特許第6773598号(P6773598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鶴見製作所の特許一覧

特許6773598水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ
<>
  • 特許6773598-水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ 図000002
  • 特許6773598-水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ 図000003
  • 特許6773598-水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ 図000004
  • 特許6773598-水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ 図000005
  • 特許6773598-水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ 図000006
  • 特許6773598-水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ 図000007
  • 特許6773598-水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773598
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/04 20060101AFI20201012BHJP
   F04D 13/08 20060101ALI20201012BHJP
   F16K 31/126 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F04D7/04 T
   F04D13/08 X
   F04D13/08 W
   F16K31/126 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-69887(P2017-69887)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172984(P2018-172984A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】田中 静夫
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−076873(JP,A)
【文献】 特開2007−051542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 7/04
F04D 13/08
F16K 31/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出される流体が通る流路と、
前記流路中に移動可能に設けられ、弁座に当接することにより前記流路を閉塞する弁体と、
前記流路中に配置され、封入液が封入される第1室の壁を形成する第1変形部と、前記流路中に配置され、前記封入液が封入される第2室の壁を形成する第2変形部とを含むダイアフラムと、
前記第1室と前記第2室との間を前記封入液が通過可能に連通する連通部を含み、前記第1室と前記第2室とを仕切る仕切り部材とを備え、
前記ダイアフラムは、前記第1変形部が前記流路中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、前記第1室の前記封入液が前記連通部を介して前記第2室に流入し、前記第2変形部が変形されることにより前記弁体を前記弁座に導くように構成されており、
前記ダイアフラムの前記第1変形部は、前記流路を取り囲むように配置されている、水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項2】
前記ダイアフラムは、前記第1変形部および前記第2変形部が一体的に形成されている、請求項1に記載の水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項3】
前記ダイアフラムは、筒状に形成されており、筒状の内側に前記流路が形成され、筒状の外側に前記第1室および前記第2室が形成されている、請求項1または2に記載の水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項4】
筒状の前記ダイアフラムの前記第1変形部は、流体の流れ方向に沿って前記流路を狭くするように形成されている、請求項3に記載の水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項5】
筒状の前記ダイアフラムを内側から押さえて支持する押え部材をさらに備え、
前記押え部材は、前記第2変形部に対向するように設けられた開口を含む、請求項3または4に記載の水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項6】
前記押え部材は、筒状に形成されており、前記第2変形部に対向する部分に前記開口が設けられている、請求項5に記載の水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項7】
前記弁体は、略球状に形成されており、
前記押え部材の前記開口は、前記弁体が通過可能な大きさを有している、請求項5または6に記載の水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項8】
筒状の前記ダイアフラムの外側を覆うように設けられ、前記第1室および前記第2室の壁を形成する筒状のケース部材をさらに備え、
前記仕切り部材は、前記ケース部材と一体的に形成されている、請求項3〜7のいずれか1項に記載の水中ポンプ用バルブ装置。
【請求項9】
駆動部と、
前記駆動部により駆動される羽根車と、
前記羽根車により吐出される流体が通る第1流路および第2流路と、
前記第2流路中に移動可能に設けられ、弁座に当接することにより前記第2流路を閉塞する弁体と、
前記第2流路中に配置され、封入液が封入される第1室の壁を形成する第1変形部と、前記第2流路中に配置され、前記封入液が封入される第2室の壁を形成する第2変形部とを含むダイアフラムと、
前記第1室と前記第2室との間を前記封入液が通過可能に連通する連通部を含み、前記第1室と前記第2室とを仕切る仕切り部材とを備え、
前記ダイアフラムは、前記第1変形部が前記第2流路中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、前記第1室の前記封入液が前記連通部を介して前記第2室に流入し、前記第2変形部が変形することにより前記弁体を前記弁座に導くように構成されており、
前記ダイアフラムの前記第1変形部は、前記第2流路を取り囲むように配置されている、水中ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水用の水槽内を撹拌するためなどに用いられる水中ポンプ用バルブ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ポンプの運転開始時に、一定時間の間ポンプから吐出される廃水の流路を開放するバルブ(水中ポンプ用バルブ装置)が開示されている。この特許文献1のバルブは、流路の流れ方向と直交する方向にダイアフラムが配置され、流体が流れることによる圧力差により、ダイアフラムが変形されることにより、一定時間後にバルブボールが弁座に当接されて、開放された流路を閉塞するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−76873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のバルブ(水中ポンプ用バルブ装置)では、変形させるダイアフラムが流路の流れ方向と直交する方向に配置され、流体が流れることによる圧力差のみでダイアフラムを変形させる構成であるため、ダイアフラムを大きく変形させることが困難であるという不都合がある。このため、所望の変形量を達成するために、ダイアフラムの圧力差を受ける部分の面積を大きくする必要がある。その結果、ダイアフラムが大きくなるため、バルブが大型化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置が大型化するのを抑制することが可能な水中ポンプ用バルブ装置および水中ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における水中ポンプ用バルブ装置は、吐出される流体が通る流路と、流路中に移動可能に設けられ、弁座に当接することにより流路を閉塞する弁体と、流路中に配置され、封入液が封入される第1室の壁を形成する第1変形部と、流路中に配置され、封入液が封入される第2室の壁を形成する第2変形部とを含むダイアフラムと、第1室と第2室との間を封入液が通過可能に連通する連通部を含み、第1室と第2室とを仕切る仕切り部材とを備え、ダイアフラムは、第1変形部が流路中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、第1室の封入液が連通部を介して第2室に流入し、第2変形部が変形されることにより弁体を弁座に導くように構成されており、ダイアフラムの第1変形部は、流路を取り囲むように配置されている。
【0008】
この発明の第1の局面による水中ポンプ用バルブ装置では、上記のように、ダイアフラムを、第1変形部が流路中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、第1室の封入液が連通部を介して第2室に流入し、第2変形部が変形されることにより弁体を弁座に導くように構成する。これにより、流体の流れによりダイアフラムの第1変形部を変形させることができるので、圧力差のみによりダイアフラムを変形させる場合に比べて、第1変形部を大きく変形させることができる。これにより、圧力差のみによりダイアフラムを変形させる場合と異なり、ダイアフラムを大型化する必要がないので、装置が大型化するのを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による水中ポンプ用バルブ装置において、好ましくは、ダイアフラムは、第1変形部および第2変形部が一体的に形成されている。このように構成すれば、第1変形部および第2変形部を別体で設ける場合に比べて、部品点数を減少させることができるとともに、装置構成を簡素化することができる。
【0010】
上記第1の局面による水中ポンプ用バルブ装置において、好ましくは、ダイアフラムは、筒状に形成されており、筒状の内側に流路が形成され、筒状の外側に第1室および第2室が形成されている。このように構成すれば、流路を囲むようにダイアフラムを設けることができるので、ダイアフラムの第1変形部に対して、流体の流れをバランスよく作用させることができる。これにより、ダイアフラムの第1変形部を効果的に変形させることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、筒状のダイアフラムの第1変形部は、流体の流れ方向に沿って流路を狭くするように形成されている。このように構成すれば、ダイアフラムの第1変形部を、流路を狭くして流体の流速を大きくするためのノズルとして機能させることができるので、ノズルを別途設ける場合に比べて、部品点数を減少させることができるとともに、装置構成を簡素化することができる。また、流路が狭くなるように設けられた第1変形部の表面には、流体が当たりやすくなるので、流体の流れにより容易に第1変形部を変形させることができる。
【0012】
上記ダイアフラムが筒状に形成されている構成において、好ましくは、筒状のダイアフラムを内側から押さえて支持する押え部材をさらに備え、押え部材は、第2変形部に対向するように設けられた開口を含む。このように構成すれば、押え部材の開口以外の部分により筒状のダイアフラムを内側から支持することができるので、押え部材に支持された部分のダイアフラムが変形するのを抑制することができる。これにより、第1室の封入液が連通部を介して第2室に流入した場合に、開口に対向する位置の第2変形部に変形を集中させることができるので、第2変形部を容易に大きく変形させることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、押え部材は、筒状に形成されており、第2変形部に対向する部分に開口が設けられている。このように構成すれば、断面形状が多角形である場合と比べて、筒状(断面形状が円形状)の押え部材内を流れる流体の摩擦力(圧力損失)を低減させることができるとともに、押え部材を製造しやすく構成することができる。また、筒状のダイアフラムの内側を筒状の押え部材により密着して支持することができるので、開口に対向する位置の第2変形部に変形を集中させて、第2変形部を効果的に大きく変形させることができる。
【0014】
上記押え部材を備える構成において、好ましくは、弁体は、略球状に形成されており、押え部材の開口は、弁体が通過可能な大きさを有している。このように構成すれば、押え部材の開口を介して弁体を押え部材の内側の流路中と、押え部材の外側の部分とに移動させることができる。これにより、弁体を弁座に当接して流路を閉塞する位置と、弁体を弁座から離間させて流路を開放する位置とに、弁体を容易に移動させることができる。
【0015】
上記ダイアフラムが筒状に形成されている構成において、好ましくは、筒状のダイアフラムの外側を覆うように設けられ、第1室および第2室の壁を形成する筒状のケース部材をさらに備え、仕切り部材は、ケース部材と一体的に形成されている。このように構成すれば、筒状のダイアフラムと筒状のケース部材とを組み合わせることにより、容易に第1室および第2室を設けることができる。
【0016】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面における水中ポンプは、駆動部と、駆動部により駆動される羽根車と、羽根車により吐出される流体が通る第1流路および第2流路と、第2流路中に移動可能に設けられ、弁座に当接することにより第2流路を閉塞する弁体と、第2流路中に配置され、封入液が封入される第1室の壁を形成する第1変形部と、第2流路中に配置され、封入液が封入される第2室の壁を形成する第2変形部とを含むダイアフラムと、第1室と第2室との間を封入液が通過可能に連通する連通部を含み、第1室と第2室とを仕切る仕切り部材とを備え、ダイアフラムは、第1変形部が第2流路中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、第1室の封入液が連通部を介して第2室に流入し、第2変形部が変形することにより弁体を弁座に導くように構成されており、ダイアフラムの第1変形部は、第2流路を取り囲むように配置されている。
【0017】
この発明の第2の局面による水中ポンプでは、上記のように、ダイアフラムを、第1変形部が第2流路中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、第1室の封入液が連通部を介して第2室に流入し、第2変形部が変形することにより弁体を弁座に導くように構成する。これにより、流体の流れによりダイアフラムの第1変形部を変形させることができるので、圧力差のみによりダイアフラムを変形させる場合に比べて、第1変形部を大きく変形させることができる。これにより、圧力差のみによりダイアフラムを変形させる場合と異なり、ダイアフラムを大型化する必要がないので、装置が大型化するのを抑制することが可能な水中ポンプを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、装置が大型化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による水中ポンプを示した概略図である。
図2】本発明の一実施形態による水中ポンプを示した平面図である。
図3】本発明の一実施形態による水中ポンプの配置例を示した図である。
図4】本発明の一実施形態によるバルブ装置を示した断面斜視図である。
図5】本発明の一実施形態によるバルブ装置の押え部材を示した斜視図である。
図6】本発明の一実施形態によるバルブ装置の開放状態を示した断面図である。
図7】本発明の一実施形態によるバルブ装置の閉塞状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(水中ポンプの構成)
図1図7を参照して、本発明の一実施形態について説明する。一実施形態による水中ポンプ100は、図1に示すように、モータ1と、回転軸2と、ポンプ室3と、オイル室4と、メカニカルシール5と、オイルリフター6と、羽根車7とを備えている。また、水中ポンプ100には、バルブ装置8が設けられている。また、水中ポンプ100は、回転軸2が上下方向に延びる縦型の水中電動ポンプである。なお、モータ1は、特許請求の範囲の「駆動部」の一例である。また、バルブ装置8は、特許請求の範囲の「水中ポンプ用バルブ装置」の一例である。
【0022】
モータ1は、外部からの水が浸入しないように、密閉されている。また、モータ1は、回転軸2を介して羽根車7を回転駆動させるように構成されている。また、モータ1は、固定子11と回転子12とを含んでいる。固定子11は、コイルを有しており、モータ1の外周部に配置されている。また、固定子11は、ケーブル13から電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。回転子12は、回転軸2に取り付けられ、固定子11と対向するようにモータ1の内側に配置されている。また、回転子12は、固定子11からの磁界により回転するように構成されている。
【0023】
回転軸2は、モータ1の駆動により回転するように構成されている。また、回転軸2は、モータ1の駆動力を羽根車7に伝えるように構成されている。また、回転軸2(羽根車7)は、平面視において(上方から見た場合に)、時計回り(図1に示すJ方向)に回転するように構成されている。また、回転軸2は、ベアリング21および22により回転可能に支持されている。また、回転軸2は、モータ1からオイル室4を貫通してポンプ室3まで延びるように配置されている。また、回転軸2のモータ1側の端部とは逆側の端部には、羽根車7が取り付けられている。
【0024】
ポンプ室3には、羽根車7が配置されている。また、ポンプ室3には、吸込口31と吐出口32と流路33とが形成されている。羽根車7は、回転することにより、水中ポンプ100が配置されたマンホールなどの排水領域200(図3参照)の汚水を吸込口31から吸い込むとともに、吸い込んだ汚水を流路33を介して吐出口32の方向に送るように構成されている。つまり、流路33は、羽根車7により吐出される流体が通るように構成されている。なお、流路33は、特許請求の範囲の「第1流路」の一例である。
【0025】
オイル室4は、モータ1およびポンプ室3の間に配置されており、オイル室4は、オイルが充填されている。また、オイル室4内には、メカニカルシール5が設けられている。メカニカルシール5は、負荷側(ポンプ室3側)および反負荷側(ポンプ室3に対して反対側、つまり、モータ1側)に、それぞれ、摺動部(図示せず)を有している。負荷側の摺動部は、ポンプ室3の圧力水がオイル室4に流入するのを防止(抑制)する機能を有している。また、反負荷側の摺動部は、オイル室4のオイルを含む流体がモータ1側に流入するのを防止(抑制)する機能を有している。なお、摺動部は、オイル室4に充填されたオイルによって、潤滑されるとともに、焼きつかないように冷却される。メカニカルシール5の反負荷側(上端)には、シール41が設けられている。シール41は、たとえば、オイルシール等が用いられる。
【0026】
オイルリフター6は、オイル室4の回転軸2の周りに設けられ、回転軸2の周囲を囲う筒形状を有している。また、オイルリフター6は、回転軸2の回転に伴いオイルを上方向に持ち上げるように構成されている。つまり、オイルリフター6は、メカニカルシール5の反負荷側の摺動部にオイルを供給するように構成されている。また、オイルリフター6の下部には、貫通孔6aが設けられている。貫通孔6aは、オイルリフター6の内周側にオイルを導くように構成されている。また、オイルリフター6は、上方向に持ち上げたオイルをオイルリフター6の上端側から外周側に戻すように構成されている。
【0027】
羽根車7は、図1に示すように、回転軸2を介してモータ1に接続されている。また、羽根車7は、ポンプ室3に配置されている。羽根車7は、軸方向(上下方向)から見て、円形状に形成されている。また、羽根車7(および回転軸2)の中心は、吸込口31の真上に配置され、吐出口32の側方側に配置されている。また、羽根車7は、金属材料、樹脂材料またはゴム材料などにより形成されている。
【0028】
(バルブ装置の構成)
バルブ装置8は、望ましくは、ポンプ室3のケーシングの上部のエアバルブ取付孔に取り付けられている。これにより、水中ポンプ100を水中に配置する際に、ポンプ室3の空気をバルブ装置8から逃がすことができるので、別途エアバルブを設ける必要がないとともに、バルブ装置8を取り付けるための構成を別途設ける必要がない。また、バルブ装置8は、ポンプ室3から送られる流体を流路8aを通して吐出するように構成されている。つまり、流路8aは、羽根車7により吐出される流体が通るように構成されている。図2に示すように、バルブ装置8は、水平方向に流体を吐出するように構成されている。また、バルブ装置8は、水中ポンプ100の始動時において、所定の時間、流体を吐出するように構成されている。つまり、バルブ装置8は、フラッシュバルブとして機能する。なお、流路8aは、特許請求の範囲の「第2流路」の一例である。
【0029】
ここで、水中ポンプ100は、図3に示すように、マンホールなどの排水領域200に配置される。排水領域200は、汚水が貯められる。このため、スカムの発生や壁面にスカムが固着することを抑制するために、排水領域200を定期的に撹拌する必要がある。そこで、水中ポンプ100の始動時に、吸水する汚水の一部を排水領域200に吐出することにより、排水領域200を撹拌する。バルブ装置8の吐出方向は、マンホールの周方向に調整される。バルブ装置8は、水中ポンプ100が始動してから所定時間経過後に流路8aを開放状態から閉塞状態に切り替えるように構成されている。バルブ装置8の流路8aが開放状態の場合に、水中ポンプ100により吸水された汚水の残りは、配管101を通って、送水される。
【0030】
排水領域200には、複数(2台)の水中ポンプ100が設けられている。複数の水中ポンプ100を同時に動作させる場合は、複数の水中ポンプ100の各々のバルブ装置8から吐出される流体により排水領域200に旋回流を発生させるように吐出方向が調整されている。これにより、効率よく排水領域200を撹拌することが可能である。
【0031】
バルブ装置8は、図4に示すように、配管81と、吐出部82と、ダイアフラム83と、押え部材84と、ケース部材85と、弁体86とを備えている。配管81および吐出部82は、流体の吐出方向において、ダイアフラム83、押え部材84およびケース部材85を挟み込んだ状態において、複数組のボルト87aおよびナット87bにより締結されている。締結するボルト87aおよびナット87bは、3組または4組設けられている。これにより、ダイアフラム83、押え部材84およびケース部材85を挟み込んだ状態でバランスよく配管81および吐出部82を締結することが可能である。
【0032】
また、バルブ装置8には、封入液89が封入される第1室88aおよび88bが形成されている。
【0033】
配管81は、管部811と、フランジ部812とを含んでいる。管部811は、湾曲形状の管状に形成されている。つまり、バルブ装置8の流路8aは、湾曲した部分を含んでいる。管部811の内側には、流路8aが形成されている。フランジ部812は、板状に形成されている。フランジ部812は、ボルト87aおよびナット87bにより締結するために設けられている。フランジ部812には、ボルト87aを通すための貫通孔が形成されている。配管81は、一端側がポンプ室3のケーシングに接続され、他端側がダイアフラム83に接続されている。
【0034】
吐出部82は、弁座821と、フランジ部822とを含んでいる。弁座821は、弁体86が当接することにより流路8aが閉塞されるように構成されている。フランジ部822は、板状に形成されている。フランジ部822は、ボルト87aおよびナット87bにより締結するために設けられている。フランジ部822には、ボルト87aを通すための貫通孔が形成されている。
【0035】
ダイアフラム83は、第1変形部831と、第2変形部832と、管状部833とを含んでいる。第1変形部831は、流路8a中に配置され、封入液89が封入される第1室88aの壁を形成している。第2変形部832は、流路8a中に配置され、封入液89が封入される第2室88bの壁を形成している。また、ダイアフラム83は、第1変形部831および第2変形部832が一体的に形成されている。
【0036】
また、ダイアフラム83は、筒状に形成されている。そして、ダイアフラム83は、筒状の内側に流路8aが形成され、筒状の外側に第1室88aおよび第2室88bが形成されている。具体的には、筒状のダイアフラム83の外側を覆うように筒状のケース部材85が設けられている。そして、筒状のダイアフラム83の外側と、筒状のケース部材85との内側により囲まれた部分に、第1室88aおよび第2室88bが形成されている。つまり、ケース部材85は、第1室88aおよび第2室88bの壁を形成している。
【0037】
筒状のダイアフラム83の第1変形部831は、流体の流れ方向に沿って流路8aを狭くするように形成されている。具体的には、第1変形部831は、流路8aの断面の面積が流体の流れ方向に沿って徐々に小さくなるように構成されている。流路8aの断面は、略円形状に形成されている。つまり、第1変形部831は、流路8aを狭くするノズルとしても機能する。
【0038】
第1変形部831は、ダイアフラム83において、流体の流れる方向における上流に設けられている。第2変形部832は、ダイアフラム83において、流体の流れる方向における下流側の下部に設けられている。管状部833は、ダイアフラム83において、流体の流れる方向における下流側の上部に設けられている。ダイアフラム83の下流側の部分は、上部が、断面が半円形状の管状部833により形成され、下部が、断面が半楕円形状の第2変形部832により形成されている。
【0039】
ダイアフラム83は、弾性変形可能な材料により形成されている。ダイアフラム83は、弾性材料により形成されている。たとえば、ダイアフラム83は、ゴムや樹脂などにより形成されている。
【0040】
押え部材84は、筒状のダイアフラム83を内側から押さえて支持するように構成されている。押え部材84は、筒状に形成されている。押え部材84は、第2変形部832に対向するように設けられた開口841を含んでいる。具体的には、図5に示すように、押え部材84は、筒状の下部側面に開口841が設けられている。また、押え部材84の開口841は、弁体86が通過可能な大きさを有している。具体的には、開口841は、平面視において(上下方向に見て)開口841の径が、弁体86の径よりも大きくなるように形成されている。
【0041】
押え部材84は、金属により形成されている。具体的には、押え部材84は、金属製の管に開口841を設けることにより形成されている。押え部材84は、ダイアフラム83を押さえる芯金として機能する。具体的には、押え部材84は、流体の吐出方向において、ダイアフラム83に挟み込まれた状態において、ダイアフラム83の外側から配管81および吐出部82により挟み込むことにより、ダイアフラム83を固定している。これにより、第1室88aおよび第2室88bがシールされる。
【0042】
ケース部材85は、筒状のダイアフラム83の外側を覆うように設けられ、第1室88aおよび第2室88bの壁を形成する筒状に形成されている。つまり、ケース部材85は、第1室88aの外側の壁、および、第2室88bの外側の壁を形成している。ケース部材85には、仕切り部材851と、通路852とが設けられている。また、ケース部材85は、金属により形成されている。たとえば、ケース部材85は、鉄を含む材料の鋳物により形成されている。
【0043】
仕切り部材851は、第1室88aと第2室88bとを仕切るように構成されている。また、仕切り部材851には、第1室88aと第2室88bとの間を封入液89が通過可能に連通する連通部851aを含んでいる。連通部851aは、小径の貫通孔(オリフィス)である。連通部851aは、封入液89が第1室88aおよび第2室88bの間をゆっくりと移動するように設けられている。連通部851aの孔径を調整することにより、封入液89の移動速度が調整される。
【0044】
仕切り部材851は、ケース部材85と一体的に形成されている。通路852は、封入液89を出し入れするために設けられている。通路852は、栓852aにより封止することが可能に構成されている。
【0045】
弁体86は、略球状に形成されている。また、弁体86は、ステンレスなどの金属、樹脂、または、ガラスなどにより形成されている。弁体86は、流路8a中に移動可能に設けられている。そして、弁体86は、弁座821に当接することにより流路8aを閉塞するように構成されている。具体的には、弁体86は、図6に示すように、水中ポンプ100の始動時には、押え部材84の開口841に収まっている。これにより、流路8aを開放している。また、弁体86は、図7に示すように、水中ポンプ100の駆動から所定時間経過後に、弁座821に当接する。これにより、流路8aを閉塞する。
【0046】
封入液89は、水よりも粘性が大きい流体により形成されている。封入液89は、たとえば、オイルを含んでいる。封入液89は、第1室88aおよび第2室88bに封入される量や、粘度が調整されることにより、水中ポンプ100の駆動から、バルブ装置8の流路8aが閉塞されるまでの時間が調整される。封入液89は、第1室88aおよび第2室88b内を真空引きした状態で、通路852から注入される。これにより、第1室88aおよび第2室88b内に気体が混入することを抑制することができるので、第1変形部831および第2変形部832の変形が気体の圧縮により吸収されて、変形量が小さくなるのを抑制することが可能である。
【0047】
ここで、本実施形態では、ダイアフラム83は、第1変形部831が流路8a中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、第1室88aの封入液89が連通部851aを介して第2室88bに流入し、第2変形部832が変形されることにより弁体86を弁座821に導くように構成されている。
【0048】
具体的には、図6および図7に示すように、第1変形部831は、流体の流れにより、流体の流れる方向に押されて変形される。また、第2変形部832は、流路8aに流体が流れることにより、圧力差(負圧)を受け流路8a側に変形される。つまり、流路8aに流体が流れることにより、第1室88aが小さくなり、第2室88bが大きくなる。これにより、封入液89が連通部851aを介して第1室88aから第2室88bに移動する。この際、連通部851aにより封入液89の移動量(流量)が制限されるため、封入液89は、第1室88aから第2室88bにゆっくり移動する。
【0049】
第2室88bに封入液89が移動されると、第2変形部832により弁体86を押し上げられる。押し上げられた弁体86は、流体の流れにより流れ方向に押されて、弁座821に導かれる。弁体86が弁座821に当接すると、ポンプ室3からの圧力により、弁体86が弁座821に当接された状態で維持される。これにより、バルブ装置8の流路8aが閉塞されて、バルブ装置8からの流体の吐出が停止される。
【0050】
弁体86により流路8aが閉塞されると、流れがなくなるので、第1変形部831に作用する圧力と、第2変形部832に作用する圧力とが略等しくなる。つまり、第1変形部831および第2変形部832は、弾性材料の復元力(元の形に戻ろうとする力)により、図6の状態に戻るように変形する。これにより、封入液89が連通部851aを介して第2室88bから第1室88aに移動する。また、水中ポンプ100の駆動が停止されると、ポンプ室3からの圧力もなくなるため、弁体86が重力により下に移動する。この際に、弁体86が第2変形部832を下側に押圧して、第2変形部832を図6の状態に戻るように変形させる。
【0051】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0052】
本実施形態では、上記のように、ダイアフラム83を、第1変形部831が流路8a中において流体により流体が流れる方向に押されて変形されることにより、第1室88aの封入液89が連通部851aを介して第2室88bに流入し、第2変形部832が変形されることにより弁体86を弁座821に導くように構成する。これにより、流体の流れによりダイアフラム83の第1変形部831を変形させることができるので、圧力差のみによりダイアフラム83を変形させる場合に比べて、第1変形部831を大きく変形させることができる。これにより、圧力差のみによりダイアフラム83を変形させる場合と異なり、ダイアフラム83を大型化する必要がないので、装置が大型化するのを抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、ダイアフラム83の第1変形部831および第2変形部832を、一体的に形成する。これにより、第1変形部831および第2変形部832を別体で設ける場合に比べて、部品点数を減少させることができるとともに、装置構成を簡素化することができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、ダイアフラム83を、筒状に形成し、筒状の内側に流路8aを形成し、筒状の外側に第1室88aおよび第2室88bを形成する。これにより、流路8aを囲むようにダイアフラム83を設けることができるので、ダイアフラム83の第1変形部831に対して、流体の流れをバランスよく作用させることができる。これにより、ダイアフラム83の第1変形部831を効果的に変形させることができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、筒状のダイアフラム83の第1変形部831を、流体の流れ方向に沿って流路8aを狭くするように形成する。これにより、ダイアフラム83の第1変形部831を、流路8aを狭くして流体の流速を大きくするためのノズルとして機能させることができるので、ノズルを別途設ける場合に比べて、部品点数を減少させることができるとともに、装置構成を簡素化することができる。また、流路8aが狭くなるように設けられた第1変形部831の表面には、流体が当たりやすくなるので、流体の流れにより容易に第1変形部831を変形させることができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、筒状のダイアフラム83を内側から押さえて支持する押え部材84を設け、押え部材84に、第2変形部832に対向するように開口841を形成する。これにより、押え部材84の開口841以外の部分により筒状のダイアフラム83を内側から支持することができるので、押え部材84に支持された部分のダイアフラム83が変形するのを抑制することができる。これにより、第1室88aの封入液89が連通部851aを介して第2室88bに流入した場合に、開口841に対向する位置の第2変形部832に変形を集中させることができるので、第2変形部832を容易に大きく変形させることができる。
【0057】
本実施形態では、上記のように、押え部材84を、筒状に形成し、第2変形部832に対向する部分に開口841を設ける。これにより、断面形状が多角形である場合と比べて、筒状(断面形状が円形状)の押え部材84内を流れる流体の摩擦力(圧力損失)を低減させることができるとともに、押え部材84を製造しやすく構成することができる。また、筒状のダイアフラム83の内側を筒状の押え部材84により密着して支持することができるので、開口841に対向する位置の第2変形部832に変形を集中させて、第2変形部832を効果的に大きく変形させることができる。
【0058】
本実施形態では、上記のように、弁体86を、略球状に形成し、押え部材84の開口841を、弁体86が通過可能な大きさを有するように形成する。これにより、押え部材84の開口841を介して弁体86を押え部材84の内側の流路8a中と、押え部材84の外側の部分とに移動させることができる。これにより、弁体86を弁座821に当接して流路8aを閉塞する位置と、弁体86を弁座821から離間させて流路8aを開放する位置とに、弁体86を容易に移動させることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、筒状のダイアフラム83の外側を覆うとともに、第1室88aおよび第2室88bの壁を形成する筒状のケース部材85を設け、仕切り部材851を、ケース部材85と一体的に形成する。これにより、筒状のダイアフラム83と筒状のケース部材85とを組み合わせることにより、容易に第1室88aおよび第2室88bを設けることができる。
【0060】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
たとえば、上記実施形態では、水中ポンプをマンホール内に配置した例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、水中ポンプをマンホール内以外に配置してもよい。たとえば、水中ポンプを、水槽や、池、海などに配置してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、バルブ装置(水中ポンプ用バルブ装置)が流体を水平方向に吐出する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、水中ポンプ用バルブ装置が水平方向に対して斜め上または斜め下に向けて流体を吐出するようにしてもよいし、上または下方向に流体を吐出するようにしてもよい。また、水中ポンプ用バルブ装置の流体の吐出方向を調整可能に構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、バルブ装置(水中ポンプ用バルブ装置)がポンプ室のケーシング上部に取り付けられた例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、水中ポンプ用バルブ装置をポンプ室のケーシング上部以外に取り付けてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、排水領域に2台の水中ポンプを配置する構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、排水領域に1台の水中ポンプを配置してもよいし、3台以上の水中ポンプを配置してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、バルブ装置(水中ポンプ用バルブ装置)の流路が湾曲した形状の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、水中ポンプ用バルブ装置の流路が直線状に延びた形状に形成されていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、弁体が略球形状に形成されている構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、弁体は、略球形状以外の形状に形成されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、回転軸が垂直方向に延びるように配置された縦型の水中ポンプに本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らない。回転軸が水平方向に延びるように配置された横型の水中ポンプに本発明を適用してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、オイル室にオイルを持ち上げるためのオイルリフターを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、オイル室にオイルリフターを設けていなくてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 モータ(駆動部)
7 羽根車
8 バルブ装置(水中ポンプ用バルブ装置)
8a 流路(第2流路)
33 流路(第1流路)
83 ダイアフラム
84 押え部材
85 ケース部材
86 弁体
88a 第1室
88b 第2室
89 封入液
100 水中ポンプ
821 弁座
831 第1変形部
832 第2変形部
841 開口
851 仕切り部材
851a 連通部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7