(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)被測定ガスを導入するための被測定ガス導入口を一端側に有し該導入された被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子が内部を軸方向に貫通している金属製の筒状体と、前記筒状体に取り付けられ前記センサ素子の前記一端側を覆う保護カバーと、を備えた組立体を用意する工程と、
(b)前記組立体のうち前記保護カバーを避けるように前記筒状体のうち前記保護カバーよりも前記センサ素子の他端と同じ側の少なくとも一部の周囲にコイルを配置し、該コイルに電流を流すことにより前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分を誘導加熱して該部分に付着した油分を除去する工程と、
を含むガスセンサの製造方法。
被測定ガスを導入するための被測定ガス導入口を一端側に有し該導入された被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子が内部を軸方向に貫通している金属製の筒状体と、前記筒状体に取り付けられ前記センサ素子の前記一端側を覆う保護カバーと、を備えた組立体に付着した油分を除去する油分除去方法であって、
前記組立体のうち前記保護カバーを避けるように前記筒状体のうち前記保護カバーよりも前記センサ素子の他端側の少なくとも一部の周囲にコイルを配置し、該コイルに電流を流すことにより前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分を誘導加熱して該部分に付着した油分を除去する工程、
を含む油分除去方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の方法で誘導加熱を行うと、プロテクタすなわちセンサ素子の保護カバーが黒化してしまう場合があった。保護カバーが黒化すると、輻射熱を吸収しやすくなるため、センサ素子の使用開始時の昇温に要する時間が長くなってセンサ素子の使用開始時の応答性が低下することがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、油分を除去しつつ保護カバーの黒化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のガスセンサの製造方法は、
(a)被測定ガスを導入するための被測定ガス導入口を一端側に有し該導入された被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子が内部を軸方向に貫通している金属製の筒状体と、前記筒状体に取り付けられ前記センサ素子の前記一端側を覆う保護カバーと、を備えた組立体を用意する工程と、
(b)前記組立体のうち前記保護カバーを避けるように前記筒状体のうち前記保護カバーよりも前記センサ素子の他端と同じ側の少なくとも一部の周囲にコイルを配置し、該コイルに電流を流すことにより前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分を誘導加熱して該部分に付着した油分を除去する工程と、
を含むものである。
【0008】
この製造方法では、組立体を誘導加熱するにあたり、センサ素子の一端側を覆う保護カバーを避けるように、筒状体のうち保護カバーよりもセンサ素子の他端側の少なくとも一部の周囲にコイルを配置する。そして、コイルに電流を流すことにより筒状体のうち周囲にコイルが配置された部分を誘導加熱する。そのため、筒状体のうち周囲にコイルが配置された部分の油分を除去しつつ、保護カバーは周囲にコイルがないことで誘導加熱されにくいため保護カバーの黒化を抑制することができる。
【0009】
ここで、前記センサ素子は、酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数積層した積層体と、前記被測定ガス導入口から導入された前記被測定ガス中の特定ガス濃度を検出する検出部と、前記積層体を加熱するヒータと、を備えていてもよい。
【0010】
本発明のガスセンサの製造方法において、前記センサ素子は、前記特定ガス濃度の検出の基準となる基準ガスを導入する基準ガス導入口を前記他端側に有しており、前記筒状体は、前記センサ素子の前記一端と同じ側に前記保護カバーが取り付けられた主体金具と、該主体金具のうち前記センサ素子の前記他端と同じ側に取り付けられた内筒と、を有しており、前記工程(b)では、前記筒状体のうち少なくとも前記内筒を含む部分の周囲に前記コイルを配置してもよい。ここで、ガスセンサにおいて、筒状体のうち主体金具よりもセンサ素子の他端側すなわち基準ガス導入口に近い側にある内筒に油分が付着していると、ガス化した油分が基準ガス導入口に到達することで、特定ガス濃度の検出精度を低下させやすい。この製造方法では、筒状体のうち少なくとも内筒を含む部分の周囲にコイルを配置して誘導加熱を行うため、筒状体のうち少なくとも内筒の油分を除去することができる。したがって、内筒に付着した油分による上記の検出精度の低下を抑制できる。ここで、「前記筒状体のうち少なくとも前記内筒を含む部分の周囲にコイルを配置する」は、上述した効果が得られる範囲で内筒のごく一部の周囲にコイルが配置されていない場合を含む。
【0011】
本発明のガスセンサの製造方法において、前記工程(b)では、前記筒状体のうち前記保護カバーよりも前記センサ素子の他端と同じ側の全体の周囲に前記コイルを配置してもよい。こうすれば、保護カバーを避けつつ筒状体のなるべく多くの部分を誘導加熱できるため、筒状体に付着している油分を除去しやすい。ここで、「前記筒状体のうち前記保護カバーよりも前記センサ素子の他端側全体の周囲に前記コイルを配置する」は、上述した効果が得られる範囲で筒状体のうち保護カバーよりもセンサ素子の他端側のごく一部の周囲にコイルが配置されていない場合を含む。
【0012】
本発明のガスセンサの製造方法において、前記工程(b)では、前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分を420℃以上に加熱してもよい。こうすれば、筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分の油分をより確実に除去できる。この場合において、前記工程(b)では、前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分を600℃以上に加熱してもよい。
【0013】
本発明のガスセンサの製造方法において、前記組立体は、タルクを含み前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間に配置された封止材、を備え、前記工程(b)では、前記封止材が650℃を超えないように前記誘導加熱を行ってもよい。こうすれば、封止材にタルクが含まれる場合に、タルクが誘導加熱によって変質してしまうのを抑制できる。
【0014】
本発明のガスセンサの製造方法において、前記組立体は、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間に配置されたセラミックス部材、を備え、前記工程(b)では、前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分の温度を400℃以上に昇温し、且つ該部分が400℃以上であるときの昇温速度が27.5℃/秒を超えないようにしてもよい。こうすれば、セラミックス部材にクラックが生じるのを抑制できる。
【0015】
本発明のガスセンサの製造方法において、前記組立体は、前記筒状体の内周面と前記センサ素子との間に配置されたセラミックス部材、を備え、前記工程(b)では、前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分の温度を600℃以上に昇温し、且つ該部分が400℃以上600℃以下であるときの昇温速度が27.5℃/秒を超えないようにしてもよい。こうすれば、セラミックス部材にクラックが生じるのを抑制できる。
【0016】
本発明の油分除去方法は、
被測定ガスを導入するための被測定ガス導入口を一端側に有し該導入された被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子が内部を軸方向に貫通している金属製の筒状体と、前記筒状体に取り付けられ前記センサ素子の前記一端側を覆う保護カバーと、を備えた組立体に付着した油分を除去する油分除去方法であって、
前記組立体のうち前記保護カバーを避けるように前記筒状体のうち前記保護カバーよりも前記センサ素子の他端側の少なくとも一部の周囲にコイルを配置し、該コイルに電流を流すことにより前記筒状体のうち周囲に前記コイルが配置された部分を誘導加熱して該部分に付着した油分を除去する工程、
を含むものである。
【0017】
この油分除去方法では、上述したガスセンサの製造方法と同様に、筒状体のうち周囲にコイルが配置された部分の油分を除去しつつ、保護カバーは周囲にコイルがないことで誘導加熱されにくいため保護カバーの黒化を抑制することができる。この油分除去方法において、上述したいずれかのガスセンサの製造方法の種々の態様を採用してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるガスセンサ10が配管70に取り付けられた様子を示す縦断面図である。
図2は、センサ素子20の上下左右方向に沿った断面の概略断面図である。本実施形態において、
図1に示すように、ガスセンサ10の長手方向を上下方向とし、長手方向に垂直な方向を左右方向とする。
【0020】
図1に示すように、ガスセンサ10は、組立体15と、ナット47と、外筒48と、コネクタ50と、リード線55と、ゴム栓57とを備えている。組立体15は、センサ素子20と、保護カバー30と、素子封止体40とを備えている。ガスセンサ10は、例えば車両の排ガス管などの配管70に取り付けられて、被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO
2等の特定ガスの濃度(特定ガス濃度)を測定するために用いられる。本実施形態では、ガスセンサ10は特定ガス濃度としてNOx濃度を測定するものとした。
【0021】
センサ素子20は、
図2に示すように、ジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層を複数(
図2では6個)積層した積層体20aと、検出部23と、ヒータ29と、を有している。積層体20aは、長尺な板状体形状(直方体形状)をしており、下端側(
図2の左側)の先端面20bと、上端側(
図2の右側)の基端面20cとを有している。センサ素子20の下端側が本発明の「一端側」の一例に相当し、センサ素子20の上端側が本発明の「他端側」の一例に相当する。センサ素子20は、積層体20aの表面のうち素子室33内に露出している部分の少なくとも一部を覆う多孔質の保護層を備えていてもよい。
【0022】
積層体20aの内部には、被測定ガスを導入して内部に流通させる被測定ガス流通部21aと、特定ガス濃度の検出の基準となる基準ガス(本実施形態では大気)を導入して内部に流通させる基準ガス導入空間21cと、が形成されている。被測定ガス流通部21aは、先端面20bに形成され被測定ガスの入口となる被測定ガス導入口22aを有している。被測定ガス流通部21aは、被測定ガス導入口22aから上方(
図2の右方)に向かって形成された空間である。被測定ガス導入口22aは、内側保護カバー31の内側の空間である素子室33内に位置している(
図1参照)。被測定ガス流通部21aの途中には被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与するための拡散律速部21bが複数(
図2では3個)配設されている。拡散律速部21bは積層体20aの一部であり、被測定ガス流通部21a中の被測定ガスの流通面積を絞ることで被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与する。基準ガス導入空間21cは、基端面20cに形成され基準ガスの入口となる基準ガス導入口22bを有している。基準ガス導入口22bは、外筒48の内側の空間49内に位置している(
図1参照)。積層体20aの内部には、一部が基準ガス導入空間21cに露出している多孔質の基準ガス導入層21dが配設されている。基準ガス導入層21dは、基準電極28を覆っている。
【0023】
検出部23は、少なくとも1つの電極を備えており、素子室33内に位置して素子室33内の被測定ガス中の特定ガス濃度を検出する。本実施形態では、検出部23は、積層体20aの左面(
図2の上面)に配設された外側電極24と、積層体20aの内部に配設された内側主ポンプ電極25,内側補助ポンプ電極26,測定電極27,及び基準電極28とを備えている。素子室33内の被測定ガスは、外側電極24及び被測定ガス導入口22aに到達する。被測定ガス導入口22aから被測定ガス流通部21aに導入された被測定ガスは、内側主ポンプ電極25,内側補助ポンプ電極26,及び測定電極27にこの順に到達する。空間49内の基準ガスは、基準ガス導入口22bに到達する。基準ガス導入口22bから基準ガス導入空間21cに導入された基準ガスは、基準ガス導入層21d内を通過して基準電極28に到達する。
【0024】
検出部23が被測定ガス中の特定ガス濃度を検出する原理は周知であるため詳細な説明は省略するが、検出部23は例えば以下のように特定ガス濃度を検出する。検出部23は、外側電極24と内側主ポンプ電極25との間に印加された電圧に基づいて、内側主ポンプ電極25周辺の被測定ガス中の酸素の外部(素子室33)への汲み出し又は汲み入れを行う。また、検出部23は、外側電極24と内側補助ポンプ電極26との間に印加された電圧に基づいて、内側補助ポンプ電極26周辺の被測定ガス中の酸素の外部(素子室33)への汲み出し又は汲み入れを行う。これらにより、酸素濃度が所定値に調整された後の被測定ガスが、測定電極27周辺に到達する。測定電極27は、NOx還元触媒として機能し、到達した被測定ガス中の特定ガス(NOx)を還元する。そして、検出部23は、還元後の酸素濃度に応じて測定電極27と基準電極28との間に発生する起電力又はその起電力に基づく電流を、電気信号として発生させる。このように検出部23が発生させた電気信号は、被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた値(特定ガス濃度を導出可能な値)を示す信号であり、検出部23が検出した検出値に相当する。また、この電気信号は、センサ素子20の上端側(
図2の右側)の表面に配設された図示しない導通電極を介して外部に出力される。
【0025】
ヒータ29は、積層体20a内部に配設された電気抵抗体である。ヒータ29は、外部から給電されることにより発熱して積層体20aを加熱する。ヒータ29は、積層体20aを形成する固体電解質層の加熱及び保温を行って、固体電解質層が活性化する温度(例えば800℃)に調整することが可能となっている。
【0026】
保護カバー30は、
図1に示すように、センサ素子20の一端側(ここでは下端側)を覆う有底筒状の内側保護カバー31と、この内側保護カバー31を覆う有底筒状の外側保護カバー32とを備えている。内側保護カバー31及び外側保護カバー32には、被測定ガスを保護カバー30内に流通させるための複数の孔が形成されている。内側保護カバー31で囲まれた空間として素子室33が形成されており、センサ素子20の先端面20bはこの素子室33内に配置されている。保護カバー30は、主体金具42に溶接されている。保護カバー30は、少なくともFeとCrとを含む合金である。保護カバー30のより具体的な材質としては、Cr−Ni−Fe系合金(SUS301,SUS304、SUS310など)などのステンレス鋼が挙げられる。
【0027】
素子封止体40は、センサ素子20を封止固定する部材である。素子封止体40は、主体金具42及び内筒43を備えた筒状体41と、サポーター44a〜44cと、封止材45a,45bと、メタルリング46と、を備えている。センサ素子20は素子封止体40の中心軸上に位置しており、素子封止体40を上下方向に貫通している。
【0028】
主体金具42は、筒状の金属製部材である。主体金具42は、下側が上側よりも内径の小さい肉厚部42aとなっている。また、主体金具42の外周面にはフランジ部42cが形成されている。主体金具42のうちセンサ素子20の一端と同じ側(ここでは下側)には、保護カバー30が取り付けられている。フランジ部42cの下面は、保護カバー30の上端(ここでは内側保護カバー31の上端)と接している。主体金具42の上端は内筒43の下端と溶接されている。肉厚部42aは主体金具42の上側よりも内径が小さく、これにより肉厚部42aの内周面の一部が段差面である底面42bとなっている。この底面42bはサポーター44aが
図1の下側に飛び出さないようにこれを押さえている。フランジ部42cの下面は外側保護カバー32の上端と溶接されている。また、主体金具42は、外周面のうちフランジ部42cよりも上方に溶接部42dを有し、この溶接部42dで外筒48と溶接されている。主体金具42の材質としては、例えばCr−Fe系合金(例えばSUS430)などのステンレス鋼が挙げられる。
【0029】
内筒43は、主体金具42よりも厚さの薄い筒状の金属製部材であり、下端にフランジ部43aを有し、上端には先端にいくほど内径が大きくなる拡管部43bを有している。内筒43は、主体金具42のうちセンサ素子20の他端と同じ側(ここでは上側)に取り付けられている。内筒43は、フランジ部43aの下面が主体金具42と溶接されている。内筒43と主体金具42とは同軸に溶接固定されている。また、内筒43には、封止材45bを内筒43の中心軸方向に押圧するための縮径部43cと、メタルリング46を介してサポーター44a〜44c,封止材45a,45bを
図1の下方向に押圧するための縮径部43dとが形成されている。内筒43のうちフランジ部43a,拡管部43b,縮径部43c,43d以外の部分の内径は、主体金具42のうち肉厚部42a以外の内径と略同一である。内筒43の材質としては、例えばCr−Fe系合金(例えばSUS430)などのステンレス鋼が挙げられる。
【0030】
サポーター44a〜44c及び封止材45a,45bは、筒状体41の内周面とセンサ素子20との間に配置されている。サポーター44a〜44cは、例えばアルミナ、ステアタイト、ジルコニア、スピネルなどのセラミックスからなる部材である。封止材45a,45bは、例えば粉末を成型した圧粉体である。圧粉体の材質としては、タルクのほか、アルミナ粉末、ボロンナイトライドなどのセラミックス粉末が挙げられ、封止材45a,45bはそれぞれこれらの少なくともいずれかを含んでいてもよい。封止材45aはサポーター44a,44b間に充填され、サポーター44a,44bにより両側(上下)から挟まれて押圧されている。封止材45bはサポーター44b,44c間に充填され、サポーター44b,44cにより両側(上下)から挟まれて押圧されている。サポーター44a〜44c,封止材45a,45bは縮径部43d及びメタルリング46と、主体金具42の肉厚部42aの底面42bと、に挟まれて上下から押圧されている。縮径部43c,43dからの押圧力により、封止材45a,45bが筒状体41とセンサ素子20との間で圧縮されることで、封止材45a,45bは保護カバー30内の素子室33と外筒48内の空間49との間を封止すると共に、センサ素子20を固定している。
【0031】
ナット47は、主体金具42と同軸に主体金具42の外側に固定されている。ナット47の外周面には雄ネジ部が形成されている。この雄ネジ部は、配管70に溶接され内周面に雌ネジ部が設けられた固定用部材71内に挿入されている。これにより、ガスセンサ10のうちセンサ素子20の下端側や保護カバー30の部分が配管70内に突出した状態で、ガスセンサ10が配管70に固定できるようになっている。
【0032】
外筒48は、筒状の金属製部材であり、内筒43と、センサ素子20の上端側と、コネクタ50とを覆っている。外筒48の内側には主体金具42の上部が挿入されている。外筒48の下端は主体金具42の溶接部42dと溶接されている。外筒48の上端からは、コネクタ50に接続された複数のリード線55が外部に引き出されている。コネクタ50は、センサ素子20の上端側の表面(左右面)に配設された図示しない導通電極に接触して電気的に接続されている。このコネクタ50を介して、リード線55はセンサ素子20の内部の各電極24〜28及びヒータ29と電気的に導通している。外筒48とリード線55との隙間はゴム栓57によって封止されている。外筒48内の空間49は基準ガスで満たされている。空間49にはセンサ素子20の上端側が配置され、外筒48はセンサ素子20の上端側を保護する役目も果たす。
【0033】
次に、こうして構成されたガスセンサ10の製造方法の一例を以下に説明する。本実施形態のガスセンサ10の製造方法は、
(a)被測定ガスを導入するための被測定ガス導入口22aを一端側(ここでは下端側)に有し導入された被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子20と、センサ素子20が内部を軸方向に貫通している金属製の筒状体41と、筒状体41に取り付けられセンサ素子20の一端側を覆う保護カバー30と、を備えた組立体15を用意する工程と、
(b)組立体15のうち保護カバー30を避けるように筒状体41のうち保護カバー30よりもセンサ素子20の他端と同じ側(ここでは上側)の少なくとも一部にコイルを配置し、コイルに電流を流すことにより筒状体41のうち周囲にコイルが配置された部分を誘導加熱してその部分に付着した油分を除去する工程と、
を含む。
【0034】
まず、工程(a)について説明する。工程(a)では、予め作製された組立体15を用意してもよいし、組立体15を作製することで用意してもよい。以下、組立体15を作製する場合について説明する。
図3は、組立体15の製造プロセスを模式的に示す断面図である。
【0035】
工程(a)では、まず、主体金具42及び内筒43を用意して、これらを溶接して筒状体41とする(
図3(a))。主体金具42及び内筒43は、例えば鍛造により製造することで用意してもよい。この時点では、内筒43にはフランジ部43a及び拡管部43bは形成されているが、縮径部43c,43dは形成されていない。主体金具42及び内筒43の溶接は、例えば抵抗溶接により溶接する。具体的には、主体金具42の上端と内筒43のフランジ部43aとを、図示しない治具を用いて同軸となるように付き合わせて、接触面に電流を流すことにより主体金具42と内筒43とを抵抗溶接する。これにより、主体金具42と内筒43とが接触面で溶接されて筒状体41となる。
【0036】
続いて、センサ素子20をメタルリング46,サポーター44c,封止材45b,サポーター44b,封止材45a,サポーター44a内にこの順序で貫通させて、これらを内筒43の拡管部43b側から筒状体41の内部に挿入する(
図3(b))。この挿入は治具により筒状体41の外径を基準として筒状体41の中心軸とセンサ素子20の中心軸とが一致するように行う。ここで、センサ素子20は、周知の方法で作製することができる。例えば、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含む未焼成のセラミックスグリーンシートを複数用意し、各々に各電極等の種々のパターンを形成する。そして複数のセラミックグリーンシートを積層・接着した後に切断してセンサ素子20の大きさの未焼成体を切り出し、未焼成体を焼成することでセンサ素子20を得る。メタルリング46,サポーター44a〜44c,封止材45a,45bには、センサ素子20を貫通させるために予め中心軸に沿って孔が開けられた形状としておく。
【0037】
次に、メタルリング46と主体金具42とを互いに近づける方向に押圧して封止材45a,45bを圧縮し、これにより筒状体41の内周面とセンサ素子20との間を封止する。そして、その状態で内筒43のうちメタルリング46よりも拡管部43b側を加締めて縮径部43dを形成する(
図3(c))。これにより、縮径部43d及びメタルリング46と主体金具42の底面42bとの間の押圧力が保たれる。
【0038】
続いて、内筒43のうち封止材45bの側面に位置する部分を加締めて縮径部43cを形成して、素子封止体40を作製する(
図3(d))。縮径部43cが形成されることにより、内筒43内の封止やセンサ素子20の固定がより確実になる。そして、主体金具42の下側に保護カバー30として内側保護カバー31及び外側保護カバー32を溶接することで、組立体15を得る(
図3(e))。保護カバー30の溶接は、例えばレーザー溶接により行う。
【0039】
以上のように工程(a)を行って組立体15を用意すると、工程(b)を行って組立体15のうち筒状体41の少なくとも一部に付着した油分を除去した後、主体金具42にナット47を取り付ける。そして、ゴム栓57内を通したリード線55と、これに接続されたコネクタ50とを用意して、コネクタ50をセンサ素子20の他端側(ここでは上端側)に接続する。その後、リード線55,ゴム栓57,コネクタ50及び組立体15の上側を外筒48内に挿入し、外筒48の下端と主体金具42の溶接部42dとを溶接固定して、
図1,2のガスセンサ10を得る。外筒48の溶接は、例えばレーザー溶接により行う。
【0040】
以下、工程(b)について詳細に説明する。工程(b)の誘導加熱は、組立体15の周囲に配置したコイルに電流を流すことにより行う。本実施形態では、
図4に示す誘導加熱装置80を用いて組立体15の誘導加熱を行う。
図4の左側は組立体15の周囲にコイル81を配置する前の状態の説明図であり、
図4の右側は組立体15の周囲にコイル81を配置して誘導加熱を行っている状態の説明図である。
図5は、コイル配置領域Rcと組立体15との位置関係の説明図である。
図4左に示すように、誘導加熱装置80は、コイル81と、交流電源でありコイル81に電流を流す電源装置82と、コイル81の下方に配置され組立体15を支持固定する支持台83と、支持台83を昇降させる昇降部84と、を備えている。工程(b)では、組立体15を支持台83に取り付け(
図4左)、昇降部84により所定の高さまで組立体15を上昇させる(
図4右)。これにより、組立体15のうち筒状体41の少なくとも一部がコイル81の内側に挿入される。そして、この状態で電源装置82がコイル81に電流を流すことで、組立体15のうち筒状体41の少なくとも一部を誘導加熱する。工程(b)において、加熱後の組立体15の冷却は、例えば自然冷却としてもよいし、エアーなどの冷媒を流すことで冷却してもよい。
【0041】
誘導加熱時のコイル81と組立体15との位置関係について
図4,5を用いて説明する。工程(b)では、組立体15を上昇させて組立体15の周囲にコイル81を配置するにあたり、保護カバー30を避けるようにコイル81を配置する。すなわち、
図4右に示すコイル81の上端から下端までの領域をコイル配置領域Rcとし、
図5に示す保護カバー30の上端から下端までの領域を保護カバー領域Rpとして、コイル配置領域Rc(
図5にも図示した)が保護カバー領域Rpと重複しないようにコイル81を配置する。また、筒状体41のうち保護カバー30よりもセンサ素子20の上端と同じ側の少なくとも一部の周囲にコイルを配置する。すなわち、
図5に示す筒状体41のうち保護カバー30の上端よりも上側の領域を領域R1として、コイル配置領域Rcが領域R1の少なくとも一部と重複するようにコイル81を配置する。領域R1は、本実施形態では、フランジ部42cの下面から内筒43の上端までの領域である。コイル配置領域Rcは、センサ素子20のうち領域R1よりもセンサ素子20の他端側(ここでは上端側)の少なくとも一部を含んでもよく、領域R1よりもセンサ素子20の他端側の全てを含んでもよい。
【0042】
このように、本実施形態の工程(b)では、コイル配置領域Rcが保護カバー領域Rpとは重複せず且つ領域R1の少なくとも一部と重複するようにコイル81を配置して誘導加熱を行う。これにより、筒状体41のうち周囲にコイルが配置された部分(ここでは筒状体41のうちコイル配置領域Rcに含まれる部分)が誘導加熱されて、その部分の油分が除去される。筒状体41に付着している油分とは、例えば潤滑油剤、切削油剤、研削油剤などである。筒状体41に油分が付着していると、ガスセンサ10の使用時にその油分がガス化して素子室33内の被測定ガスに混ざったり空間49内の基準ガスに混ざったりする場合があり、これによりガスセンサ10のNOx濃度の検出精度が低下する場合があった。工程(b)の誘導加熱をオーケーの合うことで筒状体41に付着した油分の少なくとも一部を除去することで、このようなガスセンサ10の検出精度の低下を抑制できる。一方、保護カバー30の周囲にはコイル81が配置されておらず保護カバー30は誘導加熱されにくいから、保護カバー30の黒化を抑制することができる。保護カバー30が黒化するのは、加熱により保護カバー30に含まれるCrとFeとの少なくとも一方の成分が酸化して生成される酸化膜が原因と考えられる。保護カバー30が黒化すると、輻射熱を吸収しやすくなるため、センサ素子20の使用開始時にヒータ29によりセンサ素子20を昇温するのに要する時間が長くなってセンサ素子20の使用開始時の応答性が低下することがあった。すなわち、ガスセンサ10において、使用時のヒータ29によるセンサ素子20の昇温開始からNOx濃度が正しく検出できるようになるまでの時間(ライトオフ(Light off)時間とも言う)が長くなる場合があった。保護カバー30の黒化を抑制することで、ガスセンサ10の製造時のライトオフ時間のばらつきを抑制できる。
【0043】
工程(b)では、筒状体41のうち少なくとも内筒43を含む部分の周囲に前記コイルを配置することが好ましい。すなわち、
図5に示す内筒43の上端から下端までの領域を領域R2として、コイル配置領域Rcが領域R2を含むようにコイル81を配置することが好ましい。ここで、ガスセンサ10において、筒状体41のうち主体金具42よりもセンサ素子20の他端と同じ側すなわち基準ガス導入口22bに近い側にある内筒43に油分が付着していると、ガス化した油分が基準ガス導入口22bに到達することで、NOx濃度の検出精度を低下させやすい。工程(b)においてコイル配置領域Rcが領域R2を含むようにコイル81を配置して誘導加熱を行うことで、筒状体41のうち少なくとも内筒43の油分を除去することができる。したがって、内筒43に付着した油分による上記の検出精度の低下を抑制できる。特に、本実施形態では、
図1に示すように筒状体41のうち空間49に面しているのは内筒43のみである。そのため、内筒43の油分を除去すれば、筒状体41に付着した油分がガス化して基準ガス導入口22bに到達することはほとんどなくなる。
【0044】
工程(b)では、筒状体41のうち保護カバー30よりもセンサ素子20の他端と同じ側(ここでは上側)の全体の周囲にコイル81を配置してもよい。すなわち、コイル配置領域Rcが領域R1を含むようにコイル81を配置してもよい。
図5に示すコイル配置領域Rcは、領域R1を含むようにコイル81を配置した場合の例を示している。こうすれば、保護カバー30を避けつつ筒状体41のなるべく多くの部分を誘導加熱できるため、筒状体41に付着している油分を除去しやすい。
【0045】
工程(b)では、筒状体41のうちコイル配置領域Rcに含まれる部分を420℃以上に加熱することが好ましい。こうすれば、筒状体41のうち周囲にコイル81が配置された部分の油分をより確実に除去できる。筒状体41のうちコイル配置領域Rcに含まれる部分を600℃以上に加熱してもよい。筒状体41のうちコイル配置領域Rcに含まれる部分の温度が650℃を超えないようにしてもよい。
【0046】
工程(b)では、封止材45a,45bが650℃を超えないように誘導加熱を行ってもよい。特に、封止材45a,45bにタルクが含まれる場合には、封止材45a,45bが650℃を超えないようにすることでタルクが誘導加熱によって変質してしまうのを抑制できるため、好ましい。例えば封止材45aがタルクを含む場合、タルクが650℃以上になるとタルクが焼成により収縮してしまい封止材45aの内部に隙間が生じて筒状体41の内周面とセンサ素子20との間の封止が弱まる場合がある。封止材45a,45bが650℃を超えないようにすることでこれを抑制できる。
【0047】
工程(b)では、筒状体41のうちコイル配置領域Rcに含まれる部分の温度を400℃以上に昇温し、且つその部分が400℃以上であるときの昇温速度が27.5℃/秒を超えないようにすることが好ましい。こうすれば、急激な昇温によってセラミックス部材であるサポーター44a〜44cにクラックが生じるのを抑制できる。
【0048】
工程(b)では、筒状体41のうちコイル配置領域Rcに含まれる部分の温度を400℃以上に昇温し、且つその部分が400℃未満であるときの昇温速度を所定値以下としてもよい。この所定値は、例えば40℃/秒としてもよいし、38.5℃/秒としてもよい。
【0049】
工程(b)では、筒状体41のうちコイル配置領域Rcに含まれる部分の温度を600℃以上に昇温し、且つその部分が400℃以上600℃以下であるときの昇温速度が27.5℃/秒を超えないようにすることが好ましい。こうすれば、急激な昇温によってセラミックス部材であるサポーター44a〜44cにクラックが生じるのを抑制できる。
【0050】
工程(b)では、筒状体41のうち工程(b)のあとに溶接を行う部分を避けるようにコイル81を配置してもよい。例えば、筒状体41のうち溶接部42dがコイル配置領域Rcに含まれないように、溶接部42dよりも上方にコイル81を配置したり溶接部42dよりも下方にコイル81を配置したりしてもよい。誘導加熱装置80が有するコイルを複数として、筒状体41のうち溶接部42dよりも上方の周囲と溶接部42dよりも下方の周囲とにそれぞれコイルを配置してもよい。筒状体41のうち工程(b)のあとに溶接を行う部分がコイル配置領域Rcに含まれている場合、誘導加熱によりその部分に酸化膜が生成される場合があり、この酸化膜が工程(b)の後に溶接を行う際の溶接不良を引き起こす場合がある。筒状体41のうち工程(b)のあとに溶接を行う部分を避けるようにコイル81を配置することで、溶接不良の発生を抑制できる。
【0051】
工程(b)では、封止材45a,45bの少なくとも一方について、加熱により水分を除去することが好ましい。封止材45a,45bが水分を含んでいると、水分が蒸発して空間49内の基準ガスの酸素濃度に影響を与えることでガスセンサ10のNOx濃度の検出精度が低下する場合がある。封止材45a,45bの水分を除去することで、このような検出精度の低下を抑制できる。特に、封止材45a,45bのうち空間49に近い封止材45bについては、工程(b)で水分を除去することが好ましい。
【0052】
工程(b)では、保護カバー30の温度が500℃を超えないように誘導加熱を行うことが好ましい。筒状体41が誘導加熱されることで、例えば熱伝導により保護カバー30も加熱される場合があるが、誘導加熱中の保護カバー30の温度を500℃未満に保つことで、保護カバー30の黒化をより確実に抑制できる。誘導加熱中の保護カバー30の温度の調整は、例えばコイル81に流す電流の値,電流の周波数,保護カバー30とコイル81との上下方向の距離の少なくとも一方を調整することで行ってもよい。あるいは、例えばエアーなどの冷却ガスを流して保護カバー30を冷却することで保護カバー30の温度を調整してもよい。また、保護カバー30は、工程(a)で主体金具42に取り付ける前に洗浄して油分を除去しておくことが好ましい。
【0053】
以上詳述した本実施形態のガスセンサ10の製造方法によれば、工程(b)で組立体15を誘導加熱するにあたり、保護カバー30を避けるように、筒状体41のうち保護カバー30よりも上側の少なくとも一部の周囲にコイル81を配置する。そして、コイル81に電流を流すことにより筒状体41のうち周囲にコイルが配置された部分を誘導加熱する。そのため、筒状体41のうち誘導加熱される部分の油分を除去しつつ、保護カバー30の黒化を抑制することができる。
【0054】
また、工程(b)では、筒状体41のうち少なくとも内筒43を含む部分の周囲にコイル81を配置するため、少なくとも内筒43の油分を除去することで内筒43に付着した油分によるガスセンサ10の検出精度の低下を抑制できる。さらに、工程(b)では、筒状体41のうち保護カバー30よりも上側の全体の周囲にコイル81を配置するため、保護カバー30を避けつつ筒状体41のなるべく多くの部分を誘導加熱でき、筒状体41に付着している油分を除去しやすい。さらに、工程(b)では、筒状体41のうち周囲にコイル81が配置された部分を420℃以上に加熱するため、その部分の油分をより確実に除去できる。さらにまた、工程(b)では、封止材45a,45bが650℃を超えないように誘導加熱を行うため、封止材45a,45bにタルクが含まれる場合に、タルクが誘導加熱によって変質してしまうのを抑制できる。そしてまた、工程(b)では、筒状体41のうち周囲にコイル81が配置された部分の温度を400℃以上に昇温し、且つその部分が400℃以上であるときの昇温速度が27.5℃/秒を超えないようにする。そのため、セラミックス部材であるサポーター44a〜44cにクラックが生じるのを抑制できる。そしてさらにまた、工程(b)では、筒状体41のうち周囲にコイル81が配置された部分の温度を600℃以上に昇温し、且つその部分が400℃以上600℃以下であるときの昇温速度が27.5℃/秒を超えないようにする。そのため、セラミックス部材であるサポーター44a〜44cにクラックが生じるのを抑制できる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0056】
たとえば、上述した実施形態では、素子封止体40は3個のサポーター44a〜44cと2個の封止材45a,45bを備えていたが、筒状体41の内側とセンサ素子20との間を封止し且つセンサ素子20を固定できればよく、これらの個数は適宜変更してもよい。例えば、素子封止体40はサポーター44bを備えないものとし、サポーター44aとサポーター44cとの間に1つの封止材を備えていてもよい。また、筒状体41の内側とセンサ素子20との間を封止し且つセンサ素子20を固定できれば、セラミックス部材及び圧粉体以外の部材を用いてもよい。また、上述した実施形態では、筒状体41は主体金具42と内筒43とを溶接した部材としたが、これに限らず筒状体41は主体金具42及び内筒43に相当する部材が一体形成された部材であってもよい。
【0057】
上述した実施形態では、被測定ガス導入口22aはセンサ素子20の先端面20bに配設されていたが、これに限らずセンサ素子20の一端側(
図1の下端側)に配設されていればよい。基準ガス導入口22bについても同様に、基端面20cに限らずセンサ素子20の他端側(
図1の上端側)に配設されていればよい。また、センサ素子20は、基準ガス導入空間21cを備えない代わりに基準ガス導入層21dが基準電極28から基端面20cまでに亘って存在していてもよい。この場合、基準ガス導入層21dのうち基端面20cに露出する端部が、基準ガス導入口22bに相当する。
【0058】
上述した実施形態では、工程(b)において、コイル81の内側に筒状体41の少なくとも一部が挿入された状態で誘導加熱を行ったが、これに限らず筒状体41の少なくとも一部の周囲にコイル81が配置されていればよい。例えば、
図6に示すように、コイル81の軸方向が組立体15の軸方向と交差(
図6では直交)するようにコイル81を組立体15の周囲に配置してもよい。この場合も、コイル81の上端から下端までの領域をコイル配置領域Rcとして、このコイル配置領域Rcが保護カバー領域Rpとは重複せず且つ領域R1の少なくとも一部と重複するようにコイル81を配置して誘導加熱を行えばよい。
図6ではコイル81を1つのみ図示しているが、筒状体41の周囲にコイル81を複数配置してもよい。
【実施例】
【0059】
以下には、組立体15を作製して工程(b)の誘導加熱を行った例を実施例として説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
まず、工程(a)では、
図3を用いて説明した手順で組立体15を作製した。主体金具42の材質はSUS430とし、内筒43の材質はSUS430とし、保護カバー30の材質はSUS310Sとした。サポーター44a〜44cはいずれもアルミナからなるセラミックスの焼結体とした。封止材45a,45bはタルク粉末を成形した圧粉体とした。次に、工程(b)では、
図4に示した誘導加熱装置80を用いて組立体15の誘導加熱を行った。電源装置82が印加する電圧は12.6V,周波数は172kHzとし、コイル81に流れる電流は70.2Aとした。電源装置82が電流を流す時間は22秒とし、誘導加熱後は組立体15周囲にエアーを流して組立体15を冷却した。コイル81は、
図5に示したようにコイル配置領域Rcが保護カバー領域Rpと重複せず且つ領域R1を含むように配置した。
【0061】
[実施例2]
工程(b)においてコイル81に流れる電流が66.0Aとなるように電源装置82の出力を調整した点以外は実施例1と同様の工程(a),(b)を行って実施例2とした。
【0062】
図7は、実施例1,2の誘導加熱時の温度の時間変化を示すグラフである。
図7の横軸はコイル81に電流を流し始めてからの経過時間であり、
図7の縦軸は筒状体41の温度である。筒状体41の温度は熱電対により0.1秒毎に測定した。実施例1,2のいずれも、誘導加熱により筒状体41が600℃以上650℃以下の温度まで加熱された。実施例1では、筒状体41の温度が400℃以上になってから最高温度に到達するまでの間の昇温速度の最大値は31.5℃/秒であった。実施例2では、筒状体41の温度が400℃以上になってから最高温度に到達するまでの間の昇温速度の最大値は27.5℃/秒であった。
【0063】
実施例1,2のいずれにおいても、保護カバー30の黒化は見られなかった。また、実施例1における組立体15の作製及び誘導加熱を15回行ったところ、そのうちの11回ではサポーター44a〜44cの少なくともいずれかにクラックが発生していた。一方、実施例2では、10回のうちいずれにおいてもサポーター44a〜44cにクラックは見られなかった。このことから、筒状体41のうちコイル81が配置された部分の温度が400℃以上であるときの昇温速度が27.5℃を超えないようにすることで、サポーター44a〜44cのクラックの発生を抑制できたと考えられる。
【0064】
実施例1,2のいずれにおいても、誘導加熱後に組立体15を外筒48に挿入して外筒48の下端と主体金具42の溶接部42dとをレーザー溶接したところ、問題なく溶接ができ、溶接不良は見られなかった。実施例1,2の誘導加熱の条件では、溶接部42dには酸化膜が生じなかったか、又は生じても溶接に影響しない程度の厚さであったと考えられる。