【実施例】
【0017】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、全体を符号11で示すガスケットは、平面上で一定の模様(例えば正方形もしくは長方形等の四角形)が連続する形状のシールリップ22を備えたゴム状弾性体よりなる網状シール部21を有しており、この網状シール部21が、ゴム状弾性体よりなるシート状の基部31、または金属もしくは樹脂材よりなるシート状の基材41の上面(厚み方向一方の面)側に配置されて、これらの基部31または基材41に対し一体に成形されている。また、このガスケット11は
図1(B)に示すように、仕様に応じ所定の平面形状(例えば枠状)となるよう打ち抜き加工されたうえで、各種の用途に供される。網状シール部21は、一定の幅および高さを備える複数のシールリップ22を網状に一体成形したものである。
【0019】
第1実施例・・・・
図2(A)(B)に一部を拡大して示すように、網状シール部21は、直線状を呈する第1および第2シールリップ22A,22Bの組み合わせを備え、両シールリップ22A,22Bが直角に交差することによる平面十字形のリップ交差部23を有している。このリップ交差部23では、シールリップ22A,22Bがその厚み方向に圧縮されたときにゴム状弾性体の変形の逃げ場が少なくゴム状弾性体が変形しにくいため、発生する反力が他の部分よりも大きくなることがある。
【0020】
そこで、当該実施例では、このリップ交差部23の平面中央部に、該部に発生する反力を低減させる発生反力低減用の立体構造25が設けられており、この立体構造25が
図3(A)の断面図に示すように、リップ交差部23の上面(装着時に相手部材に接触するシールリップ22A,22Bのシール面)側に開口する有底・平面円形の凹み26によって形成されている。
【0021】
凹み26の断面形状は特に限定されず、例えば
図3(B)に示すように、凹み26の底部へ向けて内径が徐々に縮小する断面三角形などであっても良い。また、凹み26に代えて
図3(C)に示すように、リップ交差部23を厚み方向に貫通する貫通穴27を設けても良い。
【0022】
そして、このようにリップ交差部23に凹み26または貫通穴27よりなる立体構造25を設ける構成によれば、この凹み26または貫通穴27よりなる立体構造25がゴム状弾性体の圧縮変形時の逃げ場とされるため、リップ交差部23に発生する反力を低減させることが可能とされる。
【0023】
第2実施例・・・・
図4(A)(B)に示すように、網状シール部21は、直線状を呈する第1および第2シールリップ22A,22Bの組み合わせを備え、両シールリップ22A,22Bが直角に交差することによる平面十字形のリップ交差部23を有している。このリップ交差部23では、ゴム状弾性体の変形の逃げ場が少なくゴム状弾性体が変形しにくいため、発生する反力が他の部分よりも大きくなることがある。
【0024】
そこで、当該実施例では、このリップ交差部23の平面中央部に、該部に発生する反力を低減させる発生反力低減用の立体構造25が設けられており、この立体構造25が
図5(A)の断面図に示すように、リップ交差部23の上面(装着時に相手部材に接触するシールリップ22A,22Bのシール面)側に開口せずリップ交差部23および基部31の厚み内に設けられ、かつ基部31の下面(反シール面)側に開口する平面円形・断面半円形の空洞28によって形成されている。
【0025】
空洞28の断面形状は特に限定されず、例えば以下のようなものであっても良い。
・
図5(B)に示すように、直線状の側部28aと、円弧形の天部28bとの組み合わせよりなる、長円を長手方向に半裁した形状。
・
図5(C)に示すように、直線状の側部28aと、斜辺状の天部28bとの組み合わせよりなる、五角形の形状。
・
図5(D)に示すように、三角形の形状。
【0026】
そして、このようにリップ交差部23に空洞28よりなる立体構造25を設ける構成によれば、この空洞28よりなる立体構造25がゴム状弾性体の圧縮変形時の逃げ場とされるため、リップ交差部23に発生する反力を低減させることが可能とされる。
【0027】
第3実施例・・・・
図6(A)(B)に示すように、網状シール部21は、直線状を呈する第1および第2シールリップ22A,22Bの組み合わせを備え、両シールリップ22A,22Bが直角に交差することによる平面十字形のリップ交差部23を有している。このリップ交差部23では、ゴム状弾性体の変形の逃げ場が少なくゴム状弾性体が変形しにくいため、発生する反力が他の部分よりも大きくなることがある。
【0028】
そこで、当該実施例では、このリップ交差部23の平面中央部に、該部に発生する反力を低減させる発生反力低減用の立体構造25が設けられており、この立体構造25が
図7の断面図に示すように、リップ交差部23の上面(装着時に相手部材に接触するシールリップ22A,22Bのシール面)側に開口せずリップ交差部23の厚み内に設けられ、かつリップ交差部23の下面(反シール面)側に開口する平面円形の空洞28によって形成されている。空洞28の開口部は、基材41によって閉塞されている。
【0029】
そして、このようにリップ交差部23に空洞28よりなる立体構造25を設ける構成によれば、この空洞28よりなる立体構造25がゴム状弾性体の圧縮変形時の逃げ場とされるため、リップ交差部23に発生する反力を低減させることが可能とされる。
【0030】
第4実施例・・・・
図8(A)(B)に示すように、網状シール部21は、直線状を呈する第1および第2シールリップ22A,22Bの組み合わせを備え、両シールリップ22A,22Bが直角に交差することによる平面十字形のリップ交差部23を有している。このリップ交差部23では、ゴム状弾性体の変形の逃げ場が少なくゴム状弾性体が変形しにくいため、発生する反力が他の部分よりも大きくなることがある。
【0031】
そこで、当該実施例では、このリップ交差部23の平面中央部に、該部に発生する反力を低減させる発生反力低減用の立体構造25が設けられており、この立体構造25が
図9(A)の断面図に示すように、リップ交差部23を厚み方向に貫通する貫通穴27によって形成されている。
【0032】
また
図8(A)(B)に示したように、リップ交差部23の平面形状が十字形であるのに伴って貫通穴27の平面形状も相似ないし略相似の十字形とされており、これにより貫通穴27の周りには、平面90度に亙る円弧形の幅狭リップ部29が4箇所、等配状に設けられている。
【0033】
貫通穴27は、これに代えて
図9(B)(C)に示すように、リップ交差部23の上面側に開口する有底・平面円形の凹み26であっても良い。
【0034】
そして、このようにリップ交差部23に貫通穴27または凹み26よりなる立体構造25を設ける構成によれば、この貫通穴27または凹み26よりなる立体構造25がゴム状弾性体の圧縮変形時の逃げ場とされるため、リップ交差部23に発生する反力を低減させることが可能とされる。
【0035】
以上説明したように本発明各実施例では、網状シール部21のシールリップ22A,22Bにおけるリップ交差部23に発生反力低減用の立体構造25が設けられ、この立体構造25がゴム状弾性体の圧縮変形時の逃げ場とされるため、リップ交差部23に発生する反力を低減させることができる。したがってガスケット11全体として発生する反力の大きさをほぼ均一化させることにより、相手部材に変形が生じるのを抑制することができ、ガスケット11によるシール性を安定化させることもできる。
【0036】
反力の低減は、相手部材に対する接触面圧ないしシール面圧の低減となってあらわれる。
【0037】
すなわち、従来技術では
図10(A)のグラフ図に示すように、立体構造25が設けられていないため、リップ交差部23で最大面圧のピーク値Pが立っていた。これに対し本発明各実施例によれば
図10(B)のグラフ図に示すように、立体構造25が設けられているため、リップ交差部23で最大面圧が低減され、その結果として、最大面圧の大きさをほぼ均一化することが可能とされる。
【0038】
また、上記したように本発明のガスケット11には、以下の態様がいずれも含まれる。
(a)平面上で一定の模様が連続する形状のシールリップ22を備えたゴム状弾性体よりなる網状シール部21のみよりなるガスケット。
(b)平面上で一定の模様が連続する形状のシールリップ22を備えたゴム状弾性体よりなる網状シール部21を有し、この網状シール部21をゴム状弾性体よりなるシート状の基部31に対し一体とした(一体成形した)ガスケット。
(c)平面上で一定の模様が連続する形状のシールリップ22を備えたゴム状弾性体よりなる網状シール部21を有し、この網状シール部21を金属または樹脂材よりなるシート状の基材41に対し一体とした(架橋接着した)ガスケット。
【0039】
上記(a)態様では、ガスケット11を1枚で使用するか、あるいはガスケット11を2枚重ねて使用する。後者の場合は、ガスケット11の反シール面同士が接触するように2枚のガスケット11を重ね合わせる。したがって上記第1実施例(
図3(A))では、凹み26がガスケット11のシール面(図における網状シール部21の上面)に開口するように設けられているので、ガスケット11の反シール面(図における網状シール部21の下面)同士が接触するように2枚のガスケット11を重ね合わせると、凹み26はガスケット11外部に開放された状態とされる。これに対し上記第2実施例(
図5(A))では、空洞28がガスケット11の反シール面(図における網状シール部21の下面)に開口するように設けられているので、ガスケット11の反シール面同士が接触するように2枚のガスケット11を重ね合わせると、空洞28はガスケット11外部と仕切られた密閉空間とされる。
【0040】
上記(b)態様で、網状シール部21はゴム状弾性体よりなるシート状の基部31の厚み方向一方の面側に配置されるが、網状シール部21をゴム状弾性体よりなるシート状の基部31の厚み方向一方および他方の面側にそれぞれ配置するようにしても良く、この場合は、網状シール部21、基部31および網状シール部21よりなる3層の構造体が一体に成形される。
【0041】
また同様に、上記(c)態様で、網状シール部21は金属または樹脂材よりなるシート状の基材41の厚み方向一方の面側に配置されるが、網状シール部21を金属または樹脂材よりなるシート状の基材41の厚み方向一方および他方の面側にそれぞれ配置するようにしても良く、この場合は、網状シール部21、基材41および網状シール部21よりなる3層の構造体が成形される。
【0042】
また、上記各実施例ではいずれも、リップ交差部23の平面形状を十字形としたが、リップ交差部23の平面形状は十字形に限られず、このほか例えば、
図11(A)に示す平面T字形の形状、
図11(B)に示す平面Y字形の形状(3本のシールリップ22が集束する形状)、
図11(C)に示す平面放射状の形状(十字形以外の4本または5本以上(図では8本)のシールリップ22が集束する形状)などあっても良い。
【0043】
また、本発明は、網状シール部21における複数のシールリップ22が交差するリップ交差部23のみならず、1本のシールリップ22が平面上所定の箇所で方向転換するリップ方向転換部24に適用することができる。リップ方向転換部24はリップ交差部23と同様、ゴム状弾性体の変形の逃げ場が少なくゴム状弾性体が変形しにくいため、発生する反力が他の部分よりも大きくなることがあり、よって本発明による反力低減が有効である。
【0044】
このリップ方向転換部24の例としては、
図12(A)に示す1本のシールリップ22が平面上所定の箇所で直角に方向転換する形状、
図12(B)に示す1本のシールリップ22が平面上所定の箇所にて直角より小さな角度で方向転換する形状、
図12(C)に示す1本のシールリップ22が平面上所定の箇所にて直角より大きな角度で方向転換する形状などがある。