特許第6773500号(P6773500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773500
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】水検知シート
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   G01N21/59 D
   G01N21/59 K
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-185869(P2016-185869)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48971(P2018-48971A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冠 修平
(72)【発明者】
【氏名】森高 紘平
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕信
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−312700(JP,A)
【文献】 特開2011−156384(JP,A)
【文献】 特開昭60−201237(JP,A)
【文献】 特開2001−329132(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0075479(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/59
A61F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の状態の水検知シートの全光線透過率が、70%以上であり、
前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能であり、
厚みが0.1mm以上であり、
前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が小さくなる、水検知シート。
【請求項2】
吸水と脱水とを繰り返したときに、全光線透過率が可逆的に変化可能であり、
吸水状態と脱水状態とを検知可能である、請求項1に記載の水検知シート。
【請求項3】
塩化ビニル系樹脂シートである、請求項1又は2に記載の水検知シート。
【請求項4】
第1の状態の水検知シートの全光線透過率が、70%以上であり、
前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能であり、
厚みが0.1mm以上であり、
吸水と脱水とを繰り返したときに、全光線透過率が可逆的に変化可能であり、
吸水状態と脱水状態とを検知可能である、水検知シート。
【請求項5】
第1の状態の水検知シートの全光線透過率が、70%以上であり、
前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能であり、
厚みが0.1mm以上であり、
塩化ビニル系樹脂シートである、水検知シート。
【請求項6】
前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、下記式(1)で表される吸水率が1重量%以上変化可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水検知シート。
吸水率(重量%)=[((吸水後の水検知シートの重量))−(第1の状態の水検知シートの重量)/(第1の状態の水検知シートの重量)]×100 (1)
【請求項7】
前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、下記式(1)で表される吸水率が少なくとも1重量%変化したときに、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水検知シート。
吸水率(重量%)=[((吸水後の水検知シートの重量))−(第1の状態の水検知シートの重量)/(第1の状態の水検知シートの重量)]×100 (1)
【請求項8】
前記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、下記式(1)で表される吸水率が1重量%以上変化可能である、請求項1〜のいずれか1項に記載の水検知シート。
吸水率(重量%)=[((吸水後の水検知シートの重量))−(第1の状態の水検知シートの重量)/(第1の状態の水検知シートの重量)]×100 (1)
【請求項9】
前記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能である、請求項1〜のいずれか1項に記載の水検知シート。
【請求項10】
前記第1の状態が、23℃、湿度50%の環境下で7日間乾燥させた状態である、請求項1〜のいずれか1項に記載の水検知シート。
【請求項11】
前記第1の状態が、水の含有量が0.5重量%以下である状態である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水検知シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水可能な水検知シートに関する。
【背景技術】
【0002】
駅、地下歩道、及びトンネル等の施設では、漏水の発生が問題となっている。駅、地下歩道、及びトンネル等の施設で漏水が発生すると、施設の内部に水が入り込むことがあり、施設の利用者等に水が悪影響を及ぼす場合がある。また、漏水を放置すると、トンネル等の構造体においては、鉄筋腐食等が発生する危険性があり、該構造体の劣化が生じる可能性がある。
【0003】
このため、トンネル等の構造体において、漏水が発生した場合には、早期に発見し、適切な補修等の処置をする必要がある。
【0004】
下記の特許文献1には、導電部材を有する2つの構造材と、これらの構造材を間隔をおいて埋設する検知対象物と、上記構造材の一方に設けられた導電部材に電圧を印加する定電圧電源と、上記検知対象物の漏水の有無を検知する対象物特性検知手段とを備える漏水検知装置が開示されている。
【0005】
また、駅、地下歩道、及びトンネル等の施設に用いられる物品ではないが、従来、水分を含む物質を検知可能な物品が幾つか知られている。下記の特許文献2には、尿及び汗等の水分を含む身体からの排泄物と接触することにより変色するインジケーターを備える吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−9905号公報
【特許文献2】特開2016−112241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のような従来の漏水検知装置では、発生した漏水を早期に発見することができるものの、常時、電源が必要である。また、上記のような装置では、該装置を設置した後に、電源交換等の定期的なメンテナンスを実施する必要がある。
【0008】
なお、特許文献2に記載のような従来の方法では、上記インジケーターとして、pH指示薬と酸化化合物との混合物等が用いられている。上記インジケーターでは、検知対象が尿及び汗等の水分を含む身体からの排泄物であれば、インジケーターの変色により上記排泄物を検知することができる。しかしながら、上記インジケーターでは、検知対象が水であるとインジケーターの変色が起きず、水を検知することが困難である。
【0009】
本発明の目的は、目視により水の存在を容易に判別できる水検知シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、第1の状態の水検知シートの全光線透過率が、70%以上であり、前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能であり、厚みが0.1mm以上である、水検知シートが提供される。
【0011】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、下記式(1)で表される吸水率が1重量%以上変化可能である。
【0012】
吸水率(重量%)=[((吸水後の水検知シートの重量))−(第1の状態の水検知シートの重量)/(第1の状態の水検知シートの重量)]×100 (1)
【0013】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記式(1)で表される吸水率が少なくとも1重量%変化したときに、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能である。
【0014】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記式(1)で表される吸水率が1重量%以上変化可能である。
【0015】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて前記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能である。
【0016】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記第1の状態が、23℃、湿度50%の環境下で7日間させた状態である。
【0017】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記第1の状態が、水の含有量が0.5重量%以下である状態である。
【0018】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が小さくなる。
【0019】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、吸水と脱水とを繰り返したときに、全光線透過率が可逆的に変化可能であり、吸水状態と脱水状態とを検知可能である。
【0020】
本発明に係る水検知シートのある特定の局面では、前記水検知シートが、塩化ビニル系樹脂シートである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る水検知シートは、第1の状態の水検知シートの全光線透過率が、70%以上であり、上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能であり、厚みが0.1mm以上であるので、目視により水の存在を容易に判別できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
(水検知シート)
本発明に係る水検知シートでは、第1の状態の水検知シートの全光線透過率が、70%以上である。本発明に係る水検知シートでは、上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が5%以上変化可能である。本発明に係る水検知シートでは、厚みが0.1mm以上である。
【0024】
本発明に係る水検知シートでは、上述した構成が備えられているので、目視により水の存在を容易に判別できる。例えば、トンネル等の構造体の補修等において、本発明に係る水検知シートを用いた場合には、該構造体の目視による定期的な点検を実施することで、補修後に漏水が発生しても、目視点検により早期に漏水を発見することができる。本発明に係る水検知シートは、外部電源等を必要とせず、定期的なメンテナンスを過度に実施する必要がない。また、本発明に係る水検知シートは、水と接触することで全光線透過率が変化して、例えば不透明化又は半透明化するので、目視による点検精度の向上に寄与する。なお、半透明化とは、透明性が低下することをいう。上記水検知シートに吸水される水分は、水溶液の状態であってもよい。上記水検知シートは、水溶液中の水を検知してもよい。
【0025】
上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率は、70%以上である。透明性をより一層良好にする観点からは、第1の状態の水検知シートの全光線透過率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上である。
【0026】
上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率は、透明性の指標の1つである。上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率が70%以上であると、上記水検知シートが水と接触して不透明化又は半透明化した際に、上記水検知シートの変化を目視でより一層容易に認識することができる。透明性をより一層良好にする観点からは、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率は、高い方が好ましい。
【0027】
上記第1の状態は、水検知シートの任意の1つの状態であり、本発明においては、第1の状態と、該第1の状態の水検知シートに吸水させた状態との2つの状態において、全光線透過率が5%以上変化可能である性質を水検知シートが有することで、該全光線透過率の変化時に、目視により水の存在を容易に判別できる。
【0028】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態は、23℃、湿度50%の環境下で7日間乾燥させた状態であることが好ましい。この乾燥条件で乾燥を行うと、初期の吸水性が均一な水検知シートが得られやすい。
【0029】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態は、水の含有量が0.5重量%以下である状態であることが好ましく、水の含有量が0.3重量%以下である状態であることがより好ましく、水の含有量が0.1重量%以下である状態であることが特に好ましい。
【0030】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が、5%以上変化可能であることが好ましく、10%以上変化可能であることがより好ましく、20%以上変化可能であることが特に好ましい。
【0031】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、下記式(1)で表される吸水率が少なくとも1重量%変化したときに、第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が、5%以上変化可能であることが好ましく、10%以上変化可能であることがより好ましく、20%以上変化可能であることが特に好ましい。
【0032】
吸水率(重量%)=[((吸水後の水検知シートの重量))−(第1の状態の水検知シートの重量)/(第1の状態の水検知シートの重量)]×100 (1)
【0033】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記吸水率が5重量%変化するまでに、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が上記下限以上変化することがより好ましく、上記吸水率が3重量%変化するまでに、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が上記下限以上変化することがより好ましく、上記吸水率が1重量%変化するまでに、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が上記下限以上変化することがさらに好ましい。
【0034】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が、5%以上変化可能であることが好ましく、10%以上変化可能であることがより好ましく、20%以上変化可能であることが特に好ましい。
【0035】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記式(1)で表される吸水率が少なくとも1重量%変化したときに、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が、5%以上変化可能であることが好ましく、10%以上変化可能であることがより好ましく、20%以上変化可能であることが特に好ましい。
【0036】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、吸水後の上記水検知シートの全光線透過率は、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下である。
【0037】
吸水後の上記水検知シートの全光線透過率は、透明性の指標の1つである。吸水後の上記水検知シートの全光線透過率が、80%以下であると、上記水検知シートが水と接触して不透明化又は半透明化した際に、上記水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別することができる。水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、吸水後の上記水検知シートの全光線透過率は、低い方が好ましい。
【0038】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態の水検知シートの全光線透過率に対して吸水後の水検知シートの全光線透過率が小さくなることが好ましい。
【0039】
上記水検知シートの厚みは、0.1mm以上である。水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記水検知シートの厚みは、好ましくは0.2mm以上である。上記水検知シートの厚みの上限は特に限定されない。上記水検知シートの厚みは、20mm以下であってもよく、10mm以下であってもよく、5mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。
【0040】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記式(1)で表される吸水率が、1重量%以上変化可能であることが好ましく、3重量%以上変化可能であることがより好ましい。
【0041】
水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて上記第1の状態の水検知シートに吸水させることで、上記式(1)で表される吸水率が、1重量%以上変化可能であることが好ましく、3重量%以上変化可能であることがより好ましい。
【0042】
上記第1の状態の水検知シートに吸水させるか、又は上記第1の状態の水検知シートを25℃で1日間水に浸漬させて上記第1の状態の水検知シートに吸水させた後に測定される上記式(1)で表される吸水率は、透明性の変化の指標である。
【0043】
上記吸水率が、1%以上であると、上記水検知シートが十分に吸水することができ、不透明化又は半透明化しやすくなる。水検知シートの変化を目視でより一層容易に判別する観点からは、上記水検知シートの上記吸水率は、高い方が好ましい。
【0044】
水検知シートの実使用性をより一層高める観点からは、上記水検知シートは、吸水と脱水とを繰り返したときに、全光線透過率が可逆的に変化可能であることが好ましい。水が一度でも吸水された経歴の判別をより一層容易にする観点からは、上記水検知シートは、吸水と脱水とを繰り返したときに、全光線透過率が不可逆的に変化可能であることが好ましい。水検知シートの実使用性をより一層高める観点からは、上記水検知シートは、吸水状態と脱水状態とを検知可能であることが好ましい。
【0045】
また、本発明に係る水検知シートの全光線透過率は以下のようにして測定できる。
【0046】
水検知シートの全光線透過率の測定方法:
「JIS7361−1 プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に従って測定した。全光線透過率の値として、1サンプルにつき三回測定した値の平均値を採用する。装置として、日本電色工業社製のHaze Meter NDH2000を用いる。
【0047】
上記水検知シートとしては、塩化ビニル系樹脂シート等が挙げられる。
【0048】
水検知シートの耐久性及び実使用性をより一層高める観点からは、上記水検知シートは、塩化ビニル系樹脂シートであることが好ましい。上記水検知シートの材料は、吸水性を示す材料であれば特に限定されない。上記材料としては、塩化ビニルモノマーに由来する構造単位と親水性モノマーに由来する構造単位とを有する塩化ビニル系共重合体等が挙げられる。
【0049】
塩化ビニル系共重合体を得るために用いる親水性モノマー:
塩化ビニルモノマーと親水性モノマーとの共重合体において、上記親水性モノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。したがって、上記水検知シートは、親水性モノマーに由来する構造単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。上記親水性モノマーを2種以上併用する場合に、2種以上の親水性モノマーが有する親水性基は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記親水性モノマーは、上記共重合体の主鎖に置換又は結合していることが好ましい。上記親水性モノマーは、上記共重合体の側鎖に置換又は結合していてもよい。上記親水性モノマーは、上記共重合体の主鎖に置換又は結合するため、(メタ)アクリロイル基、アリル基等の塩化ビニルモノマーと共重合可能な骨格を有していることが好ましい。
【0050】
上記親水性モノマーとしては、例えば、(1)非イオン性モノマー、(2)アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、イミノ基又はベタイン構造等のカチオン性基を有するビニルモノマー(以下、「(2)カチオン性モノマー」と記載することがある)、(3)カルボキシル基、スルホ基又はリン酸基等のアニオン性基を有するビニルモノマー(以下、「(3)アニオン性モノマー」と記載することがある)、及び(4)その他のモノマーが挙げられる。上記(2)カチオン性モノマー及び上記(3)アニオン性モノマーはそれぞれ、塩の形態であってもよい。
【0051】
上記(1)非イオン性モノマーの具体例としては、ビニルアルコール化合物、ヒドロキシアルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、アルキル(例えばアルキル基の総炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド、ジアルキル(例えばアルキル基の総炭素数2〜8)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニル環状アミド、アルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリル酸エステル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物であるポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するアリルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのアリルエーテル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するビニルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのビニルエーテル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するスチリルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのスチリルエーテル、及び環状アミド基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0052】
「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルとを示す。
【0053】
上記ヒドロキシアルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び上記ヒドロキシアルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリルアミドとしては、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びN−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0054】
上記多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、及びポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記多価アルコールの炭素数は好ましくは1〜8である。上記多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの炭素数は好ましくは1〜8である。上記多価アルコールはポリアルキレングリコールであることが好ましく、ポリエチレングリコールであることがより好ましい。反応性を確保するために、上記アルキレングリコールの平均重合度は好ましくは4以上、好ましくは140以下、より好ましくは100以下である。
【0055】
上記アルキル(例えばアルキル基の総炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN−イソブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0056】
上記ジアルキル(例えばアルキル基の総炭素数2〜8)(メタ)アクリルアミドとしては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0057】
上記N−ビニル環状アミドとしては、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0058】
上記アルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びn−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有する化合物に関しては、上記アルキルエーテル骨格におけるアルキル基の炭素数は好ましくは1〜20であり、上記アルキルエーテル骨格にアリール基が置換されていてもよく、上記アリールエーテル骨格におけるアリール基の炭素数は好ましくは6〜12であり、上記アリールエーテル骨格に炭素数1〜14のアルキル基が置換されていてもよい。上記アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、及びナフチル基等が挙げられる。上記アリール基は、フェニル基であることが好ましい。片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有する化合物に関しては、上記ポリアルキレングリコールにおけるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜20である。上記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールであることが好ましい。ポリエチレングリコールの水素原子が炭素数1〜18のアルキル基で置換されたポリアルキレングリコールを用いてもよい。置換されているエチレングリコール単位は、全エチレングリコール単位の50重量%以下であることが好ましい。反応性を確保するために、上記ポリアルキレングリコールの平均重合度は好ましくは4以上、好ましくは140以下、より好ましくは100以下である。上記スチリルエーテルにおけるスチリル基は、α位及びβ位の少なくとも一方が、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン化アルキル基で置換されていてもよく、芳香環上に炭素数1〜20のアルキル基があってもよい。
【0060】
上記環状アミド基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0061】
上記(1)非イオン性モノマーは、ビニルアルコール、(メタ)アクリルアミド系モノマー、ヒドロキシアルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するアリルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのアリルエーテル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するビニルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのビニルエーテル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するスチリルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのスチリルエーテル、又はN−ビニル環状アミドであることが好ましく、特に、ビニルアルコール、ヒドロキシアルキル基(例えば炭素数1〜8)を有する(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するアリルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのアリルエーテル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するビニルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのビニルエーテル、片末端にアルキルエーテル骨格又は片末端にアリールエーテル骨格を有するスチリルエーテル化合物であるポリアルキレングリコールのスチリルエーテル、又はN−ビニル環状アミドであることがより好ましい。
【0062】
水検知シートの吸水性をより一層良好にする観点からは、上記(1)非イオン性モノマーは、ポリアルキレングリコール基又は環状アミド基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール基又は環状アミド基を有する化合物を含むことが好ましい。上記ポリアルキレングリコール基の重合度は特に限定されない。
【0063】
上記(2)カチオン性モノマーの具体例としては、アミノ基を有するモノマーの酸中和物、及び、アミノ基を有するモノマーを、ハロゲン化アルキル(例えばアルキル基の総炭素数1〜22)、ハロゲン化ベンジル、アルキル(例えばアルキル基の総炭素数1〜18)もしくはアリール(例えばアリール基の総炭素数6〜24)、スルホン酸又は硫酸ジアルキル(例えばアルキル基の総炭素数2〜8)等により4級化した化合物等が挙げられる。
【0064】
上記アミノ基を有するモノマーとしては、ジアルキルアミノ基(例えばアルキル基の総炭素数2〜44)を有する(メタ)アクリル酸エステル、ジアルキルアミノ基(例えばアルキル基の総炭素数2〜44)を有する(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノ基(例えばアルキル基の総炭素数2〜44)を有するスチレン化合物、ビニルピリジン化合物、N−ビニル複素環化合物、及びビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0065】
上記ジアルキルアミノ基(例えばアルキル基の総炭素数2〜44)を有する(メタ)アクリル酸エステル及び上記ジアルキルアミノ基(例えばアルキル基の総炭素数2〜44)を有する(メタ)アクリルアミドとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びジ−t−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0066】
上記ジアルキルアミノ基(例えばアルキル基の総炭素数2〜44)を有するスチレン化合物としては、ジメチルアミノスチレン、及びジメチルアミノメチルスチレン等が挙げられる。
【0067】
上記ビニルピリジン化合物としては、2−ビニルピリジン、及び4−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0068】
上記N−ビニル複素環化合物としては、N−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
【0069】
上記ビニルエーテル化合物としては、アミノエチルビニルエーテル、及びジメチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0070】
上記(2)カチオン性モノマーの他の具体例としては、ジアリル型4級アンモニウム塩、及びベタイン構造を有するビニルモノマー等が挙げられる。
【0071】
上記ジアリル型4級アンモニウム塩としては、4−ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、及びジエチルジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0072】
上記ベタイン構造を有するビニルモノマーとしては、N−(3−スルホプロピル)−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−(メタ)アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−カルボキシメチル)−N−(メタ)アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、及びN−カルボキシメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等が挙げられる。
【0073】
上記(2)カチオン性モノマーが有するカチオン性基の中でも、アミノ基又はアンモニウム基が好ましい。上記(2)カチオン性モノマーは、アミノ基又はアンモニウム基を有するモノマーであることが好ましい。
【0074】
上記(3)アニオン性モノマーとしては、重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマー、重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマーの酸無水物(1つのモノマー中に2つ以上のカルボキシル基を有する場合)、重合性不飽和基を有するスルホン酸モノマー、片末端にスルホ基(−SOH)を有するポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、片末端にスルホ基(−SOH)を有するポリエチレングリコールのアリルエーテル、片末端にスルホ基(−SOH)を有するポリエチレングリコールのビニルエーテル、片末端にスルホ基(−SOH)を有するポリエチレングリコールのスチリルエーテル、及び重合性不飽和基を有するリン酸モノマー等が挙げられる。
【0075】
上記重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸等が挙げられる。
【0076】
上記重合性不飽和基を有するスルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−アルキル(例えばアルキル基の総炭素数1〜4)プロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0077】
片末端にスルホ基(−SOH)を有するポリエチレングリコールのスチリルエーテルに関しては、上記スチリルエーテルにおけるスチリル基は、α位及びβ位の少なくとも一方が、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン化アルキル基で置換されていてもよく、芳香環上に炭素数1〜20のアルキル基があってもよい。
【0078】
片末端にスルホ基(−SOH)を有する化合物に関しては、上記ポリエチレングリコールの水素原子が炭素数1〜18のアルキル基で置換されたポリアルキレングリコールを用いてもよい。置換されているエチレングリコール単位は、全エチレングリコール単位の50%以下であることが好ましい。
【0079】
上記重合性不飽和基を有するリン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、及び(メタ)アクリロイロキシアルキル(例えばアルキル基の総炭素数1〜4)リン酸等が挙げられる。
【0080】
上記(3)アニオン性モノマーにおけるアニオン性基は、塩基性物質により、任意の中和度に中和されてもよい。この場合、ポリマー中の全てのアニオン性基又はその一部のアニオン性基は、塩を生成する。ここで、塩における陽イオンとしては、アンモニウムイオン、総炭素数3〜54のトリアルキルアンモニウムイオン、総炭素数2〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、総炭素数4〜8のジヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、総炭素数6〜12のトリヒドロキシアルキルアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、及びアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。上記総炭素数3〜54のトリアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルアンモニウムイオン、及びトリエチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0081】
中和は、モノマーの段階で行われてもよく、ポリマー(例えば、塩化ビニル系共重合体)の段階で行われてもよい。
【0082】
上記親水性モノマーに由来する構造単位が、水酸基を有するモノマーに由来する構造単位である場合には、水酸基を有するモノマーに由来する構造単位は、ビニルアルコール構造単位であることが好ましく、酢酸ビニル構造単位が加水分解により変換されたビニルアルコール構造単位を含むことが好ましい。
【0083】
ビニルアルコール構造単位を導入するために、塩化ビニルと酢酸ビニルとを共重合させ、得られた共重合体中に含まれる酢酸ビニル構造単位を加水分解することにより、ビニルアルコール構造単位に変換することが好ましい。なお、加水分解は、酢酸ビニル構造単位100重量%に対して行われていなくてもよく、ビニルアルコール構造単位に変換されていない酢酸ビニル構造単位が、本発明の効果を実質的に損なわない範囲にて存在してもよい。
【0084】
水検知シートの吸水性をより一層良好する観点からは、上記親水性モノマーは、上記非イオン性モノマーであることが好ましい。長期間に渡り、水検知シートの吸水性をより一層保持する観点からは、上記親水性モノマーは、ポリアルキレングリコール基又は環状アミド基を有するモノマーであることが好ましい。上記ポリアルキレングリコール基の重合度は特に限定されない。
【0085】
水検知シートの吸水性をより一層良好する観点からは、上記塩化ビニル系共重体において、上記塩化ビニルモノマーに由来する構造単位と上記親水性モノマーに由来する構造単位との合計100重量%中、上記親水性モノマーに由来する構造単位の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0086】
重合方法:
上記塩化ビニルモノマーと上記親水性モノマーとを共重合させて共重合体(塩化ビニル系共重合体)を得る共重合方法について説明する。上記共重合の方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、及び沈殿重合法等が挙げられる。これらの方法の中では、懸濁重合法、乳化重合法又は沈殿重合法が好ましい。
【0087】
上記懸濁重合法により重合を行う際には、分散剤又は油溶性重合開始剤等を用いてもよい。上記分散剤の使用により、材料成分の水への分散安定性を高めることができ、共重合を安定的に進行させることができる。
【0088】
上記分散剤としては特に限定されず、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩/アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、及び無水マレイン酸/スチレン共重合体等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
上記油溶性重合開始剤は特に限定されない。上記油溶性重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。上記油溶性重合開始剤としては、有機パーオキサイド化合物及びアゾ化合物が挙げられる。上記有機パーオキサイド化合物としては、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート及びα−クミルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、2,2−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。上記油溶性重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
共重合を行う際には、重合中に重合槽内に付着する付着物の量を少なくする目的で、スケール防止剤、pH調整剤又は酸化防止剤等を用いてもよい。さらに、必要に応じて、重合槽の内部、攪拌翼及び邪魔板等の形状、並びに重合槽の材質等を変更してもよい。
【0091】
上記スケール防止剤は特に限定されず、ポリアミノベンゼン、多価フェノール、アミノフェノール、アルキル置換フェノール等から選ばれた1種又は2種以上の化合物の縮合反応によって得られる多価フェノール等が挙げられる。上記スケール防止剤は、水又は有機溶媒に希釈されていてもよい。上記スケール防止剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0092】
上記懸濁重合法は、例えば、以下の方法により行われる。
【0093】
温度調整機及び攪拌機を備える重合器内に、純水、上記分散剤、上記油溶性重合開始剤、必要に応じて水溶性増粘剤及び重合度調節剤を含む分散溶液を入れ、真空ポンプにより重合器内から空気を排除する。次に、攪拌条件下で、原料の全てを重合器内に入れる。その後、重合器内を昇温し、所望の重合温度で、材料の重合反応を進行させ、グラフト共重合を行う。共重合反応を行う際に、重合温度は好ましくは30℃以上、好ましくは90℃以下であり、重合時間は好ましくは2時間以上、好ましくは20時間以下である。
【0094】
上記懸濁重合法では、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度、すなわち、重合温度を制御可能である。反応終了後には、例えば未反応の塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーを除去してスラリー状にし、さらに、脱水及び乾燥を行うことにより、目的とする塩化ビニル系共重合体を得ることができる。
【0095】
塩化ビニル系共重合体の他の詳細:
上記塩化ビニル系共重合体の重合度は、好ましくは100以上、好ましくは10000以下である。上記重合度が上記下限以上であると、疲労特性等の長期性能が損なわれ難い。上記重合度が上記上限以下であると、成形時に高温下にする必要がなくなり、加工性がより一層良好になる。
【0096】
水検知シートに成形する前の上記塩化ビニル系共重合体は、粒子であることが好ましい。粒子である上記塩化ビニル系共重合体の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、好ましくは500μm以下である。上記粒子径が上記下限以上であると、乾燥時に微粉状態とならず、取扱い性がより一層高くなる。上記粒子径が上記上限以下であると、粒子を得る際の重合時の反応がより一層不安定になり難い。
【0097】
上記塩化ビニル系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の有機材料と併用されてもよい。例えば、機械的強度の更なる向上のため、塩化ビニル系樹脂、後塩素化塩化ビニル系樹脂、又はアクリル樹脂等を、上記塩化ビニル系重合体と併用してもよい。
【0098】
また、上記塩化ビニル系共重合体は、後塩素化塩化ビニル系樹脂であってもよい。
【0099】
上記塩化ビニル系共重合体には、必要に応じて、第一の状態の全光線透過率を損なわない範囲で、各種の添加剤を用いてもよい。上記添加剤としては、安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、及び着色剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
塩化ビニル系共重合体の成型をより一層良好に実施する観点からは、上記塩化ビニル系共重合体には、上記安定剤が用いられることが好ましい。塩化ビニル系共重合体の成型をより一層良好に実施する観点からは、塩化ビニル系共重合体100重量部に対する上記安定剤の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部、さらに好ましくは5重量部以上である。第一の状態による全光線透過率をより一層良好にする観点からは、塩化ビニル系共重合体100重量部に対する上記安定剤の含有量は、好ましくは10重量部以下である。
【0101】
上記安定剤としては特に限定されず、熱安定剤及び熱安定化助剤等が挙げられる。上記熱安定剤としては特に限定されず、有機錫系安定剤、鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、及びバリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記有機錫系安定剤としては、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、及びジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。上記安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
上記熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記熱安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記滑剤としては、内部滑剤、及び外部滑剤が挙げられる。上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0104】
上記加工助剤としては特に限定されず、アクリル系加工助剤等が挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては、重量平均分子量が10万〜200万であるアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等が挙げられ、具体的には、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、及び2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。上記加工助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、及びアクリルゴム等が挙げられる。上記衝撃改質剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0106】
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、α−メチルスチレン系、及びN−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。上記耐熱向上剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0107】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
上記光安定剤としては特に限定されず、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。上記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0110】
上記充填剤としては特に限定されず、炭酸カルシウム、及びタルク等が挙げられる。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0111】
上記顔料としては特に限定されず、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。上記有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、及び染料レーキ系有機顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、及びフェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記水検知シートは、駅、地下歩道、及びトンネル等の施設に好適に用いられる。上記水検知シートは、屋内又は屋外のいずれでも好適に用いられ、屋外でより好適に用いられる。
【0113】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0114】
(実施例1)
(1)塩化ビニル系共重合体の作製
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器内にノンスケール剤を塗布し、下記の表1に示す塩化ビニルを除く配合材料を一括で入れた。その後、真空ポンプで反応器内の空気を排出し、攪拌しながら塩化ビニルを入れた。次いで、ジャケット温度を制御して、下記の表1に示す重合温度にて重合を開始し、反応器内の圧力が所定圧力まで低下することで反応の終了を確認し、反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルを除去し、さらに、脱水及び乾燥を行うことで、塩化ビニル系共重合体を得た。
【0115】
(2)塩化ビニル系樹脂組成物の作製
内容積100リットルのヘンシェルミキサー(カワタ工業社製)内に、下記の表1に示す配合材料を入れた。その後、均一に攪拌混合して、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0116】
(3)水検知シートの作製
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、以下の条件で水検知シートの成形を実施した。
【0117】
[条件]
ロール:安田製機製作所社製 ミキシングロール
ロール温度:160℃
ロール時間:1分(巻きつき後)
プレス:東邦マシナリー社製 熱プレス成形機
プレス温度:165℃
プレス時間:予熱1.5分+加圧0.5分
プレス圧力:加圧200kgf/cm
プレスサイズ:厚み0.2mm×長さ150mm×幅150mm
【0118】
(実施例2)
塩化ビニル系共重合体の作製の際に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの配合量を32.3重量部、及びイオン交換水の配合量を330.5重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル系樹脂組成物、及び水検知シートを作製した。
【0119】
(実施例3)
水検知シートの作製の際に、水検知シートの厚みを1mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル系樹脂組成物、及び水検知シートを作製した。
【0120】
(比較例1)
塩化ビニル系共重合体の作製の際に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートを配合しなかったこと、及びイオン交換水の配合量を373.8重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル系樹脂組成物、及び水検知シートを作製した。
【0121】
(比較例2)
水検知シートの作製の際に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラー」)を用いたこと、並びに、熱安定剤及び滑剤を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、水検知シートを作製した。
【0122】
(比較例3)
水検知シートの作製の際に、水検知シートの厚みを1mmに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル系樹脂組成物、及び水検知シートを作製した。
【0123】
(評価)
(1)重合度
塩化ビニル系共重合体の重合度を、JIS K6720−2に準拠して測定した。なお、発生した不溶解物はろ別し、可溶解分のみを用いて測定した。
【0124】
(2)塩化ビニル(塩化ビニルモノマーに由来する構造単位)の含有量
塩化ビニル系共重合体における塩素重量含有率(Cl%)をJIS K7229に準拠して、電位差滴定法にて測定した。
【0125】
この塩素重量含有率(C=Cl%/100)から下記式(X)により、塩化ビニル(塩化ビニルモノマーに由来する構造単位)の含有量を算出した。
【0126】
塩化ビニルの含有量(重量%)=(C/56.7)×100 ・・・式(X)
【0127】
(3)親水性モノマー(親水性モノマーに由来する構造単位)の含有量
親水性モノマーに由来する構造単位の含有量は下記式(Y)で算出した。
【0128】
親水性モノマーに由来する構造単位の含有量(重量%)=100−塩化ビニルの含有量 ・・・式(Y)
【0129】
(4)水検知シートの吸水率
得られた水検知シートを60mm×60mmの大きさに切り取り、23℃、湿度50%の環境下で7日間乾燥させ、評価サンプルとした。作製した評価サンプルを、25℃の水に1日間浸漬し、下記式(Z)から、水検知シートの吸水率を算出した。
【0130】
水検知シートの吸水率(重量%)=(浸漬後の重量(g)−浸漬前の重量(g))/浸漬前の重量(g)×100 ・・・式(Z)
【0131】
(5)水検知シートの全光線透過率及び水の含有量
全光線透過率は、以下のようにして測定した。
【0132】
「JIS7361−1 プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に従って測定した。水に浸漬させたサンプルは、取り出してから表面の水をふき取り、直ちに測定した。全光線透過率の値は、1サンプルにつき三回測定した値の平均値を用いた。装置は、日本電色工業社製のHaze Meter NDH2000を用いた。
【0133】
(i)第1の状態での全光線透過率及び水の含有量
得られた水検知シートを60mm×60mmの大きさに切り取り、23℃、湿度50%の環境下で7日間乾燥させ、第1の状態の評価サンプルとした。作製した評価サンプルを用いて、全光線透過率を測定した。また、第1の状態の評価サンプルの水の含有量も評価した。
【0134】
(ii)吸水後の全光線透過率
(i)で作製した第1の状態の評価サンプルを用いて、25℃で24時間水に浸漬させ、吸水後の評価サンプルとした。作製した評価サンプルを用いて、全光線透過率を測定した。
【0135】
(iii)脱水後の全光線透過率
(ii)で作製した吸水後の評価サンプルを用いて、23℃、湿度50%の環境下で7日間乾燥させ、脱水後の評価サンプルとした。作製した評価サンプルを用いて、全光線透過率を測定した。
【0136】
(6)水検知シートの厚み
得られた水検知シートの厚みを測定した。
【0137】
結果を下記の表1に示す。
【0138】
【表1】