(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773510
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ドーナツ用ミックス及びそれを用いた冷凍ドーナツの製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20201012BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20201012BHJP
A21D 13/045 20170101ALI20201012BHJP
A21D 2/34 20060101ALI20201012BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D10/00
A21D13/045
A21D2/34
A21D2/36
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-196118(P2016-196118)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-57299(P2018-57299A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】312015185
【氏名又は名称】日清製粉プレミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老名 かおる
(72)【発明者】
【氏名】田上 祐二
【審査官】
田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−017802(JP,A)
【文献】
米国特許第04929464(US,A)
【文献】
特開平09−084512(JP,A)
【文献】
特開平08−228664(JP,A)
【文献】
特表2005−506078(JP,A)
【文献】
特開昭63−304937(JP,A)
【文献】
特開平06−038669(JP,A)
【文献】
特開2014−217325(JP,A)
【文献】
特開2015−164413(JP,A)
【文献】
[クッキーみたいな新食感]ドーナツは「冷凍」するとさらにおいしい!,クックパッド,2016年 1月29日,p.1-3,https://news.cookpad.com/articles/15567, 検索日:2019年12月17日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00−17/00
A23G 1/00−9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍状態で喫食可能な冷凍ドーナツの製造に適した粉体状のドーナツ用ミックスであって、
グルコースを20〜35質量%含有し、
スクロース及び/又はマルトースを含有し、スクロース及びマルトースの合計量が9〜20質量%であり、
大豆粉及び/又は卵白粉を含有し、大豆粉及び卵白粉の合計量が0.5〜6質量%である、ドーナツ用ミックス。
【請求項2】
冷凍状態で喫食可能な冷凍ドーナツの製造方法であって、
請求項1に記載のミックスに水を加えて生地を調製し、該生地を油ちょうしてドーナツを得、該ドーナツを冷凍する工程を有する、冷凍ドーナツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温では勿論のこと、冷凍された状態でもそのまま喫食することができるドーナツに関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツは、小麦粉、砂糖、卵などを原料にして生地を調製し、調製した生地を油ちょうすることにより製造される揚げ菓子の一種であり、膨張剤によって生地を膨らませたケーキドーナツと、イーストを用いて発酵によって生地を膨らませたイーストドーナツの2種類がある。ドーナツの製造に使用される生地は冷凍される場合がある。冷凍生地は長時間の保存が可能であるので便利であるが、例えばファーストフード等の店舗においては、顧客からのオーダーに応じて直ちに調理する必要があり、冷凍生地を解凍せずにそのまま短時間で油ちょうできることが望ましい。特許文献1には、斯かる要望に応え得るドーナツ用冷凍生地として、蛋白価が8.5〜14重量%である小麦粉を主成分とし、砂糖、果糖、マルトースなどの糖類を5〜30重量%を含むものが開示されている。
【0003】
また特許文献2には、ベーグル用冷凍生地の改良技術が開示されている。一般にベーグルは、パン生地塊を茹でるか又は蒸した後に焼成することによって製造されるところ、このパン生地塊の茹で又は蒸し処理によってパン生地塊の表面がゼラチン化され、通常のドーナツとは異なる、ベーグルに特有の食感がもたらされる。特許文献2記載のベーグル用冷凍生地は、ドーナツ型パン生地塊を調製し、そのパン生地塊の表面を、加温した食用酢などの酸溶液で処理して、冷凍することによって製造される。
【0004】
また、冷凍生地を焼成して得られたパンは、冷凍されていない生地を焼成して得られたパンに比して、食感などの品質に劣化がみられる傾向がある。斯かる課題に鑑み、特許文献3では、冷凍パン生地の改良技術として、イースト含有製パン用生地を成形した後、最終醗酵前に、その成形生地の表面に、卵白、糖類などを含む水溶液をコーティングして冷凍することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−274843号公報
【特許文献2】特公表2000−506390号公報
【特許文献3】特開平2−286033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のドーナツは常温で喫食されることを想定して製造されたものである。ドーナツの製造における中間品たる生地は冷凍される場合があるが、生地を油ちょうして得られたドーナツを冷凍することは一般的ではなく、冷凍状態のドーナツを解凍せずにそのまま喫食することは、ドーナツの食習慣としては定着していない。冷凍状態のドーナツは、常温のドーナツにはない新しい食感が期待できるが、従来のドーナツを単に冷凍しただけでは、常温の状態に比べて食感、食味が低下し、却って不味くなるおそれがある。冷凍生地に関しては、特許文献1〜3の如き改良技術が種々提案されているが、冷凍状態で喫食しても美味しいドーナツを提供し得る技術は未だ提供されていない。
【0007】
本発明の課題は、冷凍しても硬くなりすぎずに喫食可能な状態を維持し、その冷凍状態のものを喫食してもシャリっとした食感を楽しむことができ、また、常温と同程度の品温で喫食しても口どけのよい食感を楽しむことができるドーナツの製造に適したドーナツ用ミックス、及びそれを用いたドーナツの製造方法、並びに冷凍ドーナツを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、冷凍状態で喫食可能な冷凍ドーナツの製造に適したドーナツ用ミックスであって、糖、糖アルコール、デキストリン及び可溶性澱粉からなる群から選択される1種以上の第1成分を25〜70質量%、並びに非小麦由来蛋白素材、増粘剤及び食物繊維からなる群から選択される1種以上の第2成分を0.1〜10質量%含有するドーナツ用ミックスである。
【0009】
また本発明は、冷凍状態で喫食可能な冷凍ドーナツの製造方法であって、前記の本発明のドーナツ用ミックスに水を加えて生地を調製し、該生地を油ちょうしてドーナツを得、該ドーナツを冷凍する工程を有する、冷凍ドーナツの製造方法である。
【0010】
また本発明は、冷凍状態で喫食可能なドーナツであって、小麦粉と、糖、糖アルコール、デキストリン及び可溶性澱粉からなる群から選択される1種以上の第1成分と、非小麦由来蛋白素材、増粘剤及び食物繊維からなる群から選択される1種以上の第2成分とを含有し、該第1成分の含有量が25〜70質量%、該第2成分の含有量が0.1〜10質量%であるドーナツである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷凍しても硬くなりすぎずに喫食可能な状態を維持し、その冷凍状態のものを喫食してもシャリっとした食感を楽しむことができ、また、常温と同程度の品温で喫食しても口どけのよい食感を楽しむことができるドーナツの製造に適したドーナツ用ミックス、及びそれを用いたドーナツの製造方法、並びに冷凍ドーナツが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のドーナツ用ミックスは、糖、糖アルコール、デキストリン及び可溶性澱粉からなる群から選択される1種以上の第1成分(糖類)を含有する。ドーナツ用ミックスに前記第1成分を含有させることで、該ミックスを用いて製造されたドーナツは冷凍しても硬くなりすぎることがなく、該ドーナツの冷凍状態での喫食可能性が向上する。特に、糖及び糖アルコールは、該ドーナツの冷凍状態での食感に優れるため、好ましい。
【0013】
糖としては、食品全般に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、グルコース(ブドウ糖)、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、フルクトース(果糖)、ラクトーズ(乳糖)、シクロデキストリン、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、パラチニット、ラクチトール、直鎖オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ヘミセルロース、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
糖アルコールは、単糖、単糖が2〜10分子結合したオリゴ糖、又はデキストリン、水飴若しくは澱粉等を、発酵や水素添加により還元して得られるものである。糖アルコールとしては、食品全般に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、還元ポリデキストロース、還元乳糖、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、パラチニット、ラクチトール、直鎖オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、高糖化還元水飴、還元麦芽糖水飴、還元水飴等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
デキストリン及び可溶性澱粉としては、それぞれ、食品全般に使用可能なものを特に制限なく用いることができる。
可溶性澱粉は、澱粉に何らかの処理を施して加水分解させたものであり、冷水には殆ど溶解せず、熱水に溶解する。この澱粉に施す処理としては、例えば、加熱処理、酸処理が挙げられる。澱粉の加熱処理としては、澱粉の高圧蒸煮又は焙焼を例示できる。澱粉の酸処理としては、澱粉と水よりなる澱粉スラリーに、次亜塩素酸ソーダ、亜塩素酸ソーダ、過酸化水素、過酢酸などの酸化剤又は硫酸、塩酸などの酸を作用させる処理を例示でき、斯かる酸処理後に、中和、水洗、脱水、乾燥を行う。また、可溶性澱粉の原料となる澱粉は特に制限されず、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉を例示できる。
【0016】
本発明のドーナツ用ミックスにおいては、これを用いて製造されるドーナツの冷凍状態での喫食可能性を一層向上させる観点から、前記第1成分(糖類)として、単糖及び二糖の少なくとも一方を含有することが好ましく、単糖及び二糖の双方を含有することが特に好ましい。本発明で好ましく用いられる単糖及び二糖の組み合わせとして、グルコース(単糖)及びスクロース(二糖)の組み合わせを例示できる。他の好ましい組み合わせとして、グルコース(単糖)、スクロース(二糖)及びマルトース(二糖)の組み合わせを例示できる。
【0017】
本発明のドーナツ用ミックスにおいて、前記第1成分の含有量は、該ミックスの全質量に対して25〜70質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。前記第1成分の含有量が25質量%未満であると、これを使用する意義に乏しく、前記第1成分の含有量が70質量%を超えると、吸油量の増加が抑制しきれず、油っぽい風味のドーナツとなるおそれがある。
【0018】
また、前記第1成分として前記のように、単糖及び二糖の双方を使用する場合、本発明のドーナツ用ミックスにおける単糖の含有量は、該ミックスの全質量に対して好ましくは20〜30質量%、さらに好ましくは20〜25質量%であり、二糖の含有量は、該ミックスの全質量に対して好ましくは10〜20質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。例えば、ドーナツ用ミックスにおいて第1成分としてグルコース(単糖)及びスクロース(二糖)の双方を使用する場合、これらの含有量を前記特定範囲内に調整することで、該ミックスを用いて製造されたドーナツの冷凍状態での喫食可能性がより一層向上し得る。
【0019】
本発明のドーナツ用ミックスは、前記第1成分に加えてさらに、非小麦由来蛋白素材、増粘剤及び食物繊維からなる群から選択される1種以上の第2成分を含有する。前述した通り、本発明のドーナツ用ミックスは、糖類である前記第1成分を25〜70質量%含有するところ、通常のドーナツ用ミックスにおける糖類の含有量は10〜20質量%程度であるから、本発明のドーナツ用ミックスは、通常品に比べて多量の糖類を含有するものと言える。このような比較的多量の糖類の使用によって、ドーナツの冷凍状態での喫食可能性、食感、食味などの向上が期待できる反面、高含有された糖類の作用により、ドーナツ製造時の油ちょうの際における吸油量が増加し、ドーナツの食感が低下し、油っぽいものとなることが懸念される。そこで、本発明のドーナツ用ミックスにおいては、糖類(前記第1成分)を比較的多量に含有させると共に、その高含有の糖類に起因する吸油量の増加を抑制し得る第2成分(吸油阻害成分)として、非小麦由来蛋白素材、増粘剤又は食物繊維を含有させることとしたものである。ドーナツ用ミックスに前記第2成分を含有させることで、該ミックスを用いて製造されたドーナツの油っぽさが低減し、また、該ドーナツの冷凍状態での食感が向上し、該ドーナツを冷凍状態で喫食した場合に、室温と同程度の品温のドーナツでは得られない、シャリっとした新しい食感を楽しむことが可能になると共に、該ドーナツを常温と同程度の品温で喫食した場合に、口どけのよい食感を楽しむことが可能になる。
【0020】
非小麦由来蛋白素材としては、例えば、大豆粉、卵白粉、卵黄粉、全卵粉、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイ蛋白、カゼイン蛋白等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明のドーナツ用ミックスは通常、小麦粉を含有し、小麦粉には蛋白質が含まれているが、本発明では、この小麦粉に含まれる蛋白質とは別に、蛋白質の供給源として非小麦由来蛋白素材を使用する。これらの非小麦由来蛋白素材の中でも特に、大豆粉、卵白粉は、ドーナツの冷凍状態での食感向上効果に優れるため、本発明で好ましく用いられる。大豆粉及び卵白粉の双方を併用することが特に好ましい。大豆粉は大豆を粉末化したものであり、具体的には例えば、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、豆乳粉末、おからパウダー、きな粉、分離大豆蛋白等が挙げられる。
【0021】
食物繊維は、食物中に含まれる、動物の消化酵素に対して難消化性の成分であり、本発明では食物繊維として、種々の食品素材から精製などの何らかの加工工程を経て抽出された繊維質、あるいは該繊維質とそれ以外の他成分とを含む繊維質組成物を用いることができる。また一般に、食物繊維は水溶性繊維と不溶性繊維とに大別されるところ、本発明では両繊維の何れか1種のみを用いても良く、両方を用いても良い。水溶性繊維としては、例えば、ポリデキストロース、難消化性デキストリン等が挙げられ、不溶性繊維としては、例えば、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等が挙げられる。
【0022】
増粘剤としては、食品全般に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、具体的には例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガティーガム、アラビノガラクタン、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、カードラン、ゼラチン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、アガロース、グルコマンナン、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0023】
本発明のドーナツ用ミックスにおいて、前記第2成分の含有量は、該ミックスの全質量に対して0.1〜10質量%であり、好ましくは3〜5質量%である。前記第2成分の含有量が0.1質量%未満であると、これを使用する意義に乏しく、前記第2成分の含有量が10質量%を超えると、そのミックスを用いて製造されたドーナツが冷凍及び常温の両状態において口どけの悪いものとなるおそれがある。尚、前記第2成分として食物繊維を使用する場合、ドーナツ用ミックスにおける食物繊維の含有量とは、栄養表示基準に記載のプロスキー法(酵素−重量法)に従って測定された値(粗繊維量)である。
【0024】
本発明のドーナツ用ミックスは通常、前記成分に加えてさらに、小麦粉を含有する。小麦粉としては、ドーナツの製造に通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、強力小麦粉、準強力小麦粉、中力小麦粉、薄力小麦粉、デュラム小麦粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの小麦粉の中でも特に薄力小麦粉が好ましい。
【0025】
本発明のドーナツ用ミックスにおいて、小麦粉の含有量は、該ミックスの全質量に対して、好ましくは35〜60質量%であり、さらに好ましくは40〜50質量%である。
【0026】
本発明のドーナツ用ミックスは、前記の第1成分(糖類)、第2成分(吸油阻害成分)及び小麦粉に加えて、必要に応じて、ドーナツ用ミックスの製造に通常用いられ得るその他の原料を含有しても良い。この他の原料としては、ライ麦粉、大麦粉、そば粉、米粉、コーンフラワー等の小麦粉以外の他の穀粉;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉、及びこれらにα化、アセチル化、エーテル化、エステル化、酸化処理、架橋処理等の処理を施した加工澱粉;炭酸水素ナトリウム(重曹)、ベーキングパウダー、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム等の膨張剤又はイースト;サラダ油等の油脂類;食塩等の塩類;乳化剤、酸味料、香料、香辛料、着色料、果汁、ビタミン類等の添加物等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明のドーナツ用ミックスを用いたドーナツの製造は常法に従う。具体的には例えば、本発明のドーナツ用ミックスに水を加え、必要に応じさらに卵などを加えて、それらの混合物を攪拌して生地を調製し、該生地を所定形状に成形し、その成形生地を油ちょうすることで、ドーナツが得られる。本発明のドーナツ用ミックスは、膨張剤を用いたケーキドーナツ及びイーストを用いたイーストドーナツの何れにも適用できる。本発明のドーナツ用ミックスは通常、常温で粉体である。
【0028】
本発明のドーナツ用ミックスを用いて得られたドーナツは、通常のドーナツと同様に、常温と同程度の品温(通常15〜25℃程度)で喫食することも可能であるが、前述したように、該ミックス中に第1成分(糖類)及び第2成分(吸油阻害成分)がそれぞれ特定量含有されていることに起因して、冷凍状態でも喫食可能である。
【0029】
本発明には、本発明のドーナツ用ミックスを用いて常法に従って製造したドーナツを冷凍する工程を有する、冷凍ドーナツの製造方法、及び該製造方法によって製造可能な冷凍ドーナツが含まれる。本発明の冷凍ドーナツの製造方法において、ドーナツの冷凍方法は特に制限されず、急速冷凍、緩慢冷凍の何れも採用できる。ドーナツの冷凍温度は特に制限されないが、良好な食感の観点から、好ましくは−45〜−10℃、さらに好ましくは−20〜−15℃である。本発明の冷凍ドーナツは、冷凍状態であるにもかかわらず硬すぎず、そのまま喫食可能であり、室温と同程度の品温のドーナツにはない、ひんやりとした食感、シャリっとした食感があり、また、前記第2成分による作用効果に加えてさらに、冷凍状態のためにドーナツ特有の油っぽさが低減されており、場合によっては、室温と同程度のドーナツよりもおいしく感じられるものである。また、本発明の冷凍ドーナツは、室温と同程度の品温になるまで解凍してから喫食することもでき、その場合には、口どけのよい食感を楽しむことができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〜5及び比較例1〜4〕
下記表1に示す組成のミックス100質量部に対し、水21質量部、全卵20質量部を添加したものを、ビータータイプの撹拌羽根を有する縦型ミキサー(関東混合機工業(株)製、商品名「HPI−20M」)を用いて、低速で2分間ミキシングした後、ミキサー内壁及び撹拌羽根に付着したミックスのダマを掻き落とし、さらに高速で1分間ミキシングし、生地を調製した。この生地の品温を25℃として10分間のフロアタイムをとった後、ドーナツ1個当たり50gのリング状に成形し、油温185℃の油槽にて油ちょうした。油ちょうは、リング状の生地の一方の面を上に向けて60秒間油ちょうした後、反転させて50秒間油ちょうすることで実施した。油ちょうによって得られたドーナツを庫内温度が−18℃の冷凍庫に2時間収容し、冷凍ドーナツを得た。
【0032】
〔試験例〕
10名のパネラーに、各実施例及び比較例の冷凍ドーナツを解凍せずにそのまま喫食してもらい、その際の食感を下記評価基準で評価してもらった。その結果を10名の平均値として下記表1に示す。
【0033】
<冷凍ドーナツの食感の評価基準>
5点:シャリっとした食感があり、極めて良好な食感。
4点:ややシャリっとした食感があり、良好な食感。
3点:普通
2点:やや口どけ悪く、不良な食感。
1点:口どけ悪く不良な食感。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示す通り、各実施例は各比較例に比して、冷凍ドーナツの食感に優れていた。ミックス中における第1成分の含有量に関し、比較例1が20質量%、比較例2が75質量%であることから、冷凍ドーナツの食感向上のためには、第1成分の含有量を25〜70質量%とすることが有効であることがわかる。また、ミックス中における第2成分の含有量に関し、比較例3が0質量%、比較例4が11質量%であることから、冷凍ドーナツの食感向上のためには、第2成分を10質量%以下の範囲で含有させることが有効であることがわかる。また、実施例1〜3と実施例4との対比から、第2成分として大豆粉及び卵白粉の双方を使用することが特に好ましいことがわかる。また、実施例1〜3と実施例5との対比から、第2成分の含有量は6質量%を超えない程度が特に好ましいことがわかる。