(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願発明の基板の製造方法の実施形態について図面を用いて説明する。なお、図はあくまで発明の構成を説明するための概略図であり、各部材の大きさ、形状、数、異なる部材の大きさの比率などは図示するものに限定されない。
【0012】
<第1の実施形態>
まず、本実施形態の概要について説明する。本実施形態では、III族窒化物半導体の結晶片を複数並べて配置した下地基板を準備した後、下地基板の各結晶片からIII族窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させる。すると、成長したIII族窒化物半導体結晶が互いに接合し、III族窒化物半導体層を形成する。本実施形態では、このようにして、下地基板とIII族窒化物半導体層との積層体からなる基板を得る。そして、本実施形態は、複数の結晶片の配置方法やIII族窒化物半導体結晶の成長条件の最適化等により、III族窒化物半導体結晶が互いに接合して得られたIII族窒化物半導体層の表面に、転位密度の少ないエリアを生成する。以下、詳細に説明する。
【0013】
まず、本実施形態の基板の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態の基板の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。図示するように、本実施形態の基板の製造方法は、準備工程S10と、形成工程S20とを有する。
【0014】
準備工程S10では、第1の面方位の主面を有する複数の結晶片を、互いの間に隙間を有し、かつ、上記主面が同一方向を向く状態で並列配置した結晶片層を準備する。以下、当該工程を詳細に説明する。
【0015】
まず、複数の結晶片について説明する。結晶片は、III族窒化物半導体結晶(単結晶)からなる。結晶片は、例えば、III族窒化物半導体のバルク結晶から切り出されたものであってもよい。切り出す方法は特段制限されず、バンドソー、内周刃、外周刃などを用いて結晶片を切出してもよいし、劈開面で劈開することで結晶片を切出してもよい。
【0016】
結晶片の主面は、第1の面方位である。この第1の面方位が、本実施形態で得られる基板の成長面(III族窒化物半導体層の表面)における面方位となる。結晶片の主面は、例えば、{hk−(h+k)l}面(h、k及びlは整数)、又は、当該{hk−(h+k)l}面を所定角度(±10°以内)傾けた面であって、{0001}面と異なる面であってもよい。
【0017】
また、{hk−(h+k)l}面、及び、当該{hk−(h+k)l}面を所定角度(例:±10°以内)傾けた面は、さらに、m面及びa面と異なる面であってもよい。例えば、{11−22}面、{11−22}面を所定角度(例:±10°以内)傾けた面、{11−24}面、{11−24}面を所定角度(例:±10°以内)傾けた面、{10−12}面、{10−12}面を所定角度(例:±10°以内)傾けた面、{10−11}面、{10−11}面を所定角度(例:±10°以内)傾けた面、{20−21}面、{20−21}面を所定角度(例:±10°以内)傾けた面、{20−23}面、及び、{20−23}面を所定角度(例:±10°以内)傾けた面の中のいずれかの面であってもよい。
【0018】
図2及び
図3に、III族窒化物半導体のバルク結晶10から複数の結晶片11を切り出す処理の概要を示す。
図2は側面模式図であり、
図3は平面模式図である。
【0019】
図示するバルク結晶10は、c面を成長面(露出面)として有し、平面形状は略円形となっている。しかし、バルク結晶10の成長面の面方位及び平面形状はこれに限定されない。
【0020】
図2及び
図3に示すように、例えば、バルク結晶10からストライプ状に複数の結晶片11を切り出すことができる。すなわち、切り出される複数の結晶片11は互いに略平行に延伸している。また、複数の切断面は互いに略平行に延伸している。
図2及び
図3の場合、切断面が結晶片11の主面12となる。
図2に示すように、切断面(主面12)は、切断面(主面12)が所望の面方位となるように、バルク結晶10の法線方向から所定角度傾いている。
【0021】
図2及び
図3の場合、複数の結晶片11の延伸方向はm軸方向である。そして、主面12は、{hk−(h+k)l}面、又は、当該{hk−(h+k)l}面を所定角度(±10°以内の任意の角度)傾けた面であって、{0001}面と異なる面である。なお、結晶片11の延伸方向はm軸方向に限定されない。
【0022】
次に、このような結晶片11を並べて、結晶片層を準備する処理について説明する。
図4乃至
図6に、基板ホルダ20の上に複数の結晶片11を並べて配置した様子を示す。
図4は平面模式図であり、
図5及び
図6は側面模式図である。図中に示す「+c軸投影方向」は、結晶片11の+c軸方向を基板ホルダ20の載置面上に投影させた方向である。また、図中に示す「−c軸投影方向」は、結晶片11の−c軸方向を基板ホルダ20の載置面上に投影させた方向である。基板ホルダ20の載置面は、
図4の場合は紙面と平行であり、
図5及び
図6の場合は紙面に垂直、かつ、図中左右方向に延びる面と平行である。
【0023】
図4乃至
図6に示すように、基板ホルダ20の上に複数の結晶片11を並べて配置することで、結晶片層13が準備される。この段階で、複数の結晶片11は互いに分離している。そして、隣接する結晶片11同士の間には、隙間が存在する。平面視で、結晶片11の+c軸投影方向は、結晶片11間の隙間と交差している(
図4参照)。
【0024】
結晶片11は、主面12が同一方向を向いている。複数の結晶片11は、他の軸方向も同一方向を向くのが好ましい。ここでの「同一」は、完全に一致する場合、及び、±5°以内、好ましくは±2°以内の差を有する場合を含む概念である。
【0025】
図4乃至
図6に示すように、結晶片層13は、例えば一次元方向に並列配置された複数の結晶片11で構成することができる。結晶片11の一次元方向の幅W2は、例えば、30μm≦W2≦5mmを満たす。また、結晶片11同士の隙間の一次元方向の幅W1は、例えば、0<W1≦500μmを満たす。幅W1の上限をこのようにすることで、各結晶片11から成長したIII族窒化物半導体結晶同士を接合させることができる。
【0026】
図5は、
図2に示すような態様で切り出された複数の結晶片11の側面を加工することなくそのまま配置した様子を示す。
図6は、
図2に示すような態様で切り出された複数の結晶片11の側面を加工し、側面と主面との角度を略直角とした後に、配置した様子を示す。本実施形態は、いずれの手法も採用することができる。
【0027】
なお、並べる結晶片11の数は設計的事項であるが、多くするほど、大口径の基板を得ることができる。
【0028】
図1に戻り、準備工程S10の後に行われる形成工程S20では、複数の結晶片11各々の主面12からIII族窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させ、隣接する結晶片11の主面12から成長したIII族窒化物半導体結晶同士を互いに接合させてIII族窒化物半導体層を形成する。
【0029】
III族窒化物半導体結晶のエピタキシャル成長の具体例は特段制限されず、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、LPE(Liquid Phase Epitaxy)等を利用できる。
【0030】
例えば、
図7に示すようなハイドライド気相成長(HVPE)装置100を用いて実現してもよい。
【0031】
図示するHVPE装置100は、反応管121と、反応管121内に設けられている基板ホルダ123とを備える。また、HVPE装置100は、III族原料ガスを反応管121内に供給するIII族原料ガス供給部139と、窒素原料ガスを反応管121内に供給する窒素原料ガス供給部137とを備える。さらに、HVPE装置100は、ガス排出管135と、ヒータ129、130とを備える。
【0032】
基板ホルダ123は、反応管121の下流側に回転軸132により回転自在に設けられている。ガス排出管135は、反応管121のうち基板ホルダ123の下流側に設けられている。
【0033】
III族原料ガス供給部139は、ガス供給管126とソースボート128とIII族(Ga)原料127と反応管121のうち遮蔽板136の下の層とを含む。
【0034】
窒素原料ガス供給部137は、ガス供給管124と反応管121のうち遮蔽板136の上の層とを含む。
【0035】
III族原料ガス供給部139は、III族原子のハロゲン化物(たとえば、GaCl)を生成し、これを基板ホルダ123に保持された接合基板41の表面に供給する。
【0036】
ガス供給管126の供給口は、III族原料ガス供給部139内の上流側に配置されている。このため、供給されたハロゲン化水素ガス(たとえば、HClガス)は、III族原料ガス供給部139内でソースボート128中のIII族原料127と接触するようになっている。
【0037】
これにより、ガス供給管126から供給されるハロゲン含有ガスは、ソースボート128中のIII族原料127の表面または揮発したIII族分子と接触し、III族分子をハロゲン化してIII族のハロゲン化物を含むIII族原料ガスを生成する。なお、このIII族原料ガス供給部139の周囲にはヒータ129が配置され、III族原料ガス供給部139内は、たとえば800〜900℃程度の温度に維持される。
【0038】
反応管121の上流側は、遮蔽板136により2つの層に区画されている。図中の遮蔽板136の上側に位置する窒素原料ガス供給部137中を、ガス供給管124から供給されたアンモニアが通過し、熱により分解が促進される。なお、この窒素原料ガス供給部137の周囲にはヒータ129が配置され、窒素原料ガス供給部137内は、たとえば800〜900℃程度の温度に維持される。
【0039】
図中の右側に位置する成長領域122には、基板ホルダ123が配置され、この成長領域122内でGaN等のIII族窒化物半導体の成長が行われる。この成長領域122の周囲にはヒータ130が配置され、成長領域122内は、たとえば1000℃〜1050℃程度の温度に維持される。
【0040】
なお、形成工程S20では、互いに接合するIII族窒化物半導体結晶同士の接合界面が、成長方向に進むに従い一方のIII族窒化物半導体結晶側に傾くように、III族窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させる。
【0041】
例えば、
図4乃至
図6に示すように複数の結晶片11を並べて結晶片層13を構成した場合、結晶片11の主面12からエピタキシャル成長したIII族窒化物半導体結晶は、+c軸投影方向への成長が促進される一方、−c軸投影方向への成長はあまり進まない。このため、互いに接合するIII族窒化物半導体結晶同士の接合界面は、成長方向(図中、上方向)に進むに従い一方のIII族窒化物半導体結晶側に傾く。また、III族窒化物半導体結晶の成長条件において、例えばV/III比を2以上20以下とし、成長温度を900℃以上1100℃以下とすることで、+c軸投影方向への成長を促進させることができる。
【0042】
このように、本実施形態では、複数の結晶片11を互いの間に隙間が存在するように配置する(
図4参照)。また、平面視で、結晶片11の+c軸投影方向は、結晶片11間の隙間と交差するように、複数の結晶片11を配置することができる。そして、+c軸投影方向への成長が促進される成長条件で、複数の結晶片11の上にIII族窒化物半導体結晶を成長させる。
【0043】
このような本実施形態の場合、形成工程S20でIII族窒化物半導体層を形成後、研磨等によりIII族窒化物半導体層の表面を平坦化すると、
図8に示すような構造体が得られる。
図8は、III族窒化物半導体層30と、結晶片層13との積層体の側面模式図である。図示するように、III族窒化物半導体層30は、複数の結晶片11各々から成長したIII族窒化物半導体結晶同士が互いに接合して形成されている。
【0044】
III族窒化物半導体層30は、複数の結晶片11各々から+c軸投影方向に傾きながら成長した部分34と、当該部分34に挟まれた部分33とを含む。部分34は、結晶片層13の主面12を成長面としてエピタキシャル成長した部分であり、成長方向(図中、上方向)に進むに従い+c軸投影方向に傾いている。部分33はファセット面を有する。当該部分33は、+c軸投影方向に傾いて成長した部分34の露出面35からの横方向成長部であると考えられる。
【0045】
図示する(1)は、結晶片11の端部をIII族窒化物半導体層30の表面32に投影した位置である。図示する(2)及び(3)は、III族窒化物半導体層30の表面32に現れた部分34と部分33の境界部分である。
【0046】
なお、本発明者は、隣接する結晶片11各々から成長したIII族窒化物半導体結晶同士が結合した後、さらに、III族窒化物半導体結晶の成長を続けると、互いのIII族窒化物半導体結晶が再び分離する場合があることを確認している。例えば、
図8に示す(3)部分で互いに分離することを確認している。この場合、研磨などにより分離した箇所を除去することで、
図8と同様な状態とすることができる。なお、III族窒化物半導体結晶同士が結合した後に、III族窒化物半導体結晶の成長を続けても、互いのIII族窒化物半導体結晶が分離しない場合もある。
【0047】
本実施形態では、
図8に示すような、複数の結晶片11からなる結晶片層13と、III族窒化物半導体層30との積層体を、基板として得る。
【0048】
図8に示すように、本実施形態の製造方法で得られる基板は、第1の面方位(例:{hk−(h+k)l}面、又は、当該{hk−(h+k)l}面を所定角度(±10°以内の任意の角度)傾けた面であって、{0001}面と異なる面)の主面12を有する複数の結晶片11が、互いの間に隙間を有し、かつ、主面12が同一方向を向く状態で並列配置された結晶片層13と、結晶片層13の上に、主面12に接して位置するIII族窒化物半導体層30と、を有する。
【0049】
結晶片層13における結晶片11同士の間の隙間の幅W1(μm)は、0<W≦500を満たす。例えば、複数の結晶片11は一次元方向に並列配置される。この場合、上記幅W1(μm)は、当該一次元方向の隙間の幅である。
【0050】
III族窒化物半導体層30は、複数の結晶片11各々の主面12からエピタキシャル成長したIII族窒化物半導体結晶が、隣接する結晶片11の主面12からエピタキシャル成長したIII族窒化物半導体結晶と接合して形成されている。そして、III族窒化物半導体層30における互いに接合したIII族窒化物半導体結晶同士の接合界面31は、成長方向(
図8中、下から上方向)に進むに従い、一方のIII族窒化物半導体結晶側に傾いている。
図8では、図中右側に位置するIII族窒化物半導体結晶側に傾いている。そして、第1のIII族窒化物半導体結晶のペアの接合界面31は、他のペアの接合界面31と平面視(図中、上から下方向に観察)で重ならない。
【0051】
また、III族窒化物半導体層30は、複数の結晶片11各々から+c軸投影方向に傾きながら成長した部分34と、当該部分34に挟まれた部分33とを含む。部分34は、結晶片層13の主面12を成長面としてエピタキシャル成長した部分であり、成長方向(図中、上方向)に進むに従い+c軸投影方向に傾いている。部分33はファセット面を有する。当該部分33は、+c軸投影方向に傾いて成長した部分34の露出面35からの横方向成長部であると考えられる。
【0052】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0053】
本実施形態の製造方法では、互いの間に隙間を有する状態で複数の結晶片11を並列配置して結晶片層13を形成し、その上に、III族窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させる。このように隙間を設けることで、上述した部分33及び部分34の両方を含むIII族窒化物半導体層30を形成することができる。この理由は明らかでないが、隙間を設けた場合、隣接する結晶片11各々から成長したIII族窒化物半導体結晶同士が互いに接し、接合するまでに一定の時間を要することとなる。この間に、部分34の露出面35から部分33が横方向成長するため、上記構造を形成するものと推測される。
【0054】
以下の実施例で示すが、このように部分33及び部分34を含むIII族窒化物半導体層30の場合、表面32における
図8の(2)の部分の転位密度が小さくなる。例えば、1×10
6cm
−2以下とすることができる。(1)の部分は(2)の部分より大きいものの、ある程度は小さい転位密度となる。例えば、1×10
7cm
−2程度とすることができる。そして、(3)の部分は計測不能なほど転位密度が大きくなる。表面32では、(2)の部分から(1)の部分及び(3)の部分に向かうに従い、徐々に転位密度が大きくなっていく。このようなIII族窒化物半導体層30の表面32では、(2)の部分を含む所定のエリアの転位密度が小さくなる。
【0055】
このように、本実施形態では、特徴的な製造方法により、上述した部分33及び部分34を含むIII族窒化物半導体層30を形成することができる。そして、このようなIII族窒化物半導体層30は、表面32における所定部分の転位密度が小さいという特徴を有する。
【0056】
本実施形態では、結晶片11間の隙間を、隣接する結晶片11から成長したIII族窒化物半導体結晶同士が接合する範囲で、広げることができる。
図9に示すように、隙間を広げるほど、III族窒化物半導体層30の表面に現れる部分33の面積を大きくすることができる。結果、III族窒化物半導体層30の表面における転位密度の少ないエリアの面積を大きくすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、+c軸投影方向への成長が促進される成長条件で、複数の結晶片11の上にIII族窒化物半導体結晶を成長させる。これにより、部分34の露出面35が傾き、ここからの横方向成長により部分33が形成されると考えられる。
【0058】
<第2の実施形態>
本実施形態の基板の製造方法は、結晶片層13を構成する結晶片11の高さ(結晶片層13の厚さ方向の高さ)がばらついている点で、第1の実施形態と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。例えば、結晶片11の高さは、1μm以上100μm以下の範囲でばらつく。なお、隣接する結晶片11の高さは互いに異なるのが好ましい。そして、結晶片11から成長したIII族窒化物半導体結晶が傾く先の結晶片11の方が、高さが低いのが好ましい。例えば、+c軸投影方向に進むに従い、徐々に複数の結晶片11の高さが低くなるようにしてもよい。
【0059】
図18に、本実施形態の基板の模式図の一例を示す。
図18は、
図8と同様の手法で基板を示している。
図18では、結晶片11から成長したIII族窒化物半導体結晶が傾く先の結晶片11(図中、右側の結晶片11)の方が、高さが低くなっている。そして、+c軸投影方向に進むに従い、徐々に複数の結晶片11の高さが低くなっている。このようにした場合、III族窒化物半導体層30の表面に現れる部分33の面積を大きくすることができる。そして、隣接する結晶片11の高さの差を大きくするほど、III族窒化物半導体層30の表面に現れる部分33の面積を大きくすることができる。結果、III族窒化物半導体層30の表面における転位密度の少ないエリアの面積を大きくすることができる。
【0060】
<第3の実施形態>
図10は、本実施形態の基板の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。図示するように、本実施形態の基板の製造方法は、準備工程S10と、形成工程S20と、除去工程S30とを有する。準備工程S10、及び、形成工程S20は、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0061】
形成工程S20の後に行われる除去工程S30では、結晶片層13とIII族窒化物半導体層30との積層体から結晶片層13を除去する。除去する手段は特段制限されず、例えば研磨等の手段を採用できる。
【0062】
本実施形態では、このようにして得られたIII族窒化物半導体層30を基板として得る。なお、III族窒化物半導体層30に対して平坦化や、側面加工等の処理を施したものを、基板として得てもよい。
【0063】
図11に、本実施形態の基板(III族窒化物半導体層30)の側面模式図を示す。図示するように、本実施形態の基板は、複数のIII族窒化物半導体結晶が互いに接合して形成されている。そして、互いに接合しているIII族窒化物半導体結晶同士の接合界面31は、一方のIII族窒化物半導体結晶側に傾いている。第1のIII族窒化物半導体結晶のペアの接合界面31は、他のペアの接合界面31と平面視で重ならない。
【0064】
このような本実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様に、基板(III族窒化物半導体層30)の表面32に形成される転位が少ないエリアを広くすることができる。すなわち、転位が少ないエリアが表面32に広く存在する基板を得ることができる。
【0065】
<<実施例>>
<準備工程S10>
まず、GaNのバルク結晶から、
図2及び
図3に示すように、m軸方向に延伸する複数の結晶片11をストライプ状に切り出した。主面12となる切断面は、(11−24)面とした。
【0066】
次に、
図4に示すように、基板ホルダ20上に、複数の結晶片11を互いの間に隙間を有し、かつ、(11−24)面が同一方向を向く状態で、一次元方向に並べて配置することで、結晶片層13を準備した。結晶片11の一次元方向の幅W2は、50μm以上80μm以下であった。また、結晶片11間の隙間の幅W1は、50μm以上80μm以下であった。
【0067】
<形成工程S20>
その後、結晶片層13を保持した基板ホルダ20をHVPE装置内にセットし、V/III比=10、成長温度=1040℃でGaNをエピタキシャル成長させた。
【0068】
図12は、エピタキシャル成長後の結晶片層13及びIII族窒化物半導体層30の積層体の断面を示す蛍光顕微鏡像である。結晶片層13には、2つの結晶片が写っている。図示する(1)乃至(3)は、
図8を用いて説明した(1)乃至(3)部分に相当する。
【0069】
図12より、各結晶片から成長したIII族窒化物半導体結晶は+c軸投影方向に傾いて成長が進んでいることが分かる。また、各結晶片から成長したIII族窒化物半導体結晶は互いに接合した後、(3)の位置で分離していることが分かる。
【0070】
当該実施例では、
図12に示されている積層体の表面を点線Aの位置まで研磨したものを、基板として得た。
【0071】
<観察>
図13は、
図12の積層体を図中上から下方向に観察した蛍光顕微鏡像である。図示する(1)乃至(3)は、
図8を用いて説明した(1)乃至(3)部分に相当する。
図14は、(1)の部分を観察したCL(Cathode Luminescence)像である。
図15は、(2)の部分を観察したCL像である。
図16は、(3)の部分を観察したCL像である。当該像における黒い点及びその群が転位である。
【0072】
図14乃至
図16より、(3)の部分は多くの転位が存在することが分かる。そして、(2)の部分は最も転位が少ないことが分かる。
【0073】
図17に、(1)乃至(3)の部分各々における転位の数をカソードルミネッセンス測定で測定した結果を示す。当該図より、(2)の部分は、(1)及び(3)の部分に比べて転位が少ないことが分かる。また、(2)の部分は、1×10
6cm
−2以下と転位がきわめて少ないことが分かる。さらに、(1)の部分も比較的転位が少ないことが分かる。そして、(2)の部分を含む所定のエリアは、転位密度が小さいエリアになっていることが分かる。
【0074】
以下、参考形態の例を付記する。
1. 第1の面方位の主面を有する複数の結晶片が、互いの間に隙間を有し、かつ、前記主面が同一方向を向く状態で並列配置された結晶片層と、
前記結晶片層の上に、前記主面に接して位置するIII族窒化物半導体層と、
を有する基板。
2. 1に記載の基板において、
前記結晶片層における前記結晶片同士の間の隙間の幅W1(μm)は、0<W≦500を満たす基板。
3. 1又は2に記載の基板において、
前記III族窒化物半導体層は、前記複数の結晶片各々の前記主面からエピタキシャル成長したIII族窒化物半導体結晶が、隣接する前記結晶片の前記主面からエピタキシャル成長した前記III族窒化物半導体結晶と接合して形成されている基板。
4. 3に記載の基板において、
前記III族窒化物半導体層における互いに接合した前記III族窒化物半導体結晶同士の接合界面は、成長方向に進むに従い、一方の前記III族窒化物半導体結晶側に傾いている基板。
5. 1から4のいずれかに記載の基板において、
前記結晶片の前記結晶片層の厚さ方向の高さはばらついている基板。
6. 5に記載の基板において、
隣接する前記結晶片の前記高さは互いに異なる基板。
7. 複数のIII族窒化物半導体結晶が互いに接合して形成されており、
互いに接合している前記III族窒化物半導体結晶同士の接合界面は、一方の前記III族窒化物半導体結晶側に傾いており、第1の前記III族窒化物半導体結晶のペアの前記接合界面は、他の前記ペアの前記接合界面と平面視で重ならない基板。
8. 第1の面方位の主面を有する複数の結晶片を、互いの間に隙間を有し、かつ、前記主面が同一方向を向く状態で並列配置した結晶片層を準備する準備工程と、
前記準備工程の後、前記複数の結晶片各々の前記主面からIII族窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させ、隣接する前記結晶片の前記主面から成長した前記III族窒化物半導体結晶同士を互いに接合させてIII族窒化物半導体層を形成する形成工程と、
を有する基板の製造方法。
9. 8に記載の基板の製造方法において、
前記形成工程では、互いに接合する前記III族窒化物半導体結晶同士の接合界面が、成長方向に進むに従い一方の前記III族窒化物半導体結晶側に傾くように前記III族窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させる基板の製造方法。
10. 8又は9に記載の基板の製造方法において、
前記形成工程の後、前記結晶片層と前記III族窒化物半導体層との積層体から前記結晶片層を除去する除去工程をさらに有する基板の製造方法。