【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
【0046】
本発明の温間又は熱間鍛造用潤滑剤の試験の種類及び条件を以下に示す。
【0047】
(1)付着性試験
付着性試験機を用いて、下記に示すような試験条件にて、水で5倍に希釈した温間又は熱間鍛造用潤滑剤の付着性試験を行った。
【表1】
付着性試験において、付着量が、HF5582(潤滑剤;ユシロ化学工業(株)製)の付着量である51g以上である場合を〇、HF5582の付着量である51gを下回る場合を×として評価した。
【0048】
(2)冷却性試験
冷却性試験機を用いて、500℃に加熱した鋼板に、潤滑剤40mlを塗布して、温度降下後の鋼板の温度を測定し、以下の式に示すように、鋼板降下温度を測定した。
鋼板降下温度=500℃−最低鋼板温度
試験条件を以下に示す。
【表2】
水の鋼板降下温度120℃を5%以上下回る場合を×とした。
なお、冷却性の評価は、付着量が同等になるように潤滑剤を3〜13倍の希釈倍率で希釈して行った。
【0049】
(3)非堆積性試験
潤滑剤を鋼板に塗布し、鋼板に付着した膜の硬さを15分後に計測した。
計測方法を以下に示す。
鋼板が水平であることを装置付属の水準器で確認する。
旧JIS K5400鉛筆引っかき試験に従い、6B〜8Hの鉛筆(三菱鉛筆Uni)を使用して、皮膜の硬度を測定する。計測し終わった鋼板を500℃に加熱したヒーターで10分間加熱した後,もう一度硬度を測定する。このとき、
・加熱前と加熱後の硬度に差が認められない場合や、加熱後に硬度が高くなる場合、
・加熱前の硬度がイソバン−06を使用した既存製品(HF5582)よりも硬度が高い場合、のうち、どれか一方を満たす場合は○、両方満たす場合を×とする。
【0050】
[実施例1]
イソフタル酸塩25質量%、カルボキシメチルセルロースアンモニウム(CMC−NH4)(1%粘度700〜1000mPa.s;ダイセルファインケム(株)製)1質量%、及びヒドロキシエチルセルロース(三晶(株)製)1質量%、及びその他の任意成分に対して、水を合計100質量%となるように配合して温間又は熱間鍛造用潤滑剤を調製した。
付着量は90.2g/m
2であり、非堆積性試験の結果は〇であった。
【0051】
[実施例2〜10]
実施例1において、成分(a)を表1に示す種類及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、温間又は熱間鍛造用潤滑剤を調製した。
付着量は25.8〜83.4g/m
2であり、成分(a)の配合量の少ない実施例3及び10は付着量が少ない傾向にあることがわかった。
実施例1〜10の結果を表1及び
図1に示す。
非堆積性試験の結果はいずれも〇であった。
【0052】
[比較例1〜8]
実施例1において、成分(a)を表2に示す種類又は配合量に変更するとともに、イソバン06(イソブチレン−無水マレイン酸共重合体塩;(株)クラレ)を使用した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤組成物を調製した。
比較例1〜8の結果を表2及び
図1に示す。
付着量は41.7〜67.6g/m
2であったが、非堆積性試験結果はいずれも×であり、実施例1〜10と比べて非堆積性の面で劣ることがわかった。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
[実施例11]
実施例1において、成分(b’)を表3に示す種類に変更した以外は、実施例1と同様にして、温間又は熱間鍛造用潤滑剤を調製した。
結果を表3及び
図2に示す。
【0056】
[実施例12]
実施例1において、成分(b’)を表3に示す種類及び配合量に変更し、成分(b)を表3に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤組成物を調製した。
結果を表3及び
図2に示す。
成分(b’)を5重量部にすると、非堆積性が低下する傾向にあることがわかった。
【0057】
[比較例9]
実施例1において、成分(b’)を表3に示す配合量に変更し、成分(b)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤組成物を調製した。
結果を表3及び
図2に示す。
【0058】
[比較例10]
実施例1において、成分(b’)を使用せず、成分(b)を表3に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤組成物を調製した。
結果を表3及び
図2に示す。
比較例10では、成分(b’)を使用しなかったため、十分な付着量が得られなかった。
【0059】
[比較例11]
成分(a)〜(c)に代えて、HF5582(潤滑剤;ユシロ化学工業(株)製)を使用した。
結果を表3及び
図2に示す。
付着量及び加工後の非堆積性ともに、実施例1及び11に比べて劣る傾向にあった。
【0060】
[比較例12]
実施例1において、成分(b’)を表3に示す配合量に変更し、成分(b)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤組成物を調製した。
結果を表3及び
図2に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
[実施例13〜15]
実施例1において、成分(b’)を表4に示す種類に変更した以外は、実施例1と同様にして、温間又は熱間鍛造用潤滑剤を調製した。
実施例13〜15の結果を表4及び
図3に示す。
【表6】
【0063】
[実施例16〜18]
実施例1において、成分(b’)を表5に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、温間又は熱間鍛造用潤滑剤を調製した。
実施例16〜18の結果を表5及び
図4に示す。
CMC−NH4の配合量が0.1〜3質量%に増加するのに伴い、付着量の向上が認められた。よって、CMC−NH4の配合量は0.1〜3質量%が好ましいことが示唆された。
【0064】
【表7】
【0065】
[実施例19〜21]
実施例1において、成分(b)を表6に示す種類及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、温間又は熱間鍛造用潤滑剤を調製した。
実施例19〜21の結果を表6に示す。
【0066】
[比較例13]
実施例1において、成分(b)を表6に示す種類及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤組成物を調製した。
比較例13の結果を表6に示す。
【0067】
[比較例14]
実施例1において、成分(b’)を表6に示す量に変更し、成分(b)を表6に示す材料を使用した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤組成物を調製した。
比較例14の結果を表6に示す。
【0068】
表6より、イミド化イソブチレン無水マレイン酸共重合体(実施例19)、ポリビニルピロリドン(PVP)(実施例20)及びポリビニルアルコール(PVA)(実施例21)を用いた場合、潤滑剤は非堆積性に優れることがわかった。一方、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩(比較例13)及びポリアクリル酸塩(比較例14)を用いた場合、潤滑剤組成物は非堆積性に劣っていた。
【0069】
なお、参考のため、
図5に、イミド化イソブチレン無水マレイン酸共重合体(イミド化イソバン)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体ナトリウム(イソバン−06)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、ポリアクリル酸ナトリウム及びヒドロキシエチルセルロースの熱重量測定(TG)による重量減少率を示す。
TGの測定条件は以下のとおりである。
使用装置名: TG−DTA(株式会社日立ハイテクサイエンス製 STA7200)
<測定条件>
試料量:3.0mg
測定温度範囲:室温〜600℃
昇温速度:20℃/min
雰囲気:Air
流量:300ml/min
【0070】
実施例1及び19〜21で用いるヒドロキシエチルセルロース、イミド化イソブチレン無水マレイン酸共重合体(イミド化イソバン)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)の500℃での分解残渣は50%未満であるのに対して、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩(比較例13)及びポリアクリル酸塩(比較例14)の500℃での分解残渣は50%超であり、非堆積性に劣る原因となることがわかった。
【0071】
【表8】