【実施例】
【0072】
<導電性ペーストの作製>
[実施例1〜3]
(卑金属配合工程)
まず、メチルシクロヘキサンに銀ナノ粒子20gを分散させた銀ナノ粒子分散液100gを用意した。なお、前記銀ナノ粒子の表面には、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(分子量187.3)とネオデカン酸(分子量172.26)とが配位している。3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン及びネオデカン酸の合計含有量は、前記銀ナノ粒子100重量部に対して、15.6重量部である。この銀ナノ粒子分散液に、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン0.1gと、マンガン濃度が8%の2−エチルヘキサン酸マンガン(和光純薬製)6.25g(マンガン量0.5g、前記銀ナノ粒子100重量部に対して2.5重量部)とを加えて、40℃の水浴中で2分間攪拌した。
【0073】
その後、メタノール80gを加え、40℃の水浴中で8分間攪拌し、余分な有機物成分をメタノール中に溶出させた。そして、メタノール層をデカンテーションにより除去した。メタノール60gを加えて室温下で3分攪拌することにより、再度余分な有機物成分の除去を行った。その後、メタノール層をデカンテーションにより除去した。これにより、卑金属が配合された銀ナノ粒子のメチルシクロヘキサン分散液を得た。
【0074】
(3級アミノアルコール配合工程)
前記卑金属配合工程で得られた銀ナノ粒子のメチルシクロヘキサン分散液を、エバポレーターで濃縮し、メチルシクロヘキサンを留去した。その後、メタノール40gと、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール1.4g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して7重量部)とを加えて、40℃の水浴中で5分間攪拌することにより、前記銀ナノ粒子に2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールを作用させた。その後、メタノールをデカンテーションで除去した。これにより、3級アミノアルコールが配合された銀ナノ粒子を得た。
【0075】
(ピリジン誘導体配合工程)
前記3級アミノアルコール配合工程で得られた銀ナノ粒子に、メタノール60gと、2−アミノメチルピリジン0.8g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して4重量部)と、ヘプタン60gとを加えて、50℃の水浴中で5分間攪拌した。これにより、銀ナノ粒子の表面に配位された3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン及びネオデカン酸は、疎水性が強いため、一定量がヘプタン中に溶出する。よって、2−アミノメチルピリジンが表面に配位した銀ナノ粒子が、メタノール中に均一に分散される。
【0076】
攪拌終了後、一定時間静置させた後にヘプタンを除去した。続いて、メチルシクロヘキサン60gを加えて、室温で3分間攪拌した後、メチルシクロヘキサン層を除去した。さらに、もう一度メチルシクロヘキサン60gを加えて、室温で3分間攪拌した後、メチルシクロヘキサン層を除去した。これにより、2−アミノメチルピリジンが表面に配位された銀ナノ粒子のメタノール分散液を得た。
【0077】
前記ピリジン誘導体配合工程で得られた銀ナノ粒子のメタノール分散液において、銀ナノ粒子に対する配位化合物の被覆量は、以下のようにして測定した。まず、前記ピリジン誘導体配合工程で得られた銀ナノ粒子のメタノール分散液をガラス瓶に0.1g程度秤量し、ドライヤー(冷風)で溶媒分を乾燥させることにより、粉状にした。乾燥させた粉10mgを熱分析装置(商品名:TG/DTA6200、SIIナノテクノロジー(株)製)にて500℃まで昇温して重量減少率を測定することにより、配位化合物の被覆量を算出した。銀ナノ粒子に対する配位化合物の被覆量は、17.5%であった。
【0078】
(樹脂配合工程及び溶媒置換工程)
実施例1では、以下の手順に従い、導電性ペーストを作製した。まず、前記ピリジン誘導体配合工程で得られた銀ナノ粒子のメタノール分散液(銀当量5g)に、導電性ペーストの成膜安定性を向上させるため、成膜安定剤として[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸0.05gを加えた。その後、高極性溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトールともいう)を導電性ペースト中の理論金属含有量が35%になるように加えた。そして、エバポレーターを用いてメタノールを減圧下で除去することにより溶媒の置換を行い、実施例1の導電性ペーストを得た。実施例2では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例3では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.075g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して1.5重量部)を加えたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0079】
[実施例4〜6]
(卑金属配合工程)
まず、メチルシクロヘキサンに銀ナノ粒子20gを分散させた銀ナノ粒子分散液100gを用意した。なお、前記銀ナノ粒子の表面には、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(分子量187.3)とネオデカン酸(分子量172.26)とが配位している。3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン及びネオデカン酸の合計含有量は、前記銀ナノ粒子100重量部に対して、14.9重量部である。この銀ナノ粒子分散液中のメチルシクロヘキサンをエバポレーターで濃縮した後、酢酸マンガン(キシダ化学製)2.23g(マンガン量0.5g、前記銀ナノ粒子100重量部に対して2.5重量部)とメタノール80gとを加えて、40℃の水浴中で5分間攪拌した。
【0080】
その後、メタノール層をデカンテーションにより除去した。メタノール60gを加えて室温下で3分攪拌することにより、再度余分な有機物成分の除去を行った。その後、メタノール層をデカンテーションにより除去した。これにより、卑金属が配合された銀ナノ粒子を得た。
【0081】
(3級アミノアルコール配合工程)
前記卑金属配合工程で得られた銀ナノ粒子分散液に、メタノール40gと、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール1.4g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して7重量部)とを加えて、40℃の水浴中で5分間攪拌することにより、前記銀ナノ粒子に2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールを作用させた。その後、メタノールをデカンテーションで除去した。これにより、3級アミノアルコールが配合された銀ナノ粒子を得た。
【0082】
(ピリジン誘導体配合工程)
前記3級アミノアルコール配合工程で得られた銀ナノ粒子に、メタノール60gと、2−アミノメチルピリジン0.6g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して3重量部)と、ヘプタン60gとを加えて、50℃の水浴中で5分間攪拌した。これにより、銀ナノ粒子の表面に配位された3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン及びネオデカン酸は、疎水性が強いため、一定量がヘプタン中に溶出する。よって、2−アミノメチルピリジンが表面に配位した銀ナノ粒子が、メタノール中に均一に分散される。
【0083】
攪拌終了後、一定時間静置させた後にヘプタンを除去した。続いて、メチルシクロヘキサン60gを加えて、室温で3分間攪拌した後、メチルシクロヘキサン層を除去した。さらに、もう一度メチルシクロヘキサン60gを加えて、室温で3分間攪拌した後、メチルシクロヘキサン層を除去した。これにより、2−アミノメチルピリジンが表面に配位された銀ナノ粒子のメタノール分散液を得た。
【0084】
前記ピリジン誘導体配合工程で得られた銀ナノ粒子分散液において、銀ナノ粒子に対する配位化合物の被覆量は、実施例1〜3と同様に測定した。銀ナノ粒子に対する配位化合物の被覆量は、9.9%であった。
【0085】
(樹脂配合工程及び溶媒置換工程)
実施例4では、以下の手順に従い、導電性ペーストを作製した。まず、前記ピリジン誘導体配合工程で得られた銀ナノ粒子のメタノール分散液(銀当量5g)に、成膜安定性を向上させるため、成膜安定剤としてリシノール酸0.05gを加えた。その後、高極性溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを導電性ペースト中の理論金属含有量が35%になるように加えた。そして、エバポレーターを用いてメタノールを減圧下で除去することにより溶媒の置換を行い、実施例4の導電性ペーストを得た。実施例5では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例4と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例6では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.075g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して1.5重量部)を加えたこと以外は、実施例4と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0086】
[実施例7及び8]
(卑金属配合工程)
まず、メチルシクロヘキサンに銀ナノ粒子12gを分散させた銀ナノ粒子分散液60gを用意した。なお、前記銀ナノ粒子の表面には、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(分子量187.3)とネオデカン酸(分子量172.26)とが配位している。3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン及びネオデカン酸の合計含有量は、前記銀ナノ粒子100重量部に対して、15.8重量部である。この銀ナノ粒子分散液に、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン0.24gと、マンガン濃度8%の2−エチルヘキサン酸マンガン(和光純薬製)3.75g(マンガン量0.3g、前記銀ナノ粒子100重量部に対して2.5重量部)とを加えて、40℃の水浴中で2分間攪拌した。
【0087】
その後、メタノール60gを加え、40℃の水浴中で8分間攪拌し、余分な有機物成分をメタノール中に溶出させた。そして、メタノール層をデカンテーションにより除去した。メタノール48gを加えて室温下で3分攪拌することにより、再度余分な有機物成分の除去を行った。その後、メタノール層をデカンテーションにより除去した。これにより、卑金属が配合された銀ナノ粒子のメチルシクロヘキサン分散液を得た。
【0088】
(ピリジン誘導体配合工程)
前記卑金属配合工程で得られた銀ナノ粒子分散液に、メタノール42gと、2−アミノメチルピリジン0.6g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して5重量部)と、ヘプタン48gとを加えて、50℃の水浴中で5分間攪拌した。これにより、銀ナノ粒子の表面に配位された3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン及びネオデカン酸は、疎水性が強いため、一定量がヘプタン中に溶出する。よって、2−アミノメチルピリジンが表面に配位した銀ナノ粒子が、メタノール中に均一に分散される。
【0089】
攪拌終了後、一定時間静置させた後にメチルシクロヘキサン及びヘプタンを除去した。続いて、メチルシクロヘキサン36gを加えて、室温で3分間攪拌した後、メチルシクロヘキサン層を除去した。さらに、もう一度メチルシクロヘキサン36gを加えて、室温で3分間攪拌した後、メチルシクロヘキサン層を除去した。これにより、2−アミノメチルピリジンが表面に配位された銀ナノ粒子のメタノール分散液を得た。
【0090】
前記ピリジン誘導体配合工程で得られた銀ナノ粒子のメタノール分散液において、銀ナノ粒子に対する配位化合物の被覆量は、実施例1〜3と同様に測定した。銀ナノ粒子に対する配位化合物の被覆量は、16.8%であった。
【0091】
(樹脂配合工程及び溶媒置換工程)
実施例7では、以下の手順に従い、導電性ペーストを作製した。まず、前記ピリジン誘導体配合工程で得られた銀ナノ粒子のメタノール分散液(銀当量5g)に、成膜安定性を向上させるため、成膜安定剤として[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸0.05gを加えた。その後、高極性溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを導電性ペースト中の理論金属含有量が35%になるように加えた。そして、エバポレーターを用いてメタノールを減圧下で除去することにより溶媒の置換を行い、実施例7の導電性ペーストを得た。実施例8では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例7と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0092】
[実施例9及び10]
実施例9では、前記3級アミノアルコール配合工程を行わず、2−アミノメチルピリジンの配合量を前記銀ナノ粒子100重量部に対して5重量部とし、高極性溶媒としてトリエチレングリコールモノメチルエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例10では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例9と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0093】
[実施例11及び12]
実施例11では、高極性溶媒としてブチルカルビトールを用いたこと以外は、実施例9と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例12では、成膜安定剤と同時にポリビニルピロリドン樹脂K30(東京化成製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例11と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0094】
[実施例13〜15]
実施例13では、3級アミノアルコールとして2−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例14では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例13と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例15では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.075g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して1.5重量部)を加えたこと以外は、実施例13と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0095】
[実施例16〜18]
実施例16では、3級アミノアルコールとして2−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例17では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例16と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例18では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.075g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して1.5重量部)を加えたこと以外は、実施例16と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0096】
[実施例19及び20]
実施例19では、前記3級アミノアルコール配合工程を行わず、2−アミノメチルピリジンの配合量を前記銀ナノ粒子100重量部に対して5重量部とし、卑金属塩として2−エチルヘキサン酸ビスマスを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例20では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例19と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0097】
[実施例21〜23]
実施例21では、卑金属塩として2−エチルヘキサン酸ビスマスを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例22では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.025g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して0.5重量部)を加えたこと以外は、実施例21と同様の手法で導電性ペーストを作製した。実施例23では、成膜安定剤と同時にポリビニルブチラール樹脂BL−1(積水化学製)0.075g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して1.5重量部)を加えたこと以外は、実施例21と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0098】
[実施例24]
実施例24では、前記卑金属配合工程及び前記3級アミノアルコール配合工程を行わず、2−アミノメチルピリジンの配合量を前記銀ナノ粒子100重量部に対して7重量部としたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0099】
[実施例25]
実施例25では、3級アミノアルコールとして2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールを、前記銀ナノ粒子100重量部に対して7重量部配合させたこと以外は、実施例1と同様の手法で導電性ペーストを作製した。
【0100】
実施例1〜25の導電性ペーストにおける各成分の配合量を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
[比較例1]
比較例1は、ピリジン誘導体として、2級アミンを含む置換基を有する2−[(メチルアミノ)メチル]ピリジンを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法でメタノール分散液を得た。しかしながら、得られたメタノール分散液の分散性を観察すると、作製してから数時間後に、保管しているガラス瓶表面の鏡面化が確認された。さらに、作製してから24時間後に、大半の銀ナノ粒子が沈降していることが確認された。このことから、2−[(メチルアミノ)メチル]ピリジンは、銀ナノ粒子に対する配位性が充分ではなく、銀ナノ粒子に対する分散剤としての性能を有していないと言える。したがって、その後の溶媒置換工程は行うことができなかった。
【0103】
[比較例2]
(卑金属配合工程)
まず、メチルシクロヘキサンに銀ナノ粒子20gを分散させた銀ナノ粒子分散液100gを用意した。なお、前記銀ナノ粒子の表面には、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(分子量187.3)とネオデカン酸(分子量172.26)とが配位している。3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン及びネオデカン酸の合計含有量は、前記銀ナノ粒子100重量部に対して、16.1重量部である。この銀ナノ粒子分散液に、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン0.1gと、マンガン濃度が8%の2−エチルヘキサン酸マンガン(和光純薬製)6.25g(マンガン量0.5g、前記銀ナノ粒子100重量部に対して2.5重量部)とを加えて、40℃の水浴中で2分間攪拌した。
【0104】
その後、メタノール80gを加え、40℃の水浴中で8分間攪拌し、余分な有機物成分をメタノール中に溶出させた。そして、メタノール層をデカンテーションにより除去した。メタノール60gを加えて室温下で3分攪拌することにより、再度余分な有機物成分の除去を行った。その後、メタノール層をデカンテーションにより除去した。これにより、卑金属が配合された銀ナノ粒子のメチルシクロヘキサン分散液を得た。
【0105】
(3級アミノアルコール配合工程)
前記卑金属配合工程で得られた銀ナノ粒子のメチルシクロヘキサン分散液を、エバポレーターで濃縮し、メチルシクロヘキサンを留去した。その後、メタノール40gと、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール1.4g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して7質量部)とを加えて、40℃の水浴中で5分間攪拌することにより、前記銀ナノ粒子に2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールを作用させた。その後、メタノールをデカンテーションで除去した。これにより、3級アミノアルコールが配合された銀ナノ粒子を得た。
【0106】
(ベンジルアミン配合工程)
前記3級アミノアルコール配合工程で得られた銀ナノ粒子分散液に、メタノール60gと、ベンジルアミン0.8g(前記銀ナノ粒子100重量部に対して4重量部)と、ヘプタン60gとを加えて、50℃の水浴中で5分間攪拌した。攪拌終了後の銀ナノ粒子の挙動を観察すると、メタノール層には殆ど分散せず、大半のナノ粒子がヘプタン層に分散していることが確認された。すなわち、ベンジルアミンは、メタノールのような高極性溶媒へ銀ナノ粒子を分散させる性質を有していないことが判明した。したがって、その後の溶媒置換工程は行うことができなかった。
【0107】
<銀ナノ粒子の平均粒子径の測定>
銀ナノ粒子分散液中の銀ナノ粒子の平均粒子径は、光散乱式粒度分布測定装置(ナノトラックUPA150、マイクロトラックベル(株)製)を用いて測定した。なお、導電性ペーストに含まれる銀ナノ粒子の平均粒子径は測定していないが、銀ナノ粒子分散液中の銀ナノ粒子の平均粒子径と同等であると考えられる。
【0108】
<分散安定性の評価>
分散安定性は、ピリジン誘導体配合工程後のメタノールに分散させた銀ナノ粒子分散液の状態を、主に目視で観察することにより評価した。分散液を作製後に室温で2週間静置し、保管瓶の表面に金属が析出して鏡面化が進行するか、及び、保管瓶の底部に沈降物が発生するかの二点を観察した。2週間静置後に、前記2点のいずれの事象も発生しない銀ナノ粒子分散液を、分散性が良好と判断した。評価結果を表1に示す。表1中に示す「○」は、銀ナノ粒子分散液の分散性が良好であったことを意味する。
【0109】
<抵抗値の評価>
各導電性ペーストをガラス基板上に塗布して塗膜を形成した後、120℃又は180℃で30minの熱処理を行うことにより、金属膜を得た。そして、前記金属膜の体積固有抵抗率を4端子法により測定した。なお、測定装置は、日置電機製の抵抗計(RM3545)を用いた。測定結果を表1に示す。
【0110】
<密着性の評価>
各導電性ペーストを、ITOをスパッタリングによりコートしたガラス基板上に塗布して塗膜を形成した後、180℃で30minの熱処理を行うことにより、金属膜を得た。得られた金属膜に対して、1mm間隔で9マス×9マスの計81マス目のクロスカットを形成した後、テープを用いて剥離試験を行った。81個のマスのうち、剥離しなかったマスの個数を表1に示す。
【0111】
表1の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす実施例1〜25の導電性ペーストは、銀ナノ粒子の分散安定性に優れ、かつ、120℃の熱処理でも導電性に優れた金属膜を形成することができた。
【0112】
卑金属原子を含む実施例1〜23の導電性ペーストは、120℃の熱処理でもより導電性に優れた金属膜を形成することができた。
【0113】
3級アミノアルコールを含む実施例1〜6、13〜18、21〜23及び25の導電性ペーストは、120℃の熱処理でもより導電性に優れた金属膜を形成することができた。
【0114】
樹脂を含む実施例2、3、5、6、8、10、12、14、15、17、18、20、22及び23の導電性ペーストは、金属膜の基板への密着性を向上させることができた。