(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞の親集団を含む蝸牛組織において蝸牛細胞の集団を増殖する方法における使用のための組成物であって、該方法が蝸牛組織を該組成物と接触させる工程を含む、請求項1〜13いずれか記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0064】
定義
本願において、そうではないと記載されなければ、「または」の使用は「および/または」を意味する。本願において使用される場合、用語「含む(comprise)」ならびにその「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などの変形は、他の添加物、成分、整数または工程を除外することを意図しない。本願において使用される場合、用語「約(about)」および「約(approximately)」は同等のものとして使用される。本願において使用される約(about)/約(approximately)を伴うかまたは伴わない任意の数字は、当業者に理解される任意の通常の変動をカバーすることを意図する。特定の態様において、用語「約(approximately)」または「約(about)」は、そうではないと記載されないかまたは文脈から明らかでない場合は(かかる数が正の値の100%を超える場合を除く)、記載された参照値のいずれかの方向(より多いまたはより少ない)に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下に該当する値範囲をいう。
【0065】
「投与」は、物質を被験体に導入することをいう。いくつかの態様において、投与は、例えば注射による耳、耳内、蝸牛内、前庭内または経鼓膜(transtympanically)的なものである。いくつかの態様において、投与は、正円窓、耳嚢、または前庭階を介した内耳への直接的な、例えば注射である。いくつかの態様において、投与は、蝸牛インプラント送達系を介して内耳に直接的である。いくつかの態様において、物質は、経鼓膜的に中耳に注射される。特定の態様において、「投与されるようにする(causing to be administered)」は、第1の成分がすでに投与された後の第2の成分の投与をいう(例えば異なる時点でおよび/または異なる行為者による)。
【0066】
「抗体」は、免疫グロブリンポリペプチド、または免疫原結合能力を有するその断片をいう。
【0067】
本明細書で使用する場合、「アゴニスト」は、標的遺伝子、タンパク質、または経路それぞれの発現または活性の増加を引き起こす薬剤である。そのため、アゴニストは、標的遺伝子またはタンパク質にこの生理学的な効果を直接または間接的に生じさせるいくつかの様式で、その同起源の受容体に結合して活性化し得る。アゴニストはまた、経路構成要素の活性を調節することにより、例えば経路の負の制御因子の活性を阻害することにより経路の活性を高め得る。そのため、「Wntアゴニスト」は、Wnt経路の活性を高める薬剤として定義され得、該活性は、細胞中の増加したTCF/LEF媒介性の転写により測定され得る。そのため、「Wntアゴニスト」は、Wntファミリータンパク質、細胞内ベータカテニン分解の阻害剤、およびTCF/LEFのアクチベーターのいずれかおよび全てを含むFrizzled受容体ファミリーメンバーに結合して活性化する真のWntアゴニストであり得る。「Notchアゴニスト」は、Nothchの転写活性を測定することにより決定され得る、Notch経路の活性を増加する薬剤として定義され得る。
【0068】
「アンタゴニスト」は、受容体に結合して、次いで他の分子による結合を低減または排除する薬剤をいう。
【0069】
「アンチセンス」は、長さに関係なく、コーディング鎖または核酸配列のmRNAに相補的な核酸配列をいう。アンチセンスRNAは、個々の細胞、組織または類器官(organanoid)に導入され得る。アンチセンス核酸は、修飾された主鎖、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートもしくは当該技術分野で公知の他の修飾された主鎖を含み得るか、または非天然のヌクレオシド間結合を含み得る。
【0070】
本明細書で言及される場合、「相補的な核酸配列」は、相補的なヌクレオチド塩基対で構成される別の核酸配列とハイブリダイズし得る核酸配列である。「ハイブリダイズ」は、適切なストリンジェントな条件下で、相補的なヌクレオチド塩基(例えば、DNA中でアデニン(A)はチアミン(T)と塩基対を形成し、同様にグアニン(G)はシトシン(C)と塩基類を形成する)間で二本鎖分子を形成する対を意味する。(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507参照)。
【0071】
「耳への投与(auricular administration)」は、カテーテルまたはガーゼ(wick)デバイスを使用して、鼓膜を通って被験体の内耳に組成物を投与する方法をいう。ガーゼまたはカテーテルの挿入を容易にするために、適切な大きさのシリンジまたはピペットを使用して、鼓膜に穴を開け得る。該デバイスは、当業者に公知の任意の他の方法、例えば、該デバイスの外科的埋めこみを使用しても挿入され得る。特定の態様において、ガーゼまたはカテーテルデバイスは、独立型のデバイスであり、被験体の耳に挿入され、次いで組成物が内耳へと制御可能に放出されることを意味する。他の特定の態様において、ガーゼまたはカテーテルデバイスは、さらなる組成物の投与を可能にするポンプまたは他のデバイスに取り付けられ得るか、または連結され得る。該ポンプは、用量単位を送達するように自動的にプログラムされ得るか、または被験体もしくは医療専門家により制御され得る。
【0072】
本明細書で使用する場合、「生体適合性マトリックス」は、治療剤の放出のためのヒトへの投与に許容され得る重合性担体である。生体適合性マトリックスは、生体適合性のゲルまたは泡であり得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「細胞凝集」は、増殖して、直径が40ミクロンよりも大きい所定の細胞型の集合を形成した、および/または基底膜に対して垂直に存在する3細胞層よりも大きい形態を産生したコルティ器中の体細胞を意味する。「細胞凝集」はまた、細胞分裂により1つ以上の細胞型を生じ、網状層または内リンパと外リンパの間の境界を破る細胞の集合体を生成するプロセスをいう。
【0074】
特定の細胞型に関して本明細書で使用する場合、「細胞密度」は、代表的な顕微鏡検査試料中の面積当たりの細胞型の平均数である。該細胞型としては、限定されないが、Lgr5
+細胞、毛細胞または支持細胞が挙げられ得る。細胞密度は、限定されないが蝸牛またはコルティ器を含む所定の器官または組織中の所定の細胞型により評価され得る。例えば、コルティ器中のLgr5
+細胞密度は、コルティ器中で測定される場合はLgr5
+細胞の細胞密度である。典型的に、支持細胞およびLgr5
+細胞は、コルティ器の断面を撮影することにより数えられる。典型的に、毛細胞は、コルティ器の表面を見ることにより数えられるが、いくつかの例において、代表的な顕微鏡検査試料中で記載されるように、断面が使用されることもある。典型的に、Lgr5
+細胞の細胞密度は、コルティ器の全組織標本を分析して、代表的な顕微鏡検査試料において記載されるように上皮の表面に沿って一定の距離にわたりLgr5細胞の数を数えることにより測定される。毛細胞は、束または毛細胞特異的な染色(例えばミオシンVIIa、プレスチン、vGlut3、Pou4f3、エプシン、コンジュゲートファロイジン、PMCA2、Ribeye、Atoh1等)などのその形態的な特徴により同定され得る。Lgr5+細胞は、特異的な染色または抗体(例えば、Lgr5-GFPトランスジェニックレポーター、抗Lgr5抗体等)により同定され得る。
【0075】
「CHIR99021」は、化学式C
22H
18Cl
2N
8および以下の別名:CT 99021; 6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリルを有する化学組成物である。その化学構造は以下のとおりである:
【化1】
【0076】
本明細書で使用する場合、「蝸牛濃度」は、蝸牛液のサンプリングにより測定される所定の薬剤の濃度である。そうではないと記されなければ、試料液は、実質的に十分な部分の蝸牛液を含むため、蝸牛中の薬剤の平均濃度をおよそ示す。例えば、前庭階から試料を抜き取り、蝸牛の特定の部分において個々の試料が蝸牛液で構成されるように一連の液体試料を連続して抜き取る。
【0077】
「相補的な核酸配列」は、相補的なヌクレオチド塩基対で構成される別の核酸配列とハイブリダイズし得る核酸配列をいう。
【0078】
特定の細胞型に関して本明細書で使用される場合、「断面細胞密度」は、代表的な顕微鏡検査試料中の組織にわたる断面の面積当たりの細胞型の平均数である。コルティ器の断面はまた、所定の面における細胞の数を測定するために使用され得る。典型的に、毛細胞断面細胞密度は、コルティ器の全調製物を分析し、代表的な顕微鏡検査試料に記載されるように、上皮の一部に沿って得られた断面中の所定の距離にわたる毛細胞の数を計数することにより測定される。典型的に、Lgr5
+細胞の断面細胞密度は、コルティ器の全調節物を分析し、代表的な顕微鏡検査試料に記載されるように、上皮の一部に沿って得られた断面の所定の距離にわたるLgr5
+細胞の数を計数することにより測定される。毛細胞は、束または毛細胞特異的な染色(適切な染色としては、例えばミオシンVIIa、プレスチン、vGlut3、Pou4f3、コンジュゲートファロイジン、PMCA2、Atoh1等が挙げられる)などの形態的な特徴により同定され得る。Lgr5
+細胞は、特異的な染色または抗体(適切な染色および抗体としては、Lgr5 mRNAの蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、Lgr5-GFPトランスジェニックレポーターシステム、抗Lgr5抗体等)により同定され得る。
【0079】
「減少」は、例えば参照のレベルと比較して、少なくとも5%、例えば5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99または100%の減少をいう。
【0080】
「減少」は、例えば参照のレベルと比較して、少なくとも1倍、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍以上の減少も意味する。
【0081】
本明細書で使用する場合、「分化阻害剤」は、内耳幹細胞の内耳毛細胞への分化を阻害し得る薬剤である。いくつかの分化阻害剤は、新生児幹細胞マーカーの発現を維持する。いくつかの分化阻害剤としては、限定されることなく、NotchアゴニストおよびHDAC阻害剤が挙げられる。
【0082】
本明細書で使用する場合、「分化期間」は、有効分化阻害濃度がなく有効幹細胞性誘導物質濃度がある時間である。
【0083】
「有効濃度」は、幹細胞性誘導物質についての有効幹細胞性誘導物質濃度または分化阻害剤についての有効分化阻害濃度であり得る。
【0084】
「有効分化阻害濃度」は、幹細胞増殖アッセイの開始と比較して、幹細胞増殖アッセイの終了時点で毛細胞である細胞の全集団の割合を50%より多く増加させない分化阻害剤の最小濃度である。有効分化阻害濃度の測定において、細胞についての毛細胞染色をフローサイトメトリーと共に使用して、Atoh1-GFPマウスではないマウス系統についての毛細胞を定量し得る。代替的に、Atoh1-GFPマウス系統を使用し得る。
【0085】
本明細書で使用する場合、「有効放出速度」(質量/時間)は、有効濃度(質量/体積) * 30μL/1時間である。
【0086】
「有効幹細胞性誘導物質濃度」は、幹細胞性誘導物質がなくかつ存在する全ての他の成分が同じ濃度で実施した幹細胞増殖アッセイにおけるLgr5+細胞数と比較して、幹細胞増殖アッセイにおけるLGR5+細胞の数の少なくとも1.5倍の増加を誘導する幹細胞性誘導物質の最小濃度である。
【0087】
「除外する」は、検出可能でないレベルへの減少を意味する。
【0088】
「植え込む」または「植え込み」は、目的の組織の既存の細胞との接触による、インビボでの目的の組織中への幹細胞または前駆細胞の組み込みの過程をいう。「上皮前駆細胞」は、上皮細胞を生じる細胞系統に限定される能力を有する多能性細胞をいう。
【0089】
「上皮幹細胞」は、拘束されて(comitted)上皮細胞を生じる細胞系統を含む複数の細胞系統になる能力を有する多能性細胞をいう。
【0090】
「断片」は、ポリペプチドまたは核酸分子の部分をいう。この部分は、好ましくは参照核酸分子またはポリペプチドの完全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含む。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100、200、300、400、500、600、700、800、900もしくは1000のヌクレオチドまたはアミノ酸を含み得る。
【0091】
本明細書において交換可能に使用される場合、「GSK3ベータ」、「GSK3β」および「GSK3B」は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3ベータの頭字語である。
【0092】
「GSK3ベータ阻害剤」は、GSK3ベータの活性を阻害する組成物である。
【0093】
本明細書で使用する場合、「HDAC」はヒストンデアセチラーゼの頭字語である。
【0094】
「HDAC阻害剤」はHDACの活性を阻害する組成物である。
【0095】
「ハイブリダイズ」は、ストリンジェンシーの適切な条件下で、相補的なヌクレオチド塩基の間で二本鎖分子を形成する対形成(例えば、DNA中アデニン(A)はチミン(T)と塩基対を形成し、同様にグアニン(G)はシトシン(C)と塩基対を形成する)をいう。(例えばWahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507参照)。
【0096】
「阻害剤」は、標的遺伝子の発現または標的タンパク質の活性の減少のそれぞれを引き起こす薬剤をいう。「アンタゴニスト」は阻害剤であり得るが、より具体的には、受容体に結合し、次いで他の分子による結合を減少または排除する薬剤である。
【0097】
本明細書で使用する場合、「阻害性核酸」は、哺乳動物細胞に投与される場合、標的遺伝子の発現の減少を生じる二本鎖RNA、RNA干渉、miRNA、siRNA、shRNAもしくはアンチセンスRNA、またはそれらの部分もしくは模倣物である。典型的に、核酸阻害剤は、標的核酸分子もしくはそのオルソログの少なくとも一部を含むか、または標的核酸分子の相補鎖の少なくとも一部を含む。典型的に、標的遺伝子の発現は、10%、25%、50%、75%またはさらには90〜100%低減される。
【0098】
「インビトロLgr5活性」は、細胞のインビトロ集団におけるLgr5の発現または活性のレベルをいう。これは、例えば細胞を一細胞に分離して、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、Lgr5-GFP発現についてフローサイトメーターを使用して細胞を分析することにより、B6.129P2-Lgr5tm1(cre/ERT2)Cle/Jマウス(Lgr5-EGFP-IRES-creERT2またはLgr5-GFPマウスとしても知られる、Jackson Lab Stock No: 008875)などのLgr5-GFP発現マウス由来の細胞中で測定され得る。同じ培養および分析の手順を経過した野生型(非Lgr5-GFP)マウス由来の内耳上皮細胞は、陰性対照として使用し得る。典型的に、GFP陽性集団およびGFP陰性集団の両方を含む細胞の2つの集団を1つの変数としてGFP/FITCと共に二変数プロット中に示す。Lgr5-陽性細胞は、GFP陽性細胞集団をゲーティング(gating)することにより同定される。Lgr5-陽性細胞のパーセンテージは、GFP陰性集団および陰性対照の両方に対してGFP陽性細胞集団をゲーティングすることにより測定される。Lgr5-陽性細胞の数は、細胞の総数に、Lgr5-陽性細胞のパーセンテージをかけることにより計算される。非Lgr5-GFPマウス由来の細胞について、Lgr5活性は、抗Lgr5抗体またはLgr5遺伝子に対する定量的PCRを使用して測定され得る。
【0099】
本明細書で使用する場合、「インビボLgr5活性」は、被験体におけるLgr5の発現または活性のレベルである。これは、例えば動物の内耳を取り外し、Lgr5タンパク質またはLgr5 mRNAを測定することにより測定され得る。Lgr5タンパク質産生は、蛍光強度がLgr5存在の尺度として使用される蝸牛試料の画像化により決定される場合、抗Lgr5抗体を使用して蛍光強度を測定することにより測定され得る。細胞を処理された器官から回収してLgr5タンパク質の増加を決定し得る抗Lgr5抗体を用いたウエスタンブロットを使用し得る。内耳から細胞を採取してLgr5 mRNAの変化を決定し得る定量的PCRまたはRNAインサイチュハイブリダイゼーションを使用して、Lgr5 mRNA産生の相対的な変化を測定し得る。代替的に、Lgr5発現は、GFP蛍光の存在または強度がフローサイトメトリー、画像化を使用して直接的に検出され得るかまたは抗GFP抗体を使用して間接的に検出され得るLgr5プロモーターに駆動されるGFPレポータートランスジェニックシステムを使用して、測定され得る。
【0100】
「増加(increase)」はまた、例えば参照標準のレベルと比較したレベルと比較して、少なくとも1倍、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍またはそれ以上の増加を意味する。
【0101】
「増加(increasing)」は、例えば参照のレベルと比較して、少なくとも5%、例えば5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100%またはそれ以上の増加をいう。
【0102】
「耳介内投与(intraauricular administration)」は、組成物を直接注射することによる被験体の中耳または内耳への組成物の投与をいう。
【0103】
「蝸牛内」投与は、鼓膜を通したおよび正円窓膜を通した組成物の蝸牛内への直接注射をいう。
【0104】
「前庭内」投与は、鼓膜を通したおよび正円窓膜を通した組成物の前庭器官への直接注射をいう。
【0105】
「単離される」は、天然の状態で見られるような通常では物質に付随する成分を様々な程度で含まない物質をいう。「単離」は、元の供給源または周囲からのある程度の分離を示す。
【0106】
「Lgr5」は、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5の頭字語であり、Gタンパク質共役受容体49(GPR49)またはGタンパク質共役受容体67(GPR67)としても知られる。これは、ヒトにおいてはLgr5遺伝子によりコードされるタンパク質である。
【0107】
「Lgr5活性」は、細胞の集団におけるLgr5の活性のレベルとして定義される。インビトロ細胞集団において、Lgr5活性は、インビトロLgr5活性アッセイにおいて測定され得る。インビボ細胞集団において、Lgr5活性は、インビボLgr5活性アッセイにおいて測定され得る。
【0108】
本明細書で使用する場合、「Lgr5
+細胞」または「Lgr5-陽性細胞」は、Lgr5を発現する細胞である。本明細書で使用する場合、「Lgr5
-細胞」はLgr5
+ではない細胞である。
【0109】
本明細書で使用する場合、「系統追跡(Lineage Tracing)」は、レポーター誘導の時点で標的遺伝子を発現する任意の細胞の運命追跡を可能にする、マウス系統を使用することである。これは毛細胞または支持細胞の遺伝子(Sox2、Lgr5、MyosinVIIa、Pou4f3等)を含み得る。例えば、系統追跡は、誘導時に、誘導の時点でLgr5を発現した細胞の運命を追跡することを可能にする、レポーターマウスと雑種形成したLgr5-EGFP-IRES-creERT2 マウスを使用し得る。さらなる例により、Lgr5細胞は、単一細胞に単離し得、幹細胞増殖アッセイにおいて培養してコロニーを生成し得、次いで分化アッセイにおいて分化し得、毛細胞および/または支持細胞のタンパク質の染色、ならびに毛細胞または支持細胞染色のいずれかを用いるレポーター共局在の決定により、細胞運命を分析して、Lgr5細胞の運命を決定し得る。また、蝸牛外植片において系統追跡を実施して、処理後の完全な器官中の支持細胞または毛細胞の運命を追跡し得る。例えば、Lgr5細胞運命は、レポーターマウスと雑種形成したLgr5-EGFP-IRES-creERT2マウスから蝸牛を単離して、処理前または処理中にLgr5細胞中でレポーターを誘導することにより決定し得る。次いで、毛細胞および/または支持細胞のタンパク質を染色して、毛細胞または支持細胞の染色のいずれかを用いてレポーター共局在を決定し、Lgr5細胞運命を決定することにより、細胞運命について器官を分析し得る。また、インビボにおいて系統追跡を実施して、処理後の完全な器官における支持細胞または毛細胞の運命を追跡し得る。例えば、レポーターマウスと雑種形成したLgr5-EGFP-IRES-creERT2マウス中でレポーターを誘導し、該動物を処理し、次いで蝸牛を単離することによりLgr5細胞運命を決定し得る。次いで、毛細胞および/または支持細胞のタンパク質を染色し、毛細胞または支持細胞染色のいずれかを用いるレポーター共局在を決定して、Lgr5細胞運命を決定することにより、細胞運命について器官を分析し得る。当該技術分野の標準である代替的な目的のレポーターを使用して系統追跡を行い得る。
【0110】
「哺乳動物」は、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ヒツジ、サル、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ウマ、ウシまたはブタを含む任意の哺乳動物をいう。
【0111】
本明細書で使用する場合、「平均放出時間」は、放出アッセイにおいて薬剤の1/2が担体からリン酸緩衝化食塩水中に放出される時間である。
【0112】
本明細書で使用する場合、「ネイティブの形態」は、組織構成(organization)が健常な組織における構成を大きく反映することを意味する。例えば、蝸牛についての「ネイティブの形態」は、Notchの側方阻害により形成されるロゼットパターン中で毛細胞が支持細胞に囲まれており、毛細胞が互いに接触しておらず、2〜3個の細胞層がコルティ器上皮を形成し、細胞が網状層を破らない(すなわち、内リンパと外リンパの境界を破らない)ことを意味する。
【0113】
本明細書で使用する場合、「非ヒト哺乳動物」は、ヒトではない任意の哺乳動物をいう。
【0114】
本明細書で使用する場合、「Notch活性アッセイ」は、例えばqPCRを使用してHes5/Hes1の発現を決定するなどの標準的な技術を使用した集団におけるNotch活性を決定するアッセイをいう。
【0115】
本明細書の関連のある文脈で使用する場合、用語、細胞の「数」は、0、1またはそれ以上の細胞であり得る。
【0116】
本明細書で使用する場合、「コルティ器」は、蝸牛中に位置する聴覚器官の感覚細胞(内部および外部の毛細胞)をいう。
【0117】
「類器官」または「上皮類器官」は、器官または器官の一部に類似し、特定の器官に関連する細胞型を有する細胞の集合または凝集物をいう。
【0118】
細胞の「集団」は、1より多い任意の数の細胞をいうが、好ましくは少なくとも1X10
3細胞、少なくとも1X10
4細胞、少なくとも1X10
5細胞、少なくとも1X10
6細胞、少なくとも1X10
7細胞、少なくとも1X10
8細胞、少なくとも1X10
9細胞、または少なくとも1X10
10細胞である。
【0119】
本明細書で使用する場合、「前駆細胞」は、特定の細胞の型に分化する傾向を有する幹細胞と同様の細胞をいうが、幹細胞よりもすでに特異的でありその「標的」細胞に分化するように強制される。
【0120】
本明細書で使用する場合、「増殖期間」は、有効幹細胞性誘導物質濃度および分化阻害剤の分化阻害濃度が存在する期間である。
【0121】
「参照」は、標準または対照条件(例えば試験剤または試験剤の組合せで処理されない)を意味する。
【0122】
本明細書で使用する場合、「放出アッセイ」は、透析膜を介して生体適合性マトリックスから食塩水環境に薬剤が放出される速度の試験である。代表的な放出アッセイは、適切なカットオフを有する食塩水透析バッグの内側で1mlのリン酸緩衝化食塩水中に30マイクロリットルの組成物を置き、透析バッグを37℃の10mLリン酸緩衝化食塩水中に置くことにより実施され得る。該透析膜のサイズは、評価される薬剤の膜からの排出を可能にするために、薬剤のサイズに基づいて選択され得る。小分子の放出について、3.5〜5kDaのカットオフを使用し得る。該薬剤は、幹細胞性誘導物質、分化阻害剤または他の薬剤であり得る。組成物の放出速度は、経時的に変化し得、1時間の増分(1 hour increments)において測定され得る。
【0123】
本明細書で使用する場合、「代表的な顕微鏡検査試料」は、測定される平均特徴サイズまたは数が全ての関連のある視野を測定した場合の平均特徴サイズまたは数を合理的に表すといえる細胞培養系、抽出された組織の一部、または抽出された器官全体中の十分な数の視野を記載する。例えば、ある周波数範囲でコルティ器上の毛細胞数を評価するために、ImageJソフトウェア(NIH)を使用して、蝸牛全マウントの合計長および個々の計数された断片の長さを測定し得る。内有毛細胞、外有毛細胞および支持細胞の総数を全体的に、または1200〜1400μmの4つの蝸牛断片 (頂部、中頂部(mid-apical)、中基部(mid-basal)および基部) のいずれかの小部分を100μmの視野サイズで少なくとも3視野計数し得たものが、合理的に、代表的な顕微鏡検査試料とみなされる。代表的な顕微鏡検査試料は、所定の距離当たりの細胞として測定され得る視野中の測定値を含み得る。代表的な顕微鏡検査試料を使用して、細胞-細胞接触、蝸牛構造および細胞構成成分(例えば束、シナプス)などの形態を評価し得る。
【0124】
「ロゼットパターン形成」は、<5%の毛細胞が他の毛細胞に隣接する蝸牛中の特徴的な細胞配置である。
【0125】
用語「試料」は、得られる、提供されるおよび/または分析に供される体積または質量をいう。いくつかの態様において、試料は、組織試料、細胞試料、液体試料等であるかそれらを含む。いくつかの態様において、試料は被験体(例えばヒトまたは動物被験体)から得られる(またはそれらである)。いくつかの態様において、組織試料は、脳、毛髪(毛根を含む)、頬スワブ、血液、唾液、精液、筋肉、または任意の内部臓器由来、またはこれらのいずれかと関連のある癌、前癌性もしくは腫瘍細胞であるかあるいはそれらを含む。限定されないが、液体は、尿、血液、腹水、胸膜液、脊髄液等であり得る。体組織としては限定されないが、脳、皮膚、筋肉、子宮内膜、子宮、および頸部の組織、またはこれらのいずれかに関連する癌、前癌性もしくは腫瘍細胞が挙げられ得る。ある態様において、体組織は、脳組織または脳腫瘍もしくは癌である。当業者は、いくつかの態様において、「試料」は、供給源(例えば被験体)から得られる「一次試料」であり、いくつかの態様において、「試料」は、一次試料の処理、例えば特定の強力な汚染成分の除去および/または目的の特定の成分の単離もしくは精製の結果であることを理解する。
【0126】
「自己複製(Self-renewal)」は、幹細胞が分裂して、母細胞とは区別できない発生能力を有する1つ(非対称的分裂)または2つ(対照的分裂)の娘細胞を生る過程をいう。自己複製は、増殖および未分化状態の維持の両方を含む。
【0127】
「siRNA」は、二本鎖RNAをいう。最適には、siRNAは、18、19、20、21、22、23または24ヌクレオチド長であり、その3’末端に2塩基突出を有する。これらのdsRNAは、個々の細胞または培養系に導入され得る。かかるsiRNAを使用してmRNAレベルまたはプロモーター活性を下方制御する。
【0128】
「幹細胞」は、自己複製して複数の細胞系統に分化する能力を有する多能性細胞をいう。
【0129】
本明細書で使用する場合、「幹細胞分化アッセイ」は、幹細胞の分化能力を決定するアッセイである。代表的な幹細胞分化アッセイにおいて、コルティ器感覚上皮を単離し、該上皮を一細胞に分離し、細胞を40μm細胞ストレーナーお通過させることで、開始細胞集団についての細胞数を3〜7日齢のAtoh1-GFPマウスから採取する。約5000細胞を40μlの培養基板(例えば:マトリゲル(Corning、成長因子低減))に捕捉し、500μlの適切な培養培地を用いて24ウェルプレートのウェルの中心に配置し、増殖因子および薬剤を試験する。適切な培養培地および増殖因子としては、培地補充物(1X N2、1X B27、2mM Glutamax、10mM HEPES、1mM N-アセチルシステインおよび100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン)を有するAdvanced DMEM/F12および増殖因子(50ng/ml EGF、50ng/ml bFGFおよび50ng/ml IGF-1)が挙げられ、評価される薬剤(1つまたは複数)を各ウェルに添加する。標準的な細胞培養インキュベーター中、37℃および5% CO
2で、培地を2日毎に交換して、細胞を10日間培養する。次いで、幹細胞増殖アッセイ薬剤を除去して、基底培養培地および分化を誘導する物質で置き換えることによりこれらの細胞を培養する。適切な基底培養培地は、1X N2、1X B27、2mM Glutamax、10mM HEPES、1mM N-アセチルシステイン、および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを補充したAdvanced DMEM/F12であり、分化を誘導する適切な分子は、10日間3μM CHIR99021および5μM DAPTであり、培地を2日毎に交換する。集団中の毛細胞の数は、GFPについてのフローサイトメトリーを使用して測定し得る。さらに、適切な制御されない参照またはハウスキーピング遺伝子(例えばHprt)を使用して標準化した毛細胞マーカー(例えばMyo7a)発現レベルを測定するためのqPCRを使用して、毛細胞分化レベルを評価し得る。毛細胞分化レベルはまた、毛細胞マーカー(例えば、Myosin7a、vGlut3、Espin、PMCA、Ribeye、コンジュゲートファロイジン、Atoh1、Pou4f3等)についての免疫染色により評価し得る。毛細胞分化レベルはまた、Myosin7a、vGlut3、Espin、PMCA、プレスチン、Ribeye、Atoh1、Pou4f3についてのウエスタンブロットにより評価し得る。
【0130】
本明細書で使用する場合、「幹細胞アッセイ」は、細胞または細胞集団が幹細胞であるかまたは幹細胞もしくは幹細胞マーカーに富むかどうかを決定するための一連の基準について、細胞または細胞集団を試験するアッセイである。幹細胞アッセイにおいて、細胞/細胞集団を、幹細胞マーカーの発現などの幹細胞特徴について試験し、およびさらに任意に自己複製および分化の能力を含む幹細胞機能について試験する。
【0131】
本明細書で使用する場合、「幹細胞増殖物質」は、自己複製および分化の能力を有する細胞の集団の増加を誘導する組成物である。
【0132】
本明細書で使用する場合、「幹細胞増殖アッセイ」は、薬剤(1つまたは複数)が開始細胞集団から幹細胞の生成を誘導する能力を決定するアッセイである。代表的な幹細胞増殖アッセイにおいて、コルティ器感覚上皮を単離して上皮を一細胞に分離することにより、開始細胞集団の細胞数を、B6.129P2-Lgr5tm1(cre/ERT2)Cle/Jマウス(Lgr5-EGFP-IRES-creERT2またはLgr5-GFPマウスとしても公知、Jackson Lab Stock No: 008875)などの3〜7日齢のLgr5-GFPマウスから採取する。約5000の細胞を40μlの培養基板(例えば、マトリゲル(Corning、増殖因子低減))中に捕捉して、500μlの適切な培養培地を有する24ウェルプレートのウェルの中央に配置し、増殖因子および薬剤を試験する。適切な培養培地および増殖因子としては、培地補充物(1X N2、1X B27、2mM Glutamax、10mM HEPES、1mM N-アセチルシステインおよび100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン)を有するAdvanced DMEM/F12および増殖因子(50ng/ml EGF、50ng/ml bFGFおよび50ng/ml IGF-1)が挙げられ、評価される薬剤(1つまたは複数)を各ウェルに添加する。細胞を標準的な細胞培養インキュベーター中、37℃、5% CO
2で、培地を2日毎に交換して10日間培養する。Lgr5
+細胞の数は、インビトロLgr5活性アッセイにおいてLgr5+であると同定された細胞の数を計数することにより定量する。Lgr5
+である細胞の小部分(fraction)は、細胞集団中のLgr5
+と同定された細胞の数を細胞集団中に存在する細胞の総数で割ることにより定量する。集団の平均Lgr5
+活性は、適切な調節されてない参照またはハウスキーピング遺伝子(例えばHprt)を用いて標準化された集団のLgr5の平均mRNA発現レベルを測定することにより定量する。集団中の毛細胞の数は、毛細胞マーカー(例えばMyosinVIIa)で染色するかまたは毛細胞遺伝子の内因性レポーター(例えばPou4f3-GFP、Atoh1-nGFP)を使用して、フローサイトメトリーを使用して分析することにより測定され得る。毛細胞である細胞の小部分は、細胞集団中の毛細胞と同定された細胞の数を、細胞集団中に存在する細胞の総数で割ることにより定量する。Lgr5活性は、qPCRにより測定し得る。
【0133】
本明細書で使用する場合、「幹細胞マーカー」は、幹細胞中で特異的に発現される遺伝子産物(例えばタンパク質、RNA等)として定義され得る。幹細胞マーカーの1つの型は、幹細胞同一性の維持を直接および特異的に支持する遺伝子産物である。例としてはLgr5およびSox2が挙げられる。さらなる幹細胞マーカーは、文献中に記載されたアッセイを用いて同定され得る。遺伝子が幹細胞同一性の維持に必要であるかどうかを決定するために、機能獲得型(gain-of-function)および機能欠損型(loss-of-function)の試験を使用し得る。機能獲得型試験において、特異的な遺伝子産物(幹細胞マーカー)の過剰発現は幹細胞同一性の維持を補助する。一方で、機能欠損型試験において、幹細胞マーカーの除去により、幹細胞同一性の消失が引き起こされるか、または幹細胞の分化が誘導された。別の型の幹細胞マーカーは、幹細胞のみで発現されるが、幹細胞の同一性を維持するための特異的な機能を有することを必要としない遺伝子である。この種類のマーカーは、分類された幹細胞と非幹細胞の遺伝子発現のサインをマイクロアレイおよびqPCRなどのアッセイにより比較することにより同定され得る。この種類の幹細胞マーカーは、文献中に見られ得る(例えばLiu Q. et al., Int J Biochem Cell Biol. 2015 Mar;60:99-111. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25582750)。あり得る幹細胞マーカーとしてはCcdc121、Gdf10、Opcml、Phex等が挙げられる。所定の細胞または細胞集団中のLgr5またはSox2などの幹細胞マーカーの発現は、qPCR、免疫組織化学、ウエスタンブロットおよびRNAハイブリダイゼーションなどのアッセイを使用して測定され得る。幹細胞マーカーの発現はまた、所定の幹細胞マーカー、例えばLgr5-GFPまたはSox2-GFPの発現を示し得るレポーターを発現するトランスジェニック細胞を使用して測定され得る。次いでフローサイトメトリー分析を使用してレポーター発現の活性を測定し得る。蛍光顕微鏡検査を使用しても、レポーターの発現を直接視覚化することができる。幹細胞マーカーの発現はさらに、世界的な遺伝子発現プロフィール分析についてのマイクロアレイ分析を使用して決定され得る。所定の細胞集団または精製された細胞集団の遺伝子発現プロフィールを、幹細胞の遺伝子発現プロフィールと比較して、2つの細胞集団間の類似性を決定し得る。幹細胞機能は、コロニー形成アッセイまたはスフィア(sphere)形成アッセイ、自己複製アッセイおよび分化アッセイにより測定し得る。コロニー(または球)形成アッセイにおいて、適切な培養培地中で培養した場合、幹細胞は、細胞培養表面(例えば細胞培養皿)上でコロニーを形成し得るかもしくは細胞培養基板(例えばマトリゲル)中に埋め込まれ得るはずであるか、または懸濁液中で培養した場合は球を形成し得るはずである。コロニー/スフィア形成アッセイにおいて、単一の幹細胞を適切な細胞培養培地中に低細胞密度で播種し、所定の期間(7〜10日)に増殖させる。次いで、形成されたコロニーを、起源細胞の幹細胞性の指標として幹細胞マーカー発現について計数およびスコア化する。次いで、任意に、形成されるコロニーを採取して継代し、その自己複製および分化の能力を試験する。自己複製アッセイにおいて、適切な培養培地中で培養した場合、細胞は、少なくとも1回(例えば1、2、3、4、5、10、20等)の細胞分裂にわたり幹細胞マーカー(例えばLgr5)発現を維持するはずである。幹細胞分化アッセイにおいて、適切な分化培地中で培養した場合、細胞は、qPCR、免疫染色、ウエスタンブロット、RNAハイブリダイゼーションまたはフローサイトメトリーにより測定される毛細胞マーカー発現により同定され得る毛細胞を生成し得るはずである。
【0134】
本明細書で使用する場合、「幹細胞性誘導物質」は、LGR5
+細胞の増殖を誘導し、細胞中のLgr5を上方制御し、または細胞中のLgr5発現を維持するが、一方で自己複製の能力および毛細胞に分化する能力を維持する組成物である。一般に、幹細胞性誘導物質は、少なくとも1つの新生児幹細胞のバイオマーカーを上方制御する。幹細胞性誘導物質としては、限定されないが、WntアゴニストおよびGSK3ベータ阻害剤が挙げられる。
【0135】
「被験体」としてはヒトおよび哺乳動物(例えばマウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌおよびウマ)が挙げられる。多くの態様において、被験体は哺乳動物、特に霊長類、とりわけヒトである。いくつかの態様において、被験体は、例えば畜牛、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ等の家畜;例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ等の家禽;ならびにイヌおよびネコなどの飼いならされた動物、特にペットである。いくつかの態様において(例えば、特に研究の文脈で)、被験体哺乳動物は、例えばげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類または例えば同系雑種形成のブタ等のブタである。
【0136】
本明細書において蝸牛上皮に関して使用する場合、「支持細胞」は、毛細胞ではないコルティ器中の上皮細胞を含む。これは、内部柱細胞、外部柱細胞、内指節細胞、ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、ベッチェル(Boettcher)細胞および/またはクラウディウス細胞を含む。
【0137】
「相乗作用(synergy)」または「相乗効果(synergistic effect)」は、別々に得られる効果のそれぞれの合計より高い、加法的効果より高い効果である。
【0138】
本明細書で使用する場合、「Tgfベータ阻害剤」は、Tgfベータの活性を低減する組成物である。
【0139】
「組織」は、例えばコルティ器などの蝸牛の組織を含む、具体的な機能を一緒になって実行する同じ起源由来の類似の細胞の集合である。
【0140】
「経鼓膜(transtympanic)」投与は、鼓膜を介した中耳への組成物の直接注射をいう。
【0141】
本明細書において細胞集団に関して使用する場合、「処理する」は、集団に物質を送達して結果に影響を及ぼすことを意味する。インビトロ集団に場合、該物質は、直接的に(または間接的にも)集団に送達され得る。インビボ集団の場合、該物質は、宿主被験体への投与により送達され得る。
【0142】
「バルプロ酸」(VPA)は、化学式C
8H
16O
2および以下の別名2-プロピルペンタン酸を有する。この化学構造は以下のとおりである:
【化2】
【0143】
組成物に関して本明細書で使用される場合、「Wnt活性化」は、Wntシグナル伝達経路の活性化である。
【0144】
「または」の使用はそうではないと記載されなければ「および/または」を意味する。本願において使用される場合、用語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などのその変形は、他の添加物、構成成分、整数または工程を除外することを意図しない。本願で使用される場合、用語「約(about)」および「約(approximately)」は、同等物として使用される。約(about)/約(approximately)を伴うかまたは伴わずに本願で使用される任意の数字は、当業者に理解される任意の通常の変動をカバーすることを意味する。特定の態様において、用語「約(approximately)」または「約(about)」は、そうではないと記載されないかまたはそうではないことが文脈から明らかでない限り(かかる数があり得る値の100%を超える場合を除く)、記載された参照値のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満以内にある値の範囲をいう。
【0145】
句「薬学的に許容され得る」は、本明細書において、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症を有することなく、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適し、妥当な利益/リスク比をと釣り合った化合物、物質、組成物および/または剤型をいうように使用される。
【0146】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤」としては、限定されることなく、ヒトまたは家庭動物における使用に許容され得るような、米国食品医薬品局により承認された任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、矯味矯臭増加剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、または乳化剤が挙げられる。代表的な薬学的に許容され得る担体としては、限定されないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター、ワックス、動物性および植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;アルギン酸;発熱原非含有水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、リン酸緩衝溶液;ならびに医薬製剤中に使用される任意の他の適合性の物質が挙げられる。
【0147】
「薬学的に許容され得る塩」としては、酸付加塩および塩基付加塩の両方が挙げられる。
【0148】
「薬学的に許容され得る酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性および特性を維持し、生物学的に望ましくないかまたは他の望ましくないものではなく、限定されないが例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ならびに限定されないが例えば酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、蟻酸、フマル酸、ガラクタール酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソブチル酸、酪酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、/トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸等の有機酸と一緒に形成される塩をいう。
【0149】
「薬学的に許容され得る塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的有効性および特性を維持し、生物学的に望ましくないかまたは他の望ましくないものではない塩をいう。これらの塩は、無機塩基または有機塩基の遊離酸への付加により調製される。無機塩基に由来する塩としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等が挙げられる。例えば、無機塩としては、限定されないが、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩が挙げられる。有機塩基に由来する塩としては、限定されないが、第1級、第2級および第3級のアミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン塩基性イオン交換樹脂、例えばアンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノメタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、ベネタミン(benethamine)、ベンザチン(benzathine)、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などのの塩が挙げられる。特定の態様で使用される有機塩基の例としては、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインが挙げられる。
【0150】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤および矯味矯臭剤および香料剤、保存剤および酸化防止剤も該組成物中に存在し得る。
【0151】
薬学的に許容され得る酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性酸化防止剤;(2)例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロール等の油溶性酸化防止剤;および(3)例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤が挙げられる。
【0152】
本明細書に記載される組成物は、所望の送達経路、例えば経鼓膜注射、経鼓膜ガーゼおよびカテーテル、ならびに注射可能デポーに適切な、任意の様式で調製され得る。典型的に、製剤は、任意の生理学的に許容され得る担体、希釈剤および/または賦形剤を伴うその誘導体またはプロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物もしくは互変異性体を含む全ての生理学的に許容され得る組成物を含む。
【0153】
発明の詳細な説明
本発明の代表的態様の記載を以下に示す。
【0154】
本開示は、内耳組織、特に内耳毛細胞、それらの前駆体、および任意に血管条(stria vascularis)および関連のある聴覚神経に関わる内耳障害および聴覚損傷の発生率および/または重症度を予防、低減または治療するための組成物、方法およびシステムに関する。具体的な関心は、毛細胞の数の低減および/または毛細胞機能の低下が原因となり得る永続的な聴覚障害を引き起こす状態である。シスプラチンおよびそのアナログ、アミノグリコシド抗生物質、サリチル酸およびそのアナログ、またはループ利尿薬を含む耳毒性治療薬の望ましくない副作用として生じるものにも関心を有する。特定の態様において、本開示は、内耳組織、特に内耳支持細胞および毛細胞の成長、増殖または再生の誘導、促進または増強に関する。
【0155】
他の事物の中で、本明細書に示す化合物は、急性および慢性の耳の疾患ならびに聴覚障害、眩暈感および特に突然の聴覚障害のバランスの問題、音響外傷、慢性の雑音暴露のための聴覚障害、老年性難聴、内耳プロテーゼの植込みの際の外傷(挿入外傷)、内耳領域の疾患のための眩暈感、メニエール病に関連するおよび/またはその症状としての眩暈感、メニエール病に関連するおよび/またはその症状としての眩暈、耳鳴、ならびに抗生物質および細胞増殖抑制薬(cytostatics)および他の薬物のための聴覚障害の予防および/または治療のための医薬製剤の調製に有用である。
【0156】
有利なことに、本明細書に開示される組成物は、「人工多能性幹細胞」を作製するために使用するもの(例えばWnt刺激、HDAC阻害、TGF-ベータ阻害、RAR活性化および/またはDKK1抑制の組合せ)などの幹細胞特性の誘導に関与することが知られる経路および機構を活性化する能力を有する。蝸牛支持細胞集団をかかる組成物で処理すると、該集団はインビボまたはインビトロのいずれであろうと、処理された支持細胞は、増殖および分化、より具体的には蝸牛毛細胞に分化する能力を有するという点で幹細胞様の挙動を示す。好ましくは、該組成物は、数世代にわたり分裂し得かつ高い割合の得られた細胞を毛細胞に分化させる能力を維持し得る娘幹細胞を生じるように、該支持細胞を誘導および維持する。特定の態様において、増殖している幹細胞は、Lgr5、Sox2、Opeml、Phex、lin28、Lgr6、サイクリンD1、Msx1、Myb、Kit、Gdnf3、Zic3、Dppa3、Dppa4、Dppa5、Nanog、Esrrb、Rex1、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3l、Utf1、Tcl1、Oct4、Klf4、Pax6、Six2、Zic1、Zic2、Otx2、Bmi1、CDX2、STAT3、Smad1、Smad2、smad2/3、smad4、smad5および/またはsmad7を含み得る幹細胞マーカーを発現する。
【0157】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、有意な毛細胞形成前の既存の支持細胞集団の幹細胞性(すなわち自己複製)を維持またはさらには一過的に増加するために使用され得る。いくつかの態様において、既存の支持細胞集団は、内部柱細胞、外部柱細胞、内指節細胞、ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、ベッチェル細胞および/またはクラウディウス細胞を含む。免疫染色を用いた形態学的分析(細胞計数を含む)および代表的顕微鏡検査試料を介した系統追跡を使用して、1つ以上のこれらの細胞型の増殖を確認し得る。いくつかの態様において、既存の支持細胞はLgr5
+細胞を含む。免疫染色を用いた形態学的分析(細胞計数を含む)およびqPCRおよびRNAハイブリダイゼーションを使用して、細胞集団中のLgr5上方制御を確認し得る。
【0158】
有利なことに、本開示の方法および組成物は、遺伝子操作を使用することなくこれらの目標を達成する。多くの学術的研究において使用される生殖細胞系操作は、聴覚障害の治療にとっては治療的に望ましいアプローチではない。一般的に、該治療法は好ましくは、遺伝子治療を伴わない小分子、ペプチド、抗体または他の非核酸分子もしくは核酸送達ベクターの投与を含む。特定の態様において、該治療法は、小有機分子の投与を含む。好ましくは、聴覚保護または聴覚回復は、中耳に注射され蝸牛へと拡散する(非遺伝子的)治療剤の使用により達成される。
【0159】
蝸牛は、全ての存在する細胞型に大きく依存し、これらの細胞の構成は、その機能に重要である。支持細胞は神経伝達因子のサイクリングおよび蝸牛の機能的構造において重要な役割を果たす。したがって、コルティ器中のロゼットパターンを維持することは、機能にとって重要であり得る。基底膜の蝸牛の機能的構造は、毛細胞形質導入を活性化する。Atoh1ウイルス形質導入により異所的な毛細胞が形成されるが、これらの細胞が、感覚との関係においてその配置を誤ることおよび蓋膜との不適合のために聴覚応答に寄与し得ることはありそうにない。さらに、これらの細胞は、前庭毛細胞または非哺乳動物毛細胞とより類似しているように思われる。したがって、単なるAtoh1またはNotch阻害よりも多くのシグナル伝達が、蝸牛毛細胞発生に必要である。蝸牛機能的構造の高い感受性のために、細胞の塊(masses)を回避することも望ましい。全てにおいて、適切な分布、および基底膜に沿った毛細胞と支持細胞の関係を維持することは、支持細胞の機能および適切な機能的構造が正常な聴力に必要であるので、増殖の後であっても、聴力に対して望ましい特徴であり得る。
【0160】
ネイティブの蝸牛において、毛細胞および支持細胞のパターン形成は、Notch側方阻害を介して生じ、ここで毛細胞になる細胞は、近くの支持細胞に、Atoh1(毛細胞運命に必要な遺伝子)を抑制するようにシグナルを伝達し、それにより上皮ロゼットを生じる。本開示の一態様において、蝸牛細胞集団中の毛細胞の細胞密度は、蝸牛上皮のロゼットパターン特徴を維持またはさらには確立する様式で増加する。
【0161】
本開示の一局面によると、毛細胞の細胞密度は、毛細胞と支持細胞の両方を含む蝸牛細胞の集団中で増加され得る。蝸牛細胞集団は、インビボ集団(すなわち被験体の蝸牛上皮に含まれる)であり得るか、または蝸牛細胞集団はインビトロ(エキソビボ)集団であり得る。該集団がインビトロ集団である場合、細胞密度の増加は、任意の処理の前後に得られる集団の代表的な顕微鏡検査試料に対する参照により決定され得る。該集団がインビボ集団である場合、細胞密度の増加は、聴力の向上に相関する毛細胞密度の増加を有する被験体の聴力に対する効果を決定することにより間接的に決定され得る。
【0162】
一態様において、支持細胞は、リボンシナプス由来の神経細胞の非存在下で、幹細胞増殖アッセイにおかれる。
【0163】
ネイティブの蝸牛において、毛細胞および支持細胞のパターン形成は、基底膜と並行した様式で起こる。本開示の一態様において、蝸牛細胞集団中の支持細胞の増殖は、蝸牛上皮に特徴的な基底膜の様式で増殖される。
【0164】
かかる態様の1つにおいて、組成物を蝸牛組織に適用すると、増殖した蝸牛細胞集団中の隣接する毛細胞の数は、該集団中の毛細胞の5%未満である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖した蝸牛細胞集団中の隣接する毛細胞の数は、該集団の毛細胞の4%未満である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖した蝸牛細胞集団中の隣接する毛細胞の数は、該集団中の毛細胞の3%未満である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖した蝸牛細胞集団中の隣接する毛細胞の数は、該集団中の毛細胞の2%未満である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖した蝸牛細胞集団中の隣接する毛細胞の数は、該集団中の毛細胞の1%未満である。いくつかの態様において、該組成物は、上皮組織が、顕微鏡で観察される毛細胞の5%より多くについて隣接する毛細胞を有さないネイティブの形態に類似する、さらなる毛細胞を生じるように内耳支持細胞を増殖させる。
【0165】
いくつかの態様において、該組成物は、上皮組織が、代表的顕微鏡検査試料中の毛細胞の5%より多くについて隣接する毛細胞を有さないネイティブの形態に類似する、さらなる毛細胞を生じるように、2週齢よりも年を取った動物において内耳支持細胞を増殖させる。
【0166】
いくつかの態様において、該組成物は、代表的顕微鏡検査試料において、支持細胞とニューロンの両方に接触する5%より多くの毛細胞を生じる。
【0167】
いくつかの態様において、該組成物は、代表的顕微鏡検査試料において、5%未満の時間、他の毛細胞に隣接する毛細胞を生じる。
【0168】
一態様において、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞の数は、開始蝸牛細胞集団を本開示の組成物(例えば、有効濃度の幹細胞性誘導物質および有効濃度の分化阻害剤を含む組成物)で処理することにより、選択的に増加されて、中間蝸牛細胞集団を形成し、ここで、中間蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比は、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比を超える。増殖された蝸牛細胞集団は、例えばインビボ集団、インビトロ集団またはさらにはインビトロ外植片であり得る。かかる態様の1つにおいて、中間蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比は、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比を超える。例えば、かかる態様の1つにおいて、中間蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比は、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比を1.1倍だけ超える。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、中間蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比は、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比を1.5倍だけ超える。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、中間蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比は、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比を2倍だけ超える。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、中間蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比は、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の比を3倍だけ超える。前述の態様のそれぞれにおいて、本段落に開示される蝸牛細胞集団を増殖させる本開示の組成物の能力は、幹細胞増殖アッセイにより決定され得る。
【0169】
一態様において、蝸牛細胞集団中の幹細胞の数は、蝸牛細胞集団を本開示の組成物(例えば有効濃度の幹細胞性誘導物質および有効濃度の分化阻害剤を含む組成物)で処理することにより中間蝸牛細胞集団を形成するように増殖され、ここで、中間蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度は、開始蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度を超える。処理された蝸牛細胞集団は、例えばインビボ集団、インビトロ集団またはさらにはインビトロ外植片であり得る。かかる態様の1つにおいて、処理された蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度は、開始蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度を少なくとも1.1倍だけ超える。例えば、かかる態様の1つにおいて、処理された蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度は、開始蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度を少なくとも1.25倍だけ超える。例えば、かかる態様の1つにおいて、処理された蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度は、開始蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度を少なくとも1.5倍だけ超える。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、処理された蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度は、開始蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度を少なくとも2倍だけ超える。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、処理された蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度は、開始蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度を少なくとも3倍だけ超える。インビトロ蝸牛細胞集団は、インビボ集団よりも有意に増殖し得、例えば、特定の態様において、増殖された幹細胞のインビトロ集団中の幹細胞の細胞密度は、開始蝸牛細胞集団中の幹細胞の細胞密度よりも少なくとも4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2,000またはさらには3,000倍高くあり得る。前述の態様のそれぞれにおいて、本段落に記載される蝸牛細胞集団を増殖させる本開示の組成物の能力は、幹細胞増殖アッセイにより決定され得る。
【0170】
本開示の一局面によると、蝸牛支持細胞集団を、本開示の組成物(例えば有効濃度の幹細胞性誘導物質および有効濃度の分化阻害剤を含む組成物)で処理して、該集団のLgr5活性を増加させる。例えば、一態様において、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性を少なくとも1.2倍だけ増加および維持する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性を1.5倍だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性を、2、3、5 10、100、500、1,000、2,000またはさらには3,000倍だけ増加する能力を有する。Lgr5活性の増加は、インビボ集団についても観察され得るが、観察される増加は、いくらか小規模であり得る。例えば、一態様において、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも5%だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも10%だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも20%だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも30%だけ増加する能力を有する。前述の態様のそれぞれにおいて、Lgr5活性におけるかかる増加のための組成物の能力は、例えばインビトロLgr5
+活性アッセイにおいて示され得、インビボ集団においては、器官を単離して、免疫染色、Lgr5の内因性蛍光タンパク質発現(例えばLgr5、Sox2)、およびLgr5についてqPCRを使用した形態学的分析を実施することにより測定されるように、例えばインビボLgr5
+活性アッセイにおいて示され得る。
【0171】
該集団のLgr5活性を増加することに加えて、蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞の数は、Lgr5
+支持細胞を含む蝸牛細胞集団を(インビボまたはインビトロのいずれかで)本開示の組成物(例えば有効濃度の幹細胞性誘導物質および有効濃度の分化阻害剤を含む組成物)で処理することにより増加され得る。一般に、幹/前駆-支持細胞の細胞密度は、いくつかの機構の1つ以上を介して開始細胞集団に対して増殖され得る。例えば、かかる態様の1つにおいて、増大した幹細胞の性質(すなわち毛細胞に分化するより高い能力)を有する新たに生成されたLgr5
+支持細胞が生成され得る。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、細胞分裂によりLgr5
+娘細胞は生成されないが、既存のLgr5
+支持細胞は、毛細胞に分化するように誘導される。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、細胞分裂により娘細胞は生成されないが、Lgr5
-支持細胞がLgr5活性のより高いレベルに活性化されて、次いで活性化された支持細胞が毛細胞に分化し得る。機構には関係なく、一態様において、本開示の組成物は、インビトロで単離された蝸牛支持細胞の細胞集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を少なくとも5倍だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビトロ集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を少なくとも10倍だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビトロ集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を少なくとも100倍だけ、少なくとも500倍だけ、少なくとも1,000倍だけまたはさらには少なくとも2,000倍だけ増加する能力を有する。Lgr5
+支持細胞の細胞密度の増加はまた、インビボ集団においても観察され得るが、観察される増加は、いくらか小規模であり得る。例えば、一態様において、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を少なくとも5%だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を少なくとも10%だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を少なくとも20%だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、蝸牛支持細胞のインビボ集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を少なくとも30%だけ増加する能力を有する。インビトロ集団中のLgr5
+支持細胞におけるかかる増加のための該組成物の能力は、例えば幹細胞増殖アッセイまたは適切なインビボアッセイにおいて示され得る。一態様において、本開示の組成物は、ネイティブの形態を維持しながら、非存在または低い検出レベルのタンパク質を有する細胞中のLgr5の発現を誘導することにより、蝸牛中のLgr5
+細胞の数を増加する能力を有する。一態様において、本開示の組成物は、ネイティブの形態を維持しながら、細胞凝集を生じることなく、非存在または低い検出レベルのタンパク質を有する細胞中のLgr5の発現を誘導することにより、蝸牛中のLgr5
+細胞の数を増加する能力を有する。
【0172】
Lgr5
+支持細胞の細胞密度の増加に加えて、一態様において、本開示の組成物は、蝸牛細胞集団中のLgr5
+細胞 対 毛細胞の比を増加する能力を有する。一態様において、開始蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞の数は、開始蝸牛細胞集団を、本開示の組成物(例えば有効濃度の幹細胞性誘導物質および有効濃度の分化阻害剤を含む組成物)で処理して、増殖された細胞集団を形成することにより選択的に増殖され、ここで増加された蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞の数は、毛細胞の数と少なくとも同等である。増殖された蝸牛細胞集団は、例えばインビボ集団、インビトロ集団またはさらにはインビトロ外植片であり得る。かかる態様の1つにおいて、増殖された蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞 対 毛細胞の比は少なくとも1:1である。例えば、かかる態様の1つにおいて、増殖された蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞 対 毛細胞の比は少なくとも1.5:1である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖された蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞 対 毛細胞の比は少なくとも2:1である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖された蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞 対 毛細胞の比は少なくとも3:1である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖された蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞 対 毛細胞の比は少なくとも4:1である。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、増殖された蝸牛細胞集団中のLgr5
+支持細胞 対 毛細胞の比は少なくとも5:1である。前述の態様のそれぞれにおいて、本段落に記載されるように蝸牛細胞集団を増殖する本開示の組成物の能力は、幹細胞増殖アッセイにより測定され得る。
【0173】
特定の態様において、該組成物は、感覚上皮上の全細胞に対するLgr5
+細胞の小部分を少なくとも10%、20%、50%、100%、250% 500%、1,000%または5000%だけ増加する。
【0174】
特定の態様において、該組成物は、Lgr5
+細胞が感覚上皮、例えばコルティ器上の細胞の少なくとも10、20、30、50、70または85%になるまで、Lgr5
+細胞を増加する。
【0175】
一般に、蝸牛中の支持細胞の過剰な増殖は、好ましくは回避される。一態様において、本開示の組成物は、ネイティブの蝸牛の表面を超える新規の細胞の突出、例えば細胞凝集を生じないように蝸牛細胞集団を増殖する能力を有する。いくつかの態様において、組成物を正円窓膜上に配置した30日後に、蝸牛組織はネイティブの形態を有する。いくつかの態様において、組成物を正円窓膜上に配置した30日後に、蝸牛組織は、ネイティブの形態を有し、細胞凝集を欠く。いくつかの態様において、組成物を正円窓膜上に配置した30日後に、蝸牛組織は、ネイティブの形態を有し、コルティ器のLgr5
+細胞の少なくとも10、20、30、50、75、90、95、98またはさらには少なくとも99%は、細胞凝集の一部ではない。
【0176】
支持細胞集団、一般的にLgr5
+支持細胞の増殖に加えて、具体的に上述されるように、本開示の組成物(例えば有効濃度の幹細胞性誘導物質および有効濃度の分化阻害剤を含む組成物)は、娘細胞において、毛細胞に分化する能力を維持する能力を有する。インビボ集団において、この能力の維持は、被験体の聴力の向上により間接的に観察され得る。インビトロ集団において、この能力の維持は、開始集団に対する毛細胞の数の増加により直接観察され得るかまたはLGR5活性、SOX2活性もしくは1つ以上の本明細書の他の箇所で同定される他の幹細胞マーカーを測定することにより間接的に観察され得る。
【0177】
一態様において、一般に蝸牛支持細胞の集団または特にLgr5
+支持細胞の集団の幹細胞性を増加する組成物の能力は、Lgr5活性アッセイにより決定されるように、単離されたLgr5
+細胞のインビトロ集団のLgr5活性の増加と相関し得る。先に記すように、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、中間細胞集団中の幹細胞のLgr5活性を、開始細胞集団中の細胞のLgr5活性に対して平均で5倍だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、中間細胞集団中の幹細胞遺伝子のLgr5活性を、開始細胞集団中の細胞のLgr5活性に対して10倍増だけ加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、中間細胞集団中の幹細胞のLgr5活性を、開始細胞集団中の細胞のLgr5活性に対して100倍だけ増加する能力を有する。さらなる例によると、かかる態様の1つにおいて、該組成物は、中間細胞集団中の幹細胞のLgr5活性を、開始細胞集団中の細胞のLgr5活性に対して1000倍だけ増加する能力を有する。前述の態様のそれぞれにおいて、細胞集団中の幹細胞の活性の増加は、免疫染色または標的遺伝子の内因性蛍光タンパク質発現および画像化分析による相対強度の分析もしくはフローサイトメトリーにより、または標的幹細胞遺伝子についてのqPCRを使用して、インビトロで決定され得る。得られた幹細胞集団の同定は、任意に、幹細胞アッセイに定義されるような幹細胞マーカー発現アッセイ、コロニー形成アッセイ、自己複製アッセイおよび分化アッセイを含む幹細胞アッセイによりさらに決定され得る。
【0178】
いくつかの態様において、成体哺乳動物に適用される方法により、S期にある成体哺乳動物Lgr5
+細胞の集団が作製される。
【0179】
一態様において、組成物をマウスの正円窓に適用した後に、コルティ器の細胞集団のインビボLgr5
+活性は、該組成物に暴露されていない集団のベースラインに対して1.3x、1.5x、20xまで増加する。いくつかの態様において、組成物をマウスの正円窓に適用することで、コルティ器中の細胞についての平均インビボLgr5
+活性は、該組成物に暴露されていない集団のベースラインに対して1.3x、1.5x、20xまで増加する。
【0180】
特定の態様において、該組成物は、Lgr5
+細胞が支持細胞集団の数の少なくとも10%、7.5%、10%、100%までになるまで、Lgr5
+細胞を増加する。
【0181】
いくつかの場合、幹細胞性誘導物質はまた、分化阻害剤が有効分化阻害濃度で存在しない場合、支持細胞の毛細胞への分化を誘導し得る。増殖および分化の両方を誘導し得る幹細胞性誘導物質の例としては、GSK3ベータ阻害剤およびWntアゴニストが挙げられる。特定の態様において、幹細胞の増殖は、細胞周期または可塑性を制御するp27またはTgfベータ経路などの経路の調節因子を添加することにより増強され得る。
【0182】
いくつかの態様において、幹細胞性誘導物質は、Lgr5
+幹細胞の増殖を誘導するために使用され得る。いくつかの場合、幹細胞性誘導物質はまた、分化阻害剤が有効分化阻害濃度で存在しない場合、Lgr5+細胞の毛細胞への分化を誘導し得る。増殖および分化の両方を誘導し得る幹細胞性誘導物質の例としては、GSK3ベータ阻害剤およびWntアゴニストが挙げられる。いくつかの態様において、分化阻害剤は幹細胞性誘導物質でもある。いくつかの態様において、分化阻害剤はNotchアゴニストであり、幹細胞性誘導物質でもあり得る。いくつかの態様において、分化阻害剤は、幹細胞性誘導物質であり得るバルプロ酸である。分化阻害剤が幹細胞性誘導物質でもある場合、分化阻害剤の濃度は、分化期間の際に有効分化阻害濃度未満となるはずである。
【0183】
特定の態様において、(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤の組合せが使用され、該組み合わせは、マウスの内耳から得られたLgr5
+細胞に適用される場合、幹細胞集団を、投与工程前の幹細胞集団よりも少なくとも3倍多くに増加する能力を有する。
【0184】
特定の態様において、組成物は、蝸牛中のLgr5
+細胞のパーセンテージを5%、10%、25%、50%または80%だけ増加する能力を有する。特定の態様において、(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤の組合せが使用され、該組み合わせは、蝸牛中のLgr5
+細胞のパーセンテージを5%、10%、25%、50%または80%だけ増加する能力を有する。
【0185】
幹細胞性誘導物質
本開示の代表的GSK3-ベータ阻害剤は表1に見られる。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0186】
本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のためのGSK3-ベータ阻害剤のクラスは、限定されないが、表1のカラムAに挙げられるものを含む。本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のための具体的なGSK3-ベータ阻害剤は、限定されないが表1のカラムBに挙げられるものを含む。本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のためのWntアゴニストのクラスは、限定されないが、表2のカラムAに挙げられるものを含む。本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のための具体的なWntアゴニストは、限定されないが、表2のカラムBに挙げられるものを含む。本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のためのnotchアゴニストのクラスは、限定されないが、表3のカラムAに挙げられるものを含む。本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のための具体的なnotchアゴニストは、限定されないが、表3のカラムBに挙げられるものを含む。本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のためのHDAC阻害剤のクラスは、限定されないが、表4のカラムAに挙げられるものを含む。本明細書に開示される組成物および方法の種々の態様における使用のための具体的なHDAC阻害剤は、限定されないが、表4のカラムBに挙げられるものを含む。表1のカラムB、表2のカラムB、表3のカラムB、表4のカラムBに挙げられる全ての薬剤は、それらの誘導体または薬学的に許容され得る塩を含むことが理解される。表1のカラムA、表2のカラムA、表3のカラムA、表4のカラムAに挙げられる全てのクラスは、該クラスを含む薬剤およびそれらの誘導体または薬学的に許容され得る塩の両方を含むことが理解される。これらのクラスのそれぞれのメンバーはまた、限定されないが、付表Aの51〜55頁および付表Aの90〜102頁に記載されるものを含む。
【0187】
GSK3-ベータ阻害剤はまた、限定されないが、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を、薬学的に許容され得る濃度で阻害剤に暴露して、活性をウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、GSK3-ベータ活性を、5、10、20、30または50%より大きく低減する薬剤を含む。本明細書で使用する場合、薬学的に許容され得る濃度は、非毒性で、目的の組織に送達され得る製剤中の活性な薬剤の濃度である。特定の態様において、該組成物は、notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤と組合せて本段落に記載される条件を使用して、GSK3-ベータ活性を5、10、20、30または50%より大きく低減するGSK3-ベータ阻害剤を含む。「高度に強力なGSK3-ベータ阻害剤は、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を、薬学的に許容され得る濃度で阻害剤に暴露し、活性を、ウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、GSK3-ベータ活性を50%より大きく低減するものである。
【0188】
Wntアゴニスト
本開示の代表的なWntアゴニストは表2に見られる。
【表7】
【表8】
【0189】
Wnt-アゴニストはまた、限定されないが、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を、薬学的に許容され得る濃度で該アゴニストに暴露して、活性を、ウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、Wnt活性を5、10、20、30または50%より大きく増加する薬剤を含む。特定の態様において、該組成物は、notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤と組合せて本段落に記載される条件を使用して、Wnt活性を5、10、20、30または50%より大きく増加するWntアゴニストを含む。「高度に強力なWntアゴニストは、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を、薬学的に許容され得る濃度で該アゴニストに暴露して、活性を、ウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、Wnt活性を50%より大きく増加するものである。
【0190】
分化阻害剤
Notchアゴニスト
本開示の代表的なNotchアゴニストは表3に見られる。
【表9】
【0191】
Notch-アゴニストはまた、限定されないが、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を薬学的に許容され得る濃度で該アゴニストに暴露して、活性をウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、Notch活性を5、10、20、30または50%より大きく増加する薬剤を含む。特定の態様において、該組成物は、GSK3-ベータ阻害剤またはWntアゴニストと組合せて本段落に記載される条件を使用して、Notch活性を5、10、20、30または50%より大きく増加するNotchアゴニストを含む。「高度に強力なNotchアゴニストは、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を薬学的に許容され得る濃度で該アゴニストに暴露して、活性をウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、Notch活性を50%より大きく増加するものである。
【0192】
HDAC阻害剤
本開示の代表的なHDAC阻害剤は表4に見られる。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0193】
HDAC阻害剤はまた、限定されないが、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を該阻害剤に暴露して、活性をウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、HDAC活性を5、10、20、30または50%より大きく低減する薬剤を含む。特定の態様において、該組成物は、GSK3-ベータ阻害剤またはWntアゴニストと組合せて本段落に記載される条件を使用して、HDAC活性を5、10、20、30または50%より大きく減少するHDAC阻害剤を含む。「高度に強力なHDACアゴニストは、耳の組織から得られた耳の細胞株または一次細胞を薬学的に許容され得る濃度で該阻害剤に暴露し、活性をウエスタンブロットまたは文献中の他の標準的な方法で評価した場合、HDAC活性を50%より大きく減少するものである。
【0194】
HDAC阻害剤を評価する代表的な方法は、
【表14】
【表15】
に見られ得る。
【0195】
いくつかの態様において、水性環境において幹細胞性誘導物質に対して分化阻害剤のより速い放出を好む分化阻害剤は、幹細胞性誘導物質に対して溶解性特性を有するように選択される。いくつかの態様において、分化阻害剤は、リン酸緩衝化食塩水中で、幹細胞性誘導物質よりも5、10、50、100、500、1000または5000倍高い溶解性を有する。
【0196】
TGF-β阻害剤
特定の態様において、1つ以上のさらなる薬剤は、TGFβI型受容体阻害剤を含む。代表的なTGF-β阻害剤は表5に見られる。TGF-ベータI型受容体阻害剤としては、限定されないが、2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5 ナフチリジン(napththyridine)、[3-(ピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル(quinoyl))]-1H-ピラゾールおよび3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル)-1-フェニルチオカルバモイル-1H-ピラゾールが挙げられ、これらはCalbiochem (San Diego, Calif.)から購入され得る。他の小分子阻害剤としては、限定されないが、SB-431542 (例えばHalder et al., 2005; Neoplasia 7(5):509-521参照)、SM16 (例えばFu, K et al., 2008; Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology 28(4):665参照)およびSB-505124 (例えばDacosta Byfield, S., et al., 2004; Molecular Pharmacology 65:744-52参照)が挙げられ、とりわけ
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
が挙げられる。
【0197】
さらなる治療剤
特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、1つ以上のさらなる薬剤(例えば(i)および(ii)に加えて)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、該1つ以上のさらなる薬剤は、ROS阻害剤またはスカベンジャー(scavenger)を含む。ROSスカベンジャーとしては、限定されないが、酵素カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼおよびアスコルビン酸ペルオキシダーゼが挙げられる。さらに、ビタミンA、EおよびCは、スカベンジャー活性を有することが知られる。セレンおよびマンガンなどの無機物もROSを取り除くための効果的な化合物であり得る。
【0198】
ROS阻害剤としては、限定されないが、αリポ酸、スーパーオキシドジムスターゼ模倣物またはカタラーゼ模倣物が挙げられる。スーパーオキシドジムスターゼ模倣物またはカタラーゼ模倣物は、MnTBAP (Mn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリンクロライド)(Calbiochemにより製造)、ZnTBAP (Zn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリンクロライド)、SC-55858 (マンガン(11)ジクロロ(2R,3R,8R,9R-ビス-シクロヘキサノ-1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン)] Euk-134 (3,3'-メトキシサレン(Mn(III)) (Eukarionにより製造)、M40403 (ジクロロ[(4aR,13 aR,17aR,2l aR)-1,2,3,4,4a,5,6,12,13,13 a,14,15,16,17,17a,18,19,20,21-エイコサヒドロ-11,7-ニトリロ-7H-ジベンゾ [1,4,7,10]テトラアザシクロヘプタデシン-κNS,κN13,κN18,κN21,κN22]マンガン) (Metaphoreにより製造)、AEOL 10112、AEOL 10113およびAEOL 10150 (マンガン(III)メソテトラキス(ジ-N-エチルイミダゾール)ポルフィリン)(全てのAEOL化合物はIncara Pharmaceuticalsにより製造される)であり得る。代替的に、ROS阻害剤は、鉄キレート剤であり得る。鉄キレート剤のうち、デフェロキサミンまたはDFOは、サラセミアにおける鉄過剰の治療についてFDAに承認されているために、最も重要であり得る。また、ROS阻害剤は、鉄キレート剤の混合物で構成される組成物であり得る。
【0199】
ROS阻害剤は、放射線保護剤であり得、かかる化合物としては、例えば尿酸、ブチオニンスルホキシイミン(buthionine sulfoximine)、マレイン酸ジエチル、ビタミンE、ビタミンC、N-アセチルシステインなどのシステインまたはグルタチオン、メトロニダゾール、および例えばビタミンAなどのレチノイド酸が挙げられる。さらなるROSスカベンジャーは に見られ得る。
【0200】
特定の態様において、1つ以上のさらなる薬剤は、ビタミンCまたはその誘導体を含む。特定の態様において、1つ以上のさらなる薬剤は、TGFβI型受容体阻害剤を含む。TGF-ベータI型受容体阻害剤としては、限定されないが、2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5 ナフチリジン、[3-(ピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル(quinolyl))]-1H-ピラゾールおよび3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル)-1-フェニルチオカルバモイル-1H-ピラゾールが挙げられ、これらはCalbiochem (San Diego, Calif.)から購入され得る。他の小分子阻害剤としては、限定されないが、SB-431542 (例えばHalder et al., 2005; Neoplasia 7(5):509-521参照)、SM16 (例えばFu, K et al., 2008; Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology 28(4):665参照)およびSB-505124 (例えばDacosta Byfield, S., et al., 2004; Molecular Pharmacology 65:744-52参照)が挙げられ、とりわけ
が挙げられる。
【0201】
一態様において、ALK5阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5 ナフチリジンは、本明細書に記載される方法と一緒に使用される。この阻害剤は、本明細書においてALK5阻害剤IIとも称され、Calbiochem (カタログ番号616452; San Diego, Calif.)から市販される。一態様において、該阻害剤は、SB 431542、ALK-4、-5、-7阻害剤であり、Sigma (製品番号54317; Saint Louis, Mo.)から市販される。SB 431542はまた、以下の化学名:4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンズアミド、4-[4-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンズアミドまたは4-(5-ベン(benzol)[1,3]ジオキソール-5-イル-4-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミド水和物でも呼ばれる。
【0202】
TGF-βシグナル伝達の小分子阻害剤は、分子の基本骨格に基づいて分類され得る。例えばTGF-βシグナル伝達阻害剤は、ジヒドロピロールピラゾール (dihydropyrrlipyrazole)系骨格、イミダゾール系骨格、ピラゾロピリジン系骨格、ピラゾール系骨格、イミダゾピリジン系骨格、トリアゾール系骨格、ピリドピリミジン系骨格、ピロロピラゾール系骨格、イソチアゾール系骨格およびオキサゾール系骨格に基づき得る。
【0203】
TGF-βシグナル伝達の阻害剤は、例えばCallahan, J. F. et al., J. Med. Chem. 45, 999-1001 (2002); Sawyer, J. S. et al., J. Med. Chem. 46, 3953-3956 (20031; Gellibert, F. et al., J. Med. Chem. 47, 4494-4506 (2004); Tojo, M. et al., Cancer Sci. 96: 791-800 (2005); Valdimarsdottir, G. et al., APMIS 113, 773-389 (2005); Petersen et al. Kidney International 73, 705-715 (2008); Yingling, J. M. et al., Nature Rev. Drug Disc. 3, 1011-1022 (2004); Byfield, S. D. et al., Mol. Pharmacol., 65, 744-752 (2004); Dumont, N, et al., Cancer Cell 3, 531-536 (2003); WO公開公報2002/094833; WO公開公報2004/026865; WO公開公報2004/067530; WO公開公報209/032667; WO公開公報2004/013135; WO公開公報2003/097639; WO公開公報2007/048857; WO公開公報2007/018818; WO公開公報2006/018967; WO公開公報2005/039570; WO公開公報2000/031135; WO公開公報1999/058128; 米国特許第6,509,318号;米国特許第6,090,383号;米国特許第6,419,928号;米国特許第9,927,738号;米国特許第7,223,766号;米国特許第6,476,031号;米国特許第6,419,928号;米国特許第7,030,125号;米国特許第6,943,191号;米国特許出願公開公報2005/0245520; 米国特許出願公開公報2004/0147574; 米国特許出願公開公報2007/0066632; 米国特許出願公開公報2003/0028905; 米国特許出願公開公報2005/0032835; 米国特許出願公開公報2008/0108656; 米国特許出願公開公報2004/015781; 米国特許出願公開公報2004/0204431; 米国特許出願公開公報2006/0003929; 米国特許出願公開公報2007/0155722; 米国特許出願公開公報2004/0138188および米国特許出願公開公報2009/0036382に記載され、それらの各々の内容は全体において参照により本明細書に援用される。
【0204】
siRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのTGF-βシグナル伝達のオリゴヌクレオチド系調節因子は、米国特許第5,731,424; 米国特許第6,124,449; 米国特許公開公報第2008/0015161;2006/0229266;2004/0006030;2005/0227936および2005/0287128に記載され、それらの文献のそれぞれは、全体において参照により本明細書に援用される。他のアンチセンス核酸およびsiRNAは、当業者に公知の方法により得られ得る。
【0205】
TGF-βシグナル伝達の代表的な阻害剤としては、限定されないが、AP-12009 (TGF-β受容体II型アンチセンスオリゴヌクレオチド)、Lerdelimumab (CAT 152、TGF-β受容体II型に対する抗体) GC-1008 (ヒトTGF-βの全てのアイソフォームに対する抗体)、ID11 (マウスTGF-βの全てのアイソフォームに対する抗体)、可溶性TGF-β、可溶性TGF-β受容体II型、ジヒドロピロロイミダゾールアナログ(例えばSKF-104365)、トリアリールイミダゾールアナログ(例えばSB-202620 (4-(4-(4-フルオロフェニル)-5-(ピリジン-4-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)安息香酸)およびSB-203580 (4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール))、RL-0061425、1,5-ナフチリジンアミノチアゾールおよびピラゾール誘導体(例えば4-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-5-(1,5-ナフチリジン-2-イル)-1,3-チアゾール-2-アミンおよび2-[3-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1,5-ナフチリジン)、SB-431542 (4-(5-ベンゾ(benzol)[1,3]ジオキソール-5-イル-4-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミド)、GW788388 (4-(4-(3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-2-イル)-N-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ベンズアミド)、A-83-01 (3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド)、Decorin、Lefty 1、Lefty 2、Follistatin、Noggin、Chordin、Cerberus、Gremlin、Inhibin、BIO (6-ブロモ-インジルビン-3'-オキシム)、Smadタンパク質(例えばSmad6、Smad7)およびCystatin Cが挙げられる。
【0206】
TGF-βシグナル伝達の阻害剤としてはまた、TGF-β受容体I型を阻害する分子が挙げられる。TGF-β受容体I型の阻害剤は、Byfield, S. D., and Roberts, A. B., Trends Cell Biol. 14, 107-111 (2004); Sawyer J. S. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 14, 3581-3584 (2004); Sawyer, J. S. et al., J. Med. Chem. 46, 3953-3956 (2003); Byfield, S. D. et al., Mol. Pharmacol. 65, 744-752 (2004); Gellibert, F. et al., J. Med. Chem. 47, 4494-4506 (2004); Yingling, J. M. et al., Nature Rev. Drug Disc. 3, 1011-1022 (2004); Dumont, N, et al., Cancer Cell 3, 531-536 (2003); Tojo, M. et al., Cancer Sci. 96: 791-800 (2005); WO公開公報2004/026871; WO公開公報2004/021989; WO公開公報2004/026307; WO公開公報2000/012497; 米国特許第5,731,424; 米国特許第5,731,144; 米国特許第7,151,169; 米国特許出願公開公報2004/00038856および米国特許出願公開公報2005/0245508に記載され、それらの文献の全ての内容は、全体において本明細書に援用される。
【0207】
薬剤の組合せ
特定の態様において、該組成物は、表1のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表3のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、表1のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表4のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、表2のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表3のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、表2のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表4のカラムAのクラスの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。
【0208】
特定の態様において、該組成物は、表1のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表3のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、表1のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表4のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、表2のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表3のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、表2のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および表4のカラムBの薬剤の薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。
【0209】
特定の態様において、該組成物は、(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を組む薬剤の組合せを含み、これらの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)はそれぞれ、表1〜4から抜き出される。
【0210】
特定の態様において、該組成物は、(i)アミノピリミジン、無機原子またはチアジアゾリジンジオンから抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および(ii)表3〜4から抜き出されるnotchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)GSK3-ベータ阻害剤、WntリガンドまたはWnt関連タンパク質から抜き出されるWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表3〜4から抜き出されるnotchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)HDAC阻害剤または天然の受容体リガンドから抜き出されるNotchアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、ヒドロキサメート、脂肪酸またはベンズアミドから抜き出されるHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む薬剤の組合せを含み、これらの薬剤はそれぞれ表1〜4から抜き出される。
【0211】
特定の態様において、該組成物は、(i)CHIR99021、リチウムまたはNP031112(チデブルシブ(Tideglusib))から抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表3〜4から抜き出されるnotchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)CHIR99021、Wnt3aまたはR-spondin1から抜き出されるWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表3〜4から抜き出されるnotchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)バルプロ酸、SAHA(ボリノスタット)、Jagged 1、Delta-様またはDelta-様4から抜き出されるNotchアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、バルプロ酸、SAHA(ボリノスタット)またはツバスタチン Aから抜き出されるHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を含む薬剤の組合せを含み、これらの薬剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)はそれぞれ表1〜4から抜き出される。
【0212】
特定の態様において、該組成物は、(i)アミノピリミジン、無機原子またはチアジアゾリジンジオンから抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表3〜4から抜き出される高度に強力なnotchアゴニストおよび/または高度に強力なHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)GSK3-ベータ阻害剤、WntリガンドまたはWnt関連タンパク質から抜き出されるWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表3〜4から抜き出される高度に強力なnotchアゴニストおよび/または高度に強力なHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)HDAC阻害剤または天然の受容体リガンドから抜き出されるNotchアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出される高度に強力なGSK3-ベータ阻害剤および/または高度に強力なWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、ヒドロキサメート、脂肪酸またはベンズアミドから抜き出されるHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出される高度に強力なGSK3-ベータ阻害剤および/または高度に強力なWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。
【0213】
特定の態様において、該組成物は、(i)CHIR99021、リチウムまたはNP031112(チデグルシブ)から抜き出されるGSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表3〜4から抜き出される高度に強力なnotchアゴニストおよび/または高度に強力なHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)CHIR99021、Wnt3aまたはR-spondin1から抜き出されるWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表3〜4から抜き出される高度に強力なnotchアゴニストおよび/または高度に強力なHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、(i)バルプロ酸、SAHA (ボリノスタット)、Jagged 1、Delta-like1またはDelta-like 4から抜き出されるNotchアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出される高度に強力なGSK3-ベータ阻害剤および/または高度に強力なWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。特定の態様において、該組成物は、バルプロ酸、SAHA (ボリノスタット)またはツバスタチン Aから抜き出されるHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)表1〜2から抜き出される高度に強力なGSK3-ベータ阻害剤および/または高度に強力なWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む。
【0214】
特定の態様において、該組成物は、(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに第1の薬剤からは特有であり、(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)である第2の薬剤を含む薬剤の組合せを含む。
【0215】
特定の態様において、該組成物は、(i)高度に強力なGSK3-ベータ阻害剤および/または高度に強力なWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)高度に強力なnotchアゴニストおよび/または高度に強力なHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む薬剤の組合せを含む。特定の態様において、該組成物は、(i)高度に強力なGSK3-ベータ阻害剤および/または高度に強力なWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む薬剤の組合せを含む。特定の態様において、該組成物は、(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)ならびに(ii)高度に強力なnotchアゴニストおよび/または高度に強力なHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)を含む薬剤の組合せを含む。
【0216】
特定の態様において、該組成物は、有効幹細胞性誘導物質濃度の5、10、20、50、100、200、500、1000または5000倍の幹細胞性誘導物質を含む。いくつかの態様において、該組成物はさらに、有効分化阻害濃度の5、10、20、50、100、200、500、1000または5000倍の分化阻害剤を含む。任意に、前述の組成物のいずれかは、ROSまたはTgfベータを標的化する1つ以上の薬剤を含み得る。任意に、前述の組成物のいずれかは、1つ以上の神経栄養物質を含み得る。
【0217】
組み合わせた薬剤の送達プロフィール
いくつかの態様において、幹細胞性誘導物質を使用して、Lgr5
+幹細胞の増殖を誘導し得る。いくつかの場合、幹細胞性誘導物質はまた、分化阻害剤が有効分化阻害濃度で存在しない場合、LGR5+細胞の毛細胞への分化を誘導し得る。増殖および分化の両方を誘導し得る幹細胞性誘導物質の例としては、GSK3ベータ阻害剤およびWntアゴニストが挙げられる。いくつかの態様において、分化阻害剤は、NotchアゴニストまたはHDAC阻害剤であり得る。いくつかの態様において、有効幹細胞性誘導物質濃度および有効分化阻害濃度の分化阻害剤を有する第1の増殖期間、その後有効幹細胞性誘導物質濃度あり、有効分化阻害濃度の分化阻害剤なしの分化期間が存在し得る。いくつかの態様において、有効幹細胞性誘導物質濃度のWntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤および有効分化阻害濃度のNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤を有する第1の増殖期間、その後有効幹細胞性誘導物質濃度のWntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤ありおよび有効分化阻害濃度のNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤なしの分化期間が存在し得る。いくつかの態様において、有効幹細胞性誘導物質濃度のGSK3ベータ阻害剤および有効分化阻害濃度のHDAC阻害剤有りの第1の増殖期間、その後有効幹細胞性誘導物質濃度のGSK3ベータ阻害剤ありおよび有効分化阻害濃度のHDAC阻害剤なしの分化期間が存在し得る。
【0218】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、組成物は、所望の増殖期間を通じて、幹細胞性誘導物質の有効放出速度を維持する。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも1時間、幹細胞性誘導物質の有効放出速度を維持する。いくつかの態様において、幹細胞性誘導物質の有効放出速度の10、20、50、100、500または1000倍の幹細胞性誘導物質放出速度を、所望の増殖期間の間に有することが望ましい。
【0219】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、所望の増殖期間を通じて蝸牛中で有効幹細胞性誘導物質濃度を維持する。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、少なくとも1時間、蝸牛中で有効幹細胞性誘導物質濃度を維持する。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、少なくとも2、4、8、16、24、48、72、96または192時間、有効幹細胞性誘導物質濃度を維持する。
【0220】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、組成物は、所望の増殖期間を通じて分化阻害剤の有効放出速度を維持する。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも1時間、分化阻害剤の有効放出速度を維持する。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、少なくとも2、4、8、16、24、48、72、96または192時間、分化阻害剤の有効放出速度を維持する。
【0221】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、所望の増殖期間を通じて、蝸牛中で分化阻害剤の有効分化阻害濃度を維持する。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、少なくとも1時間、蝸牛中で、有効分化阻害濃度を維持する。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、少なくとも2、4、8、16、24、48、72、96または192時間、有効分化阻害濃度を維持する。
【0222】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、組成物は、幹細胞性誘導物質と分化阻害剤の両方を同時に放出し得る。幹細胞性誘導物質が治療による増殖のためにLgr5
+細胞標的においてNotch活性を低減する程度を、分化阻害剤が緩和することが有利であり得る。いくつかの態様において、1時間の薬剤放出量を30μlに定め、これを細胞培養中のNotch活性アッセイに添加する場合、Notch活性が、薬剤を適用していないネイティブの状態のNotch活性の>20、30、40、50、60、70、80または90である増殖期間を通じて、該組成物は、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の放出速度を有する。
【0223】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、組成物は幹細胞性誘導物質と分化阻害剤の両方を同時に放出し得る。いくつかの態様において、マウスの正円窓膜上に配置された所望の組成物は、ある量の幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を同時に放出して、薬剤を適用していないネイティブの状態のNotch活性の>20、30、40、50、60、70、80または90のNotch活性を維持する。
【0224】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、組成物は幹細胞性誘導物質と分化阻害剤の両方を同時に放出し得る。幹細胞性誘導物質が治療による増殖のためにLgr5+細胞標的においてNotch活性を低減する程度を、分化阻害剤が緩和することが有利であり得る。いくつかの態様において、薬剤の放出量を1時間で30μlに定め、これを細胞培養中のNotch活性アッセイに添加する場合、Notch活性は、組成物が分化阻害剤を含まずに同量の幹細胞性誘導物質を含む場合に達成されるものと同程度のNotch活性の>2、3、4、5、10、20、50、100、500、100xである増殖期間を通じて、該組成物は幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の放出速度を有する。
【0225】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96または192時間である。いくつかの態様において、組成物は、幹細胞性誘導物質と分化阻害剤の両方を同時に放出し得る。幹細胞性誘導物質が治療による増殖のためにLgr5
+細胞標的においてNotch活性を低減する程度を、分化阻害剤が緩和することが有利であり得る。いくつかの態様において、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を含む組成物をマウスの正円窓膜上に配置した場合、蝸牛中のLgr5
+細胞のNotch活性は、組成物が分化阻害剤を含まずに、同量の幹細胞性誘導物質を含む場合に達成されるNotch活性の>2、3、4、5、10、20、50、100、500、100xである。
【0226】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96日である。いくつかの態様において、所望の増殖期間の任意の時点で、組成物は、分化阻害剤の有効放出速度を達成しない。いくつかの態様において、1日より長い期間、組成物は、分化阻害剤の有効放出速度を達成しない。いくつかの態様において、少なくとも2、4、8、16、24、48、72または96日間、組成物は分化阻害剤の有効放出速度を達成しない。
【0227】
いくつかの態様において、所望の増殖期間は、1、2、4、8、16、24、48、72、96日である。いくつかの態様において、所望の分化期間の任意の時点で、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、分化阻害剤の有効分化阻害濃度を維持しない。いくつかの態様において、1日より長い期間、マウスの正円窓膜上に配置された組成物は、有効分化阻害濃度を維持しない。いくつかの態様において、少なくとも2、4、8、16、24、48、72または96日間、組成物は、有効分化阻害濃度を維持しない。
【0228】
いくつかの態様において、分化阻害剤よりも長期にわたり、幹細胞性誘導物質を放出することが望ましい。いくつかの態様において、幹細胞性誘導物質の平均放出時間は、分化阻害剤の平均放出時間よりも2、4、8、16または32倍長い。
【0229】
特定の態様において、幹細胞集団は支持細胞を含む。特定の態様において、該支持細胞はLgr5
+細胞である。特定の態様において、該幹細胞集団は新生児(post-natal)の細胞を含む。特定の態様において、毛細胞は内耳毛細胞である。特定の態様において、毛細胞は外耳毛細胞である。
【0230】
特定の態様において、幹細胞は前駆細胞を含む。
【0231】
特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団にHDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、合成分子を含むnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、バルプロ酸(VPA)(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばVPAはHDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストである)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。
【0232】
特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団にGSK3-ベータ阻害剤でもあるWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、合成分子を含むWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(たとえばCHIR99021はGSK3-ベータ阻害剤である)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。
【0233】
特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、notch阻害剤を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、notch阻害剤は、DAPT、LY411575、MDL-28170、化合物E、RO4929097;DAPT (N-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル]グリシン-1,1-ジメチルエチルエステル); L- 685458 ((5S)-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)ヒドロキシ-(2R)ベンジルヘキサノイル)-L-leu-L-phe-アミド); BMS-708163 (Avagacestat); BMS-299897 (2-[(1R)-1-[[(4-クロロフェニル)スルホニル](2,5-ジフルオロフェニル)アミノ]エチル-5-フルオロベンゼンブタン酸); M -0752; YO-01027; MDL28170 (Sigma); LY41 1575 (N-2((2S)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシエタノイル)-N1-((7S)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,d]アゼピン-7-イル)-1-アラニンアミド); ELN-46719 (LY41 1575の2-ヒドロキシ-吉草酸アミドアナログ; PF-03084014 ((S)-2-((S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-3-イルアミノ)-N-(1-(2-メチル-1-(ネオペンチルアミノ)プロパン-2-イル)-1H-イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド); 化合物E ((2S)-2-{[(3,5-ジフルオロ(Difluro)フェニル)アセチル]アミノ}-N-[(3S)-1-メチル-2-オキソ-5-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロパンアミド; およびSemagacestat (LY450139; (2S)-2-ヒドロキシ-3- メチル-N-((1S)-1-メチル-2-{[(1S)-3-メチル-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-3-ベンゾアゼピン-1-イル]アミノ}-2-オキソエチル)ブタンアミド)、またはその薬学的に許容され得る塩を含む(たとえば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))。
【0234】
特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に:(i)CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))および(ii)VPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えば(i)はCHIR99021を含み、(ii)はVPAを含む)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程はさらに、幹細胞集団にDAPT(例えばDAPTはnotch阻害剤である)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。
【0235】
特定の態様において、投与工程は、耳への(例えば経鼓膜的)1回以上の注射を実施することにより行われる。特定の態様において、該1回以上の注射は、中耳へのものである。特定の態様において、該1回以上の注射は内耳へのものである。特定の態様において、該1回以上の注射を実施することは、鼓膜および/または周囲組織を麻酔すること、針を鼓膜から中耳に入れることならびに(i)および(ii)の1つまたは両方を注射することを含む。
【0236】
特定の態様において、投与工程は、notch アゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を、拍動性(pulsatile)の様式で投与すること、およびGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストを持続的な様式で投与することを含む。特定の態様において、投与される製剤は滅菌性である。特定の態様において、投与される製剤は発熱原非含有である。特定の態様において、付表21〜36頁に記載されるように、薬学的に許容され得る製剤が投与される。特定の態様において、該製剤は、付表21〜36頁に記載されるように、薬学的に許容され得る製剤中で投与される(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤の組合せである。
【0237】
特定の態様において、該幹細胞集団はインビボ被験体のものであり、該方法は、聴覚障害および/または前庭機能障害のための治療である(例えば幹細胞の増殖された集団からの内耳毛細胞の生成により聴覚障害の部分的もしくは完全な回復および/または前庭機能障害の改善が生じる)。特定の態様において、幹細胞集団は、インビボ被験体のものであり、該方法は、(例えば、該薬物の用量制限耳毒性の低減または排除のために)被験体についての薬物の公知の安全最大用量よりも高い濃度(例えば、該方法により生じる内耳毛細胞の生成を欠く状況で送達される場合は公知の安全最大用量)で、薬物を被験体に送達すること(例えば聴覚障害および/または前庭機能障害に関連のない疾患および/または障害の治療のため)をさらに含む。
【0238】
特定の態様において、該方法はさらに、生成される内耳毛細胞を使用したハイスループットスクリーニングを実施することを含む。特定の態様において、該方法は、生成される内耳毛細胞を使用して、分子の、内耳毛細胞に対する毒性をスクリーニングすることを含む。特定の態様において、該方法は、生成される内耳毛細胞を使用して、分子が、内耳毛細胞(例えば前記分子に暴露された内耳毛細胞)の生存を向上する能力をスクリーニングすることを含む。
【0239】
別の局面において、本開示は、幹細胞の増殖された集団を作製する方法に関し、該方法は、幹細胞集団(例えばインビトロ、エキソビボ、またはインビボ試料/被験体のもの)に、(i)および(ii):(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤の両方を投与するかまたは投与されるようにすることを含み、それにより幹細胞集団中の幹細胞が増殖され、増殖された幹細胞の集団が生じる。特定の態様において、該幹細胞集団はLgr5
+細胞を含む。特定の態様において、該幹細胞集団は新生児幹細胞を含む。特定の態様において、該幹細胞集団は上皮幹細胞を含む。特定の態様において、幹細胞は前駆細胞を含む。
【0240】
特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、HDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、合成分子を含むnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、VPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばVPAは、HDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストである)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。
【0241】
特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、GSK3-ベータ阻害剤でもあるWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、合成分子を含むWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、幹細胞集団に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばCHIR99021はGSK3ベータ阻害剤)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。
【0242】
特定の態様において、投与工程は耳への(例えば経鼓膜的に中耳および/または内耳に)1回以上の注射を実施することにより行われる。
【0243】
特定の態様において、投与工程は、notch アゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を、拍動性の様式で投与することならびにGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストを持続的な様式で投与することを含む。
【0244】
特定の態様において、幹細胞は内耳幹細胞および/または支持細胞である。
【0245】
特定の態様において、該方法はさらに、生成された増殖された幹細胞の集団を使用してハイスループットスクリーニングを実施することを含む。特定の態様において、該方法はさらに、生成された幹細胞を使用して、幹細胞および/またはその子孫細胞についての分子の毒性をスクリーニングすることを含む。特定の態様において、該方法は、生成された幹細胞を使用して、幹細胞および/またはその子孫細胞の生存を分子が向上させる能力をスクリーニングすることを含む。
【0246】
別の局面において、本開示は、聴覚障害および/または前庭機能障害を有するか、または発症するリスクを有する被験体を治療する方法に関し、該方法は、聴覚障害および/または前庭機能障害を経験したかまたは発症するリスクを有する被験体を同定する工程、該被験体に、(i)および(ii):(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤の両方を投与するかまたは投与されるようにする工程を含み、それにより、該被験体における聴覚障害および/または前庭機能障害を治療または予防する。
【0247】
特定の態様において、該幹細胞集団はLgr5
+細胞を含む。特定の態様において、該幹細胞集団は新生児の細胞を含む。特定の態様において、該幹細胞集団は上皮幹細胞を含む。特定の態様において、幹細胞は前駆細胞を含む。
【0248】
特定の態様において、投与工程は、被験体に、HDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、被験体に、合成分子を含むnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、被験体に、VPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばVPAは HDAC阻害剤でもあるnotchアゴニスト)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。
【0249】
特定の態様において、投与工程は、被験体に、GSK3-ベータ阻害剤でもあるWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、被験体に、合成分子を含むWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む。特定の態様において、投与工程は、被験体に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばCHIR99021はGSK3-ベータ阻害剤である)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む。
【0250】
特定の態様において、投与工程は、耳に(例えば中耳および/または内耳に経鼓膜的に)1回以上の注射を実施することにより行われる。
【0251】
特定の態様において、該方法は、拍動性の様式でnotchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を投与すること、ならびに持続性の様式でGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストを投与することを含む。
【0252】
別の局面において、本開示は、(a)1つ以上の組成物の組、該組は、(i)および(ii):(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストならびに(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を含む、該1つ以上の組成物のそれぞれは、薬学的に許容され得る担体中に提供される、ならびに(b)該1つ以上の組成物の組を使用して内耳障害を治療するための指示書を含む、キットに関する。
【0253】
特定の態様において、1つ以上の組成物の組はまた、TGFβ阻害剤を含む。特定の態様において、該1つ以上の組成物の組はまた、ROSスカベンジャーを含む。特定の態様において、ROSスカベンジャーはビタミンCまたはその誘導体である。特定の態様において、該1つ以上の組成物の組は、(例えばシリンジにより) 注射され得る形態である。特定の態様において、該1つ以上の組成物の組は、中耳に注射され得る形態である。
【0254】
別の局面において、本開示は、凍結乾燥形態のGSK3-ベータ阻害剤およびnotchアゴニストを含む医薬組成物に関する。
【0255】
別の局面において、本開示は、水和形態のGSK3-ベータ阻害剤およびnotchアゴニストを含む医薬組成物に関する。
【0256】
特定の態様において、GSK3-ベータ阻害剤はCHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))である。特定の態様において、notchアゴニストはVPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))である。
【0257】
別の局面において、本開示は、内耳毛細胞を生成する方法に関し、該方法は、開始幹細胞集団(例えばインビトロ、エキソビボまたはインビボの試料/被験体のもの)中で幹細胞を増殖させる工程、増殖された幹細胞の集団を得る工程(例えば該増殖された集団は、開始幹細胞集団よりも少なくとも1.25、1.5、1.75、2、3、5、10または20倍多くなるように);および該増殖された幹細胞の集団をGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、および任意にnotch阻害剤に暴露して、それにより該増殖された幹細胞の集団からの内耳毛細胞の生成を容易にする工程を含む。
【0258】
別の局面において、本開示は、内耳毛細胞を生成する方法に関し、該方法は、被験体の内耳中の細胞集団に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))を投与して、それにより内耳毛細胞の生成を容易にする工程を含む。
【0259】
別の局面において、本開示は、内耳毛細胞を生成する方法に関し、該方法は、開始集団中の新生児LGR5+細胞(例えばインビトロ、エキソビボまたはインビボ試料/被験体のもの)を増殖させる工程、増殖されたLGR5+細胞の集団を得る工程(例えば該増殖された集団は、開始幹細胞集団よりも少なくとも1.25、1.5、1.75、2、3、5、10または20倍多くなるように)を含み、前記増殖されたLGR5+細胞の集団は、内耳毛細胞の生成を生じる。特定の態様において、幹細胞は前駆細胞を含む。
【0260】
別の局面において、本開示は疾患または障害を治療する方法に関し、該方法は、被験体の開始集団中の新生児Lgr5
+上皮細胞(インビボ)を増殖させる工程、増殖されたLgr5+上皮細胞の集団を得る工程(例えば該増殖された集団は、開始新生児Lgr5
+上皮細胞集団よりも少なくとも1.25、1.5、1.75、2、3、5、10または20倍多くなるように)を含む。
【0261】
いくつかの態様において、Lgr5
+細胞は、毛細胞に分化される。特定の態様において、分化は、notch阻害剤の使用により誘導される。Notch経路制御因子としては、限定されないが、参照69に挙げられるかまたは米国特許第8,377,886号(その全体において参照により本明細書に援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0262】
RO4929097;DAPT(N-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル]グリシン-1,1-ジメチルエチルエステル);L-685458 ((5S)-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)ヒドロキシ-(2R)ベンジルヘキサノイル)-L-leu-L-phe-アミド);BMS-708163 (Avagacestat);BMS-299897 (2-[(1R)-1-[[(4-クロロフェニル)スルホニル](2,5-ジフルオロフェニル)アミノ]エチル-5-フルオロベンゼンブタン酸);M-0752;YO-01027;MDL28170 (Sigma);LY41 1575 (N-2((2S)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシエタノイル)-N1-((7S)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,d]アゼピン-7-イル)-1-アラニンアミド);ELN-46719 (LY41 1575の2-ヒドロキシ-吉草酸アミドアナログ;PF-03084014 ((S)-2-((S)-5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-3-イルアミノ)-N-(1-(2-メチル-1-(ネオペンチルアミノ)プロパン-2-イル)-1H-イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド);化合物E ((2S)-2-{[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]アミノ}-N-[(3S)-1-メチル-2-オキソ-5-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロパンアミド;およびSemagacestat (LY450139;(2S)-2-ヒドロキシ-3-メチル-N-((1S)-1-メチル-2-{[(1S)-3-メチル-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-3-ベンズアゼピン-1-イル]アミノ}-2-オキソエチル)ブタンアミド)、またはその薬学的に許容され得る塩。
【0263】
投与
正円窓の膜は、内耳空間に対する生物学的障壁であり、聴覚損傷の局所治療のための大きな障害となる。投与される薬物は、内耳空間に到達するためのこの膜を越えなければならない。薬物は、正円窓膜に対して操作的(例えば鼓膜を通過する注射)に局所に配置され得、次いで正円窓膜を貫通し得る。正円窓を貫通する物質は、典型的に外リンパに分散して、毛細胞および支持細胞に到達する。
【0264】
特定の態様において、薬物を正円窓膜に局所的に投与するように医薬製剤は適合される。医薬製剤はまた、本明細書に記載される薬剤の正円窓膜を介した通過を支持する膜貫通増強剤を含み得る。したがって、液体、ゲルまたは泡の製剤が使用され得る。有効成分を経口的に適用することまたは送達アプローチの組合せを使用することも可能である。
【0265】
耳への薬物の鼓膜内(IT)送達は、臨床および研究目的に使用されることが増えつつある。いくつかのグループでは、マイクロカテーテルおよびマイクロガーゼを使用して、持続的な様式で薬物を適用しているが、大部分は、単回または反復IT注射(2週間までの間に8回までの注射)として薬物を適用している8。
【0266】
鼓膜内に適用される薬物は、主に正円窓(RW)膜を通過して内耳の液体に進入すると考えられる。計算により、耳に進入する薬物の量および耳の長さに沿った薬物の分散の両方を制御する主要な因子は、中耳空間の薬物残存の持続時間であることが示される。数時間の水溶液の単回適用、「1回(one-shot)」適用または複数の適用は、蝸牛の長さに沿って適用される物質の急な薬物勾配、および続いて薬物が耳中に分散されるので蝸牛の基底回転における濃度の急速な降下を生じる。
【0267】
他の注射アプローチとしては、浸透圧ポンプによるもの、または埋め込まれた生体物質との組合せによるもの、およびより好ましくは注射もしくは注入によるものが挙げられる。薬物の放出速度および分散を制御するのに役立ち得る生体材料としては、ヒドロゲル材料、分解性材料が挙げられる。最も好ましく使用される材料の1つの部類としては、インサイチュゲル化材料が挙げられる。これらの文献に記載される全ての有力な材料および方法論は、参照により本明細書に含まれる
11、13〜58。他の材料としてはコラーゲンまたはフィブリン、ゼラチンおよび脱セルロース化組織を含む他の天然材料が挙げられる。ゲルフォームも適切であり得る。
【0268】
送達はまた、限定されないが貫通増強剤などの送達される組成物に添加される薬剤を含む別の手段によっても増強され得るか、または超音波、エレクトロポレーションまたは高速ジェットを介したデバイスにより増強され得る。
【0269】
本明細書に記載される方法は、PCT出願番号WO2012103012 A1に記載される細胞型を含む、当業者に公知の種々の方法を使用して製造され得る内耳細胞型にも使用される。
【0270】
ヒト治療および獣医学的治療に関して、投与される特定の薬剤(1つまたは複数)の量は、治療される障害および該障害の重症度;使用される具体的な薬剤(1つまたは複数)の活性;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;使用される具体的な薬剤(1つまたは複数)の投与の時間、投与の経路および排出の速度;治療の継続時間;使用される具体的な薬剤(1つまたは複数)と併用されるまたは同時に使用される薬物;指示する医師または獣医師の判断;ならびに医学および獣医学の分野で公知の因子を含む種々の因子に依存し得る。
【0271】
本明細書に記載される薬剤は、治療上有効な量で、治療を必要とする被験体に投与され得る。本明細書に記載される組成物の投与は、適切な投与経路のいずれか、特に鼓膜内投与によるものであり得る。他の経路としては、摂取、または代替的に非経口、例えば静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋内、鼻腔内、皮下、舌下、経皮、または吸入もしくは通気により、または耳道および鼓膜の皮膚を通過する吸収のための耳点滴注入による局所が挙げられる。かかる投与は、単回または複数回の経口用量、所定の数の耳滴、またはボーラス注射、複数注射、または短期間もしくは長期間の注入によるものであり得る。埋め込み可能デバイス(例えば埋め込み可能注入ポンプ)も、特定の製剤の当量または変化用量の経時的な周期的非経口送達のために使用され得る。かかる非経口投与のために、化合物は好ましくは、水もしくは別の適切な溶媒または溶媒の混合物中で滅菌溶液として製剤化される。該溶液は、血液、酢酸、クエン酸および/またはリン酸などの緩衝化剤およびそれらのナトリウム塩ならびに保存剤と等張の溶液を作製するために、塩、糖(特にグルコースまたはマンニトール)などの他の物質を含み得る。適切、および好ましくは滅菌、非経口製剤の調製は、上述の「組成物」の項目に詳細に記載される。
【0272】
本明細書に記載される組成物は、組成物を内耳に送達するのに十分ないくつかの方法により投与され得る。組成物を内耳に送達することは、組成物が正円窓を通過して内耳に分散するような中耳への組成物の投与、および正円窓膜を通過する直接注射による内耳への組成物の投与を含む。かかる方法としては、限定されないが、経鼓膜ガーゼもしくはカテーテルによる耳への投与、または例えば耳内、経鼓膜もしくは蝸牛内の注射による非経口投与が挙げられる。
【0273】
特定の態様において、本開示の組成物および製剤は局所投与され、それらが全身に投与されないことを意味する。
【0274】
一態様において、シリンジおよび針装置を使用して、耳への投与により組成物を被験体に投与する。鼓膜に穴を開けるために適切な大きさの針を使用し、該組成物を含むガーゼまたはカテーテルを、穴の開いた鼓膜を通して被験体の中耳に挿入する。該デバイスは正円窓と接触するかまたは正円窓と直に隣接するように挿入され得る。耳への投与に使用される代表的なデバイスとしては、限定されないが、経鼓膜ガーゼ、経鼓膜カテーテル、正円窓マイクロカテーテル(医薬を正円窓に送達する小カテーテル)およびSilverstein Microwicks
TM (被験体または医療専門家による調節が可能なチューブから正円窓まで届く「ガーゼ」を備えた小さなチューブ)が挙げられる。
【0275】
別の態様において、シリンジおよび針装置を使用して、経鼓膜注射、鼓膜の後ろから中耳および/または内耳中への注射により組成物を被験体に投与する。該製剤は、経鼓膜注射により正円窓膜に直接投与され得るか、または蝸牛内注射により蝸牛に直接もしくは前庭内注射により前庭器官に直接投与され得る。
【0276】
いくつかの態様において、送達デバイスは、組成物の中耳および/または内耳への投与のために設計される装置である。例示のみのために、GYRUS Medical Gmbhは視覚化および正円窓ニッチへの薬物送達のためのマイクロオトスコープを提供し、Arenbergは、米国特許第5,421,818;5,474,529および5,476,446(それぞれはそのような開示について参照により本明細書に援用される)に内耳構造に液体を送達するための医療的治療デバイスを記載している。米国特許出願番号08/874,208(そのような開示について参照により本明細書に援用される)には、組成物を内耳に送達するための液体輸送導管を埋め込むための外科的方法が記載される。米国特許出願公開公報2007/0167918(そのような開示について参照により本明細書に援用される)にはさらに、経鼓膜的液体サンプリングおよび医薬適用のための組み合わせた耳の吸引器および医薬ディスペンサーが記載される。
【0277】
いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、1回の組成物の投与を必要とする被験体に投与される。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、1回より多くの組成物の投与を必要とする被験体に投与される。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物の最初の投与後に、本明細書に開示される組成物の第2、第3、第4または第5の投与が続く。
【0278】
組成物の投与を必要とする被験体への組成物の投与の回数は、医療専門家の決定、障害、障害の重症度および製剤に対する被験体の応答に依存する。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、緩やかな急性症状を有する組成物の投与を必要とする被験体に1回投与される。いくつかの態様において、本明細書に開示される組成物は、中程度または重度の急性症状を有する組成物の投与を必要とする被験体に1回より多く投与される。被験体の症状が改善しない場合は、医師の決定に基づいて、被験体の疾患の症状もしくは状態を緩和またはそうでなければ制御もしくは制限するために、組成物を慢性的に、すなわち被験体の寿命の期間を含む延長された期間にわたり投与し得る。
【0279】
被験体の状態が改善する場合は、医師の決定に基づいて、組成物は、連続して投与され得るか、代替的に投与される薬物の用量は、特定の時間の長さにわたり(すなわち「薬物休止日」)、一時的に低減され得るかまたは一時的に中断され得る。薬物休止日の長さは、例示のみのために2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日および365日を含み、2日〜1年の間で変動する。薬物休止日の間の用量低減は、例示のみのために10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および100%を含み10%〜100%であり得る。
【0280】
被験体の聴力および/またはバランスが改善すると、必要な場合は維持用量が投与され得る。続いて、投与の用量もしくは頻度またはその両方は、症状に応じて、改善された疾患、症状または状態が維持されるレベルまで、必要に応じて低減される。特定の態様において、被験体は、症状の任意の再発に基づいて、断続的な長期間の治療を必要とする。
【0281】
製剤
本明細書に記載される生物学的に活性な組成物(しばしば本明細書において「生物学的に活性な薬剤」または単に「薬剤」として称される)は、細胞のインビトロ集団またはインビボ集団への所望の投与経路、例えば経鼓膜注射、経鼓膜ガーゼおよびカテーテルならびに注射可能デポーに適切な任意の様式で調製され得る。典型的に、かかる製剤は、任意の生理学的に許容され得る担体、希釈剤および/または賦形剤と共に、遊離酸形態、遊離塩基形態、酸付加塩、塩基付加塩、それらの他の誘導体(それらのプロドラッグまたは溶媒和物など)、ラセミ化合物、光学活性体、または互変異性体を含む、全ての生理学的に許容され得る形態の生物学的に活性な組成物を含む。
【0282】
ドラシェ、カプセル剤、丸剤および粒剤などの本明細書に記載される組成物の固形製剤は、腸溶性コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよびシェルと共に、任意に評点(scored)または調製し得る。固形剤型はまた、イオンチャンネル調節化合物の遅延放出または制御放出を提供するように調製され得る。したがって、固形製剤は、限定されないが、異なる割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフィアを含む、イオンチャンネル調節化合物の所望の放出プロフィールを提供し得る任意の材料を含み得る。
【0283】
薬学的に許容され得る担体としては、限定されないが、水、エタノール、石油、動物油、植物油または合成油を含む、ラッカセイ、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油等の油、メチルセルロース、カラギーナンなどの賦形剤等が挙げられ得る。
【0284】
液体投与製剤としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。また、液体投与製剤は、限定されないが、水または他の溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの可溶化剤および乳化剤;油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油およびゴマ油);グリセロール;テトラヒドロフリルアルコール;ポリエチレングリコール;およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含む当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。
【0285】
懸濁製剤としては、限定されず、エトキシル化イソステアリルアルコール;ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル;微結晶セルロース;アルミニウムメタヒドロキシド;ベントナイト;寒天;トラガカント;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0286】
イオンチャンネル調節化合物の液体、懸濁物および他の製剤の適切な流動性は、レシチンなどのコーティング物質の使用により;分散剤の場合は必要な粒径の維持により;または界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0287】
製剤はまた、微生物汚染の予防のために抗汚染剤を含み得る。抗汚染剤としては、限定されず、抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、抗生物質等が挙げられ得る。
【0288】
製剤はまた、例えば細菌保持フィルターによる濾過により、または滅菌水もしくはいくつかの他の滅菌培地に溶解され得る滅菌固形製剤の形態の滅菌剤を製剤の使用の直前に組み込むことにより、滅菌され得る。
【0289】
製剤はまた、内毒素非含有であり得る。本明細書で使用する場合、用語「内毒素非含有」は、最大でも痕跡量(すなわち被験体に対して有害な生理学的効果を有さない量)の内毒素、および好ましくは検出できない量の内毒素を含む組成物または製剤をいう。「実質的に内毒素を含まない」は、生物製剤についてFDAに許容される用、すなわち、平均70kgのヒトについて細胞の合計用量当たり350EUである1日当たり5EU/体重kgの合計内毒素、よりも少ない細胞の用量当たりの内毒素が存在することを意味する。一態様において、用語「内毒素非含有」は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%内毒素非含有である組成物または製剤をいう。内毒素は、特定の細菌、典型的にはグラム陰性細菌に関連のある毒素であるが、内毒素は、リステリア菌などのグラム陽性細菌に見られ得る。最も一般的な内毒素は種々のグラム陰性細菌の外膜に見られるリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)であり、疾患を引き起こすこれらの細菌の能力において中心的な病理学的特徴を示す。ヒトにおける少量の内毒素は、発熱、血圧の低下、ならびに炎症および凝固の活性化、特に有害な生理学的効果を生じ得る。そのため、少量であってもヒトに有害な効果を引き起こすことがあるので、ほとんどまたは全ての内毒素の痕跡を、薬物製品容器から除去することがしばしば望ましい。
【0290】
本明細書に記載される医薬組成物は、該医薬組成物に含まれる有効成分が、医薬組成物の被験体への投与の際に生体利用可能となるように調製される。例えば、本明細書に記載される医薬組成物は、Notchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーターおよび/または小分子と、適切な薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を合わせることにより調製され得、経鼓膜ガーゼまたはカテーテルによる耳への投与、または例えば耳内、経鼓膜もしくは蝸牛内注射による非経口投与に適合される製剤を含む、固形、半固形、液体、ゲルおよびマイクロスフィア中で製剤に調製され得る。しかしながら、ある態様において、主題の化合物は単に、滅菌水に溶解または懸濁され得る。
【0291】
コーティングされた、ゲル化されたまたは封入されたNotchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーター、あるいは誘導体および/または小分子の製剤はまた、拍動性、持続性または延長された放出を送達するように調製され得る。例えば、拍動性放出の一方法は、薬剤または誘導体および/または小分子のコーティングを多層にすること、あるいは該薬剤誘導体および/または小分子を異なる放出時間を有する異なる製剤の領域に組み込むことにより達成され得る。
【0292】
注射可能デポー製剤は、該組成物のマイクロカプセル化マトリックスを、生分解性ポリマー中に形成することにより作製され得る。生分解性ポリマーの例としては、限定されないが、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられ得る。組成物 対 ポリマーの比および使用される具体的なポリマーの性質は、Notchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーター、あるいは該組成物由来の誘導体および/または小分子の放出の速度に影響し得る。デポー注射可能性剤は、薬物をリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製され得る。
【0293】
医薬組成物はさらに、組成物の有効成分のバイオアベイラビリティを高める1つ以上の成分、例えば浸透促進剤、安定化剤、ならびに組成物中のNotchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーター誘導体および/または小分子の遅延放出または制御放出を提供する1つ以上の成分、例えば生体適合性ポリマーおよび/またはゲルを含み得る。
【0294】
特定の態様において、浸透促進剤を含む組成物は、中耳と内耳を分離する生物学的障壁、例えば正円窓を通過する組成物の送達を容易にし、それにより治療有効量の組成物を内耳に効率的に送達する。蝸牛、コルティ器および/または前庭器官への効果的な送達は、本明細書に記載される組成物で治療されるかまたは接触される場合に感覚毛細胞の再生を促進する支持細胞をこれらの組織が有する(host)ために望ましい。
【0295】
「浸透促進剤」または「透過性増強剤」としては、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール(グリセリン)、マルチトール、ソルビトール等のポリオール;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アゾン(azone)、塩化ベンザルコニウム(ADBAC)、塩化セチルペリジウム、臭化セチルメチルアンモニア、硫酸デキストラン、ラウリン酸、メントール、サリチル酸メトキシ、オレイン酸、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート80、グリコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシド、デオキシコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、およびラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス-9、塩化セチルピリジニウムおよびポリオキシエチレンモノアルキルエーテルなどの界面活性剤、サリチル酸ナトリウムおよびサリチル酸メトキシなどの安息香酸、ラウリン酸(lauiic acid)、オレイン酸、ウンデカン酸およびオレイン酸メチルなどの脂肪酸、オクタノールおよびノナノールなどの脂肪アルコール、ラウロカプラム(laurocapram)、シクロデキストリン、チモール、リモネン、尿素、キトサン、ならびに他の天然および合成ポリマーが挙げられる。
【0296】
他の浸透促進剤としては、限定されないが、米国特許出願公開公報US20110166060に記載されるものが挙げられる。
【0297】
本明細書に記載される溶液中の含有のための適切なポリオールとしては、グリセロール、およびソルビトール、マンニトールまたはキシリトールなどの糖アルコール、ポリエチレングリコールならびにそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの態様において、組成物はさらに保存剤を含む。塩化ベンザルコニウムおよびエデト酸二ナトリウム(EDTA)などの受容される保存剤が、組成物の重量に対して約0.0001〜0.1%の有効な抗菌作用について充分な濃度で本明細書に記載される組成物に含まれる。
【0298】
特定の態様において、本開示の組成物はまた、インビボでの組成物の治療寿命を高めるための安定化剤を含む。代表的な安定化剤としては、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ヒドロカーボン、疎水性ポリマー、湿度吸収ポリマーおよびそれらの組合せが挙げられる。さらなる態様において、選択される安定化剤は、製剤の疎水性度を変化し(例えばオレイン酸、ワックス)、または製剤中の種々の成分の混合を向上し(例えばエタノール)、製剤中の湿度レベルに影響し(例えばPVPまたはポリビニルピロリドン)、相の移動度に影響し(長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、エーテル、アミド等またはそれらの混合物;ワックスなどの室温より高い融点を有する物質)、および/または製剤と封入物質の相溶性を向上する(例えばオレイン酸またはワックス)。他の態様において、安定化剤は、Notchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーター誘導体ならびに小分子の組成物中での分解を阻害するのに十分な量で存在する。かかる安定化剤の例としては、限定されないが、(a)約0.5%>〜約2%w/vグリセロール、(b)約0.1%〜約1%w/vメチオニン、(c)約0.1%〜約2%w/vモノチオグリセロール、(d)約1mM〜約10mM EDTA、(e)約0.01%〜約2%w/vアスコルビン酸、(f)0.003%〜約0.02%w/vポリソルベート80、(g)0.001%〜約0.05%w/vポリソルベート20、(h)アルギニン、(i) ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ポリ硫酸ペントサンおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの二価のカチオン;または(n)それらの組合せが挙げられる。
【0299】
特定の態様において、本開示の組成物は、制御放出製剤として調製される。一般に、制御放出薬物製剤は、インビボにおける放出の部位および放出の時間に関して、薬物の放出に制御を与える。制御放出は、即時放出、遅延放出、持続放出、延長放出、可変放出、拍動性放出および二様式放出を含む。
【0300】
制御放出により付与される利点としては、少ない投与頻度;より効果的な薬物利用;インビボにおける、送達デバイスの設置による局所的な薬物送達または治療部位での調製;ならびに単一用量単位による、それぞれ特有の放出プロフィールを有する2つ以上の異なる薬物の投与および放出、または異なる速度もしくは異なる持続時間での同じ薬物の放出の機会が挙げられる。
【0301】
制御放出製剤は、該組成物と、生体適合性ポリマー、粘着性薬剤、ゲル、ペイント、泡、キセロゲル、微粒子、ヒドロゲル、ナノカプセル、および熱可逆的ゲル、またはそれらの組合せを調製することにより作製され得る。特定の態様において、ポリマーまたはゲルは生分解性である。放出特性はしばしば、該組成物を調製するために使用されるポリマーまたはゲルの特定の組合せにより制御される。これらの方法は当該技術分野で周知である。
【0302】
本開示の生物学的に活性な組成物を調製するのに適した代表的なポリマーとしては、限定されないが、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン(ポリエチレングリコール(PEG))、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、多糖類、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、ならびにそれらの混和物、混合物またはコポリマーが挙げられる。
【0303】
一態様において、本開示の生物学的に活性な組成物は、ABA型もしくはBAB型の三ブロックコポリマーまたはそれらの混合物で調製され、ここでAブロックは、比較的疎水性であり、生分解性ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、Bブロックは、比較的親水性であり、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。生分解性で疎水性のAポリマーブロックは、ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、ここでポリエステルは、D,L-ラクチド、D-ラクチド、L-ラクチド、D,L-乳酸、D-乳酸、L-乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε-カプロラクトン、ε-ヒドロキシヘキサン酸、γ-ブチロラクトン、γ-ヒドロキシ酪酸、δ-バレロラクトン、δ-ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸からなる群より選択されるモノマーおよびそれらのコポリマーから合成される。
【0304】
本明細書に記載される組成物の調製における使用に適切な代表的な粘性剤としては、限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アカシア(アラビアゴム)、寒天、アガロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ブラダーラック(bladderwrack)、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボポール、キサンタン、セルロース、微結晶セルロース(MCC)、セラトニア(ceratonia)、キチン、カルボキシメチル化キトサン、コンドラス(chondrus)、デキストロース、ファーセレラン(furcellaran)、ゼラチン、ガティガム(Ghatti gum)、グアールガム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、蜂蜜、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、カラヤゴム(sterculia gum)、キサンタンゴム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロースナトリウム(CMC)、二酸化ケイ素、またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)が挙げられる。
【0305】
ゲル製剤の調製における使用のための適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアールガム、キサンタンゴム、イナゴマメゴム、アルギン酸塩(例えばアルギン酸)、ケイ酸塩、デンプン、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ペトロラタムおよびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。
【0306】
耳への化合物の送達には種々の適切な生体適合性ポリマーが使用され得る。好ましくは、該ポリマーはゲルを形成し得る。生体適合性ポリマーを形成する適切なゲルの例としては、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、レシチンゲル、(ポリ)アラニン誘導体、プルロニック、ポリ(エチレングリコール)、ポロキサマー、キトサン、キシログルカン、コラーゲン、フィブリン、ポリエステル、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)またはそれらのコポリマーPLGA、スクロース酢酸イソブチルおよびモノオレイン酸グリセロールが挙げられる。
【0307】
ヒアルロン酸は、天然に存在する生体適合性多糖類であり、水に結合し高粘度の分解性ゲルを形成する。ポリエチレングリコール(PEG)は、生体適合性ポリマーであり親水性ポリマーである。
【0308】
低温では流体であるがより高温ではより粘性が高くなる熱硬化性ポリマーも適切である。一般的な可逆的熱硬化性系はポロキサマーである。溶解した場合、溶液は、低温では液体のままであるが、温度を上げると、より粘性が高い固体様のインプラントを形成し得る。
【0309】
キトサンは生体適合性であり、抗菌特性を有し、キトサン-グリセロホスフェート溶液はまた可逆的な熱硬化性ゲルを形成し得る。
【0310】
ゲルはまた、酵素により分解可能なポリペプチドポリマーから形成され得る。ポリペプチドポリマー中のポリペプチド結合は、PEG/PLGAポリマー系中のエステル結合よりも加水分解に対して安定であり、ポリペプチドはまた、第2のポリマーブロックに結合してグラフトまたは直鎖ポリマーを形成する生分解性ポリペプチドブロックを有する生分解性ポリマーを含み得る。ポリペプチドポリマーの例は、ポリ(アラニン)およびその誘導体である。ポリペプチド担体はまた、フィブリンとして公知のタンパク質マトリックスであり得る。フィブリノーゲンは、別の天然に存在するタンパク質である酵素トロンビンと合わせてフィブリンとして公知の生体マトリックスを形成する天然に存在するタンパク質である。
【0311】
他の生体適合性ポリマーとしては、デンプン、セルロース、ゼラチン-プルロニック、テトロニック(tetronic)が挙げられ、後者の2つはポリ(エチレンオキシド)/ポリ(プロピレンオキシド)物質である。使用され得る他の物質としては、硫酸コンドロイチンおよびムコ多糖(例えばグリコサミノグリカン)およびヒアルロン酸と類似の特性を有する他の生体適合性ポリマーが挙げられる。
【0312】
いくつかの例において、生体適合性ポリマーは架橋され得る。生体適合性物質については種々の架橋化剤が当該技術分野で公知である。好ましくは、(例えば熱架橋、ガンマ線照射、紫外線照射、化学架橋等の使用により)送達ユニットのための最終的な架橋された物質が実質的に非毒性となるように架橋が達成される。一般的に、架橋の程度は、形成されたポリマー構造による膨潤または水の吸収の程度に反比例する。膨潤または水の吸収の程度は、ポリマー構造による薬物送達の速度を調節する。
【0313】
いくつかの態様において、薬物は、例えば穿刺、注射等により鼓膜を通過して投与される。いくつかの態様において、薬物は、鼓膜を穿刺することなく、例えば鼓膜を通過する吸収により鼓膜を通過して投与される。
【0314】
いくつかの態様において、製剤は、適切な時間、例えば1分、5分、10分、30分、1時間、5時間、12時間、1日、2日、7日の間、投与の領域に残るように十分粘性であることが望ましい。所望の領域は鼓膜の外部であるが、鼓膜と接触する、例えば投与を受ける被験体が直立した場合に溶液の層が鼓膜と接触したままである(例えば耳から流れ出ない)場所であり、粘性製剤のいくらかが耳道から排出されるとしても、いくつかの態様において粘性フィルムの層は、鼓膜と接触したまま残る。同様に、態様において、例えば鼓膜を通過して投与される。
【0315】
いくつかの態様において、薬物を充填したままで液体-ゲルの遷移が迅速になり再現性が高くなるように、液体-ゲルの遷移を調節することにより、製剤を変化し得ることが理解されるはずである。
【0316】
1つの担体ポロキサマー407について、少なくとも薬物の非存在下で、ポロキサマー407の濃度の増加に伴ってゲル化は減少し得る。いくつかの薬物、例えばVPAおよびpVcを含む親水性薬物の88mg/mlおよび14mg/mlのそれぞれを超える濃度での添加により、ポロキサマー407溶液のゲル化が阻害された。そのため、18%(w/w)のポロキサマー溶液と、88mg/mlおよび14mg/mlのそれぞれ以下の濃度のVPAおよびpVcを使用して、ゲルを調製した。CHIR、レプソックス(Repsox)およびTTNPBをそれらのDMSO中のストック溶液からの適切な体積で含む疎水性の薬物を、疎水性の薬物を含むポロキサマー407溶液に添加して、4℃でのピペッティングにより混合した。ストック溶液中の薬物の濃度は、最終製剤中の合計DMSO濃度が5〜6%未満になるように、CHIR、レプソックスおよびTTNPBそれぞれについて55.6〜69.5mg/ml、23〜28.75mg/mlおよび35mg/mlに維持した。より高い濃度のDMSOは、製剤のゲル化温度を有意に低下した。最終製剤は保存温度(4℃)で粘性液であり、液体-ゲル遷移温度(37℃)より高くでは半固形ゲルを形成した。
【0317】
いくつかの場合、組成物は、25℃で100,000センチポアズ(cps)未満の粘度を有する。組成物はまた、鼓膜に対して製剤を維持するのに十分な最小生成圧力(minimum yield stress)を有する。生成圧力は、固形物質が、圧力のさらなる増加なしに変形し続ける、液体様の挙動を示す力の量である。最小生成圧力は、適用されたゲルの厚さに依存するが、ゲルの幾何学および環境の温度には依存しない。最小生成圧力の組成物は、4mmの厚さおよび1g/Lの密度を有する適用されるゲルをいう。生成圧力(σ
0)は、σ
0=ρgh(式中ρは密度であり、gは重力による加速であり、hは層の厚さである)で表される。典型的に、最小生成圧力は約39パスカル(Pa)である。
【0318】
粘性(Viscogenic)薬剤は、典型的にポリマーまたは流体の粘度を増加する他の化学部分である。組成物に含まれる場合、適切な粘性薬剤は、組成物が25℃で液体様の状態(例えば流動可能)から鼓膜と接触した後に固体様の状態(例えばゲル)へと変形することを可能にし、非生分解性であり得る(例えば動物中に天然に存在する化学物質または酵素により分解されない、または生分解性)。組成物は、25℃で100,000cps未満(例えば90,000、60,000、30,000、20,000または10,000cps未満)の組成物の粘度、および一般的に鼓膜への適用後に39Paの最小生成圧力を生じるのに有効な量の粘性薬剤を含む。典型的に、組成物は、0.05〜50%の粘着性薬剤(例えば0.15〜25、5〜45、10〜40、12〜37、15〜35、17〜33または20〜30%の粘性薬剤)を含む。
【0319】
代表的な粘性薬剤としては、ゲラン(gellan)(GELRITEまたはKELCOGEL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を有するCARBOPOL 940、アクリル酸ナトリウムおよびn-N-アルキルアクリルアミドを有するN-イソプロピルアクリルアミド(NiPAAm)、ポリエチレングリコール(PEG)を有するポリアクリル酸またはPEGを有するポリメタクリル酸、酢酸水素セルロースフタル酸ラテックス(CAP)、アルギン酸ナトリウム、ならびにポロキサマー(PLURIONIC)およびポリオキサミン(TETRONIC)可逆的温度依存性ゲル化系などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。ゲランは、天然のポリマーで、アニオン性脱アセチル化細胞外多糖であり、シュードモナス・エロディア(Pseudomonas elodea)から分泌される。四糖類繰り返し単位は、1つのα-L-ラムノース、1つのβ-D-グルクロン酸および2つのβ-D-グルコース部分からなる。ゲランのインサイチュゲル化機構はカチオン誘導性(例えばカルシウムイオンの存在)であり、温度依存性(例えば生理温度)である。ゲル化は熱可逆的である。HPMCを有するCARBOPOL 940はpH依存性の様式で、インサイチュでゲル化する。CARBOPOLはゲル化剤であり、HPMCはゲルの粘度を高めるために使用される。アクリル酸ナトリウムおよびn-N-アルキルアクリルアミドを有するNiPAAmは、温度に基づいて可逆的なゾル-ゲル変形を行い得るターポリマーヒドロゲルである。アクリル酸ナトリウムおよびn-N-アルキルアクリルアミドは、ヒドロゲルの性質、特に遷移温度を変更するために使用される。
【0320】
PEGを有するポリアクリル酸またはPEGを有するポリメタクリル酸は、水素結合に基づいてゲル化すると考えられる。ポリアクリル酸はヒドロアルコール性溶液に溶解され得、注射後、アルコールが拡散して、ポリマーの沈澱および溶液のゲル化が起こる。CAPは、pH依存的な様式でゲル化するナノ粒子系である。活性化合物(薬剤)は部分的にポリマー粒子の表面に吸着される。アルギン酸ナトリウムは、カルシウムまたは他の多価イオンの存在下でゲル化する。
【0321】
ポロキサマーは、(すなわち親水性ポリ(オキシエチレン)ブロックおよび疎水性ポリ(オキシプロピレン)ブロック)で形成されるトリブロックコポリマーであり、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)のトリブロックとして構成される。ポロキサマーは、プロピレンオキシドブロック疎水性基およびエチレンオキシド親水性基を有するブロックコポリマー界面活性剤の1つのクラスである。ポロキサマーは市販される(例えばPluronic(登録商標)ポリオールは、BASF Corporationから入手可能である)。代替的に、ポロキサマーは公知の技術により合成できる。
【0322】
本明細書に記載される製剤は、吸入または静脈内、腹腔内、筋内、皮下、皮膚粘膜間、経口、経直腸、経皮、局所、頬内、皮内、胃内、皮内、鼻腔内、頬内、経皮または舌下の投与に適する。ある態様において、投与は、中耳への注射により、鼓膜への局所投与である。製剤はまた、内耳に直接投与され得る。製剤は、生体物質、溶液、デバイス(限定されないが補聴器、蝸牛インプラント、ヘッドホンおよびイヤホン)を含む複数のビヒクルにより投与され得る。
【0323】
医薬組成物は、経皮送達系(パッチフィルム)、液滴、丸薬、錠剤、フィルムでコーティングされた錠剤、多層錠剤、ゲル、軟膏、シロップ、粒剤、坐剤、エマルジョン、分散剤、マイクロカプセル、ナノ粒子、マイクロ粒子、カプセル、散剤または注射可能溶液の形態で調製および投与され得る。好ましくは、医薬製剤は、リポソーム、エマルジョンおよびゲルならびにそれらの組合せの形態である。
【0324】
本明細書に記載される態様はまたは、少なくとも1つの本明細書に記載される化合物またはその塩を使用して調製された医薬組成物を含む。
【0325】
該医薬組成物はまた、薬学的に許容され得る担体、賦形剤および/または溶媒和物を含み得る。
【0326】
かかる製剤は、吸入または静脈内、腹腔内、筋内、皮下、皮膚粘膜間、経口、経直腸、経皮、局所、頬内、皮内、胃内、皮内、鼻腔内、頬内、経皮または舌下の投与に適する。特定の態様において、投与は、中耳への注射により、鼓膜への局所投与である。
【0327】
医薬組成物は、経皮送達系(パッチフィルム)、液滴、丸薬、錠剤、フィルムでコーティングされた錠剤、多層錠剤、ゲル、軟膏、シロップ、粒剤、坐剤、エマルジョン、分散剤、マイクロカプセル、カプセル、散剤または注射可能溶液の形態で調製および投与され得る。医薬製剤は、リポソーム、エマルジョンおよびゲルの形態であり得る。
【0328】
坐剤の調製のために、低溶解ワックス、脂肪酸エステルおよびグリセリドが使用され得る。ベータカルボリンの任意の投与経路のための医薬組成物は、β-カルボリン、および必要な場合は無機または有機、固形または液体の薬学的に許容され得る担体の量に十分な治療効果を含む。腸溶性または非経口の投与に適切な医薬組成物としては、上述されるように、錠剤またはゼラチンカプセルまたは水溶液または懸濁剤が挙げられる。
【0329】
医薬組成物は、滅菌され得るか、および/または保存剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、浸透圧を調節するための塩および/または緩衝剤などのアジュバントを含み得る。望ましい場合は、本発明の医薬組成物は、他の有効成分を含み得る。これらの医薬組成物は、先行技術から公知の任意の方法により調製され得、例えば混合、顆粒化、封入などの従来の方法により調製され、凍結乾燥溶液は、100%までのβ-カルボリンを含む凍結乾燥剤中約0.01〜100%、好ましくは0、1〜50%の範囲であり得る。
【0330】
局所投与のための本発明の特定の組成物は、他の薬学的に許容され得る物質(1つ)および/または物質(複数)であり得る。本発明のある態様において、局所賦形剤は、耳、耳内または耳道内でverbreichtである場合は、ベータカルボリンおよび任意にさらなる有効成分(1つまたは複数)の血液循環系または中枢神経系への送達を増加しないように選択される。例えば、局所賦形剤は、粘膜を通過した全身循環系への経粘膜送達を増強する実質的な排除性質を有さないことが望ましくあり得る。かかる担体としては、無水吸着性親水性ペトロラタム(ワセリン)および無水ラノリン(例えばAquaphor)などの水素-カルボン酸、ならびにラノリンおよびコールドクリームなどの水-油エマルジョンに基づく手段などが挙げられる。特定の態様において、非排除的な担体としては、実質的および典型的に、水溶性の支持物質が挙げられ、水中油エマルジョン(クリームまたは親水性軟膏)に基づく物質ならびにポリエチレングリコール系賦形剤およびグリコール系賦形剤などの水溶性ベースの物質ならびに種々の薬剤でゲル化される水溶液は、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースであった。
【0331】
米国特許第5,837,681および6,593,290に記載される全ての送達方法および物質は、参照により本明細書に援用される。
【0332】
所望の場合、投与される組成物はまた、少量の湿潤剤、乳化剤または可溶化剤、酸化防止剤、抗菌剤、pH緩衝化剤等の非毒性補助担体または賦形剤物質、例えば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミン等を含み得る。かかる剤型を調製する実際の方法は、公知であるかまたは当業者に明らかであり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 20th Edition, 2000を参照。投与される組成物または製剤は、任意の場合において、治療される被験体の症状を緩和するのに有効な量におけるある量の活性化合物を含む。当業者が理解するように、本明細書に記載される薬剤はまた、被験体の組織または細胞のサブセットへの標的化送達のために調製され得る。一般的に、標的化送達は、標的化部分を有する薬剤の化合物を調製することにより達成される。かかる部分は、インビボで他の分子に結合するかまたは結合される分子について、脂質、リポソームおよびリガンドを含む。
【0333】
該薬剤の任意の誘導される形態(例えば合成または天然)、またはそのコンジュゲートは、酸性塩または塩基塩として、ならびに遊離酸または遊離塩基の形態で調製され得る。聴覚機能障害を予防または治療するために使用される場合、かかる組成物は、本明細書に記載の特定の態様にカバーされる。
【0334】
いくつかの態様において、本明細書の組成物はまた、Lgr5を発現しない支持細胞を標的化する。特定の態様において、本明細書に記載される薬剤は、支持細胞の増殖の促進に加えて、支持細胞の、聴力の増強を補助し得る細胞型への分化にも影響を及ぼす。いくつかの態様において、本明細書に記載される薬剤はまた、支持細胞の生存に影響を及ぼす。
【0335】
治療における使用に必要な薬剤の量は、選択される特定の薬剤および塩だけでなく、特に投与経路、治療される状態の性質ならびに患者の年齢および状態により変動し得、最終的にはかかりつけ医または臨床医の判断で決定される。所望の用量は、都合よくは、適切な間隔、例えば2日、3日、4日以上の1日当たりの下位用量で投与される単一用量中または分割用量として示され得る。下位用量自体は、丸剤用量または液体用量の複数回の摂取など、例えば分離されてばらばらに間隔を開けられたいくつかの投与にさらに分割され得る。
【0336】
さらに、該薬剤およびそれらのそれぞれの酸または塩基の塩は、保存および投与のために液体、好ましくは水性の製剤、および例えば投与のために散剤として使用され得、または被験体への投与の直前に液体に再構成され形成され得る乾燥製剤に調製され得る。液体の薬学的に投与され得る組成物は、例えば特定の薬剤および任意の薬学的なアジュバントを、水性担体に溶解、分散等することにより、調製され得る。水性担体としては、水(特にヒトへの注射用の水)、アルコール性溶液/水溶液、ならびにエマルジョンおよび懸濁液が挙げられる。薬学的に許容され得る水性担体としては、滅菌緩衝化等張食塩水溶液が挙げられる。ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳化リンゲル液または固定油が挙げられ得る。静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロースに基づくものなど)等が挙げられる。保存剤および他の添加剤はまた、例えば抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガス等であり得る。プロピレングリコール、エタノール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルを含む非水性溶媒も使用され得る。該薬剤の栄養補助(neutraceutical)組成物、医薬組成物および獣医学組成物はまた、乾燥または液体のいずれかで、好ましくは経口投与のために調製され得る。
【0337】
本明細書で使用する場合、ペイント(フィルム形成体としても知られる)は、溶媒、モノマーまたはポリマー、活性剤および任意に1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤で構成される溶液である。組織への適用後、溶媒は蒸発して、活性剤は、モノマーまたはポリマーで構成される薄いコーティングの背後に残る。非限定的な例によると、ペイントとしては、コロジオン(例えば可撓性コロジオン、USP)、ならびに糖シロキサンコポリマーおよび架橋剤を含む溶液が挙げられる。本明細書における使用に企図されるペイントは、耳中の圧力波の伝播を妨げないように可撓性である。さらにペイントは、液体(すなわち溶液、懸濁液またはエマルジョン)、半固体(すなわちゲル、泡、ペーストまたはゼリー)またはエアゾールとして適用され得る。
【0338】
本明細書に開示される組成物中の使用のための適切な泡状担体の例としては、限定されないが、アルギン酸塩およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、コラーゲン、例えばデキストラン、デキストラン誘導体、ペクチン、デンプン、さらなるカルボキシル基および/またはカルボキサミド基を有するおよび/または親水性側鎖を有するデンプンなどの修飾デンプンを含む多糖類、セルロースおよびその誘導体、寒天およびポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、メタクリル酸グリコールで安定化された寒天などのその誘導体、ゼラチン、キサンタンゴム、グアールゴム、カラヤゴム、ゲラン、アラビアゴム、トラガカントゴムおよびイナゴマメゴムなどのゴム、またはそれらの組合せが挙げられる。該製剤は任意にさらに、界面活性剤または外部プロペラントを含む、泡の形成を促進する発泡剤を含む。適切な発泡剤の例としては、セトリミド、レシチン、石鹸、シリコーン等が挙げられる。Tween
TMなどの市販の界面活性剤も適切である。
【0339】
特定の態様において、本明細書に記載される方法の実施に有用なゲル製剤としては、限定されないが、グリセリン系ゲル、グリセリン由来化合物、共役もしくは架橋ゲル、マトリックス、ヒドロゲル、およびポリマー、ならびにゼラチンおよびその誘導体、アルギン酸塩、およびアルギン酸系ゲル、ならびに種々の天然および合成ヒドロゲルおよびヒドロゲル由来化合物が挙げられる。
【0340】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、組成物の重量に対してそれぞれの有効成分の約0.01%〜約90%>、約0.01>〜約50%>、約0.1%〜約70%>、約0.1%〜約50%、約0.1%〜約40%>、約0.1%〜約30%、約0.1%>〜約20%、約0.1%〜約10%または約0.1%〜約5%>のそれぞれの薬学的な有効成分(すなわちNotchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNT アクチベーターまたは誘導体、小分子、薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物、またはそれらの互変異性体)の濃度を有する。
【0341】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、組成物の重量に対して、有効成分またはその薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物もしくは互変異性体の約1%〜約50%、約5%〜約50%、約10%〜約40%、または約10%〜約30%のそれぞれの活性な薬剤の濃度を有する。
【0342】
いくつかの態様において、本明細書に記載される製剤は、該製剤の体積に対して、活性剤、またはその薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物もしくは互変異性体の約0.1〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約50mg/mL、約0.5mg/mL〜約20mg/mL、約1mg〜約70mg/mL、約1mg〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mLまたは約1mg/mL〜約5mg/mLの医薬有効成分の濃度を有する。
【0343】
一態様において、本明細書に開示される製剤はさらに、1つ以上の薬学的な有効成分(すなわちNotchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーターまたは他の小分子、その薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物もしくは互変異性体)の組成物からの即時放出、または1分以内、または5分以内、または10分以内、または15分以内、または30分以内、または60分以内、または90分以内の即時放出を提供する。他の態様において、少なくとも1つの薬学的な有効成分(すなわちNotchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーターまたは誘導体、小分子、その薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物もしくは互変異性体)の治療有効量は、即時に、または1分以内、または5分以内、または10分以内、または15分以内、または30分以内、または60分以内、または90分以内に組成物から放出される。
【0344】
他の態様において、組成物は延長放出製剤として調製される。特定の態様において、少なくとも1つの薬学的な有効成分(Notchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーターを含む)、小分子、その薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物もしくは互変異性体)の製剤からの拡散は、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超える期間で起こる。他の態様において、少なくとも1つの薬学的な有効成分(Notchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤ならびにGSK3b阻害剤および/またはWNTアクチベーターを含む)の治療有効量は、製剤から5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超える期間で放出される。
【0345】
さらなる態様において、該製剤は、即時放出製剤および延長放出製剤の両方を提供する。特定の態様において、製剤は、0.25:1の比、または0.5:1の比、または1:1の比、または1:2の比、または1:3、または1:4の比、または1:5の比、または1:7の比、または1:10の比、または1:15の比、または1:20の比の即時放出製剤および延長放出製剤を含む。さらなる態様において、製剤は、第1の薬学的な有効成分(すなわち小分子、その薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体、ラセミ化合物もしくは互変異性体)の即時放出および第2の薬学的な有効成分または他の治療剤の延長放出を提供する。いくつかの態様において、製剤は、0.25:1の比、または0.5:1の比、または1:1の比、または1:2の比、または1:3、または1:4の比、または1:5の比、または1:7の比、または1:10の比、または1:15の比、または1:20の比の、第1の薬学的な有効成分および第2の薬学的な有効成分の製剤の即時放出および延長放出を提供する。
【0346】
即時放出、遅延放出および/または延長放出の組成物の組合せまたは製剤は、他の薬剤、ならびに賦形剤、希釈剤、安定化剤、担体剤および本明細書に開示される他の成分と組み合され得る。このように、組成物の成分に応じて、所望の厚さまたは粘度、または選択される送達形式、本明細書に開示される態様の代替的な局面は、即時放出、遅延放出および/または延長放出の態様と組み合される。
【0347】
F. 投与
特定の態様において、医薬製剤は、正円窓膜に薬物を局所的に投与するように適合される。医薬製剤はまた、本明細書の上述の薬剤の正円窓膜の通過を支持する膜貫通増強剤を含み得る。したがって、かかる態様において、液体またはゲル製剤が使用され得る。有効成分を経口的に適用することまたは送達アプローチの組合せを使用することも可能である。
【0348】
薬物放出を延長するおよび/または安定性を向上する長期間作用製剤は、PEGおよびポリプロピレングリコールホモポリマーおよびポリオキシエチレンポリオールから選択される水溶性ポリマーなどの巨大分子、すなわち室温で水に溶解するものと複合体化、または(可逆的または不可逆的結合により)共有結合された本明細書に上述の薬物の形態であり得る。代替的に、本明細書に上述の薬剤は、ポリマーと複合体化または結合して、薬物放出および/または半減期を増加し得る。この目的に有用なポリエチレンポリオールおよびポリオキシエチレンポリオールの例としては、ポリオキシエチレングリセロール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレングルコース等が挙げられる。ポリオキシエチレングリセロールのグリセロール主鎖は、例えば動物およびヒト中で生じるモノ-、ジ-およびトリグリセリド中に生じる主鎖と同じである。本明細書に記載される薬剤は、物質中に封入され得るおよび/または物質に共役し得る。1つより多くの薬剤の送達のために、1つ以上の送達ビヒクルを使用し得る。複数の薬剤の送達速度は、同じであり得るかまたは異なり得る。例えば一例において、短いパルスの1つの薬物を含むことおよび長期間放出されるもう1つのものを有することが有利であり得る。
【0349】
液体製剤としては、溶液、懸濁液、エマルジョンおよびスプレーが挙げられる。例えば、非経口注射のためには注射溶液、水系溶液または水-プロピレングリコール。
【0350】
中耳における局所投与に適した医薬組成物としては、本開示の組成物を単独または担体と一緒に含む凍結乾燥製剤の場合などでは、中耳の投与前に調製され得る水溶液または懸濁液が挙げられる。医薬組成物としてはさらに、生分解性もしくは非生分解性、水性もしくは非水性、またはマイクロスフィア系であるゲルが挙げられる。かかるゲルおよび他の適切な物質の例としては、ポロキサマー、ヒアルロン酸塩、キシログルカン、キトサン、ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびそれらののコポリマーPLGAポリマー、ポリ無水物、ポリカプロラクトンスクロースおよびモノオレイン酸グリセロールが挙げられる。
【0351】
医薬組成物は、安定化され得るか、および/または保存剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、浸透圧を調節する塩および/または緩衝剤などのアジュバントを含み得る。所望の場合、医薬組成物は、本明細書において前記のものに加えて他の有効成分を含み得る。
【0352】
これらの医薬組成物は、先行技術から公知の任意の方法により調製され得、例えば混合、顆粒化、封入および凍結乾燥溶液などの従来の方法により調製される。
【0353】
医薬組成物はまた、制御された放出を補助する薬剤および/または米国特許出願US20110166060に記載される賦形剤を含み得る。
【0354】
特定の態様において、本発明の医薬組成物は、局所投与用に調製される。耳への投与に適した担体は、薬学的に許容され得る、記載される薬剤および/または他の活性化合物、例えば食塩水、アルコール、植物油、ベンジルアルコール、アルキルグリコール、ポリエチレングリコール、三酢酸グリセリン、ゼラチン、ラクトースまたはデンプンなどの炭水化物、酸化マグネシウム(マグネシア、チョーク)、ステアリン酸塩(ワックス)、タルクおよびペトロラタム(ワセリン)と反応しない有機または無機物質である。上述の組成物は、安定化され得るか、および/または滑剤、チメロサール、例えば50重量%)などの保存剤、安定化剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響するための塩、緩衝剤物質、着色剤および/または香味香料剤などの補助剤を含み得る。これらの組成物は、必要な場合は1つ以上の他の有効成分を含み得る。耳についての本発明の組成物は、抗生物質、ステロイドなどの抗炎症剤、コルチゾン、鎮痛薬、アンチピリン、ベンゾカイン、プロカインなどの他の生物学的に活性な物質を含む異なる材料(material)および/または物質(substance)を含み得る。
【0355】
薬物の耳への鼓膜内(IT)送達は、臨床および研究の両方の目的のために徐々に使用される。いくつかのグループは、マイクロカテーテルおよびマイクロガーゼを使用して持続的な様式で薬物を適用しているが、大部分は、単一または反復IT注射(2週間までの期間にわたり8回までの注射)として薬物を適用している。
【0356】
鼓膜内に適用される薬物は、主に正円窓(RW)膜を通過して内耳の液体に進入すると考えられる。計算により、薬物が耳に進入する量および薬物の耳の長さに沿った分散の両方を調節する主な因子は薬物が中耳空間に維持される時間であることが示される。数時間の水性溶液の単一「1ショット」適用または適用により、蝸牛の長さに沿った適用される物質についての薬物の急激な勾配、および続いて薬物が耳中に分散されるために、蝸牛の基底回転における濃度の急速な減少が生じる。
【0357】
薬物を送達するための方法(関連のある物質およびその順列を含む)ならびに内耳送達される薬物の分布および速度を試験するための方法は当該技術分野で公知である。例えば、一態様において、ポロキサマー407ゲルの20%(w/w)ストック溶液(Spectrum Chemical MFG Corp., Gardena, Calif., USA)は、冷たい10mMリン酸緩衝化食塩水、pH7.4に溶液をゆっくり添加することにより調製される。他のポロキサマーまたは他の物質を使用してもよい。さらなる緩衝液を添加して、17% w/w濃度のポロキサマー407ゲルを得る。冷却するかまたは室温にある場合はこの溶液は液体であるが、体温では固まる。該ゲルは、Evansブルー色素(50ppm)などの色素により薄い青になり得、ろ過により滅菌され得る。無菌的な技術を使用して、滅菌された微小化dex(結晶粉末形態中の純粋なdex;Pfizer Inc., Kalamazoo, Mich., USA)を適切な量の滅菌ポロキサマー407溶液で懸濁し、4.5%溶液を得る。製剤の試料を冷却下で保存し、投与の直前に再懸濁する。
【0358】
ポロキサマー407ヒドロゲルは、「冷却法(cold-method)」を使用して調製した。簡潔に、計量した量のポロキサマー407を40mlの冷却超純水または冷PBS(pH7.4)に添加し、磁性攪拌プレート上4℃で一晩撹拌し、完全に可溶化した。18%(w/w)〜25%(w/w)の範囲の複数の濃度のポロキサマー407溶液を調製した。バルプロ酸(VPA)およびリン酸化アスコルビン酸(PCA)を含む親水性薬物を5mlのポロキサマー407溶液に添加し、磁性攪拌プレート上4℃で溶解させた。ポロキサマー407 対 薬物の重量比を変化させ、ポロキサマー407のゲル化特性に対する薬物の効果を理解し、親水性薬物の最大可能充填を有して37℃でゲル化する最適な処方を決定した。「視覚チューブ反転法(visual tube inversion method)」により製剤のゲル化温度を決定した。簡潔に、ポロキサマー407溶液を含むガラスバイアルを、親水性の薬物ありまたはなしで、水槽中に配置した。温度をゆっくり上昇させ、ガラスバイアルを傾けて溶液の流動が止まった温度をゲル化温度とした。
【0359】
CHIR 99021 (CHIR)、レプソックスおよびTTNPBを含む疎水性薬物を封入するために、DMSO中のストック溶液由来の適切な容量を、親水性薬物を含むポロキサマー407溶液に添加し、4℃でピペッティングして混合した。疎水性薬物と共に添加される最大DMSO濃度は、ゲルの全量に対して5〜6%(v/v)に制限された。より高い濃度のDMSOはゲルのゲル化温度を低下した。製剤のゲル化温度は、上述のように「視覚チューブ反転法」により決定した。
【0360】
本開示の生物学的に活性な薬剤は、酸性塩および塩基性塩として、ならびに遊離酸または遊離塩基の形態で調製され得る。治療における使用に必要な薬剤の量は、選択される具体的な薬剤および塩だけではなく、他の要因中投与経路、治療される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態に応じても変化し得るが、最終的にはかかりつけ医または臨床医の判断により決定される。都合の良いことに、所望の用量は、単回用量中、または適切な間隔で投与される分割用量として示され得る。
【0361】
さらに、活性薬剤およびそれらのそれぞれの酸性または塩基性の塩は、保存および投与のために液体、好ましくは水性製剤に調製され得、例えば投与のために粉末として使用され得るか被験体への投与の直前に液体形態に再構成され得る乾燥製剤として調製され得る。液体の薬学的に投与され得る組成物は、例えば特定の薬剤および任意の薬学的アジュバントを水性担体中に溶解、分散等することにより調製され得る。水性担体としては、水(特にヒトへの注射用水)、アルコール性/水性溶液ならびにエマルジョンおよび懸濁液が挙げられる。薬学的に許容され得る水性担体としては滅菌緩衝化等張食塩水溶液が挙げられる。ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳化リンゲルまたは固定油が挙げられ得る。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルデキストロースに基づくものなど)等が挙げられる。例えば抗菌薬、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガス等などの保存剤および他の添加剤が存在し得る。プロピレングリコール、エタノール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルを含む非水性溶媒も使用され得る。
【0362】
聴力の測定
挙動および電気的聴力測定を使用して聴力を測定し得る。
【0363】
ヒトにおける聴力障害を診断するための試験としては、限定されないが以下のものが挙げられる:
【0364】
一般的スクリーニング試験. 医師は、一方の耳を覆い、その際に種々の音量で話された言葉をヒトがどの程度良く聞くか、および他の音に対してどのように反応するかを尋ね得る。
【0365】
音叉試験. 音叉は、2つの突起のある、打ち付けた際に音を生じる金属製の装置である。音叉を用いた単純な試験により医師が聴力障害を検出することを補助し得る。音叉評価はまた、聴力障害が、(鼓膜を含む)中耳の振動部分に対する損傷、内耳の感覚器もしくは神経に対する損傷、または両方に対する損傷のいずれにより生じるかを明らかにし得る。
【0366】
聴力測定器試験. これらの間に、聴覚学者によりさらに完全な試験が行われ、ヒトはイヤホンを付け、その時点の1つの耳に方向づけられた音を聞く。聴覚学者は、種々の音質の音の範囲を提示し、ヒトが音を聞くそれぞれの時点を示すように質問する。それぞれの音質をかすかなレベルで示し、ヒトがかろうじて聞くことができる場合がわかる。聴覚学者はまた、ヒトの聴力を決定するための種々の単語を示す。
【0367】
他の試験としては以下のものが挙げられる:
【0368】
音に対する脳の反応を調べる聴性脳幹反応(ABR)試験または脳幹聴性誘発電位(BAER)試験。この試験はヒトの反応挙動に頼らないので、試験されるヒトは試験中眠っていられる。
【0369】
耳音響放射(OAE)は、音に対する内耳の反応を調べる試験である。この試験はヒトの反応挙動に頼らないので、試験されるヒトは試験中眠っていられる。
【0370】
聴性行動評価は、ヒトが音全体に対してどのように反応するかを試験する。聴性行動評価は、耳の全ての部分の機能を試験する。試験されるヒトは起きていなければならず、試験中に聞こえる音に積極的に反応しなければならない。
【0371】
小児の場合、親の許可を得て、聴覚学者は、子供の最初のケアをした医師および他の専門家と結果を共有する、など:
【0372】
眼、鼻および喉の医師は耳鼻咽頭科医とも称され、眼の医師は眼科医とも称され遺伝学の訓練を受けた専門家は臨床遺伝学者または遺伝学カウンセラーと称される。
【0373】
代表的態様
本開示はさらに、以下の代表的な態様を含む。
【0374】
いくつかの態様において、「幹細胞」は前駆細胞を含む。
【0375】
いくつかの態様において、FGF1アゴニストを使用する。いくつかの態様において、これはNotchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤に取って代わられ得るかまたは追加され得る。いくつかの態様において、FGF1遺伝子プロモーターを活性化する分子が選択される(例えばFGF-1B)。
【0376】
特定の態様において、本明細書に記載される細胞集団は、内耳に送達され得、内耳を構成し得および/または聴力を増強し得る。細胞集団は、本特許第CN103361300 Aおよび書面に記載されるように内耳への移植後に生存することが以前に示されている。
【0377】
「また、モルモットの内耳に移植されたヒトの羊膜上皮細胞は、3週間まで生存することが示され、ホメオスタシスを維持するための重要なタンパク質の発現が示される(Yuge, 1.et al (2004): 77 (9) 1452 -. 1471)。」
【0378】
特定の態様において、内耳由来のLgr5+細胞は、少なくとも1つのWNTアクチベーターおよび少なくとも1つのNOTCH阻害剤の組合せを使用して分化される。
【0379】
特定の態様において、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン三ブロックコポリマーまたはその誘導体は、本明細書に記載される分子または因子を中耳に送達するためおよび/または制御放出のために使用され得る。
【0380】
特定の態様において、方法は、組成物の投与前に1つ以上の周波数で聴力のベースラインレベル、およびその後組成物の投与後に同じ1つ以上の周波数で聴力のレベルを決定する工程、ならびに1つ以上の周波数で所望のレベルの聴力が回復するまで、1つ以上のさらなる用量の組成物を投与する工程を含む。
【0381】
特定の態様において、その後の聴力のレベルは、組成物の投与の1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月および/または12ヶ月後に測定される。
【0382】
哺乳動物が小児、青年または成体である、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13歳を超える方法が本明細書に示される。
【0383】
哺乳動物が少なくとも40歳、例えば少なくとも45、50、55、60、65、70歳の成体である方法が本明細書に示される。
【0384】
組成物が哺乳動物に送達される方法が本明細書に示される。
【0385】
哺乳動物がヒトである方法が本明細書に示される。
【0386】
耳毒性アッセイにおける使用、例えば支持細胞、または支持細胞により発現されるタンパク質の産生、および/またはそれらの分化を加速する薬剤をスクリーニングするため(またはタンパク質発現を抑制する薬剤をスクリーニングするため)、あるいは耳毒性について毛細胞を産生する薬剤または毛細胞の損傷後に聴力を維持するかもしくは再生後に毛細胞を維持するのに有用な毛細胞の生存を加速する薬剤を同定するため、あるいは必要な場合は、特定の細胞集団(Lgr5
+細胞または毛細胞を含むその子孫細胞)を殺傷するための特定の薬剤をスクリーニングするための、96または384ウェルプレート(または他のプレート形式)中のLgr5
+細胞の使用のための細胞集団の使用が本明細書に記載される。さらに、再プログラミングまたはプログラミングプロトコルのための細胞集団として機能する本明細書で産生されるLgr5
+細胞の使用。
【0387】
特定の態様において、GSK3b阻害剤に加えて、ガンマセクレターゼ阻害剤が、支持細胞の毛細胞への分化を促進するために使用される。
【0388】
少なくとも1つのWNTアクチベーター(好ましくはCHIRを使用する態様)および1つのnotch阻害剤による毛細胞への分化後、少なくとも1つのwntアクチベーターおよび少なくとも1つのnotchアクチベーター(および/またはHDAC阻害剤)によりLgr5
+支持細胞を増殖する方法が本明細書に示される。
【0389】
聴覚障害または前庭機能障害を有するかもしくは発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、該方法は、聴覚障害または前庭機能障害を経験したかもしくは発症するリスクを有する被験体を同定する工程、該被験体の耳に、被験体の耳の細胞において、wnt発現または活性を増加してHDACを阻害する(および/またはNOTCHを活性化する)1つ以上の化合物を含む組成物を被験体の耳に投与し、それにより、被験体における聴覚障害または前庭機能障害を治療する工程を含む。
【0390】
聴覚障害または前庭機能障害を有するかもしくは発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、該方法は、聴覚障害または前庭機能障害を経験したかもしくは発症するリスクを有する被検体を同定する工程、被験体の耳にCHIR99021を含む組成物を投与する工程を含む。
【0391】
聴覚障害または前庭機能障害を有するかもしくは発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、該方法は、治療を必要とする被験体を選択する工程、毛細胞に分化し得る細胞の集団を得る工程、インビトロで該細胞の集団を、wnt発現または活性を増加し、HDAC阻害する(および/またはNOTCHを活性化する)1つ以上の化合物を含む組成物の有効量とを、少なくともいくつかの細胞が1つ以上のWNTを発現する、またはHDACの発現および/またはNOTCHもしくはそのホモログの発現を低減もしくは制限することを誘導するのに十分な時間、接触させる工程、ならびに該細胞の集団またはそのサブセットを被験体の耳に投与する工程を含む。
【0392】
一態様において、本明細書に記載される細胞集団は、内耳幹細胞からの毛細胞分化を誘導するγセクレターゼ阻害剤をスクリーニングするために使用され得る。
【0393】
一態様において、鼓膜内に、中耳への連続およびまたは反復投与のためのチューブが配置される。
【0394】
特定の態様において、該組成物は生分解性ポリマーを含む。
【0395】
別の態様において、該組成物はAtoh1の遺伝子発現を減少する1つ以上の小分子を含む。
【0396】
一態様において、該組成物はAtoh1のタンパク質発現を減少する1つ以上の小分子を含む。
【0397】
別の態様において、該組成物はAtoh1の遺伝子発現を増加する1つ以上の小分子を含む。
【0398】
一態様において、該組成物はAtoh1のタンパク質発現を増加する1つ以上の小分子を含む。
【0399】
ある態様において、該組成物はAtoh1タンパク質の活性を増加する1つ以上の小分子を含む。
【0400】
さらなる態様において、Atoh1の遺伝子発現を増加する、Atoh1のタンパク質発現を増加する、またはAtoh1タンパク質の活性を増加する該1つ以上の小分子は、CHIR99021、1-アザケンパウロン(Azakenpaullone)および(2'Z,3'E)-6-ブロモインジルビン(Bromoindirubin)-3'-オキシム(BIO)からなる群より選択される。
【0401】
特定の態様において、該組成物は生分解性ポリマーを含む。
【0402】
さらなる態様において、該組成物は被験体の中耳に投与される。
【0403】
別の態様において、該組成物は正円窓膜上にまたは正円窓膜に隣接して投与される。
【0404】
一態様において、該組成物は被験体の内耳に投与される。
【0405】
特定の一態様において、該組成物は被験体の蝸牛に投与される。特定の一態様において、該組成物は被験体のコルティ器に投与される。
【0406】
さらなる一態様において、該組成物は経鼓膜的投与により投与される。
【0407】
さらなる一態様において、該組成物は経鼓膜ガーゼにより投与される。
【0408】
別の態様において、該組成物は経鼓膜カテーテルにより投与される。
【0409】
さらに別の態様において、該組成物は蝸牛内注射により投与される。
【0410】
種々の態様において、本開示は部分的に、被験体の中耳または内耳に、有効な量のnotchアクチベーター(およびまたはHDAC阻害剤)およびwntアクチベーターを含む組成物を、蝸牛毛細胞の増殖を促進するのに有効な量および十分な時間投与して、それにより蝸牛毛細胞の再生を促進する工程を含む、蝸牛毛細胞の再生を促進するための方法を企図する。
【0411】
一態様において、該被験体は部分的または完全な聴覚またはバランスの消失を有する。
【0412】
特定の態様において、被験体は、急性または慢性の耳毒性化合物への暴露、急性または慢性の雑音への暴露、加齢性聴覚障害、遺伝子関連聴覚障害のための感覚神経聴覚障害を有するか、または聴覚神経障害を有する。
【0413】
ある態様において、被験体は、感覚神経聴覚障害または聴覚神経障害を発症するリスクを有する。
【0414】
以下の参照に記載される方法および薬剤はそれらの全体において本明細書に含まれる。
【表21】
【0415】
当業者は、本明細書に記載される薬剤またはそれらの誘導体がどのように使用され得るか、および送達され得るかについての多くの順列があることを理解する。他の薬剤との組合せも使用され得る。本明細書に記載される薬物と併用され得る他の薬剤を記載する関連のある特許参照文献(および使用され得る方法を記載する参照文献)は、US20130324594 A1、WO2011079841 A1、US7498031 B2、US6177434 B1、CA2268331 C、WO2008010852 A2、US7387614 B2、WO1996040094 A1、WO2008076556 A2に限定されない。
【0416】
さらなる背景情報
鳥類における聴覚毛細胞
現在、哺乳動物における聴覚障害は永続的である。聴覚障害を有するカエル、魚類および鳥類6は、自然に聴覚を回復するが、哺乳動物は、3億年も前にかかる能力を消失しており、これまで科学者はこの問題を解決できなかった。毛細胞再生の最終的な目標は、機能的な聴力を修復することである。鳥類は生活の初期に歌を知覚して作り出しているので、消失した毛細胞の再生が聴覚感度を元に戻すことができるかどうかということだけでなく、この再生された末梢が複雑な聴覚知覚およびおよび産生を修復することができるかどうかということを研究するための都合のよいモデルを提供する。鳥類は、毛細胞の消失後に毛細胞の再生が自然に起こり、複雑な音響的信号を正確に知覚して産生する能力が出産および生存に重要であるまれな例である。したがって、聴力を増強または修復するための内耳細胞の再生のための生物学が存在する。
【0417】
重要なことに、音響的過剰刺激は、聴覚上皮において感覚細胞(毛細胞)の消失を引き起こし得る。コルティ器(哺乳動物の聴覚末端器官)中の損傷した毛細胞は、再生し、不可逆的な瘢痕を構築する非感覚細胞(支持細胞)に置き換えられる。しかしながら鳥類では、音響的外傷または耳毒性薬物により損傷される聴覚毛細胞は、新規の毛細に置き換えられ得る。鳥類の聴覚上皮の損傷した領域中の支持細胞は、雑音暴露の1日後ほどという早期に、DNA特異的マーカーブロモデオキシウリジンを取り込む7。鳥類の内耳への音響的傷害後、感覚上皮中にある支持細胞は、管腔表面付近で分裂し、再度上皮を増殖させる。これらの結果は、支持細胞が毛細胞変性の際に瘢痕の形成に関与し、再生のための新規の細胞を産生することを示唆する。
【0418】
聴覚障害および毛細胞の破壊
内耳の毛細胞は、聴覚機能および前庭機能に重要である。哺乳動物において、これらの細胞の再生のための有意な能力はないので、感覚毛細胞の消失は永続的である。アミノグリコシド抗生物質および多くの抗新形成薬などの薬物は、望ましくない副作用にも関わらずしばしば使用される。1つのかかる副作用は、内耳の感覚毛細胞の死滅による聴覚障害である。アミノグリコシドは、用量依存的な感覚神経聴覚障害を引き起こす、臨床的に使用される薬物であり(Smith et al., New Engl J Med.(1977) 296:349-53)、哺乳動物内耳の毛細胞を殺傷することが知られている(Theopold, Acta Otolaryngol (1977) 84:57-64)。米国では、1年間に2,000,000を超える人々がアミノグリコシドによる治療を受けている。治療抵抗性細菌感染の治療におけるこれらの薬物の臨床的な有効性およびそれらの低コストのために、世界的に使用され続け、必要とされ続けている。化学療法剤シスプラチンも、内耳の毛細胞に毒性効果を有するにもかかわらず、活性についてその利益のために使用されている。高い周波数の聴覚障害(>8kHZ)は、シスプラチン治療を受けている子供において90%ほども高いことが報告されている(Allen, et al., Otolaryngol Head Neck Surg (1998) 118:584-588)。患者集団に対するかかる薬物の前庭毒性効果の発病率は、あまりよく研究されていない。アミノグリコシドによる患者の文献において継続的な報告を有する3%〜6%の推定範囲が前庭毒性を誘導した(Dhanireddy et al., Arch Otolarngol Head Neck Surg (2005) 131:46-48)。ループ利尿薬(Greenberg, Am J Med Sci. (2000) 319:10-24)および抗マラリアキニーネ(Claessen, et al., Trop Med Int Health, (1998) 3:482-9)、サリチル酸塩(Matz, Ann Otol Rhinol Laryngol Suppl (1990) 148:39-41)を含む他の臨床的に重要で共通して使用される薬物はまた、文書化された耳毒性効果を有する。
【0419】
過去数十年の研究により、毛細胞死を引き起こし得るいくつかの重要な細胞内事象が発見された。酸化防止剤、カスパーゼ阻害剤およびjunキナーゼ阻害剤などのいくつかの候補保護材が評価されている(Kopke R D, et al. Am J Otol 1997, 18:559-571; Liu W, et al. Neuroreport 1998, 9:2609-2614; Yamasoba T. et al. Brain Res 1999, 815:317-325: Matsui J I, et al. J Neurosci 2002, 22:1218-1227; Sugahara K, et al. Hear Res 2006, 221:128-135.)。これらの耳性保護材のいくつかは、ヒトの試験にまで進んでいる(Sha S H, et al. N Engl J Med 2006, 354:1856-1857; Campbell K C, et al. Hear Res 2007, 226:92-103)。さらに、異なる損傷の形態に応答して、異なる細胞死経路が誘導され得、多くの保護分子が不完全な毛細胞保護を示し、複数の医薬を用いたアプローチが最も大きな利益をもたらすことがほのめかされる。毛細胞を保護することが研究されている薬剤のいくつかの例は、米国特許出願公開公報US20110135756 A1に含まれる。
【0420】
聴覚障害(loss)または聴覚障害(impairment)は、哺乳動物の共通の事象である。外耳道から中枢神経系への聴覚経路に沿ったいずれかの場所での障害は、聴覚障害を生じ得る。聴覚装置を、外耳および中耳、内耳および聴覚神経および中枢聴覚経路に分割し得る。種ごとにいくつかの変形物を有するが、一般的な特徴は哺乳動物に共通である。聴覚刺激は、外耳道、鼓膜および耳小骨連鎖を通って内耳へと機械的に伝達される。中耳および乳様突起には通常空気が充填されている。外耳および中耳の障害は一般的に、この機械的伝達を妨害することにより伝導性の聴覚障害を生じる。伝導性の聴覚障害の共通の原因としては、耳の閉鎖または耳垢、鼓膜の肥厚化または穿孔により引き起こされ得るように、中耳が液体で充填されることを生じる耳小骨連鎖の構成要素の外傷または感染、固定または吸収、およびエウスタキーオ管の閉塞により引き起こされ得るように、外耳道の閉塞が挙げられる。聴覚情報は、内耳中の神経上皮細胞(毛細胞)およびSGNの作用により、機械的信号から神経伝導性静電的インパルスへと変換される。SGNの全ての中心線維は、橋脳幹の蝸牛核中でシナプスを形成する。蝸牛核からの聴覚突起は左右対称であり、下丘、視床の内側膝状体、および側頭葉の聴覚皮質に位置する大核を有する。聴覚に含まれるニューロンの数は、蝸牛から聴覚脳幹および聴覚皮質へと劇的に増加する。全ての聴覚情報は、限られた数の毛細胞により伝達され、該毛細胞は内耳の感覚受容体であり、いわゆる内耳毛細胞は、比較的少数であるが主要な聴覚ニューロンの約90%のシナプスを形成するため、非常に重要である。比較により、蝸牛核のレベルで、含まれる神経要素の数は、数千分の数百で測定される。したがって、聴覚末端における比較的少数の細胞に対する損傷は、重大な聴覚障害を引き起こし得る。そのため、感覚神経の消失の多くの原因は、内耳における病変によるものであり得る。この聴覚障害は進行性であり得る。また、聴力は、動物の年齢に応じた耳の解剖学の変化のために、著しく深刻ではなくなる。
【0421】
胚発生の際に、前庭神経節、らせん神経節および耳胞は同じ神経外肺葉、耳プラコードに由来する。したがって、前庭系と聴覚系は、毛細胞の末梢ニューロン神経支配および脳幹核への中心突起を含む多くの特徴を共有する。これらの系の両方は、治療薬、抗新形成剤を含む耳毒性、食物または医薬の汚染ならびに環境的および工業的な汚染に対して感受性である。耳毒性薬物としては、広く使用される化学療法剤シスプラチンおよびそのアナログ(Fleischman et al, 1975; Stadnicki et al., 1975; Nakai et al., 1982; Berggren et al., 1990; Dublin, 1976; Hood and Berlin, 1986)、一般的に使用されるアミノグリコシド抗生物質、例えばグラム陰性細菌により引き起こされる感染の治療のためのゲンタマイシン(Sera et al., 1987; Hinojosa and Lerner, 1987; Bareggi et al., 1990)、キニーネおよびそのアナログ、サリチル酸塩およびそのアナログ、およびループ利尿薬が挙げられる。
【0422】
聴覚細胞およびらせん神経節ニューロンに対するこれらの薬物の毒性効果はしばしば、それらの治療有用性の限定要因となる。例えば、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン等の抗菌薬アミノグリコシドは、重大な毒性、特に耳毒性および腎毒性を有することが知られており、かかる抗菌剤の有用性を低減する(Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 6th ed., A. Goodman Gilman et al., eds; Macmillan Publishing Co., Inc., New York, pp. 1169-71 (1980)または最新版参照)。アミノグリコシド抗生物質は一般に、例えばグラム陽性、グラム陰性および抗酸性の細菌に対して有効な広スペクトル抗菌薬として使用される。感受性の微生物としては、エシェリキア種、ヘモフィルス種、リステリア種、シュードモナス種、ノカルジア種、エルジニア種、クレブシエラ種、エンテロバクター種、サルモネラ種、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、ミコバクテリア種、赤痢菌種およびセラチア種が挙げられる。しかしながら、アミノグリコシドは、主に、例えば相乗効果のためにペニシリンと組み合わせ、グラム陰性細菌により引き起こされる感染を治療するために使用される。ファミリーについての一般名により示唆されるように、全てのアミノグリコシド抗生物質は、グリコシド結合中にアミノ糖を含む。中耳炎は、中耳の感染を説明するために使用される用語であり、かかる感染は特に小児において非常に一般的である。典型的に、抗生物質は、中耳の感染のために、例えば応答または予防の様式で全身に投与される。中耳の感染と戦うための抗生物質の全身投与は、一般に、中耳における治療レベルに達成するために長い遅延時間を生じ、かかるレベルを達成するために高い開始用量を必要とする。これらの欠点は、治療レベルを得る能力を複雑化し、いくつかの抗生物質の使用を完全に除外し得る。全身投与は、しばしば、感染が進行した状態に到達した場合に最も効果的であるが、この時点では、永続的な損傷が、中耳および内耳構造に既に到達している。明確に、耳毒性は、抗生物質投与の用量限定的な副作用である。例えば、2グラムのストレプトマイシンを60〜120日間にわたり毎日投与された患者のほぼ75%は、いくらかの前庭障害を示したが、1日当たり1グラムでは、発病率は25%に減少した(米国特許5,059,591)。聴覚障害は、1日当たり1グラムを1週間よりも長く投与された、測定可能な聴覚障害を発症する患者の4〜15%で観察され、この聴覚障害は徐々に悪化し、治療を継続した場合に完全に永続的な聴覚消失を生じ得る。耳毒性はまた、精巣癌、卵巣癌、膀胱癌および頭部頸部癌を含む種々のヒトの癌に効果的であることが明らかとなっているプラチナ配位結合複合体シスプラチンについての重大な用量依存的副作用である。シスプラチンは、聴覚系および前庭系に損傷を与える(Fleischman et al , 1975, Stadnicki et al , 1975, Nakai et al , 1982, Carenza et al , 1986, Sera et al , 1987, Bareggi et al , 1990)。アスピリンなどのサリチル酸塩(sa cylate)は、抗炎症、鎮痛、解熱および抗血栓の効果についてもっとも一般的に使用される治療薬である。不幸なことに、これらは耳毒性の副作用を有する。これらはしばしば、耳鳴(「耳鳴り」)および一時的な聴覚障害を引き起こす(Myers and Bernstein, 1965)。しかしながら、薬物を高用量で長時間使用すると、聴覚障害は、臨床的に報告されるように、永続的および不可逆的なものになり得る(Jarvis, 1966)。
【0423】
直接関係のある生物学
魚類および鳥類は、蝸牛中の支持細胞が前駆細胞として機能する内耳毛細胞を生成する。毛細胞の再生は、支持細胞が直接毛細胞になる直接トランス分化(transdifferentiation)、および支持毛細胞が分裂して得られた細胞の1つまたは両方が毛細胞に発生する有糸分裂再生の2つの方法により起こると考えられる。
【0424】
聴覚系および前庭系における毛細胞再生は、ニワトリおよび他の非哺乳動物では起こるがヒトでは起こらないということが確立されている。この自発的な再生は、聴力およびバランスの修復をもたらす。
【0425】
さらなる態様および関連する局面
1. 内耳毛細胞の生成を容易にする方法であって、該方法は、
幹細胞集団に、(i)および(ii)を含む第1の組成物:(i)GSK3-ベータ阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および/またはWntアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、ならびに
(ii)notchアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および/またはHDAC阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、を投与するかまたは投与されるようにして、幹細胞集団を増殖させる工程;ならびに
該増殖された幹細胞集団を、GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、および任意にnotch阻害剤を含む第2の組成物に暴露して、それにより幹細胞の増殖された集団からの内耳毛細胞の生成を容易にする工程
を含む、方法。
1A. 該幹細胞集団がインビトロ幹細胞集団である、態様1記載の方法。
1B. 該幹細胞集団がエキソビボ幹細胞集団である、態様1記載の方法。
1C. 該幹細胞集団がインビボ幹細胞集団である、態様1記載の方法。
1D. 該幹細胞集団が、被験体に含まれるインビボ幹細胞集団であり、第1の組成物が、第1の組成物の被験体への投与により幹細胞集団に投与される、態様1記載の方法。
1E. 第1の組成物がWntアゴニストを含む、前記態様いずれか記載の方法。
1F. 第1の組成物がGSK3-ベータ阻害剤を含む、前記態様いずれか記載の方法。
1G. 第1の組成物がnotchアゴニストを含む、前記態様いずれか記載の方法。
1H. 第1の組成物がHDAC阻害剤を含む、前記態様いずれか記載の方法。
1I. 第2の組成物がWntアゴニストを含む、前記態様いずれか記載の方法。
1J. 第2の組成物がGSK3-ベータ阻害剤を含む、前記態様いずれか記載の方法。
1K. 第2の組成物がnotchアゴニストを含む、前記態様いずれか記載の方法。
1L. 第2の組成物がHDAC阻害剤を含む、前記態様いずれか記載の方法。
1M. 第1および第2の組成物が同じ組成物である、前記態様いずれか記載の方法。
1N. 第1および第2の組成物が異なる組成物である、態様1または態様1A〜1Lのいずれか1つ記載の方法。
2. 幹細胞集団が支持細胞を含む、前記態様いずれか記載の方法。
3. 支持細胞がLgr5+細胞である、態様2記載の方法。
4. 幹細胞集団が新生児細胞を含む、前記態様いずれか記載の方法。
5. 毛細胞が内耳毛細胞である、前記態様いずれか記載の方法。
6. 毛細胞が外耳毛細胞である、前記態様いずれか記載の方法。
7. 投与工程が、幹細胞集団に、HDAC阻害剤でもあるnotch アゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
8. 投与工程が、幹細胞集団に、合成分子を含むnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
9. 投与工程が、幹細胞集団に、VPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばVPAは、HDAC阻害剤でもあるnotchアゴニスト)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
10. 投与工程が、幹細胞集団に、GSK3-ベータ阻害剤でもあるWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
11. 投与工程が、幹細胞集団に、合成分子を含むWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
12. 投与工程が、幹細胞集団に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばCHIR99021はGSK3-ベータ阻害剤である、を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
13. 投与工程が、幹細胞集団に、notch阻害剤を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
14. notch阻害剤がDAPT(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))を含む、態様13記載の方法。
15. 投与工程が、幹細胞集団に、(i)CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))および(ii)VPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えば(i)はCHIR99021を含み(ii)はVPAを含む)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
16. 投与工程がさらに、幹細胞集団に、DAPT(例えばDAPTはnotch阻害剤である)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様15記載の方法。
17. 投与工程が、耳への1回以上の注射を(例えば経鼓膜的に)実施することにより行われる、前記態様いずれか記載の方法。
18. 1回以上の注射が中耳へのものである、態様17記載の方法。
19. 1回以上の注射が内耳へのものである、態様17記載の方法。
20. 1回以上の注射を実施することが、鼓膜および/または周囲の組織を麻酔すること、鼓膜を通して中耳に針を設置すること、ならびに(i)および(ii)の1つまたは両方を注射することを含む、態様17記載の方法。
21. 投与工程が、幹細胞集団に、1つ以上のさらなる薬剤(例えば(i)および(ii)に加えて)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、前記態様いずれか記載の方法。
22. 1つ以上のさらなる薬剤が、ROS阻害剤を含む、態様21記載の方法。
23. 1つ以上のさらなる薬剤が、ビタミンCまたはその誘導体を含む、態様21または22記載の方法。
24. 1つ以上のさらなる薬剤が、TGFβI型受容体阻害剤を含む、態様21〜23いずれか記載の方法。
25. 増殖され幹細胞の集団が、投与工程の前の幹細胞集団よりも少なくとも3倍大きい、前記態様いずれか記載の方法。
26. 投与工程が、notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を拍動性の様式で投与すること、ならびにGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストを持続性の様式で投与することを含む、前記態様いずれか記載の方法。
27. 幹細胞集団がインビボ被験体のものであり、該方法が、聴覚障害および/または前庭機能障害の治療である(例えば増殖された幹細胞の集団からの内耳毛細胞の生成が、部分的または完全な聴力障害の回復および/または前庭機能の向上を生じる)、前記態様いずれか記載の方法。
28. 幹細胞集団がインビボ被験体のものであり、該方法がさらに、薬物を、被験体に対する薬物の公知の安全最大用量(例えば、該方法により生じる内耳毛細胞の生成を欠く状況で送達される場合の公知の安全最大用量)(例えば薬物の用量限定耳毒性の低減または排除のため)よりも高い濃度で、被験体に送達する(例えば聴覚障害および/または前庭機能障害に関連のない疾患および/または障害の治療のため)ことを含む、前記態様いずれか記載の方法。
29. 生成された内耳毛細胞を使用して、ハイスループットスクリーニングを実施することをさらに含む、前記態様いずれか記載の方法。
30. 生成された内耳毛細胞を使用して、内耳毛細胞に対する毒性について分子をスクリーニングすることを含む、態様29記載の方法。
31. 生成された内耳毛細胞を使用して、内耳毛細胞(例えば前記分子に暴露される内耳毛細胞)の生存を向上する能力について分子をスクリーニングすることを含む、態様29記載の方法。
32. 増殖された幹細胞の集団を作製する方法であって、該方法は、
幹細胞集団(例えばインビトロ、エキソビボまたはインビボの試料/被験体のもの)に、(i)および(ii):
(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに
(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤
の両方を投与するかまたは投与されるようにして、それにより幹細胞集団中の幹細胞を増殖させ、増殖された幹細胞の集団を得る工程
を含む、方法。
33. 幹細胞集団がLgr5+細胞を含む、態様32記載の方法。
34. 幹細胞集団が新生児幹細胞を含む、態様33記載の方法。
35. 幹細胞集団が上皮幹細胞を含む、態様32〜34いずれか記載の方法。
36. 投与工程が、幹細胞集団に、HDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様32〜35いずれか記載の方法。
37. 投与工程が、幹細胞集団に、合成分子を含むnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様32〜36いずれか記載の方法。
38. 投与工程が、幹細胞集団に、VPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばVPAがHDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストである)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様32〜37いずれか記載の方法。
39. 投与工程が、幹細胞集団に、GSK3-ベータ阻害剤でもあるWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様32〜38いずれか記載の方法。
40. 投与工程が、幹細胞集団に、合成分子を含むWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様32〜39いずれか記載の方法。
41. 投与工程が、幹細胞集団に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばCHIR99021はGSK3ベータ阻害剤である)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様32〜40いずれか記載の方法。
42. 投与工程が、耳への1回以上の注射を(例えば中耳および/または内耳に経鼓膜的に)実施することにより行われる、態様32〜41いずれか記載の方法。
43. 投与工程が、notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を拍動様式で投与すること、ならびにGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストを持続性の様式で投与することを含む、態様32〜42いずれか記載の方法。
44. 幹細胞が内耳幹細胞である、態様32〜43いずれか記載の方法。
45. 生成された増殖された幹細胞の集団を使用して、ハイスループットスクリーニングを実施することをさらに含む、態様32〜44いずれか記載の方法。
46. 生成された幹細胞を使用して、幹細胞および/またはその子孫に対する毒性について分子をスクリーニングすることを含む、態様45記載の方法。
47. 生成された幹細胞を使用して、幹細胞および/またはその子孫の生存を向上する能力について分子をスクリーニングすることを含む、態様45記載の方法。
48. 聴覚障害および/または前庭機能障害を有するかまたは発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、該方法は、
聴覚障害および/または前庭機能障害を経験したかまたは発症するリスクを有する被験体を同定する工程、
被験体に、(i)および(ii):
(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに
(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤
の両方を投与するかまたは投与されるようにして、それにより被験体における聴覚障害および/または前庭機能障害を治療または予防する工程
を含む、方法。
49. 幹細胞集団がLgr5+細胞を含む、態様48記載の方法。
50. 幹細胞集団が新生児細胞を含む、態様48または49記載の方法。
51. 幹細胞集団が上皮幹細胞を含む、態様48〜50いずれか記載の方法。
52. 投与工程が、被験体に、HDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様48〜51いずれか記載の方法。
53. 投与工程が、被験体に、合成分子を含むnotchアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様48〜52いずれか記載の方法。
54. 投与工程が、被験体に、VPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばVPAはHDAC阻害剤でもあるnotchアゴニストである)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様48〜53いずれか記載の方法。
55. 投与工程が、被験体に、GSK3-ベータ阻害剤でもあるWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様48〜54いずれか記載の方法。
56. 投与工程が、被験体に、合成分子を含むWntアゴニストを投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様48〜55いずれか記載の方法。
57. 投与工程が、被験体に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))(例えばCHIR99021はGSK3-ベータ阻害剤である)を投与するかまたは投与されるようにすることを含む、態様48〜56いずれか記載の方法。
58. 投与工程が、耳への1回以上の注射を(例えば中耳および/または内耳に経鼓膜的に)実施することにより行われる、態様48〜57いずれか記載の方法。
59. notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を拍動性の様式で投与すること、ならびにGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニストを持続性の様式で投与することを含む、態様48〜58いずれか記載の方法。
60. 前記態様いずれか記載の第1または第2の組成物を含む組成物。
61. (a)(i)GSK3-ベータ阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および/またはWntアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、ならびに(ii)notchアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および/またはHDAC阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物。
62. (a)(i)GSK3-ベータ阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、および(ii)notchアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物。
63. (a)(i)Wntアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および(ii)notchアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物。
64. (a)(i)GSK3-ベータ阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および(ii)HDAC阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物。
65. (a)(i)Wntアゴニストまたはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および(ii)HDAC阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物。
65A. 組成物がGSK3-ベータ阻害剤を含む、態様61〜65いずれか記載の組成物。
65B. 組成物がWntアゴニストを含む、態様61〜65いずれか記載の組成物。
65C. 組成物がnotchアゴニストを含む、態様61〜65いずれか記載の組成物。
65D. 組成物がHDAC阻害剤を含む、態様61〜65いずれか記載の組成物。
66. GSK3-ベータ阻害剤およびnotchアゴニストを凍結乾燥形態で含む、医薬組成物。
67. GSK3-ベータ阻害剤およびnotchアゴニストを水和された形態で含む、医薬組成物。
68. GSK3-ベータ阻害剤がCHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))である、態様66または67記載の医薬組成物。
69. notchアゴニストがVPA(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))である、態様66〜68いずれか記載の医薬組成物。
70. 内耳毛細胞を生成する方法であって、該方法は、
開始幹細胞集団中の幹細胞(例えばインビトロ、エキソビボまたはインビボ試料/被験体のもの)を増殖させる工程、増殖された幹細胞の集団を得る工程(例えば増殖された集団が開始幹細胞集団よりも少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍または20倍大きくなる)、および
該増殖された幹細胞の集団をGSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、および任意にnotch阻害剤に暴露して、それにより増殖された幹細胞の集団からの内耳毛細胞の生成を容易にする工程
を含む、方法。
71. 内耳毛細胞を生成する方法であって、該方法は、被験体の内耳中の細胞集団に、CHIR99021(例えば薬学的に許容され得る形態(例えば塩))を投与して、それにより内耳毛細胞の生成を容易にする工程を含む、方法。
72. 内耳毛細胞を生成する方法であって、該方法は、開始集団中の新生児LGR5+細胞(例えばインビトロ、エキソビボまたはインビボ試料/被験体のもの)を増殖する工程、増殖したLGR5+細胞の集団を得る工程(例えば該増殖された集団は、開始幹細胞集団よりも少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍または20倍大きくなる)、ここで前記増殖されたLGR5+細胞の集団は、内耳毛細胞の生成を生じる、を含む、方法。
73. 疾患または障害を治療する方法であって、該方法は、被験体の開始集団中の新生児Lgr5+上皮細胞を増殖する工程(インビボ)、Lgr5+上皮細胞の増殖された集団を得る工程(例えば該増殖された集団は、開始新生児Lgr5+上皮細胞集団よりも少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍または20倍大きくなる)を含む、方法。
74. 幹細胞を増殖させる方法であって、該方法は、
幹細胞集団(例えばインビボ、エキソビボまたはインビボ試料/被験体のもの)に、(i)および(ii):
(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに
(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤
の両方を投与するかまたは投与されるようにして、それにより幹細胞集団中の幹細胞を増殖させ、増殖された幹細胞の集団を得る工程、ならびに
幹細胞の増殖された集団から内耳毛細胞を生成する工程
を含む、方法。
75. (a)1つ以上の組成物の組、該組は(i)および(ii):
(i)GSK3-ベータ阻害剤および/またはWntアゴニスト、ならびに
(ii)notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤
を含み、該1つ以上の組成物のそれぞれは、薬学的に許容され得る担体中に提供される、ならびに
(b)内耳障害を治療するための該1つ以上の組成物の組を使用するための指示書
を含む、キット。
76. 該1つ以上の組成物の組がTGFβ阻害剤も含む、態様75記載のキット。
77. 該1つ以上の組成物の組がROS阻害剤も含む、態様75または76記載のキット。
78. ROS阻害剤がビタミンCまたはその誘導体である、態様77記載のキット。
79. 該1つ以上の組成物の組が(例えばシリンジにより)注射され得る形態である、態様75〜77いずれか記載のキット。
80. 該1つ以上の組成物の組が中耳へと注射され得る形態である、態様79記載のキット。
81. 蝸牛支持細胞の集団の幹細胞の能力を高めるための方法。
82. 蝸牛支持細胞集団中のWnt経路を活性化する工程を含む、態様81記載の方法。
83. c-mycの上流で蝸牛支持細胞集団中のWnt経路を活性化する工程を含む、前記態様いずれか記載の方法。
84. 蝸牛支持細胞がコルティ器に対して内因性である、前記列挙された態様のいずれか記載の方法。
85. 蝸牛支持細胞集団がLgr5
+支持細胞の集団を含む、前記態様いずれか記載の方法。
86. 蝸牛支持細胞集団がLgr5
+支持細胞を含み、該方法が、Lgr5
+支持細胞の分裂を誘導して多能性Lgr5
+娘細胞を生じさせる工程をさらに含む、前記態様いずれか記載の方法。
87. 親および/または娘Lgr5
+細胞が、その後毛細胞(1つまたは複数)に分化する、前記態様いずれか記載の方法。
88. 得られた支持細胞中のLgr5発現がそのベースラインレベルの25%以内に維持される、前記態様いずれか記載の方法。
89. Lgr5が支持細胞中でそのベースライン発現レベルの少なくとも1.25、1.5、2、5、10、100または1,000倍上方制御される、前記態様いずれか記載の方法。
90. Lgr5が支持細胞集団中で、平均して該集団のベースライン発現レベルの少なくとも1.25、1.5、2、5、10、100または1,000倍上方制御され、該支持細胞がその後増殖する、前記態様いずれか記載の方法。
91. Lgr5が支持細胞集団中で、平均して該集団のベースライン発現レベルの少なくとも1.25、1.5、2、5、10、100または1,000倍上方制御され、該支持細胞集団のメンバーが、分裂して毛細胞に分化する、前記態様いずれか記載の方法。
92. 蝸牛細胞集団に含まれる支持細胞の幹細胞/前駆細胞の自己複製を誘導するための方法であって、該方法が、娘細胞において毛細胞に分化する能力維持しながら、幹細胞/前駆細胞に増殖を誘導する工程を含む、方法。
93. 娘細胞が毛細胞に分化し得る、態様92記載の方法。
94. 娘細胞が毛細胞に分化するように誘導される、態様92記載の方法。
95. 集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流でWnt経路を活性化することにより、娘細胞が毛細胞に分化するように誘導される、態様92記載の方法。
96. c-myc遺伝子の上流のWnt経路の活性化を一過的に誘導する小有機分子を用いて、そのような経路を活性化することにより、娘細胞が毛細胞に分化するように誘導される、態様92記載の方法。
97. 支持細胞集団が、コルティ器に内因性であるLGR5
+支持細胞を含む、態様92〜96いずれか記載の方法。
98. 幹細胞の性質の誘導に関連する経路の活性化または阻害により、支持細胞の集団の自己複製を誘導する能力を有する組成物。
99. 該経路が、Wnt、HDAC、TGF-ベータ、RAR、DKK1およびそれらの組合せからなる群より選択される、態様98記載の組成物。
100. 該経路を活性化または阻害する有機小分子を含む、態様98または99記載の組成物。
101. 生体適合性マトリックスを含む、態様98、99または100記載の組成物。
102. インビトロで支持細胞集団に適用される場合に、該組成物は、幹細胞増殖アッセイにおいて、該集団を高い程度および高い純度に増殖するように誘導し、また幹細胞分化アッセイにおいて、該集団が毛細胞の高い純度の集団に分化することを可能にする、態様98〜101いずれか記載の組成物。
103. 該組成物が、支持細胞集団を増殖させることにより、幹細胞の性質を誘導および維持して、多くの世代にわたり分裂し得、かつ得られた細胞の高い割合を毛細胞に分化させる能力を維持し得る幹細胞を産生する、態様98〜102いずれか記載の組成物。
104. 増殖している細胞がLgr5、Sox2、Opeml、Phex、lin28、Lgr6、サイクリンD1、Msx1、Myb、Kit、Gdnf3、Zic3、Dppa3、Dppa4、Dppa5、Nanog、Esrrb、Rex1、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3l、Utf1、Tcl1、Oct4、Klf4、Pax6、Six2、Zic1、Zic2、Otx2、Bmi1、CDX2、STAT3、Smad1、Smad2、smad2/3、smad4、smad5およびsmad7の1つ以上を含む幹細胞マーカーを発現する、態様98〜102いずれか記載の組成物。
105. 蝸牛細胞の集団中の支持細胞の細胞密度を増加するための方法であって、該方法が、支持細胞中の幹細胞特性を誘導する経路および機構を活性化する工程、新たに形成された娘細胞において支持細胞の多能性を維持しながら、活性化された支持細胞を増殖させる工程、ならびにその後増殖された集団が毛細胞に分化して、増殖された蝸牛細胞集団を形成することを可能にするかまたは誘導する工程、ここで増殖された蝸牛細胞集団中の毛細胞の細胞密度は、元の(増殖されない)蝸牛細胞集団中の毛細胞の細胞密度を超える、を含む、方法。
106. 増殖された集団が毛細胞に分化される、態様105記載の方法。
107. 増殖された集団が毛細胞に分化するように誘導される、態様105記載の方法。
108. 支持細胞集団が蝸牛組織に含まれる、態様105〜107いずれか記載の方法。
109. 支持細胞集団がインビトロ支持細胞集団である、態様105〜108いずれか記載の方法。
110. 支持細胞集団がインビボ支持細胞集団である、態様105〜108いずれか記載の方法。
111. 増殖段階が、好ましくは蝸牛構造のネイティブの組織を実質的に維持するように制御される、態様105〜110いずれか記載の方法。
112. 集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により増殖が一過的に誘導される、態様105〜111いずれか記載の方法。
113. 有機小分子を用いて、集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により、増殖が一過的に誘導される、態様105〜112いずれか記載の方法。
114. 支持細胞集団が、Lgr5
+であり、かつコルティ器に対して内因性である支持細胞を含む、態様105〜113いずれか記載の方法。
115. 蝸牛細胞の集団中のLgr5
+支持細胞の細胞密度を増加するための方法であって、該方法が、Lgr5
+支持細胞中の幹細胞特性を誘導または維持する経路および機構を活性化する工程、かかる幹細胞特性を維持しながら、活性化されたLgr5
+支持細胞を増殖する工程、ならびにその後増殖された集団が毛細胞に分化して、増殖された蝸牛細胞集団を形成することを可能にするかまたは誘導する工程、ここで増殖された蝸牛細胞集団中の毛細胞の細胞密度は、元の(増殖されない)蝸牛細胞集団中の毛細胞の細胞密度を超える、を含む、方法。
116. 増殖された集団が毛細胞に分化するように誘導される、態様115記載の方法。
117. 増殖された集団が毛細胞に分化するように誘導される、態様115記載の方法。
118. 支持細胞集団が蝸牛組織に含まれる、態様115〜117いずれか記載の方法。
119. 支持細胞集団がインビトロ支持細胞集団である、態様115〜118いずれか記載の方法。
120. 支持細胞集団がインビボ支持細胞集団である、態様115〜118いずれか記載の方法。
121. 増殖段階が、好ましくは蝸牛構造のネイティブの組織を実質的に維持するように制御される、態様115〜120いずれか記載の方法。
122. 集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により、増殖が一過的に誘導される、態様115〜121いずれか記載の方法。
123. 有機小分子を用いて、集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により、増殖が一過的に誘導される、態様115〜122いずれか記載の方法。
124. 支持細胞集団が、コルティ器に対して内因性であるLgr5
+細胞を含む、態様115〜123いずれか記載の方法。
125. 蝸牛細胞の開始集団中の毛細胞の細胞密度を増加するための方法であって、開始集団が、毛細胞、Lgr
-支持細胞およびLgr5
+支持細胞を含み、該方法が、開始集団に、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を含む幹細胞増殖物質組成物を投与する工程を含み、ここで該組成物が幹細胞増殖アッセイにおいて集団中のLgr5
+支持細胞の数の増殖を誘導する能力を有し、かつ集団中のLgr5
+支持細胞が幹細胞分化アッセイにおいて毛細胞の集団に分化することを可能にする、方法。
126. 増殖された集団が毛細胞に分化するように誘導される、態様125記載の方法。
127. 増殖された集団が毛細胞に分化するように誘導される、態様125記載の方法。
128. 支持細胞集団が蝸牛組織に含まれる、態様125〜127いずれか記載の方法。
129. 支持細胞集団がインビトロ支持細胞集団である、態様125〜128いずれか記載の方法。
130. 支持細胞集団がインビボ支持細胞集団である、態様125〜128いずれか記載の方法。
131. 増殖段階が、好ましくは蝸牛構造のネイティブの組織を実質的に維持するように制御される、態様125〜130いずれか記載の方法。
132. 集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により、増殖が一過的に誘導される、態様125〜131いずれか記載の方法。
133. 有機小分子を用いて、集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により、増殖が一過的に誘導される、態様125〜132いずれか記載の方法。
134. 支持細胞集団が、コルティ器に対して内因性であるLgr5
+細胞を含む、態様125〜133いずれか記載の方法。
135. 幹細胞増殖アッセイにおいて、Sox2、Opeml、Phex、lin28、Lgr6、サイクリンD1、Msx1、Myb、Kit、Gdnf3、Zic3、Dppa3、Dppa4、Dppa5、Nanog、Esrrb、Rex1、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3l、Utf1、Tcl1、Oct4、Klf4、Pax6、Six2、Zic1、Zic2、Otx2、Bmi1、CDX2、STAT3、Smad1、Smad2、smad2/3、smad4、smad5およびsmad7からなる群より選択される1つ以上の幹細胞マーカーを発現する幹細胞を作製する、態様125〜134いずれか記載の方法。
136. Lgr5
+である集団中の細胞の割合が増加される、態様125〜135いずれか記載の方法。
137. 毛細胞および支持細胞を含む蝸牛細胞の開始集団中の毛細胞の細胞密度を増加するための方法であって、該方法が、
開始集団中の支持細胞の数を選択的に増殖させて、中間蝸牛細胞集団を形成する工程、ここで中間蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の数の比は、開始蝸牛細胞集団中の支持細胞 対 毛細胞の数の比を超える、および
中間蝸牛細胞集団中の毛細胞の数を選択的に増殖させて、増殖された蝸牛細胞集団を形成する工程、ここで増殖された蝸牛細胞集団中の毛細胞 対 支持細胞の数の比は、中間蝸牛細胞集団中の毛細胞 対 支持細胞の数の比を超える、方法。
138. 中間集団が毛細胞に分化するように誘導される、態様137記載の方法。
139. 中間集団が毛細胞に分化するように誘導される、態様137記載の方法。
140. 開始蝸牛細胞集団が蝸牛組織に含まれる、態様137〜139いずれか記載の方法。
141. 開始蝸牛細胞集団がインビトロ集団である、態様137〜139いずれか記載の方法。
142. 開始蝸牛細胞集団がインビボ集団である、態様137〜139いずれか記載の方法。
143. 支持細胞の選択的な増殖が、蝸牛構造のネイティブの組織を実質的に維持するように制御される、態様137〜142いずれか記載の方法。
144. 集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により、支持細胞の選択的な増殖が、一過的に誘導される、態様137〜143いずれか記載の方法。
145. 有機小分子を用いて、集団を遺伝子改変することなく、c-mycの上流の経路の誘導により、支持細胞の選択的な増殖が、誘導される、態様137〜144いずれか記載の方法。
146. 支持細胞集団が、コルティ器に対して内因性であるLgr5
+細胞を含む、態様137〜145いずれか記載の方法。
147. 幹細胞増殖アッセイにおいて、Lgr5、Sox2、Opeml、Phex、lin28、Lgr6、サイクリンD1、Msx1、Myb、Kit、Gdnf3、Zic3、Dppa3、Dppa4、Dppa5、Nanog、Esrrb、Rex1、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3l、Utf1、Tcl1、Oct4、Klf4、Pax6、Six2、Zic1、Zic2、Otx2、Bmi1、CDX2、STAT3、Smad1、Smad2、smad2/3、smad4、smad5およびsmad7からなる群より選択される1つ以上の幹細胞マーカーを発現する幹細胞を作製する、態様137〜146いずれか記載の方法。
148. Lgr5
+である中間集団中の細胞の割合がLgr5
+である開始集団中の細胞の割合よりも大きい、態様137〜147いずれか記載の方法。
149. 開始集団が支持細胞および毛細胞を含む、蝸牛細胞の開始集団中で、Lgr5
+支持細胞の数を増加するかまたはLgr5活性を増加する方法。
150. Lgr5
+支持細胞の数が開始集団に対して増殖される中間集団が形成される、態様149記載の方法。
151. 開始集団に対して支持細胞のLgr5活性が増加される中間集団が形成される、態様149または150記載の方法。
152. 通常はLgr5を欠損するかまたは非常に低いレベルのLgr5を有する細胞型におけるLgr5
+発現を活性化することにより、Lgr5
+細胞の数が、開始細胞集団に対して増加される、態様149〜151いずれか記載の方法。
153. 開始蝸牛細胞集団に対してLgr5
+支持細胞の数が拡大され、Lgr5活性が増加される中間集団が形成される、態様149〜151いずれか記載の方法。
154. 開始蝸牛細胞集団に対してLgr5
+支持細胞の数が拡大され、Lgr5活性が増加される中間集団が形成され、その後中間蝸牛細胞集団中の毛細胞の数が選択的に拡大され、拡大された蝸牛細胞集団が形成され、ここで拡大された蝸牛細胞集団中の毛細胞 対 支持細胞の比が、中間蝸牛細胞集団中の毛細胞 対 支持細胞の数の比を超える、態様149〜151いずれか記載の方法。
155. S期にあるLgr5
+細胞の集団を作製する、態様81〜97および105〜154いずれか1つ記載の方法。
156. 成体哺乳動物蝸牛細胞を用いて使用され、S期にある生体哺乳動物Lgr5
+細胞の集団を作製する、態様81〜97および105〜154いずれか1つ記載の方法。
157. 蝸牛細胞集団と幹細胞増殖物質を接触させる工程を含む、態様81〜97および105〜156いずれか1つ記載の方法。
158. 蝸牛細胞集団と、幹細胞性誘導物質を含む幹細胞増殖物質を接触させる工程を含む、態様81〜97および105〜156いずれか1つ記載の方法。
159. 蝸牛細胞集団と分化阻害剤を接触させる工程を含む、態様81〜97および105〜156いずれか1つ記載の方法。
160. 蝸牛細胞集団と、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を含む幹細胞増殖物質を接触させる工程を含む、態様81〜97および105〜156いずれか1つ記載の方法。
161. 幹細胞性誘導物質を使用して、Lgr5
+幹細胞の増殖を誘導する、態様81〜97および105〜160いずれか1つ記載の方法。
162. 分化阻害剤が有効分化阻害濃度で存在しない場合に、幹細胞性誘導物質を使用して、LGR5+細胞の毛細胞への分化を誘導する、態様81〜97および105〜161いずれか1つ記載の方法。
163. 増殖および分化の両方を誘導する幹細胞性誘導物質がGSK3ベータ阻害剤およびWntアゴニストを含む、態様81〜97および105〜162いずれか1つ記載の方法。
164. 組成物が、放出アッセイにおいて幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を異なる速度で放出する製剤中に幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を含む、態様81〜97および105〜163いずれか1つ記載の方法。
165. 内耳環境への活性剤の一定、持続的、延長、遅延または拍動性の放出速度で幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を放出する製剤中で、該組成物が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を含む、態様81〜97および105〜163いずれか1つ記載の方法。
166. 分化阻害剤がNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤であり得る、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
167. 有効幹細胞性誘導物質濃度および分化阻害剤の有効分化阻害濃度を有する第1の増殖期間、その後有効幹細胞性誘導物質濃度を有し、分化阻害剤の有効分化阻害濃度を有さない分化期間がある、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
168. 幹細胞性誘導物質および分化阻害剤が、異なる速度で幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を放出する製剤中で、蝸牛細胞に提供される、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
169. 該製剤が、一定、持続性、延長、遅延または拍動性の放出速度の幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を内耳環境に提供する、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
170. 該製剤が、有効幹細胞性誘導物質濃度および有効分化阻害濃度の分化阻害剤を有する第1の増殖期間、その後有効幹細胞性誘導物質濃度を有し、有効分化阻害濃度の分化阻害剤を有さない分化期間を提供する様式で、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤を放出する、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
171. 有効幹細胞性誘導物質濃度のWntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤および有効分化阻害濃度のNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤を有する第1の増殖期間、その後有効幹細胞性誘導物質濃度のWntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤を有し、有効分化阻害濃度のNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤を有さない分化期間あがる、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
172. 該製剤が、一定、持続性、延長、遅延または拍動性の放出速度のWntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤およびNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤を、内耳環境に提供する、態様171記載の方法または組成物。
173. 該製剤が、有効幹細胞性誘導物質濃度のWntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤および有効分化阻害濃度のNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤を有する第1の増殖期間、その後有効幹細胞性誘導物質濃度のWntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤を有し、有効分化阻害濃度のNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤を有さない分化期間を提供する様式で、WntアゴニストまたはGSK3ベータ阻害剤およびNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤を放出する、態様171または172記載の方法または組成物。
174. 分化阻害剤が幹細胞性誘導物質でもある、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
175. 分化阻害剤がNotchアゴニストであり、幹細胞性誘導物質でもある、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
176. 分化阻害剤がバルプロ酸である、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
177. 分化阻害剤が幹細胞性誘導物質でもある場合、分化期間中、分化阻害剤の濃度は有効分化阻害濃度未満になる、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
178. 分化阻害剤および幹細胞性誘導物質が、持続性放出ポリマーゲルに含まれる、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
179. ゲルが、針により注射され(または注射されるように適用され)、中耳空間で固体になる、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
180. ゲルが熱可逆的ポリマーである、態様179記載の方法または組成物。
181. ゲルがポロキサマー407を含む、態様179記載の方法または組成物。
182. 支持細胞中のNotch活性レベルが、天然の状態の支持細胞中のNotch活性レベルの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90または100%で維持される、前述の態様のいずれか記載の方法または組成物。
183. 毛細胞を生成するための方法および組成物であって、該方法が、幹細胞集団(例えばインビトロ、エキソビボまたはインビボ試料/被験体のもの)に、(i)および(ii):(i)GSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)、ならびに(ii)Notchアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および/またはHDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)の両方を含む組成物を投与するかまたは投与されるようにして、それにより幹細胞集団中の幹細胞を増殖させて、増殖された幹細胞の集団を得る工程;ならびに該増殖された幹細胞の集団を、GSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)および/またはWntアゴニスト(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)、ならびに任意にnotch阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)に暴露して、それにより増殖された幹細胞の集団からの内耳毛細胞の生成を容易にする工程、を含む、方法および組成物。
184. 被験体に、(a)(i)HDAC阻害剤および/またはNotchアクチベーター、ならびに(ii)GSK3-ベータ阻害剤、その誘導体[例えば、HDAC阻害剤の誘導体、Notchアクチベーターの誘導体および/またはGSK3-ベータ阻害剤の誘導体]、その薬学的に許容され得る塩[例えばHDAC阻害剤の薬学的に許容され得る塩、Notchアクチベーターの薬学的に許容され得る塩および/またはGSK3-ベータ阻害剤の薬学的に許容され得る塩]、またはそれらの組合せ、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む組成物の有効量を、被験体における聴覚障害を治療するように投与する工程を含む、被験体における聴覚障害を予防または治療するための方法。したがって、例えば該組成物は、(a)HDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)およびGSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含み得る。さらなる例により、該組成物は、(a)Notchアクチベーター(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)およびGSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含み得る。さらなる例により、該組成物は、(a)HDAC阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)、Notchアクチベーター(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)、およびGSK3-ベータ阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩)、ならびに(b)薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含み得る。
185. 毛細胞前駆体を増殖させるおよび/または毛細胞の数を増加する薬剤、ならびに支持細胞および/または毛細胞を保護する(例えばそれらの生存を支持する)薬剤を同定するため、ならびにさらに支持細胞または毛細胞を含む分化した子孫に対して毒性であるかまたは毒性ではない薬剤を同定するための方法。
186. 治療を必要とする被験体における聴覚障害を予防または治療するための方法であって、前記被験体に、HDAC阻害剤および/またはNotchアクチベーターならびにGSK3ベータ阻害剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩ならびに許容され得る担体もしくは賦形剤を含む組成物の有効量を、被験体における聴覚障害を治療するように投与する工程を含む、方法。
187. 被験体における聴覚系の細胞の消失または死を阻害するための方法であって、前記被験体に、本明細書に記載される組成物またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および許容され得る担体もしくは賦形剤の有効量尾を投与し、それにより被験体における聴覚系の細胞の消失または死を阻害する工程を含む、方法。
188. 被験体における聴覚系の細胞の成長を維持または促進するための方法であって、前記被験体に、本明細書に記載される薬剤またはその誘導体もしくは薬学的に許容され得る塩および許容され得る担体もしくは賦形剤を含む組成物を、内因性の修復を増大するまたは開始させるのに有効な量で投与して、それにより被験体における聴覚系の細胞の成長を維持または促進する工程を含む、方法。
189. 幹細胞増殖アッセイの終了時の細胞集団中のインビトロLgr5活性の平均が、幹細胞増殖アッセイの開始時の細胞集団中の平均インビトロLgr5活性の25、50、75または90%以上である、前述の態様のいずれか記載の方法。
190. 幹細胞増殖アッセイの終了時の細胞集団中の平均インビトロnotch活性が、幹細胞増殖アッセイの開始時に使用される細胞集団中の平均インビトロnotch活性の25、50、75または90%以上である、前述の態様のいずれか記載の方法。
191. 細胞の親集団を含む蝸牛組織中の蝸牛幹細胞の集団を増殖させるための方法であって、該親集団が、支持細胞を含み、該方法が、蝸牛組織と幹細胞増殖物質を接触させて、蝸牛組織中の増殖した細胞の集団を形成する工程を含み、幹細胞増殖物質は、(i)幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞増殖アッセイ細胞集団中のLgr5
+細胞の数を少なくとも10倍増加し得、(ii)幹細胞分化アッセイにおいて、Lgr5
+細胞を含む細胞集団から毛細胞を形成し得る、方法。
192. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞増殖アッセイ細胞集団中のLgr5
+細胞の数を少なくとも50倍増加し得る、態様191記載の方法。
193. 幹細胞増殖物質、少なくとも1つの幹細胞増殖物質は、幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞増殖アッセイ細胞集団中のLgr5
+細胞の数を、少なくとも100倍増加し得る、態様191記載の方法。
194. 該増殖された細胞の集団は、親集団よりも多くの数の毛細胞を含む、態様191〜193いずれか記載の方法。
195. 幹細胞増殖アッセイ細胞集団中のLgr5
+細胞である全細胞の割合は、幹細胞増殖アッセイの開始から終了まで、少なくとも2倍増加する、態様191〜194いずれか記載の方法。
196. 幹細胞分化アッセイ細胞集団中の毛細胞である全細胞の割合は、幹細胞分化アッセイの開始から終了まで少なくとも2倍増加する、態様191〜195いずれか記載の方法。
197. 幹細胞増殖アッセイ細胞集団中の毛細胞である全細胞の割合は、幹細胞増殖アッセイの開始から終了まで少なくとも25%減少する、態様191〜196いずれか記載の方法。
198. 幹細胞増殖アッセイ細胞集団中の細胞当たりの平均Lgr5
+活性は、幹細胞増殖アッセイにおいて少なくとも10%増加する、態様191〜197いずれか記載の方法。
199. 幹細胞増殖アッセイの終了時の細胞集団中の平均インビトロLgr5活性は、幹細胞増殖アッセイの開始時の細胞集団中の平均インビトロLgr5活性の25、50、75または90%以上である、態様191〜198いずれか記載の方法。
200. 幹細胞増殖アッセイの終了時の細胞集団中の平均インビトロnotch活性は、幹細胞増殖アッセイの開始時に使用される細胞集団中の平均インビトロnotch活性の25、50、75または90%以上である、態様191〜199いずれか記載の方法。
201. 蝸牛組織がネイティブの形態を維持する、態様191〜200いずれか記載の方法。
202. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、生体適合性マトリックス中に分散される、態様191〜201いずれか記載の方法。
203. 生体適合性マトリックスが生体適合性のゲルまたは泡である、態様202記載の方法。
204. 該組成物が放出制御製剤である、態様191〜203いずれか記載の方法。
205. 蝸牛組織がインビボ蝸牛組織である、態様191〜204いずれか記載の方法。
206. 蝸牛組織がエキソビボ蝸牛組織である、態様191〜204いずれか記載の方法。
207. S期にあるLgr5
+細胞の集団を作製する、態様191〜205いずれか記載の方法。
208. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の両方を含む、態様191〜207いずれか記載の方法。
209. 接触が、蝸牛組織に、
第1の段階において、少なくとも幹細胞性誘導物質濃度および少なくとも有効分化阻害濃度の分化阻害剤、ならびに
その後の段階において、少なくとも幹細胞性誘導物質濃度および有効分化阻害濃度未満の分化阻害剤を提供する、態様191〜208いずれか記載の方法。
210. 蝸牛組織が被験体中にあり、蝸牛組織と組成物の接触が、組成物を被験体に経鼓膜的に投与することにより達成される、態様191〜209いずれか記載の方法。
211. 蝸牛組織と組成物の接触が、被験体の聴覚機能の向上をもたらす、態様210記載の方法。
212. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞増殖アッセイにおいて、LGR5
+細胞の開始試験集団を増殖して、増殖した試験集団を生成し得、増殖された試験集団が、開始試験集団が有するよりも少なくとも10倍高いLGR5
+細胞を有する、生体適合性マトリックスおよび少なくとも1つの幹細胞増殖物質を含む組成物。
213. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞増殖アッセイ細胞集団中のLgr5
+細胞の数を、少なくとも50倍増加し得る、態様212記載の組成物。
214. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞増殖アッセイ細胞集団中のLgr5
+細胞の数を、少なくとも100倍増加し得る、態様212記載の組成物。
215. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、生体適合性マトリックス中に分散される、態様212〜214いずれか記載の組成物。
216. 生体適合性マトリックスが生体適合性のゲルまたは泡である、態様215記載の組成物。
217. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞増殖アッセイ細胞集団中の1細胞当たりの平均Lgr5+活性を少なくとも10%増加し得る、態様215記載の組成物。
218. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の少なくとも1つを含む、態様212〜217いずれか記載の組成物。
219. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の両方を含む、態様212〜218いずれか記載の組成物。
220. 幹細胞増殖物質が、有効幹細胞性誘導物質濃度よりも100倍高い濃度の幹細胞性誘導物質および有効分化阻害濃度の分化阻害剤よりも少なくとも100倍高い濃度の分化阻害剤を含む、態様212〜219いずれか記載の組成物。
221. 該組成物が制御放出製剤である、態様212〜220いずれか記載の組成物。
222. 被験体に経鼓膜的に投与された場合、制御放出製剤が、幹細胞増殖物質の即時放出、遅延放出、持続性放出、延長放出、変動放出、拍動性放出または二方式放出を分与する、態様221記載の組成物。
223. 被験体に投与された場合、制御放出製剤は、(a)最初の段階において、少なくとも有効幹細胞性誘導物質濃度および少なくとも有効分化阻害濃度の分化阻害剤、ならびに(b)その後の段階において、少なくとも有効幹細胞性誘導物質濃度および有効分化阻害濃度未満の分化阻害剤を提供する、態様221または222記載の組成物。
224. 幹細胞性誘導物質が、GSK3-ベータ阻害剤、GSK3-ベータ阻害剤誘導体、Wntアゴニスト、Wntアゴニスト誘導体、または前記のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩である、態様191〜211いずれか記載の方法、または態様212〜223いずれか記載の組成物。
225. 分化阻害剤が、notchアゴニスト、notchアゴニスト誘導体、HDAC阻害剤、HDAC阻害剤誘導体または前記のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩である、態様191〜211いずれか記載の方法、または態様212〜223いずれか記載の組成物。
226. 幹細胞性誘導物質が、CHIR99021、LY2090314、リチウム、A1070722、BML-284およびSKL2001からなる群より選択される、態様191〜211いずれか記載の方法、または態様212〜223いずれか記載の組成物。
227. 分化阻害剤が、バルプロ酸、SAHAおよびツバスタチンAからなる群より選択されるNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤、態様191〜211いずれか記載の方法、または態様212〜223いずれか記載の組成物。
228. 聴覚障害を有するかまたは発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、被験体の蝸牛組織に少なくとも1つの幹細胞増殖物質を含む組成物を経鼓膜的に投与する工程を含む、方法。
229. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の少なくとも1つを含む、態様228記載の方法。
230. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の両方を含む、態様228または229記載の方法。
231. 細胞の親集団を含む蝸牛組織中の蝸牛細胞の集団を増殖するための方法であって、該方法は、蝸牛組織と、幹細胞増殖物質を接触させて、蝸牛組織中の増殖した細胞集団を形成する工程を含み、幹細胞増殖物質は、(i)幹細胞増殖アッセイにおいて、増殖アッセイ期間中に、増殖アッセイ開始細胞集団から増殖アッセイ最終細胞集団を形成し得、(ii)幹細胞分化アッセイにおいて、分化アッセイ期間中に分化アッセイ開始細胞集団から分化アッセイ最終細胞集団を形成し得、
ここで、
(a)該増殖アッセイ開始細胞集団は、(i)全細胞の増殖アッセイ開始数、(ii)Lgr5
+細胞の増殖アッセイ開始数、(iii)毛細胞の増殖アッセイ開始数、(iv)Lgr5+細胞の増殖アッセイ開始数 対 全細胞の増殖アッセイ開始数の比と等しい増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合、および(v)毛細胞の増殖アッセイ開始数 対 全細胞の増殖アッセイ開始数の比と等しい増殖アッセイ開始毛細胞の割合を有し、
(b)増殖アッセイ最終細胞集団は、(i)全細胞の増殖アッセイ最終数、(ii)Lgr5
+細胞の増殖アッセイ最終数、(iii)毛細胞の増殖アッセイ最終数、(iv)Lgr5
+細胞の増殖アッセイ最終数 対 全細胞の増殖アッセイ最終数の比と等しい増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合、および(v)毛細胞の増殖アッセイ最終数 対 全細胞の増殖アッセイ最終数の比と等しい増殖アッセイ最終毛細胞の割合を有し、
(c)分化アッセイ開始細胞集団は、(i)全細胞の分化アッセイ開始数、(ii)Lgr5
+細胞の分化アッセイ開始数、(iii)毛細胞の分化アッセイ開始数、(iv)Lgr5
+細胞の分化アッセイ開始数 対 全細胞の分化アッセイ開始数の比と等しい分化アッセイ開始 Lgr5
+細胞の割合、および(v)毛細胞の分化アッセイ開始数 対 全細胞の分化アッセイ開始数の比と等しい分化アッセイ開始毛細胞の割合を有し、
(d)分化アッセイ最終細胞集団は、(i)全細胞の分化アッセイ最終数、(ii)Lgr5
+細胞の分化アッセイ最終数、(iii)毛細胞の分化アッセイ最終数、(iv)Lgr5
+細胞の分化アッセイ最終数 対 全細胞の分化アッセイ最終数の比と等しい分化アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合、および(v)毛細胞の分化アッセイ最終数 対 全細胞の分化アッセイ最終数の比と等しい分化アッセイ最終毛細胞の割合を有し、
(e)Lgr5
+細胞の増殖アッセイ最終数は、Lgr5+細胞の増殖アッセイ開始数を少なくとも10倍超え、
(f)毛細胞の分化アッセイ最終数はゼロではない数である、
方法。
232. Lgr5
+細胞の増殖アッセイ最終数がLgr5+細胞の増殖アッセイ開始数よりも少なくとも50倍高い、態様231記載の方法。
233. Lgr5
+細胞の増殖アッセイ最終数がLgr5+細胞の増殖アッセイ開始数よりも少なくとも100倍高い、態様231記載の方法。
234. 蝸牛組織中の増殖された細胞の集団が、親集団が有するよりも高い毛細胞数を含む、態様231〜233いずれか記載の方法。
235. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも2倍大きい、態様231〜234いずれか記載の方法。
236. 分化アッセイ最終毛細胞の割合が、分化アッセイ開始毛細胞の割合よりも少なくとも2倍大きい、態様231〜235いずれか記載の方法。
237. 増殖アッセイ最終毛細胞の割合が増殖アッセイ開始毛細胞の割合よりも少なくとも25%小さい、態様231〜236いずれか記載の方法。
238. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも10%大きい、態様231〜237いずれか記載の方法。
239. 蝸牛組織がネイティブの形態を維持する、態様231〜238いずれか記載の方法。
240. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が生体適合性マトリックスに分散される、態様231〜238いずれか記載の方法。
241. Lgr5
+細胞の増殖アッセイ最終数が、Lgr5+細胞の増殖アッセイ開始数よりも少なくとも100倍高い、態様231〜240いずれか記載の方法。
242. Lgr5
+細胞の増殖アッセイ最終数が、Lgr5+細胞の増殖アッセイ開始数よりも少なくとも500倍高い、態様231〜240いずれか記載の方法。
243. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも2倍大きい、態様231〜242いずれか記載の方法。
244. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも4倍大きい、態様231〜242いずれか記載の方法。
245. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも8倍大きい、態様231〜242いずれか記載の方法。
246. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも16倍大きい、態様231〜242いずれか記載の方法。
247. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも32倍大きい、態様231〜242いずれか記載の方法。
248. 増殖アッセイ最終毛細胞の割合が、増殖アッセイ開始毛細胞の割合よりも少なくとも25%小さい、態様231〜247いずれか記載の方法。
249. 増殖アッセイ最終毛細胞の割合が、増殖アッセイ開始毛細胞の割合よりも少なくとも50%小さい、態様231〜247いずれか記載の方法。
250. 増殖アッセイ最終毛細胞の割合が、増殖アッセイ開始毛細胞の割合よりも少なくとも75%小さい、態様231〜247いずれか記載の方法。
251. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも10%大きい、態様231〜250いずれか記載の方法。
252. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも10%大きい、態様231〜250いずれか記載の方法。
253. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも20%大きい、態様231〜250いずれか記載の方法。
254. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも30%大きい、態様231〜250いずれか記載の方法。
255. 増殖アッセイ最終Lgr5
+細胞の割合が、増殖アッセイ開始Lgr5
+細胞の割合よりも少なくとも50%大きい、態様231〜250いずれか記載の方法。
【0426】
さらなる態様は、以下を含む:
1. 蝸牛組織と、少なくとも1つの幹細胞増殖物質を含む組成物を接触させる工程を含む、
LGR5+細胞集団を有する蝸牛組織中のLGR5+細胞の集団を増殖するための方法。
2. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞増殖アッセイにおいて、LGR5+細胞の開始試験集団を増殖させて、増殖された試験集団を生成し得、増殖された試験集団が、開始試験集団が有するよりも少なくとも10倍多いLGR5+細胞を有する、請求項1記載の方法。
3. 増殖された試験集団が、開始試験集団が有するよりも少なくとも2倍多い分化可能LGR5+細胞を有する、請求項2記載の方法。
4. 増殖された試験集団が、開始試験集団が有するよりも少なくとも10倍多い分化可能LGR5+細胞を有する、請求項2記載の方法。
5. 蝸牛組織の1つ以上の形態学的特徴が維持される、請求項1〜4いずれか記載の方法。
6. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、生体適合性マトリックスに分散される、請求項1〜5いずれか記載の方法。
7. 生体適合性マトリックスが生体適合性のゲルまたは泡である、請求項6記載の方法。
8. 組成物が制御放出製剤である、請求項1〜7いずれか記載の方法。
9. 蝸牛組織がインビボ蝸牛組織である、請求項1〜8いずれか記載の方法。
10. 蝸牛組織がエキソビボ蝸牛組織である、請求項1〜8いずれか記載の方法。
11. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の少なくとも1つを含む、請求項1〜10いずれか記載の方法。
12. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の両方を含む、請求項11記載の方法。
13. 接触が、
最初の段階において、少なくとも有効増殖濃度の幹細胞性誘導物質および少なくとも有効分化阻害濃度の分化阻害剤、ならびに
その後の段階において、少なくとも有効増殖濃度の幹細胞性誘導物質および有効分化阻害濃度未満の分化阻害剤を提供する、
請求項12記載の方法。
14. 蝸牛組織が被験体中にあり、蝸牛組織と組成物の接触が、組成物を被験体に経鼓膜的に投与することにより達成される、請求項1〜9または11〜13いずれか一項記載の方法。
15. 蝸牛組織と組成物の接触が、被験体の聴覚機能の向上をもたらす、請求項14記載の方法。
16. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質、ここで該少なくとも1つの幹細胞増殖物質は、幹細胞増殖アッセイにおいて、LGR5+細胞の開始試験集団を増殖させて、増殖された試験集団を生成し得、該増殖された試験集団は、開始試験集団が有するよりも少なくとも10倍多いLGR5+細胞を有する、
を含む、組成物。
17. 増殖された試験集団が、開始試験集団が有するよりも少なくとも2倍多い分化可能LGR5+細胞を有する、請求項16記載の組成物。[これが適切な要素であることを確認ください。]
18. 増殖された試験集団が、開始試験集団が有するよりも少なくとも10倍多い分化可能LGR5+細胞を有する、請求項16記載の組成物。
19. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、生体適合性マトリックスに分散される、請求項16または18記載の組成物。
20. 生体適合性マトリックスが生体適合性のゲルまたは泡である、請求項19記載の組成物。
21. 蝸牛投与に適した生体適合性マトリックスに分散される少なくとも1つの幹細胞増殖物質
を含む、組成物。
22. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が、幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の少なくとも1つを含む、請求項16〜21いずれか記載の組成物。
23. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の両方を含む、請求項16〜22いずれか記載の組成物。
24. 該組成物が制御放出製剤である、請求項16〜23いずれか記載の組成物。
25. 被験体に経鼓膜的に投与された場合、該制御放出製剤が、幹細胞増殖物質の、即時放出、遅延放出、持続性放出、延長放出、変動性放出、拍動性放出または二方式の放出を分与する、請求項24記載の組成物。
26. 被験体に投与された場合、該制御放出製剤が、被験体に、(a)最初の段階において、少なくとも有効増殖濃度の幹細胞性誘導物質および少なくとも有効分化阻害濃度の分化阻害剤、ならびに(b)その後の段階において、少なくとも有効増殖濃度の幹細胞性誘導物質および有効分化阻害濃度未満の分化阻害剤を提供する、請求項24または25記載の組成物。
27. 幹細胞性誘導物質が、GSK3-ベータ阻害剤、GSK3-ベータ阻害剤誘導体、Wntアゴニスト、Wntアゴニスト誘導体または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩である、請求項11〜15いずれか記載の方法または請求項16〜26いずれか記載の組成物。
28. 分化阻害剤が、notchアゴニスト、notchアゴニスト誘導体、HDAC阻害剤、HDAC阻害剤誘導体または前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩である、請求項11〜15もしくは27いずれか一項記載の方法または請求項16〜26もしくは27いずれか一項記載の組成物。
29. 幹細胞性誘導物質が、CHIR99021、LY2090314、リチウム、A1070722、BML-284およびSKL2001からなる群より選択される、請求項27もしくは28記載の方法または請求項27もしくは28記載の組成物。
30. 分化阻害剤が、バルプロ酸、SAHAおよびツバスタチン Aからなる群より選択されるNotchアゴニストまたはHDAC阻害剤である、請求項27〜29いずれか記載の方法または請求項27〜29いずれか記載の組成物。
31. 聴覚障害を有するかまたは発症するリスクを有する被験体を治療する方法であって、該方法は、
被験体の蝸牛組織に、少なくとも1つの幹細胞増殖物質を含む組成物を経鼓膜的に投与する工程を含む、方法。
32. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の少なくとも1つを含む、請求項31記載の方法。
33. 少なくとも1つの幹細胞増殖物質が幹細胞性誘導物質および分化阻害剤の両方を含む、請求項31または32記載の方法。
34. 非増殖天然状態と比較して、低減されたヒストンデアセチラーゼ、高いNotchの少なくとも1つを発現する増殖Lgr5新生児哺乳動物内耳細胞集団であって、任意に、該細胞が支持細胞中にあり、支持細胞がLgr5+であり、notchアゴニストがHDAC阻害剤であり、Wntアゴニストも含まれ、WntアゴニストがGSK3-ベータ阻害剤であり、および/またはGSK3-ベータ阻害剤がCHIR99021である、細胞集団。
35. 被験体の耳にVPAを含む組成物を投与する方法。
36. 被験体の耳にCHIR99021を含む組成物を投与する方法。
37. 被験体の耳にVPAおよびCHIR99021を含む組成物を投与する方法。
38. Wnt経路のアゴニストおよびnotch経路のアゴニストまたはヒストンデアセチラーゼのアンタゴニストを提供することにより、毛細胞 対 Lgr5支持細胞の比を増加する方法であって、任意に、WNT活性化が、GSK3bの1つ以上のアンタゴニストおよび/またはヒストンデアセチラーゼのアンタゴニストを提供することにより達成され、またはNotch活性化がVPAを提供することにより達成される、方法。
39. 1つ以上のWntアゴニストおよび1つ以上のヒストンデアセチラーゼのアンタゴニストまたはnotchアゴニストを提供することによる、少なくとも3倍Lgr5細胞を増殖するおよび/または少なくとも3倍Lgr5発現を上方制御する方法。
40. 内耳前駆細胞を1つ以上のNotchのアゴニストまたはヒストンデアセチラーゼのアンタゴニストおよびWntのアゴニストと接触させて、細胞を増殖させることにより、内耳前駆細胞を増殖させるための方法であって、任意に、インビトロで該細胞をさらなる増殖因子に暴露し、および/またはさらなる因子は1つ以上のNotchのアゴニストまたはヒストンデアセチラーゼのアンタゴニストおよびWntのアゴニストを含み、インビボで投与されて、一過的な増殖応答を達成する、方法。
41. 1つ以上のNotchアゴニストおよび/またはヒストンデアセチラーゼのアンタゴニストおよび/または1つ以上のwntアゴニストを用いて、培養増殖Lgr5細胞から得られたインビトロで分化した毛細胞の集団。
42. Lgr5前駆細胞と、ある量のNotch阻害剤およびCHIR99021を接触させる工程を含む、Lgr5前駆細胞の分化のための方法であって、任意に分化は毛細胞への分化である、方法。
43. Lgr5発現細胞と、CHIR99021およびNotchアンタゴニストを接触させる工程を含む、Lgr5前駆細胞の毛細胞への分化のための方法。
44. Lgr5発現および/または細胞数増殖の増強のための、ROSのアンタゴニストの添加を有する、本明細書中の任意の組成物。
45. Notch アゴニストがHDAC阻害剤である、本明細書中の任意の組成物。
46. HDAC阻害剤がVPAである、本明細書中の任意の組成物。
47. WntアゴニストがCHIR99021である、本明細書中の任意の組成物。
48. Lgr5+支持細胞の発現を増殖および/または増加するためのCHIRの耳への送達。
49. 毛細胞の数を増加するための耳へのCHIRの送達。
50. Lgr5+支持細胞の発現を増殖および/または増加するためのHDAC阻害剤(例えばVPA)の耳への送達。
51. Lgr5+支持細胞の発現を増加するためのHDAC阻害剤(例えばVPA)およびCHIR99021の耳への送達。
52. 中耳および/または内耳に送達される、本明細書中の任意の組成物。
53. Notchアゴニストまたはヒストンデアセチラーゼのアンタゴニストが拍動性様式で送達され、Wntアゴニストが持続性の様式で送達される、本明細書中の任意の組成物。
54. 薬学的に関連のあるビヒクル中のCHIR99021の投与により聴覚障害を治療または予防する方法であって、任意に本明細書で使用されるビヒクルは食塩水である、方法。
55. 中耳および/または内耳に投与される、本明細書中の任意の組成物。
56. 鼓膜および/または周囲の組織が麻酔され、中耳に針が挿入され、本明細書に記載される薬剤が注射される、方法。
57. 透過促進剤、超音波、エレクトロポレーションおよび当該技術分野に記載されるものについて記載される他の方法により、耳において本明細書に記載される薬物の輸送を増強する方法。
58. 支持細胞または毛細胞の生存を増加し得る薬剤と併用される、本明細書に記載される任意の方法。
59. 用量制限耳毒性に関連のある薬物のより高濃度の送達を可能にするための、患者に送達される本明細書に記載される任意の適切な薬剤。
60. 本明細書に記載される薬剤または方法からインビトロで製造される細胞が、研究目的および/またはハイスループットスクリーニングに使用される、方法。
61. Lgr5+支持細胞の増殖を加速するための薬剤を同定するため、およびまたは支持細胞および/またはそれらの子孫に対する薬物の毒性を試験するため、およびまたは毛細胞の生存を向上する薬剤の能力を試験するために、スクリーニングが使用される、方法または組成物。
62. 少なくとも1つの保護薬(毛細胞を含むが限定されない内耳における細胞の生存を高め得るかまたは該細胞の死を予防し得る)も含む、本明細書中の任意の組成物。
63. 薬学的に許容され得る担体中に、GSK3β阻害剤と組み合わせたNotchアクチベーターおよび/またはHDAC阻害剤の内耳支持細胞増殖誘導量を含む容器、ならびに内耳障害を治療するために容器の内容物を使用するための指示書を含むキット。
64. 薬学的に関連するビヒクル中のGSK3b阻害剤の投与により、聴覚障害を治療または予防する方法。
65. CHIR99021を用いた治療により内耳細胞中にAtoh-1+を産生する方法であって、任意に、内耳細胞はLgr5+であり、かつCHIR99021の存在下で分化して、Atoh-1+細胞が産生され、および/またはAtoh-1+細胞は毛細胞である、方法。
66. atoh-1を発現するように分化し得る上皮幹細胞の増殖を促進する候補薬剤を同定する方法。
67. atoh-1を発現し得る上皮幹細胞の分化を促進する候補薬剤を同定する方法。
68. 上皮幹細胞またはatoh-1発現細胞の生存を促進する候補薬剤を同定する方法。
【0427】
方法に関するさらなるコメント:
一般的な実験方法.
当業者は、本明細書に記載される薬剤を用いて適用、試験および治療するための多くの方法があることを理解する。いくつかの非限定的な例示を以下に記載する。
【0428】
動物
内耳球(inner ear sphere)を使用した試験のために、両方の性別のC57BL/6 (The Jackson Laboratory)またはAtoh1-nGFPレポーターマウス(Lumpkin et al., 2003) (Jane Johnson, University of Texasからの贈り物)を使用した。毛細胞を除去したコルティ器外植片を生成するために、本発明者らは、Mos-iCsp3マウス(系統17) (Fujioka et al., 2011)とPou4f3-Creマウス(Sage et al., 2005) (Douglas Vetter, Tufts Universityからの贈り物)を雑種形成した。全てのインビボ試験について、本発明者らは、Sox2-CreERマウス(Arnold et al., 2011)(Konrad Hochedlinger, Massachusetts General Hospitalからの贈り物)と雑種形成したCreレポーター系統、mT/mG (The Jackson Laboratory)を4週齢で使用した。遺伝子型決定後、系統追跡に二重トランスジェニック動物を使用した。本発明者らは、mT/mG; Sox2-CreERマウスの若い成体野生型同腹子を使用して、バックグラウンドに依存して変化することが知られる(Harding et al., 2005; Wang et al., 2002)雑音に応答する株効果(strain effect)を防いだ。PCRによりマウスの遺伝子型を決定した。全てのプロトコルは、ヒトのケアおよび実験動物の使用に関してPublic Health Serviceの方針に従って、the Institutional Animal Care and Use Committee of Massachusetts Eye and Ear InfirmaryによりまたはKeio University Union on Laboratory Animal Medicineの倫理委員会により承認された。
【0429】
内耳球の単離
両方の性別の1〜3日齢新生児マウスの卵形嚢および蝸牛を切除し、神経幹および間葉組織を注意深く除去した後、トリプシン処理を行い分離した。分離した細胞を遠心分離し、ペレットを再懸濁して、70μm細胞ストレーナー(BD Biosciences Discovery Labware)によりN2/B27補充物、EGF(20ng/ml)、IGF1(50ng/ml)、bFGF(10ng/ml)および硫酸ヘパリン(50ng/ml)を含むDMEM/F12培地(Sigma)に濾過した。単一細胞を、非付着ペトリ皿(Greiner Bio-One)中で培養して、球のクローン増殖を開始した(Martinez-Monedero et al., 2008)。培養の2〜3日後に形成された球を4〜6日毎に継代した。球を遠心分離し、ペレットを、ピペットチップを用いて機械的に分離し、培地に再懸濁した。本明細書に記載される実験には継代3〜4回(passage 3-4)の球を使用した。これらの細胞は、分化の開始前、毛細胞マーカーについては陰性である(Oshima et al., 2007)。分化のために、浮遊している球を以前に記載されるように(Martinez-Monedero et al., 2008; Oshima et al., 2007)フィブロネクチン被覆4ウェルプレート(Greiner Bio-One)に移した。接着した球は、N2/B27補充物を含むが成長因子は含まないDMEM/F12培地中、5〜7日で分化した。γ-セクレターゼ阻害剤、DAPT、L-685458、MDL28170 (Sigma)およびLY411575 (Santa Cruz)を、細胞接着の次の日にいくつかの濃度で添加した。
【0430】
新生児蝸牛外植片
両方の性別の3日齢新生児C57BL/6またはMos-iCsp3;Pou4f3-Cre二重トランスジェニックマウスの蝸牛をハンクス溶液(Invitrogen)に切り出した。平らな蝸牛表面調製物を得るために、本発明者らは、らせん神経節、ライスナー膜および最も基底の蝸牛分節(cochlear segment)を除去した。外植片を、ポリ-L-オルニチン(0.01%, Sigma)およびラミニン(50μg/ml, Becton Dickinson)で被覆した4ウェルプレート(Greiner Bio-One)上で平板培養した。蝸牛外植片を、10%ウシ胎仔血清を添加したDMEM (Invitrogen)中で培養した。全ての培養物を5% CO2/20% O2加湿インキュベーター(Forma Scientific)中で維持した。
【0431】
音響過剰暴露
4週齢のマウスを、小さな反響するチャンバー中、自由に動ける場所(free field)で、起きた状態で拘束せずに曝した(Wang et al., 2002)。116dB SPLで与えられる8〜16kHzオクターブ帯ノイズに2時間暴露して、音響外傷を生じさせた。暴露刺激は、カスタム白色騒音源により生成し、フィルターをかけ(60dB/オクターブ傾斜を有するBrickwallフィルター)、増幅し(Crownパワーアンプ)、反響する箱の上部の穴にぴったり適合する指数ホーンを通して送達された(JBL圧縮ドライバー)。音暴露レベルは、0.25インチBrueel and Kjaerコンデンサーマイクを使用してそれぞれのケージ中の4点で測定し、音圧は、これらの測定点にわたり<0.5dBずつ異なることが見出された。
【0432】
標的薬剤(例えばLY411575)の全身または正円窓投与
体重12〜16gの4週齢のマウスを使用した。手術の前に、動物をケタミン(20mg/kg、腹腔内[i.p.])およびキシラジン(100mg/kg、i.p.)で麻酔し、リドカイン(1%)の局所投与後、切開は外耳道(external meatus)付近の耳介の後方で行った。耳胞(otic bulla)を開いて、正円窓のニッチ(niche)にアプローチした。炎の中で一本のPE 10チューブ(Becton Dickinson)の末端を細い先端まで引っ張って、正円窓のニッチに緩やかに挿入した。LY411575をDMSOに溶解して、ポリエチレングリコール400 (Sigma)中10倍希釈して、4mMの終濃度にした。この溶液(総体積1μl)を左耳の正円窓のニッチに注射した。10% DMSOを有するポリエチレングリコール400を対照として右耳に注射した。溶液は2分間投与した。このアプローチは臨床的に広く使用されており、内耳を使用せずに済ませる(sparing)が、薬物の内耳への送達のための正円窓膜により提供される局所的なルートをさらに利用する(Mikulec et al., 2008)。ニッチにゼラチンを置いて溶液を維持し、傷が閉じた。
【0433】
全身投与のために、0.5%(w/v)メチルセルロース(WAKO)に溶解したLY411575 (50mg/kg)を、1日に1回5日間連続して経口注入した。雑音暴露の1日前、2日後、1週間後、2週間後ならびに1、2および3ヶ月後にABRにより聴力を測定した。
【0434】
qRT-PCR
コルティ器をHBSS(Invitrogen)に切り出し、さらなる使用までRNAlater (Ambion)中-80℃で保存した。RNeasy Mini Kit (QIAGEN)を製造業者の指示書に従って使用して全RNAを抽出した。逆転写のためにSuperScript II (Invitrogen)をランダムヘキサマーととも使用した。逆転写条件は、25℃で10分、その後37℃で60分であった。反応は95℃、5分で終了した。製造業者の指示書に従い、cDNAをTaqman Gene Expression Mastermix (Applied Biosystems)およびHes5、Atoh1または18Sプライマー(Applied Biosystems)と混合した。qPCR (Applied Biosystems 7900HT)により試料を96ウェル中3回分析し、PCR熱サイクリング条件は以下の通りであった:95℃で2分の最初の変性、95℃で15秒の変性、ならびに60℃で1分のアニーリングおよび伸長を45サイクル。それぞれのプライマーについて条件を一定に維持した。各PCR反応は3回行った。ΔΔCT法を使用して相対的遺伝子発現を分析した。遺伝子発現は18S RNAに対して計算し、適用したcDNAの量を調整して、その結果18S RNAについてのCt値は8〜11であった。
【0435】
免疫組織化学
球について、細胞をPBS中4%パラホルムアルデヒドで10分間固定した。1% BSAおよび5%ヤギ血清を補充したPBS中0.1% Triton X-100(PBT1)で1時間ブロッキングして免疫染色を開始した。固定して浸透化した細胞を、ミオシンVIIaに対するポリクローナル抗体(Proteus Biosciences)を有するPBT1中で一晩インキュベートした。試料は、PBSで20分間3回洗浄した。Alexa 488にコンジュゲートした二次抗体(Molecular Probes)により一次抗体を検出し、二次抗体のみを陰性対照として使用した。試料をDAPI (Vector Laboratories)またはHoechst 33258 (Invitrogen)で10分間対比染色し、落射蛍光顕微鏡検査(Axioskop 2 Mot Axiocam, Zeiss)により観察した。
【0436】
外植片について、コルティ器をPBS中4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。5%ロバ血清を補充したPBS中0.1% Triton X-100(PBT1)で組織を1時間ブロッキングして免疫染色を開始した。固定および浸透化した断片を、ミオシンVIIa(Proteus Biosciences)、Sox2 (Santa Cruz)、GFP (Invitrogen)、プレスチン(Santa Cruz)、神経フィラメントH (Chemicon)およびCtBP2 (BD Biosciences)に対する抗体と共にPBT1中一晩インキュベートした。試料をPBSで20分間3回洗浄した。Alexa 488および647にコンジュゲートした二次抗体(Molecular Probes)を使用して一次抗体を検出した。試料をローダミンファロイジン(Invitrogen)で15分間染色して共焦点蛍光顕微鏡検査(TCS SP5, Leica)により観察した。
【0437】
成熟蝸牛の回収のために、深く麻酔したマウスを、8.6%スクロースを含む0.01Mリン酸バッファ(pH7.4)、次いで0.1Mリン酸バッファ(pH7.4)中の新たに脱重合化した4%パラホルムアルデヒドからなる固定液で経心臓的(transcardially)に還流した。断頭後、側頭骨を除去して、すぐに同じ4℃の固定液に入れた。正円窓、卵円窓および蝸牛の先端に小さな開口を開けた。固定液に4℃で一晩浸漬した後、側頭骨を5%スクロースを含む0.1M EDTA(pH7.4)中、4℃で2日間撹拌しながら脱灰した。脱灰後、ホールマウント調製のために蝸牛を4つの断片に微小に切り出した。5%ロバ血清を補充したPBS中0.1% Triton X-100(PBT1)で組織を1時間ブロッキングして免疫染色を開始した。固定して浸透化した断片を、ミオシンVIIa (Proteus Biosciences)、Sox2 (Santa Cruz)およびGFP (Invitrogen)に対する抗体と共にPBT1中一晩インキュベートした。試料をPBSで20分間3回洗浄した。Alexa 488、568および647にコンジュゲートした二次抗体(Molecular Probes)により一次抗体を検出し、共焦点蛍光顕微鏡検査(TCS SP5, Leica)により観察した。それぞれの場合について蝸牛の長さを求め、蝸牛周波数マップをコンピューターで計算し、5.6、8.0、11.3、16.0、22.6、32および45.2kHzの領域から内有毛細胞を正確に場所を突き止めた。薄片化のために、固定した側頭骨をPBS中30%スクロースに4℃で沈め、OCT中室温で1時間インキュベートし、液体窒素中で凍結させた。染色プロトコルは、DAPI (Vector Laboratories)を用いた対比染色以外は上述と同じであった。標本を落射蛍光顕微鏡検査(Axioskop 2 Mot Axiocam, Zeiss)により観察した。
【0438】
細胞計数
MetaMorphソフトウェアを使用して球について細胞計数を行った。DAPI陽性またはHoechst陽性核から細胞数を決定した。反復細胞計数により試験変動を<1%にした。外植について、内有毛細胞、外有毛細胞および外有毛細胞領域中の支持細胞を、蝸牛全マウント上で計数した。Atoh1-nGFPマウス中ミオシンVIIa抗体または内因性GFPにより毛細胞を同定した。全長蝸牛または蝸牛外植片培養物の高倍率画像を集めてPhotoShop CS4 (Adobe)で解析した。ImageJソフトウェア(NIH)を使用して蝸牛全マウントの全長および個々の計数した断片の長さを測定した。内有毛細胞、外有毛細胞および外有毛細胞領域中の支持細胞の総数を、1,200〜1,400μm(先端、中先端(midapical)、中基底(midbasal)および基底)の4つの蝸牛断片のそれぞれにおいて計数した。次いでそれぞれの断片について密度(100μm当たりの細胞)を計算した。成熟蝸牛について、コンピューターで計算した周波数マップに従って周波数特異的領域(5.6、8.0、11.3および16.0kHz)の高倍率画像を集めて回析した。100μm中の内有毛細胞、外有毛細胞および外有毛細胞領域中の支持細胞の数を、4つの蝸牛の周波数特異的領域のそれぞれにおいて計数した。GFPにより同定されたSox2系統陽性細胞の数は、同じ方法で計数した。
【0439】
ABR測定
聴性脳幹反応(Kujawa and Liberman, 1997; Maison et al., 2003)を、雑音暴露の前および1日後、ならびに手術の1週間後、1ヶ月後および3ヶ月後に、7つの対数間隔周波数(5.6〜45.2kHzの半オクターブ段階)でそれぞれの動物において測定した。マウスをケタミン(100mg/kg、i.p.)およびキシラジン(20mg/kg、i.p.)で麻酔した。アースを尾の近くにし、針電極を頭頂および耳介に挿入した。ABRは5msトーンピップ(tone pip)で誘発された(35/sで送達されるcos2開始包絡線(onset envelope)で0.5msで上下)。応答をLabVIEW-駆動データ取得系において増幅、フィルターおよび平均した。音レベルは、≧10dB閾値未満から<80dB SPLまでので、5dB段階で増加した。それぞれの音レベルで、「アーティファクト拒絶(artifact reject)」を使用して、(刺激極性を変化させて)1,024の応答を平均し、ピークからピークまでの応答振幅が15μVを超える場合、応答波形を捨てた。積み重ねた波形の視覚的観察により、「ABR閾値」を、一般的に、ピークからピークまでの応答増幅がノイズフロア(noise floor)(約0.25μV)より上に有意に上昇するレベルのすぐ下のレベル段階に対応する、任意の波が検出され得る最低SPLレベルと定義した。利用可能な最高の音レベルで応答が観察されない場合、閾値を、そのレベルよりも5dB大きいものと指定し、その結果、統計学的試験を実施できる。振幅 対 レベル関数について、波Iピークは、各音レベルでの視覚的観察により同定され、ピークからピークまでの振幅はコンピューターで計算した。
【0440】
定量化および統計学的解析
両側マン-ホイットニーU検定を使用して、治療群の間の差を比較した。同じ動物の治療前後の変化は、両側ウィルコクソンt検定により解析した。反復測定ANOVAを使用して、群の間の時間依存的な差を比較した。データは、本文および図中に平均±SEMとして表す。0.05未満のp値を有意とみなした。
【0441】
遺伝子型決定プライマー
本発明者らは、以下の遺伝子型決定プライマーを使用した:Mos-iCsp3マウスについてLacZ F:5'-ttcactggccgtcgttttacaacgtcgtga-3'
(配列番号:1)およびLacZ R:5'-atgtgagcgagtaacaacccgtcggattct-3'
(配列番号:2);Pou4f3CreおよびSox2CreERマウスについてCre F:
5'-tgggcggcatggtgcaagtt-3'
(配列番号:3)およびCre R:5'-cggtgctaaccagcgttttc-3'
(配列番号:4);ならびにmT/mGマウスについてoIMR7318野生型F:5'-ctctgctgcctcctggcttct-3'
(配列番号:5)、oIMR7319野生型R:5'-cgaggcggatcacaagcaata-3'
(配列番号:6)、およびoIMR7320変異型R:5'-tcaatgggcgggggtcgtt-3
(配列番号:7)。
【0442】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【実施例】
【0443】
実施例1
細胞培養:ヘテロ接合体Lgr5-EGFP-IRES-CreERT2マウスをJackson Labsから入手して、新生児P2〜P5マウスを細胞単離に使用した。Lgr5-GFPマウスからコルティ器を単離して、トリプシンを使用してさらに一細胞に分離した。次いで細胞を以前記載されたように培養した(Yin et al, 2014)。簡潔に、細胞をマトリゲルに閉じ込めてて、24ウェルプレートのウェルの中心で平板培養した。マトリゲルの重合後、EGF(50ng/ml)(上皮増殖因子)、bFGF(20ng/ml)(線維芽細胞増殖因子)およびIGF1(50ng/ml)(インスリン様増殖因子1)を含む増殖因子、ならびにCHIR99021(5μM)、バルプロ酸(1mM)、2-ホスホ-L-アスコルビン酸(280μM)および616452(2μM)を含む小分子を含む500μlの培養培地(N2およびB27を含むAdvanced DMEM/F12)を添加した。Y-27632 (10μM)を最初の2日間に添加した。いくつかの実験において、bFGFは、50ng/mlで使用した。
【0444】
単一細胞単離について、次いでコルティ器を細胞回収溶液(Corning)で1時間処理して、下にある間葉から蝸牛上皮を分離した。次いで上皮を回収して、トリプシン(Life Technologies)で15〜20分間、37℃で処理した。機械的粉砕により得られた単一細胞を細胞ストレーナー(40μm)でろ過して、細胞培養培地で洗浄した。Lgr5-高の細胞およびLgr5-低の細胞のFACS分類についてFACS ARIA (BD)を使用して、Lgr5レベルの指標としてLgr5-GFPを使用した。分類された単一細胞を、増殖因子および小分子を補充した内耳細胞培養培地中、マトリゲル中で培養した。Y-27632を最初の2日に添加した。
【0445】
FACS分析:細胞培養培地を除去してトリプシンを添加した。37℃で10〜20分のインキュベーション後、コロニーを単一細胞に分離した。血球計算板およびトリパンブルー染色を使用して生細胞数を数えた。次いで細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で染色して、フローサイトメトリーで分析した。全細胞数にGFP陽性細胞のパーセンテージをかけてGFP陽性細胞数を計算した。
【0446】
結果
Lgr5細胞は蝸牛上皮中の支持細胞の部分集合中に存在する。Lgr5-GFPマウス系統を使用して、本発明者らは、マトリゲル系3D培養系において蝸牛から単離された単一のLgr5
+支持細胞を増殖する複数の経路の活性化または阻害を試験した。内耳上皮細胞は、上皮増速因子(EGFまたはE)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはF)およびインスリン様増殖因子1(IGF-1またはI)を含む増殖因子の存在下で神経球として培養し得ることが示されている(Li et al., 2003)。しかしながら、この条件では、Lgr5-GFP細胞の増殖は観察されなかった(
図1A)。本発明者らは最初に、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)阻害剤、CHIR99021 (CHIRまたはC)およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸(VPAまたはV)を含む小分子と、増殖因子カクテルの組合せを試験した。本発明者らは、CHIRおよびVPAがLgr5-GFP細胞の増殖を大きく促進することを見出し、Lgr5-GFP+細胞の大きなコロニーが培養中で観察された(
図1B)。フローサイトメトリー分析により、CHIRとVPAの組み合わせが、GFP+細胞のパーセンテージを大きく増加することが明らかになった(
図2A)。小腸LGR5+細胞について以前に使用された培養条件(Yin et al., 2014)を使用して内耳Lgr5細胞を培養した場合にも同様の表現型が観察されたが、程度は小さかった(
図2B)。細胞数の定量により、CHIRとVPAの添加で、細胞増殖および細胞のLgr5-GFP発現が有意に増加され、Lgr5-GFP細胞において-500倍の増加が生じることが明らかになった(
図2C)。
【0447】
小腸のコロニーとは異なり、内耳上皮由来の細胞は、継代後に増殖能力を失った。本発明者らは、細胞の長期間の培養には他の因子が必要であると理由づけをし、さらなる因子を同定するためのスクリーニングを行った。安定な形態のビタミンCである2-ホスホ-L-アスコルビン酸(pVc, Sigma)の添加により、Lgr5+細胞の増殖がさらに2〜3倍増加し(
図3および
図8b)、これをさらに培養培地に含ませた(EFI.C.V.P)。本発明者らはまた、bFGF濃度の増加(20ng/mlから50ng/ml)により、細胞増殖が増加した(
図4)ことを見出したため、後の実験において50ng/mlでbFGFを使用した。RARアゴニストであるTTNPBの添加により、細胞増殖がわずかに増加したが、GFP発現は増加しなかった(
図5)ため、本発明者らは新生児細胞の培養条件にTTNPBを含めなかった。主要なシグナル伝達経路の小分子調節物質のさらなるスクリーニングにより、これらのシグナル伝達経路調節物質がLgr5-GFP発現を増加しないことが示された(
図6)。興味深いことに、本発明者らは、Lgr5の発現の促進に必要不可欠である小腸幹細胞におけるBMP阻害の役割とは異なり、BMP阻害剤であるLDN193189の添加により、Lgr5-GFP発現が大きく減少したことを見出した(
図6)。また、Tgf-β受容体(ALK5)阻害剤である616452 (Calbiochem, 6、レプソックスとしても公知)は、Lgr5-GFP発現を増加しなかったが、本発明者らは、616452を用いた条件においてコロニーは、対照条件よりも大きく成長し、より明るいGFP発現を有する傾向があることを観察した(
図7)。さらなる検証により、616452の添加も継代の前後で細胞増殖を増加し(2〜3倍)、5世代までの間のコロニーの継代を可能にすることが示された(
図8bおよび
図9f)。まとめると、小分子(CVP6)の添加により、増殖因子単独(EFI)と比較してLgr5+細胞数が>2000倍増加した(
図8および
図9)。
【0448】
本発明者らの培養系(継代なし)における個々の因子の相対的な重要性を調べるために、本発明者らは、培地からそれぞれの因子を別々に除去し、培養10日後の内耳上皮細胞の細胞増殖およびLgr5発現を定量した(
図8b)。CHIRまたはbFGFの除去は、増殖に対して最大の効果を有し、CHIRの除去はLgr5発現に最大の効果を有した。EGFまたは616452の除去は増殖の有意な減少を引き起こし、VPAまたはpVcの除去はLgr5発現を大きく低減した。IGF1の存在は、細胞増殖およびLgr5発現に重要でない有益な効果を有した。組み合わせた薬剤での処理(EFICVP6)により、培養の10日後に、全細胞、Lgr5+細胞およびLgr5+細胞のパーセンテージの最大数が生じた。これらの結果は、bFGFおよびCHIRは最も重要であり、他の因子は最大の増殖およびLgr5発現を促進したことを示唆する。GFP発現および細胞増殖の直接可視化により同様の結果が得られた(
図8c)。
【0449】
本発明者らはさらに、個々の因子の強力な機能を調べた。細胞増殖およびLgr5発現の促進におけるCHIRの効果は、R-spondin1と組み合わせたWnt3aにより部分的に繰り返せ(
図9a)、これはWnt経路の活性化におけるCHIRの役割を示唆した。Atoh1-nGFPマウス系統を使用して、本発明者らは、VPAが毛細胞の自発的な分化を抑制したことを見出し(
図9d)、これは小腸幹細胞におけるNotch活性化の維持におけるVPAの役割(Yin et al., 2014)と一致する。
【0450】
単一の分類されたLgr5-GFP細胞が本発明者らの増殖条件(EFICVP6)においてGFP+コロニーに成長し得ることを示すために、本発明者らは、内耳上皮から単一Lgr5-GFP細胞をGFP-高およびGFP-低の小部分に分類した。EFICVP6条件における増殖の14日後、Lgr5-GFPを高く発現する高純度のコロニーに含まれる単一のGFP-高細胞から培養を開始した。一方で、GFP-高およびGFP-低の両方ならびにGFP陰性のコロニーに含まれるGFP-低の細胞から、培養を開始した(
図10)。この実験は、単一の分類されたLgr5-GFP細胞をEFICVP6条件で増殖し得ることを示した。
【0451】
実施例2:増殖されたLgr5-陽性細胞の毛細胞への分化
材料および方法
分化プロトコル:増殖されたLgr5-陽性細胞の分化のために、細胞増殖条件(EFICVP6)における培養の10日後、細胞コロニーを新しいマトリゲルに移して、分化培地でさらに培養した。分化培地は、Gsk3β阻害剤(例えばCHIR99021)ありまたはなしで、Notch経路阻害剤(例えばDAPT、D、5μMまたはLY411575、LY、5μM)を含む。培地は2日毎に交換した。分化培地を用いたインキュベーションのさらに6〜10日後、qPCR分析のためにコロニーを回収し、または4% PFAで固定して毛細胞マーカーMyo7aおよびプレスチンで免疫染色した。
【0452】
RNA抽出および定量的リアルタイムPCR(qPCR):RNAは、製造業者のプロトコルに従って、培養された細胞から単離した(RNeasy Mini Kit; Qiagen)。定量的リアルタイムPCRは、市販のプライマーおよびTaqManプローブ(Myo7aおよびHprt Life Technologies)を使用して、QuantiTect Probe PCRキット(Qiagen)により行った。
【0453】
免疫細胞化学染色:4%パラホルムアルデヒド/PBS中15〜20分間、室温でコロニーを固定し、次いで0.1% BSAを含むPBSで2回洗浄した。次いで細胞を PBS中0.25% Triton X-100で、4℃、30分間浸透化した。0.1% BSAを含むPBSでの2回の洗浄後、細胞をブロッキング溶液(Power Block, Biogenex)で1時間インキュベートした。希釈した一次抗体(Power Block溶液中)を室温で4時間または4℃で一晩適用した。使用した一次抗体は、ミオシンVIIA(1:500、Proteus Biosciencesのウサギポリクローナル)およびプレスチン(1:400、Santa Cruzのヤギポリクローナル)であった。それぞれ5分間の3回の洗浄後、二次抗体(Alexafluor 594および647コンジュゲート化;Invitrogen)を1:500希釈で添加して、室温で30分間インキュベートした。4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、Vector Laboratories)で核を可視化した。倒立蛍光顕微鏡(EVOS; Advanced Microscopy Group)により染色を可視化した。
【0454】
結果
増殖されたLgr5-陽性細胞が幹細胞であることの重要な機能的証明として、本発明者らは、増殖した細胞の分化能力をインビトロで試験した。Notch阻害は、インビボではLgr5支持細胞の毛細胞への分化を促進することが示された(Jeon et al., 2011)。また、βカテニン発現により達成されるWnt経路活性化も、Atoh1発現および毛細胞分化を促進することが示されている(Shi et al., 2013)。このため、本発明者らは、増殖されたLgr5細胞の毛細胞分化の誘導におけるこれらの条件を試験した。
【0455】
本発明者らは最初に、毛細胞マーカーMyo7aの発現のための増殖因子(EGF、bFGF、IGF1)または小分子(CHIR、VPA、616452、pVc)およびNotch阻害剤(例えばLY411575)の異なる組み合わせによる複数の条件を試験した。増殖因子または小細胞なしではあるがCHIRおよびNotch阻害剤を有する条件は、Myo7a発現の最も高い増加を示し(
図11)、これは増殖因子(EGF、bFGF、IGF1)または小分子(VPA、616452およびpVc)が毛細胞の分化を阻害し、分化培地から除去すべきであることを示唆した。
【0456】
本発明者らは、上述の手順で増殖されたLgr5-GFP細胞を、DAPT、γ-セクレターゼ阻害剤およびCHIR、GSK3阻害剤で処理した。分化の10日後、毛細胞の生成を、ミオシンVIIAおよびプレスチンを含む毛細胞マーカーを用いた染色により可視化した。DAPTとCHIRの組合せは、ミオシンVIIAおよびプレスチン陽性のコロニー(外有毛細胞)(
図12a、上パネル)、およびミオシンVIIA陽性であるがプレスチン陰性であるコロニー(内有毛細胞)(
図12a、下パネル)が示す毛細胞の生成を誘導した。GSK3阻害剤によるWntシグナル伝達の活性化なし、または小分子Wnt経路阻害剤(IWP-2、2μM)によるWntシグナル伝達の阻害ありで、毛細胞生成はまれに観察される(
図12b)。
【0457】
実施例3:成体内耳組織由来のLgr5-発現細胞の増殖および毛細胞分化
材料および方法
生体組織について、抽出できたインタクトの蝸牛の量が限定されていたため、下にある間葉から血管条を除去したが、上皮は除去しなかった。成体細胞について、さらなる小分子TTNPB(2μM、Tocris)を添加し、完全培地はEGF、bFGF、IGF-1、CHIR99021、VPA、pVc、616452およびTTNPBを含む。
【0458】
結果
本発明者らは、条件EFICVP6は成体マウス由来のLgr5内耳細胞の生存および増殖を支持するが(
図13)、増殖は非常に遅いことを見出した。そのため本発明者らは、成体マウス由来のLgr5細胞の増殖を促進し得るさらなる因子についてさらなるスクリーニングを実施した。本発明者らは、小分子RAシグナル伝達経路アゴニストであるTTNPBが、培養した細胞の増殖を有意に促進したことを見出した(
図14)。そのためLgr5内耳細胞の増殖培地にTTNPBをさらに組み込んだ。
【0459】
本発明者らは、6週齢成体マウスから単離した細胞の細胞コロニー形成を追跡した。EFICVP6+TTNPB条件での培養の5日後、単一細胞は、大きなGFP+コロニーを形成し、この条件での成体Lgr5細胞の増殖が確認される(
図15)。単一の蝸牛から多数のGFP+コロニーを増殖することができる(
図14)。
【0460】
実施例1〜3の考察
図1〜14に示される実験は以下のことを示す:
【0461】
図1および
図2
増殖因子、ならびにCHIRおよびVPAを含む小分子を含むカクテルは、インビトロにおいてLgr5内耳前駆細胞の増殖およびGFP発現を促進し、これらの細胞の増殖(expansion)を可能にする。
【0462】
図3.
pVc(2-ホスホ-L-アスコルビン酸)の添加により、Lgr5内耳前駆細胞の細胞増殖が増加される。
【0463】
図4.
bFGF濃度の増加により、Lgr5内耳前駆細胞の増殖が促進される。
図5〜7
【0464】
さらなる小分子(616452)はLgr5内耳前駆細胞の増殖を促進する。
【0465】
図8.
1. 増殖因子および小分子を含むカクテルはインビトロにおいてLgr5+内耳前駆細胞を維持する。
【0466】
2. 全ての因子(EGF、bFGF、IGF1、CHIR99021、VPA、pVc、616452(EFICVP6))を含むカクテルは、支持細胞の増殖およびGFP発現において、4.7x10
5全細胞数、58% GFP+細胞および2.7x10
5 GFP+細胞という最良の結果を示す。
【0467】
3. カクテル中の因子のほとんどが重要である:
CHIRは細胞増殖およびGFP発現を促進するのに重要である:
CHIRを除去することで、全細胞数の約100倍の低下(4.7x105 対 5.0x103)およびGFP+細胞の約50倍の低下(58% 対 1.3%)が生じる。GFP+細胞の約4000倍の低下(2.7x105 対 約65)により、bFGFは、細胞増殖の促進に重要であり、GFP発現に重要である:bFGFを除去することで、細胞数の10倍の低下(4.2x10
4全細胞数)およびGFP+パーセンテージの約2倍の低下(58% 対 32%)ならびにGFP+細胞数の20倍の低下(2.7x10
5 対 1.4x10
4 GFP+細胞)が生じる。
【0468】
4. EGF、616452は、細胞増殖を促進するのに重要である。EGFを除去することで、全細胞数(2.2x105)およびGFP+細胞数(1.1x105)の約2倍の低下が生じる。616452を除去することで、全細胞数(1.7x10
5)およびGFP
+細胞数(9.8x10
4)の約3倍の低下が生じる。
【0469】
5. VPAおよびpVcはGFP維持の促進に重要である。VPAを除去することで、GFPパーセンテージ28%およびGFP+細胞数(1.1x105)の2倍の低下が生じる。pVcを除去することで、GFPパーセンテージ25%およびGFP
+細胞数(1.1x10
5)の2倍の低下が生じる。
【0470】
6. IGF-1は細胞増殖(4.1x10
5全細胞)またはGFP維持(58% 対 53% GFPパーセンテージ)の促進に重要ではない効果を有する。
【0471】
図9
1. CHIRはWnt経路を通して機能する。
【0472】
2. R-spondin1と合わせることで、Wnt3aはCHIRにとって代わり得るが、それほど効果的ではない。
【0473】
3. VPAは分化の抑制を通して機能する(おそらくNotch活性化/Notch活性の維持による)。
【0474】
4. HDAC6阻害剤は、VPAのかわりにHDAC6阻害剤を使用した場合には機能しない(データは示さず、ツバスタチン A、ACY1215およびCAY10603を試す)。
【0475】
5. pVcはGFP発現を促進する。
【0476】
6. ラミニン511はGFP発現を促進する。
【0477】
7. TgfβI型受容体(TgfβR1、ALK5)阻害剤616452は、細胞培養の延長を可能にする。
【0478】
8. CHIRは、Atoh-1+細胞への分化を促進し得る。
【0479】
図10.
単一の分類されたLgr5-GFP細胞は、増殖因子および小分子を含むカクテル中で増殖され得る。
【0480】
図11
1. Wnt経路/CHIRの存在は、Notch阻害剤の分化効率を増加する。
【0481】
2. 培養されたLgr5前駆細胞は内有毛細胞および外有毛細胞の両方を生じ得る。
【0482】
いくつかのインビボ態様において、増殖因子は必要ではない。
【0483】
図13
1. LGR5+細胞の増殖プロトコルはマウス由来の成体蝸牛に働き、該細胞はLgr5発現を失うことなく継代し得る。
【0484】
図14〜15
小分子TTNPBは、成体Lgr5内耳前駆細胞の増殖を促進する。
【0485】
実施例4:毛細胞の再生のための内耳への小分子の送達のためのポロキサマー407ヒドロゲル
1. 方法
1.1 製剤の調製
ポロキサマー-407ヒドロゲルは、「冷却法」を使用して調製された。簡潔に、計量した量のポロキサマー-407を、40mlの冷たい超純水または冷たいPBS(pH7.4)に添加して、磁性撹拌プレート上4℃で一晩撹拌し、溶解を完了した。18%(w/w)から25%(w/w)までの範囲の複数の濃度のポロキサマー-407溶液を調製した。バルプロ酸(VPA)およびリン酸化アスコルビン酸(PAC)を含む親水性薬物を5mlのポロキサマー-407溶液に添加し、磁性撹拌プレート上4℃で溶解した。ポロキサマー-407 対 薬物の重量比を変えて、ポロキサマー-407のゲル化特性に対する薬物の効果を理解し、親水性薬物を可能な限り最大まで充填して37℃でゲル化する最適な処方を決定した。製剤のゲル化温度は、「視覚的チューブ反転法」により決定した。簡潔に、親水性の薬物ありまたはなしで、ポロキサマー407溶液を含むガラスバイアルを水槽に配置した。温度をゆっくり上昇し、ガラスバイアルを傾けた際に溶液が流れなくなる温度をゲル化温度と記した。
【0486】
CHIR 99021 (CHIR)、レプソックスおよびTTNPBを含む疎水性薬物を封入するために、DMSO中のそれらのストック溶液の適切な容量を、親水性薬物を含むポロキサマー-407溶液に添加して、4℃でピペッティングにより混合した。疎水性薬物と共に添加される最大DMSO濃度は、ゲルの全量に対して5〜6%(v/v)に制限された。より高い濃度のDMSOは、ゲルのゲル化温度を低下した。製剤のゲル化温度は、前述の「視覚的チューブ反転法」により決定した。
【0487】
1.2 インビトロ薬物放出
封入された薬物のポロキサマー-407ヒドロゲルからの放出速度を理解するために、pH7.4、37℃の温度条件で透析バッグ法を使用して、インビトロ放出試験を行った。簡潔に、1mlのPBSに懸濁した30μLのゲルを含む密封した透析バッグ(3.5〜5kDaカットオフ)を10mLの放出媒体(PBS)中に配置した。放出媒体を100rpmで撹拌して、膜と外部溶液の界面での停滞した層の形成を防いだ。HPLCを使用した薬物の分析のために所定の間隔で1mLのアリコートを媒体から取り出し、等量の新しい媒体と置き換えた。
【0488】
結果
2.1 製剤化およびゲル化:異なる製剤の熱ゲル化挙動を調査して、全ての薬物を充填しながら、迅速かつ再現性のある室温と体温の間での液体-ゲル転移を提供する最適な処方を決定した。ポロキサマー407溶液について、薬物なしでは、ポロキサマー407の濃度が増加するにつれてゲル化温度は低下した。それぞれ88mg/mlより高い濃度および14mg/mlより高い濃度のVPAおよびpVcを含む親水性の薬物の添加により、ポロキサマー-407溶液のゲル化が阻害された。そのため、それぞれ88mg/mlおよび14mg/ml以下のVPAおよびpVcの濃度を有する18%(w/w)ポロキサマー溶液を使用してゲルを調製した。CHIR、レプソックスおよびTTNPBを含む疎水性薬物のDMSO中のストック溶液からの適切な容量を、親水性薬物を含むポロキサマー-407溶液に添加して、ピペッティングにより4℃で混合した。ストック溶液中の薬物の濃度を、CHIR、レプソックスおよびTTNPBのそれぞれについて55.6〜69.5mg/ml、23〜28.75mg/mlおよび35mg/mlに維持し、最終製剤中のDMSO総濃度を確実に5〜6%未満にした。より高い濃度のDMSOは、製剤のゲル化温度を大きく低下させた。最終製剤は保存温度(4℃)で粘性の液体であり、液体-ゲル転移温度(37℃)を超えると半固体のゲルを形成した。
【0489】
2.2 インビトロ薬物放出:封入された薬物のヒドロゲル製剤からのインビトロ放出は、透析バッグ法を使用して試験した。CHIRとVPAの両方は、それぞれ2時間で10%および0.5時間で17%の初期バースト放出(initial burst release)、その後48時間にわたり持続的放出を示した。また、VPAの放出速度論は、CHIRのものと比較して有意に速いことが見出された。定量的に、CHIRについて48時間で33%の累積放出が観察され、VPAについて48時間で98%の累積放出が観察された。詳細な放出プロフィールを
図16および17に示す。
【0490】
実施例5:マウスにおける聴力回復
ポロキサマー407ゲル(Sigma-Aldrich)を、冷1xリン酸緩衝化食塩水にpH7.4でゆっくり添加してポロキサマー407ゲル(Sigma-Aldrich)の17%(w/w)ストック溶液を調製した。冷却された場合または室温でこの溶液は液体であるが、体温では固化する。投与の際に可視化のためにゲルをEvansブルー色素(50ppm)で薄い青色に染色した。
【0491】
5% DMSOを有する17%ポロキサマー407中527mM VPAおよび2.975mM CHIRを用いて実施例4に記載されるように製剤を調製した(「VPA/CHIR」)。比較のために、5% DMSOを有する17%ポロキサマー407中Notch阻害剤、LY411575を4mMで調製した(「LY411575」)。さらに、5% DMSOを有する17%ポロキサマー407のビヒクルのみの対照を調製した(「対照」)。
【0492】
CBA/CaJマウスを8〜16kHzオクターブ帯のノイズ帯に120dB SPLで2時間暴露することにより、ノイズチャンバー中で耳を聞こえなくした。ノイズ暴露の24時間後、マウスの聴力を、聴性脳幹反応(ABR)を測定することにより評価した。ABR波Iの視覚的検出に必要な最少音圧レベル(SPL)を、5、10、20、28.3および40kHzで決定した。ABR測定後、ポロキサマーゲル薬物混合物(「VPA/CHIR」、「LY411575」または「対照」と上述される)の経鼓膜注射を送達して中耳の空洞に充填した。30日後、ABRを評価して、ノイズ暴露後24時間から30日までの聴力閾値の向上を決定した。結果を
図18に示す。
【0493】
10dBの閾値の向上は、所定の音についてのうるささの倍加を生じ、臨床的に有意であるとみなされる。「VPA/CHIR」製剤は、10dBの回復を達成した。統計的に有意な向上を、星印を付して示す(*はp<0.05を意味する)。
【0494】
前述の記載より、本明細書に記載される発明を種々の使用および条件に適合させるために、本明細書に記載される発明に対して変形および改変がなされ得ることが明らかである。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載され、当該技術分野で公知の他の適切な方法および材料も使用し得る。材料、方法および例は、代表的なだけであり、限定を意図するものではない。かかる態様も以下の特許請求の範囲の範囲内にある。本明細書中の変数の任意の定義における要素の列挙の記載は、任意の単一要素または列挙される要素の組合せ(または下位の組合せ)としてのかかる変数の定義を含む。本明細書中の態様の記載は、任意の単一の態様または任意の他の態様もしくはそれらの一部との組合せとしてのかかる態様を含む。本明細書において引用される全ての特許、公開された出願および参照文献の教示は、それらの全体において参照により援用される。本発明は、その例示態様により具体的に示され記載されているが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解されよう。