特許第6773599号(P6773599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773599蓄電装置コントローラ及び電動システム並びに建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773599
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】蓄電装置コントローラ及び電動システム並びに建設機械
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/04 20060101AFI20201012BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20201012BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20201012BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20201012BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20201012BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20201012BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20201012BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20201012BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201012BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B60L3/04 EZHV
   B60L50/61
   B60L58/10
   B60K6/26
   B60K6/485
   B60W10/08 900
   B60W20/50
   H02H7/18
   H02J7/00 S
   H02J7/00 Y
   H02J7/00 P
   E02F9/20 Z
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-80496(P2017-80496)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-182920(P2018-182920A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】納谷 到
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
(72)【発明者】
【氏名】菊地 睦
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−61016(JP,A)
【文献】 特開2008−312396(JP,A)
【文献】 特開2014−110685(JP,A)
【文献】 特開2012−198132(JP,A)
【文献】 特開2013−129976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00−3/12,50/00−58/40
B60K 6/26,6/485
B60W 10/08,20/50
E02F 9/20
H02H 7/18
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧装置と、
前記電動モータに電力を供給する蓄電装置と、
前記蓄電装置と前記電動モータとの間に設けられ電力の変換を行うインバータと、
前記油圧ポンプ、前記油圧装置を制御するメインコントローラと、
前記蓄電装置を制御する蓄電装置コントローラと、
前記電動モータ、前記インバータ、前記蓄電装置コントローラを制御する機器コントローラと、
前記インバータと前記蓄電装置とが接続された電気回路を接続・遮断するリレーとを備えてなる建設機械において、
前記機器コントローラと前記蓄電装置コントローラは、それぞれ、前記リレーの励磁電流の供給と停止とを制御する励磁電流制御部を有する構成とし
前記蓄電装置コントローラは、前記蓄電装置の状態が前記リレーの励磁電流の停止を要する異常状態と判断した場合、前記機器コントローラに異常信号を送信し、かつ、所定時間経過したときに、前記リレーの状態に拘わらず、前記蓄電装置コントローラの前記励磁電流制御部により前記リレーの励磁電流を停止することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
電動モータと、
前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧装置と、
前記電動モータに電力を供給する蓄電装置と、
前記蓄電装置と前記電動モータとの間に設けられ電力の変換を行うインバータと、
前記油圧ポンプ、前記油圧装置を制御するメインコントローラと、
前記蓄電装置を制御する蓄電装置コントローラと、
前記電動モータ、前記インバータ、前記蓄電装置コントローラを制御する機器コントローラと、
前記インバータと前記蓄電装置とが接続された電気回路を接続・遮断するリレーとを備えてなる建設機械において、
前記機器コントローラと前記蓄電装置コントローラは、それぞれ、前記リレーの励磁電流の供給と停止とを制御する励磁電流制御部を有する構成とし、
前記蓄電装置コントローラは、前記蓄電装置の状態が前記リレーの励磁電流の停止を要する異常状態と判断した場合、前記機器コントローラに異常信号を送信し、
前記機器コントローラは、前記蓄電装置コントローラからの前記異常信号に基づいて前記電動モータ及び前記インバータの停止処理を実行してから、前記機器コントローラの前記励磁電流制御部により前記リレーの励磁電流を停止し、かつ、前記リレーの状態の信号を前記蓄電装置コントローラに送信することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
前記電動モータと機械的に接続されたエンジンをさらに備え、
前記油圧ポンプは、前記エンジンおよび前記電動モータによって駆動され、
前記蓄電装置は、前記電動モータに電力を供給し、または、前記電動モータによる発電電力を充電し、
前記メインコントローラは、前記エンジン、前記油圧ポンプ、前記油圧装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
リレーを介してインバータに電気的に接続され、被駆動体を駆動する電動モータに前記インバータを介して電力を供給する蓄電装置のコントローラであって、
前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記リレーの動作電流の供給及び停止を制御するための制御部を備える上位コントローラに対して、前記蓄電装置の異常状態を通知する蓄電装置異常状態通知部と、
前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記蓄電装置の異常状態を通知した前記上位コントローラによって前記リレーの動作電流の供給が停止されたか否かに関係無く、前記リレーの動作電流の供給を停止させるリレー制御部と、を有し、
前記リレー制御部は、前記蓄電装置の異常状態を前記上位コントローラに対して通知してから所定時間経過した後、前記リレーの動作電流の供給を停止させる、蓄電装置コントローラ。
【請求項5】
請求項に記載の蓄電装置コントローラにおいて、
前記所定時間は、前記蓄電装置の異常状態を通知してから、前記リレーの遮断によって前記蓄電装置と前記電動モータとの間に流れる電流がゼロの状態になるまでの時間、或いは、前記上位コントローラのリレー制御部によって前記リレーの動作電流の供給が停止されるまでの時間よりも長く設定される、蓄電装置コントローラ。
【請求項6】
被駆動体を駆動する電動モータと、
前記電動モータに電力を供給する蓄電装置と、
前記電動モータと前記蓄電装置との間に設けられ、前記蓄電装置から供給された電力を変換して前記電動モータに供給するインバータと、
前記蓄電装置と前記インバータとの間に設けられ、前記蓄電装置と前記インバータとの間を電気的に接続・遮断するリレーと、
前記蓄電装置の状態を管理する蓄電装置コントローラと、
前記蓄電装置コントローラと通信する上位コントローラと、を有する電動システムにおいて、
前記蓄電装置コントローラ及び前記上位コントローラは、それぞれ、前記リレーの動作電流の供給及び停止を制御するためのリレー制御部を有し、
前記蓄電装置コントローラは、さらに、前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記上位コントローラに対して、前記蓄電装置の異常状態を通知する蓄電装置異常状態通知部を有し、
前記蓄電装置コントローラのリレー制御部は、前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記上位コントローラによって前記リレーの動作電流の供給が停止されたか否かに関係無く、前記蓄電装置の異常状態を通知してから所定時間経過した後、前記リレーの動作電流の供給を停止させる、電動システム。
【請求項7】
請求項に記載の電動システムにおいて、
前記所定時間は、前記蓄電装置の異常状態を通知してから、前記リレーの遮断によって前記蓄電装置と前記電動モータとの間に流れる電流がゼロの状態になるまでの時間、或いは、前記上位コントローラのリレー制御部によって前記リレーの動作電流の供給が停止されるまでの時間よりも長く設定される、電動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置コントローラ及びこの蓄電装置コントローラを備えた電動システム並びにこの電動システムが搭載された建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
技術分野に関する背景技術として、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載された技術がある。特許文献1には、電動車両のモータ/ジェネレータおよび高電圧回路における車両停止要求時のリレーの遮断に関する技術が記載されている。また、特許文献2には、ハイブリッド系故障によるシステムメインリレー遮断要求時のリレーの遮断に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−193558号公報(特許第5233725号公報)
【特許文献2】特開2006−217743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、先進国を中心に環境破壊防止の対策として、燃料の燃焼に伴って排出されるガスの排出規制強化や、内燃機関を動力源として搭載するシステムの低燃費化が進められている。この方策の一つとして、システムに搭載された動力源を電動化する取り組みがなされている。動力源の電動化は、電力を蓄える蓄電装置を電源とし、被駆動体に機械的に接続された電動モータを、蓄電装置から供給された電力によって駆動することにより実現できる。蓄電装置は、電気的に直列、或いは、並列、若しくは、直並列に接続された複数の蓄電器を備えている。蓄電器には、リチウムイオン電池、鉛電池、ニッケル水素電池などの二次電池を用いる場合が多い。最近では、二次電池の中でも、エネルギーの出力及び容量における体積密度が高いリチウムイオン電池の採用が主流となっている。
【0005】
長期に渡って蓄電装置を安全に使用し続けるためには、蓄電器がその使用範囲を超えて使用されないように、蓄電器の電圧、充放電電流、温度、充電状態、劣化状態などを監視し、蓄電器が過充電、過放電、過温度などの異常状態に至らないように、蓄電器の充放電を制御する必要がある。このため、蓄電装置には、前述の監視、制御を司るコントローラが設けられている。また、蓄電器が過充電、過放電、過温度などの異常状態になった場合には、蓄電装置と電動モータとの間の電気回路を遮断し、蓄電装置を電動モータ側から電気的に切り離す必要がある。このため、蓄電装置と電動モータとの間の電気回路には、例えば特許文献1に示すようにリレーが設けられている。リレーは、例えば特許文献2に示すように、動作電流(励磁コイルに流れる励磁電流)を制御することにより、接点を投入したり、切り離したりすることができる。
【0006】
しかしながら、背景技術では、リレーの動作電流を1つの制御系で制御している。このため、リレーの動作電流を制御する制御系が故障または誤動作した場合には、リレーが正常に作動せず、蓄電装置を電動モータ側から電気的に切り離せなくなり、蓄電器が過充電、過放電、過温度などの異常状態に至ることが考えられる。
【0007】
以上のことから、本発明が解決すべき課題の一つは、リレーによる回路遮断の確実性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の一つは、リレーの動作電流の供給及び停止を制御するリレー制御部を、少なくとも2つのコントローラのそれぞれに設け、それぞれのコントローラのリレー制御部によってリレーの動作電流の供給停止ができるようにすることにより、解決できる。この場合、一方のコントローラのリレー制御部によるリレーの動作電流の供給停止は、他方のコントローラのリレー制御部によるリレーの動作電流の供給停止に関係無くできるようにすることが好ましい。また、一方のコントローラのリレー制御部によるリレーの動作電流の供給停止は、リレーの動作電流の供給停止が必要になったときから、所定時間経過後、例えばリレーの遮断によって蓄電装置と電動モータとの間に流れる電流がゼロの状態になるまでの時間、或いは、他方のコントローラのリレー制御部によってリレーの動作電流の供給が停止されるまでの時間が経過後、行われることが好ましい。
【0009】
ここに、本発明の一つは、電動モータと、前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧装置と、前記電動モータに電力を供給する蓄電装置と、前記蓄電装置と前記電動モータとの間に設けられ電力の変換を行うインバータと、前記油圧ポンプ、前記油圧装置を制御するメインコントローラと、前記蓄電装置を制御する蓄電装置コントローラと、前記電動モータ、前記インバータ、前記蓄電装置コントローラを制御する機器コントローラと、前記インバータと前記蓄電装置とが接続された電気回路を接続・遮断するリレーとを備えてなる建設機械において、前記機器コントローラと前記蓄電装置コントローラは、それぞれ、前記リレーの励磁電流の供給と停止とを制御する励磁電流制御部を有する構成とし、前記蓄電装置コントローラは、前記蓄電装置の状態が前記リレーの励磁電流の停止を要する異常状態と判断した場合、前記機器コントローラに異常信号を送信し、かつ、所定時間経過したときに、前記リレーの状態に拘わらず、前記蓄電装置コントローラの前記励磁電流制御部により前記リレーの励磁電流を停止することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一つは、被駆動体を駆動する電動モータと、前記電動モータに電力を供給する蓄電装置と、前記電動モータと前記蓄電装置との間に設けられ、前記蓄電装置から供給された電力を変換して前記電動モータに供給するインバータと、前記蓄電装置と前記インバータとの間に設けられ、前記蓄電装置と前記インバータとの間を電気的に接続・遮断するリレーと、前記蓄電装置の状態を管理する蓄電装置コントローラと、前記蓄電装置コントローラと通信する上位コントローラとを有する電動システムにおいて、前記蓄電装置コントローラ及び前記上位コントローラは、それぞれ、前記リレーの動作電流の供給及び停止を制御するためのリレー制御部を有し、前記蓄電装置コントローラは、さらに、前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記上位コントローラに対して、前記蓄電装置の異常状態を通知する蓄電装置異常状態通知部を有し、前記蓄電装置コントローラのリレー制御部は、前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記上位コントローラによって前記リレーの動作電流の供給が停止されたか否かに関係無く、前記蓄電装置の異常状態を通知してから所定時間経過した後、前記リレーの動作電流の供給を停止させることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の他の一つは、リレーを介してインバータに電気的に接続され、被駆動体を駆動する電動モータに前記インバータを介して電力を供給する蓄電装置のコントローラであって、前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記リレーの動作電流の供給及び停止を制御するための制御部を備える上位コントローラに対して、前記蓄電装置の異常状態を通知する蓄電装置異常状態通知部と、前記蓄電装置が、前記蓄電装置と前記インバータとの間を前記リレーによって電気的に切り離す異常状態になったとき、前記蓄電装置の異常状態を通知した前記上位コントローラによって前記リレーの動作電流の供給が停止されたか否かに関係無く、前記リレーの動作電流の供給を停止させるリレー制御部とを有し、前記リレー制御部は、前記蓄電装置の異常状態を前記上位コントローラに対して通知してから所定時間経過した後、前記リレーの動作電流の供給を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リレーによる回路遮断の確実性を向上させることができる。
【0013】
即ち、本発明の一つである建設機械を例に挙げて説明すると、機器コントローラと蓄電装置コントローラは、それぞれ励磁電流制御部を有している。即ち、リレーの励磁電流の供給と停止は、機器コントローラの励磁電流制御部で制御することができ、かつ、蓄電装置コントローラの励磁電流制御部でも制御することができる。このため、機器コントローラと蓄電装置コントローラとのうちの一方のコントローラが故障または誤作動しても、他方のコントローラの励磁電流制御部によりリレーの励磁電流を停止することにより、リレーを遮断することができる。これにより、リレーの励磁電流の停止の確実性、即ち、リレーの遮断の確実性を向上することができる。この結果、建設機械の搭載機器および車体の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態によるハイブリッド油圧ショベルを示す正面図である。
図2図1中のハイブリッド油圧ショベルに適用する油圧システムと電動システムを示すブロック図である。
図3図2中の蓄電装置を示すブロック図である。
図4】リレーとBCUとHCを示す回路図である。
図5】HCの制御処理を示す流れ図である。
図6】BCUの制御処理を示す流れ図である。
図7】HCがリレーを遮断する場合の電動機器、HC、BCU、リレー等の時間変化の一例を示す特性線図である。
図8】BCUがリレーを遮断する場合の電動機器、HC、BCU、リレー等の時間変化の一例を示す特性線図である。
図9】第2の実施の形態によるリレーとBCUとHCを示す回路図である。
図10】第3の実施の形態による電動油圧ショベルを示す図2と同様のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による建設機械としてハイブリッド油圧ショベルを例に挙げて、添付図面に従って説明する。
【0016】
なお、以下に説明する実施の形態では、リチウムイオン電池を搭載したハイブリッド油圧ショベルを例に挙げて説明するが、これに限るものではない。例えば、ハイブリッドホイールローダ、ハイブリッドダンプトラック等、蓄電装置に接続された電動モータとエンジンとにより駆動される油圧ポンプの動力を動力源とした各種のハイブリッド建設機械に適用できるものである。また、蓄電装置を動力源とした各種の電動建設機械、さらには、同様の機器構成の各種の産業機械に適用できるものである。
【0017】
図1ないし図8は、第1の実施の形態を示している。ハイブリッド油圧ショベル1(以下、油圧ショベル1という)は、後述のエンジン11と電動モータ15とを備えている。油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回装置3と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置8とにより構成されている。このとき、下部走行体2と上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。
【0018】
上部旋回体4は、上部旋回体4の支持構造体(ベースフレーム)となる旋回フレーム5と、旋回フレーム5上に搭載されたキャブ6、カウンタウエイト7、エンジン11、油圧ポンプ13、電動モータ15、インバータ16、蓄電装置19等とを含んで構成されている。
【0019】
旋回フレーム5の前部左側には、運転室を画成するキャブ6が設けられている。キャブ6内には、オペレータが着席する運転席が設けられている。また、運転席の周囲には、油圧ショベル1を操作するための操作装置、即ち、走行用のレバー・ペダル操作装置、作業用のレバー操作装置(いずれも図示せず)等が設けられている。
【0020】
操作装置は、オペレータによるレバー操作、ペダル操作に応じたパイロット信号(パイロット圧)を、後述のコントロールバルブ14(図2参照)に出力する。これにより、オペレータは、油圧ショベル1の油圧装置(油圧アクチュエータ)、即ち、後述の走行油圧モータ2A、バケットシリンダ8F、アームシリンダ8E、ブームシリンダ8D、旋回油圧モータ3A(図2参照)等を動作(駆動)させることができる。
【0021】
また、キャブ6内には、油圧ショベル1の電源のON・OFF(アクセサリON・OFF)、および、エンジン11の始動・停止を行うためのイグニッションキースイッチ(図示せず)が設けられている。さらに、キャブ6内には、運転席の後方の下側に位置して後述のハイブリッドコントローラ27およびメインコントローラ28(図2参照)が設けられている。一方、旋回フレーム5の後端側には、作業装置8との重量バランスをとるためのカウンタウエイト7が設けられている。
【0022】
図1に示すように、作業装置8は、例えばブーム8A、アーム8B、作業具としてのバケット8Cと、これらを駆動するブームシリンダ8D、アームシリンダ8E、作業具シリンダとしてのバケットシリンダ8Fとによって構成されている。ブーム8A、アーム8B、バケット8Cは、互いにピン結合されている。
【0023】
作業装置8(のブーム8A)は、上部旋回体4の旋回フレーム5に取付けられている。作業装置8は、シリンダ8D,8E,8Fを伸長または縮小することによって、俯仰動する。また、油圧ショベル1は、下部走行体2に設けられた走行油圧モータ2A(図2参照)が回転することによって、走行する。また、上部旋回体4は、旋回軸受(図示せず)と共に旋回装置3を構成する旋回油圧モータ3A(図2参照)が回転することによって、旋回する。
【0024】
ここで、油圧ショベル1は、電動モータ15等を制御する電動システムと、作業装置8等の動作を制御する油圧システムとを搭載している。以下、油圧ショベル1のシステム構成について、図2および図3を参照しつつ説明する。
【0025】
エンジン11は、旋回フレーム5に搭載されている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されている。図2に示すように、エンジン11の出力側には、油圧ポンプ13と電動モータ15とが機械的に直列接続して取付けられている。これら油圧ポンプ13と電動モータ15は、エンジン11によって駆動される。
【0026】
ここで、エンジン11は、電子制御式エンジンにより構成され、エンジン11の作動はエンジンコントロールユニット12(以下、ECU12という)によって制御される。具体的には、エンジン11は、シリンダ(燃焼室)内への燃料の供給量、即ち、シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射装置(電子制御噴射弁)の噴射量が、エンジン11の制御部となるECU12により可変に制御される。この場合、ECU12は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、後述のメインコントローラ28(以下、MC28という)に接続されている。
【0027】
ECU12は、MC28からの制御信号(指令信号)に基づいて、燃料噴射装置によるシリンダ内への燃料噴射量を可変に制御し、エンジン11の回転速度を制御する。即ち、ECU12は、MC28からのエンジン出力指令に基づいて、エンジン11の出力トルク、回転速度(エンジン回転数)等を制御する。なお、エンジン11の最大出力は、例えば油圧ポンプ13の最大動力よりも小さくなっている。
【0028】
油圧ポンプ13は、エンジン11に機械的に接続されている。油圧ポンプ13は、エンジン11単独のトルクによって駆動可能である。また、油圧ポンプ13は、エンジン11のトルクに電動モータ15のアシストトルクを加えた複合トルク(合計トルク)によっても駆動可能である。即ち、油圧ポンプ13は、エンジン11および電動モータ15の機械動力によって駆動される。油圧ポンプ13は、タンク(図示せず)内に貯溜された作動油を加圧し、走行油圧モータ2A、旋回油圧モータ3A、作業装置8のシリンダ8D,8E,8Fに圧油として吐出する。
【0029】
油圧ポンプ13は、コントロールバルブ14を介して油圧装置(油圧アクチュエータ)としての走行油圧モータ2A、旋回油圧モータ3A、作業装置8のシリンダ8D,8E,8Fに接続されている。油圧ポンプ13は、例えば、可変容量型の斜板式、斜軸式またはラジアルピストン式油圧ポンプによって構成されている。この場合、図示は省略するが、油圧ポンプ13は、ポンプ容量を調整するレギュレータ(容量可変部、傾転アクチュエータ)を有している。油圧ポンプ13(のレギュレータ)は、後述のMC28からの指令により可変に制御される。
【0030】
コントロールバルブ14は、複数の方向制御弁、電磁弁等の集合体からなる制御弁装置である。コントロールバルブ14は、油圧ポンプ13から吐出された作動油を油圧モータ2A,3A、シリンダ8D,8E,8F等の油圧装置へ分配する。即ち、コントロールバルブ14は、キャブ6内に配置された走行用のレバー・ペダル操作装置、作業用のレバー操作装置のレバー操作、ペダル操作、MC28からの指令等に応じて、油圧ポンプ13から油圧装置2A,3A,8D,8E,8Fに供給される圧油の方向を制御する。これにより、油圧装置2A,3A,8D,8E,8Fは、油圧ポンプ13から供給(吐出)される圧油(作動油)によって駆動される。
【0031】
電動機(モータ)または発電電動機(モータジェネレータ)とも呼ばれる電動モータ15は、エンジン11と機械的に接続されている。電動モータ15は、例えば同期電動機等によって構成される。電動モータ15は、エンジン11を動力源に発電機として働き蓄電装置19への電力供給を行う発電と、蓄電装置19からの電力を動力源にモータとして働き被駆動体としてのエンジン11および油圧ポンプ13の駆動をアシストする力行との2通りの役割を果たす。従って、エンジン11のトルクには、状況に応じて電動モータ15のアシストトルクが追加され、これらのトルクによって油圧ポンプ13は駆動する。そして、油圧ポンプ13から吐出される圧油によって、車両の走行動作、旋回動作、作業装置8の俯仰動動作等が行われる。
【0032】
図2に示すように、電動モータ15は、インバータ16を介して一対の直流母線18A,18Bと接続されている。即ち、インバータ16は、電動モータ15と蓄電装置19との間に設けられ、これら電動モータ15と蓄電装置19とに電気的に接続されている。インバータ16は、電力の変換(エネルギ変換)を行うもので、例えば、トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を用いて構成されている。
【0033】
インバータ16は、パワーコントロールユニット17(以下、PCU17という)によって、各スイッチング素子のオン/オフが制御される。PCU17は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、後述のハイブリッドコントローラ27(以下、HC27という)に接続されている。直流母線18A,18Bは、正極側と負極側とで対をなし、例えば数百V程度の直流電圧が印加されている。
【0034】
電動モータ15の発電時には、インバータ16は、電動モータ15からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置19に供給する。電動モータ15の力行時には、インバータ16は、直流母線18A,18Bの直流電力を交流電力に変換して電動モータ15に供給する。そして、PCU17は、HC27からの発電電動機出力指令等に基づいて、インバータ16の各スイッチング素子のオン/オフを制御する。これにより、PCU17は、電動モータ15の発電時の発電電力や力行時の駆動電力を制御する。
【0035】
蓄電装置19は、インバータ16を介して電動モータ15に電気的に接続されている。この場合、蓄電装置19は、直流母線18A,18Bを介してインバータ16の直流側正極と直流側負極とに接続されている。蓄電装置19は、電動モータ15の力行時(アシスト駆動時)には電動モータ15に向けて駆動電力を供給し、電動モータ15の発電時には電動モータ15から供給される電力を充電する。即ち、蓄電装置19は、電動モータ15に電力を供給し、または、電動モータ15による発電電力を充電する。換言すれば、蓄電装置19は、電動モータ15を駆動するエネルギーの供給と、電動モータ15で発電されたエネルギーの回生を行うものである。
【0036】
図3に示すように、蓄電装置19は、例えば、蓄電器(蓄電池を含む)に相当するリチウムイオン二次電池20と、電流センサ21と、バッテリコントロールユニット22(以下、BCU22という)と、リレー23,24,25と、抵抗26とを備えている。蓄電装置19は、BCU22によって制御される。より具体的には、蓄電装置19のリチウムイオン二次電池20は、BCU22からの情報に基づいて、HC27によって充電動作や放電動作が制御される。
【0037】
ここで、リチウムイオン二次電池20は、複数の電池セルを電気的に直列或いは並列もしくは直列および並列に接続してなる組電池により構成されている。電流センサ21は、例えばリチウムイオン二次電池20の正極側の端子に接続され、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)の充電電流または放電電流を検出(計測)する。電流センサ21の出力側は、BCU22に接続されている。電流センサ21は、検出した電流に応じた信号をBCU22に出力する。
【0038】
BCU22には、電流センサ21で検出した電流値が入力されることに加えて、リチウムイオン二次電池20の電圧と温度が入力される。このために、例えば、リチウムイオン二次電池20には、リチウムイオン二次電池20の電圧を検出(計測)する電圧センサ(図示せず)と、リチウムイオン二次電池20の温度を検出(計測)する温度センサ(図示せず)が設けられている。電圧センサの出力側および温度センサの出力側は、BCU22に接続されている。電圧センサは、検出した電圧に応じた信号をBCU22に出力し、温度センサは、検出した温度に応じた信号をBCU22に出力する。
【0039】
蓄電装置コントローラとしてのBCU22は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、後述のHC27に接続されている。BCU22は、蓄電装置19を制御する。即ち、BCU22は、リチウムイオン二次電池20の電圧、温度、および、電流センサ21で測定した電流値に基づいて所定の演算処理を行うことにより、リチウムイオン二次電池20の状態判定、演算、制御を行う。
【0040】
例えば、BCU22は、電流、電圧、温度に基づいて、蓄電装置19から放電可能な電力をバッテリ放電電力として算出する。同様に、BCU22は、蓄電装置19に充電可能な電力をバッテリ充電電力として算出する。BCU22は、バッテリ蓄電率(SOC)、バッテリ放電電力、バッテリ充電電力等をHC27に向けて出力する。
【0041】
これに加えて、BCU22は、電圧、電流、温度、蓄電率(SOC:State Of Charge)、劣化度(SOH:State Of Health)等に基づいて、蓄電装置19の状態を監視し、推定する。BCU22は、これらの複数の要素のいずれかの指標が適正な使用範囲を逸脱した場合または逸脱しそうな場合には、HC27に信号を送信し、異常・警告を発報する。
【0042】
リレー23,24,25および抵抗26は、コンタクタを構成している。リレー23,24,25は、インバータ16と蓄電装置19とが接続された電気回路(電動機器回路)を接続・遮断するものである。即ち、リレー23,24,25は、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20の端子)とインバータ16(の直流側の端子)との間を接続または遮断するものである。このために、リレー23,24,25は、インバータ16と蓄電装置19との間に設けられている。より具体的には、リレー23,24,25は、リチウムイオン二次電池20の端子とインバータ16の直流側の端子との間に設けられている。
【0043】
この場合、リレー23,24は、リチウムイオン二次電池20のプラス側の端子とインバータの直流側正極との間に並列接続で設けられている。そして、リチウムイオン二次電池20のプラス側の端子とリレー23との間には、リレー動作時の突入電流を防止する抵抗26がリレー23と直列に設けられている。これにより、リレー23は、抵抗26と共に突入電流防止回路を構成している。リレー23およびリレー24は、リチウムイオン二次電池20の正極とインバータ16の直流側正極との間の接続・遮断を実施する。一方、リレー25は、リチウムイオン二次電池20のマイナス側の端子とインバータ16の直流側負極との間に設けられている。リレー25は、リチウムイオン二次電池20の負極とインバータの直流側負極との間の接続・遮断を実施する。
【0044】
例えば、図示しないイグニッションキースイッチがOFFのときは、リレー23,24,25はOFF(開)となっており、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)とインバータ16とは遮断されている。一方、オペレータによりイグニッションキースイッチがONされると、例えば、HC27からの指令によりリレー23,24,25がON(閉)となり、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)とインバータ16とが接続される。このとき、リレー23,24,25は、先ず、リレー23,25がONになってから、リレー24がONになり、リレー23がOFFとなる。
【0045】
機器コントローラとしてのHC27は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。HC27は、例えば、CAN(Controller Area Network)等を用いてECU12、PCU17、BCU22、MC28に電気的に接続されている。HC27は、BCU22の上位のコントローラ(上位コントローラ)となるものである。一方、MC28には、例えば、オペレータが操作する走行用のレバー・ペダル操作装置、作業用のレバー操作装置の操作量を検出する操作量センサ(図示せず)が接続されている。MC28も、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。
【0046】
MC28は、ECU12、HC27と通信し、例えば、操作量、エンジン11の回転数、蓄電装置19の蓄電率(SOC)等に基づいて、各種の制御信号をECU12、PCU17、HC27に送信する。これにより、ECU12は、MC28からの制御信号に基づいて、エンジン11の回転数等を制御する。また、HC27は、ハイブリッド機器である電動モータ15、インバータ16、蓄電装置19の状態と、MC28からの操作量の情報とに基づいて、ハイブリッド機器15,16,19を制御する。また、MC28は、操作量の情報に基づいて、油圧ポンプ13(の容量)、コントロールバルブ14(に対するパイロット圧)を制御する。
【0047】
即ち、MC28は、エンジン11と油圧ポンプ13を制御する。これに加えて、MC28は、コントロールバルブ14を制御することにより、油圧装置としての走行油圧モータ2A、旋回油圧モータ3A、作業装置8のシリンダ8D,8E,8Fを制御する。HC27は、蓄電装置19とインバータ16を制御し、MC28と協調制御を行う。即ち、HC27は、MC28と協調制御を行いつつ、電動モータ15、インバータ16、BCU22を制御する。
【0048】
ところで、前述の従来技術によれば、電気回路を遮断するリレーを1つのコントローラで制御している。このため、例えば、リレーの制御を担当するコントローラが故障または誤動作した場合に、リレーの励磁電流を停止できなくなり、リレーを遮断できなくなる可能性がある。このことは、例えば、電圧、電流、温度を緻密に制御する必要のあるリチウムイオン二次電池において、過充電、過放電、過温度等の異常状態が進行するおそれがあり、好ましくない。
【0049】
これに対して、第1の実施の形態では、機器コントローラとしてのHC27でリレー25の励磁電流の供給と停止とを制御できることに加えて、蓄電装置コントローラとしてのBCU22でもリレー25の励磁電流の供給と停止とを制御できる構成としている。そこで、第1の実施の形態のリレー25の制御について、図1ないし図3に加え、図4ないし図8も参照しつつ説明する。
【0050】
図4は、リレー制御回路を示している。なお、第1の実施の形態では、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)の負極側のリレー25の励磁電流の供給と停止とを制御するリレー制御回路を例に挙げて説明する。しかし、これに限らず、例えば、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)の正極側のリレー24(および必要に応じてリレー23)の励磁電流の供給と停止とを制御するリレー制御回路として構成してもよい。また、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)の負極側と正極側との両方のリレー25,24(および必要に応じてリレー23)の励磁電流の供給と停止とを制御するリレー制御回路として構成してもよい。
【0051】
図4において、電源29は、リレー励磁電流の供給元となる電源であり、例えば、油圧ショベル1に搭載された12V、24V等の補機駆動用の車載バッテリを用いることができる。電源29は、リレー25の励磁回路25Aに接続されている。リレー25は、インバータ16の直流側負極とリチウムイオン二次電池20の負極に接続されている。リレー25は、電源29からのリレー励磁電流により接続・遮断される。
【0052】
即ち、リレー25は、電源29から励磁回路25A(励磁コイル)に対してリレー励磁電流が供給されている(励磁回路25Aが通電の)ときは、リレー25が閉(ON)となり、リチウムイオン二次電池20のマイナス側とインバータ16の直流側負極とが接続される。これに対して、リレー25は、励磁回路25Aに対する電源29からのリレー励磁電流の供給が停止している(励磁回路25Aが非通電の)ときは、リレー25が開(OFF)となり、リチウムイオン二次電池20のマイナス側とインバータ16の直流側負極とが遮断される。
【0053】
このようなリレー25の励磁電流の供給と停止とを制御する励磁電流制御部は、HC27とBCU22との両方にそれぞれ設けられている。即ち、第1の実施の形態では、HC27とBCU22は、それぞれ、リレー25の励磁電流の供給と停止とを制御する励磁電流制御部を有している。励磁電流制御部は、リレー25の励磁電流の供給と停止とを切換えるスイッチ、より具体的には、電界効果トランジスタスイッチであるFETスイッチ30,31により構成されている。そして、BCU22には、励磁電流制御部としての第1のFETスイッチ30が設けられており、HC27には、励磁電流制御部としての第2のFETスイッチ31が設けられている。
【0054】
BCU22に設置(搭載)された第1のFETスイッチ30と、HC27に設置(搭載)された第2のFETスイッチ31は、直列に接続されている。即ち、第1のFETスイッチ30は、BCU22内にあって、そのドレイン端子がリレー25の励磁回路25Aに接続されている。第2のFETスイッチ31は、HC27内にあって、そのドレイン端子がBCU22内のFETスイッチ31に接続され、そのソース端子がグランドであるGND32(車体等)に接続されている。また、第1のFETスイッチ30と第2のFETスイッチ31との間に位置してHC27内には、電流の逆流を防止する逆流防止装置となる一対のダイオード33が並列接続で設けられている。
【0055】
第1のFETスイッチ30は、BCU22によって開閉が切換えられる。第2のFETスイッチ31は、HC27によって開閉が切換えられる。第1のFETスイッチ30と第2のFETスイッチ31との両方がON(閉)のときは、電源29を通じて励磁回路25Aにリレー励磁電流が供給され、リレー25がON(閉)となる。一方、第1のFETスイッチ30と第2のFETスイッチ31とのうちの少なくとも一方がOFF(開)のときは、励磁回路25Aへのリレー励磁電流が停止され、リレー25がOFF(開)となる。
【0056】
なお、第1のFETスイッチ30および第2のFETスイッチ31は、それぞれコントローラ(BCU22、HC27)内に設けられているが、コントローラの外部にあってもよい。また、FETスイッチとその制御を行うコントローラは、2台以上でもよい。例えば、BCU22とHC27に加えて、これらとは別のコントローラ、例えば、MC28に第3のFETスイッチを(第1のFETスイッチ30および第2のFETスイッチ31と直列接続で)設ける構成としてもよい。また、インバータ16のコントローラであるPCU17に第3のFETスイッチを設ける構成としてもよい。さらに、例えば、リレー遮断等の異常時の制御に特化したコントローラ(図示せず)に第3のFETスイッチを設ける構成としてもよい。
【0057】
また、第1の実施の形態では、第1のFETスイッチ30と第2のFETスイッチ31との両方を、リレー25の励磁回路25AとGND32との間に配置したが、例えば、電源29とリレー25の励磁回路25Aとの間に配置してもよい。また、第1のFETスイッチ30と第2のFETスイッチ31とのうちのいずれか一方を、電源29とリレー25の励磁回路25Aとの間に配置し、他方を、リレー25の励磁回路25AとGND32との間に配置してもよい。さらに、第1の実施の形態では、スイッチとして電界効果トランジスタを用いたが、例えば、バイポーラ型トランジスタ等の他のスイッチングデバイスを用いてもよい。
【0058】
いずれにしても、第1の実施の形態では、2つのFETスイッチ30,31がBCU22とHC27とのそれぞれに設けられており、これら2つのFETスイッチ30,31は、直列に接続されている。そして、BCU22は、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)の状態がリレー25の励磁電流の停止を要する異常状態と判断した場合、HC27に異常信号を送信する(蓄電装置異常状態通知部)。これに加えて、BCU22は、所定時間経過したときに、リレー25の状態に拘わらず、BCU22の第1のFETスイッチ30をOFF(開)にする(リレー制御部)。即ち、HC27の第2のFETスイッチ31がOFF(開)であるかON(閉)であるかに拘わらず、BCU22の第1のFETスイッチ30をOFF(開)にすることにより、リレー25の励磁電流を停止する。
【0059】
この場合、所定時間は、HC27がインバータ16の電流、延いては、電動モータ15の電流を0にするために要する時間として設定することができる。即ち、所定時間は、HC27がインバータ16の出力をOFFにするために要する時間(IGBTのゲートをOFFにし、インバータ出力をOFFにするために要する時間)よりも少し長い時間、例えば、数百ミリ秒ないし1秒程度の時間として設定することができる。
【0060】
一方、HC27は、BCU22からの異常信号に基づいて、停止処理を実行してから、HC27の第2のFETスイッチ31をOFF(開)にすることにより、リレー25の励磁電流を停止し、かつ、リレー25の状態(リレー25が開である旨)の信号を別のコントローラ(例えば、MC28、BCU22等)に送信する。この場合、HC27の停止処理は、電気機器回路(電動機器回路)の電流を0にする処理である。例えば、HC27の停止処理は、PCU17に停止指令を出力し、インバータ16の出力をOFFにし、電動モータ15の電流を0にする処理である。なお、このようなHC27とBCU22による制御、即ち、図5に示すHC27の制御処理、および、図6に示すBCU22の制御処理に関しては、後で詳しく述べる。
【0061】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0062】
キャブ6に搭乗したオペレータがエンジン11を起動させると、エンジン11によって油圧ポンプ13と電動モータ15が駆動される。これにより、油圧ポンプ13から吐出した圧油は、キャブ6内に設けられた走行用のレバー・ペダル操作装置、作業用のレバー操作装置のレバー操作、ペダル操作に応じて、走行油圧モータ2A、旋回油圧モータ3A、作業装置8のブームシリンダ8D、アームシリンダ8E、バケットシリンダ8Fに向けて吐出する。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作、上部旋回体4の旋回動作、作業装置8による掘削作業等を行うことができる。
【0063】
ここで、油圧ショベル1の作動時にエンジン11の出力トルクが油圧ポンプ13の駆動トルクよりも大きいときには、余剰トルクによって電動モータ15が発電機として駆動される。これにより、電動モータ15は交流電力を発生し、この交流電力は、インバータ16により直流電力に変換され、蓄電装置19に蓄えられる。一方、エンジン11の出力トルクが油圧ポンプ13の駆動トルクよりも小さいときには、電動モータ15は、蓄電装置19からの電力によって電動機として駆動され、エンジン11の駆動を補助(アシスト)する。このとき、BCU22の第1のFETスイッチ30とHC27の第2のFETスイッチ31は、両方ともON(閉)となっており、リレー25の励磁回路25Aには励磁電流が供給されている状態、即ち、リレー25が接続状態となっている。
【0064】
次に、HC27とBCU22によるリレー25の制御処理について、図5および図6を参照しつつ説明する。ここで、図5は、HC27の制御処理を示している。図6は、BCU22の制御処理を示している。なお、図5および図6に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0065】
まず、図5に示すHC27の制御処理を説明する。イグニッションキースイッチがON状態となり、油圧ショベル1の起動処理が行われることにより、図5の制御処理が開始されると、HC27は、S1で通常制御処理を行う。通常制御処理では、HC27は、通常の電動機器の制御を行う。即ち、HC27は、電動機器としてのインバータ16および蓄電装置19が正常であるときの制御(所期の制御)を行う。これと共に、HC27は、S2ないしS4の処理も行う。S2ないしS4の処理は、各種機器の動作が正常か異常かの観測および判定の処理である。
【0066】
即ち、HC27は、インバータ16、蓄電装置19を含む電動系の機器(電動機器)を全て監視する。そして、S2では、主としてソフト的な異常を検知する。即ち、S2では、HC27の監視項目が正常であるか否かを判定する。例えば、HC27の計算値が許容範囲(制御範囲)内であるか否かを判定する。言い換えれば、HC27自身の制御が正常範囲内であるか否かを判定する。
【0067】
S3では、電動機器の状態、即ち、蓄電装置19、インバータ16の状態が正常であるか否かを判定する。即ち、S3では、HC27は、BCU22とインバータ16からの報告が正常であるか否かを判定する。例えば、HC27は、蓄電装置19のBCU22から得られる蓄電装置19の物理的な数値(検出値)、インバータ16のPCU17から得られるインバータ16の物理的な数値(検出値)が、それぞれ許容範囲(正常範囲、制御範囲)内であるか否かを判定する。S4では、通信接続状態が正常であるか否かを判定する。即ち、HC27は、BCU22、PCU17およびMC28との通信接続状態が正常であるか否かを判定する。
【0068】
そして、S2ないしS4の判定で「YES」、即ち、正常か否かの判定で正常と判定された場合は、S5に進む。S5では、イグニッションキースイッチがOFF状態であるか否かを判定する。そして、S5で「NO」、即ち、イグニッションキースイッチがON状態であると判定された場合は、S1に戻り、S1以降の処理を繰り返す。一方、S5で「YES」、即ち、正常状態(異常判定がない状態)でのイグニッションキースイッチがOFF状態であると判定された場合は、S6に進む。
【0069】
S6では、電動機器制御停止処理を行う。即ち、HC27は、電動機器回路に流れる電流を0にする。例えば、HC27は、PCU17に対してインバータ16の出力をOFFにする指令を出力し、電動モータ15の電流を0にする。S6で、電動機器回路に流れる電流を0にしたら、S7で、リレー遮断を行う。即ち、S7では、HC27は、HC27の第2のFETスイッチ31をOFF(開)にすることにより、リレー25を遮断する。これにより、S8で電動機器が停止し、次いで、HC27は停止状態となる。
【0070】
これに対して、S2ないしS4で「NO」、即ち、正常か否かの判定で正常でない(異常)と判定された場合は、S11に進む。S11では、異常発報する。例えば、HC27は、BCU22、PCU17、MC28に対して異常がある旨の信号(異常信号)を送信する。続くS12では、電動機制御停止処理を行う。即ち、HC27は、S6の処理と同様に、電動機器回路に流れる電流を0にする。例えば、HC27は、PCU17に対してインバータ16の出力をOFFにする指令を出力し、電動モータ15の電流を0にする。
【0071】
S12で、電動機器回路に流れる電流を0にしたら、S13で、リレー遮断を行う。即ち、S13では、HC27は、S7の処理と同様に、HC27の第2のFETスイッチ31をOFF(開)にすることにより、リレー25を遮断する。S13でリレー25を遮断したら、続くS14で、リレー状態を送信する。即ち、S14では、HC27は、例えば、BCU22に対してリレー25を遮断した旨を送信する。
【0072】
S13でリレー25が遮断することにより、S14に続くS15で電動機器が停止する。この状態では、電動機器は停止しているが、油圧機器制御は継続している油圧モードとなる。この油圧モードでは、油圧動力による車体動作は可能である。即ち、エンジン11のみよって油圧ポンプ13が動いており、この油圧ポンプ13から供給される圧油によって油圧ショベル1は動作可能である。
【0073】
S15に続くS16では、イグニッションキースイッチがOFF状態であるか否かを判定する。S16で「NO」、即ち、イグニッションキースイッチがON状態であると判定された場合は、S15の前に戻り、S15以降の処理を繰り返す。一方、S16で「YES」、即ち、イグニッションキースイッチがOFF状態であると判定された場合は、HC27は停止する。
【0074】
次に、図6に示すBCU22の制御処理を説明する。イグニッションキースイッチがON状態となり、油圧ショベル1の起動処理が行われることにより、図6の制御処理が開始されると、BCU22は、S21で通常制御処理を行う。通常制御処理では、BCU22は、通常の蓄電装置19の制御を行う。即ち、BCU22は、蓄電装置19が正常であるときの制御(所期の制御)を行う。これと共に、BCU22は、S22ないしS24の処理も行う。S22ないしS24の処理は、蓄電装置19が正常か異常かの観測および判定の処理である。
【0075】
即ち、BCU22は、蓄電装置19に係る情報を監視する。この場合、S22では、BCU22の監視項目が正常であるか否かを判定する。例えば、リチウムイオン二次電池20の電圧、電流、温度、蓄電率(SOC)、劣化度(SOH)が許容範囲(正常範囲)内であるか否かを判定する。S23では、HC27からの報告が正常であるか否かを判定する。即ち、BCU22とHC27は、相互に異常を通知する。S23では、BCU22は、HC27から正常信号を受信しているか否か(換言すれば、異常信号を受信しているか否か)を判定する。S24では、通信接続状態が正常であるか否かを判定する。即ち、BCU22は、HC27との通信接続状態が正常であるか否かを判定する。
【0076】
そして、S22ないしS24の判定で「YES」、即ち、正常か否かの判定で正常と判定された場合は、S25に進む。S25では、イグニッションキースイッチがOFF状態であるか否かを判定する。そして、S25で「NO」、即ち、イグニッションキースイッチがON状態であると判定された場合は、S21に戻り、S21以降の処理を繰り返す。一方、S25で「YES」、即ち、正常状態(異常判定がない状態)でのイグニッションキースイッチがOFF状態であると判定された場合は、S26に進む。
【0077】
S26では、BCU22の終了処理を行う。例えば、S26では、BCU22は、リチウムイオン二次電池20のデータの格納(記憶)等の終了処理を行う。S26で、BCU22の終了処理を行ったら、S27で、リレー遮断を行う。即ち、S27では、BCU22は、BCU22の第1のFETスイッチ30をOFF(開)にすることにより、リレー25を遮断する。S27でリレー25を遮断したら、BCU22は停止状態となる。
【0078】
これに対して、S22ないしS24で「NO」、即ち、正常か否かの判定で正常でない(異常)と判定された場合は、S31に進む。S31では、異常発報する。例えば、BCU22は、HC27に対して異常がある旨の信号(異常信号)を送信する。続くS32では、タイマ処理を行う。即ち、S32では、BCU22は、正常でない(異常)と判定されてから所定時間が経過したか否かを判定する。この場合、所定時間は、HC27が電動モータ15の電流を0にするために要する時間として設定することができる。
【0079】
S32で所定時間を待ったら(即ち、所定時間が経過したら)、S33に進み、リレー遮断を行う。即ち、S33では、BCU22は、BCU22の第1のFETスイッチ30をOFF(開)にすることにより、リレー25を遮断する。
【0080】
S33に続くS34では、イグニッションキースイッチがOFF状態であるか否かを判定する。S34で「NO」、即ち、イグニッションキースイッチがON状態であると判定された場合は、S34の前に戻り、S34以降の処理を繰り返す。一方、S34で「YES」、即ち、イグニッションキースイッチがOFF状態であると判定された場合は、S35に進み、BCU22の終了処理を行う。例えば、S36では、BCU22は、リチウムイオン二次電池20のデータの格納(記憶)等の終了処理を行う。S36で、BCU22の終了処理を行ったら、BCU22は停止状態となる。
【0081】
図7は、HC27がリレー25を遮断する場合の、通常の異常処理を時系列で示している。例えば、電動機器状態において、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)の温度が上昇し、蓄電装置19が過温異常状態(蓄電池過温異常状態)になると、BCU22は、異常状態に遷移し、通信情報として異常を発報する。このとき、同時にタイマ処理を開始する。即ち、BCU22は、図6のS22で「NO」と判定されると、S31で異常を発報し、S32でタイマ処理を開始する。
【0082】
一方、HC27は、BCU22の通信情報(異常発報)により、異常状態に遷移し、電動機器制御の停止処理を行い、電動機器回路の電流を0とした後に、HC27に搭載された第2のFETスイッチ31をOFFにして、リレー25を遮断する。即ち、HC27は、図5のS3で「NO」と判定されると、S12で停止処理を行うことにより電動機器回路の電流を0とした後に、S13の処理により、HC27に搭載された第2のFETスイッチ31をOFFにして、リレー25を遮断する。
【0083】
BCU22は、HC27によってリレー25が遮断された後に、タイマ処理が完了することにより、BCU22に搭載された第1のFETスイッチ30をOFFにする。即ち、BCU22は、図6のS32のタイマ処理が完了(終了)すると、S33で第1のFETスイッチ30をOFFにする。この場合、リレー25は、HC27に搭載された第2のFETスイッチ31により既に遮断されているため、リレー25の状態に変化はない。
【0084】
このように、通常の異常処理では、BCU22の異常状態からリレー遮断の間にタイマ処理(図6のS32)が行われるため、その間(タイマ処理中)に、HC27にて電動機器制御を停止することにより電気機器回路の電流を0にしてからリレー25を遮断することができる。このため、リレー25を遮断するときに、逆起電力やアーク放電によるリレー損傷を抑制することができる。
【0085】
一方、図8は、BCU22がリレー25を遮断する場合の、緊急時の異常処理を時系列で示している。例えば、電動機器状態において、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)の温度が上昇し、蓄電装置19が過温異常状態(蓄電池過温異常状態)になると、BCU22は、異常状態に遷移し、通信情報として異常を発報する。このとき、同時にタイマ処理を開始する。即ち、BCU22は、図6のS22で「NO」と判定されると、S31で異常を発報し、S32でタイマ処理を開始する。
【0086】
このとき、例えば、故障や誤作動等の原因により、HC27がHC27に搭載された第2のFETスイッチ31をOFFにできない場合、タイマ処理が完了したBCU22がBCU22に搭載された第1のFETスイッチ30をOFFにして、リレー25を遮断する。このように、HC27により通常のリレー遮断ができない緊急時には、BCU22が電動機器回路の電流の有無に拘わらず、リレー遮断を行って、電動機器の動作を停止する。これにより、蓄電装置19のリチウムイオン二次電池20が過充電、過放電、過温度等の異常状態が進行することを抑制することができる。この結果、安全性を向上することができる。
【0087】
このように、第1の実施の形態では、機器コントローラとしてのHC27と蓄電装置コントローラとしてのBCU22は、それぞれ励磁電流制御部としてのスイッチである第1のFETスイッチ30と第2のFETスイッチ31とを有している。即ち、リレー25の励磁電流の供給と停止は、HC27の第2のFETスイッチ31で制御することができ、かつ、BCU22の第1のFETスイッチ30でも制御することができる。このため、HC27とBCU22とのうちの一方のコントローラが故障または誤作動しても、他方のコントローラのスイッチ(第1のFETスイッチ30または第2のFETスイッチ31)によりリレー25の励磁電流を停止することにより、リレー25を遮断することができる。これにより、リレー25の励磁電流の停止の確実性、即ち、リレー25の遮断の確実性を向上することができる。この結果、建設機械としての油圧ショベル1の搭載機器(例えば、蓄電装置19、電動モータ15、インバータ16)、および、車体の安全性を向上することができる。
【0088】
第1の実施の形態では、BCU22は、異常状態と判断した場合、所定時間経過したときに、リレー25の状態に拘わらず、BCU22の第1のFETスイッチ30によりリレー25の励磁電流を停止する。このため、HC27の故障または誤作動に拘わらず、BCU22が異常状態と判断してから所定時間経過したときに、BCU22の第1のFETスイッチ30によりリレー25の励磁電流を停止することができる。即ち、HC27の故障または誤作動によりHC27が第2のFETスイッチ31によりリレー25の励磁電流を停止できなくても、所定時間経過したときに、BCU22の第1のFETスイッチ30によりリレー25の励磁電流を停止することができる。これにより、リレー25の励磁電流の停止の確実性をより向上することができる。また、第2のFETスイッチ31が故障または誤動作した場合においても、BCU22の第1のFETスイッチ30によりリレー25の励磁電流を停止することができる。
【0089】
尚、第1の実施の形態では、第1のFETスイッチ30及び第2のFETスイッチ31としてNチャネルの電界効果トランジスタを用いている。この場合、図示省略したが、図4の回路には下記(1)〜(4)の構成を設けることが好ましい。
【0090】
(1)第1のFETスイッチ30のドレイン端子と励磁回路25Aとの間に、励磁回路25Aから第1のFETスイッチ30のドレイン端子に向かう方向が順方向となるように、逆流防止用ダイオードを電気的に直列に接続することが好ましい。逆流防止ダイオードは励磁電流の逆流を防止するためのものである。
【0091】
(2)励磁回路25Aの逆接防止用ダイオード側と励磁回路25Aの電源29側との間に、励磁回路25Aの逆接防止用ダイオード側から励磁回路25Aの電源29側に向かう方向が順方向となるように、還流用ダイオードを電気的に直列に接続し、還流経路を構成することが好ましい。還流経路は、第1のFETスイッチ30がオフしたとき、励磁回路25Aに流れている励磁電流を還流させるためのものである。
【0092】
(3)第1のFETスイッチ30のソース端子とGND32との間に、グランドオフセット時の保護用ダイオードを、GND32側から第1のFETスイッチ30のソース端子側に向かう方向が順方向となるように、電気的に直列に接続することが好ましい。
【0093】
(4)第1のFETスイッチ30のゲート端子とソース端子との間に、意図しないゲート−ソース間電圧の印加を避けるためのプルダウン抵抗を電気的に直列に接続することが好ましい。
【0094】
第1の実施の形態では、HC27は、BCU22からの異常信号に基づいて停止処理を実行してから、HC27の第2のFETスイッチ31によりリレー25の励磁電流を停止する。即ち、HC27は、停止処理を実行してから、リレー25の励磁電流を停止する。このため、HC27の停止処理により、電気機器回路の電流を0にした後に、リレー25の励磁電流を停止して、リレー25を遮断することができる。これにより、リレー遮断時の逆起電力やアーク放電によるリレー損傷を抑制することができる。さらに、HC27は、リレー状態の信号を送信する。このため、HC27の第2のFETスイッチ31によりリレー25が遮断されたことを、他のコントローラ(例えば、BCU22)に通知することができる。
【0095】
第1の実施の形態では、HC27とBCU22との両方で接続と遮断を制御されるリレー25を、蓄電装置19(のリチウムイオン二次電池20)とインバータ16との間に設ける構成としている。即ち、リレー25を、電源となる蓄電装置19(のリチウムイオン二次電池20)とインバータ16とを含む電気回路に設けられており、リレー25は、蓄電装置19とインバータ16との間を遮断する。このため、リレー25は、インバータ16と蓄電装置19との間を遮断することにより、インバータ16に対する電力供給を停止することができる。
【0096】
第1の実施の形態では、油圧ショベル1は、電動モータ15と機械的に接続されたエンジン11を備えたハイブリッド式建設機械としている。即ち、油圧ポンプ13は、エンジン11および電動モータ15によって駆動される。蓄電装置19は、電動モータ15に電力を供給し、または、電動モータ15による発電電力を充電する。MC28は、エンジン11、油圧ポンプ13、コントロールバルブ14(を介して油圧装置としての走行油圧モータ2A、旋回油圧モータ3A、作業装置8のシリンダ8D,8E,8F)を制御する。このため、ハイブリッド油圧ショベル1の搭載機器および車体の安全性を向上することができる。
【0097】
次に、図9は、第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、機器コントローラの励磁電流制御部と蓄電装置コントローラの励磁電流制御部とがアンド回路(論理積回路)を介してスイッチを切換える構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0098】
リレー25の励磁回路25AとGND32との間には、1個のFETスイッチ41が設けられている。FETスイッチ41は、そのドレイン端子がリレー25の励磁回路25Aに接続され、そのソース端子がGND32に接続されている。FETスイッチ41は、リレー25の励磁電流の供給と停止とを切換えるスイッチである。
【0099】
FETスイッチ41には、HC42とBCU43がアンド回路44を介して接続されている。HC42は、第1の実施の形態のHC27と同様に、電動モータ15、インバータ16、BCU43を制御するものである。また、BCU43も、第1の実施の形態のBCU22と同様に、蓄電装置19を制御するものである。
【0100】
ここで、HC42の励磁電流制御部は、リレー25をON(閉)にするとき、即ち、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)とインバータ16とを接続するときに、アンド回路44に1(High)を出力する。これに対して、例えば、図5のS7またはS13の処理により、リレー25をOFF(開)にするとき、即ち、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)とインバータ16とを遮断するときに、HC42の励磁電流制御部は、アンド回路44に0(Low)を出力する。
【0101】
また、BCU43の励磁電流制御部は、リレー25をON(閉)にするとき、即ち、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)とインバータ16とを接続するときに、アンド回路44に1(High)を出力する。これに対して、例えば、図6のS27またはS33の処理により、リレー25をOFF(開)にするとき、即ち、蓄電装置19(リチウムイオン二次電池20)とインバータ16とを遮断するときに、アンド回路44に0(Low)を出力する。
【0102】
アンド回路44は、HC42の励磁電流制御部とBCU43の励磁電流制御部との両方から1が出力されているときに、FETスイッチ41に1が出力される。一方、HC42の励磁電流制御部とBCU43の励磁電流制御部とのうちの少なくとも一方の励磁電流制御部から0が出力されているときは、FETスイッチ41に0が出力される。そして、FETスイッチ41は、アンド回路44から1が入力されているときにON(閉)となり、アンド回路44から0が入力されているときにOFF(開)となる。
【0103】
このように、第2の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、HC42とBCU43は、それぞれ、リレー25の励磁電流の供給と停止とを制御する励磁電流制御部を有している。この場合、第2の実施の形態では、HC42の励磁電流制御部は、リレー25をON・OFF(閉・開)するための指令信号を、アンド回路44を介してFETスイッチ41に出力する指令出力部として構成されている。また、BCU43の励磁電流制御部も、リレー25をON・OFF(閉・開)するための指令信号を、アンド回路44を介してFETスイッチ41に出力する指令出力部として構成されている。
【0104】
第2の実施の形態は、上述のようなHC42の励磁電流制御部とBCU43の励磁電流制御部とによりアンド回路44を介してFETスイッチ41を切換えるもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0105】
即ち、第2の実施の形態も、リレー25の励磁電流の供給と停止を、HC42の励磁電流制御部(指令出力部)で制御することができ、かつ、BCU43の励磁電流制御部(指令出力部)で制御することができる。このため、HC42とBCU43とのうちの一方のコントローラが故障または誤作動しても、他方のコントローラの励磁電流制御部(指令出力部)によりリレー25の励磁電流を停止することにより、リレー25を遮断することができる。これにより、リレー25の励磁電流の停止の確実性、即ち、リレー25の遮断の確実性を向上することができる。
【0106】
なお、図9では、FETスイッチ41とアンド回路44とが、HC42およびBCU43と別に設けられている。しかし、これに限らず、例えば、HC42内に、または、BCU43内に、FETスイッチ41とアンド回路44とを設ける構成としてもよい。
【0107】
次に、図10は、第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、建設機械としての油圧ショベルを電動油圧ショベルとしたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0108】
電動モータ15は、被駆動体としての油圧ポンプ13を駆動する。蓄電装置19は第1の実施の形態と同様に、電動モータ15にインバータ16を介して電力を供給する。この場合、第1の実施の形態の図3および図4に示すように、第3の実施の形態も、蓄電装置19は、リレー25を介してインバータ16に電気的に接続されている。インバータ16は、蓄電装置19から供給された電力を変換して電動モータ15に供給する。リレー25は、蓄電装置19とインバータ16との間に設けられ、蓄電装置19とインバータ16との間を電気的に接続・遮断する。
【0109】
MC28は、油圧ポンプ13を制御する。これに加えて、MC28は、コントロールバルブ14を制御することにより、油圧装置としての走行油圧モータ2A、旋回油圧モータ3A、作業装置8のシリンダ8D,8E,8Fを制御する。機器コントローラとしての電動機器コントローラ51(以下、EC51という)は、MC28と協調制御を行いつつ、電動モータ15、インバータ16、BCU22を制御する。EC51は、第1の実施の形態の機器コントローラ(HC27)と同様に、リレー25の動作電流の供給及び停止を制御するための制御部を備える上位コントローラに対応する。上位コントローラ(図10ではEC51、前述の図2ではHC27)は、BCU22と通信する。
【0110】
BCU22は、蓄電装置19のコントローラ、即ち、蓄電装置19の状態を管理する蓄電装置コントローラである。第3の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、BCU22および上位コントローラ(HC51)は、それぞれ、リレー25の動作電流の供給及び停止を制御するためのリレー制御部を有している。即ち、BCU22は、蓄電装置19が、蓄電装置19とインバータ16との間をリレー25によって電気的に切り離す異常状態になったとき、上位コントローラ(EC51)に対して、蓄電装置19の異常状態を通知する蓄電装置異常状態通知部を有している。これに加えて、BCU22は、蓄電装置19が異常状態になったとき、蓄電装置19の異常状態を通知した上位コントローラ(EC51)によってリレー25の動作電流の供給が停止されたか否かに関係なく、リレー25の動作電流の供給を停止させるリレー制御部を有している。
【0111】
BCU22のリレー制御部は、第1の実施の形態と同様に、蓄電装置19の異常状態を上位コントローラ(EC51)に対して通知してから所定時間経過した後、リレー25の動作電流の供給を停止させる。この場合、所定時間は、蓄電装置19の異常状態を通知してから、リレー25の遮断によって蓄電装置19と電動モータ15との間に流れる電流がゼロの状態になるまでの時間、または、上位コントローラ(EC51)のリレー制御部によってリレー25の動作電流の供給が停止されるまでの時間よりも長く設定されている。
【0112】
このために、第3の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、EC51とBCU22は、それぞれ、リレー25の励磁電流の供給と停止とを制御する励磁電流制御部を有している。即ち、第3の実施の形態では、EC51は、第1の実施の形態のHC27と同様に、励磁電流制御としての第2のFETスイッチ(図示せず)を有している。
【0113】
第3の実施の形態は、上述のようなEC51の第2のFETスイッチとBCU22の第1のFETスイッチ30とによりリレー25の励磁電流の供給と停止とを制御するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。即ち、第3の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、EC51とBCU22とのうちの一方のコントローラが故障または誤作動しても、他方のコントローラのスイッチ(第1のFETスイッチ30または第2のFETスイッチ)によりリレー25の励磁電流を停止することにより、リレー25を遮断することができる。
【0114】
なお、第1の実施の形態では、リチウムイオン二次電池20のマイナス側の端子とインバータ16の直流側負極との間に設けられたリレー25を、HC27とBCU22との両方で遮断することができる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、リチウムイオン二次電池20のプラス側の端子とインバータの直流側正極との間に設けられたリレー24(および必要に応じてリレー23)を、HC27とBCU22との両方で遮断することができる構成としてもよい。また、例えば、リレー25,24(および必要に応じてリレー23)を、HC27とBCU22との両方で遮断することができる構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態および第3の実施の形態も同様である。
【0115】
第1の実施の形態では、蓄電装置19にリチウムイオン二次電池20を用いた場合を例に挙げて説明したが、必要な電力を供給可能な他の二次電池(例えばニッケルカドミウムバッテリ、ニッケル水素バッテリ)やキャパシタを用いてもよい。また、蓄電装置と直流母線との間にDC−DCコンバータ等の昇降圧装置を設けてもよい。このことは、第2の実施の形態および第3の実施の形態も同様である。
【0116】
第1の実施の形態では、建設機械としてクローラ式のハイブリッド油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ホイール式のハイブリッド油圧ショベル、ハイブリッドホイールローダ、ハイブリッドダンプトラック等のように、エンジンと油圧ポンプに連結された電動モータと、蓄電装置とを備えた各種のハイブリッド建設機械に適用可能である。このことは、第2の実施の形態も同様である。
【0117】
第3の実施の形態では、建設機械としてクローラ式の電動油圧ショベルを例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えばホイール式の電動油圧ショベル、電動ホイールローダ、電動ダンプトラック等のように、電動モータのみで油圧ポンプを駆動する各種の電動式建設機械に適用可能である。
【0118】
さらに、各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0119】
また、第1乃至第3の実施の形態では、本発明を、建設機械に搭載される電動システムに適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明が適用される電動システムとしては、ハイブリッド自動車や電気自動車などの自動車に車両駆動用や補機駆動用として用いられる電動システム、フォークリフトなどの産業用車両に搭載される電動システム、ハイブリッド電車などの鉄道用車両に搭載される電動システムなどであってもよい。この場合、電動システムの構成は図2又は図10に示す構成と同じである。すなわち電動システムによって電動モータの機械的な接続先は変わるが、基本的には第1乃至第3の実施の形態において説明した電動モータ、インバータ、蓄電装置、機器コントローラ(HC)の構成がそのまま適用できる。
【符号の説明】
【0120】
1 油圧ショベル(建設機械)
2A 走行油圧モータ(油圧装置)
3A 旋回油圧モータ(油圧装置)
8D ブームシリンダ
8E アームシリンダ
8F バケットシリンダ
13 油圧ポンプ
15 電動モータ
16 インバータ
19 蓄電装置
22,43 BCU(蓄電装置コントローラ)
23,24,25 リレー
27,42 HC(機器コントローラ)
28 MC(メインコントローラ)
30 第1のFETスイッチ(励磁電流制御部)
31 第2のFETスイッチ(励磁電流制御部)
51 EC(機器コントローラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10