特許第6773524号(P6773524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773524スプリング固定構造及びスプリング固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773524
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】スプリング固定構造及びスプリング固定方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   F16L57/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-218991(P2016-218991)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-76919(P2018-76919A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390034452
【氏名又は名称】ブリヂストンフローテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】今市 文雄
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−094997(JP,A)
【文献】 実開昭50−058386(JP,U)
【文献】 特開2016−050594(JP,A)
【文献】 特開平11−037366(JP,A)
【文献】 特開2014−077495(JP,A)
【文献】 特開2003−113882(JP,A)
【文献】 米国特許第04431031(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0088965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
F16L 11/10
F16L 33/20
F16L 35/00
F16B 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手に設けられた加締部の内周側に、ホースの一端部を加締めて固定したホース付き継手と、
少なくとも前記加締部の外周側と前記ホースの外周側に跨って設けられ、螺旋状の巻線を備えたスプリングと、
前記加締部の外周側に配置された前記スプリングの前記巻線の間に挿入され、周方向の一部がカットされると共に内径が前記加締部の外径より小さく、前記加締部の少なくとも一部に面接触すると共に両側の前記巻線の一部に接触するように配置された環状体と、
を有するスプリング固定構造。
【請求項2】
前記環状体及び前記巻線を含んだ部位を外周側から締め付ける締め付けバンドを備える請求項1に記載のスプリング固定構造。
【請求項3】
前記加締部に面接触する前記環状体の外径は、前記加締部に接触する前記スプリングの前記巻線の外側部分の外径よりも大きい構成とされている請求項2に記載のスプリング固定構造。
【請求項4】
前記環状体の周方向と直交する断面が、矩形状とされている請求項2又は請求項3に記載のスプリング固定構造。
【請求項5】
複数の前記環状体が、前記スプリングの異なる位置の前記巻線の間にそれぞれ挿入されている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のスプリング固定構造。
【請求項6】
継手に設けられた加締部の内周側にホースの一端部を加締めて固定したホース付き継手に、スプリングを固定するスプリング固定方法であって、
前記ホースの外周面側から前記加締部の外周面側にスプリングを押し込む押込工程と、
前記加締部の外周面側に配置された前記スプリングの螺旋状の巻線の間に、周方向の一部がカットされると共に内径が前記加締部の外径より小さい環状体を開いて前記環状体を挿入し、前記環状体を前記加締部の少なくとも一部に面接触させると共に両側の前記巻線の一部に接触させる挿入工程と、
を有するスプリング固定方法。
【請求項7】
前記挿入工程の後に、
前記環状体及び前記巻線が配置された部分を外周側から締め付けバンドで締め付ける締付工程を有する請求項6に記載のスプリング固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース付き継手にスプリングを固定するスプリング固定構造及びスプリング固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、軟質ホースの外周面を囲繞するためのスプリングコイル(スプリング)の両端に、ホースの外周面に圧着固定される締め付け具を備えたホース保護具が開示されている。このホース保護具は、ホースの配管時に曲げられる予定の箇所に位置させ、その両端の締め付け具の円環状バンド部をホースの外周面に締め付け圧着することにより、ホースの予定の箇所にスプリングコイルを固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−121125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、管継手の外周側にホースの一端を嵌合し、この嵌合部の外側からボルトを用いた締め付け具で締め付けることで、ホースの嵌合部にホース保護具を取り付けている。
【0005】
例えば、継手では、ホースの外周側に配置された加締部を加締めることで、加締部の内周側にホースが固定される構造がある。この継手では、例えば、加締部の外側から加締部の中心方向に8個のダイスで加締めるときに、8個のダイスの隙間から加締部の外周側が盛り上がり、加締部の外周に軸方向の略矩形状の細い幅の突起部(ダイスの隙間から盛り上がった細い縦皺)が形成される。このため、上記特許文献1に記載のホース保護具のスプリングコイルを継手の加締部に接触させる場合、スプリングコイルと加締部とがほぼ点接触となる可能性がある。このため、ホース保護具を取り付けたホースが、例えば、大型のローディング又はショベルを備えた油圧式の重機などに使用されたときに、動作時の振動、引張り、及び他の部材との接触などの外力により、ホース保護具のスプリングコイルが継手の加締部から外れる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ホース付き継手の加締部からスプリングが外れることを抑制することができるスプリング固定構造及びスプリング固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明に係るスプリング固定構造は、継手に設けられた加締部の内周側に、ホースの一端部を加締めて固定したホース付き継手と、少なくとも前記加締部の外周側と前記ホースの外周側に跨って設けられ、螺旋状の巻線を備えたスプリングと、前記加締部の外周側に配置された前記スプリングの前記巻線の間に挿入され、周方向の一部がカットされると共に内径が前記加締部の外径より小さく、前記加締部の少なくとも一部に面接触すると共に両側の前記巻線の一部に接触するように配置された環状体と、を有する。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ホース付き継手では、継手に設けられた加締部の内周側に、ホースの一端部が固定されており、加締部の外周側とホースの外周側に跨ってスプリングが設けられている。加締部の外周側に配置されたスプリングの巻線の間には、周方向の一部がカットされた環状体が挿入されており、環状体は、加締部の少なくとも一部に面接触すると共に両側の巻線の一部に接触するように配置されている。この構造では、環状体が加締部の少なくとも一部に面接触(面当たり)すると共に、環状体が両側の巻線に線当たりし、環状体の内径が加締部の外径より小さいため、環状体が加締部に食い込み、環状体と加締部との摩擦抵抗が大きくなる。このため、ホース付き継手の加締部からスプリングが外れることを抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスプリング固定構造において、前記環状体及び前記巻線を含んだ部位を外周側から締め付ける締め付けバンドを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、加締部における環状体及び巻線を含んだ部位が外周側から締め付けバンドで締め付けている。締め付けバンドにより、環状体の加締部への締め付け力が大きくなるため、環状体と加締部との摩擦抵抗がより大きくなり、ホース付き継手の加締部からスプリングが外れることがより効果的に抑制される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のスプリング固定構造において、前記加締部に面接触する前記環状体の外径は、前記加締部に接触する前記スプリングの前記巻線の外側部分の外径よりも大きい構成とされている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、加締部に面接触する環状体の外径が、加締部に接触するスプリングの巻線の外側部分の外径よりも大きいため、締め付けバンドで締め付けたときに、環状体が締め付けバンドで押されて、環状体の加締部への食い込み量が増加する。このため、環状体と加締部との摩擦抵抗がさらに大きくなる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載のスプリング固定構造において、前記環状体の周方向と直交する断面が、矩形状とされている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、環状体の周方向と直交する断面が、矩形状とされており、環状体の内周面が加締部の少なくとも一部に面接触(面当たり)すると共に、環状体の外周面が締め付けバンドに面接触(面当たり)する。このため、環状体と締め付けバンドとの摩擦抵抗が大きくなると共に、環状体と加締部との摩擦抵抗が大きくなる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のスプリング固定構造において、複数の前記環状体が、前記スプリングの異なる位置の前記巻線の間にそれぞれ挿入されている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、複数の環状体が、スプリングの異なる位置の巻線の間にそれぞれ挿入されているため、複数の環状体が加締部に食い込み、複数の環状体と加締部との摩擦抵抗がさらに大きくなる。
【0017】
請求項6に記載の発明に係るスプリング固定方法は、継手に設けられた加締部の内周側にホースの一端部を加締めて固定したホース付き継手に、スプリングを固定するスプリング固定方法であって、前記ホースの外周面側から前記加締部の外周面側にスプリングを押し込む押込工程と、前記加締部の外周面側に配置された前記スプリングの螺旋状の巻線の間に、周方向の一部がカットされると共に内径が前記加締部の外径より小さい環状体を開いて前記環状体を挿入し、前記環状体を前記加締部の少なくとも一部に面接触させると共に両側の前記巻線の一部に接触させる挿入工程と、を有する。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、継手に設けられた加締部の内周側にホースの一端部が固定されており、押込工程により、ホースの外周面側から加締部の外周面側にスプリングを押し込む。さらに、挿入工程により、加締部の外周面側に配置されたスプリングの螺旋状の巻線の間に、周方向の一部がカットされた環状体を開いて環状体を挿入し、環状体を加締部の少なくとも一部に面接触させると共に両側の巻線の一部に接触させる。これにより、環状体が加締部の少なくとも一部に面接触(面当たり)すると共に、環状体が両側の巻線に線当たりし、環状体の内径が加締部の外径より小さいため、環状体が加締部に食い込み、環状体と加締部との摩擦抵抗が大きくなる。このため、ホース付き継手の加締部からスプリングが外れることを抑制することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載のスプリング固定方法において、前記挿入工程の後に、前記環状体及び前記巻線が配置された部分を外周側から締め付けバンドで締め付ける締付工程を有する。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、挿入工程の後の締付工程により、環状体及び巻線が配置された部分が外周側から締め付けバンドで締め付けられる。締め付けバンドにより、環状体の加締部への締め付け力が大きくなるため、環状体と加締部との摩擦抵抗がより大きくなり、ホース付き継手の加締部からスプリングが外れることがより効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本願発明に係るスプリング固定構造及びスプリング固定方法によれば、ホース付き継手からスプリングが外れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1実施形態に係るスプリング固定構造が適用されたホース付き継手を示す側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るスプリング固定構造が適用されたホース付き継手において、スプリング及び止め輪を裁断した状態を示す側断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るスプリング固定構造に用いられるスプリング及び止め輪を拡大した状態で示す拡大断面図である。
図4図4(A)は、止め輪を示す斜視図であり、図4(B)は、止め輪を示す正面図である。
図5図5は、ホース付き継手の加締部に複数の止め輪を挿入した状態を示す断面図である。
図6図6(A)は、ホース付き継手の加締部にスプリングを押し込む工程を示す側面図であり、図6(B)は、ホース付き継手の加締部に配置されたスプリングの巻線の間に止め輪を挿入する工程を示す側面図であり、図6(C)は、止め輪及びスプリングをパンチバンドで締め付けた状態を示す側面図である。
図7図7は、第1実施形態に係るスプリング固定構造が適用されたホース付き継手の使用例を示す側面図である。
図8図8は、比較例に係るスプリング固定構造が適用されたホース付き継手の使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1には、本発明の第1実施形態であるスプリング固定構造S10が適用されたホース付き継手12が側面図にて示されている。また、図2には、スプリング固定構造S10が適用されたホース付き継手12において、スプリング34及び止め輪36を裁断した状態が側断面図にて示されている。図1及び図2に示されるように、ホース付き継手12は、継手14と、継手14の加締部20により固定されたホース30と、を備えたホースアセンブリ品とされている(図2参照)。
【0025】
図2に示されるように、継手14は、軸方向の一端部側にホース30の端部内側が挿入される芯部18(図3参照)を備えた継手本体16と、この継手本体16の芯部18(図3)に沿って延在されると共にホース30の外側に配置された金属製の加締部(締め金具)20と、を備えている。図3に示されるように、継手本体16の芯部18は、略円筒状に形成されており、内部に流体(例えば液体)が通る流路22が形成されている。
【0026】
図2に示されるように、加締部20は、ホース30を加締めて固定するための筒状部20A(図3参照)と、筒状部20Aの先端部に形成された拡径部20Bと、を備えている。拡径部20Bは、ホース30を加締部20に挿入し易くするために、筒状部20Aよりも内径及び外径が先端側に向かって拡大された構成とされている。また、加締部20は、筒状部20Aの根元側に形成されて半径方向外側に突出する突出部20Cを備えている。継手本体16の軸方向中間部側には、半径方向外側に突出する突起(図示省略)が設けられており、加締部20の突出部20Cの内壁が継手本体16の突起に係止されることで、加締部20が継手本体16に取り付けられている。なお、本発明の加締部は、上記加締部20の形状に限定するものではなく、筒状部20Aの先端部に拡径部20Bがなく、ストレート形状のもの、俵(ウエーブ)形状のものでも適用可能である。
【0027】
なお、図3では、芯部18は、外周が断面視にて鋸歯状とされているが、芯部は、他の形状に変更可能である。また、図3では、加締部20は、内周が断面視にて鋸歯状とされているが、加締部は、他の形状に変更可能である。
【0028】
図2及び図3に示されるように、ホース付き継手12では、ホース30が加締部20の内側に挿入された状態で、加締部20が外側から加締られることにより、ホース30が継手本体16の芯部18に押圧されて固定されている。図示を省略するが、本実施形態では、例えば、加締部20は、外側から継手14の中心方向に8個のダイスで加締られている。これにより、8個のダイスの隙間から加締部20の外周側の部位が盛り上がり、加締部20の外周に軸方向の略矩形状の細い幅の突起部(ダイスの隙間から盛り上がった細い縦皺)が形成されている。
【0029】
なお、本発明では、加締部20を8個のダイス(8方締め)で加締める構成に限定するものではなく、加締部を6方締めや2つ割りダイスにより締め付ける構成でもよい。いずれの方法でも、締め付け後の加締部の表面は、スプリング34との接触面積が小さく(縦皺部での接触)、加締部とスプリング34との摩擦抵抗が小さい。
【0030】
図2に示されるように、継手本体16の軸方向の中間部には、半径方向外側に突出した大径部24が設けられている。継手本体16の軸方向の他端部側(加締部20と反対側)には、継手14を他の配管と接続するためのナット26が回転可能に取り付けられている。大径部24は、軸方向視にて外形が略六角形状に形成されており、他の配管をナット26で締め付けて接続する際にスパナを掛けて固定できるようになっている。また、ナット26も、軸方向視にて外形が略六角形状に形成されている。継手14の形状は、図示のものに限定されるものではなく、フランジ、雄ねじ、その他の形状のものについても本発明に適用可能である。
【0031】
図1図3に示されるように、ホース付き継手12では、ホース30と継手14の加締部20との接続部分を含む位置にスプリング34が外装されている。言い換えると、スプリング34は、加締部20の外周側とホース30の外周側に跨って配置されている。スプリング34は、螺旋状の巻線34Aを備えたコイルスプリングとされている。巻線34Aの断面は、略円形状とされている。スプリング34は、継手14の加締部20とホース30との接続部分の外側に配置されることで(図2参照)、継手14の加締部20付近でのホース30の曲げを緩和し、ホース30への外力によるダメージを低減させると共に、ホース30の外傷を防止するための保護材として機能する。
【0032】
また、加締部20の外周側に配置されたスプリング34の巻線34Aの間には、環状体としての止め輪36が挿入されている。その際、複数(本実施形態では3個)の止め輪36が、スプリング34の異なる位置の巻線34Aの間にそれぞれ挿入されている。本実施形態では、複数(本実施形態では3個)の止め輪36が、軸方向に沿って連続して隣り合う巻線34Aの間にそれぞれ配置されている。
【0033】
図4(A)、(B)に示されるように、止め輪36は、周方向の一部がカットされた略円形の形状とされている。止め輪36の内径は、通常の状態(自由状態)で加締部20の外径よりも小さい。本実施形態では、止め輪36は、周方向の一部が切り欠かれた略C字状とされており、外径及び内径が同心となるように構成された軸用同心C型止め輪とされている。止め輪36の周方向の両側の端部36Aの間には、隙間37が形成されている。また、止め輪36の端部36Aの端面には、半径方向内側に向かって隙間37が徐々に広くなる形状とされた傾斜面36Bが形成されている。止め輪36は、隙間37を広げる方向に変形させることで、スプリング34の巻線34Aの間に挿入し、加締部20に嵌め込むことができるようになっている。
【0034】
図1に示されるように、止め輪36は、周方向と直交する断面が、矩形状とされている。これにより、止め輪36は、加締部20の少なくとも一部に面接触すると共に、両側の巻線34Aの一部に接触するように配置されている。
【0035】
図5に示されるように、複数(本実施形態では、3個)の止め輪36が、スプリング34の異なる位置の巻線34Aの間にそれぞれ挿入された状態で、複数(本実施形態では、3個)の止め輪36の隙間37が加締部20の周方向に均等となるように配置されている。言い換えると、加締部20の軸方向視にて、3個の止め輪36の隙間37が加締部20の軸方向に重ならないように配置されている。本実施形態では、3個の止め輪36の隙間37は、加締部20の外周側に約120°の位置(間隔)で配置されている。なお、本実施形態では、加締部20は、実際には、8つのダイスで加締めることにより、加締部20の外周面にダイスの隙間から盛り上がった8つの細い突起部が形成されているが、図5では、突起部の図示を省略する。実際には、止め輪36及びスプリング34の巻線34Aは、加締部20の8つの突起部と接触することになる。
【0036】
加締部20の外周側の止め輪36及び巻線34Aを含んだ部位には、止め輪36及び巻線34Aを含んだ部位を外周側から締め付ける締め付けバンドとしてのパンチバンド40が取り付けられている。パンチバンド40は、帯状体40Aと、帯状体40Aの周方向の一端部に取り付けられたバックル40Bと、を備えている(図6(C)参照)。パンチバンド40は、帯状体40Aの周方向の両端部を引っ張り、両端部が重なる部分をバックル40Bで固定することで、止め輪36及び巻線34Aを含んだ部位を外周側から締め付けるようになっている(図6(C)参照)。
【0037】
止め輪36が加締部20に面接触した状態で、止め輪36の外径は、加締部20の外周側に接触するスプリング34の巻線34Aの外側部分の外径よりも大きい(図3参照)。これにより、パンチバンド40で止め輪36及び巻線34Aを含んだ部位を締め付けたときに、パンチバンド40に押されて止め輪36が加締部20に食い込むようになっている。
【0038】
本実施形態では、ホース30は、例えば、34.5MPa用であり、口径32サイズ(内径がφ50.8mm、外径がφ75.2mm)とされている。また、継手14としては、例えば、加締部20の八方締め最大径(ダイスの隙間からはみ出した突起部の外径)は、φ79.2mmとされている。また、スプリング34としては、例えば、巻線34Aの線径はφ3.2mm、スプリング34の内径は、φ79mmの全密着とされている。パンチバンド40は、例えば、ステンレス製であり、幅が16.6mmのバンド引張結束式とされている。止め輪36は、例えば、ミスミ株式会社製WR−85であり、断面が矩形のC型止め輪である(開放用突起部なし)。本実施形態では、止め輪36の内径は、通常の状態(自由状態)で75.2mmとされており、止め輪36の内径は、加締部20の外径よりも小さい。また、止め輪36の板厚は2.5mmとされている。
【0039】
次に、ホース付き継手12にスプリング34を固定するスプリング固定方法について説明すると共に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
図6(A)に示されるように、ホース付き継手12では、継手14の加締部20によりホース30の一端部が加締めて固定された状態とされている。このホース付き継手12の加締部20に、ホース30の側からスプリング34を押し込む(押込工程)。その際、スプリング34を、巻き広がる方向に回転させながら、ホース付き継手12の加締部20に押し込む。これにより、ホース付き継手12の加締部20にスプリング34が外装された状態となる。
【0041】
次いで、止め輪36の両側の端部36A(図4参照)を互いに逆方向に引っ張り、止め輪36を概ねスプリング34のピッチ傾斜と合わせる。そして、止め輪36の隙間37(図4参照)を開くことにより、図6(B)に示されるように、加締部20の外周面側に配置されたスプリング34の螺旋状の巻線34Aの間に、止め輪36を挿入する。これにより、図2及び図3に示されるように、止め輪36を加締部20に嵌め込み、止め輪36を加締部20の少なくとも一部に面接触させると共に、両側(2つ)の巻線34Aに接触させる(挿入工程)。本実施形態では、3個の止め輪36を連続して隣り合う巻線34Aの間にそれぞれ挿入することで、継手14の軸方向に沿って巻線34A、1個目の止め輪36、巻線34A、2個目の止め輪36、巻線34A、3個目の止め輪36、巻線34Aが配置された状態となる。
【0042】
加締部20に嵌め込まれた止め輪36の外径は、加締部20に配置されたスプリング34の外側部分の外径よりも大きい(図6(B))。これにより、加締部20に嵌め込まれた止め輪36の外側面が、加締部20に配置されたスプリング34よりも外側に突出する。本実施形態では、止め輪36の外側面が、スプリング34よりも外側に約0.2mm突出する。
【0043】
その際、図5に示されるように、3個の止め輪36は、隙間37が加締部20の周方向に均等となるように配置する。本実施形態では、3個の止め輪36の隙間37が、加締部20の周方向に約120°の位置(間隔)となるように配置する。これにより、止め輪36が加締部20に食い込み、さらに、止め輪36が加締部20(実際には突起部)に面接触することで、止め輪36と加締部20との摩擦抵抗が大きくなる。
【0044】
さらに、図6(C)に示されるように、止め輪36及び巻線34Aが配置された部分を外周側からパンチバンド40で締め付け、帯状体40Aの重なった部分をバックル40Bで固定する(締付工程)。これにより、ホース付き継手12の加締部20にスプリング34を固定するスプリング固定構造S10が形成される。
【0045】
図7には、スプリング固定構造S10が適用されたホース付き継手12の使用例が側面図にて示されている。図7に示されるように、ホース30の長手方向の両端部が、継手14の加締部20により継手14に固定されている。この状態で、ホース30の外周面側にスプリング34が外装されており、ホース30の長手方向の両端部で継手14の加締部20に、スプリング34が本実施形態のスプリング固定構造S10により固定されている。図7の例では、ホース30の長手方向の両端部では、スプリング34の巻線34Aが密着した状態とされており、ホース30の長手方向の中間部では、スプリング34の巻線34Aが間隔をおいて配置されている。これにより、ホース30と加締部20との接続部分の曲げがスプリング34によって緩和され、ホース30への外力によるダメージが低減される。また、スプリング34によって、ホース30の外傷などが抑制される。
【0046】
上記のようなスプリング固定構造S10では、止め輪36が加締部20の少なくとも一部に面当たり(面接触)すると共に、止め輪36が両側の巻線34Aに線当たりし、止め輪36の内径が加締部20の外径より小さいため、止め輪36が加締部20に食い込む。このため、止め輪36と加締部20との摩擦抵抗が大きくなり、ホース付き継手12の加締部20からスプリング34が外れることが抑制される。
【0047】
また、スプリング固定構造S10では、止め輪36及び巻線34Aを含んだ部位が外周側からパンチバンド40で締め付けられている。このため、パンチバンド40により、止め輪36の加締部20への締め付け力が大きくなり、止め輪36と加締部20との摩擦抵抗がより大きくなる。
【0048】
また、止め輪36が加締部20に嵌め込まれた状態で、加締部20に面接触する止め輪36の外径が、加締部20の外周側に接触するスプリング34の巻線34Aの外側部分の外径よりも大きい。このため、パンチバンド40で締め付けたときに、止め輪36がパンチバンド40で押されて、止め輪36の加締部20への食い込み量が増加する。このため、止め輪36と加締部20との摩擦抵抗が大きくなる。
【0049】
また、止め輪36の周方向と直交する断面が、矩形状とされており、止め輪36の内周面が加締部20の少なくとも一部に面当たり(面接触)すると共に、止め輪36の外周面がパンチバンド40に面当たり(面接触)する。このため、止め輪36とパンチバンド40との摩擦抵抗が大きくなると共に、止め輪36と加締部20との摩擦抵抗が大きくなる。
【0050】
さらに、スプリング固定構造S10では、複数の止め輪36が、スプリング34の異なる位置の巻線34Aの間にそれぞれ挿入されているため、複数の止め輪36により加締部20への締め付け力が大きくなり、複数の止め輪36と加締部20との摩擦抵抗が大きくなる。
【0051】
このため、上記のスプリング固定構造S10では、ホース付き継手12の加締部20からスプリング34が外れることを抑制することができる。
【0052】
図8には、比較例のスプリング固定構造S100が適用されたホース付き継手12の使用例が側面図にて示されている。図8に示されるように、ホース30の長手方向の両端部が、継手14の加締部20により継手14に固定されている。比較例のスプリング固定構造S100では、ホース30の外周面側及び継手14の加締部20にスプリング34が外装されており、継手14の加締部20では、パンチバンド40によりスプリング34が加締部20に押し付けられている。
【0053】
このスプリング固定構造S100では、スプリング34の巻線34Aが加締部20に点接触(点当たり)しており、ホース付き継手12の使用時の振動、引張り、及び他の部材との接触などの外力により、スプリング34が継手14の加締部20から外れる可能性がある。
【0054】
これに対して、本実施形態のスプリング固定構造S10では、スプリング34の巻線34Aの間に止め輪36が挿入されている。その際、止め輪36が加締部20の少なくとも一部に面当たり(面接触)すると共に、止め輪36が両側の巻線34Aに線当たりし、止め輪36の内径が加締部20の外径より小さいため、止め輪36が加締部20に食い込む。このため、止め輪36と加締部20との摩擦抵抗が大きくなり、ホース付き継手12の加締部20からスプリング34が外れることを抑制することができる。
【0055】
なお、第1実施形態のスプリング固定構造S10では、スプリング34の外周側をパンチバンド40で締め付けているが、本発明は、パンチバンド40に限定するものではない。例えば、ボルトによって締結する締め付けバンドなどを用いる構成でもよい。また、スプリング固定構造は、パンチバンド40などの締め付けバンドを用いない構成でもよい。
【0056】
また、第1実施形態のスプリング固定構造S10では、3個の止め輪36が、軸方向に沿って連続して隣り合う巻線34Aの間にそれぞれ配置されているが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、複数の止め輪は、隣り合う巻線34Aの間でなくても、巻線34Aを複数本飛ばして配置されている構成でもよい。例えば、最初の止め輪の2本目隣りの巻線34Aの間に2本目の止め輪を配置する構成でも構わない。
【0057】
また、第1実施形態のスプリング固定構造S10では、C型の止め輪36が用いられているが、本発明は、この構成に限定するものではない。例えば、周方向の一部をカットした環状体を用いてもよい。また、環状体の断面は、矩形状に限定するものではなく、例えば、加締部の側にのみ平面部を備えた構成でもよい。
【0058】
また、第1実施形態のスプリング固定構造S10では、ホース30の長手方向の全域にスプリング34が配置されているが、本発明は、この構成に限定するものではない。例えば、スプリング固定構造は、少なくともホースと継手の加締部に跨った部分にスプリングを配置する構成でもよい。
【符号の説明】
【0059】
12 ホース付き継手
14 継手
20 加締部
30 ホース
34 スプリング
34A 巻線
36 止め輪(環状体)
40 パンチバンド(締め付けバンド)
S10 スプリング固定構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8