特許第6773647号(P6773647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773647ポリエステル製造プロセスのための触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773647
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ポリエステル製造プロセスのための触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/85 20060101AFI20201012BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20201012BHJP
   B01J 31/26 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C08G63/85
   B01J31/24 Z
   B01J31/26 Z
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-515832(P2017-515832)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公表番号】特表2017-530225(P2017-530225A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】EP2015070075
(87)【国際公開番号】WO2016045923
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】14003298.8
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517092075
【氏名又は名称】クラリアント・プラスティクス・アンド・コーティングス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ・パスカル
(72)【発明者】
【氏名】シドキ・モアメド
(72)【発明者】
【氏名】ドンジョバンニ・エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】アブラーミ・ジェローム
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−516649(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059605(WO,A1)
【文献】 特表2002−512281(JP,A)
【文献】 特開2005−126450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 −64/42
B01J 31/00 −31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および
(i)少なくとも1種の助触媒A、または
(ii)少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒C、または
(iii)少なくとも1種の助触媒A、少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒Cの組み合わせ、
のうちのいずれか、
を含む、ポリエステル製造プロセスのための触媒組成物であって、
助触媒Aは、式(I)および(II)の化合物
【化1】
[式中、
、R、RおよびRは、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜Cアルキル残基であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよく、
は、C〜C12直鎖または分岐の、飽和または不飽和アルキレンであり、
Mは、アルミニウム、コバルトおよび亜鉛イオンからなる群から選択され、
mは、2、3または4であり、
nは、1または2である]
からなる群から選択され、
助触媒Bは、式(III)および(IV)の化合物
【化2】
[式中、
、R、RおよびRは、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜Cアルキル残基であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよく、
は、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜C12アルキレンである]
からなる群から選択され、
助触媒Cは、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムヒドロキシクロリド、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、水酸化コバルト、ケイ酸コバルトおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、触媒組成物。
【請求項2】
主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および
少なくとも1種の助触媒A、および
任意選択的に助触媒C、
を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
助触媒Aが、式(I)および(II)の化合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の触媒組成物
【化3】
[式中、
、R、RおよびRは、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜Cアルキル残基であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよく、
は、C〜C12直鎖または分岐の、飽和または不飽和アルキレンであり、
Mは、亜鉛イオンであり、
mは、2、3または4であり、
nは、1または2である]。
【請求項4】
主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および
少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒C
を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
助触媒Cが、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛および硫酸亜鉛からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【請求項6】
式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物において、RおよびRが、互いに独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、nーブチル、tert−ブチルおよびnーペンチルからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【請求項7】
式(II)および(IV)の化合物において、Rが、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、nーブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレンおよびn−ドデシレンからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【請求項8】
助触媒Bが、ジエチルホスフィン酸であり、
助触媒Cが、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛からなる群から選択される、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【請求項9】
助触媒Aがジエチルホスフィン酸亜鉛である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【請求項10】
組成物中に、一価、二価および多価アルコールからなる群から選択される溶媒Dを含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【請求項11】
溶媒Dが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
ポリエステル製造プロセスの出発化合物としてのカルボキシ化合物の非存在下における、請求項1〜11のいずれか1つに記載の触媒組成物。
【請求項13】
ポリエステルの製造のための、請求項1〜12のいずれか1つに記載の触媒組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製造プロセスのための触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル類、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートは、織物繊維、包装フィルムおよび容器の製造において大量に使用される、重要な工業用ポリマー群である。
【0003】
ポリエステルは通常、二段階触媒プロセスにおいて工業的に製造される。第一段階は、ジカルボン酸およびポリオールの間のエステル化反応である。第二段階において、上記エステル化反応に、より高温での重縮合段階が続き、最終のポリエステル形成をもたらす。
【0004】
多数の化合物が、エステル化、エステル交換または重縮合触媒として提案されてきた。好ましくはアルコール性溶液の形態にある、アンチモンおよびチタン錯体が、ポリエステルプロセスにおいて最も頻繁に使用される触媒である。しかしながら、時として、反応性、最終製品の安定性および外観に関する特定の欠点が生じる。
【0005】
US2009/0005531(特許文献1)は、有機チタネート触媒ポリエステルの固相重合速度を増加させる方法を開示している。当該方法は、第1ステップにおいて、エステル化またはエステル交換を達成するのに適切な温度および圧力で、ジカルボン酸またはC−Cジカルボン酸ジエステルをジオールと反応させて、プレ縮合物を調製することを含む。第2ステップにおいて、高分子量ポリエステルを調製するために適切な温度および圧力で前記プレ縮合物を反応させて、重縮合を生じさせる。第3ステップにおいて、ポリエステルの分子量および粘度をさらに増加させる。ホスフィン酸化合物の存在が、固相重合ステップの間に、より高い分子量への増加、または粘度増加をもたらす。しかしながら、前記触媒組成物の反応速度および色改善は十分ではない。
【0006】
US2013/0131239(特許文献2)は、アルキル亜ホスホン酸およびジアルキルホスフィン酸塩の混合物を製造する方法を開示している。前記化合物は難燃特性を有しており、従って難燃剤としてポリマー組成物において使用し得る。いくつかの用途において、こららのリン系添加剤は、それらのハロゲン化等価物とちょうど同じ程度に高い難燃性を示す。
【0007】
EP0699708(特許文献3)では、カルシウムホスフィネートおよびアルミニウムホスフィネートがポリエステルプラスチックにおいて優れた難燃性作用を有するが、同じホスフィン酸またはジホスフィン酸の他の金属塩のもたらす難燃性作用はそれより大幅に低いことが記載されている。
【0008】
US2013/0184414(特許文献4)は、アンチモン化合物および無機スズ化合物を含む触媒系の存在下における、ポリエステル樹脂の製造方法を開示している。
【0009】
WO2005/097321(特許文献5)は、ポリエステルを製造するための、チタン化合物、ホスファイトエステルおよび任意選択的に溶媒を含む組成物を開示している。しかしながら、これらの触媒の組み合わせは、平均的な活性を示す。例として、前記ホスファイトは、最終物質の着色における良好な効果にも拘らず、それらを添加した触媒の活性を遅くする可能性さえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2009/0005531
【特許文献2】US2013/0131239
【特許文献3】EP0699708
【特許文献4】US2013/0184414
【特許文献5】WO2005/097321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、既知の触媒系よりも効果的で、最終ポリエステル製品の着色の減少をもたらす触媒組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、請求項1に記載の助触媒Aの使用によって解決される。更なる好ましい実施態様は、従属請求項の事項である。
【0013】
驚くべきことに、主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、ならびに
(i)少なくとも1種の助触媒A、または
(ii)少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒C
(iii)または少なくとも1種の助触媒A、少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒Cの組み合わせ
のいずれかを含む、ポリエステル製造プロセスのための触媒組成物が、非常に効果的に、著しく減少した着色を有する最終ポリエステル製品をもたらすことが見出された。
【0014】
助触媒Aは、アルキルもしくはアリールホスフィン酸の金属塩、またはアルキルもしくはアリールジホスフィン酸の金属塩、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。助触媒Bは、アルキルもしくはアリールホスフィン酸、アルキルもしくはアリールジホスフィン酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。助触媒Cは、金属塩、金属水酸化物または金属オルガニル化合物からなる群から選択される。すなわち、(i)、(ii)および(iii)全ての場合において、前記触媒組成物は、金属イオン、ならびにアルキルもしくはアリールホスフィン酸またはアルキルもしくはアリールジホスフィン酸、またはこれらの組み合わせを含む。それらは、本発明の触媒組成物において、混合物としてまたは単一の分子としてのいずれかで存在する。特に、助触媒Aの形態にあるか(助触媒Aが金属塩であるため)または助触媒Cの形態にあるかのいずれかである金属イオンの存在が、反応速度および色改善のために重要な役割を果たす。
【0015】
助触媒A、または助触媒Bおよび助触媒Bの組み合わせ、またはこれらの組み合わせが、主触媒の触媒活性において、公知のホスファイト類と比較して、より良好な影響を及ぼす。さらに、ポリエステル製造プロセスの効率を著しく増加させることができた。ポリエステル合成の全てのステージで重合時間が減少し、分解生成物の生成が減少し、ポリエステルの物理的特性が改善する。
【0016】
そのような触媒組成物の主触媒は、チタン触媒またはアンチモン触媒またはそれらの組み合わせである。それらは両方とも、触媒組成物において唯一の主触媒であってよいが、前記触媒組成物はチタン触媒およびアンチモン触媒の組み合わせを含むことも可能である。
【0017】
本発明との関連の範囲内において、チタン触媒は好ましくは、テトラヒドロカルビルチタネートまたはチタンキレートである。最も好ましいテトラヒドロカルビルチタネートは、一般式Ti(OR10を有し、ここで、それぞれのR10は互いに独立にC〜C30、好ましくはC〜C12アルキル、シクロアルキル、アルカリルおよびアリールからなる群から選択され、Ti(OR10の4つのR10のそれぞれのR10は、同一であってもまたは異なっていてもよい。例としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラヘキソキシド、チタンテトラ2−エチルヘキソキシド、チタンテトラオクトキシドおよびそれらのうちの2つまたはそれ以上の組み合わせが挙げられる。
【0018】
前記チタン触媒はまた、商業的に入手することもできる。例には、チタンアルコキシド、例えばチタン(IV)n−プロポキシド(Tilcom(登録商標)NPT、Vertec(登録商標)NPT、チタン(IV)n−ブトキシド、チタンクロリド、トリイソプロポキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)2−エチルヘキシルオキシド(Tilcom(登録商標)EHT、Vertec(登録商標)EHT)、TYZOR(登録商標)TPTおよびTYZOR(登録商標)TBT(それぞれテトライソプロピルチタネートおよびテトラn−ブチルチタネート)が含まれるが、これらに限定はされない。チタンテトラn−ブトキシドが最も好ましい。
【0019】
チタンキレートは、例えば、商業的に入手可能なチタンビスーアンモニウムラクテート、ビスーアセチルアセトネートチタネート、ビス−エチルアセトアセテートチタネート、ビストリエタノールアミンチタネート、またはそれらのうちの2つまたはそれ以上の組み合わせであることができる。
【0020】
商業的に入手可能なチタンキレートは、例えばチタンビスーアンモニウムラクテート、ビスーアセチルアセトネートチタネート、ビス−エチルアセトンアセテートチタネート、ビストリエタノールアミンチタネート、またはそれらのうちの2つまたはそれ以上の組み合わせである。
【0021】
本発明との関連の範囲内において、アンチモン触媒は、アンチモン酸化物、アンチモンカルボキシレートまたはアンチモンハロゲン化物である。
【0022】
好ましくは、前記アンチモン触媒は、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモンカルボキシレート、例えばアンチモントリアセテート、アンチモントリステアレート、アンチモンハロゲン化物、例えば三塩化アンチモンまたは四フッ化アンチモンのうちの1種または複数種から選択される。三酸化アンチモンおよびアンチモントリアセテートが最も好ましい。
【0023】
1つの好ましい実施態様において、前記触媒組成物は、主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および少なくとも1種の助触媒A、好ましくは1種または2種の助触媒Aを含む。任意選択的に、そのような触媒組成物は、少なくとも1種の助触媒Cを追加的に含むことができ、これはさらなる色の改善をもたらし得る。好ましくは、助触媒Aは式(I)および(II)の化合物の群から選択される
【0024】
【化1】
[式中、
、R、RおよびRは、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和のC〜Cアルキルおよび/またはアリール残基であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよく、
は、直鎖または分岐の、飽和または不飽和のC〜C12アルキレン、C〜C18アリーレン、C〜C18アルキルアリーレンまたはC〜C18アリールアルキレンであり、
Mは、アルミニウム、コバルトおよび亜鉛イオンからなる群から選択され、
mは、2、3または4であり、
nは、1または2である]。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様において、前記触媒組成物は、主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒Cを含む。好ましくは、当該表現は少なくとも、それぞれ1種または2種の助触媒BまたはCを表す。好ましくは、助触媒Bは式(III)および(IV)の化合物の群から選択される
【0026】
【化2】
[式中、
、R、RおよびRは、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和のC〜Cアルキルおよび/またはアリール残基であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよく、
は、直鎖または分岐の、飽和または不飽和のC〜C12アルキレン、C〜C18アリーレン、C〜C18アルキルアリーレンまたはC〜C18アリールアルキレンである]。
【0027】
助触媒Cは、好ましくは、金属塩、金属水酸化物または金属オルガニル化合物からなる群から選択され、ここで、前記金属塩、金属水酸化物または金属オルガニル化合物の金属は、好ましくはアルミニウム、コバルト、ジルコニウムまたは亜鉛からなる群から選択される。好ましくは、前記助触媒Cは、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムヒドロキシクロリド、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、水酸化コバルト、ケイ酸コバルト(cobalt salicate)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。前記の触媒の組み合わせでは、1種または複数種の助触媒Cが存在していてもよい。助触媒Cは、ポリエステルの色補正剤(color corrector)である。さらに、それはまた、ホスフィン酸またはジホスフィン酸との金属錯体のための前駆体の役割も果たす(特にホスフィン酸とのコバルトおよび亜鉛錯体の場合)。助触媒Cはまた、助触媒Bの非存在下で助触媒Aを含む触媒組成物に存在していてもよい。
【0028】
最も好ましくは、式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物において、すなわち助触媒Aにおいておよび助触媒Bにおいて、RおよびRは直鎖もしくは分岐C〜Cアルキルまたはフェニルであり、RおよびRは互いに同一であってもまたは異なっていてもよい。理想的には、RおよびRは互いに独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチルおよびフェニルからなる群から選択される。
【0029】
式(I)の好ましい金属ホスホネートの例は、亜鉛ジメチルホスホネート、亜鉛ジエチルホスホネート、ジプロピルホスホネート、亜鉛ジイソプロピルホスホネート、亜鉛ジブチルホスホネート、亜鉛ジペンチルホスホネート、亜鉛ジフェニルホスホネート、亜鉛エチルメチルホスホネート、亜鉛n−プロピルメチルホスホネート、亜鉛イソプロピルメチルホスホネート、亜鉛n−ブチルメチルホスホネート、亜鉛n−ペンチルメチルホスホネート、亜鉛フェニルメチルホスホネート、亜鉛n−プロピルエチルホスホネート、亜鉛イソプロピルエチルホスホネート、亜鉛n−ブチルエチルホスホネート、亜鉛n−ペンチルエチルホスホネート、亜鉛フェニルエチルホスホネート、亜鉛イソプロピルプロピルホスホネート、亜鉛n−ブチルプロピルホスホネート、亜鉛n−ペンチルプロピルホスホネート、亜鉛フェニルプロピルホスホネート、亜鉛n−ブチルイソプロピルホスホネート、亜鉛nーペンチルイソプロピルホスホネート、亜鉛フェニルイソプロピルホスホネート、亜鉛nーペンチルブチルホスホネート、亜鉛フェニルブチルホスホネート、亜鉛フェニルペンチルホスホネート、コバルトジメチルホスホネート、コバルトジエチルホスホネート、ジプロピルホスホネート、コバルトジイソプロピルホスホネート、コバルトジブチルホスホネート、コバルトジペンチルホスホネート、コバルトジフェニルホスホネート、コバルトエチルメチルホスホネート、コバルトn−プロピルメチルホスホネート、コバルトイソプロピルメチルホスホネート、コバルトn−ブチルメチルホスホネート、コバルトn−ペンチルメチルホスホネート、コバルトフェニルメチルホスホネート、コバルトn−プロピルエチルホスホネート、コバルトイソプロピルエチルホスホネート、コバルトn−ブチルエチルホスホネート、コバルトn−ペンチルエチルホスホネート、コバルトフェニルエチルホスホネート、コバルトイソプロピルプロピルホスホネート、コバルトn−ブチルプロピルホスホネート、コバルトn−ペンチルプロピルホスホネート、コバルトフェニルプロピルホスホネート、コバルトn−ブチルイソプロピルホスホネート、コバルトn−ペンチルイソプロピルホスホネート、コバルトフェニルイソプロピルホスホネート、コバルトn−ペンチルブチルホスホネート、コバルトフェニルブチルホスホネート、コバルトフェニルペンチルホスホネート、アルミニウムジメチルホスホネート、アルミニウムジエチルホスホネート、ジプロピルホスホネート、アルミニウムジイソプロピルホスホネート、アルミニウムジブチルホスホネート、アルミニウムジペンチルホスホネート、アルミニウムジフェニルホスホネート、アルミニウムエチルメチルホスホネート、アルミニウムn−プロピルメチルホスホネート、アルミニウムイソプロピルメチルホスホネート、アルミニウムn−ブチルメチルホスホネート、アルミニウムn−ペンチルメチルホスホネート、アルミニウムフェニルメチルホスホネート、アルミニウムn−プロピルエチルホスホネート、アルミニウムイソプロピルエチルホスホネート、アルミニウムn−ブチルエチルホスホネート、アルミニウムn−ペンチルエチルホスホネート、アルミニウムフェニルエチルホスホネート、アルミニウムイソプロピルプロピルホスホネート、アルミニウムn−ブチルプロピルホスホネート、アルミニウムn−ペンチルプロピルホスホネート、アルミニウムフェニルプロピルホスホネート、アルミニウムn−ブチルイソプロピルホスホネート、アルミニウムn−ペンチルイソプロピルホスホネート、アルミニウムフェニルイソプロピルホスホネート、アルミニウムn−ペンチルブチルホスホネート、アルミニウムフェニルブチルホスホネートおよびアルミニウムフェニルペンチルホスホネートである。アルミニウムジエチルホスフィネートおよび/または亜鉛ジエチルホスフィネートが最も好ましい。
【0030】
式(III)の好ましいホスフィン酸の例は、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジペンチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、n−プロピルメチルホスフィン酸、イソプロピルメチルホスフィン酸、n−ブチルメチルホスフィン酸、n−ペンチルメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、n−プロピルエチルホスフィン酸、イソプロピルエチルホスフィン酸、n−ブチルエチルホスフィン酸、n−ペンチルエチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸、イソプロピルプロピルホスフィン酸、n−ブチルプロピルホスフィン酸、n−ペンチルプロピルホスフィン酸、フェニルプロピルホスフィン酸、n−ブチルイソプロピルホスフィン酸、n−ペンチルイソプロピルホスフィン酸、フェニルイソプロピルホスフィン酸、n−ペンチルブチルホスフィン酸、フェニルブチルホスフィン酸およびフェニルペンチルホスフィン酸である。ジエチルホスフィン酸が最も好ましい。最も好ましくは、本発明の触媒組成物は、助触媒Bとしてのジエチルホスフィン酸、および助触媒Cとしての亜鉛塩、最も好ましくは酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛および硫酸亜鉛からなる群から選択される亜鉛塩、理想的には酢酸亜鉛を含む。
【0031】
別の好ましい実施態様において、本発明の触媒組成物は、助触媒Bとしての式(IV)のジホスフィン酸または助触媒Aとしての式(II)のジホスフィン酸の金属塩またはそれらの組み合わせを含み、ここで、R、RおよびR、Mおよびnは上記のように定義される。最も好ましくは、RおよびRは直鎖もしくは分岐C〜Cアルキルまたはフェニルであり、RおよびRは互いに同一であってもまたは異なっていてもよい。好ましくは、RおよびRは、互いに独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、nーブチル、nーペンチルおよびフェニルからなる群から選択される。最も好ましくは、Rは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、nーブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレン、ナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert−ブチルナフチレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン(phenylproplynes)およびフェニルブチレンからなる群から選択される。式(II)または(IV)の化合物のR、RおよびRの各々個々の組み合わせは、本発明の一部であり、前記化合物はまた、対応のアルミニウム塩、対応のコバルト塩または対応の亜鉛塩であってもよい。
【0032】
式(II)の好ましいジホスホン酸の金属塩の例は、亜鉛エチレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)、亜鉛1−メチルエチレン−1,2−ビス(シクロヘキシルホスホネート)、亜鉛フェニレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)、亜鉛メチルフェニレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)、コバルトエチレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)、コバルト1−メチルエチレン−1,2−ビス(シクロヘキシルホスホネート)、コバルトフェニレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)、コバルトメチルフェニレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)、アルミニウムエチレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)、アルミニウム1ーメチルエチレン−1,2−ビス(シクロヘキシルホスホネート)、アルミニウムフェニレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)およびアルミニウムメチルフェニレン−1,2−ビス(エチルホスホネート)である。
【0033】
好ましい式(IV)のジホスホン酸の例は、エチレン−1,2−ビス(エチルホスフィン酸)、1−メチルエチレン−1,2−ビス(シクロヘキシルホスフィン酸)、フェニレン−1,2−ビス(エチルホスフィン酸)およびメチルフェニレン−1,2−ビス(エチルホスフィン酸)である。
【0034】
任意選択的に、前記触媒組成物は、追加的に溶媒Dを含んでいてもよい。溶媒Dは、好ましくは、一価、二価および多価アルコールからなる群から選択される。好ましくは、溶媒Dは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、好ましくはn−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。最も好ましくは、助触媒Dは、イソプロパノール、n−ブタノールおよびエチレングリコールまたはそれらの混合物の群から選択される。前記触媒組成物では、1種または複数種の溶媒Dが存在していてもよい。しかしながら、好ましくはただ1種の溶媒Dが存在し、なぜならこれは触媒組成物の安定性を増加させるからである。本発明の触媒組成物が溶媒Dを含む場合、それは取扱いが容易であり、液体での計量添加が可能である。
【0035】
触媒組成物の異なる触媒成分は重合容器に連続的に導入することが可能であるが、好ましくは、触媒組成物をそれを重合容器に添加する前に調製する。そのような触媒組成物は、個々の成分を一緒に混合することにより製造することができる。さらに、助触媒Bと助触媒Cを一緒に混合した後に、前記混合物を主触媒に添加することも可能である。
【0036】
前記触媒組成物は、水に加えて、エステル化またはエステル交換または重縮合反応と相容性であるかまたは当該反応を妨げない第2の溶媒において製造することもできる。
【0037】
好ましくは、前記触媒組成物は、重合反応の出発化合物であるカルボキシル化合物の非存在下において、主触媒、および
(i)少なくとも1種の助触媒A、または
(ii)少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒C
(iii)少なくとも1種の助触媒A、少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒C、
および任意選択的に溶媒、
を含む。このような触媒組成物は、すぐに使用可能な状態にあり、優れた貯蔵安定性を有する。1つの好ましい実施態様において、前記触媒組成物は、反応の出発化合物であるアルコール、例えばポリブチレンテレフタレートを製造するための1,4−ブタンジオールまたはポリプロピレンテレフタレートを製造するための1,3−プロピレングリコール、に溶解される。
【0038】
以下:
(i)主触媒および助触媒Aの、または
(ii)主触媒、助触媒Bおよび助触媒Cの、または
(iii)主触媒、助触媒A、助触媒Bおよび助触媒Cの、および
任意選択的に溶媒Dの、および任意選択的に他の任意成分の
混合は、不活性雰囲気、例えば窒素、二酸化炭素、ヘリウムまたはそれらの組み合わせの下で行うことができる。製造の間、混合物を撹拌することができ、0〜100℃、好ましくは20〜50℃の範囲の温度で行うことができる。一般に、触媒組成物は任意量の溶媒を、当該量が組成物を実質的に溶解できる限り、含むことができる。
【0039】
前記の主触媒および助触媒Aの量は、触媒組成物における助触媒Aと主触媒とのモル比が以下のようになるようにすることができる:
助触媒A:主触媒が、0.1:1〜50:1、好ましくは0.1:1〜10:1、最も好ましくは1:1〜4:1の範囲にある。
【0040】
前記の主触媒、助触媒Bおよび助触媒Cの量は、触媒組成物における各助触媒と主触媒とのモル比が以下のようになるようにすることができる:
助触媒B:主触媒が、0.1:1〜50:1、好ましくは0.1:1〜10:1、最も好ましくは1:1〜4:1の範囲にある。
【0041】
助触媒C:主触媒が、0.1:1〜50:1、好ましくは0.5:1〜10:1、最も好ましくは1:1〜8:1の範囲にある。
【0042】
本発明の触媒組成物に溶媒Dが存在する場合、それは好ましくは、約95%の溶媒Dおよび約5%の助触媒A、好ましくは約99%の溶媒Dおよび約1%の助触媒Aを含み得る。
【0043】
あるいは、本発明の触媒組成物に溶媒Dが存在する場合、それは好ましくは、約95%の溶媒Dおよび約5%の助触媒Bおよび助触媒C、好ましくは約99%の溶媒Dおよび1%の助触媒Bおよび助触媒Cを含み得るが、助触媒Bおよび助触媒Cは好ましくは上記のような比にある。
【0044】
本発明はまた、助触媒Aまたは助触媒Bと助触媒Cとの組み合わせを含む触媒組成物の存在下における、ポリエステルの製造方法を開示する。前記方法は、以下のステップを含む:
a)カルボキシ化合物、好ましくはジカルボン酸、そのモノエステル、そのジエステルまたはカルボン酸金属塩からなる群から選択されるカルボキシ化合物、およびモノアルコール、ジオールまたはポリオールの群から選択されるアルコールを、エステル交換によりエステル化し、エステル化混合物を得るステップ(前記反応は、直接エステル化、DEと呼ばれる)、
b)好ましくは260℃〜300℃の範囲における温度で、前記エステル化混合物を重合させて、ポリエステルを得るステップ(前記反応は重縮合、PCと呼ばれる)。
【0045】
直接エステル化は、好ましくは、150℃〜500℃、好ましくは200℃〜400℃、最も好ましくは250℃〜300℃の範囲の温度で、1mbar〜1barの範囲の圧力下で、0.2〜20時間、好ましくは0.2〜15時間、最も好ましくは0.5〜10時間の期間、行われる。アルコールとカルボキシル化合物とのモル比は、当該比がエステルまたはポリエステルの製造を達成できる限り、任意の比であることができる。概して、上記比は、1:1〜10:1、または1:1〜5:1、または1:1〜4:1の範囲内であることができる。上記の直接エステル化の生成物は、上記カルボキシル化合物およびアルコールに由来する合計1〜100個、好ましくは2〜10個の繰り返し単位を有する低分子量オリゴマーである。
【0046】
重合反応は、好ましくは、250℃〜350℃、好ましくは250℃〜300℃、最も好ましくは275℃〜300℃の範囲の温度で、1mbar〜10barの範囲の圧力下で、1〜4時間の期間、行われる。
【0047】
直接エステル化反応の出発化合物としてのカルボキシ化合物は、アルコールと組み合わせたときにエステルまたはポリエステルを製造できる任意のカルボキシ化合物であることができる。例には、酸に由来する繰り返し単位を有するカルボン酸オリゴマーまたはポリマーの酸、エステル、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物、あるいはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定はされない。
【0048】
好ましくは、直接エステル化の出発材料として使用されるジカルボン酸は、以下の式を有する
HOC−A−CO
[式中、Aは、飽和または不飽和の、直鎖または分岐アルキレン基、置換または非置換アリーレン基、置換または非置換アルケニレン基、またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群から選択される]。Aは、0〜30個、好ましくは1〜25個、より好ましくは4〜20個、最も好ましくは4〜15個の炭素原子を有する。適切なジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸およびそれらのうちの2つまたはそれ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定はされない。
【0049】
さらに、一塩基酸を、ジカルボン酸、例えばアクリル酸または安息香酸と組み合わせて、潜在的な鎖終止剤(chain termination agents)として使用してもよい。
【0050】
好ましくは、直接エステル化の出発物質として使用されるエステルは、前述のジカルボン酸のメチルエステルの群から選択される。適切なエステルの例には、ジメチルアジペート、ジメチルフタレート、ジメチルテレフタレート、メチルベンゾエート、ジメチルグルタレートおよびそれらのうちの2種またはそれ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定はされない。
【0051】
好ましくは、直接エステル化の出発物質として使用されるカルボン酸金属塩は、5−スルホ−イソフタレート金属塩および(R11C)−A−S(O)の式[式中、各R11は同一であってもまたは異なっていてもよく、水素または1〜6個、好ましくは2個の炭素原子を含有するアルキル基であり、Aはフェニレン基であり、M1はナトリウムのようなアルカリ金属イオンであることができる]を有するそのエステルである。前記エステルの例は、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩のビスグリコレートエステルである。
【0052】
ポリオールという語句は、当業者に公知の2個以上のヒドロキシル基を含む任意の適切なアルコールを含むことが意図される。本発明では、ジカルボン酸、そのモノエステル、そのジエステルまたはカルボン酸金属塩をエステル化してポリエステルを製造できる任意のアルコールを使用することができる。適切なアルコールの例には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1ーメチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2ーエチルヘキサノール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキシル−1,4−ビスメタノールおよびそれらのうちの2つまたはそれ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定はされず、モノアルコールは、二塩基酸と組み合わせて潜在的な鎖終止剤として使用してもよい。
【0053】
本発明の触媒組成物、すなわち、
(i)主触媒および助触媒Aの合計、または
(ii)主触媒、助触媒Bおよび助触媒Cの合計、または
(iii)主触媒、助触媒A、助触媒Bおよび助触媒Cの合計
は、カルボキシ化合物およびアルコールを含む反応媒体に対して、0.0001〜50,000重量ppm、好ましくは0.001〜10,000重量ppmまたは0.001〜1000重量ppmの範囲で存在することができる。
【0054】
助触媒Aがポリエステル製造の直接エステル化ステップならびに重縮合ステップを大幅に促進することが見出された。従って、好ましくは、助触媒Aおよび主触媒は直接エステル化ステップの間に添加され、その結果、主触媒および助触媒Aは、直接エステル化の間中および重縮合ステップの間中である両方の製造ステップにおいて存在する。
【0055】
他の成分、例えば従来のエステル化およびエステル交換触媒(例えばマンガン)、および触媒安定性または性能を増強するものを、本発明の触媒組成物の導入と同時に、または当該導入に続いて、製造プロセスに導入してもよい。
【0056】
重合反応の間に、添加剤、例えば、加工安定化剤、難燃添加剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、過酸化物破壊性化合物(peroxide−destroying compounds)、安定化剤、核形成剤または他の添加剤を添加することが可能である。好ましくは、特に、ホスファイト、ホスホナイトまたは他のリンをベースとする酸化防止剤からなる群から選択される酸化防止剤を添加することができる。前記のホスファイトまたはホスホナイトは、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト類、フェニルジアルキルホスファイト類、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビスイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル) 4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12H−ジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、6ーフルオロ−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12−メチル−ジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、トリス(2−tert−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル)フェニル−5−メチル)フェニルホスファイト、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト]および/またはビス[2−メチル−4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール]亜リン酸エチルエステルであることができる。最も好ましくは、それはトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(商標名Irgafos(登録商標)168で入手可能)または2,4,8,10ーテトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ(5.5)ウンデカン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Ultranox(登録商標)626)からなる群から選択される。
【0057】
実験部
反応条件およびポリエステルの分析的評価:
重縮合の進行は、混合デバイスのトルク値の差分(ΔC)の測定により制御される。このパラメーターは、反応混合物の粘度変化に依存する。合成される全てのPETに対して、ΔCは、70〜78mL/gの還元粘度を有するPETに関して典型的な値として15Nmに設定される。一旦この値が達成されると、反応器が開けられ、ポリマーが回収される。反応器圧力が20mbarに達した時に、重縮合の開始の時間(t0=0分)がとられる。
【0058】
3つの実験的技法が、この研究の間に得られたPETの特性を決定するために使用される。
1.細管による粘度測定分析(ASTM D4603法)
この技法により、純粋な溶媒の流下時間(t0)およびポリマー溶液の流下時間(t)の観察から、溶液中のPETの極限粘度の測定が可能である。ポリマー粘度を特徴付ける異なるデータをこの方法により算出できる:
相対粘度 → ηrel = t/t0
比粘度 → ηsp = (t−t0)/t0
還元粘度 → ηred = (t−t0)/Ct0
【0059】
文献において、当業者により、これらの粘度の表示から以下を直接推定するためのモデルの確立が成し遂げられている:極限粘度([η])、数平均分子量および重量平均分子量(Mn、Mw)および平均重合度DPn。我々は、以下の還元粘度の範囲にあるPETのために2つのモデルを使用した:5ml/g<ηred<100mL/g。極限粘度の算定に関する1つのモデルは以下である:
【0060】
【数1】
【0061】
以下の式を用いる他のモデルがPETのモル質量の決定のために開発された:
【0062】
【数2】
【0063】
2.示差走査型熱量測定分析(DSC)
DSCは、得られたポリマーの熱的分析である。それにより、融点、結晶化温度およびガラス転移温度を測定することが可能である。温度プログラムは、10℃/分の加熱速度を有する第1温度勾配(35℃から275℃へ)、10℃/分での冷却ステップ、および10℃/分での第2加熱勾配を有する。分析は、窒素下で実施する。第1加熱勾配から、以下を決定する:冷結晶化温度(Tc1)、結晶化エンタルピー(ΔHc1)、融解温度(Tm1)および融解エンタルピー(ΔHm1)。結晶化度(χc1)は、以下の式を用いて計算する:
【0064】
【数3】
【0065】
ΔH0:PETの純粋な単結晶の融解エンタルピー(117.6 J/g)
【0066】
前記冷却勾配から、融解−結晶化温度(Tc2)および結晶化エンタルピー(ΔHc2)が確認される。第2加熱勾配から、以下を決定する:ガラス転移温度(Tg3)、冷結晶化温度(Tc3)、結晶化エンタルピー(ΔHc3)、結晶化度(χc3)、融解温度(Tm3)および融解エンタルピー(ΔHm3)。
【0067】
【数4】
【0068】
3.核磁気共鳴分光学(NMR)
鎖中のジエチレングリコール(いわゆるDEG)の量を定量化するために、1H−NMRを使用する。DEGは、エーテル化反応による合成の間に形成する。PETの機械的および熱的特性に影響を及ぼし得るので、DEGの比を測定することがとても重要である。多量のDEGは、ガラス転移温度、融点および結晶化速度を低下させ得る。
【0069】
全ての分析は、重水素化クロロホルム(CDCl3)/トリフルオロ酢酸(TFA)の溶媒混合物(3/1)(V/V)で行う。
【0070】
DEG比(RDEG)は、4ppm〜5ppmの間に現れる、高分子のPET鎖における種々の形態のDEGに関するプロトンピークの面積の積分から計算する。
【0071】
【数5】
【0072】
実験結果
反応器は、各ラン(バッチ)につき、約3キログラム(3072gの理論量、16モルのPET)のポリマーを合成でき、全てのPETは、PET産業で使用される16モルのテレフタル酸(TA)および19.2モルのエチレングリコール(EG)モノマーから合成される。チタンおよびアンチモンをベースとする触媒、リン添加剤および金属塩をベースとする色補正剤を、PETの形成において使用した。全ての生成物について、それらの化学構造、特性および量を適切な分析手法により決定した。
【0073】
触媒混合物の調製
触媒系の異なる成分(1)、(2)、(3)および(4)を、重合プロセスの間に個別に添加することができ、あるいは、構成成分を溶媒中で所定の比に従って混合することにより、ready−to−use混合物を予め調製することができる。この溶液をその後、直接エステル化または重縮合ステップにおいてプロセスに導入する。
【0074】
個々の成分各々に関して、重合においてバッチあたりに使用される典型的な量(モノマー(M)および触媒処方)
【0075】
【表1】
【0076】
【化3】
【0077】
触媒混合物調製の例:
典型的なチタンベース触媒の調製では、0.15グラムのTi(OBu)、0.32グラムの酢酸コバルト四水和物および0.06グラムのジエチルホスフィン酸(DEPS)を、10mlのエチレングリコールに希釈する。透明な青紫色の溶液を室温で90分間撹拌し、例4のための触媒として使用する(表1)。
【0078】
同等の調製物をさらに1週間保管し、別の重合試験で評価する。古い溶液は、新たに調製したものと同様にふるまうことが示される。
【0079】
典型的なアンチモンベース触媒の調製では、0.92グラムのSb(OAc)、0.32グラムの酢酸コバルト四水和物および0.05グラムのジエチルホスフィン酸(DEPS)を、10mlのエチレングリコールに希釈する。透明な青紫色の溶液を室温で90分間撹拌し、例19のための触媒として使用する(表3)。
【0080】
同等の調製物をさらに1週間保管し、別の重合試験で評価する。古い溶液は、新たに調製したものと同様にふるまうことが示される。
【0081】
直接エステル化ステップ
16mol(2656g)のテレフタル酸(AT)を、6.6barの窒素圧下、275℃の温度において、19.2molのエチレングリコールEG(1190g)でエステル化する。モル比EG/ATは1.2に等しい。エチレングリコールにおける触媒および助触媒またはready−to−use混合物を、適合したデバイスにより反応器に導入する。撹拌器の電源を入れ、約2.5時間の期間にわたって温度を275℃に上昇させた。内容物を、撹拌下で、275℃および120mmHgの圧力、および280℃および30mmHgの圧力で保持することによりエステル化した。
【0082】
反応の進行は、回収する水の量により制御され、「コンバージョン(conversion)」と呼ばれる。直接エステル化ステップが完了した時に(水は留去しない)、重縮合ステップを開始する。
【0083】
重縮合ステップ
重縮合ステップは、エステル化ステップの間に形成したPETオリゴマーを、過剰なエチレングリコール分子の放出を導くアルコールーエステルのエステル交換反応(交換反応とも呼ばれる)によって、結合させることからなる。前記反応は、0.7mbarの減圧下、285℃で行われる。ケトルの内容物を、撹拌下、285℃で、1〜2mmHg圧において、Electro−Craft Motomaticトルクコントローラーによって測定した際に15オンスインチ(0.106ニュートンメートル)のトルクに到達するのに十分な時間、保持した。このステップのための時間をFinish Timeとして記録し、これは使用した触媒系とともに変動した。その後、分光光度計を用いる色測定のために、ポリマー溶融物を水浴に移して当該溶融物を固体化し、得られた固体を0℃で12時間アニールし、2mmフィルターを通過するように粉砕した。
【0084】
結果
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
比較例:Ref1〜4のポリエステル化実験を、主触媒のみを用いて実施する。これらの触媒を、ステップ1またはステップ2の何れかで導入した。Ref5〜13は、リン源とともに実施する。上記リン源は、HostanoxP−EPQ(PEPQ)のようなホスフィナイト、またはIrganox168(IRG168)のようなホスファイトであることができる。カルボキシエチルホスフィン酸(CEPA)についても評価を行った。以下の表に記載されるように、全反応時間の改善(sum)は非常に限定されている。
【0091】
【表7】
【0092】
比較例:Ref14〜20のポリエステル化実験は、報告されている助触媒(酢酸Znおよび酢酸Co)を用いて行う。これらの助触媒を、ステップ1またはステップ2の何れかで導入した。以下の表に記載されるように、全反応時間が特に亜鉛助触媒に関して改善されるが、得られるポリエステルの全般的な質はむしろ低い(激しい黄色の着色と低粘度)。
【0093】
【表8】
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および
(i)少なくとも1種の助触媒A、または
(ii)少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒C、または
(iii)少なくとも1種の助触媒A、少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒Cの組み合わせ、
のうちのいずれか、
を含む、ポリエステル製造プロセスのための触媒組成物であって、
助触媒Aは、
アルキルもしくはアリールホスフィン酸の金属塩、または
アルキルもしくはアリールジホスフィン酸の金属塩、または
それらの組み合わせ、
からなる群から選択され、
助触媒Bは、
アルキルもしくはアリールホスフィン酸、
アルキルもしくはアリールジホスフィン酸、
それらの組み合わせ、
からなる群から選択され、
助触媒Cは、金属塩、金属水酸化物または金属オルガニル化合物の群から選択される、触媒組成物。
2.主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および
少なくとも1種の助触媒A、および
任意選択的に助触媒C、
を含む、上記1に記載の触媒組成物。
3.助触媒Aが、式(I)および(II)の化合物からなる群から選択される、上記1または2に記載の触媒組成物
【化4】
[式中、
、R、RおよびRは、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜Cアルキルおよび/またはアリール残基であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよく、
は、C〜C12直鎖または分岐の、飽和または不飽和アルキレン、C〜C18アリーレン、C〜C18アルキルアリーレンまたはC〜C18アリールアルキレンであり、
Mは、アルミニウム、コバルトおよび亜鉛イオンからなる群から選択され、好ましくは亜鉛イオンであり、
mは、2、3または4であり、
nは、1または2である]。
4.主触媒としてのチタン触媒および/またはアンチモン触媒、および
少なくとも1種の助触媒Bおよび少なくとも1種の助触媒C
を含む、上記1に記載の触媒組成物。
5.助触媒Bが、式(III)および(IV)の化合物からなる群から選択される、上記1または4に記載の触媒組成物
【化5】
[式中、
、R、RおよびRは、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜Cアルキルおよび/またはアリール残基であり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよく、
は、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜C12アルキレン、C〜C18アリーレン、C〜C18アルキルアリーレンまたはC〜C18アリールアルキレンである]。
6.助触媒Cが、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムヒドロキシクロリド、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、水酸化コバルト、ケイ酸コバルトおよびそれらの組み合わせ、好ましくは酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛からなる群から選択され、最も好ましくは酢酸亜鉛である、上記1〜5のいずれか1つに記載の触媒組成物。
7.式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物において、R、R、RおよびRが、互いに独立に、直鎖または分岐の、飽和または不飽和C〜Cアルキル残基またはフェニルであり、互いに同一であってもまたは異なっていてもよい、上記1〜6のいずれか1つに記載の触媒組成物。
8.式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物において、RおよびRが、互いに独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、nーブチル、tert−ブチル、nーペンチルおよび/またはフェニルである、上記7に記載の触媒組成物。
9.式(II)および(IV)の化合物において、Rが、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、nーブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tertーブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tertーブチルナフチレン、フェニルメチレン、フェニルエチレンおよびフェニルブチレンからなる群から選択される、上記1〜8のいずれか1つに記載の触媒組成物。
10.助触媒Bが、ジエチルホスフィン酸であり、
助触媒Cが、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛からなる群から選択され、好ましくは酢酸亜鉛である、
上記1〜9のいずれか1つに記載の触媒組成物。
11.助触媒Aがジエチルホスフィン酸亜鉛である、上記1〜10のいずれか1つに記載の触媒組成物。
12.組成物中に、一価、二価および多価アルコールからなる群から選択される溶媒Dを含む、上記1〜11のいずれか1つに記載の触媒組成物。
13.溶媒Dが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、好ましくはn−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはn−ブタノールおよびエチレングリコールまたはそれらの混合物からなる群から選択される、上記12に記載の触媒組成物。
14.ポリエステル製造プロセスの出発化合物としてのカルボキシ化合物の非存在下における、上記1〜13のいずれか1つに記載の触媒組成物。
15.ポリエステルの、好ましくはポリエチレンテレフタレートの製造のための、上記1〜14のいずれか1つに記載の触媒組成物の使用。