグネット41が回転する。
【0071】
第1のマグネット41が回転すると、第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bは、それぞれ、N極マグネット41aを検知しているときとS極マグネット41bを検知しているときとで位相が反転する検知信号を出力する。また、第1の磁気検知部40aの配置位置は、第2の磁気検知部40bの配置位置と異なるので、第1の磁気検知部40aから出力される検知信号の位相は、第2の磁気検知部40bから出力される検知信号の位相に対して所定量ずれている。
【0072】
演算部73は、第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bのそれぞれから出力された検知信号の位相の反転回数をカウントすることで、スプール20の回転量(回転位置)を検知する。また、演算部73は、第1の磁気検知部40aから出力された検知信号と第2の磁気検知部40bから出力された検知信号との間の位相のずれ方に基づいて、スプール20の回転方向がシートベルト4の引き出し方向であるか、シートベルト4の巻き取り方向であるかを判断する。
【0073】
第2の回転ディスク58は、ベースフレーム17に対して回転可能に取り付けられている。第2の回転ディスク58は、円環状の第2のマグネット保持部材62と、第2のマグネット保持部材62に一体回転可能にかつ円環状に配設された第2のマグネット61とを有している。円環状の第2のマグネット61は、N極マグネット61aとS極マグネット61bとが第2のマグネット61の円周方向に交互に配設されて形成されている。N極マグネット61aの着磁幅が第2のマグネット61の円周方向に所定の第3の角度幅に設定されているとともに、S極マグネット61bの着磁幅が第2のマグネット61の円周方向に所定の第4の角度幅に設定されている。第4の角度幅は、第3の角度幅と同じでも違ってもよい。第2のマグネット保持部材62は、第2のマグネット保持部材62と同心に配設された外歯63aを有する筒状の第2の被伝動ギア63を一体に有している。第2のマグネット61は、第2の被伝動ギア63の回転に伴って、第2の被伝動ギア63と一体に第2の被伝動ギア63の回転軸と同軸に回転する。
【0074】
第2の被伝動ギア63の外歯63aは、スプリングケース33の外歯33aと噛み合っている。
【0075】
第2の回転検知部60は、スプリングケース33の回転を検知する回転検知部の一例である。第2の回転検知部60は、例えば、第2のマグネット61の回転を検知することによってスプリングケース33の回転を検知する。第2の回転検知部60は、例えば、第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bと有する。第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bは、それぞれ、第2のマグネット61の回転に伴って変化する磁気を検知する。第3の磁気検知部60a及び第4の磁気検知部60bの具体例として、ホール素子が挙げられる。ホール素子は、ホール効果によって磁気変化を検出する半導体素子の一例である。
【0076】
スプリングケース33がモータ24の駆動によりシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプリングケース33の外歯33aと噛み合っている外歯63aが形成された第2の被伝動ギア63が回転する。第2の被伝動ギア63の回転により、第2の回転ディスク58の第2のマグネット61が回転する。つまり、スプリングケース33がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプリングケース33の回転に連動して、シートベルト4の引き出し方向に対応する回転方向に第2のマグネット61が回転する。
【0077】
第2のマグネット61が回転すると、第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bは、それぞれ、N極マグネット61aを検知しているときとS極マグネット61bを検知しているときとで位相が反転する検知信号を出力する。また、第3の磁気検知部60aの配置位置は、第4の磁気検知部60bの配置位置と異なるので、第3の磁気検知部60aから出力される検知信号の位相は、第4の磁気検知部60bから出力される検知信号の位相に対して所定量ずれている。
【0078】
演算部73は、第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bのそれぞれから出力された検知信号の位相の反転回数をカウントすることで、スプリングケース33の回転量(回転位置)を検知する。また、演算部73は、第3の磁気検知部60aから出力された検知信号と第4の磁気検知部60bから出力された検知信号との間の位相のずれ方に基づいて、スプリングケース33の回転方向がシートベルト4の引き出し方向であるか、シートベルト4の巻き取り方向であるかを判断する。
【0079】
演算部73は、第1の回転検知部40により回転が検知されたスプール20の回転量と、第2の回転検知部60により回転が検知されたスプリングケース33の回転量との差(以下、差Dと称する)を演算し、差Dの演算結果を出力する。演算部73の具体例として、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などが挙げられる。
【0080】
ECU100(
図1参照)は、演算部73によって得られた差Dの演算結果をワイヤハーネス101を介して取得する。ECU100は、取得した差Dの演算結果に応じて、モータ24の駆動を制御する。
【0081】
ECU100がこのようにモータ24の駆動を制御することにより、モータ24は、差Dに応じてスプリングケース33を回転させる。例えば、差Dが大きくなるほど、シートベルト4の張力は変化(例えば、増加)する。よって、モータ24が差Dに応じてスプリングケース33を回転させることで、モータ24はシートベルト4の張力を連続的且つ無段階に高精度に調整できる。
【0082】
第1の実施形態(
図2〜
図6)及び第2の実施形態(
図7〜
図11)の構成は、第3の実施形態(
図12〜
図14)に適用することが可能である。例えば、シャフト20aとスプリングケースとがパウルにより連結されることで、モータ24は、スパイラルスプリング22を介さずにスプール20をダイレクトに回転させることができる。これにより、スパイラルスプリング22によって発生可能な張力よりも大きな張力をシートベルト4に発生させることができる。
【0083】
以上、シートベルトリトラクタを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。